特許第5961906号(P5961906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961906
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】超撥水基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/18 20150101AFI20160721BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20160721BHJP
   C03C 17/30 20060101ALI20160721BHJP
   C03C 17/28 20060101ALI20160721BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G02B1/18
   B81C1/00
   C03C17/30 Z
   C03C17/28 Z
   B60J1/00 G
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-553382(P2013-553382)
(86)(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公表番号】特表2014-511498(P2014-511498A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】KR2012010040
(87)【国際公開番号】WO2013077691
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2013年8月7日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0124442
(32)【優先日】2011年11月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0133682
(32)【優先日】2012年11月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、タエ−ス
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒェオン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ブ−ゴン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ−ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン−ビュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス−ジン
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/136535(WO,A1)
【文献】 特開2012−126073(JP,A)
【文献】 特開平11−171592(JP,A)
【文献】 特開2005−069190(JP,A)
【文献】 特開2007−086255(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/084604(WO,A1)
【文献】 特開2006−083244(JP,A)
【文献】 特開2009−204687(JP,A)
【文献】 特開2009−122371(JP,A)
【文献】 特開2013−068855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光領域において透明な基板の一表面にボロノイダイアグラム(voronoi diagram)を用いて配列された複数の突出部を含み、前記複数の突出部間の平均間隔が1μm以上50μm以下であり、前記複数の突出部は、隣接した突出部間の間隔が正規分布を満たし、ヘイズは、2以下である、超撥水基板。
【請求項2】
前記正規分布の標準偏差は、前記複数の突出部間の平均間隔の1/20以上1/4以下である、請求項1に記載の超撥水基板。
【請求項3】
前記複数の突出部の形状は、円筒型または円錐型であり、前記複数の突出部の直径は、前記複数の突出部間の平均間隔の5%以上30%以下である、請求項1または2に記載の超撥水基板。
【請求項4】
前記複数の突出部を含む表面に疏水性物質のコーティング層をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の超撥水基板。
【請求項5】
前記疏水性物質は、フッ素系化合物またはシラン系化合物である、請求項に記載の超撥水基板。
【請求項6】
a)可視光領域において透明な基板の一表面にボロノイダイアグラム(voronoi diagram)を用いて配列された複数の光透過部または光遮断部を有し、前記複数の光透過部または光遮断部の平均間隔が1μm以上50μm以下である、フォトマスクを製造する段階と、
b)前記a)段階において製造されたフォトマスクを用いて基板表面に隣接した突出部間の間隔が正規分布を満たす、複数の突出部を形成する段階と、を含み、ヘイズは、2以下である、超撥水基板の製造方法。
【請求項7】
前記a)段階の光透過部または光遮断部の直径が前記光透過部または光遮断部間の平均間隔の5%以上30%以下である、請求項に記載の超撥水基板の製造方法。
【請求項8】
前記複数の突出部が形成された基板表面に疏水性物質をコーティングする段階をさらに含む、請求項またはに記載の超撥水基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の超撥水基板を含む、ディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の超撥水基板を含む、自動車ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水基板に関するもので、より詳細には、水接触角140°以上の超撥水基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超撥水基板とは、基板表面に形成された凹凸形状を用いて基板と水との界面の間にエアギャップを形成することで、従来の撥水基板より接触角を大きくした基板のことである。従来の撥水基板の場合、略100°から110°の接触角が形成されるが、超撥水基板の場合は、140°以上の接触角が形成される。
【0003】
一般に、超撥水基板は、その表面に形成された凹凸間隔(凹凸間の平均間隔)が可視光波長より小さい構造及び可視光波長より大きい構造に分類することができる。超撥水基板の表面に形成された凹凸間隔が可視光波長より大きい場合は、凹凸間隔が大きいため耐久性はあるが、基板が不透明であることが原因で視認性を確保することができないという問題があり、超撥水基板の表面に形成された凹凸間隔が可視光波長より小さい場合は、基板が透明であるため視認性を確保することができるが、凹凸間隔が小さいことが原因で耐久性が低下し、製造工程が困難になるという問題があった。
【0004】
また、超撥水基板を製造する方法として、一般に、ナノ粒子を分散させて基板に凹凸を形成する方法、フォトリソグラフィを用いて凹凸を形成する方法、静電噴霧法(electrospray)を用いて凹凸を形成する方法が用いられてきたが、上記方法には基板の表面特性(例えば、基板表面に形成されたパターンのサイズ及び分布など)及び基板の光学的特性(透明度など)を制御することができないという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2006−83244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたもので、本発明の一側面は、十分な耐久性及び透明度を同時に有する超撥水基板を提供する。
【0006】
また、本発明は、他の側面において、基板の光学的特性を制御することができる超撥水基板の製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、さらに他の側面において、耐久性及び透明度が確保された超撥水基板を含むディスプレイ装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、さらに他の側面において、耐久性及び透明度が確保された超撥水基板を含む自動車ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一側面において、一表面に擬似乱数分布(Pseudo random distribution)で配列された複数の突出部を含み、上記突出部間の平均間隔が可視光波長より大きい超撥水基板を提供する。
【0010】
本発明は、他の側面において、a)擬似乱数分布で配列された複数の光透過部または光遮断部を有し、上記複数の光透過部または光遮断部の平均間隔が可視光波長より大きいフォトマスクを製造する段階と、b)上記a)段階において製造されたフォトマスクを用いて基板表面に複数の突出部を形成する段階と、を含む超撥水基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による超撥水基板は、優れた耐久性及び透明度を有し、製造が容易であり、製造費用が安価である。
【0012】
また、本発明による超撥水基板の製造方法によると、基板表面に形成された突出部のサイズ及び分布を調節して基板の透明度を調節することができ、大面積の基板を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一具現例による超撥水基板の表面形状を示した図面である。
図2】本発明の一具現例による超撥水基板の接触角を示した図面である。
図3】本発明の一具現例による超撥水基板の製造方法に用いられるフォトマスクを製造するために用いられるボロノイダイアグラムを用いたパターン設計方法を示した図面である。
図4】比較例による撥水基板の表面形状を示したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施例について説明する。しかし、本発明の実施例は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施例に限定されない。また、本発明の実施例は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。なお、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0015】
図1は、本発明の一具現例による超撥水基板の表面形状を示した図面である。図1を参照すると、本発明の超撥水基板は、基板10の一表面に複数の突出部20を含むことを特徴とする。
【0016】
このとき、上記基板10は、可視光領域において透明な基板であれば、特に制限されず、例えば、ガラス、ポリメチルメタクリレート(PolyMethyl MethAcrylate、PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate、PET)、ポリカーボネート(PolyCarbonate、PC)、ポリスチレン−ブロック−ポリメチルメタクリレート(PolyStyrene−block−PolyMethyl MethAcrylate、PS−b−PMMA)などからなる基板が用いられることができる。
【0017】
また、本発明において、上記基板10の一表面に形成された複数の突出部20は、擬似乱数分布(Pseudo random distribution)で配列されることをその特徴とする。このとき、上記「擬似乱数分布(Pseudo random distribution)」とは、統計的には無作為に見えるが、一つ以上の規則を満たす分布を意味するもので、何の規則なしに無作為に分布される完全乱数分布(True random distribution)に対比する概念である。
【0018】
上記擬似乱数分布は、当該技術分野に知られている多様な擬似乱数分布の形成方法、例えば、乱数発生関数やボロノイダイアグラムなどを用いて形成することができるが、本発明はこれに限定されない。一方、上記乱数発生関数及びボロノイダイアグラムは、コンピュータ、建築、通信などの多様な分野において用いられるもので、乱数発生関数の場合、特定の条件を設定した後、上記条件を満たす範囲内において任意の分布を有するように値を生成する方法であり、コンピュータプログラムを通じて具現されることができる。また、上記ボロノイダイアグラムは、平面上にランダムに分布されている複数の点の間の垂直二等分線で各点の領域を構成することで特定の条件を満たす、擬似乱数分布を形成する方法である。
【0019】
また、本発明において、上記「複数の突出部が擬似乱数分布で配列される」とは、それぞれの突出部の位置はランダム(random)に設定されるが、全体の突出部の平均間隔は設定された範囲を満たすように調節されて配列されることを意味する。
【0020】
基板上の突出部の配列が規則的な場合は、光の回折及び干渉現象によって透明性を確保することが困難であり、基板上の突出部の配列が完全乱数分布である場合は、透明性が向上することができるが、撥水性や耐水性などの物性を均一に具現するのが困難である。これに対し、本発明のように複数の突出部を擬似乱数分布で配列し、突出部間の平均間隔を特定の範囲に調節する場合、透明性や撥水性、耐久性などの特性に全て優れた超撥水基板を具現することができる。
【0021】
一方、本発明において、上記突出部間の平均間隔は、可視光波長より大きいことが好ましい。これは、超撥水基板の耐久性を確保するためである。具体的には、上記突出部間の平均間隔は、0.4μmから100μm程度であり、例えば、1μmから50μm程度、5μmから30μm程度、0.4μmから10μm程度または10μmから100μm程度であることができる。
【0022】
上記突出部間の平均間隔が0.4μm未満である場合は、現在用いられているエッチング工程で形成することが困難になるのみならず、撥水特性が低下し、100μmを超過した場合は、突出部間の平均間隔が水滴の直径より大きくなるために所望する撥水特性を得ることができないという問題が発生する。
【0023】
また、本発明において、上記突出部は、隣接した突出部間の間隔が正規分布(normal distribution)を満たすように形成されることが好ましい。これは、隣接した突出部間の間隔が正規分布を満たす場合、撥水性及び透明性に全て優れた超撥水基板を得ることができるためである。このとき、上記正規分布の平均値は突出部間の平均間隔であり、上記正規分布の標準偏差値は平均値の1/20から1/4程度であることが好ましい。即ち、上記正規分布の標準偏差は、突出部間の平均間隔の1/20から1/4であることができる。これは、標準偏差値が上記数値範囲を満たすとき、基板の物性が特に優れるためである。
【0024】
上記複数の突出部の形状は、円筒型、円錐型、四角柱型などと多様であり、これに特に制限されない。
【0025】
また、上記突出部の直径は、擬似乱数分布(Pseudo random distribution)で配列された突出部間の平均間隔によって異なる。ここで、突出部の直径とは、基板と接触する突出部部分の直径のことである。例えば、円錐型の場合は下部円の直径、柱型の場合は下部円の直径を意味する。突出部の直径は、上記突出部間の平均間隔の5%から30%程度であり、例えば、10%から25%程度、15%から20%程度、20%から30%程度、または5%から20%程度であることができる。上記突出部の直径が上記突出部間の平均間隔の5%未満である場合は、超撥水基板上に形成されたパターンの耐久性が弱まり、30%を超過した場合は、ヘイズが増加して超撥水基板の透明性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0026】
また、上記突出部の高さは、擬似乱数分布(Pseudo random distribution)で配列された突出部間の平均間隔によって異なる。上記突出部の高さは、上記突出部間の平均間隔の15%から90%程度であり、例えば、20%から60%程度、30%から50%程度、40%から90%程度、または15%から40%程度であることができる。上記突出部の高さが上記突出部間の平均間隔の15%未満の場合は、超撥水特性を示すことが困難になり、100%を超過した場合は、超撥水基板上に形成されたパターンの耐久性が弱まるという問題が発生するおそれがある。
【0027】
上記のような構造を有する超撥水基板は、2以下のヘイズ値を有することが好ましい。これは、上記超撥水基板が適用される物品(例:自動車など)の透明度確保のためには、ヘイズ値が2以下であることが好ましいためである。本発明の明細書において、ヘイズは、入射光源が基板を通過して100%散乱された場合を100、まったく散乱されなかった場合を0とする。100から0の間の値は、入射光が基板を通過して散乱された比率値を示す。上記超撥水基板は、0.2から1.2のヘイズ値を有するか、または0.5から1.0のヘイズ値を有することができる。
【0028】
また、図2は、本発明の一具現例による超撥水基板の接触角を示す図面である。図2を参照すると、本発明の一具現例による超撥水基板は、140°以上の接触角を有することが好ましく、例えば、150°以上の接触角を有することが好ましい。これは、140°以上の接触角においては水が殆どにじまずに流れる超撥水現象が発現されるためである。ここで、接触角とは、超撥水基板上において停止状態の液体が基板と接する点から液面に向かって直線を引いたときの基板面に対する角度を言う。
【0029】
一方、本発明の他の具現例による超撥水基板は、上記複数の突出部を含む表面に疎水性(hydrophobic)物質のコーティング層をさらに含むことができる。上記疏水性物質のコーティング層は、基板の超撥水性を強化させるためのもので、上記疏水性物質としては、フッ素系化合物、シラン系化合物などが用いられることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PolyTetraFluoroEthylene、PTFE)、シロキサン(siloxane)などが用いられることができる。
【0030】
上述した本発明による超撥水基板は、自動車ガラス、ディスプレイ装置の透明基板、携帯電話の表示装置、カメラレンズなどの多様な分野に適用されることができる。
【0031】
また、本発明の超撥水基板は、突出部間の平均間隔が可視光波長より大きいため、相対的に長い波長帯域の光源を用いたフォトリソグラフィ工程やロールエンボス法、ロールツーロール印刷方法などを用いて突出部を形成することができるため、大面積の基板への適用が容易である。
【0032】
次に、本発明による超撥水基板の製造方法の一具現例について説明する。
【0033】
本発明による超撥水基板の製造方法は、a)フォトマスクの製造段階と、b)上記a)段階において製造されたフォトマスクを用いて基板表面に複数の突出部を形成する段階と、を含む。
【0034】
上記a)段階は、擬似乱数分布で配列された複数の光透過部(基板に陰性感光剤を塗布する場合)または光遮断部(基板に陽性感光剤を塗布する場合)を有するフォトマスクを製造することを特徴とする。これは、フォトマスクを用いて基板に形成される突出部を擬似乱数分布で配列させるためのもので、擬似乱数分布で突出部を配列すると、突出部のサイズ及び突出部間の間隔を調節することができることから、基板の透明度などの光学的特性を制御することができるためである。
【0035】
上記擬似乱数分布で配列された複数の光透過部または光遮断部は、当該技術分野において一般的に用いられる擬似乱数分布の形成方法、例えば、乱数発生関数またはボロノイダイアグラムなどを用いたパターン設計方法を用いて形成することができる。
【0036】
例えば、本発明による上記複数の光透過部または光遮断部は、所望する突出部の平均間隔及び/または標準偏差値を設定した後、乱数発生関数を用いて擬似乱数分布を満たす値を生成し、上記生成された値の位置に光透過部または光遮断部に該当するパターンを形成する方法によって形成されることができる。
【0037】
一方、図3にはボロノイダイアグラムを用いたパターン設計方法が示されている。図3を参照すると、上記ボロノイダイアグラムを用いたパターン設計方法は、所望する突出部の平均間隔を考慮して単位セル領域を形成する段階(図3の(A)参照)と、上記単位セルの重さ中心に光透過部または光遮断部に該当するパターンを形成する段階(図3の(B)参照)と、上記ボロノイダイアグラムパターンを除去する段階(図3の(C)参照)と、を含むことができる。
【0038】
また、上記光透過部または上記光遮断部間の平均間隔は、可視光波長より大きくすることが好ましい。具体的には、上記光透過部または光遮断部間の平均間隔は、0.4μmから100μm程度であり、例えば、1μmから50μm程度、5μmから30μm程度、0.4μmから10μm程度または10μmから100μm程度であることができる。上記光透過部または光遮断部間の平均間隔が0.4μm未満の場合は、現在用いられるフォトリソグラフィ方式を用いてパターンを形成することが困難であり、100μmを超過する場合、突出部間の平均間隔が水滴より大きくなって所望する撥水特性が得られないという問題が発生する可能性がある。
【0039】
なお、上記光透過部または光遮断部のパターン直径は、光透過部または光遮断部間の平均間隔によって異なる。具体的には、上記光透過部または光遮断部の直径は、上記光透過部または光遮断部間の平均間隔の5%から30%程度であり、例えば、10%から25%程度、15%から20%程度、20%から30%程度または5%から20%程度であることができる。上記光透過部または光遮断部の直径が上記光透過部または光遮断部間の平均間隔の5%未満の場合は、超撥水基板上に形成されるパターンの耐久性が弱まり、30%を超過した場合は、ヘイズが増加して超撥水基板の透明性が低下するという問題が発生するおそれがある。
【0040】
一方、上記b)段階は、基板表面に感光剤を塗布し、上記a)段階において製造されたフォトマスクを介入させて紫外線を照射することで、基板表面に複数の突出部を形成する方法によって行われることができる。
【0041】
ここで、上記感光剤としては、陰性感光剤、陽性感光剤が両方とも用いられることができる。例えば、Su−8感光剤、AZ 4230などを用いることができるが、これに限定されないことは当業者にとって自明な事実である。
【実施例】
【0042】
以下では、実施例を用いて本発明の一具現例による超撥水基板及びその製造方法について具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0043】
実施例
【0044】
(1)フォトマスクの製造
1)平均間隔を20μmに設定してボロノイダイアグラムの単位セルを形成し、そのボロノイダイアグラムパターンの単位セルの重さ中心に直径3μmの円状のパターンを設計した後、上記ボロノイダイアグラムパターンを除去することで、擬似乱数分布で配列された複数の円状のパターンを設計する。
2)クロム薄膜が形成され、上記クロム薄膜上にフォトレジストがコーティングされた石英材質の基板に上記設計されたパターンを転写し、転写されたフォトレジストを形状化する。
3)現像後に生成されたフォトレジストパターンを膜にしてクロム薄膜をエッチングした後、残ったフォトレジストを除去する。
4)フォトレジストの除去及び洗浄後、マスク上の欠陥有無を検査し、欠陥をリペアしてフォトマスクを完成させる。
【0045】
上述したように製造されたフォトマスクは、直径3μmの複数の円状の光透過部が形成されており、上記複数の光透過部は擬似乱数分布で配列され、上記光透過部間の平均間隔は20μmである。
【0046】
(2)基板に複数の突出部を製造
1)ポリメチルメタクリレート(Polymethyl Methacrylate、PMMA)の基板を用意し、上記基板の一表面にSu−8感光剤を塗布する。
2)(1)において製作されたフォトマスクを介入させて上記感光剤層に紫外線を照射してから現像する。現像後に露光されていない領域を除去することで、複数の突出部を含む超撥水基板を製造する。
【0047】
製造された超撥水基板の一表面に形成されている複数の突出部は、擬似乱数分布で配列されており、その突出部間の平均間隔が20μmであり、上記突出部の直径は3μm、高さは10μmである。
【0048】
(3)基板表面に疏水性物質をコーティング
上記製造された超撥水基板の表面にポリテトラフルオロエチレン(PolyTetraFluoroEthylene、PTFE)をコーティングする。
【0049】
比較例
【0050】
複数のダイヤモンド形状が一列に配列されたパターンを設計してフォトマスクのパターンを形成した点を除いては、実施例と同一の方法によって撥水基板を製造した。
【0051】
図4は、比較例による撥水基板の表面形状を示す図面である。図4を参照すると、比較例による撥水基板の一表面に形成されている複数の突出部は、ダイヤモンド形状で、2次元に一列に配列され、その突出部間の平均間隔が20μmであり、上記突出部の直径は3μm、高さは10μmである。
【0052】
上述した結果から、実施例による撥水基板は、その表面に形成された突出部間の平均間隔が可視光波長より大きいという点において、比較例による撥水基板と類似するが、突出部が擬似乱数分布で配列されている点において比較例による撥水基板と相違する。
【0053】
実験例
【0054】
(1)接触角の測定
Kruss dsa−100測定機を用いて超撥水基板の表面における接触角を測定した。
(2)ヘイズの測定
Murakami color research labのHR−100を用いて超撥水基板の透明度を測定した。
【0055】
実施例によって製造された超撥水基板は、その表面における接触角を測定した結果、154°と測定され、ヘイズ値は1.7だった。
【0056】
比較例によって製造された撥水基板は、その表面における接触角を測定した結果、151°であり、ヘイズ値は18.7だった。
【0057】
上述した結果から、実施例による撥水基板は、比較例による撥水基板に比べて接触角に優れているとともに、透明度も優れていることが確認できた。これは、比較例とは異なって実施例による突出部は、その間隔が可視光波長以上であるが、擬似乱数分布で配列されていることから、透明度を確保することができるためである。
【0058】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有するものには明らかである。
図1
図2
図3
図4