特許第5961912号(P5961912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961912
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】電極密度及び電極空隙率の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/207 20060101AFI20160721BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20160721BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G01N23/207
   H01M4/133
   H01M4/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-515966(P2015-515966)
(86)(22)【出願日】2014年4月29日
(65)【公表番号】特表2015-520860(P2015-520860A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】KR2014003801
(87)【国際公開番号】WO2014181998
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2014年9月10日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0052345
(32)【優先日】2013年5月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、エウン キュン
(72)【発明者】
【氏名】シン、スン ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、サン ウーク
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−069429(JP,A)
【文献】 特開2012−094354(JP,A)
【文献】 特開2001−351687(JP,A)
【文献】 特開2003−317708(JP,A)
【文献】 石井義人,外,高エネルギー密度対応リチウムイオン電池負極材,日立化成テクニカルレポート,2006年,No.47,P.29−32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
H01M 2/00−16/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X-線回折によって密度を求めようとする電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求める段階;及び
予め求めた電極密度及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の予め得られた相関関係式によって求めようとする電極密度を算出する段階
を含む電極密度の測定方法。
【請求項2】
前記電極活物質は、炭素系活物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の電極密度の測定方法。
【請求項3】
前記相関関係式において、電極密度と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピークの相関関係は、線形関係であることを特徴とする請求項に記載の電極密度の測定方法。
【請求項4】
前記電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピークは、I002/I100、I002/I110、I004/I100、I004/I110、I006/I100またはI006/I110であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電極密度の測定方法。
【請求項5】
前記相関関係式は、同一の電極活物質を含む少なくとも3つ以上の電極密度を下記数式(2)に従って求め、X-線回折により該電極の電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を測定し、下記数式(2)に従って求めた電極密度と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の相関関係を分析することで得られることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の電極密度の測定方法:
<数1>
D=M/(S×H) (2)
前記式において、
Dは電極密度を表し、
Sは電極面積であり、
Mは電極から電極基材を除いた電極活物質の質量であり、
Hは電極から電極基材を除いた電極活物質の厚さを表す。
【請求項6】
前記相関関係式において、電極密度は0.6から1.0の決定係数(R)を有することを特徴とする請求項に記載の電極密度の測定方法。
【請求項7】
X-線回折によって空隙率を求めようとする電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求める段階;及び
予め求めた電極空隙率及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の予め得られた相関関係式によって求めようとする電極空隙率を算出する段階
を含む電極空隙率の測定方法。
【請求項8】
前記電極活物質は、炭素系活物質を含むことを特徴とする請求項7に記載の電極空隙率の測定方法。
【請求項9】
前記相関関係式において、電極空隙率と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピークの相関関係は、線形関係であることを特徴とする請求項に記載の電極空隙率の測定方法。
【請求項10】
前記電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピークは、I002/I100、I002/I110、I004/I100、I004/I110、I006/I100またはI006/I110であることを特徴とする請求項7から9の何れか1項に記載の電極空隙率の測定方法。
【請求項11】
前記相関関係式は、同一の電極活物質を含む少なくとも3つ以上の電極空隙率を下記数式(3)に従って求め、X-線回折により該電極の電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を測定して下記数式(3)に従って求めた電極空隙率と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の相関関係を分析することで得られることを特徴とする請求項7から10の何れか1項に記載の電極空隙率の測定方法:
<数2>
P=(1-D)/T×100 (3)
前記式において、
Pは電極空隙率を表し、
Dは電極密度を表し、
Tは電極から電極基材を除いた電極活物質の真密度を表す。
【請求項12】
前記相関関係式において、電極空隙率は0.6から1.0の決定係数(R)を有することを特徴とする請求項11に記載の電極空隙率の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X-線回折(X-ray diffraction)を用いた電極密度及び電極空隙率の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報通信産業の発展によって電子機器が小型化、軽量化、薄型化及び携帯化されるにつれて、このような電子機器の電源として用いられる電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウム二次電池は、このような要求を最もよく満たすことのできる電池であって、現在、これに対する研究が活発に進められている。
【0003】
一般に、リチウム二次電池で用いられる電極等の電極密度または空隙率は、正極または負極活物質に溶媒、必要に応じてバインダ及び導電剤を混合及び撹拌してスラリーを製造した後、これを金属材料の正極または負極の電極基材上に塗布(コーティング)して乾燥させた後、適正な圧力で押圧した状態で得る。このとき、押圧する圧力が大きいほど、空隙率が減少しつつ電極密度は増加するようになる。
【0004】
前記リチウム二次電池において、電極密度及び電極空隙率は電池のエネルギー密度、電極の電気伝導度及びイオン伝導度を含む多様な電池特性と関連がある。したがって、適正電極密度及び電極空隙率は、所望の電池特性に応じて異なり得、電極の生産過程においてこの偏差を最小化することは非常に重要である。
【0005】
現在まで電極密度(density;D)を測定する方法は、必要時ごとに特定面積の電極を採取して電極の質量と厚さを測定し、それぞれの値で同一面積の電極基材、すなわち銅またはアルミニウムなどの金属の質量と厚さを差し引いた値を用いて測定した。
【0006】
また、電極空隙率(porosity;P)は前記特定面積の電極を採取して得た電極密度を用いて、1から前記電極密度を差し引いた後、この値を電極から電極基材を除いた密度で割った後、百分率に換算して得た。
【0007】
前記方法のような電極密度及び電極空隙率の測定は、次のような問題点がある。先ず、それぞれの電極に対する密度及び空隙率が必要時ごとに電極を採取しなければならないので、測定時ごとに電極の一部を破壊せねばならないため、費用面だけではなく時間的な面で消耗的であり、電極から電極基材を除いた質量及び厚さを測定するために所定の溶媒で電極基材を溶かした後、これを測定しなければならないので測定過程が複雑である。
【0008】
したがって、測定しようとする電極を破壊せずに誤差を減らし、且つ効率的に電極密度及び電極空隙率を測定する方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、X-線回折(X-ray diffraction)を用いて非破壊的な方法で電極密度及び空隙率を効率的に測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明はX-線回折によって密度を求めようとする電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求める段階;及び予め求めた電極密度及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の予め得られた相関関係式によって求めようとする電極密度を算出する段階を含む電極密度の測定方法を提供する。
【0011】
また、本発明は1)X-線回折によって空隙率を求めようとする電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求める段階;及び2)予め求めた電極空隙率及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の予め得られた相関関係式によって求めようとする電極空隙率を算出する段階を含む電極空隙率の測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電極密度及び電極空隙率の測定方法によれば、X-線回折(X-ray diffraction)を用いることにより、非破壊的な方式で効率的に電極密度及び電極空隙率を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書の図面等は本発明の好ましい実施例を例示するものであり、前述した発明の内容とともに、本発明の技術思想をさらに理解させる役割をするものなので、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
図1a】電極に塗布された電極活物質の構造を示すグラフである。
図1b】X線の回折原理を示すグラフである。
図1c】X-線回折により得た電極に塗布された電極活物質(例:黒鉛)のピークを示したグラフである。
図2a】本発明の一実施例によって電極活物質が電極の基材面と平行に配列された場合、X-線回折により得たピークを示すグラフである。
図2b】電極活物質が電極の基材面と垂直に配列された場合、X-線回折により得たピークを示すグラフである。
図3】本発明の一実施例による電極密度とI004/I110の相関関係を示すグラフである。
図4】本発明の一実施例による電極空隙率とI004/I110の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をより詳しく説明する。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的且つ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0016】
本発明の一実施例による電極密度の測定方法は、1)X-線回折(X-ray diffraction)によって求めようとする電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求める段階;及び2)予め求めた電極の密度、及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の予め得られた相関関係式によって求めようとする電極密度を算出する段階を含むことができる。
【0017】
また、本発明の一実施例による電極空隙率の測定方法は、1)X-線回折(X-ray diffraction)によって求めようとする電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求める段階;及び2)予め求めた電極空隙率、及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の予め得られた相関関係式によって求めようとする電極空隙率を算出する段階を含むことができる。
【0018】
本発明の電極密度及び電極空隙率の測定方法は、X-線回折を用いることによって測定時ごとに電極の一部を破壊する必要がないので、費用面だけでなく、努力面及び時間的な面において効率的且つ簡単に測定することができる。
【0019】
本発明の一実施例による電極密度及び電極空隙率の測定方法を、図面を参照して詳しく説明すれば次の通りである。
【0020】
図1(図1aから図1c)は、本発明の一実施例による電極のX-線回折の測定方法を示した図である。
【0021】
図1を検討してみれば、図1aは電極に塗布された電極活物質の構造を示し、図1bはX-線の回折原理を示し、図1cはX-線回折により得た電極に塗布された電極活物質のピークを示す。
【0022】
本発明の一実施例によれば、図1でのように電極活物質が塗布された電極に入射角に応じてX-線を照射して出る回折ピーク等の相対的な強さを求め、これを用いて電極密度及び電極空隙率を測定することができる。
【0023】
本発明の一実施例によれば、前記電極活物質は炭素系活物質を含むことができる。
【0024】
具体的に検討してみれば、図1aに示す通り、電極に塗布された電極活物質、例えば黒鉛粒子の構造はa軸に2.46Å、c軸に6.73Åの格子定数を有して6角板状構造をしている結晶構造を有する。
【0025】
前記結晶構造を有した黒鉛が塗布された電極に、図1bのようにX-線を照射することができ、この原理は次の通りである。すなわち、電極に塗布された黒鉛が間隔dを有して平行な格子面A、B、Cに配列されている際に、この結晶に波長λであるX-線を入射角θに照射すると、X-線は原子によって全方向に散乱される。散乱されたX-線のP'RP"が入射X-線波長の定数倍となったX-線は、干渉効果によって強くなり、この現象を回折現象という。前記回折現象が発生する場合、入射X-線の波長λ及び入射角θと格子面の間隔dとの間には、次のような関係が成立され、これをBragg式といい、これは下記数式(1)の通りである。:
<数1>
d=λ/2sinθ (1)
【0026】
また、図1cは、図1bのようにX-線回折により得たピーク(peaks)を示すものであって、黒鉛系電極活物質が塗布された電極に入射X-線の角度を連続的に変化させつつ、X-線回折の強度を記録すると、強度の異なる複数の回折ピークが現われ、例えば004ピーク、110ピークを得ることができる。
【0027】
具体的に検討してみれば、本発明の一実施例によれば、電極に塗布された電極活物質は、その配向方向によってX-線回折により得たピーク等の種類及び強さが別に表れ、これらの一例を図2に示した。
【0028】
例えば、黒鉛系電極活物質内の炭素環面等が、図2aに示しているように全て電極の基材面と平行に配列されていれば、002、004及び006ピーク等のような回折ピーク等のみが観察され得る。
【0029】
逆に、図2bに示しているように、黒鉛系電極活物質内の炭素環面等が電極の基材面に対して全て垂直に配向されていれば、100及び110ピークなどの回折ピーク等のみが観察され得る。
【0030】
一般にリチウムイオン電池に用いられる電極等の電極密度または電極空隙率は、電極基材上に電極活物質を含むスラリーをコーティングした後、溶媒を乾燥させた後、適正な圧力で押圧して得る。このとき、押圧する圧力が大きいほど、空隙率が減少しつつ電極密度は増加するようになる。
【0031】
本発明の一実施例によって、例えば黒鉛系電極活物質が塗布された電極の場合、電極を押圧する圧力が大きいほど、炭素環面の方向が基材面に対して垂直である割合(図2b)が減少し、炭素環面の方向が基材面に平行な割合(図2a)が増加するようになる。
【0032】
したがって、電極密度は図2aに示した電極活物質が電極の基材面と平行に配列された電極活物質の平行方向ピークの面積(I平行方向ピーク)に、図2bに示した電極活物質が電極の基材面と垂直に配列された電極活物質の垂直方向ピークの面積(I垂直方向ピーク)を割った値、すなわちI平行方向ピーク/I垂直方向ピークと高い相関関係を有し、I平行方向ピーク/I垂直方向ピークが小さいほど低い電極密度を有し、I平行方向ピーク/I垂直方向ピークが高いほど高い電極密度を有するので、電極密度と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピークの相関関係は、高い決定係数(coefficient of determination)を有する線形関係であり得る。
【0033】
一方、電極空隙率は、図2aに示した電極活物質が電極の基材面と平行に配列された電極活物質の平行方向ピークの面積(I平行方向ピーク)に、図2bに示した電極活物質が電極の基材面と垂直に配列された電極活物質の垂直方向ピークの面積(I垂直方向ピーク)を割った値、すなわちI平行方向ピーク/I垂直方向ピークと高い相関関係を有し、I平行方向ピーク/I垂直方向ピークが小さいほど高い電極空隙率を有し、I平行方向ピーク/I垂直方向ピークが高いほど低い電極空隙率を有するので、電極空隙率と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピークの相関関係は、高い決定係数を有する線形関係であり得る。
【0034】
本発明で用いられる用語「決定係数」とは、標本観測で推定した回帰線が実際に観測された標本をどれくらい説明しているか、すなわち回帰線が実際観測値をどれくらい代表してその適合性(goodness of fit)をみせているかを測定する係数であって、二つの変量の間、すなわちX値とY値との間に存在する相関関係を示す値として定義することができる。前記決定係数はRで表し、相関係数(correlation coefficient)(R)の二乗と同一であり、Rは0から1の間の値であって、R値が大きいほど高い相関関係を表すといえる。R=1の場合、全ての標本観測値が推定された回帰線上にのみあるとのことを意味し、したがって推定された回帰線が変数の間の関係を完全に説明していることを意味する。
【0035】
また、本発明で用いられる用語「相関係数」とは、二つの変数の間の直線的な関連程度を測定するための統計量であり得、直線とどれくらい近く点等が散らばっているかという線形関係に対する強度を測定する数値的測度として定義することができる。
【0036】
前記相関係数「R」で表し、前記Rは常に-1と1との間の値を取る。このとき、R>0であれば、xとyは正の相関関係にあるといえ、これは一方の変数が増加する際に他方の変数も増加する傾向がある場合である。また、R<0であれば、xとyは負の相関関係にあるといえ、これは一方の変数が増加する際に他方の変数は減少する傾向がある場合である。一方、R=0の場合、xとyは無相関といえる。
【0037】
また、Rの絶対値が大きいほどxとyとの間にさらに強い線形関係があり得、Rが+1、-1であれば、全ての測定値が完全に直線上に置かれる場合である。
【0038】
前記のような原理により、本発明は一実施例によって電極密度及び電極空隙率を測定することができる。
【0039】
先ず、本発明の一実施例による電極密度の測定方法において、前記段階1)は求めようとする電極活物質を含む電極に対し、X-線回折を用いて電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求める段階である。
【0040】
すなわち、それぞれの電極等をX-線回折を用いて電極活物質が電極の基材面と平行に配列された電極活物質の平行方向ピークの面積(I平行方向ピーク)、及び電極活物質が電極の基材面と垂直に配列された電極活物質の垂直方向ピークの面積(I垂直方向ピーク)を求め、I平行方向ピークをI垂直方向ピークで割った値、すなわちI平行方向ピーク/I垂直方向ピークを求めることができる。
【0041】
本発明の一実施例による電極密度の測定方法において、前記段階2)は予め求めた電極密度、及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の予め得られた相関関係式によって求めようとする電極密度を算出することができる。
【0042】
前記段階2)で予め求めた電極密度、及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の相関関係式は、同一の電極活物質を含む少なくとも3つ以上の電極密度を従来の方法によって求め(a)、X-線回折を用いて該電極の電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求め(b)、前記得られた(a)と(b)のデータを用いて電極密度と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の相関関係を分析することで得られる。
【0043】
また、本発明の一実施例による電極空隙率の測定方法において、前記段階1)は求めようとする電極活物質を含む電極に対し、X-線回折を用いて電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求める段階である。前記電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値は、前記電極密度の段階1)と同じ方法で求めることができる。
【0044】
本発明の一実施例による電極空隙率の測定方法において、前記段階2)は予め求めた電極空隙率及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の予め得られた相関関係式によって求めようとする電極空隙率を算出することができる。
【0045】
前記段階2)で予め求めた電極空隙率、及び電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の相関関係式は、同一の電極活物質を含む少なくとも3つ以上の電極空隙率を従来の方法に従って求め(a)、X-線回折を用いて該電極の電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値を求め(b)、前記得られた(a)と(b)のデータを用いて電極空隙率と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の相関関係を分析することで得られる。
【0046】
本発明の一実施例によれば、前記I平行方向ピーク/I垂直方向ピークは、I002/I100、I002/I110、I004/I100、I004/I110、I006/I100またはI006/I110であり得る。
【0047】
前記従来方法の電極密度(D)及び電極空隙率(P)は、当分野で通常用いられる方法を用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、前記相関関係式を得るための電極密度(D)は、下記数式(2)に従って算出され得、電極空隙率(P)は下記数式(3)に従って算出され得る;
<数2>
D=M/(S×H) (2)
前記式において、
Dは電極密度を表し、
Sは電極面積であり、
Mは電極から電極基材を除いた電極活物質の質量であり、
Hは電極から電極基材を除いた電極活物質の厚さを表す。
<数3>
P=(1-D)/T×100 (3)
前記式において、
Pは電極空隙率を表し、
Dは電極密度を表し、
Tは電極から電極基材を除いた電極活物質の真密度(true density)を表す。
【0048】
ここで、真密度(true density)とは、空隙のない電極活物質の固有の密度を意味する。
【0049】
本発明の一実施例による電極密度及び電極空隙率の測定方法によれば、前記数式(2)及び(3)に従って算出された電極密度と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の相関関係式、及び電極空隙率と電極活物質のI平行方向ピーク/I垂直方向ピーク値の間の相関関係式を予め求めて保存しておくと、求めようとする電極活物質が前記相関関係式で用いられた活物質と同一の電極活物質の場合、測定値ごとに電極の一部を破壊する必要がないので、X-線回折を用いることにより効率的且つ簡単に電極密度及び電極空隙率を測定することができる。
【0050】
本発明の一実施例によれば、前記電極に用いられる電極の基材、及び電極活物質は当分野で通常用いられる正極基材、負極基材、正極活物質または負極活物質であり得る。
【0051】
具体的に正極基材は、非制限的な例としてアルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、負極基材は非制限的な例としては銅、金、ニッケルまたは銅合金またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0052】
前記正極活物質は、マンガン系スピネル(spinel)活物質、リチウム金属酸化物またはこれらの混合物を含むことができる。さらに、前記リチウム金属酸化物はリチウム-コバルト系酸化物、リチウム-マンガン系酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物及びリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物からなる群より選択され得、より具体的にはLiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMnO、Li(NiaCobMnc)O(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1-YCoYO、LiCo1-YMnYO、LiNi1-YMnYO(ここで、0≦Y<1)、Li(NiaCobMnc)O(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-zNizO、LiMn2-zCozO(ここで、0<Z<2)であり得る。
【0053】
一方、前記負極活物質としては、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独に、または2種以上が混用されて用いられ得、好ましくは結晶質炭素として天然黒鉛と人造黒鉛のような黒鉛系(graphite)炭素であり得る。本発明は、一つの一実施例として炭素系活物質である黒鉛を例えて具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、通常用いられる正極及び負極活物質の全てに多様に適用され得る。
【0054】
本発明の一実施例によれば、前記相関関係式から得た電極密度の決定係数(R)は0.6から1.0であり得、好ましくは0.8から1.0、さらに好ましくは0.9から1.0である。
【0055】
また、本発明の一実施例によれば、前記相関関係式から得た電極空隙率の決定係数(R)は0.6から1.0であり得、好ましくは0.8から1.0、さらに好ましくは0.9から1.0である。もし、前記電極密度及び電極空隙率の決定係数(R)が前記範囲を外れる場合、求めようとする電極密度及び電極空隙率に対する誤差範囲が大きくなり、信頼度が低下することができる。
【0056】
前記のように、本発明の一実施例によってX-線回折を用いることによって、非破壊的な方法で電極密度及び空隙率を効率的に測定することができ、このような方法により得た電極密度及び電極空隙率の値はかなり正確性が高い。
【0057】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例はいくつかの形態に変形され得、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されるものに解釈されてはならない。本発明の実施例は当分野で平均的な知識を有した者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
[発明を実施するための形態]
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び実験例を挙げてさらに説明するが、本発明がこれら実施例及び実験例により制限されるものではない。
【0059】
<負極の製造>
[製造例1]
負極活物質として黒鉛、バインダとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンゴム(SBR)、導電剤としてカーボンブラック(carbon black)をそれぞれ96重量%、1重量%、2重量%及び1重量%とし、溶媒である水に添加して負極混合物スラリーを製造した。前記負極混合物スラリーを厚さが約21.2μmの負極基材である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を行って厚さが61.8μmの負極を製造した。
【0060】
[製造例2]
負極の厚さが54.2μmであることを除いては、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0061】
[製造例3]
負極の厚さが49.8μmであることを除いては、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0062】
[製造例4]
負極の厚さが49.1μmであることを除いては、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0063】
[製造例5]
負極の厚さが47.0μmであることを除いては、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0064】
[製造例6]
負極の厚さが52.0μmであることを除いては、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0065】
[製造例7]
負極の厚さが48.5μmであることを除いては、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0066】
[実施例1]
<負極の密度測定>
【0067】
1) 負極密度及び負極活物質のI004/I110の相関関係式を求める
製造例1から5で製造された負極で特定面積の負極を採取し、採取した負極の面積、質量及び厚さを測定しており、この結果を数式(2)に代入して負極密度(D)を求めた。これは下記表1の通りである:
【表1】
【0068】
採取した負極の面積は、全サンプルに対して1.4875cmとして同一であり、負極の厚さは銅の厚さ(21.2μm)を含む。
【0069】
X-線回折により製造例1から5で製造された負極で負極活物質のI004/I110を求めており、これは下記表2の通りである:
【表2】
【0070】
前記表1及び表2から得た負極密度、及びX-線回折による負極活物質のI004/I110を用いて相関関係式を得ており、これは図3の通りである。
【0071】
図3で分かるように、製造例1から5で製造された負極を用いた負極密度、及び負極活物質のI004/I110は高い決定係数(R)を有する線形関係をみせた。すなわち、図3の負極密度とI004/I110の相関関係グラフをみると、R=0.9889として1に近い数値を確認することができる。これは殆どの負極の密度測定値がほぼ回帰線上にあることを表し、非常に高い相関関係にあることをみせる。
【0072】
2) X-線回折を用いて密度を求めようとする負極活物質のI004/I110値を求める
求めようとする製造例6及び7で製造された負極で、黒鉛活物質のI004/I110値は下記表3の通りである。
【表3】
3) 負極密度の算出段階
【0073】
前記2)でのX-線回折を用いて黒鉛活物質のI004/I110値を相関関係式、すなわち図3のグラフに代入させて、製造例6及び7で製造された負極の密度を得ることができ、これは下記表4の通りである。
【表4】
【0074】
[比較例1]従来の電極密度の計算方法(数式(2))による製造例6及び7の負極密度の測定
製造例6から7で製造された負極で特定面積の負極を採取し、負極の面積、質量及び厚さを測定して負極密度(D)を求めており、これを下記表5に示した:
【表5】
【0075】
前記表4でX-線回折を用いて求めた負極密度と、前記表5で特定面積の負極を採取して求めた負極密度値は、かなり近接していることが分かり、これは相関関係式から算出した負極密度(g/cm)がかなり正確な値であることが分かる。
【0076】
[実施例2]
<負極の空隙率の測定>
1) 負極空隙率及び負極活物質のI004/I110の相関関係式を求める
【0077】
製造例1から5で製造された負極で特定面積の負極を採取し、採取した負極の質量及び厚さを測定して負極密度(D)を求めており、黒鉛の真密度(T)(2.11g/cm)を用いて数式(3)に代入して負極空隙率(P)を測定した。これは下記表6の通りである:
【表6】
【0078】
前記表6の負極空隙率及び前記実施例1の表2のX-線回折を介した負極活物質のI004/I110を用いて相関関係式を得た。
【0079】
図4で分かるように、製造例1から5で製造された負極を用いた負極空隙率及び負極活物質のI004/I110は、高い決定係数を有する線形関係をみせた。
【0080】
すなわち、図4の負極空隙率とI004/I110の相関関係グラフをみると、R=0.9875として1に近い数値を確認することができる。これは殆どの負極の空隙率測定値がほぼ回帰線上にあることを表し、非常に高い相関関係にあることをみせる。
【0081】
2) X-線回折を用いて空隙率を求めようとする活物質のI004/I110値を求める
製造例6及び7で製造された負極で黒鉛活物質のI004/I110値は、前記実施例1の表3に示した値を用いた。
【0082】
3) 負極空隙率の算出段階
前記2)でのX-線回折を用いて黒鉛活物質のI004/I110値を図4に代入させて製造例6及び7で製造された負極の空隙率(%)を得ることができ、これは下記表7の通りである。
【表7】
【0083】
[比較例2]従来の電極空隙率の計算方法(数式(3))による製造例6及び7の負極空隙率の測定
【0084】
製造例6から7で製造された負極で特定面積の負極を採取し、負極の面積、質量及び厚さを測定して表5のように負極密度(D)を求めており、これを用いて表8のように負極空隙率(P)を計算した。
【表8】
【0085】
前記表7でX-線回折を用いて求めた負極空隙率と、前記表8で特定面積の負極を採取して求めた負極空隙率値は、かなり近接していることが分かり、これは相関関係式から算出した負極空隙率(%)がかなり正確な値であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の電極密度及び電極空隙率の測定方法によれば、X-線回折(X-ray diffraction)を用いることによって、非破壊的な方式で誤差を減少しつつ効率的に電極密度及び空隙率を測定することができる。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3
図4