【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[評価方法]
<難燃性>
両面銅張り積層板の試験片を作製し、両面銅張り積層板の銅箔をエッチングにより取り除き、UL−94規格に基づく垂直燃焼試験(V法)に準じて、難燃性を評価した。V−0であれば難燃性が良好とし、V−1であれば難燃性が不良とした。
【0056】
<はんだ耐熱性>
両面銅張り積層板を50mm角の試験片を作製し、この試験片を288℃に温めたはんだ耐熱試験機に浮かべ、膨れ等の異常が確認されるまでの時間を測定した。評価は、「○分OK」は、○分まで膨れ等の異常がないことを示し、「○分NG」は、○分で膨れ等の異常が発生したことを示す。
【0057】
<ガラス転移点(Tg)>
ガラス転移点(Tg)は、TMA(熱機械分析装置)(マックサイエンス株式会社製TMA−4000)を用いて昇温速度5℃/minの条件で測定を行った。昇温、降温を2回繰り返し、2回目の昇温の熱膨張曲線の屈曲点の温度をTgと定義した。
【0058】
[
参考製造例1〜5]
<
参考製造例1>
エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:エピクロン N−673−70M)を143g(樹脂固形分:70質量%(100g))、硬化剤として、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:フェノライト KA−1163)を35g、2−フェニルイミダゾールを0.2g、リン含有硬化剤として、下記化学式(1)と(15)とで示されるリン含有フェノール樹脂(ダウケミカルカンパニー製、商品名:XZ−92741)を30g、リン化合物として、1,3−フェニレン−ビス−(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX200)を5g、メチルエチルケトン(MEK)を100g配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した。この後、フィラーとして水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名:CL−303)40gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え、更に1時間撹拌した。これにより、リン含有量を1.6質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスが得られた。
【0059】
【化19】
【0060】
【化20】
(式(15)における*は、化学式(1)のリン原子に直接結合する部位であることを示す。)
【0061】
<
参考製造例2>
1,3−フェニレン−ビス−(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX200)を使用せず、フィラーを添加しないこと以外は、
参考製造例1と同様の手順でエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
【0062】
<
参考製造例3>
フィラーとして、CL303の代わりに水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、商品名:HP−360)を添加したこと以外は
参考製造例1と同様の手順でエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
【0063】
<
参考製造例4>
フィラーとして、CL303の代わりにベーマイト(河合石灰工業株式会社製、商品名:BMT)を添加したこと以外は
参考製造例1と同様の手順でエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
【0064】
<
参考製造例5>
フィラーとして、CL303の代わりに破砕シリカ(福島窯業株式会社製、商品名:F05−30)を添加したこと以外は
参考製造例1と同様の手順でエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
【0065】
[製造例6〜8]
製造例6〜8では、リン含有硬化剤を合成し、合成したリン含有硬化剤を用いてエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。なお、リン含有硬化剤の180℃における溶融粘度及び軟化点は、以下の条件にて測定した。
180℃における溶融粘度:測定温度180℃において、ASTM D4287に準拠して、ICI/コーンプレート粘度計を用いて測定される粘度
軟化点:JIS K7234に準拠して、B&R法により測定される温度
【0066】
<製造例6>
(リン含有硬化剤の合成)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌機を取り付けたフラスコにフェノールノボラック樹脂192.4g(1.85モル)と、p−アニスアルデヒド68.0g(0.50モル)と、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下 HCAと略)108.0g(0.50モル)とを仕込み、180℃まで昇温し、180℃で8時間反応させた。
次いで、加熱減圧下で水を除去し、下記化学式(8)で表される構造単位Aと化学式(9)で表される構造単位Bとを有するフェノール樹脂(リン含有硬化剤Xという)355gを得た。リン含有硬化剤Xの軟化点を上述の方法で測定したところ、125℃であった。また、180℃における溶融粘度は、13dPa・sであった。また、水酸基当量は、190g/eq、リン含有量4.2質量%であった。
【0067】
【化21】
【0068】
【化22】
【0069】
(エポキシ樹脂組成物ワニスの作製)
続いて、リン含有硬化剤Xをリン含有硬化剤として用いて、エポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社、商品名:N−673−70M)を100g、硬化剤として、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:フェライト KA−1163)を20g、2−フェニルイミダゾールを0.2g、リン含有硬化剤として、リン含有硬化剤Xを60g、リン化合物として、1,3−フェニレン−ビス−(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX200)を20g、メチルエチルケトン(MEK)を80g配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した。この後、フィラーとして、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名:CL303)30gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え、更に1時間撹拌した。これにより、リン含有量を1.4質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスが得られた。
【0070】
<製造例7>
(リン含有硬化剤の合成)
製造例6において使用したフェノールノボラック樹脂の代わりに、ビスフェノールAノボラック樹脂330.4g(2.80モル)を使用した以外は、製造例6と同様にして反応を行った。下記化学式(10)で表される構造単位Cと化学式(11)で表される構造単位Dとを有するフェノール樹脂(リン含有硬化剤Yという)490gを得た。リン含有硬化剤Yの軟化点は、139℃(B&R法)であった。また、リン含有硬化剤Yの溶融粘度は、65dPa・sであった。また、水酸基当量は、232g/eq、リン含有量3.1質量%であった。
【0071】
【化23】
【0072】
【化24】
【0073】
(エポキシ樹脂組成物ワニスの作製)
続いて、リン含有硬化剤Yをリン含有硬化剤として用いて、エポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社、商品名:N−673−70M)を100g、硬化剤として、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:フェライト KA−1163)を25g、2−フェニルイミダゾールを0.2g、リン含有硬化剤として、リン含有硬化剤Yを60g、リン化合物として、1,3−フェニレン−ビス−(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX200)を20g、メチルエチルケトン(MEK)を80g配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した。この後、フィラーとして、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名:CL303)30gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え、更に1時間撹拌した。これにより、リン含有量を1.3質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスが得られた。
【0074】
<製造例8>
(リン含有硬化剤の合成)
製造例6において使用したフェノールノボラック樹脂の代わりに、フェノールアラルキル樹脂392.9g(2.35モル)を使用した以外は、製造例6と同様にして反応を行った。下記化学式(12)で表される構造単位Eと化学式(13)で表される構造単位Fとを有するフェノール樹脂(リン含有硬化剤Zという)550gを得た。リン含有硬化剤Zの軟化点は、102℃(B&R法)であった。また、リン含有硬化剤Zの溶融粘度は、2.5dPa・sであった。また、水酸基当量は、232g/eq、リン含有量2.7質量%であった。
【0075】
【化25】
【0076】
【化26】
【0077】
(エポキシ樹脂組成物ワニスの作製)
続いて、リン含有硬化剤Zをリン含有硬化剤として用いて、エポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社、商品名:N−673−70M)を100g、硬化剤として、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:フェライト KA−1163)を25g、2−フェニルイミダゾールを0.2g、リン含有硬化剤として、リン含有硬化剤Zを60g、リン化合物として、1,3−フェニレン−ビス−(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX200)を20g、メチルエチルケトン(MEK)を80g配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した。この後、フィラーとして、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名:CL303)30gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え、更に1時間撹拌した。これにより、リン含有量を1.3質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスが得られた。
【0078】
[比較製造例1〜3]
(比較製造例1)
エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:エピクロン N−673−70M)を143g(樹脂固形分:70質量%(100g))、硬化剤として、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:フェノライト KA−1163)を35g、2−フェニルイミダゾールを0.2g、リン化合物として、1,3−フェニレン−ビス−(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX200)を40g、メチルエチルケトンを100g配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した。この後、フィラーとして、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名:CL−303)40gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え、更に1時間撹拌した。これにより、リン含有量を1.4質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスが得られた。
【0079】
(比較製造例2)
エポキシ樹脂として、リン含有エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:FX−298)を100g、硬化剤として、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:フェノライト KA−1163)を35g、2−フェニルイミダゾールを0.2g、リン化合物として、1,3−フェニレン−ビス−(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX200)を5g、メチルエチルケトンを100g配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した。この後、フィラーとして、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名:CL−303)40gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え、更に1時間撹拌した。これにより、リン含有量を1.5質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスが得られた。
【0080】
(比較製造例3)
エポキシ樹脂として、リン含有エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:FX−298)を100g、硬化剤として、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:フェノライト KA−1163)を20g、及びジシアンジアミド(DICY)を5g、2−フェニルイミダゾールを0.2g、リン化合物として、1,3−フェニレン−ビス−(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX200)を5g、メチルエチルケトンを70g、ジメチルホルムアミド(DMF)を30g配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した。この後、フィラーとして、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名:CL−303)40gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え、更に1時間撹拌した。これにより、リン含有量を1.5質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスが得られた。
【0081】
表1に
参考製造例1〜5,比較製造例1〜3のエポキシ樹脂組成物ワニスの配合表を示す。表2に製造例6〜8のエポキシ樹脂ワニスの配合表を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
[プリプレグ及び銅張り積層板の作製]
<
参考例1〜5>
参考製造例1〜5で作製したエポキシ樹脂組成物ワニスを厚さ:0.2mmのガラス布(旭シュエーベル株式会社製、商品名:7629)に含浸後、120℃、20分間加熱、乾燥しプリプレグを得た。
プリプレグの両側に、厚さ:18μmの電解銅箔:F2−WS−18(古河電気工業株式会社製、商品名)を接着面がプリプレグと合わさるように重ね、180℃、30分間、4MPaの真空プレス条件で両面銅張り積層板を作製した。
<実施例6〜8>
製造例6〜8で作成したエポキシ樹脂組成物ワニスを用いて、上述と同様の方法によりプリプレグを得た。また、両面銅張り積層板を作成した。
<比較例1〜3>
比較製造例1〜3で作成したエポキシ樹脂組成物ワニスを用いて、上述と同様の方法によりプリプレグを得た。また、両面銅張り積層板を作成した。
【0085】
[結果]
上記方法にて得られた結果を表3に示した。
【0086】
【表3】
【0087】
上記化学式(1)で示されるリン含有硬化剤を用いた実施例
6〜8の積層板は、難燃性を有し、耐熱性が高く、また、Tgが高いことが判った。また、従来の潜在性硬化剤であるジシアンジアミド(DICY)を用いた比較例3と比較して、実施例
6〜8の積層板は、十分な反応性を示す。また、はんだ耐熱性に優れ、Tgも高く耐熱性に優れることが判った。
実施例
6〜8では、従来の硬化剤であるジシアンジアミド(DICY)を用いた場合と比べて、ジシアンジアミド(DICY)を溶解させるために、沸点が高く吸湿性のあるジメチルホルムアミド(DMF)を用いなくても、リン含有硬化剤を汎用溶媒であるメチルエチルケトン(MEK)に溶解させることができる。一方、上記化学式(1)で示されるリン含有硬化剤を用いない比較例1〜3は、はんだ耐熱性に劣り、Tgが低く耐熱性に劣る。