(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
官能基として1分子中に水酸基を2個以上有するポリエステルポリオール(A)とイソシアネート化合物(B)を含有するガスバリア性硬化物用樹脂組成物を硬化させてなるガスバリア性硬化物であって、
ポリエステルポリオール(A)の末端水酸基を除く残基のパーマコール値が44〜60の範囲であり、
ガスバリア性硬化物用樹脂組成物の1モル当たりのパーマコール値が70以上であり、
ポリエステルポリオール(A)を構成するグリコール成分として、ビスヒドロキシエチルベンゼンを使用することを特徴とするガスバリア性硬化物。
ポリエステルポリオール(A)を構成するグリコール成分として1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、多価カルボン酸成分としてフタル酸を用いた水酸基価が80以上であるガスバリア性硬化物用樹脂組成物に、メタキシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体を必須成分として使用して得られる請求項1又は2に記載のガスバリア性硬化物。
ポリエステルポリオール(A)を構成するグリコール成分としてエチレングリコール、多価カルボン酸成分として1,2−ナフタレンジカルボン酸を用いた水酸基価が80以上であるガスバリア性硬化物用樹脂組成物に、メタキシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体を必須成分として使用して得られる請求項1〜3の何れかに記載のガスバリア性硬化物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(パーマコール値)
本発明において使用するポリエステルポリオール(A)の末端水酸基を除く残基の1モル当りのパーマコール値は44〜60の範囲である。中でも44〜55の範囲が望ましい。ポリエステルポリオールの末端水酸基を除く残基の1モル当りのパーマコール値が44を下回ると酸素ガスバリア性が発現しにくく、また60を超えると、汎用溶剤である酢酸エチルに溶解しにくくなる傾向があるため好ましくない。
水酸基が2個以上有するポリエステルポリオール化合物の末端水酸基の残基1モルあたりのパーマコール値は、非特許文献1及び2によれば、表1に記載のポリマーセグメントと対応するパーマコール値から計算できる。
【0014】
例えば、エチレングリコールフタル酸エステル(化1、分子量600)の、末端水酸基を除く残基の1モル当たりのパーマコール値は次のように計算する。
【0019】
であるから、平均繰り返し数nはn=2.76より、P=53.3となる。
【0020】
ここで、パーマコール値Pは凝集エネルギー密度δと自由体積fVとの間に以下の式(a)の関係が成り立つとされている。
【0022】
パーマコール値Pの数値が高くなるとガスバリア性が発現しやすいことから、ガスバリア性を発現する材料は、凝集エネルギー密度δを高めるか、自由体積分率fVを小さくする必要がある。しかしながら凝集エネルギー密度が高い材料は高極性となることから、溶剤への溶解性を損ねてしまう。
本発明者らは、詳細な検討を加えることによって、パーマコール値が44〜60の範囲にあるポリエステルポリオールは酢酸エチルへの溶解性を損ねることなく、バリア性発現に有利であることを見出した。
【0023】
一方、反応によって得られた硬化物については、パーマコールPが大きいほど有利であるが、表1にあるようにウレタン基、ウレア基といったイソシアネート基が硬化の際に形成する官能基についてパーマコール値がなく、これまでパーマコール値と酸素透過率との関係について検討がなされてこなかった。本発明者らは鋭意検討した結果、ウレタン基のパーマコール値をwet時のアミド基のパーマコール値である260cal/ccとして、ウレア基のパーマコール値を520cal/ccとして後述の計算方法で計算すると、ポリエステルポリウレタン系においてパーマコールと酸素透過率との間に良好な相関関係が得られることを見出し、本発明に至った。
【0024】
(パーマコールが44〜60の範囲にあるポリエステルポリオール)
本発明において使用するポリエステルポリオールとしては、2官能以上の多価アルコールと2官能以上の多塩基酸との縮合反応によって得られるもので、末端水酸基を除く残基の1モル当りのパーマコール値は44〜60の範囲であればよい。
2官能以上の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン及び上記多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビフェノール等多価フェノーのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
中でも、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,6−ジヒドロキシナフタレンエチレンオキシド付加物等が好ましい。
【0025】
2官能以上の多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、ビフェニレンジカルボン酸、ジフェン酸トリメリット酸、ピロメリット酸及び上記芳香族多塩基酸の酸無水物、フマル酸、マレイン酸、琥珀酸等、脂肪族多塩基酸が挙げられる。
中でも、フタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸が好ましい。
【0026】
ポリエステル成分の原料であるアシル基がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物は、骨格が非対称構造である。従って、得られるポリエステルの分子鎖の回転抑制が生じると推定され、これにより酸素バリア性に優れると推定している。また、この非対称構造に起因して基材密着性を阻害する結晶性が低いために十分な基材密着性が付与され、接着力と酸素バリア性に優れると推定される。更にドライラミネート接着剤として用いる場合には必須である溶媒溶解性も高いことで取扱い性にも優れる特徴を持つ。
【0027】
中でも、多価アルコールとしてエチレングリコールを用い、多塩基酸としてフタル酸を用いたポリエステルポリオール、多価アルコールとして1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼンを用い、多塩基酸としてフタル酸を用いたポリエステルポリオール、多価アルコールとしてエチレングリコールを用い、多塩基酸として1,2−ナフタレンジカルボン酸を用いたポリエステルポリオール、多価アルコールとしてエチレングリコールを用い、多塩基酸としてジフェン酸を用いたポリエステルポリオールが接着性、酢酸エチルへの溶解性、バリア性とのバランスに優れ好ましい
【0028】
(非晶性ポリエステル)
本発明に用いるポリエステルは非晶性であることが望ましい。非晶性であることにより、硬化性樹脂組成物として柔軟性を保ち、接着性樹脂として必要な接着性発現に有利である。
このような非晶性ポリエステルとするには、ポリマー主鎖を軸として非対称構造をとりやすい構造を導入する、もしくは結晶性ポリエステル同士を高温で混ぜ合わせて用いる方法がある。前者の例としては、ポリエステル原料の多塩基酸としてベンゼンジカルボン酸を用いる場合に、テレフタル酸ではなくフタル酸を用いる等の方法が挙げられる。多価アルコールに分岐を有する原料例えばエチレングリコールの代わりに1,2−プロパンジオールを用いる等の方法が挙げられる。後者の例としてはテレフタル酸とイソフタル酸を併用する等の方法が挙げられる。
【0029】
(ポリエステルポリオールの水酸基価)
本発明に用いるポリエステルポリオールは末端の水酸基とイソシアネートとの反応によって樹脂硬化物となる。この反応性基の量は水酸基価によって表される。水酸基価はJIS−K0070に記載の水酸基価測定方法にて得られる水酸基価ZmgKOH/gとして
以下の式(b)によって計算される。
【0031】
本発明に用いる、ポリエステルポリオールの水酸基価は80以上であること好ましく、更に好ましくは100以上であることが好ましい。水酸基価が80を下回ると、硬化性樹脂組成物で形成されるウレタン、ウレア結合基濃度が低下し、酸素バリア性を低下させてしまうおそれがある。
【0032】
パーマコール値が44〜60の範囲にあるポリエステルポリオールとイソシアネート化合物を反応させて得られるガスバリア性ポリエステルウレタン接着剤が、酸素バリア性とドライラミネート接着性とを担保できる理由としては次のように推定している。
【0033】
前述のように、パーマコール値の数値が大きくし、ガスバリア性を発現させるためには
凝集エネルギー密度を高めるような高極性基導入する必要がある。イソシアネートは水酸基と反応するとカルバメート基をイソシアネート2モルと水1モルとが反応すると、尿素結合を形成するため、硬化反応によって形成されるウレタン結合、尿素結合が硬化樹脂組成物を高極性化させることが出来る。その凝集エネルギーはアミド結合に匹敵する。組成中の硬化剤の割合は反応させる水酸基価と比例するため、パーマコール値が44〜60の範囲にあるポリエステルポリオールの水酸基価が80以上で、この効果が最大限に発揮される。
【0034】
一方、接着性には高架橋密度と柔軟性が求められるが、ポリエステルポリオールが柔軟性有する非晶性ポリエステルであるため、適度な柔軟性を残しつつ、接着性を付与で出来ているものと推測している。このように、パーマコール値が44〜60の範囲にある水酸基価が80以上である非晶ポリエステルポリオールとイソシアネートとの硬化によって高極性であり且つ適度な柔軟性を有することにより硬化樹脂として酸素バリア性とドライラミネート接着性とを担保できると推定される。
【0035】
本発明のポリエステルポリオールは、公知のポリエステルの製造方法により得ることができる。具体的には、触媒共存下、反応温度200〜220℃で、生成する水を系外へ取り除きながら反応させる製造方法にて合成出来る。
具体的な一例を示すと、原材料として用いるイソシアヌル環を有するトリオールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物と、多価アルコール成分を一括して仕込んだ後、攪拌混合しながら昇温し、脱水縮合反応させる。JIS−K0070に記載の酸価測定法にて1mgKOH/g以下、同じくJIS−K0070に記載の水酸基価測定方法にて得られる水酸基価ZmgKOH/gが下記式(b)の右辺の数値(mgKOH/g)の±5%以内に入るまで反応を継続することで目的とするポリエステルポリオールを得ることができる。
【0036】
或いは、各々の原料を多段階に分けて反応させてもよい。また、反応温度にて揮発してしまったジオール成分を追加しながら、水酸基価を±5%以内に入るように調製してもよい。
【0037】
反応に用いられる触媒としては、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等のチタン系触媒、テトラ−ブチル−ジルコネート等のジルコニア系触媒等の酸触媒が挙げられる。エステル反応に対する活性が高い、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等の上記チタン系触媒と上記ジルコニア触媒を組み合わせて用いることが好ましい。前記触媒量は、使用する反応原料全重量に対して1〜1000ppm用いられ、より好ましくは10〜100ppmである。1ppmを下回ると触媒としての効果が得られにくく、1000ppmを上回ると後のウレタン化の反応を阻害する傾向がある。
【0038】
(接着剤 硬化剤)
本発明で使用する硬化剤は、前記ポリエステルポリオールの水酸基と反応しうる硬化剤であれば特に限定はなく、ポリイソシアネートやエポキシ化合物等の公知の硬化剤を使用できる。中でも、接着性や耐レトルト性の観点から、ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0039】
ポリイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物及びそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。
【0040】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0041】
中でも、硬化剤が前記ポリイソシアネートであることが好ましく、前記メタキシレン骨格を含むポリイソシアネートであると、ウレタン基の水素結合だけでなく芳香環同士のπ−πスタッキングによって酸素バリア性を向上させることが出来るという理由から好ましい。
前記メタキシレン骨格を含むポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネートの3量体、アミンとの反応により合成されるビューレット体、アルコールと反応してなるアダクト体があるが、3量体、ビューレット体と比べ、ポリイソシアネートのドライラミネート接着剤に用いられる有機溶剤への溶解性が得られやすいという理由からアダクト体がより好ましい。
アダクト体としては、上記の低分子活性水素化合物の中から適宜選択されるアルコールと反応してなるアダクト体が使用できるが、中でも、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンのエチレンオキシド付加物とのアダクト体が特に好ましい。
【0042】
前記ポリエステルポリオール化合物と前記硬化剤とは、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール化合物と硬化剤との割合がイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール化合物の水酸基と硬化剤の反応成分とが1/1〜1/5(当量比)となるように配合することが好ましく、より好ましくは 1/1〜1/3である。該範囲を超えて硬化剤成分が過剰な場合、余剰な硬化剤成分が残留することで接着後に接着層からブリードアウトするおそれがあり、一方硬化剤成分が不足のばあいには接着強度不足のおそれがある。
【0043】
前記硬化剤は、その種類に応じて選択された公知の硬化剤或いは促進剤を併用することもできる。例えば接着促進剤としては、加水分解性アルコキシシラン化合物等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂等が挙げられる。シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤は、各種フィルム材料に対する接着剤を向上させる意味でも好ましい。
【0044】
(イソシアネート、ポリイソシアネートのパーマコール値)
本願において、ポリエステルポリオールと反応してなる硬化剤の、硬化樹脂構成成分としてのパーマコール値は、イソシアネート基をカルバメート基に変換して計算する。
例えば、メタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなるポリイソシアネート(化2)の場合、
【0046】
ポリエステルポリオールと反応することにより、以下の構造(化3)へと変化し、硬化膜を形成する。
【0048】
メタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなるポリイソシアネート1モルに相当する上記化学構造(分子量749.74)を有する化学部位のパーマコール値は、表3の値をもとに計算する。
【0050】
上記と同様に計算して、P= 88.3と計算される。
【0051】
同様にして、メタ−キシリレンジイソシアネートの場合も、ポリエステルポリオールと反応することにより、以下の構造(化4)へと変化し、硬化膜を形成するので、
【0053】
メタ−キシリレンジイソシアネート1モルに相当する上記化学構造(分子量222.20)を有する化学部位のパーマコール値は、表4の値をもとに計算し、P= 122と計算される。
【0055】
本願において、ポリエステルポリオールの水酸基の等量よりも過剰に加えられた分の硬化剤の硬化樹脂構成成分としてのパーマコール値はイソシアネート基がウレア基に変換されたとして計算する。
ウレア基は2モルのイソシアネートと大気中に存在する1モルの水とが反応し、1モルのウレアを形成することから、1モルのポリイソシアネートは0.5モルのポリイソシアネートと0.5モルのポリイソシアネートの末端NCOを除く残基へと変化する。
【0056】
例えば、メタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなるポリイソシアネート1モルは、末端イソシアネート基がウレア基に変化した、メタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなるポリイソシアネート1モルに相当する下記化学構造(化5)(分子量746.79)0.5モルと、
【0058】
末端イソシアネート基を除いた、メタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなるポリイソシアネート1モルに相当する上記化学構造(化6)(分子量572.67)0.5モルへと変化し、硬化膜を形成すると考える。
【0060】
過剰に加えられたメタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなるポリイソシアネート1モルに相当するパーマコール値は、ウレア基へ変化した部位については、表5の値をもとに計算し、P=125.5と計算される。
【0062】
一方、末端イソシアネート基を除いた、メタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなるポリイソシアネート1モルに相当する部位については、表6の値をもとに、P= 59.7と計算される。
【0064】
よって、ポリエステルポリオールの水酸基の等量よりも過剰に加えられた、メタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなるポリイソシアネート1モルの硬化樹脂構成成分としてのパーマコール値Pは、
P=0.5×125,5+0.5×59.7=92.6
となる。
【0065】
同様にして、メタキシリレンジイソシアネート1モルは、末端イソシアネート基の一方がウレア基に、もう一方の末端イソシアネート基を除いた上記の構造(化7)1モルへと変化したと考え、表7の値をもとに、P= 152.5と計算される。
【0068】
本願において硬化性樹脂組成物の1モル当りのパーマコール値は本願の接着剤樹脂を構成する主剤であるポリエステルポリオールから末端水酸基を除く残基のモル数、硬化剤が硬化反応によって変化したと考えられる化学構造を有する化合物のモル数から算出される。
【0069】
【数4】
ここで、Niは残気、硬化剤のモル数
Piは残基、硬化剤夫々に与えられたパーマコール値
である。
【0070】
例えば、パーマコール値が53.3である分子量600のポリエステルをメタ−キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとからなる3官能ポリイソシアネートと等量で反応させてなる硬化物1モル当りのパーマコール値は、
(1×53.3+2/3×88.3)/(1+2/3) =68.6と計算される。
【0071】
硬化性樹脂組成物の1モル当たりのパーマコール値は70以上であり、望ましくは80以上である。硬化性樹脂組成物の1モル当たりのパーマコール値が70を下回ると、樹脂硬化物のバリア性が発現しにくく好ましくない。
【0072】
(接着剤 その他の成分)
本発明の接着剤は、ガスバリア性を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤等が例示できる。膨潤性無機層状化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩( フィロケイ酸塩鉱物等) 、カオリナイト族粘土鉱物( ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等) 、アンチゴライト族粘土鉱物( アンチゴライト、クリソタイル等) 、スメクタイト族粘土鉱物( モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等) 、バーミキュライト族粘土鉱物( バーミキュライト等) 、雲母又はマイカ族粘土鉱物( 白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。膨潤性無機層状化合物は単独でまたは二種以上組み合わせて使用される。
【0073】
また、接着剤層の耐酸性を向上させる方法として公知の酸無水物を併用することもできる。酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0074】
また、必要に応じて、更に酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0075】
また、塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の総量100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲が好ましい。
【0076】
(接着剤の形態)
本発明の接着剤は、溶剤型又は無溶剤型のいずれの形態であってもよい。溶剤型の場合、溶剤はポリエステルポリオール及び硬化剤の製造時に反応媒体として使用され、更に塗装時に希釈剤として使用される。使用できる溶剤としては例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。これらのうち通常は酢酸エチルやメチルエチルケトンを使用するのが好ましい。
【0077】
本発明の接着剤は、基材フィルム等に塗工して使用することができる。塗工方法としては特に限定はなく公知の方法で行えばよい。例えば粘度が調整できる溶剤型の場合は、グラビアロール塗工方式等で塗布することが多い。また無溶剤型で、室温での粘度が高くグラビアロール塗工が適さない場合は、加温しながらロールコーターで塗工することもできる。ロールコーターを使用する場合は、本発明の接着剤の粘度が500〜2500mPa・s程度となるように室温〜120℃程度まで加熱した状態で、塗工することが好ましい。
【0078】
本発明の接着剤は、酸素バリア性接着剤として、ポリマー、紙、金属などに対し、酸素バリア性を必要とする各種用途の接着剤として使用できる。以下具体的用途の1つとしてフィルムラミネート用接着剤について説明する。
【0079】
本発明の接着剤は、フィルムラミネート用接着剤として使用できる。ラミネートされた積層フィルムは、酸素バリア性に優れるため、酸素バリア性フィルムとして使用できる。
本発明で使用する積層用のフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは延伸処理を施してあってもよい。延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸或いは逐次二軸延伸を行うことが一般的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的にはロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
また、フィルム表面には、膜切れやはじきなどの欠陥のない接着層が形成されるように必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0080】
前記熱可塑性樹脂フィルムの一方に本発明の接着剤を塗工後、もう一方の熱可塑性樹脂フィルムを重ねてラミネーションにより貼り合わせることで、本発明の酸素バリア性フィルムが得られる。ラミネーション方法には、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出しラミネーション等公知のラミネーションを用いることが可能である。
ドライラミネーション方法は、具体的には、基材フィルムの一方に本発明の接着剤をグラビアロール方式で塗工後、もう一方の基材フィルムを重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。ラミネートロールの温度は室温〜60℃程度が好ましい。
またノンソルベントラミネーションは基材フィルムに予め室温〜120℃程度に加熱しておいた本発明の接着剤を室温〜120℃程度に加熱したロールコーターなどのロールにより塗布後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。ラミネート圧力は、10〜300kg/cm
2程度が好ましい。
押出しラミネート法の場合には、基材フィルムに接着補助剤(アンカーコート剤)として本発明の接着剤の有機溶剤溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、室温〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。溶融させるポリマー材料としては低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0081】
また、本発明の酸素バリア性フィルムは、作成後エージングを行うことが好ましい。エージング条件は、硬化剤としてポリイソシアネートを使用する場合であれば、室温〜80℃で、12〜240時間の間であり、この間に、ポリエステルポリオールと硬化剤とが反応し、接着強度が生じる。
【0082】
本発明では、更に高いバリア機能を付与するために、必要に応じてアルミニウム等の金属、或いはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムを併用してもよい。
【0083】
本発明の接着剤は、同種または異種の複数の樹脂フィルムを接着してなる積層フィルム用の接着剤として好ましく使用できる。樹脂フィルムは、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム、或いは、例えばPET、ポリアミド、OPPから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、OPP、PET、ポリアミドから選ばれた中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、CPP、LLDPEから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した3層からなる複合フィルム、更に、例えばOPP、PET、ポリアミドから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、PET、ナイロンから選ばれた第1中間層を形成する熱可塑製フィルムとPET、ポリアミドから選ばれた第2中間層を形成する熱可塑製フィルム、LLDPE、CPPから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した4層からなる複合フィルムは、酸素及び水蒸気バリア性フィルムとして、食品包装材として好ましく使用できる。このように本発明の接着剤の用途はPET/CPPフィルムには限定されずに広く用いることができる。
【0084】
本発明の接着剤は高い酸素バリア性を有する事を特徴としていることから、該接着剤により形成されるラミネートフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのガスバリア性が発現する。また、これら従来のガスバリア性材料とシーラント材料とを貼り合せる接着剤として併用することにより、得られるフィルムのガスバリア性を著しく向上させることもできる。
【実施例】
【0085】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。例中断りのない限り、「部」「%」は重量基準である。
【0086】
(製造例1)エチレングリコールとオルトフタル酸からなる数平均分子量600のポリエステルポリオール 「EGoPA Mn600」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール747.31部、無水フタル酸1252.70部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600のポリエステルポリオール「EGoPA Mn600」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n=2.80末端水酸基を除く残基のパーマコール値は53.3である。水酸基価は187.0であった。
【0087】
(製造例2)エチレングリコールと1,2−ナフタレンジカルボン酸無水からなるポリエステルポリオール 「EGoNA Mn 600」製造方法
製造例1における無水フタル酸148.1部を198.17部に、エチレングリコール747.31部を94.52部に変えた以外は製造例1と同様にして、数平均分子量600のポリエステルポリオール 「EGoNA Mn 600」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数 n=2.22、末端水酸基を除く残基のパーマコール値は53.3である。
水酸基価は187.0であった。
【0088】
(製造例3)エチレングリコールとジフェン酸からなるポリエステルポリオール 「EGDPA Mn 600」製造方法
製造例1における無水フタル酸148.1部をジフェン酸242.23部に、エチレングリコール747.31部を97.67部に変えた以外は製造例1と同様にして、数平均分子量600のポリエステルポリオール 「EGDPA Mn 600」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数 n=2.00、末端水酸基を除く残基のパーマコール値は54.4である。水酸基価は187.0であった。
【0089】
(製造例4)1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼンとオルトフタル酸からなる数平均分子量600のポリエステルポリオール 「1,3−BHEBoPA Mn600」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン378.22部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600のポリエステルポリオール「1,3−BHEBoPA Mn600」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n = 1.22 末端水酸基を除く残基のパーマコール値は46.4である。水酸基価は187.0であった。
【0090】
(製造例5)ジエチレングリコールとオルトフタル酸からなる数平均分子量600のポリエステルポリオール 「DEGoPA Mn600」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、ジエチレングリコール164.73部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600のポリエステルポリオール「DEGoPA Mn600」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n=2.09末端水酸基を除く残基のパーマコール値は44.4である。水酸基価は187.0であった。
【0091】
(製造例6)エチレングリコールとオルトフタル酸からなる数平均分子量900のポリエステルポリオール 「EGoPA Mn900」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール80.12部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量900のポリエステルポリオール「EGoPA Mn900」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n=4.36末端水酸基を除く残基のパーマコール値は54.4である。水酸基価は124.7であった。
【0092】
(製造例7)エチレングリコールとオルトフタル酸からなる数平均分子量1100のポリエステルポリオール 「EGoPA Mn1100」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール77.24部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1100のポリエステルポリオール「EGoPA Mn1100」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n=5.40末端水酸基を除く残基のパーマコール値は55.2である。水酸基価は102.0であった。
【0093】
(製造例8)1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼンとオルトフタル酸からなる数平均分子量900のポリエステルポリオール 「1,3−BHEBoPA Mn900」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン305.51部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量900のポリエステルポリオール「1,3−BHEBoPA Mn900」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n=1.47末端水酸基を除く残基のパーマコール値は48.3である。水酸基価は124.7であった。
【0094】
(製造例9)1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸からなる数平均分子量2000のポリエステルポリオール 「HGAA Mn2000」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、1,6−ヘキサンジオール137.77部、アジピン酸146.14部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000のポリエステルポリオール「HGAA Mn2000」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n=8.24末端水酸基を除く残基のパーマコール値は31.2である。水酸基価は56.1であった。
【0095】
(製造例10)エチレングリコールとメタキシレンジイソシアネートとのアダクト体の製造
攪拌機、窒素ガス導入管、冷却コンデンサー、滴下漏斗を備えた反応容器にエチレングリコール124.14部を加え、70℃に加熱しながら攪拌した。そこにキシリレンジイソシアネート188部をゆっくりと1時間かけて滴下した。滴下後3時間70℃で攪拌を続け、エチレンオキシドが2モル付加した分子量312のXDIアダクト体を得た。このアダクト体の末端水酸基を除くパーマコール値は74.4である。
水酸基価は112.2であった。
【0096】
(製造例11)ジエチレングリコールとフタル酸からなる数平均分子量2000のポリエステルポリオール 「DEGoPA Mn2000」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、ジエチレングリコール125.33部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1000のポリエステルポリオール「EGAA Mn1000」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n = 8.02 末端水酸基を除く残基のパーマコール値は47.8である。水酸基価は56.1であった。
【0097】
(製造例12)ジエチレングリコールとフタル酸からなる数平均分子量2000のポリエステルポリオール 「DEGoPA Mn2000」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、ジエチレングリコール125.33部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1000のポリエステルポリオール「DEGoPA Mn2000」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n = 8.02 末端水酸基を除く残基のパーマコール値は47.8である。水酸基価は56.1であった
【0098】
(製造例13)ノナンジオールとフタル酸からなる数平均分子量2000のポリエステルポリオール 「NDoPA Mn2000」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器にノナンジオール190.2部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000のポリエステルポリオール「EGAA Mn1000」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n = 6.33 末端水酸基を除く残基のパーマコール値は31.3である。水酸基価は56.1であった
【0099】
(製造例14)ヘキジオールとフタル酸からなる数平均分子量2000のポリエステルポリオール 「HGPA Mn2000」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器にヘキサンジオール137.77部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000のポリエステルポリオール「HGoPA Mn2000」を得た。このポリエステルポリオールの繰り返し数n = 6.33 末端水酸基を除く残基のパーマコール値は37.4である。水酸基価は56.1であった
【0100】
(製造例15)トリメチロールプロパンとメタキシレンジイソシアネートからなるアダクト体製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、真空ポンプ、冷却コンデンサー、滴下漏斗を備えた反応容器にトリメチロールプロパン134.17部、110℃に加熱しながら攪拌した。トリメチロールプロパンが完全溶解したことを確認したら、真空ポンプにて10Torrまで減圧しながら攪拌を続け、1時間かけてアルコールに含まれる水分を除いた。窒素を導入しながら大気圧に戻し、反応容器内部の温度が80℃を下回ったところで酢酸エチル250部を滴下ロートにて30分かけて加えた。新たに用意した攪拌機、窒素ガス導入管、冷却コンデンサー、滴下漏斗を備えた反応容器にキシリレンジイソシアネート564.54部を導入し、内部温度を60℃から70℃に維持しながら前記トリメチロールプロパンの酢酸エチル溶液をゆっくりと1時間かけて滴下した。適下ロート内部に付着したトリメチロールプロパンを酢酸エチル50部を用いて洗浄し、洗浄酢酸エチル溶液を反応容器に加えた。滴下後3時間70℃で攪拌を続け、トリメチロールプロパンにメタキシリレンジイソシアネート3モル付加した分子量698のアダクト体(TMP-3XDI)酢酸エチル70%溶液を得た。
【0101】
(接着剤用硬化剤a)
製造例15で得たTMP-3XDIを硬化剤aとした。
【0102】
(接着剤用硬化剤b)
三井化学社製のメタキシリレンジイソシアネート(mXDI)を硬化剤bとした。
【0103】
(実施例1〜8 比較例1〜5 接着剤の製造方法)
前記製造方法で得たポリエステルポリオールを酢酸エチルで希釈して、不揮発分50%の樹脂溶液を得、更に硬化剤を表1に示す様に配合し、後述の塗工方法1で使用する溶剤型接着剤を得た。
【0104】
(塗工方法)
前記溶剤型接着剤を、バーコーターを用いて、塗布量5.0g/m
2(固形分)となるように厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製「E−5100」)に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥し、接着剤が塗布されたPETフィルムの接着剤面と、厚さ70μmのCPPフィルム(東レ(株)製「ZK93KM」)とをラミネートし、PETフィルム/接着層/CPPフィルムの層構成を有する複合フィルムを作成した。次いで、この複合フィルムを40℃/3日間のエージングを行い、接着剤の硬化を行って、本発明の酸素バリア性フィルムを得た。
【0105】
(評価方法)
(1)接着強度
エージングが終了した酸素バリア性フィルムを、塗工方向と平行に15mm幅に切断し、PETフィルムとCPPフィルムとの間を、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度を接着強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。
【0106】
(2)酸素透過率
エージングが終了した酸素バリア性フィルムを、モコン社製酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21MHを用いてJIS−K7126(等圧法)に準じ、23℃、0%湿度(RH)及び90%RHの雰囲気下で測定した。
【0107】
(参考例)
厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡績(株)製E−5100)の酸素透過率測定結果を示した。
【0108】
結果を表8及び表9に示す。
【0109】
【表8】
【0110】
【表9】
【0111】
この結果、実施例1〜8の接着剤を使用した酸素バリアフィルムは、いずれも酸素透過率が35cc/m
2・day・atm以下で、且つ、接着強度に優れていた。
一方、比較例1の接着剤を使用した酸素バリアフィルムは使用したポリエステルポリオールのパーマコール値が低いため、酸素透過率は>35cc/m
2・day・atmであった。比較例は主剤の水酸基を除く残基が60以上であるため、酢酸エチルに溶解しなかった。
比較例3はポリエステルポリオールのパーマコール値は44〜60の範囲にあるものの、硬化物のパーマコール値が50〜60と低いために酸素透過率が35cc/m
2・day・atmを大幅に超える結果となった。
比較例4,5はポリエステルポリオールのパーマコール値は44以下であり且つ硬化物のパーマコール値が50〜60と低いために酸素透過率が35cc/m
2・day・atmを大幅に超える結果となった。