(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の複数のCF
2O結合基を有する3環化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの液晶組成物を含む液晶表示素子について、具体例を示しながら詳細に説明する。
【0029】
本明細書における用語の使い方は、次のとおりである。
「液晶性化合物」は、ネマチック相またはスメクチック相等の液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。
「液晶表示素子」は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。
「液晶表示素子」を、「表示素子」または「素子」と略すことがある。
【0030】
「透明点」は、液晶性化合物そのものを試料として測定される物性値であって、液晶性化合物における液晶相(例:ネマチック相、スメクチック相)−等方相の相転移温度である。
【0031】
「液晶相の下限温度」は、液晶性化合物そのものを試料として測定される物性値であって、液晶性化合物における結晶相−液晶相(例:ネマチック相、スメクチック相)の相転移温度である。
【0032】
「ネマチック相の上限温度」は、液晶組成物におけるネマチック相−等方相の相転移温度、または液晶性化合物と母液晶との混合物の測定値から外挿法により算出される(液晶性化合物における)ネマチック相−等方相の相転移温度であり、「上限温度」と略すことがある。
【0033】
「ネマチック相の下限温度」は、液晶組成物におけるネマチック相−結晶相もしくはネマチック相−スメクチック相の相転移温度、または液晶性化合物と母液晶との混合物の測定値から外挿法により算出される(液晶性化合物における)ネマチック相−結晶相もしくはネマチック相−スメクチック相の相転移温度であり、「下限温度」と略すことがある。
【0034】
式(i)で表される化合物(iは式番号を示す。)を、「化合物(i)」と略すことがある。式(1)の説明において、環A
1〜環A
3を総称して単に「環A」ということがある。
【0035】
各式の説明において、六角形で囲まれたA
1、B
1、C
1、D
1およびE
1等の記号は、それぞれ環A
1、環B
1、環C
1、環D
1および環E
1等に対応する。複数のR
1を異なった式に記載した。これらの化合物において、任意の2つのR
1が表す2つの基は、同一であってもよいし、異なってもよい。このルールは、環A
1やX
1等の記号にも適用される。
【0036】
各式の説明において、「少なくとも1つの“A”は“B”で置き換えられてもよく(い)」の「少なくとも1つ」という表現は、“A”が1つのとき、“A”の位置は任意であり、“A”の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。例えば、「少なくとも1つのAはB、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合、さらに複数のAがB、CおよびDの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含む。
【0037】
具体的には、「少なくとも1つの−CH
2−が−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−が−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキル」には、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。
【0038】
なお、本発明において、化合物の安定性を考慮して、連続する2つの−CH
2−が−O−で置き換えられて、−O−O−等の基になることは好ましくない。また、アルキルにおける末端のメチル部分(−CH
2−H)の−CH
2−が−O−で置き換えられて、−O−Hになることも好ましくない。
【0039】
1.複数のCF2O結合基を有する3環化合物
1−1.複数のCF2O結合基を有する3環化合物の構成
【0040】
本発明の複数のCF
2O結合基を有する3環化合物は、式(1)で表される。
【化6】
【0041】
式(1)において、各記号の意味は以下のとおりである。
〈左末端基R1〉
R
1は、水素、ハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルである。
【0042】
R
1として列挙される上記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲン(好ましくはフッ素または塩素であり、より好ましくはフッ素である。)で置き換えられてもよい。以下、上記アルキルにおいてこれらの置き換えがなされた基を「置換アルキル」ともいう。
【0043】
R
1として列挙される置換アルキルとしては、例えば、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニルおよびアルケニルチオ、ならびにアルキルおよび本段落例示の基において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基(例:ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルコキシ、ハロゲン化アルケニル)が挙げられる。
【0044】
R
1として列挙される置換アルキルとしては、上記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−が−O−で置き換えられ、および/または、少なくとも1つの−(CH
2)
2−が−CH=CH−で置き換えられた基が好ましく;具体的には、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルおよびアルケニルオキシが挙げられる。
【0045】
アルキルおよび置換アルキルは、直鎖または分岐鎖であり、シクロヘキシル等の環状基を含まない。R
1が直鎖であるときは、化合物(1)は液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。R
1が分岐鎖であるときは、化合物(1)は他の液晶性化合物との相溶性がよい。アルキルおよび置換アルキルは、分岐鎖よりも直鎖が好ましい。
【0046】
R
1が分岐鎖であっても光学活性基であるときは好ましい。R
1が光学活性基であるときは、化合物(1)はキラルドーパントとして有用である。この化合物を液晶組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。R
1が光学活性基でないときは、化合物(1)は液晶組成物の成分として有用である。
【0047】
以下、R
1として列挙される上記基の具体例を示す。
R
1として列挙されるハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素および臭素が挙げられ、好ましくはフッ素および塩素であり、より好ましくはフッ素である。
【0048】
R
1として列挙されるアルキルとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキル、好ましくは炭素数1〜15のアルキル、より好ましくは炭素数1〜10のアルキルが挙げられ;具体的には、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
9H
19、−C
10H
21、−C
11H
23、−C
12H
25、−C
13H
27、−C
14H
29、および−C
15H
31が挙げられる。
【0049】
R
1として列挙されるアルコキシとしては、例えば、炭素数1〜19のアルコキシ、好ましくは炭素数1〜14のアルコキシ、より好ましくは炭素数1〜9のアルコキシが挙げられ;具体的には、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、−OC
4H
9、−OC
5H
11、−OC
6H
13、−OC
7H
15、−OC
8H
17、−OC
9H
19、−OC
10H
21、−OC
11H
23、−OC
12H
25、−OC
13H
27、および−OC
14H
29が挙げられる。
【0050】
R
1として列挙されるアルコキシアルキルとしては、例えば、炭素数2〜19のアルコキシアルキル、好ましくは炭素数2〜14のアルコキシアルキル、より好ましくは炭素数2〜9のアルコキシアルキルが挙げられ;具体的には、−CH
2OCH
3、−CH
2OC
2H
5、−CH
2OC
3H
7、−(CH
2)
2−OCH
3、−(CH
2)
2−OC
2H
5、−(CH
2)
2−OC
3H
7、−(CH
2)
3−OCH
3、−(CH
2)
4−OCH
3、および−(CH
2)
5−OCH
3が挙げられる。
【0051】
R
1として列挙されるアルケニルとしては、例えば、炭素数2〜20のアルケニル、好ましくは炭素数2〜15のアルケニル、より好ましくは炭素数2〜10のアルケニルが挙げられ;具体的には、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、−(CH
2)
3−CH=CH
2、−CH=CHC
4H
9、−(CH
2)
2CH=CHC
2H
5および−CH
2CH=CHC
3H
7が挙げられる。
【0052】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH
3、−CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、−CH=CHC
4H
9、および−(CH
2)
2−CH=CHC
2H
5等の奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいては、トランス配置が好ましい。−CH
2CH=CH
2、−CH
2CH=CHCH
3、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
3−CH=CH
2および−CH
2CH=CHC
3H
7等の偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいては、シス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い透明点および上限温度、または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0053】
R
1として列挙されるアルケニルオキシとしては、例えば、炭素数2〜19のアルケニル、好ましくは炭素数2〜14のアルケニル、より好ましくは炭素数2〜9のアルケニルが挙げられ;具体的には、−OCH
2CH=CH
2、−OCH
2CH=CHCH
3、および−OCH
2CH=CHC
2H
5が挙げられる。
【0054】
上記アルキルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基(ハロゲン化アルキル)としては、例えば、−CH
2F、−CHF
2、−CF
3、−(CH
2)
2−F、−CF
2CH
2F、−CF
2CHF
2、−CH
2CF
3、−CF
2CF
3、−(CH
2)
3−F、−(CF
2)
3−F、−CF
2CHFCF
3、−CHFCF
2CF
3、−(CH
2)
4−F、−(CF
2)
4−F、−(CH
2)
5−F、および−(CF
2)
5−F等のフッ化アルキル;−CH
2Cl、−CHCl
2、−CCl
3、−(CH
2)
2−Cl、−CCl
2CH
2Cl、−CCl
2CHCl
2、−CH
2CCl
3、−CCl
2CCl
3、−(CH
2)
3−Cl、−(CCl
2)
3−Cl、−CCl
2CHClCCl
3、−CHClCCl
2CCl
3、−(CH
2)
4−Cl、−(CCl
2)
4−Cl、−(CH
2)
5−Cl、および−(CCl
2)
5−Cl等の塩化アルキルが挙げられる。
【0055】
上記アルコキシにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基(ハロゲン化アルコキシ)としては、例えば、−OCH
2F、−OCHF
2、−OCF
3、−O−(CH
2)
2−F、−OCF
2CH
2F、−OCF
2CHF
2、−OCH
2CF
3、−O−(CH
2)
3−F、−O−(CF
2)
3−F、−OCF
2CHFCF
3、−OCHFCF
2CF
3、−O(CH
2)
4−F、−O−(CF
2)
4−F、−O−(CH
2)
5−F、および−O−(CF
2)
5−F等のフッ化アルコキシ;−OCH
2Cl、−OCHCl
2、−OCCl
3、−O−(CH
2)
2−Cl、−OCCl
2CH
2Cl、−OCCl
2CHCl
2、−OCH
2CCl
3、−O−(CH
2)
3−Cl、−O−(CCl
2)
3−Cl、−OCCl
2CHClCCl
3、−OCHClCCl
2CCl
3、−O(CH
2)
4−Cl、−O−(CCl
2)
4−Cl、−O−(CH
2)
5−Cl、および−O−(CCl
2)
5−Cl等の塩化アルコキシが挙げられる。
【0056】
上記アルケニルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基(ハロゲン化アルケニル)としては、例えば、−CH=CHF、−CH=CF
2、−CF=CHF、−CH=CHCH
2F、−CH=CHCF
3、−(CH
2)
2−CH=CF
2、−CH
2CH=CHCF
3、および−CH=CHCF
2CF
3等のフッ化アルケニル;−CH=CHCl、−CH=CCl
2、−CCl=CHCl、−CH=CHCH
2Cl、−CH=CHCCl
3、−(CH
2)
2−CH=CCl
2、−CH
2CH=CHCCl
3、および−CH=CHCCl
2CCl
3等の塩化アルケニルが挙げられる。
【0057】
R
1は、好ましくは炭素数1〜20のアルキルまたはその置換アルキルであり、より好ましくは炭素数1〜15のアルキルまたはその置換アルキルであり、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルキルまたはその置換アルキルである。ここでの置換アルキルとしては、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルコキシおよびハロゲン化アルケニルが好ましく、アルケニルおよびアルコキシがより好ましく、アルケニルがさらに好ましい。
【0058】
〈環A1〜環A3〉
環A
1は、1,4−シクロヘキシレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;好ましくは1,4−シクロヘキシレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;特に好ましくは1,4−シクロヘキシレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【0059】
環A
2は、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;好ましくは1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;特に好ましくは1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0060】
環A
3は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;好ましくは1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;特に好ましくは2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0061】
式(1)中の環A
1〜環A
3の説明において、2−フルオロ−1,4−フェニレンは、ラテラル位のフッ素が左末端基R
1の側に位置する場合と、右末端基X
1の側に位置する場合とがあり、すなわち下記の2つの二価の基を意味する。つまり、2−フルオロ−1,4−フェニレンの向きはいずれでもよい。
【0063】
例えば、環A
1が2−フルオロ−1,4−フェニレンの場合、式(1)は下記(a),(b)のいずれであってもよい。このルールは、式(1)中の環A
1〜環A
3や、後述する式(2)〜(4)中の環B
1〜環B
3、式(5)中の環C
1〜環C
3、式(6)〜(11)中の環D
1〜環D
4、式(12)〜(14)中の環E
1〜環E
3の説明において、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル等の左右非対称の二価の基にも適用される。
【0065】
環A
1、環A
2および環A
3における、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、およびテトラヒドロピラン−2,5−ジイルの好ましい例は、基(A−1)〜(A−7)である。
【0067】
なお、誘電率異方性の観点から、これらの基(A−1)〜(A−7)は、式(1)において、左側の結合手がR
1側となり、右側の結合手がX
1側となるよう配置されることが好ましい。例えば、環A
1が1,4−シクロヘキシレンであり、環A
2が基(A−1)であり、環A
3が基(A−2)の場合、化合物(1)は下記式(α)ではなく、下記式(β)で表されることが好ましい。
【0069】
〈右末端基X1〉
X
1は、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−SF
5、または炭素数1〜10のアルキルである。
【0070】
X
1として列挙される上記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲン(好ましくはフッ素または塩素であり、より好ましくはフッ素である。)で置き換えられてもよい。以下、上記アルキルにおいてこれらの置き換えがなされた基を「置換アルキル」ともいう。
【0071】
X
1として列挙される置換アルキルとしては、例えば、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニルおよびアルケニルオキシ、ならびにアルキルおよび本段落例示の基において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基(例:ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルコキシおよびハロゲン化アルケニル)が挙げられ;アルコキシおよびアルケニル、ならびにハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルコキシおよびハロゲン化アルケニルが好ましい。
【0072】
以下、X
1として列挙される上記基の具体例を示す。
X
1として列挙されるハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素および臭素が挙げられ、好ましくはフッ素および塩素であり、より好ましくはフッ素である。
【0073】
X
1として列挙されるアルキルとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキル、好ましくは炭素数1〜6のアルキル、より好ましくは炭素数1〜3のアルキルが挙げられ;具体的には、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
9H
19、および−C
10H
21が挙げられる。
【0074】
X
1として列挙されるアルコキシとしては、例えば、炭素数1〜9のアルコキシ、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ、より好ましくは炭素数1〜2のアルコキシが挙げられ;具体的には、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、−OC
4H
9、および−O
5H
11が挙げられる。
【0075】
X
1として列挙されるアルケニルとしては、例えば、炭素数2〜10のアルケニル、好ましくは炭素数2〜6のアルケニル、より好ましくは炭素数2〜3のアルケニルが挙げられ;具体的には、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、−(CH
2)
3−CH=CH
2、−CH=CHC
4H
9、−(CH
2)
2CH=CHC
2H
5および−CH
2CH=CHC
3H
7が挙げられる。
【0076】
上記アルキルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基(ハロゲン化アルキル)としては、例えば、上記〈左末端基R
1〉の欄で例示した基が挙げられ;フッ化アルキルが好ましい。
【0077】
上記アルコキシにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基(ハロゲン化アルコキシ)としては、例えば、上記〈左末端基R
1〉の欄で例示した基が挙げられ;フッ化アルコキシが好ましい。
【0078】
上記アルケニルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基(ハロゲン化アルケニル)としては、例えば、上記〈左末端基R
1〉の欄で例示した基が挙げられ;フッ化アルケニルが好ましい。
【0079】
X
1は、好ましくは水素、フッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF
5、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のフッ化アルキル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数1〜9のフッ化アルコキシ、炭素数2〜10のアルケニル、または炭素数2〜10のフッ化アルケニルであり;より好ましくはフッ素、塩素、−C≡N、炭素数1〜10のフッ化アルキル、炭素数1〜9のフッ化アルコキシであり;さらに好ましくはフッ素、塩素、−C≡N、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−OCF
3、−OCHF
2、または−OCH
2Fであり;最も好ましくはフッ素、−CF
3、または−OCF
3である。
【0080】
X
1がフッ素である化合物は、小さい粘度を有するという観点から好ましい。X
1が−CF
3である化合物は、大きな誘電率異方性の値を有するという観点から好ましい。X
1が−OCF
3である化合物は、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有するという観点から好ましい。
【0081】
〈CF2O結合基〉
本発明の化合物(1)は、式(1)で表されるように、複数のCF
2O結合基を有する。このような構造を有することで、本発明の化合物(1)は、誘電率異方性の値が大きくなり、また粘度が小さくなる。
【0082】
1−2.複数のCF2O結合基を有する3環化合物の具体例
本発明の化合物(1)としては、式(1−1)で表される化合物が好ましく、式(1−1−1)で表される化合物がより好ましく、式(1−1−1−1)〜(1−1−1−3)のいずれか1つで表される化合物が特に好ましい。
【0084】
式(1−1)において、
R
1は、炭素数1〜15のアルキルであり、前記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
【0085】
環A
1は、1,4−シクロヘキシレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
【0086】
環A
2は、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
【0087】
L
1およびL
2は、独立して、水素またはフッ素であり;
X
1は、フッ素または炭素数1〜10のアルキルであり、前記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0088】
式(1−1)において、R
1、環A
1、環A
2およびX
1としてさらに好ましい基は、式(1)の説明において、〈左末端基R
1〉、〈環A
1〜環A
3〉および〈右末端基X
1〉の各欄にて示したとおりである。
【0090】
式(1−1−1)において、
R
1は、炭素数1〜10のアルキルであり、前記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく;
【0091】
環A
1は、1,4−シクロヘキシレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
【0092】
L
1、L
2、L
3およびL
4は、独立して、水素またはフッ素であり;
X
1は、フッ素または−CF
3である。
式(1−1−1)において、R
1、環A
1およびX
1としてさらに好ましい基は、式(1)の説明において、〈左末端基R
1〉、〈環A
1〜環A
3〉および〈右末端基X
1〉の各欄にて示したとおりである。
【0094】
式(1−1−1−1)〜(1−1−1−3)において、R
1は、炭素数1〜10のアルキルであり;具体的には、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
9H
19、および−C
10H
21が挙げられる。
【0095】
環A
1〜環A
3が全てベンゼン環である化合物に比べると、式(1−1−1−1)〜(1−1−1−3)で表される化合物は、上限温度や透明点が高く、粘度が小さくなる傾向にある。
【0096】
1−3.複数のCF2O結合基を有する3環化合物の物性
本発明の化合物(1)は、複数のCF
2O結合基、環A
1〜環A
3ならびに末端基R
1およびX
1を併せ持つことで、大きな正の誘電率異方性、適切な光学異方性、小さなバルク粘度、小さな回転粘度、適切な弾性定数、小さなしきい値電圧、高い電圧保持率ならびに液晶相の高い上限温度や透明点を示す。また、本発明の化合物(1)は、末端基R
1およびX
1、環A
1〜環A
3、L
1〜L
4等の種類を適切に組み合わせることによって、誘電率異方性、光学異方性、バルク粘度、回転粘度、弾性定数、しきい値電圧、電圧保持率、液晶相の上限温度や透明点等の物性を調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、
2H(重水素)および
13C等の同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【0097】
また、本発明の化合物(1)は、液晶性化合物として必要な一般的物性、例えば、熱および光等に対する高い安定性、液晶相の低い下限温度、他の液晶性化合物との優れた相溶性(例:低温相溶性)を示し、優れた物性バランスを有する液晶性化合物である。
【0098】
環A
1等の種類が化合物(1)の物性に及ぼす主要な効果を以下に説明する。
環A
1および環A
3の少なくとも1つが1,4−シクロヘキシレンであるときは、化合物(1)は上限温度や透明点が高く、バルク粘度が小さく、回転粘度が小さく、弾性定数が小さい。環A
1が2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるときは、化合物(1)は光学異方性の値が比較的大きく、弾性定数が比較的大きく、低温相溶性が比較的優れ、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が比較的大きい。
【0099】
環A
2および環A
3の少なくとも1つが1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるときは、化合物(1)は光学異方性の値が比較的大きく、弾性定数が比較的大きく、低温相溶性が比較的優れ、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が比較的大きい。
【0100】
環A
1が2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、かつ環A
2および環A
3の両方が1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるときは、化合物(1)は光学異方性の値が特に大きく、弾性定数が特に大きく、低温相溶性が特に優れる。
【0101】
右末端基X
1がフッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF
5、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−OCF
3、−OCHF
2または−OCH
2Fであるときは、化合物(1)は誘電率異方性の値が大きく、しきい値電圧が小さい。X
1が−C≡N、−N=C=Sまたはアルケニルであるときは、化合物(1)は光学異方性の値が大きい。X
1がフッ素、−CF
3またはアルキルであるときは、化合物(1)は化学的安定性が高く、電圧保持率が高い。
【0102】
環A
3が2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、X
1がフッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF
5、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−OCF
3、−OCHF
2または−OCH
2Fであるときは、化合物(1)は誘電率異方性の値が大きく、しきい値電圧が小さい。
【0103】
環A
3が2−フルオロ−1,4−フェニレンであり、X
1が−CF
3であるとき、あるいは環A
3が2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、X
1がフッ素または−CF
3であるときは、化合物(1)は化学的安定性が高く、液晶相の温度範囲が広く、誘電率異方性の値が大きく、しきい値電圧が小さく、電圧保持率が高い。
【0104】
以上のように、環構造および末端基等の種類を適切に選択することによって目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、本発明の化合物(1)は、PC、TN、STN、BTN、ECB、OCB、IPS、VA、PSA等のモードの液晶表示素子に用いられる液晶組成物の成分として有用である。
【0105】
1−4.複数のCF2O結合基を有する3環化合物の合成方法
本発明の化合物(1)の合成方法について説明する。
本発明の化合物(1)は、有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、および新実験化学講座(丸善)等に記載されている。
【0106】
1−4−1.環Aの生成
1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル等の環に関しては、出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0107】
1−4−2.化合物(1)の合成方法
本発明の化合物(1)は、例えば、合成方法1〜3により合成することができる。
【0108】
1−4−2−1.化合物(1)の合成方法1
本発明の化合物(1)の合成方法1は、例えば、カルボン酸(30)と水酸基含有化合物(31)とを、DCCおよびDMAP等の存在下で脱水縮合させて、エステル(32)を得る工程;エステル(32)をローソン試薬等の硫黄化剤と反応させて、チオン−O−エステル(33)を得る工程;チオン−O−エステル(33)をフッ化水素ピリジン錯体およびNBSでフッ素化して、化合物(34)を得る工程:化合物(34)にn−ブチルリチウム、次いで二酸化炭素を反応させ、カルボン酸(35)を得る工程;カルボン酸(35)および水酸基含有化合物(36)を、DCCおよびDMAP等の存在下で脱水縮合させて、エステル(37)を得る工程;エステル(37)をローソン試薬等の硫黄化剤と反応させて、チオン−O−エステル(38)を得る工程;チオン−O−エステル(38)をフッ化水素ピリジン錯体およびNBSでフッ素化して、化合物(1)を得る工程;を有する。なお、ここでの式番号は下記反応スキームに対応する。
【0110】
上記反応スキームにおいて、R
1、環A
1、環A
2、環A
3およびX
1は、式(1)中の同一記号と同義である。DCCはジシクロヘキシルカルボジイミドであり、DMAPは4−ジメチルアミノピリジンであり、HF−Pyはフッ化水素ピリジン錯体であり、NBSはN−ブロモスクシンイミドである。
【0111】
1−4−2−2.化合物(1)の合成方法2
本発明の化合物(1)のうち、環A
2が1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである場合は、以下に示す方法でも合成することができる。
【0112】
本発明の化合物(1)の合成方法2は、例えば、P. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 1480.に記載された方法に従い、カルボン酸(30)にアルカンジチオールとトリフルオロメタンスルホン酸とを反応させて、ジチアニリウム塩(39)を得る工程;ジチアニリウム塩(39)にフェノール化合物(40)、次いでEt
3N−3HFを反応させ、臭素で処理して化合物(41)を得る工程;US6231785B1に記載された方法に従い、化合物(41)にn−ブチルリチウム、次いでジブロモジフルオロメタンを反応させて、化合物(42)を得る工程;化合物(42)と水酸基含有化合物(36)とを、炭酸カリウム等の塩基の存在下で反応させて、化合物(1)を得る工程;を有する。
【0114】
上記反応スキームにおいて、R
1、環A
1、環A
3およびX
1は、式(1)中の同一記号と同義であり、環A
2は、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0115】
1−4−2−3.化合物(1)の合成方法3
本発明の化合物(1)の合成方法3は、例えば、P. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 1480.に記載された方法に従い、カルボン酸(30)にアルカンジチオールとトリフルオロメタンスルホン酸とを反応させて、ジチアニリウム塩(39)を得る工程;カルボン酸(43)にアルカンジチオールとトリフルオロメタンスルホン酸とを反応させて、ジチアニリウム塩(44)を得る工程;ジチアニリウム塩(44)に水酸基含有化合物(45)、次いでEt
3N−3HFを反応させ、臭素で処理して化合物(46)を得る工程;化合物(46)とビスピナコラートジボランとを、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムおよび酢酸カリウム等の存在下でカップリングして、化合物(47)を得る工程;化合物(47)をDBU等の存在下でH
2O
2酸化して、水酸基含有化合物(48)を得る工程;ジチアニリウム塩(39)に水酸基含有化合物(48)、次いでEt
3N−3HFを反応させ、臭素で処理して化合物(1)を得る工程;を有する。
【0117】
上記反応スキームにおいて、R
1、環A
1、環A
2、環A
3およびX
1は、式(1)中の同一記号と同義であり、AcOKは酢酸カリウムであり、DBUは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである。
【0118】
2.液晶組成物
本発明の液晶組成物は、本発明の化合物(1)を成分Aとして含有する。本発明の液晶組成物は、化合物(1)を1種のみ含有してもよく、化合物(1)を2種以上含有してもよい。
【0119】
本発明の液晶組成物は、液晶組成物の全質量に対して、成分Aを1〜99質量%の割合で含有することが好ましく、より好ましくは5〜60質量%である。成分Aの含有量が前記範囲にあると、液晶組成物の優良な特性(例:しきい値電圧、液晶相の温度範囲、誘電率異方性の値、光学異方性の値、粘度)を発現させる点で好ましい。
【0120】
本発明の液晶組成物は、成分Aのみの組成物、または成分Aと本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分との組成物でもよい。また、本発明の液晶組成物は、種々の特性を発現させるため、以下に説明する成分B、成分C、成分Dおよび成分Eの群から選択される少なくとも1種の成分をさらに含有してもよい。
【0121】
本発明の液晶組成物を調製するときには、例えば、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することもできる。また、各成分を適切に選択して調製された液晶組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな誘電率異方性、適切な光学異方性、および適切な弾性定数を示す。
【0122】
成分Bは、後述する式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物である。成分Cは、後述する式(5)で表される化合物である。成分Dは、後述する式(6)〜(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物である。成分Eは、後述する式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0123】
なお、式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物とは、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物を意味する。他の例においても同様である。
【0124】
本発明の液晶組成物は、用途に応じて、光学活性化合物をさらに含有してもよく、酸化防止剤および紫外線吸収剤の群から選択される少なくとも1種をさらに含有してもよい。
【0125】
〈成分B〉(化合物(2)〜(4))
本発明の液晶組成物は、式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物(成分B)を含有してもよい。成分Bは、右末端基としてハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。
【0126】
成分Bは、誘電率異方性の値が正であり、熱および光等に対する安定性が非常に優れているので、TFTにて駆動するTNモードまたはIPSモード用途の液晶組成物を調製する場合に好適に用いられる。
【0128】
式(2)〜(4)において、各記号の意味は以下のとおりである。
R
2は、独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、前記アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0129】
X
2は、フッ素、塩素、−OCF
3、−OCHF
2、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−CF=CF
2、−OCF
2CHF
2、または−OCF
2CHFCF
3である。
【0130】
環B
1、環B
2および環B
3は、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルである。
【0131】
Z
1およびZ
2は、独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−、または−(CH
2)
4−である。ここで−COO−は、カルボニル(−CO−)が左末端基R
2側であり、かつエーテル結合(−O−)が右末端基X
2側である向きで各環に結合される。例えば式(2)においてZ
1が−COO−であるとき、R
2−環B
1−OCO−Ph(L
5)(L
6)−X
2ではなく、R
2−環B
1−COO−Ph(L
5)(L
6)−X
2であることを意味する。このルールは、−CH
2O−にも適用される。
【0132】
L
5およびL
6は、独立して、水素またはフッ素である。
なお、式(3)において、Z
1およびZ
2がともに−CF
2O−であることはない。これは、Z
1およびZ
2の両方が−CF
2O−である化合物(下記式(B1)で表される化合物)を、成分Bが含まないことを意味する。
【0134】
また、式(3)において、Z
1およびZ
2がともに−OCF
2−であるときは、L
5およびL
6はともに水素である。これは、Z
1およびZ
2の両方が−OCF
2−であるときは、式(3)は下記式(B2)で表されることを意味する。
【0136】
式(B1)および式(B2)において、R
2、X
2、B
1、B
2、L
5およびL
6は、式(3)中の同一記号と同義である。
【0137】
成分Bを用いる場合における成分Bの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、通常1〜99質量%、好ましくは10〜97質量%、より好ましくは40〜95質量%である。成分Cの含有量が前記範囲にある液晶組成物は、TNモードまたはIPSモード用途の液晶組成物として好ましい。
【0138】
また、成分Bとともに成分Eをさらに含有させることにより、液晶組成物の粘度を調整することができる。この場合の成分Eの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、通常1〜99質量%、好ましくは10〜97質量%、より好ましくは30〜95質量%である。
【0139】
〈成分C〉(化合物(5))
本発明の液晶組成物は、式(5)で表される化合物(成分C)を含有してもよい。成分Cは、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物である。
【0140】
成分Cは、誘電率異方性の値が正で非常に大きいので、TNモード、STNモードまたはIPSモード用途の液晶組成物を調製する場合に好適に用いられる。成分Cを含有させることにより、液晶組成物の誘電率異方性の値を大きくすること、粘度の調整および光学異方性の値の調整をすること、ならびに液晶相の温度範囲を広げることができる。さらに、成分Cは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0142】
式(5)において、各記号の意味は以下のとおりである。
R
3は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、前記アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0143】
X
3は、−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである。
環C
1、環C
2および環C
3は、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、前記1,4−フェニレンは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい。
【0144】
Z
3は、単結合、−(CH
2)
2−、−C≡C−、−COO−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−CH
2O−である。ここで−COO−は、カルボニル(−CO−)が左末端基R
3側であり、かつエーテル結合(−O−)が右末端基X
3側である向きで各環に結合される。例えばZ
3が−COO−でo=p=1であるとき、環C
2−OCO−環C
3ではなく、環C
2−COO−環C
3であることを意味する。このルールは、−CH
2O−にも適用される。
【0145】
L
7およびL
8は、独立して、水素またはフッ素である。
oは、0、1または2であり、pは0または1である。
oおよびpの和は、0、1、2または3である。
【0146】
成分Cを用いる場合における成分Cの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、通常1〜99質量%、好ましくは10〜97質量%、より好ましくは40〜95質量%である。成分Cの含有量が前記範囲にある液晶組成物は、TNモード、STNモードまたはIPSモード用途の液晶組成物として好ましい。
【0147】
また、成分Cとともに成分Eをさらに含有させることにより、液晶組成物の液晶相の温度範囲、粘度、誘電率異方性および光学異方性を調整することができる。この場合の成分Eの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、通常1〜99質量%、好ましくは10〜97質量%、より好ましくは30〜95質量%である。
【0148】
〈成分D〉(化合物(6)〜(11))
本発明の液晶組成物は、式(6)〜(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物(成分D)を含有してもよい。成分Dは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン等の、ラテラル位が2つのハロゲンで置き換えられたベンゼン環を有する化合物である。
【0149】
成分Dは、誘電率異方性の値が負の化合物である。成分Dは、VAモードまたはPSAモード用途の液晶組成物を調製する場合に好適に用いられる。また、成分Dを混合することにより、弾性定数をコントロ−ルし、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0151】
式(6)〜(11)において、各記号の意味は以下のとおりである。
R
4およびR
5は、独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、前記アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0152】
環D
1、環D
2、環D
3および環D
4は、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり、前記1,4−フェニレンは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい。
【0153】
Z
4、Z
5、Z
6およびZ
7は、独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−COO−、−CH
2O−、−OCF
2−、または−OCF
2(CH
2)
2−である。ここで−COO−は、カルボニル(−CO−)が左末端基R
4側であり、かつエーテル結合(−O−)が右末端基R
5側である向きで各環に結合される。例えば式(6)においてZ
4が−COO−であるとき、R
4−環D
1−OCO−Ph(L
9)(L
10)−R
5ではなく、R
4−環D
1−COO−Ph(L
9)(L
10)−R
5であることを意味する。このルールは、−CH
2O−にも適用される。また−OCF
2−は、エーテル結合(−O−)が左末端基R
4側であり、かつジフルオロメチレン(−CF
2−)が右末端基R
5側である向きで各環に結合される。このルールは、−OCF
2(CH
2)
2−にも適用される。
【0154】
L
9およびL
10は、独立して、フッ素または塩素である。
q、r、s、t、uおよびvは、独立して0または1である。
r、s、tおよびuの和は、1または2である。
【0155】
化合物(6)は、2環化合物であるので、主として粘度の調整、誘電率異方性の値の調整または光学異方性の値の調整の効果がある。化合物(7)および化合物(8)は、3環化合物であるので、上限温度を高くする、誘電率異方性の絶対値を大きくする、光学異方性の値を大きくする等の効果がある。化合物(9)〜(11)は、誘電率異方性の絶対値を大きくする等の効果がある。
【0156】
成分Dの含有量を増加させると、液晶組成物の誘電率異方性の絶対値が大きくなるが、粘度が大きくなるので、液晶組成物の誘電率異方性の要求を充たす限り、その含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、成分Dの誘電率異方性の絶対値は5程度である。したがって、充分な電圧駆動をさせるには、成分Dの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50〜95質量%である。この場合、成分Aの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、2〜40質量%であることが好ましい。成分Dの含有量が前記範囲にある液晶組成物は、VAモードまたはPSAモード用途の液晶組成物として好ましい。
【0157】
一方、成分Dを誘電率異方性の値が正の液晶組成物に混合する場合は、その含有量は、液晶組成物の全質量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0158】
〈成分E〉(化合物(12)〜(14))
本発明の液晶組成物は、式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物(成分E)を含有してもよい。成分Eは、2つの末端基がアルキル等である化合物である。
【0159】
成分Eは、誘電率異方性の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。成分Eを用いることにより、しきい値電圧、液晶相の温度範囲、誘電率異方性の値、光学異方性の値、および粘度を調整することができる。
【0161】
式(12)〜(14)において、各記号の意味は以下のとおりである。
R
6およびR
7は、独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、前記アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0162】
環E
1、環E
2および環E
3は、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルである。
【0163】
Z
8およびZ
9は、独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−C≡C−または−COO−である。ここで−COO−は、カルボニル(−CO−)が左末端基R
6側であり、かつエーテル結合(−O−)が右末端基R
7側である向きで各環に結合される。例えば式(12)においてZ
8が−COO−であるとき、環E
1−OCO−環E
2ではなく、環E
1−COO−環E
2であることを意味する。
【0164】
化合物(12)は、主として粘度または光学異方性の値を調整する効果がある。化合物(13)および化合物(14)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学異方性の値を調整する効果がある。
【0165】
成分Eの含有量を増加させると、液晶組成物の粘度が小さくなるが、液晶組成物の誘電率異方性の値が小さくなるので、液晶組成物の誘電率異方性の要求を充たす限り、その含有量を多くすることが好ましい。
【0166】
VAモードまたはPSAモード用途の液晶組成物を調製する場合、成分Eの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。
【0167】
〈成分B〜成分Eの具体例の例示〉
成分Bのうち、式(2)で表される化合物の好適例として式(2−1)〜(2−16)で表される化合物が挙げられ、式(3)で表される化合物の好適例として式(3−1)〜(3−112)で表される化合物が挙げられ、式(4)で表される化合物の好適例として式(4−1)〜(4−54)で表される化合物が挙げられる。
【0176】
式中、R
2およびX
2は、式(2)〜(4)中のR
2およびX
2と同義である。
成分Cのうち、式(5)で表される化合物の好適例として、式(5−1)〜(5−64)で表される化合物が挙げられる。
【0180】
式中、R
3およびX
3は、式(5)中のR
3およびX
3と同義である。
成分Dのうち、式(6)〜(11)で表される化合物の好適例として、それぞれ式(6−1)〜(6−6)、式(7−1)〜(7−15)、式(8−1)、式(9−1)〜(9−3)、式(10−1)〜(10−11)、および式(11−1)〜(11−10)で表される化合物が挙げられる。
【0183】
式中、R
4およびR
5は、式(6)〜(11)中のR
4およびR
5と同義である。
成分Eのうち、式(12)〜(14)で表される化合物の好適例として、それぞれ式(12−1)〜(12−11)、式(13−1)〜(13−19)、および式(14−1)〜(14−6)で表される化合物が挙げられる。
【0186】
式中、R
6およびR
7は、式(12)〜(14)中のR
6およびR
7と同義である。
【0187】
〈光学活性化合物〉
本発明の液晶組成物は、光学活性化合物を1種または2種以上含有してもよい。光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤が挙げられる。このキラルド−プ剤は、液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ等の効果を有する。キラルド−プ剤としては、例えば、式(Op−1)〜(Op−13)で表される光学活性化合物が挙げられる。
【0189】
本発明の液晶組成物に光学活性化合物を添加することにより、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチは、TFTモードおよびTNモード用途の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整することが好ましく;STNモード用途の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整することが好ましく;BTNモード用途の液晶組成物であれば1.5〜4μmの範囲に調整することが好ましい。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で、2種以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0190】
〈重合可能な化合物〉
本発明の液晶組成物は、重合可能な化合物を1種または2種以上添加して、PSAモード用途の液晶組成物として使用することもできる。重合可能な化合物の含有量は、液晶組成物の全質量に対して、0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0191】
重合可能な化合物としては、例えば、アクリロイル、メタクリロイル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、ビニルケトン、オキシラニルおよびオキセタニル等の重合可能な基を有する化合物が挙げられる。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤等の適切な重合開始剤の存在下で、UV照射等により重合する。
【0192】
重合のための適切な条件、重合開始剤の適切な種類および適切な量は、当業者には既知であり、各文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure 651(登録商標;BASF)、Irgacure 184(登録商標;BASF)、またはDarocure 1173(登録商標;BASF)が、ラジカル重合に対して適切である。
【0193】
〈酸化防止剤および紫外線吸収剤〉
本発明の液晶組成物は、酸化防止剤および紫外線吸収剤の群から選択される少なくとも1種をさらに含有してもよい。酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−アルキルフェノール等である。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体等である。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた、好ましい。
【0194】
〈その他の成分〉
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系等の二色性色素を添加して、GH(guest host)モード用途の液晶組成物として使用することもできる。
【0195】
〈液晶組成物の調製方法およびその特性〉
本発明の液晶組成物を調製する場合、例えば、成分Aの誘電率異方性の値を考慮して各種成分を選択することができる。本発明の液晶組成物は、大きな誘電率異方性の値を有し、しきい値電圧が低い。前記組成物は、適切な光学異方性の値を有し、適切な弾性定数を有する。ここで「適切な」とは、本発明の液晶組成物を含む液晶表示素子の動作モードに応じて、例えば、各特性の好適範囲が適宜決定されることを意味する。前記組成物は、粘度が低い。前記組成物は、ネマチック相の温度範囲が広く、すなわち、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低い。本発明の液晶組成物は、前記した特性のうち、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する。
【0196】
液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法等により、一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物(例:光学活性化合物、重合可能な化合物、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素)を添加して、各種モード用途の液晶組成物を調製することができる。添加物は当業者によく知られており、上述した化合物の他、各種文献に詳細に記載されている。
【0197】
3.液晶表示素子
本発明の液晶表示素子は、上述した液晶組成物を含む。本発明の液晶表示素子は、応答時間が短く、長い寿命を有し、コントラスト比が大きく、高い電圧保持率を有し、広い温度範囲で使用可能であり、よって液晶プロジェクターおよび液晶テレビ等に用いることができる。
【0198】
本発明の液晶組成物は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、PSAモード等の動作モードを有し、アクティブマトリックス(AM方式)で駆動する液晶表示素子に使用することができる。本発明の液晶組成物は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモード等の動作モードを有し、パッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらのAM方式およびPM方式の液晶表示素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用することができる。
【0199】
本発明の液晶組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用することができる。
【実施例】
【0200】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されない。特に断りのない限り、「%」は「質量%」であることを意味する。
実施例等で得られた化合物は、NMR分析等の方法により同定した。
【0201】
〔NMR分析〕
測定装置として、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。
1H−NMRの測定は、試料をCDCl
3等の重水素化溶媒に溶解させ、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。
19F−NMRの測定では、CFCl
3を内部標準として用い、積算回数16回の条件で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロード、ddはダブルダブレットであることを意味する。
【0202】
実施例等で得られた化合物の物性値は、下記に記載した方法により測定した。
【0203】
〔測定試料〕
液晶性化合物そのものを試料として用いて、液晶性化合物についての(1)相構造および(2)相転移温度を測定した。液晶性化合物を母液晶と混合して調製された組成物を試料として用いて、この組成物について、(3)低温相溶性、(4)(5)ネマチック相の上限温度および下限温度、(6)(7)粘度、(8)誘電率異方性、(9)光学異方性、(10)弾性定数、(11)しきい値電圧、(12)電圧保持率等の物性値を測定した。
【0204】
液晶性化合物を母液晶と混合して調製された組成物を試料として用いる場合は、次の方法で測定を行った。液晶性化合物15%と母液晶85%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の式で表される外挿法に従って外挿値を計算し、この外挿値を液晶性化合物の物性値として記載した。
【0205】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の質量%〉×〈母液晶の測定値〉)
/〈化合物の質量%〉
【0206】
ただし、液晶性化合物と母液晶との混合割合が上記割合であっても、25℃でスメクチック相であるとき、または25℃で結晶が析出するときは、液晶性化合物と母液晶との混合割合(液晶性化合物:母液晶)を10%:90%、5%:95%、1%:99%の順に変更していき、25℃でスメクチック相でなくなったときの混合割合、または25℃で結晶が析出しなくなったときの混合割合で、試料の物性値を測定した。なお、特に断りのない限り、液晶性化合物と母液晶との混合割合(液晶性化合物:母液晶)は、15%:85%である。
【0207】
母液晶としては、下記成分を含有する母液晶(i)を用いた。
母液晶(i)中の各成分の割合を質量%で示す。
【化39】
【0208】
〔測定方法〕
物性値の測定は後述する方法で行い、あるいは行うことができる。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0209】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料(液晶性化合物)を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態およびその変化を偏光顕微鏡で観察し、相構造を特定した。
【0210】
(2)相転移温度(℃)
パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システムまたはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料(液晶性化合物)の相変化に伴う、吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿法により求め、相転移温度を決定した。
【0211】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれC
1またはC
2と表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS
A、S
B、S
CまたはS
Fと表した。等方相(等方性液体)はIと表した。相転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への相転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から等方相(等方性液体)への相転移温度(透明点)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。相転移温度の単位は、全て℃である。
【0212】
(3)低温相溶性
液晶性化合物の混合割合が、20%、15%、10%、5%、3%および1%となるように母液晶(i)と液晶性化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管した後、結晶またはスメクチック相が析出しているかどうかを観察した。
【0213】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方相(等方性液体)に変化したときの温度を測定した。試料が液晶性化合物と母液晶(i)との混合物であるときは、T
NIの記号で示した。試料が液晶性化合物と成分B等との混合物であるときは、NIの記号で示した。T
NIは上述の外挿法により算出される外挿値であり、NIは混合物そのものの測定値である。
【0214】
(5)ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管した後、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、T
Cを≦−20℃と記載した。
【0215】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
バルク粘度(η)は、E型回転粘度計を用いて測定した。
【0216】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
回転粘度(γ1)の測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995)に記載された方法に従った。ツイスト角が0度であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。このTN素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に電圧を印加した。0.2秒の無印加の後、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)および無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)およびピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから、回転粘度(γ1)の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定したTN素子を用い、以下に記載した方法で求めた。
【0217】
(8)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
ツイスト角が80度であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであるTN素子に試料を入れた。このTN素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。このTN素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
【0218】
(9)光学異方性(Δn;25℃で測定)
光学異方性(Δn)の測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行った。主プリズムの表面を一方向にラビングした後、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0219】
(10)弾性定数(K;25℃で測定;pN)
弾性定数(K)の測定には、HP4284A型LCRメータ(横河・ヒューレットパッカード(株)製)を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。このセルに0Vから20Vの範囲で電圧を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)および印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)および式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK
11およびK
33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK
11およびK
33の値を用いてK
22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK
11、K
22およびK
33の平均値である。
【0220】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
しきい値電圧(V
th)の測定には、LCD5100型輝度計(大塚電子(株)製)を用いた。光源はハロゲンランプである。ツイスト角が80度であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が約0.45/Δn(μm)であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。このTN素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小になったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧である。
【0221】
(12)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%)
ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。その後、TN素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒の間測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0222】
〔原料〕
ソルミックスA−11は、エタノール(85.5%)、メタノール(13.4%)およびイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。テトラヒドロフランをTHFと略すことがある。
【0223】
〔液晶性化合物の実施例〕
[実施例1A]化合物(No.1)の合成
【化40】
【0224】
〈第1工程〉
窒素雰囲気下、化合物(e−1)(10.00g)、2,2,4−トリメチルペンタン(30.0ml)およびトルエン(30.0ml)を反応器に入れて、60℃に加熱した。プロパンジチオール(6.5ml)を滴下し、60分間攪拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸(19.39g)をゆっくりと加えた。60℃で60分間攪拌し、さらに110℃で120分間攪拌した。反応混合物を25℃まで冷却した後、減圧下で濃縮した。残渣をt−ブチルメチルエーテルからの再結晶により精製して、ジチアリニウム塩(e−2)(7.79g;33.8モル%)を得た。
【0225】
〈第2工程〉
窒素雰囲気下、化合物(e−3)(75.00g)、2,2,4−トリメチルペンタン(150.0ml)およびトルエン(150.0ml)を反応器に入れて、60℃に加熱した。プロパンジチオール(41.2ml)を滴下し、90分間攪拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸(123.20g)をゆっくりと加えた。60℃で60分間攪拌し、さらに110℃で120分間攪拌した。反応混合物を25℃まで冷却した後、減圧下で濃縮した。残渣をt−ブチルメチルエーテルからの再結晶により精製して、ジチアリニウム塩(e−4)(78.38g;49.6モル%)を得た。
【0226】
〈第3工程〉
窒素雰囲気下、3,4,5−トリフルオロフェノール(e−5)(4.20g)、トリエチルアミン(4.3ml)およびジクロロメタン(70ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへ、ジチアリニウム塩(e−4)(10.00g)のジクロロメタン(70ml)溶液をゆっくりと滴下した。60分間攪拌した後、フッ化水素トリエチルアミン錯体(11.6ml)を滴下し、30分間攪拌した。次いで、臭素(6.1ml)をゆっくりと加え60分間攪拌した。反応混合物を25℃まで戻した後、氷水に注ぎ込んだ。この混合物にゆっくりと炭酸水素ナトリウムを加えて、中和した。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(e−6)(4.11g;49.3モル%)を得た。
【0227】
〈第4工程〉
窒素雰囲気下、化合物(e−6)(4.11g)、ビスピナコラートジボラン(e−7)(3.25g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.20g)、酢酸カリウム(3.43g)および1,4−ジオキサン(20ml)を反応器に入れて、3時間加熱還流した。反応混合物を25℃まで冷却し、水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=20:1)で精製して、化合物(e−8)(4.51g;94.5モル%)を得た。
【0228】
〈第5工程〉
窒素雰囲気下、化合物(e−8)(4.51g)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(0.17g)およびジクロロメタン(20ml)を反応器に入れた。そこへ、過酸化水素水(30%;水溶液;2.56g)をゆっくりと滴下した。2時間室温で攪拌した後、反応混合物を水に注ぎ込み、水層をジクロロメタン(10ml)で2回抽出した。一緒にした有機層を水、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ過で除去し、化合物(e−9)のジクロロメタン溶液を得て、この溶液のまま次の反応に用いた。
【0229】
〈第6工程〉
窒素雰囲気下、化合物(e−9)のジクロロメタン溶液、トリエチルアミン(1.7ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへ、ジチアリニウム塩(e−2)(3.69g)のジクロロメタン(40ml)溶液をゆっくりと滴下した。60分間攪拌した後、フッ化水素トリエチルアミン錯体(4.6ml)を滴下し、30分間攪拌した。次いで、臭素(2.4ml)をゆっくりと加え60分間攪拌した。反応混合物を25℃まで戻した後、氷水に注ぎ込んだ。この混合物にゆっくりと炭酸水素ナトリウムを加えて、中和した。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタンで精製した。さらにヘプタンとソルミックスA−11との混合溶媒(体積比、1:1)からの再結晶により精製して、化合物(No.1)(2.85g)を得た。化合物(e−2)からの収率は、65.4モル%であった。
【0230】
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.66(d,2H)、7.27(d,2H)、6.95(dd,2H)、2.08−2.02(m,3H)、1.88−1.86(m,2H)、1.44−1.17(m,7H)、0.98−0.87(m,5H).
【0231】
[実施例2A]化合物(No.2)の合成
【化41】
【0232】
実施例1Aにおいて、化合物(e−3)の代わりに化合物(e−10)を用いることで、化合物(No.2)を得た。
【0233】
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.62(dd,2H)、7.06−7.04(m,2H)、6.96(dd,2H)、2.07−2.01(m,3H)、1.89−1.86(m,2H)、1.42−1.17(m,7H)、0.97−0.88(m,5H).
【0234】
[実施例3A]化合物(No.4)の合成
【化42】
【0235】
実施例1Aにおいて、化合物(e−5)の代わりに化合物(e−11)を用いることで、化合物(No.4)を得た。
【0236】
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.66(d,2H)、7.29(d,2H)、6.80(d,2H)、2.08−2.00(m,3H)、1.89−1.86(m,2H)、1.44−1.17(m,7H)、0.98−0.88(m,5H).
【0237】
[比較例1A]
比較化合物として、化合物(F)を合成した。この化合物は、国際公開第96/011897A号パンフレットに記載された実施例2の化合物であり、本発明の化合物に類似しているからである。
【0238】
【化43】
【0239】
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.59(d,2H)、7.31(d,2H)、6.94(dd,2H)、2.56−2.50(m,1H)、1.91−1.87(m,4H)、1.51−1.42(m,2H)、1.39−1.20(m,5H)、1.10−0.99(m,2H)、0.91(t,3H).
【0240】
[比較例2A]
比較化合物として、化合物(G)を合成した。この化合物は、国際公開第96/011897A号パンフレットに記載された化合物(609)に包含され、本発明の化合物に類似しているからである。
【0241】
【化44】
【0242】
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.59(d,2H)、7.30(d,2H)、6.99−6.93(m,4H)、2.66(t,2H)、1.71−1.64(m,2H)、0.96(t,3H).
【0243】
[比較例3A]
比較化合物として、化合物(H)を合成した。この化合物は、国際公開第96/011897A号パンフレットに記載された化合物(I)に包含され、本発明の化合物に類似しているからである。
【0244】
【化45】
【0245】
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.50−7.48(m,2H)、7.44(dd,1H)、7.31−7.29(m,2H)、7.23−7.19(m,6H)、7.02−6.98(m,2H)、2.66(t,2H)、1.68−1.62(m,2H)、1.40−1.31(m,4H)、0.91(t,3H).
以上の実施例および比較例の化合物の物性値を表1に示す。
【0246】
【表1】
【0247】
上述したように、液晶性化合物そのものを試料として用いて、液晶性化合物についての相転移温度を測定した。また、液相性化合物(15%)を母液晶(i)(85%)と混合して調製した液晶組成物を試料として用いて、この組成物について、上限温度(T
NI)、粘度(η)、誘電率異方性の値(Δε)および光学異方性の値(Δn)を測定した。この液晶組成物についての測定値から、上記の外挿法に従って外挿値を算出して、この外挿値を液晶性化合物の物性値として記載した。
【0248】
なお、合成した各液晶性化合物(15%)は、25℃で母液晶(i)(85%)によく溶けた。ただし、比較化合物(H)において、測定試料は、10%の比較化合物(H)と90%の母液晶(i)とから調製した。通常の割合(15%:85%)では、25℃で結晶が析出したからである。
【0249】
表1から、化合物(No.1)は、比較化合物(F)と比べて、上限温度(T
NI)が高く、誘電率異方性の値(Δε)が大きい点で優れていること、化合物(No.2)は、比較化合物(G)と比べて、上限温度(T
NI)が高い点で優れていること、化合物(No.1)は、比較化合物(H)と比べて、粘度(η)が小さく、他の液晶性化合物との相溶性が大きい点で優れていること、が分かった。
【0250】
実施例1A〜3Aに記載された合成方法と同様の方法により、以下に示す化合物(No.1)〜(No.137)を合成することができる。付記したデータは、前記した方法に従って求めた。
【0251】
【化46】
【0252】
【化47】
【0253】
【化48】
【0254】
【化49】
【0255】
【化50】
【0256】
【化51】
【0257】
〔液晶組成物の実施例〕
実施例で用いた各化合物は、表2の定義に基づいて記号により表した。表2において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全質量に基づいた質量百分率(質量%)である。最後に、液晶組成物の物性値をまとめた。物性値は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を外挿することなくそのまま記載した。
【0258】
【表2】
【0259】
[実施例1B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 3%
3−HXB(F)XB(F,F)−F (No.2) 3%
5−HB−CL (2−2) 16%
3−HH−4 (12−1) 12%
3−HH−5 (12−1) 4%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−CL (3−1) 3%
4−HHB−CL (3−1) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
4−HHB(F)−F (3−2) 9%
5−HHB(F)−F (3−2) 9%
7−HHB(F)−F (3−2) 8%
5−HBB(F)−F (3−23) 4%
1O1−HBBH−5 (14−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 2%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
【0260】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=106.3℃であり、Δn=0.087であり、Δε=4.3であり、η=16.4mPa・sであった。
【0261】
[実施例2B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 4%
3−HXBXB(F,F)−CF3 (No.4) 4%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 17%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 16%
3−H2BB(F,F)−F (3−27) 10%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHEBB−F (4−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
1O1−HBBH−4 (14−1) 4%
1O1−HBBH−5 (14−1) 4%
【0262】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=97.1℃であり、Δn=0.114であり、Δε=9.9であり、η=34.5mPa・sであった。
【0263】
[実施例3B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 3%
3−HXB(F)XB(F,F)−F (No.2) 3%
3−HXBXB(F,F)−CF3 (No.4) 3%
5−HB−F (2−2) 9%
6−HB−F (2−2) 9%
7−HB−F (2−2) 7%
2−HHB−OCF3 (3−1) 7%
3−HHB−OCF3 (3−1) 7%
4−HHB−OCF3 (3−1) 7%
5−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
5−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCHF2 (3−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (3−3) 5%
3−HH2B(F)−F (3−5) 3%
3−HBB(F)−F (3−23) 7%
5−HBB(F)−F (3−23) 7%
5−HBBH−3 (14−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (14−2) 3%
【0264】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=84.7℃であり、Δn=0.091であり、Δε=5.9であり、η=16.4mPa・sであった。上記液晶組成物100質量部にOp−5(光学活性化合物)を0.25質量部添加したときのピッチは、60.7μmであった。
【0265】
[実施例4B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 4%
3−HXB(F)XB(F,F)−F (No.2) 4%
5−HB−CL (2−2) 8%
3−HH−4 (12−1) 8%
3−HHB−1 (13−1) 2%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 8%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 6%
【0266】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=76.6℃であり、Δn=0.103であり、Δε=9.8であり、η=23.5mPa・sであった。
【0267】
[実施例5B]
3−HXB(F)XB(F,F)−F (No.2) 4%
3−HXBXB(F,F)−CF3 (No.4) 4%
3−HB−CL (2−2) 3%
5−HB−CL (2−2) 4%
3−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (3−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (3−19) 15%
V−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−HHB(F)−F (3−2) 5%
5−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (3−21) 7%
2−H2BB(F)−F (3−26) 5%
3−H2BB(F)−F (3−26) 5%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
【0268】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=68.7℃であり、Δn=0.095であり、Δε=9.6であり、η=27.1mPa・sであった。
【0269】
[実施例6B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 3%
3−HXBXB(F,F)−CF3 (No.4) 3%
5−HB−CL (2−2) 14%
7−HB(F,F)−F (2−4) 3%
7−HB−1 (12−5) 5%
3−HB−O2 (12−5) 12%
V2−BB−1 (12−8) 5%
3−HHB−1 (13−1) 8%
3−HHB−3 (13−1) 5%
3−HHB−O1 (13−1) 5%
2−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
【0270】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=70.1℃であり、Δn=0.085であり、Δε=4.2であり、η=16.7mPa・sであった。
【0271】
[実施例7B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 5%
3−HXB(F)XB(F,F)−F (No.2) 4%
5−HB−CL (2−2) 3%
7−HB(F)−F (2−3) 7%
3−HB−O2 (12−5) 9%
3−HH−EMe (12−2) 23%
3−HHEB−F (3−10) 8%
5−HHEB−F (3−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 5%
5−HGB(F,F)−F (3−103) 6%
3−H2GB(F,F)−F (3−106) 5%
5−GHB(F,F)−F (3−109) 7%
【0272】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=75.3℃であり、Δn=0.070であり、Δε=6.3であり、η=19.3mPa・sであった。
【0273】
[実施例8B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 3%
3−HXB(F)XB(F,F)−F (No.2) 3%
3−HXBXB(F,F)−CF3 (No.4) 3%
3−HB−O2 (12−5) 10%
5−HB−CL (2−2) 13%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 7%
3−PyB(F)−F (2−15) 10%
5−PyB(F)−F (2−15) 10%
3−PyBB−F (3−80) 10%
4−PyBB−F (3−80) 10%
5−PyBB−F (3−80) 10%
5−HBB(F)B−2 (14−5) 6%
5−HBB(F)B−3 (14−5) 5%
【0274】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=81.9℃であり、Δn=0.176であり、Δε=9.6であり、η=37.5mPa・sであった。
【0275】
[実施例9B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 4%
3−HXBXB(F,F)−CF3 (No.4) 4%
3−HH−V (12−1) 25%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−97) 18%
3−HHB−1 (13−1) 2%
2−HBB−F (3−22) 3%
3−HBB−F (3−22) 4%
3−HHB−CL (3−1) 7%
1−BB(F)B−2V (13−6) 6%
2−BB(F)B−2V (13−6) 6%
3−BB(F)B−2V (13−6) 3%
2−HHB(F,F)−F (3−3) 4%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 4%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−47) 10%
【0276】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=87.0℃であり、Δn=0.137であり、Δε=9.5であり、η=22.4mPa・sであった。
【0277】
[実施例10B]
3−HXBXB(F,F)−F (No.1) 4%
3−HXB(F)XB(F,F)−F (No.2) 4%
3−HB−O1 (12−5) 15%
3−HH−4 (12−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 10%
3−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 7%
5−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 13%
3−HHB−1 (13−1) 6%
【0278】
上記成分を含有する液晶組成物は、NI=77.6℃であり、Δn=0.087であり、Δε=−1.4であり、η=34.5mPa・sであった。