(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作環において、前記第二凸リードおよび前記第二凹リードの前記一方は、前記第三凸リードおよび前記第三凹リードの前記一方よりも、前記光学部材の光軸に直交する面に対する傾きが大きい請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
前記第二凸リードは、前記操作環および前記駆動筒の一方に対して一部が密着した直接係合部と、前記直接係合部から前記第二凸リードの長手方向に連続し、且つ、前記操作環および前記駆動筒の一方から離間する延長係合部とを含む請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。下記の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、カメラシステム100の模式的断面図である。カメラシステム100は、レンズユニット200およびカメラボディ300を含む。なお、記載を簡潔にする目的で、下記の説明においては、カメラボディ300に装着されたレンズユニット200に対して物体側を、カメラシステム100の前側または先側と記載する。また、レンズユニット200に対して物体から遠い側を、カメラシステム100における後側または背面側と記載する。
【0010】
レンズユニット200は、光軸Zに沿って配置された第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230および第四レンズ群240を含む光学系を有する。第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230および第四レンズ群240は、それぞれ個別のレンズ保持枠212、222、232、242に個別に保持される。
【0011】
図示のレンズユニット200は、第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230および第四レンズ群240が相互に接近した沈胴状態にある。これにより、レンズユニット200の光軸Z方向の長さが短縮されて携帯性は向上するが、光学装置としての機能は利用できない状態にある。
【0012】
レンズユニット200は、固定筒201、ズーム環202、直進筒203、先筒204、カム筒205、案内筒206、第一移動枠207および第二移動枠209を含む鏡筒を有する。固定筒201、後端にレンズ側マウント部208を有する。レンズ側マウント部208をカメラボディ300前面のボディ側マウント部360と結合させることにより、固定筒201は、カメラボディ300に対して結合される。
【0013】
レンズユニット200は、レンズユニット200をカメラボディ300に対して回転させることにより、レンズ側マウント部208およびボディ側マウント部360の結合を解除できる。よって、カメラボディ300は、規格に適合するレンズ側マウント部208を有する他のレンズユニット200と組み合わせても使用できる。
【0014】
ズーム環202は、レンズユニット200の外周面に配され、ユーザの操作により、光学系の光軸Zを回転軸として回転する。ズーム環202は、内面に形成されたリード溝等により、直進筒203およびカム筒205に係合する。直進筒203は、固定筒201に対して光軸Z方向に移動する。
【0015】
カム筒205は、ズーム環202と共に回転しつつ、直進筒203に連れ従って光軸Z方向に移動する。カム筒205の内側に位置する案内筒206は、固定筒201に対して固定されている。よって、カム筒205は、案内筒206に対しても光軸Z方向に移動する。
【0016】
先筒204は、直進筒203およびカム筒205にそれぞれ係合して支持される。これにより、先筒204は、直進筒203およびカム筒205の固定筒201に対する移動に連れ従って光軸Z方向に移動する。
【0017】
更に、先筒204は、回転することなく光軸Z方向に移動する直進筒203と、回転しつつ光軸Z方向に移動するカム筒205との間で駆動されて、直進筒203およびカム筒205に対しても移動する。先筒204は、第一レンズ群210を保持するレンズ保持枠212を先端に支持しているので、先筒204の移動に伴って第一レンズ群210も移動する。
【0018】
第一移動枠207および第二移動枠209は、カム筒205に形成されたカム溝に係合するカムピン283、284をそれぞれ有して、カム筒205の回転に伴って固定筒201に対して光軸Z方向に個別に移動する。これにより、第一移動枠207は、第二レンズ群220を保持したレンズ保持枠222を光軸光方向移動させる。また、第二移動枠209は、第三レンズ群230および第四レンズ群240を保持するレンズ保持枠232、242を間接的または直接的に連結して、第三レンズ群230および第四レンズ群240を光軸Z方向移動させる。
【0019】
更に、第三レンズ群230を保持するレンズ保持枠232は、第四レンズ群240を保持したレンズ保持枠242に固定された送りねじ組立体270により駆動されて、レンズ保持枠242に対して更に移動可能に支持される。送りねじ組立体270は、ステッピングモータ272、送りねじ274およびフレーム276を有する。
【0020】
フレーム276は、ステッピングモータ272および送りねじ274を一体的に支持し、レンズ保持枠242に対して固定される。ステッピングモータ272は、送りねじ274を回転駆動する。送りねじ274は、ラック部材278を介してレンズ保持枠232と係合する。
【0021】
これにより、レンズ保持枠232に保持された第三レンズ群230を、第四レンズ群240を保持したレンズ保持枠242に対して相対移動させることができる。レンズユニット200において第三レンズ群230が移動した場合、レンズユニット200の光学系の焦点位置が変化する。よって、カメラボディ300側からの信号に基づいてステッピングモータ272を電気的に制御することにより、レンズユニット200を合焦させることができる。
【0022】
カメラボディ300は、ボディ側マウント部360の後方に配されたミラーユニット370を備える。ミラーユニット370の下方には合焦光学系380が配される。ミラーユニット370の上方にはフォーカシングスクリーン352が配される。
【0023】
フォーカシングスクリーン352の更に上方にはペンタプリズム354が配され、ペンタプリズム354の後方にはファインダ光学系356が配される。ファインダ光学系356の後端は、ファインダ350としてカメラボディ300の背面に露出する。
【0024】
ミラーユニット370の後方には、シャッタユニット310、ローパスフィルタ332、撮像素子330、基板320および表示部340が順次配される。液晶表示板等により形成される表示部340は、カメラボディ300の背面に表われる。基板320には、制御部322および画像処理部324等が実装される。
【0025】
ミラーユニット370は、メインミラー371およびサブミラー374を含む。メインミラー371は、メインミラー回動軸373により軸支されたメインミラー保持部372に支持される。
【0026】
サブミラー374は、サブミラー回動軸376により軸支されたサブミラー保持部375に支持される。サブミラー保持部375は、メインミラー保持部372に対して回動する。よって、メインミラー保持部372が回動した場合、サブミラー保持部375もメインミラー保持部372と共に変位する。
【0027】
メインミラー保持部372の前端が降下した場合、メインミラー371は、レンズユニット200から入射した入射光束上に斜めに位置する。メインミラー保持部372が上昇した場合、メインミラー371は、入射光束を避けた位置に退避する。
【0028】
メインミラー371が入射光束上に位置する場合、レンズユニット200を通じて入射した入射光束は、メインミラー371に反射されてフォーカシングスクリーン352に導かれる。フォーカシングスクリーン352は、レンズユニット200の光学系と共役な位置に配されて、レンズユニット200の光学系が形成した像を可視化する。
【0029】
フォーカシングスクリーン352上の像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から観察される。ここで、ペンタプリズム354を通じて像を観察することにより、ファインダ350からは正立正像を観察できる。
【0030】
測光センサ390は、ファインダ光学系356の上方に配され、分岐されさた入射光束の一部を受光する。測光センサ390は、被写体輝度を検出して、制御部322に撮影条件の一部である露出条件を算出させる。
【0031】
メインミラー371は、入射光束の一部を透過するハーフミラー領域を有する。サブミラー374は、ハーフミラー領域から入射した入射光束の一部を、合焦光学系380に向かって反射する。合焦光学系380は、入射した入射光束の一部を焦点検出センサ382に導く。これにより、制御部322は、レンズユニット200の光学系を合焦させる場合に移動するレンズの目標位置を決定する。
【0032】
上記のようなレンズユニット200およびカメラボディ300を備えるカメラシステム100においてレリーズボタンが半押しされると、焦点検出センサ382および測光センサ390が有効になり、被写体像を適切な撮影条件で撮影できる状態になる。次いで、レリーズボタンが全押しされると、メインミラー371およびサブミラー374が退避位置に移動して、シャッタユニット310が開く。これにより、レンズユニット200から入射した入射光束は、ローパスフィルタ332を通過して、撮像素子330に入射する。
【0033】
図2は、レンズユニット200の他の状態を示す部分的な断面図であり、光軸Zに対して図中上側に、広角側に変倍されたレンズユニット200の断面を示す。また、
図2において、光軸Zに対して図中下側には、望遠側に変倍されたレンズユニット200の断面を示す。
【0034】
なお、
図2において、
図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。ただし、
図2は、光軸Zを含む断面である点で
図1と共通するものの、
図1とは異なる断面が示されており、
図1と共通の要素であっても、
図1とは異なる形状で現れている場合がある。
【0035】
レンズユニット200において、直進筒203は、リード駒292においてズーム環202と係合する。直進筒203は、案内筒206に対して回転が規制されているので、ズーム環202が回転操作された場合、光軸Z方向に移動する駆動力をズーム環202から受ける。
【0036】
カム筒205は、それ自体の後端付近に配されたバヨネット爪286により、直進筒203の後端付近に係合する。バヨネット爪286は、直進筒203の内面に周方向に延在するバヨネット溝に係合するので、カム筒205は、光軸Zの周りに回転できる。しかしながら、直進筒203が光軸Z方向に移動した場合は、直進筒203に連れ従って、カム筒205も光軸方向に移動する。換言すれば、カム筒205と直進筒203とは、光軸Z方向に限って係合されている。
【0037】
また、カム筒205は、それ自体の外周面に固定された係合部材285を通じて、ズーム環202の内面に光軸Zと平行に設けられた溝に係合する。これにより、ズーム環202が回転操作された場合、カム筒205も回転する。
【0038】
既に説明した通り、ズーム環202が回転操作された場合、直進筒203は光軸Z方向に移動し、カム筒205も直進筒203に連れ従って移動する。よって、ズーム環202が回転操作された場合、カム筒205は、光軸Zの周りに回転しつつ、光軸Z方向に移動する。
【0039】
また、ズーム環202が回転操作された場合、直進筒203およびカム筒205は、案内筒206に対しても移動することになる。案内筒206は、光軸Zの方向についてレンズユニット200の前端側に向かって延在するので、カム筒205を内面側から支持すると共に、直進筒203の後端に設けられた直進キー255と係合する直進溝288により、直進筒203の回転を抑制する。
【0040】
先筒204は、先端に第一レンズ群210のレンズ保持枠212を支持する。また、先筒204は、カムピン281等により直進筒203およびカム筒205に係合して双方から支持される。よって、直進筒203およびカム筒205が光軸Z方向に移動する場合は、先筒204も連れ従って光軸Z方向に移動する。
【0041】
更に、ズーム環202が回転操作された場合、先筒204は、回転することなく光軸Z方向に移動する直進筒203と、回転しつつ光軸Z方向に移動するカム筒205との間で駆動されて、直進筒203およびカム筒205に対しても光軸Z方向に移動する。これにより、先筒204の先端に保持された第一レンズ群210は、固定筒201から前方に大きく繰り出される。
【0042】
このように、ズーム環202が回転操作された場合、第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230および第四レンズ群240が、固定筒201に対してそれぞれ個別に移動する。これにより、ズーム環202の回転量に応じて、レンズユニット200に形成された光学系の倍率が変化する。また、レンズユニット200の変倍の範囲を超えてズーム環202が回転操作された場合、レンズユニット200は短縮された沈胴状態になる。
【0043】
図3は、レンズユニット200の一部の分解斜視図である。
図3には、ズーム環202、フレキシブル基板251、固定筒201、案内筒206、直進筒203およびカム筒205が示される。
【0044】
ズーム環202は、レンズユニット200において最外周に取付られ、固定筒201に対して回転する。ズーム環202の内面には、螺旋状の複数の凹状リード293が、第三凹リードの一例として設けられる。ズーム環202がレンズユニット200に取り付けられた場合、凹状リード293は、第三凸リードの一例としての直進筒203のリード駒292と係合する。
【0045】
また、ズーム環202には、ブラシ252が取り付けられる。ブラシ252は、ズーム環202に設けられた開口を通じて、レンズユニット200の径方向内側に向かって付勢される。これにより、ブラシ252は、弾性を有し、ズーム環202と共に回転する電気的接点を形成する。
【0046】
フレキシブル基板251は、固定筒201の外周面に沿って貼り付けられる。フレキシブル基板251の表面には、固定筒201の周方向に沿って複数の接点が設けられる。上記のブラシ252は、ズーム環202の回転と共にフレキシブル基板251上の接点のいずれかと導通して、ズーム環202の回転量を電気的に検出する。
【0047】
固定筒201は、レンズ側マウント部208に結合される。よって、レンズユニット200がカメラボディ300に取り付けられた場合、固定筒201は、カメラボディ300に対しても固定され、レンズユニット200の動作の基準となる。
【0048】
案内筒206は、径方向外側に向かって突出する複数の位置決め部295を有する。これにより、案内筒206は、固定筒201の内側において予め定められた位置に位置決めされ、固定筒201に対して固定される。案内筒206は、固定筒201に対して、例えばねじ止めで固定される。これにより、案内筒206は、固定筒201と一体となる。
【0049】
図4は、案内筒206を単独で拡大して示す斜視図であり、案内筒206をやや後方から見上げた様子を示す。案内筒206の外周面には、2本一組で螺旋状に形成された凹状断面を有する凹状リード294が、第一凹リードの一例として複数組配される。これらの凹状リード294は、カム筒205の内面に第一凸リードの一例として設けられた凸状リード253と係合する。これにより、カム筒205が案内筒206に対して回転しつつ光軸Z方向に移動する場合に、カム筒205の移動経路が案内される。
【0050】
また、案内筒206の外周面には、光軸Z方向に延在する直進溝288が配される。直進溝288は、直進筒203の後端に設けられた直進キー255と係合して、直進筒203の光軸Z方向への移動を許容しつつ回転を規制する。
【0051】
再び
図3を参照すると、直進筒203は、カム筒205のバヨネット爪286と係合するバヨネット溝を内面に有する。バヨネット溝は、直進筒203の内面において周方向に延在すると共に、一部が光軸Z方向に切り欠かれる。これにより、カム筒205の外側に直進筒203を装着した場合に、カム筒205のバヨネット爪286を、バヨネット溝の内部に光軸Z方向に嵌めることができる。
【0052】
また、直進筒203は、光軸Z方向に設けられた直進溝297を有する。直進溝297は、先筒204の一部と係合して、先筒204の光軸Z廻りの回転を規制する。
【0053】
更に、直進筒203は、外周面の後端近傍に、複数のリード駒292を有する。リード駒292は、直進筒203の径方向外側に向かって突出する。なお、前方に繰り出された場合、直進筒203の外周面前端側はレンズユニット200の外部に向かって露出する。よって、直進筒203の表面および前端は、溝、突起、切欠き等を設けずに平坦に仕上げられる。
【0054】
組み立てられたレンズユニット200において、案内筒206の径方向外側であって、直進筒203の内側には、カム筒205が配される。カム筒205の外周面後端近傍には、径方向外側に向かって突出する複数のバヨネット爪286が設けられる。
【0055】
バヨネット爪286は、直進筒203の後端近傍の内面に、周方向に配されたバヨネット溝と係合する。これにより、カム筒205は、直進筒203に対する回転を許容されつつ、光軸Z方向については、直進筒203に連れ従って移動する。
【0056】
図5は、カム筒205を単独で拡大して示す斜視図であり、カム筒205をやや後方から見上げた様子を示す。カム筒205の外周面には、一対の駆動カム溝291と、単一の耐衝撃カム溝299とを組み合わせたカム溝群が複数配される。それぞれのカム溝群において、一対の駆動カム溝291は、単一の耐衝撃カム溝299を挟んで配される。
【0057】
駆動カム溝291の一端は、カム筒205の光軸方向に端面につながる溝端開口部290をそれぞれ有する。一対の駆動カム溝291と1本の耐衝撃カム溝299がなす一組のカム溝群において、一本の駆動カム溝291と耐衝撃カム溝299は、溝端開口部290を共用する。これにより、カム筒205の薄肉部の面積を減らし、カム筒205の強度を向上させることができる。
【0058】
また、カム筒205の内周面には、それぞれ複数の凸状リード253および駆動カム溝254が配される。レンズユニット200において、凸状リード253は、既に説明した通り、案内筒206の凹状リード294に係合する。
【0059】
駆動カム溝254は、光学部材と一体的に設けられたカムピンに係合する。より具体的には、第二レンズ群220を保持するレンズ保持枠222に設けられたカムピン、第四レンズ群を保持するレンズ保持枠242に結合された第二移動枠209に設けられたカムピンが、駆動カム溝254に係合する。
【0060】
更に、カム筒205の外周面には、係合部材285がねじ止めされる。係合部材285は、カム筒205の径方向外側に向かって、カム筒205から突出する。係合部材285は、ズーム環202の内面に係合する。
【0061】
なお、
図5は係合部材285をカム筒205に取り付けた状態を示している。しかしながら、カム筒205に取り付けた係合部材285は、カム筒205の外周面から更に外側に突出する。このため、係合部材285を取り付けたまま、直進筒203等の内側に挿入することはできない。そこで、レンズユニット200を組み立てる場合には、カム筒205を直進筒203等の内側に挿入した後に、係合部材285がカム筒205に取付られる。
【0062】
図6は、係合部材285を単独で示す平面図である。係合部材285は、取付部256とリード部257とを有する。
【0063】
取付部256は、カム筒205の外周面に倣った形状を有する面に、ねじ挿通穴261および回り止め穴262を有する。ねじ挿通穴261は、係合部材285をカム筒205の外周面に取り付ける場合に止めねじを挿通する。
【0064】
回り止め穴262は、カム筒205の外周面に設けられた突起と嵌合して、係合部材285に回転モーメントが作用した場合に、係合部材285が回転することを防止する。これらの構造により、係合部材285は、取付部256をカム筒205の外周面に密着させた状態でねじ止めして、係合部材285とカム筒205とを一体化できる。
リード部257は、一端を取付部256と一体的に形成され、ズーム環202に設けられたリード溝と嵌合する形状を有する。リード部257が係合するリード溝は、ズーム環202に螺旋状に形成される。よって、それに係合するリード部257は、平行四辺形の平面形状を有する。
【0065】
また、リード部257の他端は、取付部256から外側に張り出している。よって、係合部材285をカム筒205に取り付けた場合、リード部257の先端部は、カム筒205の外周面から離間した状態になる。これにより、取付部256にねじ挿通穴261を設けつつも、リード部257の十分な長さB
1を確保している。
【0066】
再び
図3を参照すると、組み立てられたレンズユニット200において、カム筒205の径方向外側であって、直進筒203の内側には、先筒204の後端が挟まれる。先筒204は、第一レンズ群210のレンズ保持枠212を先端で支持する。
【0067】
図7は、先筒204を単独で示す斜視図であり、先筒204をやや後方から見上げた様子を示す。先筒204は、外周面の後端近傍に、3本の直進駒282を有する。
【0068】
3本の直進駒282は、先筒204の周方向について等間隔に配される。レンズユニット200において、直進駒282は、直進筒203の内面に形成された直進溝297に係合する。これにより、先筒204の、直進筒203に対する回転が規制される。直進筒203も、案内筒206に対する回転を規制されているので、先筒204は、案内筒206に対しても回転が規制されることになる。
【0069】
また、先筒204は、内面の後端近傍に、それぞれ複数のカムピン281および耐衝撃駒289を有する。3本の耐衝撃駒289は、先筒204の周方向について等間隔に配される。耐衝撃駒289の各々は、先筒204の径方向に対して平行に近い起立した周面を有する。また、耐衝撃駒289の各々における周面は、レンズユニットの光軸Zと直交する一対の平面を含む。
【0070】
レンズユニット200を組み立てる場合、先筒204のカムピン281および耐衝撃駒289は、カム筒205の溝端開口部290を通じて、駆動カム溝291および耐衝撃カム溝299に挿入される。カム筒205の駆動カム溝291に挿入されたカムピン281は、駆動カム溝291に常時接して、先筒204を位置決めすると共に駆動する。
【0071】
カム筒205の耐衝撃カム溝299に挿入された耐衝撃駒289は、先筒204に力学的負荷がかからない場合は耐衝撃カム溝299のカム面から離間している。しかしながら、先筒204の先端が押された場合、レンズユニット200に衝撃が加わった場合等には、耐衝撃カム溝299に当接して衝撃を分散させる。これにより、駆動カム溝291を保護すると共に、カムピン281の脱調を防止する。
【0072】
なお、既に説明した通り、レンズユニット200においては、フレキシブル基板251をスケールとし、ブラシ252を用いたエンコーダで固定筒201に対するズーム環202の相対移動量を計測して、ズーム環202の回転操作量を検出できる。これにより、カメラシステム100の制御部322は、レンズユニット200に設定された焦点距離を検知できる。
【0073】
ここで、ユーザの操作によるズーム環202の回転量を大きくすることにより、操作量の検出精度を向上させることができる。ただし、ズーム環202に対する操作に応じて回転するカム筒205の回転量が大きくなると、カム筒205に形成された凸状リード253、駆動カム溝291および耐衝撃カム溝299個々の周方向の寸法が長くなる。このため、カム筒205に配置できる駆動カム溝254等の数および長さが制限される。
【0074】
しかしながら、レンズユニット200においては、ズーム環202の回転操作による回転量よりも、カム筒205の回転量を小さくすることにより、ズーム環202回転量検出精度を向上させつつ、カム筒205に多くの駆動カム溝254を配置している。
【0075】
図8は、ズーム環202の外周面におけるレイアウトを示す展開図である。図中上側がレンズユニット200の先端側に相当する。ズーム環202の内面には、2種類の凹状リード296、293が配される。
【0076】
第二凹リードの一例として設けられた凹状リード296は、カム筒205に取り付けられた係合部材285のリード部257を第二凸リードの一例としてこれに係合する。よって、ズーム環202が回転操作された場合、ズーム環202の回転運動の一部が、係合部材285を通じてカム筒205に伝達される。
【0077】
凹状リード293、296はいずれも螺旋状に形成されるが、光軸Xに対する傾きは相互に異なる。即ち、単独で配された凹状リード296は、レンズユニット200の光軸Zに対して直交する平面X−Yに対して相対的に大きな角度αをなす。一方、平行に複数配された凹状リード293は、平面X−Yに対して相対的に小さな角度を有する。
【0078】
このため、単一の凹状リード296は、複数箇所で凹状リード293と交差する。凹状リード296、293の交差点においては、凹状リード296、293の各々の側壁に他の凹状リード296、293の端部が開口する。しかしながら、単一の凹状リード296は、他の凹状リード293よりも深く形成される。これにより、凹状リード296による案内が交差点で途切れることが防止される。
【0079】
また、凹状リード296に係合するリード部257の長さB
1は、交差点の開口の幅A
1よりも十分に長い。よって、凹状リード296および係合部材285は、点接触あるいは線接触ではなく、常に面どうしの接触により係合する。これにより、凹状リード296は、全長にわたってリード部257を精度よく案内する。
【0080】
なお、凹状リード296、293の交差点においては、凹状リード293においても、側壁に、幅A
2の開口が生じる。凹状リード293には、直進筒203のリード駒292が係合する。そこで、直進筒203について次に説明する。
【0081】
図9は、直進筒203の外周面におけるレイアウトを示す展開図である。図中上側がレンズユニット200の先端側に相当する。直進筒203は、直進キー255、開口部258およびリード駒292を有する。
【0082】
直進キー255は、案内筒206の直進溝288に係合して、直進筒203の回転を規制する。開口部258は、直進筒203の内側にカム筒205を組み込んだ場合に、カム筒205の表面の一部を露出させる。これにより、例えば、直進筒203の内側に組み込んだカム筒205に係合部材285を組み付けることができる。
【0083】
即ち、係合部材285は、開口部258の端部に設けられた幅広の挿入部259において、取付部256をカム筒205の外周面にねじ止めして取り付けられる。取り付けられた係合部材285において、リード部257は、直進筒203の外周面側に差し出される。
【0084】
よって、カム筒205が直進筒203に対して回転した場合、リード部257は、直進筒203の外周面に沿って移動する。このように、直進筒203においては、開口部258の面積を最小限にとどめて直進筒203の表面積を確保すると同時に、リード部257にも十分な長さB
1を確保している。
【0085】
直進筒203において、リード駒292は、ズーム環202に複数平行して設けられた凹状リード293に係合する。よって、直進筒203には、ズーム環202における凹状リード293と同数のリード駒292が配される。
【0086】
リード駒292の各々は、凹状リード293の側壁に倣った平行四辺形の平面形状を有する。よって、リード駒292および凹状リード293は、点接触あるいは線接触ではなく、面どうしの接触により係合する。
【0087】
また、リード駒292の長手方向の長さB
2は、凹状リード293の側壁における開口の幅A
2よりも十分に長い。よって、これにより、凹状リード296は、全長にわたってリード部257を精度よく案内する。
【0088】
直進筒203において、リード駒292は直進筒203の後端近傍に配置されている。また、凹状リード293は、ズーム環202の内面前端まで延在している。よって、直進筒203を、その全長に近い長さまで繰り出すことができ、レンズユニット200の変倍率を大きくできる。
【0089】
このように、直進筒203においては、凹状リード293に係合するリード駒292が、直進筒203の周上に複数設けられているので、ズーム環202による直進筒203の位置決めが安定する。更に、直進筒203は、リード駒292の位置から光軸Z方向に離間した最後端内面に設けられた複数の直進キー255において、案内筒206の直進溝288に係合する。よって、直進筒203の光軸Zに対する傾きがぶれることが防止される。
【0090】
更に、直進筒203の固定筒201に対する傾きが安定するので、直進筒203に支持された先筒204の光軸に対する傾きが変化することも抑制される。よって、直進筒203および先筒204により2段階に伸筒しても、レンズユニット200の光学性能が変化し難い。これにより、高い光学性能を安定して発揮する高倍率の変倍レンズユニットを提供できる。換言すれば、光学性能を維持しつつ、より変倍率の高いレンズユニット200を形成できる。
【0091】
図10は、案内筒206の外周面におけるレイアウトを示す展開図である。図中上側がレンズユニット200の先端側に相当する。案内筒206は、直進溝288および凹状リード294を有する。
【0092】
案内筒206において、直進溝288は、各々が光軸Z方向に延在して複数配される。螺旋状に形成された凹状リード294は、図中において、レンズユニット200の光軸Zに対して直交する平面X−Yに対して角度γをなして傾斜する。また、凹状リード294は、互いに位相のずれた2本が対になり、更に、複数対が案内筒206に配される。このため、直進溝288の各々は、それぞれ2本の凹状リード294と交差する。
【0093】
凹状リード294との交差点においては、直進溝288の側壁に凹状リード294の端部が開口する。しかしながら、直進溝288は、凹状リード294よりも深く形成されている。これにより、直進溝288の直進キー255に対する案内が交差点で途切れることが防止される。
【0094】
また、直進溝288との交差点において、凹状リード294の側壁には直進溝288の端部が開口する。ここで、凹状リード294の長手方向について計ると、直進溝288端部の開口は幅A
3を有する。
【0095】
しかしながら、一対の凹状リード294は、案内筒206の周方向について互いに異なる位置にあるので、開口の位置も互いにずれている。よって、一対の凹状リード294による案内が同時になくなることは防止されている。
【0096】
図11は、カム筒205の内周面におけるレイアウトを外周面側から見た場合の展開図である。図中上側がレンズユニット200の先端側に相当する。カム筒205は、内周面に、凸状リード253および駆動カム溝254を有する。
【0097】
カム筒205の内周面においては、まず、複数の駆動カム溝254が配される。駆動カム溝254は、各々が複雑な形状を有し、カム筒205の内周面における占有面積が広い。一方、凸状リード253は、駆動カム溝254の隙間を縫って断続的に螺旋を描く。
【0098】
ここで、凸状リード253はカム筒205の内周面から隆起して形成され、駆動カム溝254はカム筒205の内周面から陥没している。よって、凸状リード253と駆動カム溝254とを交差させることはできない。このため、駆動カム溝254と交差する区間では、凸状リード253が省かれている。
【0099】
しかしながら、凸状リード253切片のうち短いものでも、図中に二点鎖線により示すように長さB
3を有する。この長さB
3は、
図10に示した凹状リード294の側壁に生じる開口の幅A
3よりも十分に広い。よって、互いに係合する凸状リード253および凹状リード294は、点接触あるいは線接触ではなく、常に面どうしの接触により係合する。これにより、案内筒206の凹状リード294は、カム筒205の凸状リード253を、高精度を維持しつつ案内する。
【0100】
また、凸状リード253のうちの一部は、カム筒205における後端側に配されている。よって、カム筒205が案内筒206から前方に繰り出された場合も、カム筒205は、多数の凸状リード253により案内筒206に対して係合する。よって、繰り出されたカム筒205は、案内筒206に対して精度よく位置決めされる。
【0101】
上記のようなレイアウトを有するズーム環202、直進筒203、案内筒206およびカム筒205を有するレンズユニット200において、ズーム環202が回転操作された場合、ズーム環202の凹状リード293にリード駒292で係合する直進筒203が、回転することなく光軸Z方向に移動する。これにより、カム筒205は、直進筒203に連れ従って光軸Z方向に移動する。
【0102】
更に、カム筒205は、内周面の凸状リード253により案内筒206の凹状リード294に係合している。よって、直進筒203に連れ従って光軸Z方向に移動した場合、カム筒205は、凹状リード294および凸状リード253のリード量に応じて、光軸Zの回りを回転する。
【0103】
いま、ズーム環202の回転操作により生じる直進筒203の移動量をX
1[mm]、ズーム環202の回転量を回転角度によりY
1[°]とした場合、リード駒292のリードZ
1[mm]は下記の式1に従って算出できる。よって、例えば、直進筒203の繰り出し量を30[mm]、ズーム環202の回転量を180[°]と設定した場合、リード駒292のリードが60[mm]となるようにすればよい。
Z
1=(X
1×360)/Y
1 ・・・式1
【0104】
一方、カム筒205について考えると、直進筒203が光軸Z方向に移動量X
1[mm]まで移動した場合、カム筒205も同じ移動量まで移動する。よって、カム筒205の移動量をX
1[mm]とし、カム筒205の回転角をY
2[°]とした場合、案内筒206の凹状リード294のリードZ
2[mm]は、下記の式2に従って算出できる。これにより、カム筒205の繰り出し量が30[mm]の場合に、カム筒205の回転量を90[°]にするには、凹状リード294のリードZ
2が120[mm]となるようにすればよい。
Z
2=(X
1×360)/Y
2 ・・・式2
【0105】
上記のようにして算出されたリード量を有するリード構造においては、ズーム環202において直進筒203を駆動する凹状リード293の傾きβ(
図8参照)が、案内筒206における凹状リード294の傾きγ(
図10参照)よりも小さい。よって、ズーム環202の回転量よりも、当該ズーム環202の回転により生じたカム筒205の回転量は小さくなる。
【0106】
このように、レンズユニット200においては、同じ繰り出し量を有する直進筒203およびカム筒205を、互いに異なる傾きを有する凹状リード293、294により駆動している。これにより、ズーム環202の回転量に対して、カム筒205の回転量を小さくすることができる。
【0107】
よって、ズーム環202においては、ブラシ252およびフレキシブル基板251により形成したエンコーダのカウント値を大きくして、ズーム環202の回転量を精度よく検出することができる。また、カム筒205の回転量は、ズーム環202の回転量よりも小さいので、表面積の限られたカム筒205の周面において、個々の駆動カム溝254、291の長さを短縮できる。よって、カム筒205における駆動カム溝254、291のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0108】
また、レンズユニット200においてズーム環202が回転操作された場合、カム筒205は、係合部材285のリード部257により、ズーム環202の凹状リード296に直接に係合する。これにより、ズーム環202の回転は、カム筒205に効率よく伝達される。
【0109】
ここで、凹状リード296のリードZ
3[mm]は、下記の式3に従って算出することができる。具体的には、例えば、カム筒205の繰り出し量が30[mm]の場合に、ズーム環202の回転量Y
1[°]とカム筒205の回転量Y
2[°]との差分(Y
1−Y
2)を90[°]とするには、凹状リード296のリードZ
3を120[mm]にすればよい。
Z
3=(X
1×360)/(Y
1−Y
2) ・・・式3
【0110】
上記のようにして算出されたリード量を有するリード構造においては、ズーム環202においてリード部257に係合する凹状リード296が傾きα(
図8参照)を有する。よって、ズーム環202の回転量よりも小さな回転量がカム筒205に伝達される。
【0111】
このように、複数のリード構造を組み合わせることにより、光学部材の位置決め精度を高く保ったまま伸縮率が高いレンズ鏡筒を形成し、高倍率且つ高品質なレンズユニット200を形成できる。
【0112】
また、カム筒205を大型化することなく、ズーム環202の回転量を大きくすることができるので、回転量の検出精度も向上させることができるので、レンズユニット200の小型化にも寄与する。
【0113】
以上、交換可能なレンズユニット200を備えたレンズ交換式一眼レフカメラを例にあげて説明したが、クイックリターンミラーを備えていないレンズ交換式の撮像装置であっても上記の構造を適用できる。更に、レンズユニット200とカメラボディ300が一体に形成されたカメラの他、カム機構により駆動する複数の光学部材を備えた望遠鏡、測量器、顕微鏡等においても上記の構造を適用できる。
【0114】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。