特許第5962511号(P5962511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5962511ポリテトラフルオロエチレン含有粉体、これを含有するポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962511
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレン含有粉体、これを含有するポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20160721BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20160721BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C08L27/18
   C08L33/06
   C08L69/00
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-540612(P2012-540612)
(86)(22)【出願日】2012年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2012071335
(87)【国際公開番号】WO2013031644
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-184334(P2011-184334)
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】上田 雅博
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】笠井 俊宏
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−275366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/18
C08L 33/06
C08L 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン(b−1)と有機重合体(b−2)とからなるポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)であって、有機重合体(b−2)が、炭素原子数1〜3のアルキル基または芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)25〜75質量%と芳香族ビニル単量体単位(b−2−2)75〜25質量%(有機重合体(b−2)100質量%中)とを含むポリカーボネート樹脂用ポリテトラフルオロエチレン含有粉体。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)が、炭素原子数1〜3のアルキル基または芳香族基を有するメタクリル酸エステル単位である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂用ポリテトラフルオロエチレン含有粉体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)が、メチル基、エチル基または芳香族基を有するメタクリル酸エステル単位である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂用ポリテトラフルオロエチレン含有粉体。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)が、メチル基または芳香族基を有するメタクリル酸エステル単位である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂用ポリテトラフルオロエチレン含有粉体。
【請求項5】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂用ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)を0.001〜20質量部含むポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【請求項7】
請求項5に記載のポリカーボネート樹脂組成物を285〜340℃の温度で成形する成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体、これを含有するポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、機械的特性、寸法精度、電気特性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして電気・電子機器分野、自動車分野、OA分野など様々な分野において幅広く使用されている。これらの分野の中でも、OA分野、電気・電子機器分野については、成形体の難燃化、薄肉化、軽量化の要望が強くなってきている。成形体の薄肉化のためには、より高い温度で成形することにより高い流動性を得る必要があり、優れた滞留熱安定性が求められている。
【0003】
ポリテトラフルオロエチレンは、高結晶性で分子間力が低いため、わずかな応力で繊維化する性質を有する。このため、ポリテトラフルオロエチレンを樹脂に配合し繊維化させておくことによって、溶融張力が付与され、燃焼時の火炎滴の滴下による延焼を抑制することができる。よって、従来ポリテトラフルオロエチレンは、難燃剤と併せて、樹脂用の添加剤として使用されてきた。
【0004】
ポリテトラフルオロエチレンは、殆どの熱可塑性樹脂に対して相溶性が不良であり、樹脂組成物に添加して単純にブレンドするだけでは、ポリテトラフルオロエチレンを均一に分散させることは困難であり、凝集物を生じ易い。ポリテトラフルオロエチレンの凝集物は成形体の外観不良を招き、また、難燃性発現に必要な添加量を増加させるため、耐衝撃性等の機械的性質の低下も招き易い。そのため、ポリテトラフルオロエチレンと有機重合体の混合物を用いることにより、ポリテトラフルオロエチレンを良好に分散させる試みがなされている。
【0005】
例えば、ポリテトラフルオロエチレンの存在下で有機重合体を構成する単量体を重合した後に、凝析して粉体化する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1で提案されている方法では、有機重合体中に、炭素原子数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位を多く含んでいるために、ポリテトラフルオロエチレンのポリカーボネート樹脂中での分散性が不十分であり、得られる成形体の表面外観が劣る可能性がある。
【0006】
また、特定量のビニル重合体、ポリテトラフルオロエチレン、及びスルホン酸系乳化剤を用いてポリテトラフルオロエチレン含有混合分散液を得て、アルカリ土類金属塩で凝析し、粉体として回収する方法が提案されている(特許文献2)。特許文献2で提案されている方法では、ビニル重合体中に、メチルメタクリレート単位を多く含んでいるために、ポリテトラフルオロエチレンのポリカーボネート樹脂中での分散性に優れるが、高温で成形した場合の滞留熱安定性が不十分である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−275366号公報
【特許文献2】特開2008−303353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、樹脂中での分散性に優れ、かつ滞留熱安定性の高いポリテトラフルオロエチレン含有粉体、これを含むポリカーボネート樹脂組成物、及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(b−1)と有機重合体(b−2)とからなるポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)であって、有機重合体(b−2)が、炭素原子数1〜3のアルキル基または芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)25〜75質量%と芳香族ビニル単量体単位(b−2−2)75〜25質量%(有機重合体(b−2)100質量%中)とを含むポリカーボネート樹脂用ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に関する。
【0010】
また本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、前記ポリカーボネート樹脂用ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)を0.001〜20質量部含むポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0011】
また本発明は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形体に関する。
【0012】
また本発明は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を285〜340℃の温度で成形する成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂中での分散性に優れ、かつ滞留熱安定性の高いポリテトラフルオロエチレン含有粉体、これを含むポリカーボネート樹脂組成物、及びその成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)は、ポリテトラフルオロエチレン(b−1)と有機重合体(b−2)とからなる。
【0015】
本発明においてポリテトラフルオロエチレン(b−1)は、テトラフルオロエチレン単量体の単独重合、または、テトラフルオロエチレン単量体と他の単量体との共重合により得られる。テトラフルオロエチレンと共重合する他の単量体としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキルエチレン等の含フッ素オレフィン;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等の含フッ素アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。テトラフルオロエチレンと共重合する他の単量体は、ポリテトラフルオロエチレンの特性を損なわない範囲で用いることができ、ポリテトラフルオロエチレン100質量%中、10質量%以下であることが好ましい。
【0016】
ポリテトラフルオロエチレン(b−1)の質量平均分子量は、100万〜5000万であることが好ましく、300万〜3000万であることがより好ましい。この質量平均分子量が100万以上であると、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)をポリカーボネート樹脂(A)に配合した場合の溶融張力向上効果が十分となる。また、この質量平均分子量が5000万以下であると、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)をポリカーボネート樹脂(A)に配合した場合のポリテトラフルオロエチレン(b−1)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れる。
【0017】
ポリテトラフルオロエチレン(b−1)の分散液の市販品としては、例えば、「フルオンAD911L」、「同AD912L」、「同AD938L」、「同AD915E」、「同AD939E」(商品名、旭硝子(株)製)が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(b−1)の分散液は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明において有機重合体(b−2)は、炭素原子数1〜3のアルキル基または芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体25〜75質量%と芳香族ビニル単量体75〜25質量%とを含む単量体混合物(単量体の合計が100質量%)を重合して得られる。
【0019】
有機重合体(b−2)は、炭素原子数1〜3のアルキル基または芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)25〜75質量%と芳香族ビニル単量体単位(b−2−2)75〜25質量%とを含む。特に、(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)40〜60質量%と芳香族ビニル単量体単位(b−2−2)60〜40質量%とを含むことが好ましい。
【0020】
有機重合体(b−2)中の炭素原子数1〜3のアルキル基または芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)の含有率が25質量%以上であると、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)をポリカーボネート樹脂(A)に配合した場合のポリテトラフルオロエチレン(b−1)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れる。また、その含有率が75質量%以下であると、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)の滞留熱安定性に優れ、これを含有するポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性に優れる。
【0021】
有機重合体(b−2)中の芳香族ビニル単量体単位(b−2−2)の含有率が25質量%以上であると、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)の滞留熱安定性に優れ、これを含有するポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性に優れる。また、その含有率が75質量%以下であると、ポリカーボネート樹脂(A)中でのポリテトラフルオロエチレン(b−1)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れる。
【0022】
炭素原子数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、モノクロルフェニル(メタ)アクリレート、ジクロルフェニル(メタ)アクリレート、トリクロルフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ポリカーボネート樹脂(A)中でのポリテトラフルオロエチレン(b−1)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れることから、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレートが好ましく、フェニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0024】
ポリカーボネート樹脂(A)中でのポリテトラフルオロエチレン(b−1)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れることから、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、炭素原子数1〜3のアルキル基または芳香族基を有する。特に、炭素原子数1〜2のアルキル基(メチル基、エチル基)または芳香族基を有することが好ましく、炭素原子数1のアルキル基(メチル基)または芳香族基を有することがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、重合率を高めやすいことから、メタクリル酸エステル単量体を用いることが好ましい。
【0025】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、有機重合体(b−2)の重合率を高めやすく、屈折率がポリカーボネート樹脂(A)に近くなることから、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0026】
有機重合体(b−2)は、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸エステル単位(b−2−1)及び芳香族ビニル単量体単位(b−2−2)と共重合可能なその他の単量体単位(b−2−3)を含んでもよい。その他の単量体としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のエステル基が炭素原子数1〜3でないアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル単量体;安息香酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類が挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)の粉体取り扱い性の観点から、n−ブチルアクリレート等のアクリレートを用いることが好ましい。
【0027】
有機重合体(b−2)がその他の単量体単位(b−2−3)を含有する場合、その他の単量体単位(b−2−3)の含有率は0〜20質量%であることが好ましい。
【0028】
有機重合体(b−2)の重合には、公知の重合方法を用いることができる。公知の重合方法としては、例えば、乳化重合、ソープフリー乳化重合、微細懸濁重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合が挙げられる。
【0029】
重合に用いることのできる乳化剤は特に限定されず、公知の乳化剤を使用できる。例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩等のカチオン性界面活性剤を使用することができる。これらの乳化剤は単独で、あるいは併用して用いることができる。
【0030】
重合に用いることのできる重合開始剤は特に限定されず、公知の重合開始剤を使用できる。例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ系開始剤、過硫酸塩と還元剤を組合せたレドックス系開始剤、有機過酸化物と還元剤を組合せたレドックス系開始剤を使用することができる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明において、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)中のポリテトラフルオロエチレン(b−1)の含有率は、特に限定されないが、30〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。ポリテトラフルオロエチレン(b−1)の含有率が30質量%以上であれば、ポリカーボネート樹脂(A)に配合した場合の溶融張力向上効果に優れ、70質量%以下であれば、ポリカーボネート樹脂(A)中での分散性に優れ、そのため得られる成形体の表面外観に優れ、かつ粉体の取扱い性が良好となる。
【0032】
ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)は、ポリテトラフルオロエチレン(b−1)と有機重合体(b−2)とを含むポリテトラフルオロエチレン含有混合分散液を得、これを粉体化することにより得られる。
【0033】
ポリテトラフルオロエチレン含有混合分散液は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(b−1)粒子を分散させた分散液中で、有機重合体(b−2)を重合する方法、ポリテトラフルオロエチレン(b−1)粒子を分散させた分散液と有機重合体(b−2)粒子を分散させた分散液を混合する方法などで得ることができる。
【0034】
ポリテトラフルオロエチレン(b−1)粒子を分散させた分散液中で、有機重合体(b−2)を重合する方法の場合、有機重合体(b−2)の重合は公知の方法で行うことができる。このとき、単量体成分は反応容器中に一括で仕込んでもよく、分割して仕込んでもよく、連続滴下してもよい。
【0035】
ポリテトラフルオロエチレン(b−1)粒子を分散させた分散液と有機重合体(b−2)粒子を分散させた分散液を混合する方法の場合、ポリテトラフルオロエチレン(b−1)分散液と有機重合体(b−2)分散液の混合は、公知の方法で行うことができる。例えば、所定量のポリテトラフルオロエチレン(b−1)分散液と有機重合体(b−2)分散液とを容器に仕込み、室温で攪拌する方法が挙げられる。ポリテトラフルオロエチレン(b−1)分散液と有機重合体(b−2)分散液との混合は、一括混合でもよいし、分割混合、または連続滴下による混合でもよい。また、混合は加熱条件下で行ってもよい。
【0036】
また、あらかじめポリテトラフルオロエチレン(b−1)分散液と有機重合体(b−2)分散液を混合した混合分散液中で、有機重合体(b−2)を構成する単量体成分を重合してもよく、ポリテトラフルオロエチレン(b−1)分散液中で、有機重合体(b−2)を構成する単量体成分を重合した後に、さらに有機重合体(b−2)分散液と混合してもよい。
【0037】
ポリテトラフルオロエチレン含有混合分散液から樹脂固形分を粉体化する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が挙げられる。これらの方法の中でも、ポリテトラフルオロエチレン(b−1)の凝集が抑制されることから、凝析法、スプレードライ法が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体中に不純物が残存しにくいことから、凝析法がより好ましい。
【0038】
凝析法としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン含有混合分散液を、凝析剤を溶解させた熱水中に接触させ、攪拌しながら凝析させてスラリーとし、脱水乾燥する方法が挙げられる。
【0039】
凝析剤としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸;蟻酸、酢酸等の有機酸;硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。これらのうち、ポリカーボネート樹脂(A)の滞留熱安定性を損ないにくいことから、塩化カルシウム、酢酸カルシウムが好ましい。
【0040】
本発明において使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、従来公知の任意のものを使用することが出来る。本発明では、ポリカーボネート樹脂として、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂を使用できるが、中でも、滞留熱安定性に優れることから、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0041】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネートが挙げられる。
【0042】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。これらは単独または2種類以上混合して使用される。
【0043】
これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−〔4,4−(4,4'−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンが挙げられる。
【0044】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の組成比は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)が0.001〜20質量部であることが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)が0.01〜20質量部であることがより好ましく、0.1〜10質量部であることがさらに好ましい。ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)が0.001部以上であると、得られるポリカーボネート樹脂組成物の成形加工性及び得られる成形体の難燃性に優れる。ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)が20質量部以下であると、ポリカーボネート樹脂中でのポリテトラフルオロエチレン(b−1)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れる。
【0045】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂が本来有する優れた耐熱性、耐衝撃性、難燃性等を損なわない範囲、具体的にはポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して50質量部以下の範囲で、ABS、HIPS、PS、PAS等のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー等の熱可塑性樹脂やエンジニアリングプラスチック、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体、シンジオタクチックポリスチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロン系重合体、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を配合したポリマーアロイを使用することも可能である。
【0046】
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、公知の安定剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤等の添加剤を配合してもよい。例えば、成形体の強度、剛性、さらには難燃性を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などを含有させることができる。耐衝撃性を向上させるために、コアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を配合してもよい。
【0047】
難燃剤とは、従来公知の難燃剤及び難燃剤と併用して難燃作用を促進する難燃助剤のことである。例えば、リン含有化合物、ハロゲン含有化合物、金属酸化物、金属水酸化物、トリアジン化合物、赤燐、ジルコニウム化合物、ポリリン酸塩化合物、スルファミン酸化合物等、有機スルホン酸の金属塩を挙げることができる。
【0048】
ポリカーボネート樹脂(A)とポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)との配合は、粉体で混合されたものでよく、またポリカーボネート樹脂(A)とポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)とを加熱混練して得られたものであってもよい。この様な配合方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等を使用する方法が挙げられる。また、予めポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)の比率が大きくなるように、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B)とポリカーボネート樹脂(A)とを混合したマスターバッチを調製し、その後マスターバッチとポリカーボネート樹脂(A)とを再度混合し、所望の組成物を得ることもできる。
【0049】
本発明の成形体は、上記のポリカーボネート脂組成物を成形したものである。その成形方法としては、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、ブロー成形、押出成形、積層成形、カレンダー成形が挙げられる。成形温度は、高いほど溶融流動性に優れ、複雑な形状や薄肉の成形体を得ることができるが、高すぎるとポリカーボネート樹脂組成物の分解を促進することから、285〜340℃が好ましく、290℃〜320℃がより好ましい。
【0050】
本発明の成形体は、ポリカーボネート樹脂の優れた機械強度、耐熱性、電気特性、寸法安定性、難燃性等の特性を有し、しかも、表面外観、滞留熱安定性に優れるものであり、電気・電子機器用部品、自動車用部品、建築部材等、幅広い分野に利用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、「質量部」を示す。実施例、比較例における各評価は、以下の方法により実施した。
【0052】
(1)ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の滞留熱安定性
(1−1)耐熱分解性
ポリテトラフルオロエチレン含有粉体約5mgを、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置、機種名「EXSTAR6000」、セイコーインスツル(株)製)を用いて、窒素気流下で、10℃/分の昇温速度で加熱し、10%重量減少温度を求めた。この温度が高いほど耐熱分解性が良好である。
【0053】
(1−2)耐熱着色性
ポリテトラフルオロエチレン含有粉体約1gを240℃に設定したハイテンプオーブン(機種名「PHH−200」、タバイエスペック(株)製)に入れて、15分間加熱した。加熱後の粉体を目視で観察し、色調を評価した。色調の評価は以下の基準で判定した。
○:粉体に黄変が認められない
×:粉体に黄変が認められる
【0054】
(2)ポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性
(2−1)耐熱分解性
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを粉砕して試料とした。試料約5mgを、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置、機種名「EXSTAR6000」、セイコーインスツル(株)製)を用いて、空気気流下で、10℃/分の昇温速度で加熱し、10%重量減少温度を求めた。この温度が高いほど、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱分解性が良好である。
【0055】
(2−2)耐熱着色性
初期色調
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、100t射出成形機(機種名「SE−100DU」、住友重機工業(株)製)を用い、シリンダー温度340℃で厚さ2mmの平板を成形し、色調を評価した。
滞留後色調
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、100t射出成形機(機種名「SE−100DU」、住友重機工業(株)製)を用い、シリンダー温度340℃でシリンダー内に30分間滞留させた後に厚さ2mmの平板を成形し、色調を評価した。
色調は次の方法に従って評価した。JIS K7105に準拠し、分光色差計(機種名「SE2000」日本電色工業(株)製)を使用し、C光源、2度視野の条件で反射光測定法にて、平板の黄色度(YI)値を測定した。YI値が小さい程、黄色味が少なく色調が優れることを示す。
【0056】
(3)分散性
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、100t射出成形機(機種名「SE−100DU」、住友重機工業(株)製)を用い、シリンダー温度340℃で厚さ2mmの平板を成形した。平板を目視で確認し、分散性を評価した。
○:試験片中には微小な白点しか確認できず、分散性が良好である
△:試験片中に全長0.5mm以上の白点が確認でき、分散性がやや劣る
×:試験片中に全長1.0mm以上の白点が確認でき、分散性が劣る
【0057】
[製造例1]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−1)の製造
乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王(株)製、「ペレックス SS−L」、有効成分 50%)1.5部(有効成分として)、蒸留水230部(乳化剤水溶液の水分を含む)を、攪拌翼、コンデンサー、熱電対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下に室温で30分間攪拌した。次いで、内温を70℃まで昇温し、過硫酸カリウム0.2部を蒸留水3部に溶解したものを加えた。さらに、メチルメタクリレート70部、スチレン30部、n−オクチルメルカプタン0.1部からなる混合物を2時間かけて滴下し、ラジカル重合を行った。滴下終了後、内温を70℃に保ちながら2時間攪拌し、有機重合体分散液(以下、P−1と称する)を得た。
【0058】
攪拌装置を備えた反応器に、ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液である「フルオンAD939E」(旭硝子(株)製、PTFE濃度60%、重量平均分子量約1500万)83.3部(ポリテトラフルオロエチレン分として50部)、有機重合体分散液(P−1)166.7部(有機重合体分として50部)を仕込み、5分間攪拌し、ポリテトラフルオロエチレン含有混合分散液を得た。次いで、2%酢酸カルシウム水溶液350部をフラスコに仕込み、80℃に加熱攪拌し、温度を保ちながらポリテトラフルオロエチレン含有混合分散液(ポリマー分として100部)を徐々に滴下して、固形物を凝固、析出させスラリーとし、5分間攪拌を続けた。その後、スラリーの温度を90℃まで昇温して、固化を行った。最後に、この析出物を分離、濾過、水洗、乾燥して、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−1)100部を得た。
【0059】
[製造例2]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−2)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、メチルメタクリレート50部、スチレン50部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−2)100部を得た。
【0060】
[製造例3]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−3)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、メチルメタクリレート30部、スチレン70部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−3)100部を得た。
【0061】
[製造例4]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−4)の製造
乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王(株)製、「ペレックス SS−L」、有効成分 50%)1.0部(有効成分として)、蒸留水230部(乳化剤水溶液の水分を含む)を、攪拌翼、コンデンサー、熱電対、窒素導入口を備えたセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下に室温で30分間攪拌した。次いで、内温を70℃まで昇温し、硫酸第一鉄0.0005部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0015部、ロンガリット0.2部からなる混合物を蒸留水3部に溶解したものを加えた。さらに、エチルメタクリレート70部、スチレン30部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.2部、n−オクチルメルカプタン0.1部からなる混合物を6時間かけて滴下し、ラジカル重合を行った。滴下終了後、内温を70℃に保ちながら1時間攪拌し、有機重合体分散液(以下、P−4と称する)を得た。
【0062】
そして、この有機重合体分散液(P−4)を有機重合体分散液(P−1)の代わりに使用したこと以外は、製造例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−4)100部を得た。
【0063】
[製造例5]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−5)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、エチルメタクリレート50部、スチレン50部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−5)100部を得た。
【0064】
[製造例6]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−6)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、エチルメタクリレート30部、スチレン70部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−6)100部を得た。
【0065】
[製造例7]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−7)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、フェニルメタクリレート70部、スチレン30部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−7)100部を得た。
【0066】
[製造例8]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−8)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、フェニルメタクリレート50部、スチレン50部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−8)100部を得た。
【0067】
[製造例9]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−9)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、フェニルメタクリレート30部、スチレン70部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−9)100部を得た。
【0068】
[製造例10]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−10)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、ベンジルメタクリレート70部、スチレン30部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−10)100部を得た。
【0069】
[製造例11]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−11)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、ベンジルメタクリレート50部、スチレン50部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−11)100部を得た。
【0070】
[製造例12]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−12)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、ベンジルメタクリレート30部、スチレン70部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−12)100部を得た。
【0071】
[製造例13]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−13)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、メチルメタクリレート50部、スチレン35部、n−ブチルアクリレート15部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−13)100部を得た。
【0072】
[製造例14]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−14)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、メチルメタクリレート90部、スチレン10部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−14)100部を得た。
【0073】
[製造例15]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−15)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、メチルメタクリレート20部、スチレン80部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−15)100部を得た。
【0074】
[製造例16]ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−16)の製造
有機重合体の重合に用いる単量体成分を、n−ブチルメタクリレート50部、スチレン50部からなる混合物に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(B−16)100部を得た。
【0075】
(実施例1〜13、比較例1〜3)
製造例1〜16で得られたポリテトラフルオロエチレン含有粉体の諸物性の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
(実施例14〜26、比較例4〜6)
ポリカーボネート樹脂として「ユーピロンS−2000F」(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)を用いた。ポリカーボネート樹脂100部に対して、製造例1〜7で得られたポリテトラフルオロエチレン含有粉体1.0部を配合した。この配合物を同方向二軸押出機(機種名「PCM−30」、池貝製作所(株)製)に供給し、280℃で溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを用いて諸物性の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0078】
【表2】
【0079】
なお、表1及び表2に記載の略号は、以下の化合物を示す。
PC :ポリカーボネート樹脂「ユーピロンS−2000F」
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
MMA :メチルメタクリレート
St :スチレン
EMA :エチルメタクリレート
PhMA:フェニルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
BA :n−ブチルアクリレート
BMA :n−ブチルメタクリレート
【0080】
実施例1〜13から明らかなように、本発明のポリテトラフルオロエチレン含有粉体は、耐熱分解性及び耐熱着色性に優れていた。さらに、実施例14〜26から明らかなように、本発明のポリテトラフルオロエチレン含有粉体を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱分解性に優れるとともに、高温滞留下で成形しても着色しにくく、かつポリカーボネート樹脂中のポリテトラフルオロエチレンの分散性にも優れ、得られた成形体の表面外観も良好であった。
【0081】
比較例1のポリテトラフルオロエチレン含有粉体は、芳香族ビニル単量体単位(b−2−2)の含有率が低い有機重合体を用いているため、滞留熱安定性に劣り、これを配合した比較例4のポリカーボネート樹脂組成物も滞留熱安定性に劣った。
【0082】
比較例2のポリテトラフルオロエチレン含有粉体は、エステル基が炭素原子数1〜3のアルキル基または芳香族基であるメタクリル酸エステル単位(b−2−1)の含有率が低い有機重合体を用いているため、これを配合した比較例5のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂中でのポリテトラフルオロエチレンの分散性がやや劣った。
【0083】
比較例3のポリテトラフルオロエチレン含有粉体は、エステル基が炭素原子数4のアルキル基であるメタクリル酸エステル単位を含む有機重合体を用いているため、これを配合した比較例6のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂中でのポリテトラフルオロエチレンの分散性が劣った。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、ポリカーボネート樹脂中でのポリテトラフルオロエチレンの分散性に優れ、かつ滞留熱安定性に優れるポリテトラフルオロエチレン含有粉体を提供できる。従って、製品の軽量化や薄肉化に対応しつつ、高い外観を要求される製品にも供することができる。本発明の成形体は、電気・電子機器用部品、自動車用部品、建築部材等、幅広い分野に有用である。