(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フッ素原子を有する表面改質剤、ポリオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、反応性基を含有するシリコーンオイル及びシリコーン変性アルキド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つの離型処理剤によって前記離型処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
前記仮固定用フィルムとして、エポキシ基を有するアクリレートモノマ又はエポキシ基を有するメタクリレートモノマを含むアクリルモノマを重合して得られ、重量平均分子量が10万以上であり、Tgが−50℃〜50℃であるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体を含んでなる仮固定用フィルムを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記エポキシ基を有するアクリレートモノマとしてグリシジルアクリレートモノマを用い、前記エポキシ基を有するメタクリレートモノマとしてグリシジルメタクリレートモノマを用いることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
前記仮固定用フィルムとして、シリコーン変性アルキド樹脂を含有する仮固定用フィルムを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明に係る仮固定用フィルム及び仮固定用フィルムシートについて説明する。
図1(A)は、本発明に係る仮固定用フィルムシートの一実施形態を示す上面図であり、
図1(B)は
図1(A)のI−I線に沿った模式断面図である。
【0020】
図1に示す仮固定用フィルムシート1は、支持基材10と、支持基材10上に設けられた仮固定用フィルム20と、仮固定用フィルム20の支持基材10とは反対側に設けられた保護フィルム30とを備える。
【0021】
支持基材10としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。支持基材10は2種以上のフィルムを組み合わせた多層フィルムであってもよい。また、支持基材10は、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤等で処理されたものであってもよい。
【0022】
仮固定用フィルム20は、下記一般式(I−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を全酸二無水物に対し20モル%以上含む酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂を含んでなる。
【0023】
【化1】
式(I−1)中、nは2〜20の整数を示す。
【0024】
仮固定用フィルム20は、イミド骨格を有する熱可塑性樹脂として上記反応により得られるポリイミド樹脂を含むことにより、加工する部材とこれを支持するための部材とを低温の貼付条件で十分に固定することができ、加工後には有機溶剤を用いて溶解できることから加工後の部材と支持部材とを容易に分離することができる。
【0025】
式(I−1)中のnが2〜5であるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)が挙げられる。式(I−1)中のnが6〜20であるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビストリメリテート二無水物、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記テトラカルボン酸二無水物は、無水トリメリット酸モノクロライドと対応するジオールとを反応させることにより合成することができる。
【0027】
酸二無水物における上記テトラカルボン酸二無水物の配合量は、全酸二無水物に対し30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらにより好ましい。一般式(I−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の配合量を上記の範囲とすることにより、仮固定用フィルムの貼付温度をより低く設定しても十分な固定が可能となる。
【0028】
本実施形態に係るポリイミド樹脂は、ジアミンと反応させる酸二無水物として一般式(I−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物のみを用いて得られるものであってもよいが、このテトラカルボン酸二無水物と他の酸二無水物とを併用して得られるものであってもよい。
【0029】
式(I―1)のテトラカルボン酸二無水物と共に使用できる他の酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホン、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの配合量は、全酸二無水物に対し90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらにより好ましい。
【0030】
ジアミンとしては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0031】
本実施形態に係るポリイミド樹脂は、酸二無水物と、下記一般式(A−1)で表されるジアミンを全ジアミンに対し好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上含むジアミンと、を反応させて得られるものであることが好ましい。
【0032】
【化2】
式(A−1)中、Q
1、Q
2及びQ
3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、pは0〜10の整数を示す。
【0033】
一般式(A−1)で表されるジアミンの配合量が上記の範囲であるポリイミド樹脂を含有させることにより、仮固定用フィルムは、低温貼付性に優れ、低応力であるという特性を得ることができる。これにより、仮固定する部材へのダメージを抑制しつつ加工時には部材を十分固定することが更に容易にできる。
【0034】
上記炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、プロピレン、ブチレン、アミレン、ヘキシレン等の基が挙げられる。
【0035】
上記一般式(A−1)で表されるジアミンとしては、例えば、
H
2N−(CH
2)
3−O−(CH
2)
4−O−(CH
2)
3−NH
2、
H
2N−(CH
2)
3−O−(CH
2)
6−O−(CH
2)
3−NH
2、
H
2N−(CH
2)
3−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−NH
2、
H
2N−(CH
2)
3−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−NH
2等が挙げられる。
【0036】
一般式(A−1)で表されるジアミンは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0037】
また、本実施形態に係るポリイミド樹脂は、酸二無水物と、下記式(A−2)で表されるジアミンを全ジアミンに対し好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上含むジアミンと、を反応させて得られるものであることが好ましい。
【0039】
式(A−2)で表されるジアミンの配合量が上記の範囲であるポリイミド樹脂を含有させることにより、仮固定用フィルムは、耐熱性及び有機溶剤への溶解性に優れるという特性を得ることができる。これにより、仮固定した部材の高温での加工と、加工後の部材と支持部材との分離が更に容易にできる。
【0040】
更に、本実施形態に係るポリイミド樹脂は、酸二無水物と、下記一般式(A−3)で表されるジアミンを全ジアミンに対し好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上含むジアミンと、を反応させて得られるものであることが好ましい。下記一般式(A−3)で表されるジアミンの含有量は全ジアミンに対し70モル%以下であることが好ましい。
【0041】
【化4】
式(A−3)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基又はフェニレン基を示し、R
3、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、mは1〜90の整数を示す。
【0042】
一般式(A−3)で表されるジアミンの配合量が上記の範囲であるポリイミド樹脂を含有させることにより、仮固定用フィルムは低温貼付性に優れ、低応力であるという特性を得ることができる。これにより、仮固定する部材へのダメージを抑制しつつ加工時には部材を十分固定することが更に容易にできる。
【0043】
一般式(A−3)中のmが1であるジアミンとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられる。
【0044】
一般式(A−3)中のmが2であるジアミンとしては、例えば、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
一般式(A−3)中のmが3〜70であるジアミンとしては、例えば、下記式(A−4)で表されるジアミン、及び下記式(A−5)で表されるジアミンが挙げられる。
【0047】
一般式(A−3)で表されるジアミンは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
本実施形態においては、仮固定用フィルムを形成するときの有機溶媒への溶解性及び他の樹脂との混合性、並びに加工後に接触させる有機溶剤に対する溶解性を考慮すると、一般式(A−3)で表されるジアミンとしてシリコーン骨格側鎖の一部にフェニル基を有するシロキサンジアミンを用いることが好ましい。
【0049】
本実施形態に係るポリイミド樹脂は、有機溶媒中で、本発明に係るテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物とジアミンとを縮合反応することにより得ることができる。この場合、酸二無水物及びジアミンは等モル又はほぼ等モルで用いるのが好ましく、各成分の添加は任意の順序で行うことができる。
【0050】
有機溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、m−クレゾール、o−クロルフェノール等が挙げられる。
【0051】
反応温度は、ゲル化防止の観点から、80℃以下が好ましく、0〜50℃がより好ましく、0〜30℃がさらにより好ましい。
【0052】
酸二無水物とジアミンとの縮合反応においては、反応が進行するにつれポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成し、反応液の粘度が徐々に上昇する。
【0053】
本実施形態に係るポリイミド樹脂は、上記反応生成物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は120℃〜250℃で熱処理する方法や化学的方法を用いて行うことができる。120℃〜250℃で熱処理する方法の場合、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。このとき、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去してもよい。
【0054】
なお、本明細書では、ポリイミド及びその前駆体をポリイミド樹脂と総称する。ポリイミドの前駆体には、ポリアミド酸のほか、ポリアミド酸が部分的にイミド化したものも含まれる。
【0055】
化学的方法で脱水閉環させる場合は、閉環剤として、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸の酸無水物;ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等を用いることができる。このとき必要に応じて、ピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、アミノピリジン、イミダゾール等の閉環触媒を用いてもよい。閉環剤又は閉環触媒は、酸二無水物の合計1モルに対し、それぞれ1〜8モルの範囲で使用するのが好ましい。
【0056】
ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、接着力向上並びにフィルム成形性向上の観点から、10000〜150000が好ましく、30000〜120000がより好ましく、50000〜100000がさらにより好ましい。上記ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(例えば、東ソー製「HLC−8320GPC」(商品名))を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を指す。本測定では、遊離液として、テトラヒドロフラン及びジメチルスルホキシドを体積比が1対1で混ぜた混合溶液中に臭化リチウム及びりん酸をそれぞれ3.2g/L及び5.9g/Lの濃度となるように混合し、溶解せしめたものを用いることが好ましい。また、カラムとして東ソー製TSKgelPack、AW2500、AW3000、AW4000を組合せて測定することができる。
【0057】
ポリイミド樹脂は、ウェハ圧着時の熱ダメージ低減及びフィルム成形性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が−20〜180℃であるものが好ましく、0〜150℃であるものがより好ましく、25〜150℃であるものがさらにより好ましい。ポリイミド樹脂のTgは、粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いてフィルムを測定したときのtanδのピーク温度である。具体的には、30μmの厚みのフィルムを成型後、これを10mm×25mmのサイズに切断し、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50〜300℃の条件で貯蔵弾性率及びtanδの温度依存性を測定することによりTgが算出される。
【0058】
仮固定用フィルム20には、無機フィラを更に含有させることができる。
【0059】
上記無機フィラとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラ;シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の非金属無機フィラ等が挙げられる。
【0060】
上記無機フィラは所望する機能に応じて選択することができる。例えば、金属フィラは、仮固定用フィルムにチキソ性を付与する目的で添加することができ、非金属無機フィラは、仮固定用フィルムに低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加することができる。
【0061】
上記無機フィラは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
また、上記無機フィラは表面に有機基を有するものが好ましい。無機フィラの表面が有機基によって修飾されていることにより、仮固定用フィルムを形成するときの有機溶媒への分散性、並びに仮固定用フィルムの密着性及び耐熱性を向上させることが容易となる。
【0063】
表面に有機基を有する無機フィラは、例えば、下記一般式(B−1)で表されるシランカップリング剤と無機フィラとを混合し、30℃以上の温度で攪拌することにより得ることができる。無機フィラの表面が有機基によって修飾されたことは、UV測定、IR測定、XPS測定等で確認することが可能である。
【0064】
【化7】
式(B−1)中、Xは、フェニル基、グリシドキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ビニル基、イソシアネート基及びメタクリロキシ基からなる群より選択される有機基を示し、sは0又は1〜10の整数を示し、R
11、R
12及びR
13は各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0065】
炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。入手が容易である点で、メチル基、エチル基及びペンチル基が好ましい。
【0066】
Xとしては、耐熱性の観点から、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基及びイソシアネート基が好ましく、グリシドキシ基及びメルカプト基がより好ましい。
【0067】
式(B−1)中のsは、高熱時のフィルム流動性を抑制し、耐熱性を向上させる観点から、0〜5が好ましく、0〜4がより好ましい。
【0068】
好ましいシランカップリング剤としては、例えば、トリメトキシフェニルシラン、ジメチルジメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3―ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N’―ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましく、トリメトキシフェニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0069】
シランカップリング剤は1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
上記カップリング剤の使用量は、耐熱性を向上させる効果と保存安定性とのバランスを図る観点から、無機フィラ100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、0.05質量部〜20質量部がより好ましく、耐熱性向上の観点から、0.5〜10質量部がさらにより好ましい。
【0071】
本実施形態に係る仮固定用フィルムが無機フィラを含有する場合、その含有量は、ポリイミド樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらにより好ましい。無機フィラの含有量の下限は特に制限はないが、ポリイミド樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。
【0072】
無機フィラの含有量を上記範囲とすることにより、仮固定用フィルムの接着性を十分確保しつつ所望の機能を付与することができる。
【0073】
本実施形態に係る仮固定用フィルムには、更に有機フィラを配合することができる。有機フィラとしては、例えば、カーボン、ゴム系フィラ、シリコーン系微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。
【0074】
本実施形態に係る仮固定用フィルムは、炭素−炭素不飽和結合を有するラジカル重合性化合物及びラジカル発生剤を更に含有することができる。
【0075】
炭素−炭素不飽和結合を有するラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。
【0076】
エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0077】
ラジカル重合性化合物は、反応性の観点から、2官能以上の(メタ)アクリレートであることが好ましい。このようなアクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(C−1)で表される化合物、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、尿素アクリレート、イソシアヌル酸ジ/トリアクリレート及びイソシアヌル酸ジ/トリメタクリレート等が挙げられる。
【0078】
【化8】
一般式(C−1)中、R
21及びR
22はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【0079】
上記の中でも、一般式(C−1)で表されるようなトリシクロデカン骨格を有する化合物は、硬化後の仮固定用フィルムの溶解性及び接着性を向上させることができる点で好ましい。また、硬化後の仮固定用フィルムの接着性を向上させることができる点で、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、イソシアヌル酸ジ/トリアクリレート及びイソシアヌル酸ジ/トリメタクリレートが好ましい。
【0080】
仮固定用フィルムが、ラジカル重合性化合物として3官能以上のアクリレート化合物を含有する場合、硬化後の仮固定用フィルムの接着性がより向上するとともに加熱時のアウトガスを抑制することができる。
【0081】
更に、硬化後の仮固定用フィルムの耐熱性がより向上する点で、仮固定用フィルムが、ラジカル重合性化合物としてイソシアヌル酸ジ/トリアクリレート及び/又はイソシアヌル酸ジ/トリメタクリレートを含むことが好ましい。
【0082】
ラジカル重合性化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
ラジカル発生剤としては、例えば、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤が挙げられる。本実施形態においては、有機過酸化物等の熱ラジカル発生剤を用いることが好ましい。
【0084】
有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0085】
有機過酸化物は、仮固定用フィルムを形成するときの条件(例えば、製膜温度等)、硬化(貼り合せ)条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択される。
【0086】
本実施形態で用いる有機過酸化物としては、1分間半減期温度が120℃以上であるものが好ましく、150℃以上であるものがより好ましい。このような有機過酸化物としては、例えば、パーヘキサ25B(日油社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD(日油社製)、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)等が挙げられる。
【0087】
ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
仮固定用フィルムにおけるラジカル重合性化合物の含有量は、硬化後の仮固定用フィルムの溶解性、すなわち部材の剥離性を十分確保しつつ、加工時の部材(例えば半導体ウェハ)の保持性を向上させる観点から、ポリイミド樹脂100質量部に対し0〜100質量部であることが好ましく、3〜50質量部であることがより好ましく、5〜40質量部であることがさらにより好ましい。
【0089】
仮固定用フィルムにおけるラジカル発生剤の含有量は、硬化性と、アウトガスの抑制及び保存安定性との両立を図る観点から、ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらにより好ましい。
【0090】
本実施形態の仮固定用フィルムは、上述したラジカル重合性化合物とは別の熱硬化性化合物としてエポキシ樹脂を更に含有することができる。この場合、エポキシ樹脂硬化剤及び硬化促進剤を更に配合してもよい。
【0091】
エポキシ樹脂としては、例えば、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含む化合物が挙げられ、硬化性や硬化物特性の点からフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。このような樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールFもしくはハロゲン化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合物、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは2種以上を併用することができる。
【0092】
エポキシ樹脂の配合量は、ポリイミド樹脂100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、5〜60質量部がより好ましい。エポキシ樹脂の配合量が上記範囲内であると、接着性を十分確保しつつ、エッチングに時間を要して作業性が低下することを十分小さくすることができる。
【0093】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、アミン化合物が挙げられる。保存安定性、硬化時のアウトガスとならない点、樹脂との相溶性の点から、フェノール樹脂を使用することが好ましい。
【0094】
硬化剤の配合量は、エポキシ当量に併せて適宜調整することが好ましく、エポキシ樹脂100質量部に対して10〜300質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。硬化剤の配合量が上記範囲内であると、耐熱性の確保が容易に可能となる。
【0095】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは2種以上を併用することができる。
【0096】
硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましい。硬化促進剤の配合量が上記範囲内であると、十分な硬化性を得つつ、保存安定性の低下を十分小さくすることができる。
【0097】
本実施形態の仮固定用フィルムにおいては、熱硬化性化合物としてエポキシ樹脂のみを配合してもよく、ラジカル重合性化合物とエポキシ樹脂とを併用して配合してもよい。併用する場合のエポキシ樹脂の含有量は、溶解性と耐熱性を両立させる観点から、上記ラジカル重合性化合物100質量部に対して100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらにより好ましい。
【0098】
仮固定用フィルムは、有機溶媒への溶解性向上の観点から、フッ素原子を有する表面改質剤、ポリオレフィンワックス及びシリコーンオイルからなる群より選択される1種以上を更に含有することが好ましい。
【0099】
フッ素原子を有する表面改質剤としては、例えば、メガファック(DIC製、商品名)、ハイパーテック(日産化学製、商品名)、オプツール(ダイキン製、商品名)、ケミノックス(ユニマテック製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0100】
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、ポリエチレン系、アマイド系、モンタン酸系等のワックスが挙げられる。
【0101】
シリコーンオイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイル(KF−96(信越化学社製))、反応性シリコーンオイル(X−22−176F、X−22−3710、X−22−173DX、X−22−170BX(信越化学社製)が挙げられる。
【0102】
フッ素系表面改質剤、ポリオレフィンワックス及びシリコーンオイルは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
仮固定用フィルムにおけるフッ素系表面改質剤及びポリオレフィンワックスの含有量は、溶解性と接着性のバランスの観点から、ポリイミド樹脂100質量部に対し、合計で0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部がさらにより好ましい。
【0104】
また、上述した実施形態と別の実施形態では、仮固定用フィルム20は、エポキシ基を有するアクリレート又はエポキシ基を有するメタクリレートなどの官能性モノマを含有するモノマを重合して得られ、重量平均分子量が10万以上であるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体(以下「アクリル共重合体」)を含んでなる。アクリル共重合体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリルゴムを用いることができ、アクリルゴムを用いることが好ましい。
【0105】
エポキシ基を有するアクリレートとしては、例えば、グリシジルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートが挙げられる。エポキシ基を有するメタクリレートとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートが挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0106】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、例えばブチルアクリレートとアクリロニトリル等との共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリル等との共重合体などからなるゴムである。
【0107】
アクリル共重合体のTgは、−50℃〜50℃であることが好ましい。アクリル共重合体のTgが50℃以下であると、仮固定用フィルム20の柔軟性を確保でき、低温圧着性の低下を抑制できる。また、半導体ウェハにバンプなどが存在する場合、150℃以下でのバンプ埋め込みが容易になる。一方、アクリル共重合体のTgが−50℃以上であると、仮固定用フィルム20の柔軟性が高くなりすぎることによる取扱性及び剥離性の低下を抑制できる。
【0108】
アクリル共重合体のTgは、粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いてアクリル共重合体のフィルムを測定したときのtanδのピーク温度である。具体的には、30μmの厚みのフィルムを成型後、これを10mm×25mmのサイズに切断し、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50〜300℃の条件で貯蔵弾性率及びtanδの温度依存性を測定することによりTgが算出される。
【0109】
アクリル共重合体の重量平均分子量は、10万以上100万以下であることが好ましい。重量平均分子量が10万以上であると、仮固定用フィルム20の耐熱性を確保できる。一方、重量平均分子量が100万以下であると、仮固定用フィルム20のフローが低下、及び貼付性の低下を抑制できる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0110】
また、アクリル共重合体に含まれるエポキシ基を有するアクリレート又はエポキシ基を有するメタクリレートの量は、共重合体合成時における配合質量比で0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。配合質量比が上記範囲内であると、十分な耐熱性を得つつ、柔軟性の低下を抑制することができる。
【0111】
上述のようなアクリル共重合体としては、パール重合、溶液重合等の重合方法によって得られるものを用いてもよく、あるいは、HTR−860P(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)等の入手可能なものを用いてもよい。
【0112】
仮固定用フィルム20は、アクリル共重合体に含まれるエポキシ基の硬化を促進する硬化促進剤を含有していてもよい。
【0113】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは2種以上を併用することができる。
【0114】
硬化促進剤の配合量は、アクリル共重合体100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましい。硬化促進剤の配合量が上記範囲内であると、十分な硬化性を得つつ、保存安定性の低下を十分小さくすることができる。
【0115】
仮固定用フィルム20は、シリコーン変性アルキド樹脂を含有することが好ましい。シリコーン変性アルキド樹脂を得る方法としては、例えば(i)アルキド樹脂を得る通常の合成反応、すなわち多価アコールと脂肪酸、多塩基酸等とを反応させる際に、オルガノポリシロキサンをアルコール成分として同時に反応させる方法、(ii)あらかじめ合成されれた一般のアルキド樹脂に、オルガノポリシロキサンを反応させる方法が挙げられるが、(i)又は(ii)のどちらの方法も用いることができる。
【0116】
アルキド樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等の四価以上の多価アルコールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
アルキド樹脂の原料として用いられる多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸等の芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物等のディールズ・アルダー反応による多塩基酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
アルキド樹脂は、変性剤又は架橋剤を更に含有していてもよい。
【0119】
変性剤としては、例えばオクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、あるいはヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油及びこれらの脂肪酸などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を例示することができる。これらの中でも、特にアミノ樹脂が好ましく用いられる。この場合、アミノ樹脂により架橋されたアミノアルキド樹脂が得られ好ましい。架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
シリコーン変性アルキド樹脂においては、硬化触媒として酸性触媒を用いることができる。酸性触媒としては、特に制限はなく、アルキド樹脂の架橋反応触媒として公知の酸性触媒の中から適宜選択して用いることができる。このような酸性触媒としては、例えばp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機系の酸性触媒が好適である。酸性触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、酸性触媒の配合量は、アルキド樹脂と架橋剤との合計100質量部に対し、通常0.1〜40質量部、好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部の範囲で選定される。
【0122】
上述のようなシリコーン変性アルキド樹脂としては、例えば、テスファインTA31−209E(日立化成ポリマー(株)製、商品名)が挙げられる。
【0123】
仮固定用フィルム20がシリコーン変性アルキド樹脂を含有することで、半導体ウェハから仮固定用フィルムを剥離する際、100℃以下の低温で溶媒を用いることなく容易に剥離することが可能となる。
【0124】
シリコーン変性アルキド樹脂の配合量は、アクリル共重合体100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。シリコーン変性アルキド樹脂の配合量が上記範囲内であると、半導体ウェハ加工時に接着性と加工後の剥離性とを両立させることが可能となる。
【0125】
仮固定用フィルム20は以下の手順で形成することができる。
【0126】
まず、上述したポリイミド樹脂、必要に応じて、無機フィラ、ラジカル重合性化合物、ラジカル発生剤、その他の各成分を有機溶媒中で混合、混練しワニスを調製する。混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。無機フィラを配合する場合の混合・混練についても、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0127】
仮固定用フィルム20がアクリル共重合体を含んでなる場合、アクリル共重合体、シリコーン変性アルキド樹脂及び硬化促進剤を上記と同様に混合、混練してワニスを調製する。
【0128】
ワニスの調製に用いる有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0129】
次に、上記で得られたワニスを支持基材10上に塗工してワニスの層を形成し、加熱により乾燥することにより仮固定用フィルム20を形成することができる。
【0130】
ラジカル重合性化合物及びラジカル発生剤を配合する場合、乾燥中にラジカル重合性化合物が十分反応しない温度で、なおかつ溶媒が充分に揮散する条件を選んでワニスの層を乾燥することが好ましい。
【0131】
アクリル共重合体に硬化促進剤を配合する場合、乾燥中にエポキシ基が十分反応しない温度で、なおかつ溶媒が充分に揮散する条件を選んでワニスの層を乾燥することが好ましい。
【0132】
上記のラジカル重合性化合物が十分反応しない温度は、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件でDSC測定したときの反応熱のピーク温度以下に設定することができる。
【0133】
具体的には、例えば60〜180℃で、0.1〜90分間加熱してワニス層を乾燥することが好ましい。
【0134】
仮固定用フィルム20の厚みとしては、仮固定の機能確保と、後述する残存揮発分の抑制とを両立する観点から、1〜300μmが好ましい。
【0135】
さらに厚膜化したフィルムを得る場合は、予め形成した100μm以下のフィルムを貼り合せてもよい。このように貼り合せたフィルムを用いることで、厚膜化フィルムを作製したときの残存溶媒を低下させることができ、揮発成分による汚染の可能性を十分低減することができる。
【0136】
本実施形態においては、仮固定用フィルムの残存揮発分を10%以下とすることが好ましい。この場合、フィルム内部にボイドが発生して加工の信頼性が損なわれることを防止することができ、また、加熱を含む加工時に揮発成分による周辺材料或いは加工する部材を汚染する可能性を十分低減することができる。
【0137】
なお、仮固定用フィルムの残存揮発成分は以下の手順で測定される。50mm×50mmサイズに切断した仮固定用フィルムについて、初期の重量をM1とし、この仮固定用フィルムを160℃のオーブン中で3時間加熱した後の重量をM2とし、[(M2−M1)/M1]×100=残存揮発分(%)の式から残存揮発分(%)を算出する。
【0138】
本実施形態では、仮固定用フィルム20を形成した後、更に保護フィルム30を積層することにより、仮固定用フィルムシート1を得ているが、形成した仮固定用フィルム20から支持基材10を除去して仮固定用フィルムのみを作製することもできる。保存性の観点からは、支持基材10を除去せずにシートの形態とすることが好ましい。
【0139】
保護フィルム30としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0140】
本発明に係る仮固定用フィルムは、使用に合わせて適宜変更が可能である。
【0141】
図2(A)は、本発明に係る仮固定用フィルムシートの他の実施形態を示す上面図であり、
図2(B)は
図2(A)のII−II線に沿った模式断面図である。
【0142】
図2に示す仮固定用フィルムシート2は、仮固定する部材の形状に合わせて仮固定用フィルム20及び保護フィルム30が予め裁断されていること以外は、仮固定用フィルムシート1と同様の構成を有する。
【0143】
仮固定用フィルムシート2は、ラミネート後にフィルムをウェハ形状に切断する必要がないという利点を有する。
【0144】
図3(A)は、本発明に係る仮固定用フィルムシートの更に別の実施形態を示す上面図であり、
図3(B)は
図3(A)のIII−III線に沿った模式断面図である。
【0145】
図3に示す仮固定用フィルムシート3は、仮固定用フィルム20の両面に接着力が周囲の面よりも小さい低接着力面を有する低接着力層40が形成されていること以外は、仮固定用フィルムシート1と同様の構成を有する。なお、低接着力層40は仮固定用フィルム20の片面のみに設けられていてもよい。また、仮固定用フィルムシート3には、
図2に示されるような加工が施されていてもよい。この場合、低接着力層40の形状は、裁断された仮固定用フィルム20の形状と同等としてもよく、小さくしてもよい。
【0146】
低接着力層40としては、例えば、上述したフッ素原子を有する表面改質剤、ポリオレフィン系ワックス及びシリコーンオイルのうちの1種以上を含有するワニスを、支持基材10の所定の箇所に塗布し乾燥し、次に仮固定用フィルム20を形成した後、仮固定用フィルム20の所定の箇所に再度塗布し乾燥することにより形成することができる。また、予め基材上に上述したフッ素原子を有する表面改質剤、ポリオレフィン系ワックス及びシリコーンオイルのうちの1種以上を含有するワニスから低接着力フィルムを形成した後、これを仮固定用フィルム20の両側に積層することによっても低接着力層40を設けることができる。
【0147】
次に、上述した仮固定用フィルム20を用いて半導体装置を製造する方法について説明する。
【0148】
まず、仮固定用フィルム20を用意する。次に、
図4に示すように、ロールラミネーター50によって、ガラス或いはウェハからなる円形の支持部材60上に仮固定用フィルム20を貼り付ける。貼り付け後、支持部材の形状に合わせて仮固定用フィルムを円形に切断する。このとき、加工する半導体ウェハの形状にも合わせて切断する形状を設定することが好ましい。
【0149】
本実施形態では仮固定用フィルム20を用いているが、上述した仮固定用フィルムシート1を用意し、保護フィルム30を剥離した後、支持基材10を剥がしながら仮固定用フィルム20を支持部材60上に貼り付けてもよい。また、上述した仮固定用フィルムシート2を用いる場合は、切断工程を省略することができる。
【0150】
支持部材への仮固定用フィルムの貼り付けには、ロールラミネーターのほか、真空ラミネーターを用いてもよい。また、支持部材ではなく、加工する半導体ウェハ側に仮固定用フィルムを貼り付けてもよい。
【0151】
次に、真空プレス機又は真空ラミネーター上に、仮固定用フィルムを貼り合せた支持部材をセットし、半導体ウェハをプレスで押圧して貼り付ける。なお、半導体ウェハ側に仮固定用フィルムを貼り付けた場合には、真空プレス機又は真空ラミネーター上に、仮固定用フィルムを貼り合せたウェハをセットし、支持部材をプレスで押圧して貼り付ける。
【0152】
真空プレス機を用いる場合は、例えばEVG社製真空プレス機EVG(登録商標)500シリーズを用いて、気圧1hPa以下、圧着圧力1MPa、圧着温度120℃〜200℃、保持時間100秒〜300秒で、仮固定用フィルム20を貼り付ける。
【0153】
真空ラミネーターを用いる場合は、例えば(株)エヌ・ピー・シー製真空ラミネーターLM−50×50−S、ニチゴーモートン(株)製真空ラミネーターV130を用い、気圧1hPa以下、圧着温度60℃〜180℃、好ましくは80℃〜150℃、ラミネート圧力0.01〜0.5Mpa、好ましくは0.1〜0.5Mpa、保持時間1秒〜600秒、好ましくは30秒〜300秒で、仮固定用フィルム20を貼り付ける。
【0154】
こうして、
図5(A)に示すように、支持部材60及び半導体ウェハ70の間に、仮固定用フィルム20を介在させ、支持部材60に半導体ウェハ70を仮固定する。
【0155】
このときの温度条件としては、本発明に係る仮固定用フィルムを用いることにより、200℃以下での貼り合せが可能となる。これにより、半導体ウェハへの損傷を十分防止しつつ、支持部材と半導体ウェハとの固定が可能となる。
【0156】
本実施形態においては、支持部材60が表面に離型処理面62を有している。この離型処理面62は、離型処理剤で支持部材60の表面の一部を離型処理することにより形成されている。離型処理剤としては、例えばポリエチレン系ワックスやフッ素系ワックス等を用いることができる。離型処理の方法としては、例えばディップ、スピンコート、真空蒸着等を用いることができる。
【0157】
また、離型処理剤としては、フッ素原子を有する表面改質剤、ポリオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、反応性基を含有するシリコーンオイル、シリコーン変性アルキド樹脂を用いることもできる。
【0158】
フッ素原子を有する表面改質剤としては、例えば、メガファック(DIC(株)製、商品名)、ハイパーテック(日産化学工業(株)製、商品名)、オプツール(ダイキン工業(株)製、商品名)、ケミノックス(ユニマテック(株)製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0159】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば、ポリエチレン系、アマイド系、モンタン酸系等のワックスが挙げられる。
【0160】
シリコーンオイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイル(例えばKF−96(信越化学工業(株)製、商品名))、反応性シリコーンオイル(例えばX−22−176F、X−22−3710、X−22−173DX、X−22−170BX(信越化学工業(株)製、商品名))が挙げられる。
【0161】
シリコーン変性アルキド樹脂としては、仮固定用フィルムに用いられるシリコーン変性アルキド樹脂と同様のものが挙げられる。
【0162】
これらの離型処理剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0163】
なお、支持部材60に離型処理面62を形成しない場合、例えば仮固定用フィルム20上に離型処理剤を含有するワニスを塗布し離型層を形成してもよい。
【0164】
図5(A)に示すように、離型処理は支持部材60の中央に施して縁には施さないことが好ましい。こうすることで、半導体ウェハの加工中には仮固定用フィルムとの接着強度を確保しつつ、加工後に仮固定用フィルムを有機溶剤で溶解するときに溶解時間を短縮することが可能となる。
【0165】
また本実施形態においては、半導体ウェハ70がエッジトリミングされた円盤状であり、該半導体ウェハ70のエッジトリミング75を有する側と支持部材60との間に、半導体ウェハのエッジトリミングを有する側よりも直径が小さい形状を有する仮固定用フィルム20を介在させ、支持部材に半導体ウェハを仮固定している。また、半導体ウェハ70には所定の配線パターンが加工されており、配線パターンを有する面に仮固定用フィルムが貼り合される。
【0166】
上記の点について、より詳細に説明する。半導体ウェハ70における支持部材60と対向する面の外周部には、エッジトリミング75が施されている。また、仮固定用フィルム20として、例えば円形状の平面形状を有する仮固定用フィルムを用いる。仮固定用フィルム20の半径は、半導体ウェハ70における支持部材60と対向する面の半径よりも長さDだけ小さい。
【0167】
そして、半導体ウェハ70における支持部材60と対向する面の中心と仮固定用フィルム20の中心とが一致するように仮固定用フィルム20を配置する。すなわち、エッジトリミング75部分よりも長さDだけ内側に仮固定用フィルム20を配置する。
【0168】
次に、
図5(B)に示すように、グラインダー90によって半導体ウェハの裏面(本実施形態においては半導体ウェハのエッジトリミングを有する側(配線パターンを有する面)とは反対側)を研削し、例えば700μm程度の厚みを100μm以下にまで薄化する。
【0169】
グラインダー90により研削する場合、例えば(株)DISCO製グラインダー装置DGP8761を用いる。この場合、研削条件は、所望の半導体ウェハの厚み及び研削状態に応じて任意に選ぶことができる。
【0170】
半導体ウェハにエッジトリミングが施されていることにより、ウェハの研削工程でのウェハの損傷を抑えることが容易となる。また、仮固定用フィルムの形状を半導体ウェハのエッジトリミングを有する側よりも小さくすることにより、研削されたウェハから仮固定用フィルムがはみ出ることを防止できるため、例えばプラズマエッチング等の加工で仮固定用フィルムの残渣が発生して半導体ウェハを汚染すること等を防止することができる。
【0171】
上述のとおり、仮固定用フィルム20をエッジトリミング75部分よりも長さDだけ内側に配置するが、長さDは、1mm以上2mm以下であることが好ましい。長さDが1mm以上であると、仮固定用フィルム20を配置する位置に誤差が生じた場合であっても、仮固定用フィルム20がエッジトリミング75部分にはみ出しにくくなる。また、長さDが2mm以下であると、半導体ウェハ70の平坦性を確保でき、後の研削工程において半導体ウェハ70を良好に研削できる。
【0172】
次に、薄化した半導体ウェハ80の裏面側にドライイオンエッチング又はボッシュプロセス等の加工を行い、貫通孔を形成した後、銅めっきなどの処理を行い、貫通電極82を形成する(
図5(C)を参照)。
【0173】
こうして半導体ウェハに所定の加工が施される。
図5(D)は、加工後の半導体ウェハの上面図である。
【0174】
その後、加工された半導体ウェハ80を支持部材60から分離し、さらにダイシングライン84に沿ったダイシングによって半導体素子に個片化される。得られた半導体素子を他の半導体素子又は半導体素子搭載用基板に接続することにより半導体装置が得られる。
【0175】
他の態様として、上記と同様の工程を経て得られた半導体ウェハ又は半導体素子を、それらの貫通電極同士が接続するように複数積層して、半導体装置を得ることもできる。複数の半導体ウェハを積層した場合は、積層体をダイシングによって切断して半導体装置を得ることができる。
【0176】
さらに他の態様として、予め貫通電極を作成した厚膜の半導体ウェハを用意し、このウェハの回路面に仮固定用フィルムを貼り合せ、グラインダーによって半導体ウェハの裏面(本実施形態においては半導体ウェハのエッジトリミングを有する側(配線パターンを有する面)とは反対側)を研削し、例えば700μm程度の厚みを100μm以下にまで薄化することができる。次に、薄化した半導体ウェハをエッチングし、貫通電極の頭出しを行い、パッシベーション膜を形成する。その後、イオンエッチングなどで銅電極の頭出しを再度行い、回路を形成する。こうして加工された半導体ウェハを得ることができる。
【0177】
加工された半導体ウェハ80と支持部材60との分離は、仮固定用フィルム20に有機溶剤を接触させて仮固定用フィルム20の一部又は全部を溶解することで容易に行うことができる。本実施形態においては、
図6(A)に示すように、仮固定用フィルム20を、支持部材60の離型処理面62のところまで溶解させることにより、支持部材60から加工された半導体ウェハ80を分離することができる。この場合、分離に要する処理時間を短縮することができる。
【0178】
有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2ピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、シクロヘキサノン、トリメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、並びに、これらのうちの1種以上と、トリエタノールアミン及びアルコール類のうちの1種以上との混合溶媒が挙げられる。有機溶剤は、1種の化合物からなるものであってもよく、2種以上の化合物の混合物であってもよい。好ましい溶剤としては、NMP、NMP/エタノールアミン、NMP/TMAH水溶液、NMP/トリエタノールアミン、(NMP/TMAH水溶液)/アルコール、TMAH水溶液/アルコールが挙げられる。
【0179】
仮固定用フィルム20に有機溶剤を接触させる方法としては、例えば、浸漬、スプレー洗浄、超音波洗浄等が挙げられる。有機溶剤の温度は25℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらにより好ましい。有機溶剤との接触時間は1分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上がさらにより好ましい。
【0180】
半導体ウェハ80と支持部材60との分離は、例えば、仮固定用フィルムと離型処理面との界面に鍵型の形をした冶具を引っ掛けるように設置し、上方向に応力を加えることによって行うことができる。
【0181】
こうして所定の加工が施された半導体ウェハを得ることができる(
図6(B))。なお、分離した半導体ウェハ80に仮固定用フィルム20が残存している場合には、再度有機溶剤等で洗浄することができる。
【0182】
上述した実施形態では、離型処理面62は支持部材60の表面の一部に形成されていたが、
図7に示すように、離型処理面62aは、支持部材60aの表面の全部に形成されていてもよい。この場合、溶剤を使用しなくても、室温で機械的に支持部材60から加工された半導体ウェハ80を容易に分離できる。機械的に分離する際は、例えばEVG社製De−Bonding装置EVG805EZDを用いる。
【0183】
離型処理面62aは、例えばスピンコートにより支持部材60aの表面の全部にフッ素原子を有する表面改質剤を塗布して離型処理面62aを形成する。この場合、例えばミカサ(株)製スピンコータMS−A200を用いて、1000rpm〜2000rpm、10秒〜30秒で支持部材60aの表面にダイキン工業(株)製フッ素型離型剤(オプツール HD−100Z)を塗布した後、120℃に設定したオーブンにて3分間放置し、溶剤を揮発させ、離型処理面62aを形成する。
【0184】
別の実施形態として、仮固定用フィルムシート3を用いて半導体ウェハの仮固定、加工、分離を行う例を
図8に示す。
【0185】
本実施形態では、エッジトリミング75が施された半導体ウェハ70のエッジトリミングを有する側に仮固定用フィルム20を貼り合わせて、仮固定用フィルム付半導体ウェハ100を用意する(
図8(A))。
【0186】
次に、真空プレス機又は真空ラミネーター上に、仮固定用フィルム付半導体ウェハ100をセットし、支持部材60をプレスで押圧して貼り付ける。こうして、
図8(B)に示すように、支持部材60及び半導体ウェハ70の間に、両面に低接着力層40を有する仮固定用フィルム20を介在させ、支持部材60に半導体ウェハ70を仮固定する。
【0187】
次に、半導体ウェハの裏面の研削を行い(
図8(C))、更に回路形成及び貫通孔の形成等の加工を行う。次に、仮固定用フィルム20に有機溶剤を接触させて仮固定用フィルム20の一部を溶解させる。このとき、
図8(D)に示すように、仮固定用フィルム20を、低接着層40のところまで溶解させることにより、支持部材60から加工された半導体ウェハ80を分離することができる。この場合も分離に要する処理時間を短縮することができる。
【0188】
加工された半導体ウェハ80は、上記と同様にして貫通電極が形成され、ダイシングによって半導体素子に個片化される。
【0189】
上述した実施形態では、低接着力層40は仮固定用フィルム20の表面の一部に形成されていたが、
図9に示すように、低接着力層40aは、仮固定用フィルム20の表面の全部に形成されていてもよい。この場合、溶剤を使用しなくても、室温で機械的に支持部材60から加工された半導体ウェハ80を容易に分離できる。機械的に分離する際は、例えばEVG社製De−Bonding装置EVG805EZDを用いる。
【0190】
上述した方法により、貫通電極86が形成され、個片化された半導体素子110が得られる(
図10(A))。
【0191】
半導体素子110は、例えば、配線基板120上に複数積層される。こうして、半導体素子110を備える半導体装置200を得ることができる(
図10(B))。
【実施例】
【0192】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0193】
(ポリイミド樹脂PI−1の合成)
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えたフラスコ内に、ジアミンである、BAPP(商品名、東京化成製、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)、分子量410.51)を10.26g(0.025mol)及び1,4−ブタンジオール ビス(3−アミノプロピル)エーテル(東京化成製、商品名:B−12、分子量:204.31)5.10g(0.025mol)と、溶媒である、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0194】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、デカメチレンビストリメリテート酸二無水物(DBTA)26.11g(0.05mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、ポリイミド樹脂PI−1を得た。ポリイミド樹脂PI−1の重量平均分子量は50000、Tgは70℃であった。
【0195】
(ポリイミド樹脂PI−2の合成)
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えたフラスコ内に、ジアミンである、BAPP(東京化成製、商品名:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)、分子量410.51)を8.21g(0.02mol)及び長鎖シロキサンジアミン(信越化学製、商品名:KF8010、分子量:960)28.8g(0.03mol)と、溶媒である、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0196】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、デカメチレンビストリメリテート酸二無水物(DBTA)5.22g(0.01mol)及び4,4’−オキシジフタル酸二無水物13.04g(0.04mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、ポリイミド樹脂PI−2を得た。ポリイミド樹脂PI−2の重量平均分子量は50000、Tgは120℃であった。
【0197】
(ポリイミド樹脂PI−3の合成)
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えたフラスコ内に、ジアミンである、B−12(東京化成製、1,4−ブタンジオール ビス(3−アミノプロピル)エーテル、分子量204.31)を2.04g(0.01mol)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(東京化成製、APB−N、分子量292.34)10.23g(0.035mol)及び側鎖フェニル基含有長鎖シロキサンジアミン(信越化学製、商品名:X−22−1660B―3、分子量:4400)22g(0.005mol)と、溶媒である、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0198】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、デカメチレンビストリメリテート酸二無水物(DBTA)26.11g(0.05mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、ポリイミド樹脂PI−3を得た。ポリイミド樹脂PI−3の重量平均分子量は70000、Tgは100℃であった。
【0199】
(ポリイミド樹脂PI−4の合成)
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えたフラスコ内に、ジアミンである、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(東京化成製、APB−N、分子量292.34)13.15g(0.045mol)及び側鎖フェニル基含有長鎖シロキサンジアミン(信越化学製、商品名:X−22−1660B―3、分子量:4400)22g(0.005mol)と、溶媒である、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0200】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、デカメチレンビストリメリテート酸二無水物(DBTA)26.11g(0.05mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、ポリイミド樹脂PI−4を得た。ポリイミド樹脂PI−2の重量平均分子量は70000、Tgは160℃であった。
【0201】
(ポリイミド樹脂PI−5の合成)
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えたフラスコ内に、ジアミンである、BAPP(東京化成製、商品名:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)、分子量410.51)を20.52g(0.05mol)と、溶媒である、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0202】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、ピロメリット酸無水物10.90g(0.05mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、ポリイミド樹脂PI−5を得た。ポリイミド樹脂PI−5の重量平均分子量は30000、Tgは200℃であった。
【0203】
ポリイミド樹脂PI−1〜5の組成(酸無水物全量或いはジアミン全量を基準とするモル%)を表1に示す。
【0204】
【表1】
【0205】
(実施例1〜14、比較例1、2)
[ワニスの調製]
表2〜4に示す組成(単位は質量部)に基づいて、各材料をNMP溶媒中に固形分濃度が50質量%になるように溶解混合してフィルムを形成するためのワニスをそれぞれ作製した。
【0206】
【表2】
【0207】
【表3】
【0208】
【表4】
【0209】
表中の各成分の詳細は以下の通りである。
SKダイン1435:アクリル系粘着剤(綜研化学製)
A−DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製)
A−9300:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学社製)
A−DOG:1,10−デカンジオールアクリレート(新中村化学社製)
UA−512:2官能ウレタンアクリレート(新中村化学社製)
YDF−8170:ビスフェノールF型ビスグリシジルエーテル(東都化成社製)
VG−3101:高耐熱3官能エポキシ樹脂(プリンテック社製)
パークミルD:ジクミルパーオキサイド(日油製)
H27:トリメトキシフェニルシラン修飾球状シリカフィラ(CIKナノテック製)
SC2050SEJ:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン修飾球状シリカフィラ
HD1100Z:フッ素系表面改質材(ダイキン工業製)
FA−200:フッ素系表面改質材(日産化学製)
2PZ−CN:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成製)
【0210】
[仮固定用フィルムの作製]
作製したワニスをセパレータフィルム(PETフィルム)上にナイフコーターを用いて塗布した後、80℃のオーブンで30分間、ついで、120度のオーブンで30分間乾燥させることによって、厚さ30μmの仮固定用フィルムを作製した。
【0211】
得られた仮固定用フィルムについて、低温貼付性、耐熱性及び溶解性を以下の試験に従って評価した。結果を表4に示す。
【0212】
[低温貼付性試験]
支持台上に載せたシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、仮固定用フィルムをロール(温度150℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。PETフィルムを剥がし、仮固定用フィルム上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム「ユーピレックス」(商品名)を前記と同様の条件でロールにより加圧して積層した。このようにして準備したサンプルについて、レオメータ「ストログラフE−S」(商品名)を用いて、室温で90°ピール試験を行って、仮固定用フィルムとユーピレックスとの間のピール強度を測定した。ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをCとした。
【0213】
[接着力(密着力)試験]
支持台上に載せたシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、仮固定用フィルムをロール(温度80℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。PETフィルムを剥がし、仮固定用フィルム上に、感圧型のダイシングテープをラミネートした。その後、ダイサーを用いてウェハを3mm×3mmサイズのチップに個片化した。こうして得られた仮固定用フィルム付きチップを、10mm×10mm×0.40mm厚のシリコン基板上に、仮固定用フィルムを挟んで、150℃の熱盤上で2000gf/10秒の条件で加熱圧着した。その後、120℃で1時間、180℃で1時間、260℃で10分間加熱した。得られたサンプルについて、Dage製接着力試験機Dage−4000を用いて、25℃の熱盤上で、測定速度:50μm/秒、測定高さ:50μmの条件でチップ側にせん断方向の外力を加えたときの接着力を測定し、これを25℃におけるせん断接着力とした。25℃でのせん断接着力が1MPa以上のものをA、1MPa未満のものをCとした。
【0214】
[耐熱性試験]
上記低温貼付性試験と同様にして得られたサンプルを、ホットプレート上で120℃1時間、180℃1時間、260℃10分間加熱した。その後、サンプルを観察し、発泡が見られなかったサンプルをA、発泡が観察されたサンプルをCとした。
【0215】
[溶解性試験A]
支持台上に載せた1/4シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μmの1/4)の裏面(支持台と反対側の面)に、仮固定用フィルムをロール(温度150℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。PETフィルムを剥がしたのち、上記低温貼付性試験と同様にして得られたサンプルを、ホットプレート上で120℃1時間、180℃1時間、260℃10分間加熱した。その後、NMPを満たしたガラス容器にサンプルを入れ、超音波洗浄機を用いて仮固定用フィルムを溶解させた。仮固定用フィルムが溶解したサンプルをA、溶解しなかったサンプルをCとした。
【0216】
[溶解性試験B]
支持台上に載せた1/4シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μmの1/4)の裏面(支持台と反対側の面)に、仮固定用フィルムをロール(温度150℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。PETフィルムを剥がしたのち、上記低温貼付性試験と同様にして得られたサンプルを、ホットプレート上で120℃1時間、180℃1時間、260℃10分間加熱した。その後、n−プロピルアルコール及び25%TMAH水溶液を同体積で混合した混合溶媒を満たしたガラス容器にサンプルを入れ、超音波洗浄機を用いて仮固定用フィルムを溶解させた。仮固定用フィルムが溶解したサンプルをA、溶解しなかったサンプルをCとした。
【0217】
【表5】
【0218】
【表6】
【0219】
【表7】
【0220】
さらに、仮固定用フィルムにアクリルゴムを用いた場合の実施例、及びその比較例について以下で説明する。
【0221】
[アクリルゴムP−1の合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500ccのセパラブルフラスコ内に、脱イオン水200g、アクリル酸ブチル40g、アクリル酸エチル28g、グリシジルメタクリレート3g、アクリロニトリル29g、1.8%ポリビニルアルコール水溶液2.04g、ラウリルパーオキサイド0.41g、及びn−オクチルメルカプタン0.07gを配合した。続いて、60分間N
2ガスを吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して3時間重合を行った。さらに、90℃に昇温して2時間攪拌を続け重合を完結させた。得られた透明のビーズをろ過により分離し、イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃6時間乾燥させ、アクリルゴムP−1を得た。アクリルゴムP−1をGPCで測定したところ、アクリルゴムP−1の重量平均分子量Mwは、ポリスチレン換算で40万であった。また、アクリルゴムP−1のTgは8℃であった。
【0222】
なお、粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いてアクリルゴムのフィルムを測定したときのtanδのピーク温度をアクリルゴムのTgとした。具体的には、30μmの厚みのフィルムを成型後、これを10mm×25mmのサイズに切断し、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50〜300℃の条件で貯蔵弾性率及びtanδの温度依存性を測定することによりTgを算出した。
【0223】
[アクリルゴムP−2の合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500ccのセパラブルフラスコ内に、脱イオン水200g、アクリル酸ブチル36g、アクリル酸エチル18g、グリシジルメタクリレート3g、メタクリル酸メチル43g、1.8%ポリビニルアルコール水溶液2.04g、ラウリルパーオキサイド0.41g、及びn−オクチルメルカプタン0.07gを配合した。続いて、60分間N
2ガスを吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して3時間重合を行った。さらに、90℃に昇温して2時間攪拌を続け重合を完結させた。得られた透明のビーズをろ過により分離し、イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃6時間乾燥させ、アクリルゴムP−2を得た。アクリルゴムP−2をGPCで測定したところ、アクリルゴムP−2のMwは、ポリスチレン換算でMw50万であった。また、アクリルゴムP−2のTgは12℃であった。
【0224】
[アクリルゴムP−3の合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500ccのセパラブルフラスコ内に、脱イオン水200g、アクリル酸ブチル59g、アクリル酸エチル41g、1.8%ポリビニルアルコール水溶液2.04g、ラウリルパーオキサイド0.41g、及びn−オクチルメルカプタン0.07gを配合した。続いて、60分間N
2ガスを吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して3時間重合を行った。さらに、90℃に昇温して2時間攪拌を続け重合を完結させた。得られた透明のビーズをろ過により分離し、イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃6時間乾燥させ、アクリルゴムP−3を得た。アクリルゴムP−3をGPCで測定したところ、アクリルゴムP−3のMwは、ポリスチレン換算で40万であった。また、アクリルゴムP−3のTgは−40℃であった。
【0225】
[ワニスの調製]
アクリルゴム、硬化促進剤、剥離処理剤、フィラ及び塗工溶媒を表8に示す配合割合(単位は質量部)で配合し、ワニスF−01〜F−07を調製した。
【0226】
【表8】
【0227】
表中の各成分の詳細は以下のとおりである。
HTR−860P−DR3:GPCによる重量平均分子量80万、グリシジルメタクリレート3質量%、Tg−7℃のアクリルゴム(ナガセケムテックス(株)製)
2PZ−CN:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製)
TA31−209E:シリコーン変性アルキド樹脂(日立化成ポリマー(株)製)
SC2050−SEJ:表面処理シリカフィラ(アドマテックス(株)製)
【0228】
[仮固定用フィルムの作製]
調製したワニスを、離型処理した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、90℃10分間、120℃で30分間加熱乾燥して、基材フィルム付き仮固定用フィルムを得た。仮固定用フィルムの膜厚は、30μmであった。
【0229】
[離型処理剤付き支持部材R−1の作製]
8インチウェハの鏡面側を表にして、ミカサ(株)製スピンコータMS−A200に設置し、ダイキン工業(株)製フッ素型離型剤(オプツール HD−1000Z)をウェハ上に滴下した後、800rpmで10秒間、続いて1200rpmで30秒間スピンコートを行った。その後、ウェハを120℃に設定したホットプレート上に5分間、続いて150℃に設定したホットプレートに5分間静置し、離型処理剤付き支持部材R−1を得た。
【0230】
[離型処理剤付き支持部材R−2の作製]
8インチウェハの鏡面側を表にして、ミカサ(株)製スピンコータMS−A200に設置し、日立化成ポリマー(株)製シリコーン変性アルキッド樹脂(TA31−209E)100質量部及びパラトルエンスルホン酸10質量部を配合した固形分10質量%のトルエン溶液をウェハ上に滴下した後、800rpmで10秒間、続いて1500rpmで30秒間スピンコートを行った。その後、ウェハを120℃に設定したホットプレート上に5分間、続けて150℃に設定したホットプレート上に5分間静置し、離型処理剤付き支持部材R−2を得た。
【0231】
[支持部材R−3]
8インチウェハを離型処理せずにそのまま支持部材R−3として用いた。
【0232】
(実施例15〜19、比較例3〜8)
以下で説明する手順で、上記アクリルゴムをワニス又は仮固定用フィルムの状態で上記支持部材と組み合わせ、各種評価を行った。用いたアクリルゴムの種類、アクリルゴムの状態、支持部材の種類、及び評価結果を表9,10に示す。
【0233】
[半導体ウェハのエッジトリミング]
研削前の半導体ウェハに対して、フルオードダイサ((株)DISCO製、DFD−6361)を用いてエッジトリミング処理を行った。ブレードは(株)DISCO製VT07−SD2000−VC200−100(52x1A3x40−L)を用い、ブレード回転数20,000rpm、送り速度3.0°/sec、切り込み深さ0.2mm、トリム幅0.5mmの条件とした。
【0234】
[半導体ウェハへのフィルムラミネート]
基材フィルム付き仮固定用フィルムを、半導体ウェハのエッジトリミングが施された面の直径よりも2mm小さい直径を有する円形状に切り出した。その後、ニチゴーモートン(株)製真空ラミネーターV130を用い、気圧1hPa以下、圧着温度80℃、ラミネート圧力0.5MPa、保持時間60秒でラミネートを行い、仮固定用フィルム付き半導体ウェハを得た。
【0235】
[半導体ウェハへのワニススピンコート]
エッジトリミングが施された半導体ウェハをミカサ(株)製スピンコータMS−A200に設置し、表1に示すワニスをウェハに適量滴下し、600rpmで10秒間、続いて1500rpmで30秒間スピンコートした。その後、半導体ウェハを90℃に設定したオーブンにて10分間、続いて120℃に設定したオーブンで30分間加熱乾燥して仮固定用フィルム付き半導体ウェハを得た。仮固定用フィルムの膜厚は、30μmであった。
【0236】
[支持部材への圧着]
ニチゴーモートン(株)製真空ラミネーターV130を用い、気圧1hPa以下、圧着温度100℃ラミネート圧力0.5MPa、保持時間100秒で、離型処理剤付き支持部材と仮固定用フィルム付き半導体ウェハとを圧着した。その後、110℃に設定したオーブン30分間保持した後、170℃に設定したオーブンで1時間保持し、積層サンプルを得た。
【0237】
[バックグラインド試験]
フルオートグラインダポリッシャ((株)DISCO社製、DGP−8761)を用いて積層サンプルにおける半導体ウェハ表面を研削した。ホイールには、1軸:GF01−SDC320−BT300−50、2軸:IF−01−1−4/6−B・K09、3軸:DPEG−GA0001をそれぞれ用いた。チャックテーブル回転数を300rpm、ホイール回転数を1軸:3,200rpm、2軸:3,400rpm、3軸:1,400rpmとし、クロスフィード方式で研削を行った。1軸で142μm厚になるまで研削後、2軸で102μm厚になるまで、3軸で100μm厚になるまで研削した。研削終了時点で割れ等が発生しなかったサンプルをA、割れ等が発生したサンプルをBと評価した。
【0238】
[耐熱性試験]
バックグラインド試験において評価がAであった積層サンプルについて、SAMを用いて仮固定用フィルムの状態を確認した。その後、積層サンプルを200℃に設定したオーブンに2時間放置し、さらに260℃に設定したオーブンに20分間放置した。続いて、再度SAMを用いて仮固定用フィルムの状態を確認し、オーブンに放置しても仮固定用フィルムの剥離が生じなかったサンプルをA、剥離が生じたサンプルをBと評価した。
【0239】
[支持部材からの剥離性試験]
耐熱性試験において評価がAであった積層サンプルについて、離型処理剤付き支持部材と仮固定用フィルムとの間に先端が鋭利な状態のピンセットを差し入れ、外縁に沿ってピンセットを動かした。このとき、半導体ウェハが割れることなく支持部材を剥離できたサンプルをA、剥離できなかったサンプルをBと評価した。
【0240】
[半導体ウェハからの剥離性試験]
支持部材からの剥離性試験において評価がAであった積層サンプルについて、半導体ウェハに貼付されている仮固定用フィルムの端部をピンセットにて持ち上げた。このとき、半導体ウェハから仮固定用フィルムを剥離できたサンプルをA、剥離できなかったサンプルをBと評価した。
【0241】
【表9】
【0242】
【表10】