特許第5962784号(P5962784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

特許5962784含水コールタールの油水分離方法および油水分離剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962784
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】含水コールタールの油水分離方法および油水分離剤
(51)【国際特許分類】
   C10C 1/02 20060101AFI20160721BHJP
   C10C 1/20 20060101ALI20160721BHJP
   B01D 17/05 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C10C1/02
   C10C1/20
   B01D17/05 501M
   B01D17/05 501H
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-4431(P2015-4431)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-130284(P2016-130284A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100092934
【弁理士】
【氏名又は名称】塚脇 正博
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 たかし
(72)【発明者】
【氏名】土岐 毅
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04139451(US,A)
【文献】 特開2000−230177(JP,A)
【文献】 特開2014−104392(JP,A)
【文献】 特公平01−019439(JP,B2)
【文献】 中国特許出願公開第102839007(CN,A)
【文献】 界面活性剤入門,2007年 6月11日,140-147頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10C,B01D
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリフィン法HLB値が6.5以上のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選択される1種以上のノニオン性界面活性剤及び/又はデイビス法HLB値が45以上のアニオン性界面活性剤を、コールタール1部に対し水分を1部以下の質量比で含む含水コールタールへ添加して油水分離を行う、含水コールタールの油水分離方法。
【請求項2】
グリフィン法HLB値が6.5以上であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選択される1種以上のノニオン性界面活性剤を必須成分として、コールタール1部に対し水分を0.7部以下の質量比で含む含水コールタールへ添加する、請求項1に記載の油水分離方法。
【請求項3】
リフィン法HLB値が7以上であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選択される1種以上のノニオン性界面活性剤を必須成分とする、請求項に記載の油水分離方法。
【請求項4】
イビス法HLB値が54以上であるアニオン性界面活性剤を必須成分とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の油水分離方法。
【請求項5】
界面活性剤の全添加量がタール純分に対して0.005〜1質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の油水分離方法。
【請求項6】
グリフィン法HLB値6.5以上のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選択される1種以上のノニオン性界面活性剤及び/又はデイビス法HLB値45以上のアニオン性界面活性剤を含む、コールタール1部に対し水分を1部以下の質量比で含む含水コールタールを分離するための油水分離剤。
【請求項7】
リフィン法HLB値が7以上であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選択される1種以上のノニオン性界面活性剤を必須成分とする、コールタール1部に対し水分を0.7部以下の質量比で含む含水コールタールを分離するための、請求項6に記載の油水分離剤。
【請求項8】
イビス法HLB値が54以上であるアニオン性界面活性剤を必須成分とする、請求項6又は7に記載の油水分離剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水コールタールの油水分離方法および油水分離剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コールタール(以下、「タール」ともいう。)は、コークス炉から発生した副産物であり、次のように製造される。
コークス炉で発生したガスに安水(アンモニア水)を散布して冷却し、得られた凝縮物を安水と共にタールデカンターで静置して安水層とタール層に分離し、タールを抜き出してタールタンク(デカンタ分離後の粗精製物貯蔵槽)に入れ、安水を抜き出して安水タンクに入れる。タールタンク中のタールはスラッジを含むので、遠心分離機(スーパーデカンター)でスラッジを分離して、得たタールはタール貯蔵槽(遠心分離後の精製度合いの高いタールの貯蔵槽)に入る。
コールタールは、含水状態でエマルションを形成するので、コールタールの製造、精製工程においては、タールデカンター、タールタンク、遠心分離機(スーパーデカンター)などにおいて油水分離が必要となる。しかし、コールタール中の重質油は比重が大きく、水との親和性が高く、含水状態で強固なエマルションを形成するので、遠心分離法でもその分離は容易ではない。
【0003】
特許文献1には、コールタール主体の重質油が水を含む含水廃油に、アルキルアリルスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルサルフェート塩及びポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩の1種以上のアニオン系界面活性剤を添加する方法が記載されているが、油水分離の程度は十分とはいえなかった。また、それら薬剤の添加箇所と油水分離効果の違いについて記載されていなかった。
【0004】
特許文献2には、タール系含水廃油に、石油と、第4級アンモニウム塩やイミダゾール誘導体を主成分とするカチオン系界面活性剤を添加して油分と水分を分離する方法が記載されているが、油水分離効果は十分ではなかった。そして、アニオン系界面活性剤では良好な分離効果を示さないとも記載され、それら薬剤の添加場所と油水分離効果の違いについては記載されていなかった。
【0005】
また、特許文献3には、タールデカンターでコールタールと安水に分離する際に、微量のアルキルフェノールのホルマリン縮合物と重合エーテルの混合物などの親油性乳化破壊剤をタールデカンター内に添加することで、界面のエマルジョンを破壊して安水中に懸濁する滓を除去する方法について記載されている。しかし、タール中の水分を低減する効果については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−96785号公報
【特許文献2】特開昭54−102305号公報
【特許文献3】特開2000−198986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、含水コールタールの油水分離効果に優れた油水分離方法および油水分離剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、グリフィン法HLB値6.5以上のノニオン性界面活性剤及び/又はデイビス法HLB値45以上のアニオン性界面活性剤を、コールタール1部に対し水分を1部以下の質量比で含む含水コールタールへ添加することで、優れた油水分離効果が発揮されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の油水分離方法および油水分離剤を提供する。
[1]グリフィン法HLB値が6.5以上のノニオン性界面活性剤及び/又はデイビス法HLB値が45以上のアニオン性界面活性剤を、コールタール1部に対し水分を1部以下の質量比で含む含水コールタールへ添加して、含水コールタールの油水分離方法。
[2]ノニオン性界面活性剤のグリフィン法HLB値が7以上である、上記[1]に記載の油水分離方法。
[3]アニオン性界面活性剤のデイビス法HLB値が54以上である、上記[1]又は[2]に記載の油水分離方法。
[4]含水コールタールが、コールタール1部に対し水分を0.7部以下の質量比で含むものである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の油水分離方法。
[5]界面活性剤の全添加量がタール純分に対して0.005〜1質量%である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の油水分離方法。
[6]グリフィン法HLB値6.5以上のノニオン性界面活性剤及び/又はデイビス法HLB値45以上のアニオン性界面活性剤を含む、コールタール用油水分離剤。
[7]ノニオン性界面活性剤のグリフィン法HLB値が7以上である、上記[6]に記載のコールタール用油水分離剤。
[8]アニオン性界面活性剤のデイビス法HLB値が54以上である、上記[6]又は[7]に記載のコールタール用油水分離剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の含水コールタールの油水分離方法および油水分離剤によれば、含水コールタールの油水分離効果に優れ、コールタールの水分が十分に低減されて、安定した品質のタール製品を得ることが可能となる。添加箇所は、水分よりもコールタール分の多い箇所であればよく、特にタールデカンターで分離されたコールタールに用いて、スーパーデカンター(遠心分離)において脱水を促進する方法として適している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、含水コールタールの油水分離方法および油水分離剤に関する。
本発明に使用される含水コールタールの油水分離剤は、グリフィン法HLB値が6.5以上のノニオン性界面活性剤及び/又はデイビス法HLB値が45以上のアニオン性界面活性剤であり、コールタール1部に対し水分を1部以下の質量比で含む含水コールタール、特にタールデカンター出口の含水コールタールに対し十分な油水分離効果を発揮する。
なお、本明細書において、「水分」とは安水のほか、粗製タールから塩分を抜くために洗浄に使用する工水や上水等を含む概念である。
【0012】
本発明に使用するノニオン性界面活性剤は、グリフィン法HLB値が6.5以上であることを要し、7.0以上であることが好ましく、そのようなノニオン性界面活性剤としては、そのHLB値を有するものであれば、種類は限定されないが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが好ましく用いられる。
【0013】
そのようなグリフィン法HLB値を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、通常、炭素数が8〜12のアルキル基、ポリオキシアルキレンがポリオキシエチレンであり、エチレンオキサイドの付加モル数が16〜25の範囲のものから得られる。
本発明に使用するポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、HLB値が11であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(商品名「サンノニックSS−50」、三洋化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0014】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーは、プロピレンオキサイドの重合により得られるポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドを重合して得られるポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイドのトリブロック共重合体であり、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドの重合度(通常それぞれ数十)によりHLB値が異なる。
本発明に使用するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの具体例としては、例えば、HLB値が7である、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(商品名「ニューポールPE−74」、三洋化成工業株式会社製)、HLB値が16である、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(商品名「ニューポールPE−78」、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0015】
後述の比較例13、14で使用するようなグリフィン法HLB値が6.5未満のノニオン性界面活性剤では油水分離効果が不良であり、また、上記のグリフィン法HLB値が6.5以上のノニオン性界面活性剤を使用しても、水分がコールタール分よりも多いコールタールと水の混合物に対しては油水分離効果が不良である。
【0016】
本発明に使用するアニオン性界面活性剤は、デイビス法で計算したHLB値が45以上であることを要し、54以上であることが好ましく、そのようなアニオン性界面活性剤としては、そのデイビス法HLB値を有するポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸塩、スルホコハク酸アルキル塩が好ましく用いられる。
【0017】
ポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸塩において、ポリオキシアルキレンアルキル基のポリオキシアルキレンは、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンであり、その平均付加モル数は約1〜2が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキル基のアルキルは、炭素数が10〜18、好ましくは12〜14であり、スルホコハク酸塩はスルホコハク酸二アルカリ金属塩もしくはスルホコハク酸二アンモニウム塩である。
本発明に使用するポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸塩の具体例としては、例えば、デイビス法HLB値が56であるポリオキシエチレン(約2)アルキル(12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム(商品名「ビューライトESS」、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0018】
スルホコハク酸アルキル塩において、アルキル基は、炭素数が10〜18、好ましくは12〜14であり、スルホコハク酸塩はスルホコハク酸二アルカリ金属塩もしくはスルホコハク酸二アンモニウム塩である。
本発明に使用するスルホコハク酸アルキル塩の具体例としては、例えば、デイビス法HLB値が54であるスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム(商品名「ビューライトSSS」、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0019】
後述の比較例11、12で使用するようなデイビス法HLB値が45未満のアニオン性界面活性剤では油水分離効果が不良であり、また、上記のデイビス法HLB値が45以上のアニオン性界面活性剤を使用しても、水分がコールタール分よりも多いコールタールと水の混合物に対しては油水分離効果が不良である。
ちなみに、代表的アニオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムのデイビス法HLB値は40である。
【0020】
グリフィン法HLB値が6.5以上のノニオン性界面活性剤及び/又はデイビス法HLB値が45以上のアニオン性界面活性剤の全添加量は、タール純分に対して0.005〜1質量%、好ましくは0.01〜0.1質量%である。
なお、該ノニオン性界面活性剤を主体に添加する場合、その添加量は全界面活性剤中70質量%以上であることが好ましい。
【0021】
以上の界面活性剤は、ポリオキシエチレンスルホコハク酸二ナトリウムやスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムなど固形のものはそのまま添加してもよいが、対象である含水コールタールへの混合および均一化を考慮すると水で希釈して液体で添加することが望ましい。
【0022】
本発明の油水分離方法および油水分離剤は、コールタールの製造工程において用いられ、油水分離剤の添加箇所は、水分よりもコールタール分の多い箇所であればよいが、コールタール1部に対し水を0.7部以下の質量比で含む含水コールタールに添加するのが好ましく、特にタールデカンターで分離されたコールタールに用いて、スーパーデカンター(遠心分離)において脱水を促進する方法として適している。
【0023】
コールタールはW/Oタイプのエマルションとして水分を保持しているので、コールタールと水を分離させるためにはエマルションを破壊する必要がある。本発明において、油水分離剤である特定の界面活性剤を添加すると、エマルションを形成している界面に作用してエマルションを維持できない状態にするため、水分が合一し水とタールに分離すると考えられる。
グリフィン法HLB値6.5以上のノニオン性界面活性剤及びデイビス法HLB値45以上のアニオン性界面活性剤は水に溶けやすいが、タールに溶解・拡散しにくい。そのため、タール1に対し、水分が1以下の含水コールタールでは、これらの界面活性剤がタール中にエマルションとして存在している水分およびその界面に集中的に作用できる。したがって、タールよりも水分が多い場所、例えばタールデカンター入口側のタールと安水の混合物(タール:安水=1:500程度)にこれらの界面活性剤を添加するよりも、タールデカンター出口のタールデカンターで処理した後の水分の少ないタール(タール:水分=1:0.1〜1.0程度)に添加した方が、少ない添加量の界面活性剤で、高い油水分離効果を発揮できると考えられる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0025】
実施例1〜10、比較例1〜14
(タール):タールデカンター出口のタール(水分16%、タール分:水分=1:0.2)を使用した。
(油水分離剤添加量):油水分離剤である各種界面活性剤を、全界面活性剤量がタール純分に対して0.020質量%となるよう添加した。なお、アニオン界面活性剤のグリフィン法HLB値はデイビスの式を用いた薬剤構造からの計算値である。
(試験手順):コールタールを70℃恒温槽で静置し温度を上げ、サンプル瓶にコールタールを100g分取し、純水を添加しない含水コールタール、純水を40g、144g、464g添加した含水コールタール(コールタールと水の混合物)を作製した(タール:水分の比率はそれぞれ1:0.2、1:0.7、1:1.9、1:5.7である)。得られたコールタールと水の混合物に界面活性剤をマイクロピペットで所定量添加した。スパーテルで1分間撹拌し、70℃恒温槽で3時間静置した。その後、外観を目視で観察し、分離水量を測定して、油水分離効果を評価した。
(評価):遠心分離後の水相の水量より、タール中に存在した水分の何%が分離したのかを確認した。
○・・・40%以上の分離水量
△・・・20%以上40%未満の分離水量
×・・・20%未満の分離水量
試験結果を第1表に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例1〜10(タール1部に対し水分を1部以下の質量比で含む含水コールタールに特定の界面活性剤を添加した)において顕著な油水分離効果が認められた。ここで用いた界面活性剤は、水に溶けやすく、タールに溶解・拡散しにくいため、タール中にエマルションとして存在している水分およびその界面に集中的に作用できたと考えられる。しかし、これらの界面活性剤も、比較例1〜10の水分量が多いタール・水混合物では、油水分離効果が大きく低下した。界面活性剤の水に対する比率が減少し、エマルジョン中の水分へ作用する界面活性剤量が減ってしまったため、油水分離効果が低下したと考えられる。