特許第5962844号(P5962844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

特許5962844高分子化合物およびそれを用いた発光素子
<>
  • 特許5962844-高分子化合物およびそれを用いた発光素子 図000076
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962844
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】高分子化合物およびそれを用いた発光素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20160721BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C08G61/12
   C09K11/06 680
   C09K11/06 690
   H05B33/22 D
   H05B33/14 B
【請求項の数】11
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2015-503393(P2015-503393)
(86)(22)【出願日】2014年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2014073413
(87)【国際公開番号】WO2015037521
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2015年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-188009(P2013-188009)
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】柿本 秀信
(72)【発明者】
【氏名】増井 希望
(72)【発明者】
【氏名】中谷 智也
(72)【発明者】
【氏名】飛田 憲之
(72)【発明者】
【氏名】八文字 保孝
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−036388(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/093428(WO,A1)
【文献】 特開2007−092032(JP,A)
【文献】 特開2012−209452(JP,A)
【文献】 特開2012−212704(JP,A)
【文献】 特開2011−174061(JP,A)
【文献】 特開2011−174062(JP,A)
【文献】 特開2000−230040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
C09K 11/06
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(M−1)で表される化合物と、
下記式(M−X)で表される化合物および/または下記式(M−Y)で表される化合物(但し、式(M−1)で表される化合物とは異なる。)とを、
反応終了まで酸素濃度が常に0.2%未満の条件にて縮合重合する工程を含む高分子化合物の製方法であって、
下記式(1)で表される構成単位と、
下記式(X)で表される構成単位および/または下記式(Y)で表される構成単位(但し、式(1)で表される構成単位とは異なる。)とを含み、
高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量が0.02mol%未満である高分子化合物の製造方法。
[式中、Arは、アリーレン基を表し、この基は置換基を有していてもよい。]
[式中、
X1およびaX2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1およびArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2およびArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2およびArX4が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
X1、RX2およびRX3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2およびRX3が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
[式中、
Ar、aX1、aX2、ArX1、ArX3、ArX2、ArX4、RX1、RX2、RX3およびArY1は、前記と同じ意味を表す。
C1、ZC2、ZC3、ZC4、ZC5およびZC6は、それぞれ独立に、置換基A群および置換基B群からなる群から選ばれる基を表す。]

<置換基A群>
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、および、−O−S(=O)2C1(式中、RC1は、アルキル基またはアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)で表される基。
<置換基B群>
−B(ORC2)2(式中、RC2は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRC2は、同一でも異なっていてもよく、互いに連結して、それぞれが結合する酸素原子と共に環を形成していてもよい。)で表される基、
−BF3Q'(式中、Q'は、Li、Na、K、RbまたはCsを表す。)で表される基、
−MgY'(式中、Y'は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)で表される基、
−ZnY''(式中、Y''は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)で表される基、および、
−Sn(RC3)3(式中、RC3は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRC3は、同一でも異なっていてもよく、互いに連結して、それぞれが結合するスズ原子と共に環を形成していてもよい。)で表される基。
【請求項2】
前記式(1)で表される構成単位が、下記式(1−1)または(1−2)で表される構成単位である、請求項1に記載の高分子化合物の製造方法
[式中、R1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するR1は、同一でも異なっていてもよく、隣接するR1同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
[式中、
1は前記と同じ意味を表す。
1は、−C(R2)2−、−C(R2)=C(R2)−または−C(R2)2−C(R2)2−で表される基を表す。R2は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するR2は、同一でも異なっていてもよく、R2同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【請求項3】
前記式(X)で表される構成単位が、下記式(X−1)、(X−2)、(X−3)、(X−4)、(X−5)、(X−6)または(X−7)で表される構成単位である、請求項1または2に記載の高分子化合物の製造方法



[式中、RX4およびRX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、フッ素原子、1価の複素環基またはシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRX4は、同一でも異なっていてもよい。複数存在するRX5は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRX5同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【請求項4】
前記式(Y)で表される構成単位が、下記式(Y−3)、(Y−4)、(Y−5)、(Y−6)または(Y−7)で表される構成単位である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法
[式中、
Y1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRY1同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
Y3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
[式中、
Y1は前記と同じ意味を表す。
Y4は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【請求項5】
高分子化合物中に含まれる塩素原子の含有量が10ppm未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法
【請求項6】
高分子化合物中に含まれる臭素原子の含有量が10ppm未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法
【請求項7】
高分子化合物中に含まれるパラジウム原子の含有量が100ppm未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法
【請求項8】
高分子化合物中に含まれるリン原子の含有量が100ppm未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法
【請求項9】
前記縮合重合する工程が、酸素濃度が0.5%未満の条件にて縮合重合する工程である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法
【請求項10】
記式(M−1)で表される化合物と、
記式(M−X)で表される化合物および/または記式(M−Y)で表される化合物(但し、式(M−1)で表される化合物とは異なる。)とを縮合重合する工程の後に、
下記式(2)で表される化合物と反応させる工程を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法
[式中、
21は、−C(R22で表される基、−Si(R22で表される基または−Ge(R22で表される基を表す。R22は、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するR22は、同一でも異なっていてもよく、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。
21は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
【請求項11】
前記縮合重合が、酸化重合、山本重合、鈴木重合またはStille重合である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物およびそれを用いた発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いことから、ディスプレイの用途に好適に使用することが可能であり、近年注目されている。この発光素子は、発光層、電荷輸送層等の有機層を備える。高分子化合物を用いることで、インクジェット印刷法に代表される塗布法により有機層を形成することができるため、発光素子の製造に用いる高分子化合物が検討されている。
発光素子の製造に用いる高分子化合物として、例えば、フルオレンから誘導される構成単位と、アリールアミンから誘導される構成単位とを含む高分子化合物が知られており、当該高分子化合物は、パラジウム触媒および塩基の存在下において、原料モノマーである有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化合物とを縮合重合させることで製造されている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−520289号公報
【特許文献2】特表2002−536492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1および2に記載された高分子化合物を用いて製造される発光素子は、輝度寿命が必ずしも十分ではなかった。
そこで、本発明は、輝度寿命に優れる発光素子の製造に有用な高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量が、発光素子の輝度寿命に影響することを見出すとともに、高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量を低減することができる製造方法を見出すことで、本発明を完成させるに至った。
本発明は、第一に、
下記式(1)で表される構成単位と、
下記式(X)で表される構成単位および/または下記式(Y)で表される構成単位(但し、式(1)で表される構成単位とは異なる。)(即ち、下記式(X)で表される構成単位、下記式(Y)で表される構成単位(但し、式(1)で表される構成単位とは異なる。)、または、下記式(X)で表される構成単位および下記式(Y)で表される構成単位の両方)とを含む高分子化合物であって、
高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量が0.02mol%未満である高分子化合物を提供する。
[式中、Arは、アリーレン基を表し、この基は置換基を有していてもよい。]
[式中、
X1およびaX2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1およびArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2およびArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2およびArX4が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
X1、RX2およびRX3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2およびRX3が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
本発明は、第二に、
下記式(M−1)で表される化合物と、
下記式(M−X)で表される化合物および/または下記式(M−Y)で表される化合物(但し、式(M−1)で表される化合物とは異なる。)(即ち、下記式(M−X)で表される化合物、下記式(M−Y)で表される化合物(但し、式(M−1)で表される化合物とは異なる。)、または、下記式(M−X)で表される化合物および下記式(M−Y)で表される化合物の両方)とを、
酸素濃度が0.5%未満の条件にて縮合重合する工程を含む、上記の高分子化合物の製造方法を提供する。
[式中、
Ar、aX1、aX2、ArX1、ArX3、ArX2、ArX4、RX1、RX2、RX3およびArY1は、前記と同じ意味を表す。
C1、ZC2、ZC3、ZC4、ZC5およびZC6は、それぞれ独立に、置換基A群および置換基B群からなる群から選ばれる基を表す。]
<置換基A群>
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、および、−O−S(=O)C1(式中、RC1は、アルキル基またはアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)で表される基。
<置換基B群>
−B(ORC2(式中、RC2は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRC2は、同一でも異なっていてもよく、互いに連結して、それぞれが結合する酸素原子と共に環を形成していてもよい。)で表される基、
−BFQ′(式中、Q′は、Li、Na、K、RbまたはCsを表す。)で表される基、
−MgY′(式中、Y′は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)で表される基、
−ZnY′′(式中、Y′′は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)で表される基、および、
−Sn(RC3(式中、RC3は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRC3は、同一でも異なっていてもよく、互いに連結して、それぞれが結合するスズ原子と共に環を形成していてもよい。)で表される基。
本発明は、第三に、
前記式(M−1)で表される化合物と、
前記式(M−X)で表される化合物および/または前記式(M−Y)で表される化合物(但し、前記式(M−1)で表される化合物とは異なる。)(即ち、下記式(M−X)で表される化合物、下記式(M−Y)で表される化合物(但し、式(M−1)で表される化合物とは異なる。)、または、下記式(M−X)で表される化合物および下記式(M−Y)で表される化合物の両方)とを縮合重合する工程の後に、
下記式(2)で表される化合物と反応させる工程を含む、上記の高分子化合物の製造方法を提供する。
[式中、
21は、−C(R22で表される基、−Si(R22で表される基または−Ge(R22で表される基を表す。R22は、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するR22は、同一でも異なっていてもよく、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。
21は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
本発明は、第四に、
上記の高分子化合物と、
正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料、酸化防止剤および溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種類の材料とを含有する組成物を提供する。
本発明は、第五に、
陽極と、
陰極と、
陽極および陰極の間に設けられた発光層とを有する発光素子であって、
発光層が、上記の高分子化合物を用いて得られる層である発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、輝度寿命に優れる発光素子の製造に有用な高分子化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は高分子化合物に含まれる水酸基の含有量と、規格化されたLT75(即ち、輝度が初期輝度の75%となるまでの時間)の関係を示した図であり、発光素子D1に対する発光素子D2および発光素子CD1(発光素子D1のLT75を1.00に規格化)、発光素子D4に対する発光素子CD2(発光素子D4のLT75を1.00に規格化)、並びに、発光素子D5に対する発光素子D6、発光素子CD3、発光素子CD4および発光素子CD5(発光素子D5のLT75を1.00に規格化)をそれぞれ示した図である。なお、水酸基の含有量が0.01mol%未満の高分子化合物については、水酸基の含有量を0.01mol%と示した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<共通する用語の説明>
以下、本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
Meはメチル基、Etはエチル基、i−Prはイソプロピル基、n−Buはn−ブチル基、t−Buはtert−ブチル基を表す。
本明細書において、水素原子は、軽水素原子であっても重水素原子であってもよい。
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×10〜1×10である重合体を意味する。高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×10以下の化合物を意味する。
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
「アルキル基」は、直鎖、分岐および環状のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常1〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。分岐および環状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常3〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。
アルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、2−エチルブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−n−プロピルヘプチル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルオクチル基、2−n−ヘキシルデシル基、n−ドデシル基等の非置換アルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3−フェニルプロピル基、3−(4−メチルフェニル)プロピル基、3−(3,5−ジ−n−ヘキシルフェニル)プロピル基、6−エチルオキシヘキシル基等の置換アルキル基が挙げられる。
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常6〜60であり、好ましくは6〜20であり、より好ましくは6〜10である。
アリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
「アルコキシ基」は、直鎖、分岐および環状のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常1〜40であり、好ましくは4〜10である。分岐および環状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常3〜40であり、好ましくは4〜10である。
アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基が挙げられる。
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常6〜60であり、好ましくは7〜48である。
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、1−アントラセニルオキシ基、9−アントラセニルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団である「p価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、および、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常、2〜60であり、好ましくは4〜20である。
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基等で置換された基が挙げられる。
「置換アミノ基」は、2つの置換基を有するアミノ基である。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基または1価の複素環基が好ましい。
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基およびジアリールアミノ基が挙げられる。
アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。
「アルケニル基」は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよい。直鎖のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常2〜30であり、好ましくは3〜20である。分岐および環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常3〜30であり、好ましくは4〜20である。
アルケニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
「アルキニル基」は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含まないで、通常2〜20であり、好ましくは3〜20である。分岐および環状のアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含まないで、通常4〜30であり、好ましくは4〜20である。
アルキニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
「アリーレン基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。アリーレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、6〜60であり、好ましくは6〜30であり、より好ましくは6〜18である。
アリーレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられ、好ましくは、式(A−1)〜式(A−20)で表される基である。アリーレン基は、これらの基が複数結合した基を含む。
[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。複数存在するRおよびRは、各々、同一でも異なっていてもよい。隣接するR同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。]
2価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2〜60であり、好ましくは、3〜20であり、より好ましくは、4〜15である。
2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール、トリアゾールから、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基が挙げられ、好ましくは、式(A−21)〜式(A−52)で表される基である。2価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
[式中、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。R’は、アルキル基またはアリール基を表す。R’が複数複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
「架橋基」とは、加熱処理、紫外線照射処理、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成する事が可能な基であり、好ましくは、式(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、(B−5)、(B−6)、(B−7)、(B−8)、(B−9)、(B−10)、(B−11)、(B−12)、(B−13)、(B−14)、(B−15)、(B−16)または(B−17)で表される基である。
[式中、これらの基は置換基を有していてもよい。]
「置換基」とは、フッ素原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。置換基は架橋基であってもよい。
<高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、前記式(1)で表される構成単位と、前記式(X)で表される構成単位および/または前記式(Y)で表される構成単位(但し、式(1)で表される構成単位とは異なる。)とを含む高分子化合物であって、高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量が0.02mol%未満である高分子化合物である。
[式(1)で表される構成単位]
Arで表されるアリーレン基としては、より好ましくは式(A−1)、式(A−7)、式(A−9)または式(A−10)で表される基であり、更に好ましくは式(A−1)、式(A−7)または式(A−9)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
式(1)で表される構成単位としては、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるため、好ましくは式(1−1)または式(1−2)で表される構成単位である。
[式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRは、同一でも異なっていてもよく、隣接するR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
は、好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
[式中、
は前記と同じ意味を表す。
は、−C(R−、−C(R)=C(R)−または−C(R−C(R−で表される基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRは、同一でも異なっていてもよく、R同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
は、好ましくはアルキル基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。Rは、さらに好ましくは、アルキル基、または、水素原子の一部または全部がアルキル基で置換されたアリール基である。
が、水素原子の一部または全部がアルキル基で置換されたアリール基である場合、該アルキル基同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。該アリール基としては、例えば、式(B−9)で表される基が挙げられる。
において、−C(R−で表される基中の2個のRの組み合わせは、好ましくは、双方がアルキル基、双方がアリール基、双方が1価の複素環基、または、一方がアルキル基で他方がアリール基若しくは1価の複素環基であり、より好ましくは、一方がアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。2個存在するRは互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、Rが環を形成する場合、−C(R−で表される基としては、好ましくは式(1−A1)〜(1−A5)で表される基であり、より好ましくは式(1−A4)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
において、−C(R)=C(R)−で表される基中の2個のRの組み合わせは、好ましくは、双方がアルキル基、または、一方がアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
において、−C(R−C(R−で表される基中の4個のRは、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基である。複数あるRは互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、Rが環を形成する場合、−C(R−C(R−で表される基は、好ましくは式(1−B1)〜(1−B5)で表される基であり、より好ましくは式(1−B3)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
式(1)で表される構成単位の合計量は、本発明の高分子化合物の安定性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは20〜90モル%であり、より好ましくは25〜80モル%であり、更に好ましくは30〜70モル%である
式(1)で表される構成単位としては、例えば、式(1−11)〜(1−46)で表される構成単位が挙げられ、式(1−11)〜(1−36)で表される構成単位であることが好ましい。
[式(X)で表される構成単位]
X1は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、好ましくは2以下の整数であり、より好ましくは1である。
X2は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、好ましくは2以下の整数であり、より好ましくは0である。
X1、RX2およびRX3は、好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX1およびArX3で表されるアリーレン基としては、より好ましくは式(A−1)または式(A−9)で表される基であり、更に好ましくは式(A−1)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX1およびArX3で表される2価の複素環基としては、より好ましくは式(A−21)、式(A−22)または式(A−27)〜式(A−46)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX1およびArX3は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
ArX2およびArX4で表されるアリーレン基としては、特に好ましくは式(A−1)、式(A−6)、式(A−7)、式(A−9)〜式(A−11)または式(A−19)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2およびArX4で表される2価の複素環基のより好ましい範囲は、ArX1およびArX3で表される2価の複素環基のより好ましい範囲と同じである。
ArX2およびArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基および2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲は、それぞれ、ArX1およびArX3で表されるアリーレン基および2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲と同様である。
ArX2およびArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
[式中、RXXは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
XXは、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2およびArX4は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
ArX1〜ArX4およびRX1〜RX3で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
式(X)で表される構成単位としては、好ましくは式(X−1)〜(X−7)で表される構成単位であり、より好ましくは式(X−3)〜(X−7)で表される構成単位であり、更に好ましくは式(X−3)〜(X−6)で表される構成単位である。
[式中、RX4およびRX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、フッ素原子、1価の複素環基またはシアノ基を表し、好ましくは、水素原子またはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRX4は、同一でも異なっていてもよい。複数存在するRX5は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRX5同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
式(X)で表される構成単位は、正孔輸送性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.1〜50モル%であり、より好ましくは1〜40モル%であり、更に好ましくは5〜30モル%である。
式(X)で表される構成単位としては、例えば、式(X1−1)〜(X1−19)で表される構成単位が挙げられ、好ましくは式(X1−6)〜(X1−14)で表される構成単位である。
本発明の高分子化合物において、式(X)で表される構成単位は、1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
[式(Y)で表される構成単位]
式(Y)で表される構成単位は、式(1)で表される構成単位とは異なるため、式(Y)におけるArY1がアリーレン基である場合、当該アリーレン基は、式(1)におけるArで表されるアリーレン基と異なるアリーレン基となる。
ArY1で表されるアリーレン基としては、より好ましくは式(A−6)、式(A−11)、式(A−13)または式(A−19)で表される基であり、更に好ましくは式(A−11)または式(A−13)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArY1で表される2価の複素環基としては、より好ましくは式(A−24)、式(A−30)、式(A−33)、式(A−35)、式(A−38)または式(A−40)で表される基であり、更に好ましくは式(A−24)、式(A−30)、式(A−38)または式(A−40)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArY1で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基および2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲は、それぞれ、前述のArY1で表されるアリーレン基および2価の複素環基のより好ましい範囲、更に好ましい範囲と同様である。
ArY1で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y−3)〜(Y−7)で表される構成単位が挙げられ、本発明の高分子化合物の電子輸送性の観点からは、好ましくは式(Y−3)または(Y−4)で表される構成単位であり、正孔輸送性の観点からは、好ましくは式(Y−5)〜(Y−7)で表される構成単位である。
[式中、
Y1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRY1同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
Y3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
Y1は、好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、より好ましくは水素原子であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y3は、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。RY3は、さらに好ましくは、水素原子の一部または全部がアルキル基で置換されたアリール基である。
[式中、
Y1は前記を同じ意味を表す。
Y4は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
Y4は、好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(1−11)〜(1−46)で表される構成単位および式(Y−11)〜(Y−19)で表される構成単位が挙げられ、式(1−37)〜(1−46)で表される構成単位または式(Y−11)〜(Y−19)で表される構成単位であることが好ましい。
式(Y)で表される構成単位であって、ArY1がアリーレン基である構成単位は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.5〜80モル%であり、より好ましくは30〜60モル%である。
式(Y)で表される構成単位であって、ArY1が2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基である構成単位は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の電荷輸送性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.5〜30モル%であり、より好ましくは3〜40モル%である。
式(Y)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
本発明の高分子化合物としては、例えば、表1の高分子化合物P−101〜P−103が挙げられる。ここで、「その他」の構成単位とは、式(1)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位および式(Y)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。
【表1】
[表中、p、q、rおよびsは、各構成単位のモル比率を示す。p+q+r+s=100であり、かつ、100≧p+q+r≧70である。その他の構成単位とは、式(1)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位および式(Y)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。]
本発明の高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれかであってもよいし、その他の態様であってもよい。
[水酸基の含有量]
高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量とは、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対する、水酸基を有する構成単位の量であり、mol%で表される。高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量は、例えば、プロトンNMRにより測定することができる。
プロトンNMRのスペクトルと、高分子化合物の合成に用いた原料モノマーの構造から、高分子化合物の合成中に発生した水酸基を有する構成単位を同定するとともに、その含有量を定量することができるためである。
プロトンNMRでは、通常、水酸基のプロトンを直接観測することができるが、水酸基のプロトンのピークが他のプロトンのピークと重なる場合、高分子化合物の合成に用いた原料モノマーの構造から、水酸基を有する構成単位を推定するとともに、水酸基が結合している炭素原子に対するオルト位の炭素原子に結合しているプロトンのピークを測定したプロトンNMRのスペクトルから、高分子化合物の合成中に発生した水酸基を有する構成単位を同定するとともに、その含有量を定量することができる。
本発明の高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量は0.02mol%未満であり、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、0.01mol%未満であることが好ましい。
[各原子、基の含有量]
本発明の高分子化合物中に含まれる塩素原子の含有量は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、重量基準で、10ppm未満であることが好ましく、5ppm未満であることがより好ましい。
本発明の高分子化合物中に含まれる臭素原子の含有量は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、重量基準で、10ppm未満であることが好ましく、5ppm未満であることがより好ましい。
本発明の高分子化合物中に含まれるヨウ素原子の含有量は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、重量基準で、10ppm未満であることが好ましく、5ppm未満であることがより好ましい。
本発明の高分子化合物中に含まれるパラジウム原子の含有量は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、重量基準で、100ppm未満であることが好ましく、50ppm未満であることがより好ましく、10ppm未満であることが更に好ましい。本発明の高分子化合物中に含まれるパラジウム原子とは、高分子化合物とは別分子として含まれるものであっても、高分子化合物中に含まれる構成単位が有するものであっても、配位結合等を介して高分子化合物に取り込まれたものであってもよい。
本発明の高分子化合物中に含まれるリン原子の含有量は、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、重量基準で、100ppm未満であることが好ましく、50ppm未満であることがより好ましく、10ppm未満であることが更に好ましい。本発明の高分子化合物中に含まれるリン原子とは、高分子化合物とは別分子として含まれるものであっても、高分子化合物中に含まれる構成単位が有するものであっても、配位結合等を介して高分子化合物に取り込まれたものであってもよい。
本発明の高分子化合物中に含まれる−NHで表される基の含有量、−NHRで表される基の含有量(Rは、置換基を表す。)、および、−NH−で表される基の含有量は、それぞれ、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるので、0.1mol%未満であることが好ましく、0.02mol%未満であることがより好ましく、0.01mol%未満であることが更に好ましい。
高分子化合物中に含まれる−NHで表される基の含有量、−NHRで表される基の含有量、および、−NH−で表される基の含有量とは、それぞれ、高分子化合物に含まれる構成単位の合計に対する、−NHで表される基を有する構成単位の量、−NHRで表される基を有する構成単位の量、および、−NH−で表される基を有する構成単位の量であり、mol%で表される。高分子化合物中に含まれる−NHで表される基の含有量、−NHRで表される基の含有量、および、−NH−で表される基の含有量は、例えば、プロトンNMRにより測定することができる。測定方法は、上述した水酸基の含有量の測定方法と同様である。
<高分子化合物の製造方法>
次に、本発明の高分子化合物の製造方法について説明する。
本発明の高分子化合物は、例えば、下記式(M−1)で表される化合物と、下記式(M−X)で表される化合物および/または下記式(M−Y)で表される化合物(但し、式(M−1)で表される化合物とは異なる。)とを、酸素濃度が体積基準で0.5%未満の条件にて縮合重合することにより製造することができる(以下、「本発明の高分子化合物の第1の製造方法」ともいう。)。
本明細書において、本発明の高分子化合物の製造に使用される化合物を総称して、「原料モノマー」ということがある。
本発明の高分子化合物の製造方法において、高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量をより低減することができるため、酸素濃度は体積基準で、0.2%未満であることが好ましく、0.05%未満であることがより好ましい。
また、本発明の高分子化合物は、例えば、前記式(M−1)で表される化合物と、前記式(M−X)で表される化合物、前記式(M−Y)で表される化合物、または、前記式(M−X)で表される化合物および前記式(M−Y)で表される化合物の両方(即ち、前記式(M−X)で表される化合物および/または前記式(M−Y)で表される化合物)とを縮合重合する工程の後に、下記式(2)で表される化合物と反応させることでも製造することができる(以下、「本発明の高分子化合物の第2の製造方法」ともいう。)。
21は、式(2)で表される化合物の入手が容易であるため、−C(R22で表される基または−Si(R22で表される基であることが好ましく、−C(R22で表される基であることがより好ましい。
22は、式(2)で表される化合物の入手が容易であるため、アルキル基、アリール基または1価の複素環基であることが好ましく、アルキル基またはアリール基であることがより好ましく、アルキル基であることがさらに好ましい。
式(2)で表される化合物としては、例えば、ヨウ化メチル、塩化プロピル、塩化−t−ブチル、臭化ヘキシル、塩化ベンジル、塩化トリフェニルメタン等の炭素系の化合物;塩化トリメチルシリル、塩化トリエチルシリル、塩化トリプロピルシリル、塩化トリフェニルシリル等のケイ素系の化合物;塩化トリメチルゲルマニウム、塩化トリフェニルゲルマニウム等のゲルマニウム系の化合物が挙げられる。
炭素系の化合物としては、塩化プロピル、臭化ヘキシル、塩化−t−ブチルまたは塩化トリフェニルメタンが好ましく、塩化プロピルまたは塩化−t−ブチルがより好ましい。
ケイ素系化合物としては、塩化トリメチルシリル、塩化トリエチルシリルまたは塩化トリプロピルシリルが好ましく、塩化トリメチルシリルまたは塩化トリエチルシリルがより好ましい。
本発明の高分子化合物の製造方法において、本発明の高分子化合物を用いて得られる発光素子の輝度寿命がより優れるため、縮合重合は、酸化重合、山本重合、鈴木重合またはStille重合であることが好ましく、山本重合、鈴木重合またはStille重合であることがより好ましく、鈴木重合であることが更に好ましい。
−B(ORC2で表される基としては、下記式で表される基が例示される。
置換基A群から選ばれる基を有する化合物と置換基B群から選ばれる基を有する化合物とは、公知のカップリング反応により縮合重合して、置換基A群から選ばれる基および置換基B群から選ばれる基と結合する炭素原子同士が結合する。そのため、置換基A群から選ばれる基を2個有する化合物と、置換基B群から選ばれる基を2個有する化合物を公知のカップリング反応に供すれば、縮合重合により、これらの化合物の縮合重合体を得ることができる。
縮合重合は、通常、触媒、塩基および溶媒の存在下で行なわれるが、必要に応じて、相間移動触媒を共存させて行ってもよい。
触媒としては、例えば、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリス−o−メトキシフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(ジシクロペンチル(o−メトキシフェニル)ホスフィンパラジウム、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート等のパラジウム錯体、ニッケル[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル、[ビス(1,4−シクロオクタジエン)]ニッケル等のニッケル錯体等の遷移金属錯体;これらの遷移金属錯体が、更にトリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス−o−メトキシフェニルホスフィン、ジシクロペンチル(o−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、ビピリジル等の配位子を有する錯体が挙げられる。触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
触媒の使用量は、原料モノマーのモル数の合計に対する遷移金属の量として、通常、0.00001〜3モル当量である。
塩基および相間移動触媒としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基;フッ化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基;塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム等の相間移動触媒が挙げられる。塩基および相間移動触媒は、それぞれ、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
塩基および相間移動触媒の使用量は、それぞれ、原料モノマーの合計モル数に対して、通常0.001〜100モル当量である。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒、水が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
溶媒の使用量は、通常、原料モノマーの合計100重量部に対して、10〜100000重量部である。
縮合重合の反応温度は、通常−100〜200℃である。縮合重合の反応時間は、通常1時間以上である。
重合反応の後処理は、公知の方法、例えば、分液により水溶性不純物を除去する方法、メタノール等の低級アルコールに重合反応後の反応液を加えて、析出させた沈殿を濾過した後、乾燥させる方法等を単独、または組み合わせて行う。高分子化合物の純度が低い場合、例えば、再結晶、再沈殿、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
本発明の高分子化合物の第1の製造方法において、原料モノマーを酸素濃度が0.5%未満の条件にて縮合重合する工程の後に、アルミナ処理または銅塩処理を行うことで、高分子化合物中水酸基の含有量をさらに低減させてもよい。
本発明の高分子化合物の第2の製造方法において、式(2)で表される化合物と反応させる工程の後に、アルミナ処理または銅塩処理を行うことで、高分子化合物中水酸基の含有量をさらに低減させてもよい。
アルミナ処理は、高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液を、アルミナに通液させるという処理である。
高分子化合物を溶解させる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒、水が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液を通液させるアルミナは、酸性のアルミナ、塩基性のアルミナおよび中性のアルミナのいずれであってもよい。アルミナは、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
アルミナの中心粒径は、10000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましく、1〜500μmであることが更に好ましい。
アルミナの量は、溶液に含有される高分子化合物100重量部に対して、0.1〜10000重量部であることが好ましく、0.5〜1000重量部であることがより好ましく、1〜100重量部であることが更に好ましい。
高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液をアルミナに通液させる方法としては、例えば、溶液とアルミナとを混合させた後に濾過する方法、容器に充填したアルミナに溶液を通液させる方法が挙げられる。高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液をアルミナに通液させる回数は、1回でも2回以上でもよい。
アルミナに通液させる際の、高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液の温度は、溶媒の凝固点以上、沸点以下であればよく、−10〜200℃であることが好ましく、−5〜100℃であることがより好ましく、0〜60℃であることが更に好ましい。
銅塩処理は、高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液に、銅塩を加え、攪拌するという処理である。銅塩と添加剤とを加えてもよい。銅塩と添加剤とを加える場合、溶液に同時に加えてもよく、銅塩を加えた後、添加剤を加えてもよい。
高分子化合物を溶解させる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒、水が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液に加える銅塩としては、例えば、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Cu(OTf)、CuSO、CuNO、CuOCOCH、CuOCOCF、CuOH、Cu(acac)、CuOCuF、CuCl、CuBr、CuI、Cu(OTf)、CuO、CuSO、Cu(NO、Cu(OCOCH、Cu(OCOCF、Cu(OH)、Cu(acac)が挙げられ、CuCl、CuBr、CuI、CuCl、CuBrまたはCuIが好ましく、CuCl、CuBrまたはCuIがより好ましい。ここで、「OTf」は、−OSOCFで表される基を意味し、「acac」は、CHCOCHCOCHで表される配位子を意味する。銅塩は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液に、銅塩とともに加えてもよい添加剤としては、例えば、ピリジン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−エチル−N,N’,N’−トリメチルエチレンジアミン、N−メチル−N,N’,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1、3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ビス(N−メチルピペリジノ)エタン、N,N,N’,N’−テトラ−n−ヘキシルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−アミルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1、2−シクロヘキサンジアミン、2−(5−ピペリジノエチル)ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ジフェニルメタンアミンが挙げられ、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1、3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ビス(N−メチルピペリジノ)エタン、N,N,N’,N’−テトラ−アミルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1、2−シクロヘキサンジアミン、2−(5−ピペリジノエチル)ピリジン、イミダゾールまたはジフェニルメタンアミンが好ましく、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1、3−プロパンジアミン、1,2−ビス(N−メチルピペリジノ)エタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1、2−シクロヘキサンジアミン、2−(5−ピペリジノエチル)ピリジンまたはジフェニルメタンアミンがより好ましく、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、2−(5−ピペリジノエチル)ピリジンまたはジフェニルメタンアミンが更に好ましい。添加剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
銅塩処理において、高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液に銅塩を加えた後、200℃以下で加熱してもよく、40℃〜150℃で加熱することが好ましく、50℃〜100℃で加熱することがより好ましい。
<組成物>
本発明の組成物は、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料、酸化防止剤および溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料と、本発明の高分子化合物とを含有する。
本発明の高分子化合物および溶媒を含有する組成物(以下、「インク」ということがある。)は、インクジェットプリント法、ノズルプリント法等の印刷法を用いた発光素子の作製に好適である。
インクの粘度は、印刷法の種類によって調整すればよいが、インクジェットプリント法等の溶液が吐出装置を経由する印刷法に適用する場合には、吐出時の目づまりと飛行曲がりを防止するために、好ましくは25℃において1〜20mPa・sである。
インクに含まれる溶媒は、該インク中の固形分を溶解または均一に分散できる溶媒が好ましい。溶媒としては、例えば、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4−メチルアニソール等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール系溶媒;イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
インクにおいて、溶媒の配合量は、本発明の高分子化合物100重量部に対して、通常、1000〜100000重量部であり、好ましくは2000〜20000重量部である。
[正孔輸送材料]
正孔輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類され、高分子化合物が好ましく、架橋基を有する高分子化合物がより好ましい。
高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体;側鎖または主鎖に芳香族アミン構造を有するポリアリーレンおよびその誘導体が挙げられる。高分子化合物は、電子受容性部位が結合された化合物でもよい。電子受容性部位としては、例えば、フラーレン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、トリニトロフルオレノン等が挙げられ、好ましくはフラーレンである。
本発明の組成物において、正孔輸送材料の配合量は、本発明の高分子化合物100重量部に対して、通常、1〜400重量部であり、好ましくは5〜150重量部である。
正孔輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
[電子輸送材料]
電子輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。電子輸送材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンを配位子とする金属錯体、オキサジアゾール、アントラキノジメタン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、テトラシアノアントラキノジメタン、フルオレノン、ジフェニルジシアノエチレン、および、ジフェノキノン、並びに、これらの誘導体が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフルオレン、および、これらの誘導体が挙げられる。高分子化合物は、金属でドープされていてもよい。
本発明の組成物において、電子輸送材料の配合量は、本発明の高分子化合物100重量部に対して、通常、1〜400重量部であり、好ましくは5〜150重量部である。
電子輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
[正孔注入材料および電子注入材料]
正孔注入材料および電子注入材料は、各々、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。正孔注入材料および電子注入材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン;カーボン;モリブデン、タングステン等の金属酸化物;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム等の金属フッ化物が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン、および、ポリキノキサリン、並びに、これらの誘導体;式(X)で表される基を主鎖または側鎖に含む重合体等の導電性高分子が挙げられる。
本発明の組成物において、正孔注入材料および電子注入材料の配合量は、各々、本発明の高分子化合物100重量部に対して、通常、1〜400重量部であり、好ましくは5〜150重量部である。
正孔注入材料および電子注入材料は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
[イオンドープ]
正孔注入材料または電子注入材料が導電性高分子を含む場合、導電性高分子の電気伝導度は、好ましくは、1×10−5S/cm〜1×10S/cmである。導電性高分子の電気伝導度をかかる範囲とするために、導電性高分子に適量のイオンをドープすることができる。
ドープするイオンの種類は、正孔注入材料であればアニオン、電子注入材料であればカチオンである。アニオンとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンが挙げられる。カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンが挙げられる。
ドープするイオンは、一種のみでも二種以上でもよい。
[発光材料]
発光材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。発光材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、ナフタレンおよびその誘導体、アントラセンおよびその誘導体、ペリレンおよびその誘導体、並びに、イリジウム、白金またはユーロピウムを中心金属とする三重項発光錯体が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、式(X)で表される基、カルバゾールジイル基、フェノキサジンジイル基、フェノチアジンジイル基等を含む高分子化合物が挙げられる。
発光材料は、低分子化合物および高分子化合物を含んでいてもよく、好ましくは、三重項発光錯体および高分子化合物を含む。
三重項発光錯体としては、式Ir−1〜Ir−3で表される金属錯体等のイリジウム錯体が好ましい。
[式中、
D1〜RD8およびRD11〜RD20は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
−AD1−−−AD2−は、アニオン性の2座配位子を表し、AD1およびAD2は、それぞれ独立に、イリジウム原子と結合する炭素原子、酸素原子または窒素原子を表す。
D1は、1、2または3を表し、nD2は、1または2を表す。]
式Ir−1で表される三重項発光錯体において、RD1〜RD8の少なくとも1つは、好ましくは、式(D−A)で表される基である。
[式中、
DA1、mDA2およびmDA3は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
DA1は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2およびArDA3は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2およびArDA3が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
DA2およびTDA3は、それぞれ独立に、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
DA1、mDA2およびmDA3は、通常10以下の整数であり、5以下の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。mDA1、mDA2およびmDA3は、同一の整数であることが好ましい。
DA1は、好ましくは式(GDA−11)〜(GDA−15)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
[式中、
*1、*2および*3は、各々、ArDA1、ArDA2およびArDA3との結合を表す。
DAは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよい。RDAが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
DAは、好ましくは水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2およびArDA3は、好ましくは式(ArDA−1)〜(ArDA−3)で表される基である。
[式中、
DAは前記と同じ意味を表す。
DBは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RDBが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
DBは、好ましくはアルキル基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基または1価の複素環基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
DA2およびTDA3は、好ましくは式(TDA−1)〜(TDA−3)で表される基である。
[式中、RDAおよびRDBは、前記と同じ意味を表す。]
式Ir−2において、好ましくはRD11〜RD20の少なくとも1つは式(D−A)で表される基である。
式Ir−3において、好ましくはRD1〜RD8およびRD11〜RD20の少なくとも1つは式(D−A)で表される基である。
式(D−A)で表される基は、好ましくは式(D−A1)〜(D−A3)で表される基である。
[式中、
p1、Rp2およびRp3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。Rp1およびRp2が複数個存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
np1は、0〜5の整数を表し、np2は0〜3の整数を表し、np3は0または1を表す。複数存在するnp1は、同一でも異なっていてもよい。]
np1は、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。np2は、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。np3は好ましくは0である。
p1、Rp2およびRp3は、好ましくはアルキル基である。
−AD1−−−AD2−で表されるアニオン性の2座配位子としては、例えば、下記式で表される配位子が挙げられる。
[式中、*は、Irと結合する部位を表す。]
式Ir−1で表される金属錯体としては、好ましくは式Ir−11〜Ir−13で表される金属錯体である。式Ir−2で表される金属錯体としては、好ましくは式Ir−21で表される金属錯体である。式Ir−3で表される金属錯体としては、好ましくは式Ir−31〜Ir−33で表される金属錯体である。
[式中、Dは、式(D−A)で表される基を表す。nD2は、1または2を表す。]
三重項発光錯体としては、例えば、以下に示す金属錯体が挙げられる。
本発明の組成物において、発光材料の含有量は、本発明の高分子化合物100重量部に対して、通常、0.1〜400重量部である。
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、本発明の高分子化合物と同じ溶媒に可溶であり、発光および電荷輸送を阻害しない化合物であればよく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
本発明の組成物において、酸化防止剤の配合量は、本発明の高分子化合物100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部である。
酸化防止剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
<膜>
膜は、本発明の高分子化合物を含有する。
膜には、本発明の高分子化合物を架橋により溶媒に対して不溶化させた、不溶化膜も含まれる。不溶化膜は、本発明の高分子化合物を加熱、光照射等の外部刺激により架橋させて得られる膜である。不溶化膜は、溶媒に実質的に不溶であるため、発光素子の積層化に好適に使用することができる。
膜を架橋させるための加熱の温度は、通常、25〜300℃であり、発光効率が良好になるので、好ましくは50〜250℃であり、より好ましくは150〜200℃である。
膜を架橋させるための光照射に用いられる光の種類は、例えば、紫外光、近紫外光、可視光である。
膜は、発光素子における正孔輸送層または発光層として好適である。
膜は、インクを用いて、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法により作製することができる。
膜の厚さは、通常、1nm〜10μmである。
<発光素子>
本発明の発光素子は、陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に設けられた発光層とを有する発光素子であって、発光層が本発明の高分子化合物を用いて得られる層である発光素子であり、当該発光素子には、例えば、本発明の高分子化合物を含む発光素子、本発明の高分子化合物が分子内、分子間、または、それらの両方で架橋した発光素子がある。
[層構成]
発光層のほかに、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および電子注入層は、本発明の高分子化合物を用いて得られる層であってもよく、本発明の高分子化合物を用いた発光素子の輝度寿命がより優れるため、正孔輸送層は、本発明の高分子化合物を用いて得られる層であることが好ましい。これらの層は、各々、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を含む。これらの層は、各々、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を、上述した溶媒に溶解させ、インクを調製して用い、上述した膜の作製と同じ方法を用いて形成することができる。
本発明の発光素子は、正孔注入性および正孔輸送性の観点からは、陽極と発光層との間に、正孔注入層および正孔輸送層の少なくとも1層を有することが好ましく、電子注入性および電子輸送性の観点からは、陰極と発光層の間に、電子注入層および電子輸送層の少なくとも1層を有することが好ましい。
正孔輸送層、電子輸送層、発光層、正孔注入層、および、電子注入層の材料としては、本発明の高分子化合物の他、各々、上述した正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、正孔注入材料、および、電子注入材料が挙げられる。
正孔輸送層の材料、電子輸送層の材料、および、発光層の材料は、発光素子の作製において、各々、正孔輸送層、電子輸送層、および、発光層に隣接する層の形成時に使用される溶媒に溶解する場合、該溶媒に該材料が溶解することを回避するために、該材料が架橋基を有することが好ましい。架橋基を有する材料を用いて各層を形成した後、該架橋基を架橋させることにより、該層を不溶化させることができる。
本発明の発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等の各層の形成方法としては、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液または溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液または溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。
積層する層の順番、数、および、厚さは、発光効率および素子寿命を勘案して調整すればよい。
[基板/電極]
発光素子における基板は、電極を形成することができ、かつ、有機層を形成する際に化学的に変化しない基板であればよく、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板である。不透明な基板の場合には、基板から最も遠くにある電極が透明または半透明であることが好ましい。
陽極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち2種以上の合金;それらのうち1種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金;並びに、グラファイトおよびグラファイト層間化合物が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
陽極および陰極は、各々、2層以上の積層構造としてもよい。
[用途]
発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部にしたい層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極もしくは陰極、または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字、文字等を表示できるセグメントタイプの表示装置が得られる。ドットマトリックス表示装置とするためには、陽極と陰極を共にストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス表示装置は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動も可能である。これらの表示装置は、コンピュータ、テレビ、携帯端末等のディスプレイに用いることができる。面状の発光素子は、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、または、面状の照明用光源として好適に用いることができる。フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源、および、表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例において、高分子化合物の合成には、表2および3に示す化合物を原料モノマーとして用いた。それぞれの化合物は、表2および3に示す参考文献、並びに、合成例1に記載の方法に従って合成した。
【表2】
【表3】
<合成例1>Q−10の合成
(Stage1:化合物Q−10bの合成)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物Q−10a(117.6g)、N,N−ジメチルアミノピリジン(107.2g)およびジクロロメタン(1170mL)を加え、攪拌した。得られた溶液を氷浴により冷却した後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(198.0g)を1時間かけて滴下した。その後、氷浴を外し、1.5時間攪拌した。その後、得られた溶液を氷浴により再度冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、分液により有機層(有機層1)と水層を得た。得られた水層にヘキサンを加え抽出することにより得られた有機層と、有機層1とを合一してから、イオン交換水、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層をシリカゲルショートカラムで精製した後に、減圧濃縮することにより、化合物Q−10bを含む褐色液体(200g)を得た。
(Stage2:化合物Q−10cの合成)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物Q−10bを含む褐色液体(100g)、[1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(PdCl(dppf)・CHCl、1.2g)およびテトラヒドロフラン(1000mL)を加えた。その後、攪拌しながら55℃まで昇温した。そこへ、2mol/L濃度のn−ブチルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液(41.3g)を55℃にて滴下した後、55℃で3.5時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。得られた有機層を、イオン交換水、飽和食塩水で順次洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することにより油状物を得た。得られた油状物を減圧蒸留により精製することにより、化合物Q−10cを無色液体として得た(20g)。収率は30%であった。得られた化合物Q−10cのGC(ガスクロマトグラフィ)面積百分率値は98%を示した。この操作を繰り返し行うことにより、化合物Q−10cの必要量を得た。
(Stage3:化合物Q−10eの合成)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物Q−10c(97.3g)、化合物Q−10d(50.0g)、トルエン(1.5L)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(2.64g)、トリ−tert−ブチルホスフィンテトラフルオロボレート塩(1.67g)およびナトリウム−tert−ブトキシド(55.4g)を加え、加熱還流下で20時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、イオン交換水を加えた。得られた有機層を、イオン交換水、飽和食塩水で順次洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することにより固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解させた後、シリカゲルショートカラム(トルエン)、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘキサン)、再結晶(トルエン/アセトニトリル)により順次精製し、50℃にて一晩減圧乾燥することにより、化合物Q−10e(85.6g)を白色固体として得た。収率は77%であった。化合物Q−10eのHPLC(高速液体クロマトグラフィ)面積百分率値は99.5%以上を示した。
(Stage4:化合物Q−10の合成)
遮光した反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物Q−10e(45g)およびジクロロメタン(750mL)を加えた。得られた溶液を氷浴により5℃以下まで冷却した後、N−ブロモスクシンイミド(28.3g)を5℃以下の温度にて複数回に分けて加えた。その後、氷浴を外し、一晩攪拌した。得られた反応液をジクロロメタンで希釈した後、10重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水、イオン交換水で順次洗浄し、シリカゲルショートカラム(ジクロロメタン)に通液した後、減圧濃縮することにより固体を得た。得られた固体を再結晶(トルエン/イソプロパノール)で複数回精製することにより、化合物Q−10(19.9g)を白色固体として得た。収率は35%であった。化合物Q−10のHPLC面積百分率値は99.5%以上を示した。
H−NMR(THF−d,300MHz):δ(ppm)=7.23(d,4H),6.95(s,4H),6.88(s,4H),6.75(d,4H),2.56(t,4H),1.99(s,12H),1.66−1.55(m,4H),1.44−1.32(m,4H),0.94(t,6H).
<実施例1> 高分子化合物P−1の合成
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物Q−1(3.64mmol)、化合物Q−2(8.46mmol)、化合物Q−7(8.46mmol)、化合物Q−9(1.95mmol)、化合物Q−11(2.61mmol)、ジクロロビス(トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(パラジウム)(3.4mg)およびトルエン(280ml)を加えた。その後、反応容器内の酸素濃度を体積基準で0.01%未満に調整し、86℃に加熱した。その後、そこへ、20重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(43mL)を加え、6時間撹拌した。その後、そこへ、フェニルボロン酸(158mg)を加え、さらに22時間撹拌した。
その後、室温まで冷却し、得られた反応液をトルエン(1100ml)で希釈し、イオン交換水(60ml))で洗浄した。得られたトルエン溶液を、10%塩酸(60ml)、3重量%アンモニア水(60ml)、イオン交換水(60ml)の順でそれぞれ2回ずつ洗浄し、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。
得られたトルエン溶液をメタノール(11L)に滴下し、1時間撹拌した後、得られた固体をろ取し乾燥させることで、高分子化合物P−1を11.2g得た。
高分子化合物P−1は、ポリスチレン換算の数平均分子量(以下、「Mn」と言う。)が5.1×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と言う。)が1.4×10であった。
なお、酸素濃度は、残存酸素計(飯島電子工業株式会社製、パックマスターRO−103)を用いて測定し、MnおよびMwは、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)装置(東ソー株式会社製、HLC−8320GPC)を用いて測定した。
表4に、高分子化合物P−1の合成条件等を示す。
<実施例2〜5および比較例1〜5> 高分子化合物P−2〜P−5および高分子化合物C−1〜C−5の合成
表4、5に示す化合物、触媒、並びに、塩基および相間移動触媒を用い、表4、5に示す酸素濃度(体積基準)において、高分子化合物P−1の合成と同様の方法で、高分子化合物P−2〜P−5および高分子化合物C−1〜C−5の合成を行った。
【表4】
【表5】
なお、表4、5中のcat1、cat2、TEAH、TMAHおよびTBABは、それぞれ、下記の化合物を意味する。
cat1:ジクロロビス(トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン)パラジウム
cat2:ジクロロビス(ジシクロペンチル(2−メトキシフェニルホスフィン)パラジウム
TEAH:20重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液
TMAH:14重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液
TBAB:臭化テトラブチルアンモニウム
<実施例6> 高分子化合物P−6の合成
高分子化合物C−1中に含有される水酸基を保護するため、水酸基のトリメチルシリル(TMS)化を行った。
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、高分子化合物C−1(1.0g)およびトルエン(125ml)を加えた。得られたトルエン溶液に、イミダゾール(0.3g)、N,N−ジメチルホルムアミド(3.0g)および塩化トリメチルシリル(0.3g)を加え、室温で4時間撹拌した。得られた反応液にイオン交換水(10ml)を加えた後、分液洗浄を行った。得られた有機層をメタノール(700ml)に滴下し、1時間撹拌した後、固体をろ取し乾燥させることで、高分子化合物P−6を0.8g得た。
高分子化合物P−6は、Mnが4.0×10であり、Mwが1.0×10であった。なお、MnおよびMwは、高速GPC装置(東ソー株式会社製、HLC−8320GPC)を用いて測定した。
表6に、高分子化合物P−6の分子量および反応に使用した高分子化合物を示す。
<実施例7〜9> 高分子化合物P−7、P−8およびP−9の合成
高分子化合物P−6の合成と同様の方法で、高分子化合物P−7、P−8およびP−9の合成を行った。表6に、高分子化合物P−7、P−8およびP−9の分子量および反応に使用した高分子化合物を示す。
【表6】
<測定> 高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量の測定
上記で合成されたそれぞれの高分子化合物(20mg)を、THF−d(0.75ml)に溶解させ、プロトンNMRを測定することで、高分子化合物中の水酸基の量を測定した。なお、NMRの測定には、核磁気共鳴装置(BRUKER製、AV−600)を用いた。
高分子化合物P−1、P−2、P−4、P−5、P−6、P−7、P−8、P−9、C−1、C−2、C−4およびC−5では、水酸基のプロトンを直接測定することで水酸基の含有量を測定した。具体的には、プロトンNMRのスペクトルと、高分子化合物の合成に用いた原料モノマーの構造から、高分子化合物の合成中に発生した水酸基を有する構成単位を下記の構成単位と同定するとともに、その含有量を定量した。表7に、その測定結果を示す。
高分子化合物P−3、P−7およびC−3では、水酸基のプロトンを直接測定することができなかったため、水酸基を有する構成単位を下記の構成単位と推定するとともに、水酸基が結合している炭素原子に対するオルト位の炭素原子に結合しているプロトンのピークを測定したプロトンNMRのスペクトルから、高分子化合物の合成中に発生した水酸基を有する構成単位を下記の構成単位と同定するとともに、その含有量を定量した。表7に、その測定結果を示す。
【表7】
<測定>
高分子化合物P−1、P−2、P−3およびP−4について、元素分析を行うことで、高分子化合物中の塩素原子、臭素原子、パラジウム原子およびリン原子の含有量を測定した。表8に、測定結果を示す。
【表8】
<合成例1> 金属錯体1の合成
金属錯体1は、特開2012−36388号公報に記載の合成法に従い合成した。
<合成例2> 金属錯体2の合成
金属錯体2は、WO2006/062226に記載の合成法に従い合成した。
<実施例D1:発光素子D1の作製と評価>
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリチオフェンスルホン酸のエチレングリコールモノブチルエーテル/水=3/2(体積比)の混合溶液(シグマアルドリッチ社、商品名:Plexcore OC 1200)を用いてスピンコートにより50nmの厚さで成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させることにより、正孔注入層を形成した。
次に、高分子化合物P−4をキシレンに溶解させ、0.7重量%のキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を用いて、上記の正孔注入層が形成されたガラス基板上にスピンコートすることにより、厚さ20nmの高分子化合物P−4の有機薄膜を成膜した。これを、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下(体積基準)の窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で190℃、60分間加熱することにより、不溶化有機薄膜である正孔輸送層を形成した。
次に、高分子化合物P−1をキシレンに溶解させ、1.5重量%のキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を用いて、上記の正孔輸送層が形成されたガラス基板上にスピンコートすることにより、厚さ60nmの有機薄膜を成膜した。これを、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下(体積基準)の窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で150℃、10分加熱乾燥させることにより、発光層を形成した。
次に、陰極として、フッ化ナトリウムを約4nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、発光素子D1を作製した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
発光素子D1に電圧を印加したところ、この素子から505nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度3000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、4.6時間であった。結果を表9に示す。
<実施例D2:発光素子D2の作製と評価>
実施例D1における高分子化合物P−1に代えて高分子化合物P−6を用い、1.5重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D1と同様にして発光素子D2を作製した。
発光素子D2に電圧を印加したところ、この素子から505nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度3000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、4.5時間であった。結果を表9に示す。
<実施例D3:発光素子D3の作製と評価>
実施例D1における高分子化合物P−4に代えて高分子化合物C−4を用い、0.7重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D1と同様にして発光素子D3を作製した。
発光素子D3に電圧を印加したところ、この素子から505nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度3000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、3.6時間であった。結果を表9に示す。
<比較例CD1:発光素子CD1の作製と評価>
実施例D1における高分子化合物P−1に代えて高分子化合物C−1を用い、1.5重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D1と同様にして発光素子CD1を作製した。
発光素子CD1に電圧を印加したところ、この素子から505nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度3000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、1.0時間であった。結果を表9に示す。
【表9】
<実施例D4:発光素子D4の作製と評価>
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリチオフェンスルホン酸のエチレングリコールモノブチルエーテル/水=3/2(体積比)の混合溶液(シグマアルドリッチ社、商品名:Plexcore OC 1200)を用いてスピンコートにより50nmの厚さで成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させることにより、正孔注入層を形成した。
次に、高分子化合物P−4をキシレンに溶解させ、0.7重量%のキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を用いて、上記の正孔注入層が形成されたガラス基板上にスピンコートすることにより、厚さ20nmの高分子化合物P−4の有機薄膜を成膜した。これを、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下(体積基準)の窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で190℃、60分間加熱することにより、不溶化有機薄膜である正孔輸送層を形成した。
次に、高分子化合物P−3/金属錯体1=70重量%/30重量%となるように混合した組成物をキシレンに溶解させ、2.2重量%のキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を用いて、上記の正孔輸送層が形成されたガラス基板上にスピンコートすることにより、厚さ80nmの有機薄膜を成膜した。これを、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下(体積基準)の窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で150℃、10分加熱乾燥させることにより、発光層を形成した。
次に、陰極として、フッ化ナトリウムを約4nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、発光素子D4を作製した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
発光素子D4に電圧を印加したところ、この素子から520nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度6000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、326.2時間であった。結果を表10に示す。
<比較例CD2:発光素子CD2の作製と評価>
実施例D4における高分子化合物P−3に代えて高分子化合物C−3を用い、2.2重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D4と同様にして発光素子CD2を作製した。
発光素子CD2に電圧を印加したところ、この素子から520nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度6000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、314.0時間であった。結果を表10に示す。
【表10】
<実施例D5:発光素子D5の作製と評価>
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリチオフェンスルホン酸のエチレングリコールモノブチルエーテル/水=3/2(体積比)の混合溶液(シグマアルドリッチ社、商品名:Plexcore OC 1200)を用いてスピンコートにより50nmの厚さで成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させることにより、正孔注入層を形成した。
次に、高分子化合物P−4をキシレンに溶解させ、0.7重量%のキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を用いて、上記の正孔注入層が形成されたガラス基板上にスピンコートすることにより、厚さ20nmの高分子化合物P−4の有機薄膜を成膜した。これを、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下(体積基準)の窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で190℃、60分間加熱することにより、不溶化有機薄膜である正孔輸送層を形成した。
次に、高分子化合物P−1/金属錯体2=95重量%/5重量%となるように混合した組成物をキシレンに溶解させ、1.9重量%のキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を用いて、上記の正孔輸送層が形成されたガラス基板上にスピンコートすることにより、厚さ80nmの有機薄膜を成膜した。これを、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下(体積基準)の窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で150℃、10分加熱乾燥させることにより、発光層を形成した。
次に、陰極として、フッ化ナトリウムを約4nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、発光素子D5を作製した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
発光素子D5に電圧を印加したところ、この素子から625nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度4000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、442.3時間であった。結果を表11に示す。
<実施例D6:発光素子D6の作製と評価>
実施例D5における高分子化合物P−1に代えて高分子化合物P−6を用い、1.9重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D5と同様にして発光素子D6を作製した。
発光素子D6に電圧を印加したところ、この素子から625nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度4000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、423.2時間であった。結果を表11に示す。
<実施例D7:発光素子D7の作製と評価>
実施例D5における高分子化合物P−4に代えて高分子化合物C−4を用い、0.7重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D5と同様にして発光素子D7を作製した。
発光素子D7に電圧を印加したところ、この素子から625nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度4000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、382.2時間であった。結果を表11に示す。
<比較例CD3:発光素子CD3の作製と評価>
実施例D5における高分子化合物P−1に代えて高分子化合物C−1を用い、1.9重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D5と同様にして発光素子CD3を作製した。
発光素子CD3に電圧を印加したところ、この素子から625nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度4000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、166.2時間であった。結果を表11に示す。
<比較例CD4:発光素子CD4の作製と評価>
実施例D5における高分子化合物P−1/金属錯体2=95重量%/5重量%に代えて高分子化合物C−2/高分子化合物C−1/金属錯体2=57重量%/38重量%/5重量%を用い、1.9重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D5と同様にして発光素子CD4を作製した。
発光素子CD4に電圧を印加したところ、この素子から625nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度4000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、257.2時間であった。
なお、高分子化合物C−2およびC−1にそれぞれ含まれる水酸基の含有量と、高分子化合物C−2およびC−1の重量比から、発光層に含まれる高分子化合物の平均の水酸基の含有量は0.10mol%となる。結果を表11に示す。
<比較例CD5:発光素子CD5の作製と評価>
実施例D5における高分子化合物P−1に代えて高分子化合物C−2を用い、1.9重量%のキシレン溶液を調製したこと以外は、実施例D5と同様にして発光素子CD5を作製した。
発光素子CD5に電圧を印加したところ、この素子から625nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度4000cd/mで定電流駆動した際のLT75は、358.2時間であった。結果を表11に示す。
【表11】
<実施例D8:発光素子D8の作製と評価>
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリチオフェンスルホン酸のエチレングリコールモノブチルエーテル/水=3/2(体積比)の混合溶液(シグマアルドリッチ社、商品名:Plexcore OC 1200)を用いてスピンコートにより50nmの厚さで成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させることにより、正孔注入層を形成した。
次に、高分子化合物P−4をキシレンに溶解させ、0.7重量%のキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を用いて、上記の正孔注入層が形成されたガラス基板上にスピンコートすることにより、厚さ20nmの高分子化合物P−4の有機薄膜を成膜した。これを、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下(体積基準)の窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で190℃、60分間加熱することにより、不溶化有機薄膜である正孔輸送層を形成した。
次に、高分子化合物P−5/金属錯体2=95重量%/5重量%となるように混合した組成物をキシレンに溶解させ、1.5重量%のキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を用いて、上記の正孔輸送層が形成されたガラス基板上にスピンコートすることにより、厚さ80nmの有機薄膜を成膜した。これを、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下(体積基準)の窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で150℃、10分加熱乾燥させることにより、発光層を形成した。
次に、陰極として、フッ化ナトリウムを約4nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、発光素子D8を作製した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
得られた発光素子D8に電圧を印加したところ、この素子から625nmにピークを有するEL発光が得られた。また、初期輝度6000cd/mで定電流駆動した際に、輝度が初期輝度の90%となるまでの時間(LT90)は、21.9時間であった。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、輝度寿命に優れる発光素子の製造に有用な高分子化合物である。
図1