【実施例】
【0049】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。以下、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0050】
(調製例1)
[プロピレン−エチレン共重合体をベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
プロピレン−エチレン共重合体〔MFR(230℃)7g/10min、融点130℃(以下、ポリプロピレン(1)とする)〕と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が90/10となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(1)とする)
【0051】
(調製例2)
[直鎖状ポリエチレンをベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
直鎖状ポリエチレン〔MFR(190℃)4g/10min、密度0.905g/cm
3〕〔以下、LLDPE(1)とする〕と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が80/20となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(2)とする)
【0052】
(調製例3)
[低密度ポリエチレンをベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
密度0.918g/cm
3、MFR3.4g/10minの低密度ポリエチレン〔以下、LDPEという〕と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が80/20となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(3)とする)
【0053】
(実施例1)
ヒートシール層(C)用の樹脂として、ポリプロピレン(1)76部と、防曇剤(1)24部を混合して用いた。このときのヒートシール層(C)の防曇剤濃度は2.4質量%であった。中間層(B2)用の樹脂として、LLDPE(1)80部と、防曇剤(2)20部を混合して用いた。このときの防曇剤濃度は4質量%であった。中間層(B1)用の樹脂として密度0.933g/cm
3、MFR5.0g/10minの直鎖状ポリエチレン〔以下、LLDPE(2)という〕97.5部と防曇剤(2)2.5部を混合して用いた。このときの防曇剤濃度は0.5%であった。ラミネート層(A)用の樹脂としてLLDPE(2)を用いた。ヒートシール層(C)用押出機(口径40mm)、中間層(B2)用押出機(口径40mm)、中間層(B1)用押出機(口径50mm)、とラミネート層(A)用押出機(口径50mm)とのそれぞれに樹脂を供給し、共押出法により押出温度250℃でTダイから(A)/(B1)/(B2)/(C)の各層の厚さが10μm/12μm/4μm/4μmになるように押出し、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却した。次いで、コロナ放電処理をラミネート層及びヒートシール層の両面に実施し、ロールに巻き取り、38℃の熟成室で24時間熟成させて、全厚が30μmの本発明の多層フィルムを得た。このときのフィルム全体の質量に対する防曇剤濃度は約1.1質量%である。ラミネート層表面の濡れ張力は39mN/m、ヒートシール層表面の濡れ張力は44mN/mであった。この後、得られた共押出フィルムと二軸延伸ポリエステルフィルム12μmとをポリウレタン系接着剤〔DIC株式会社製ディックドライLX510/KR90〕で貼り合わせ、積層体を得た。
【0054】
(実施例2)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を混合比99.5/0.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は0.1質量%(フィルム全体の防曇剤濃度は約0.9質量%)であった。また、ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層表面の濡れ張力を39mN/mとした。これら以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層体を得た。
【0055】
(実施例3)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が99.5/0.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は0.1質量%(フィルム全体の防曇剤濃度は約0.9質量%)であった。また、ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層表面の濡れ張力を35mN/mとした。これら以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層体を得た。
【0056】
(実施例4)
全体厚みを90μmとし、(A)/(B1)/(B2)/(C)の各層の厚さが30μm/36μm/12μm/12μmになるように冷却ロールの回転速度を変え、引き取り速度を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の積層体を得た。
【0057】
(実施例5)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が92/8となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は1.6質量%(フィルム全体の防曇剤濃度は約1.5質量%)であった。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例5の積層体を得た。
【0058】
(実施例6)
中間層(B2)用の樹脂として、LLDPE(1)に替えて、LLDPE(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の積層体を得た。
【0059】
(実施例7)
ラミネート層(A)用の樹脂として、密度0.920g/cm
3、MFR(190℃)4g/10minの直鎖状ポリエチレン〔以下、LLDPE(3)という〕を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の積層体を得た。
【0060】
(実施例8)
ヒートシール層(C)用樹脂として、ポリプロピレン(1)と防曇剤(1)とを質量比が76/24となるように混合して用いた。このときのヒートシール層(C)中の防曇剤濃度は2.4質量%であった。中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(1)と防曇剤(2)とを質量比が92.5/7.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は1.5質量%であった。ラミネート層(A)用樹脂として、LLDPE(2)を用いた。ヒートシール層(C)用押出機(口径30mm)、中間層(B1)用押出機(口径40mm)とラミネート層(A)用押出機(口径30mm)とのそれぞれに樹脂を供給し、共押出法により押出温度250℃でTダイから(A)/(B1)/(C)の各層の厚さが10μm/16μm/4μmになるように押出した以外は実施例3と同様にして、実施例8の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0061】
(実施例9)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(1)に替えて、LLDPE(2)を用いた以外は、実施例8と同様にして、実施例9の積層体を得た。
【0062】
(実施例10)
ヒートシール層(C)用の樹脂として、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体〔MFR(230℃)7g/10min、融点129℃(以下、ポリプロピレン(2)とする)〕と防曇剤(1)とを質量比が76/24となるように混合して用いた。また、ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層表面の濡れ張力を39mN/mとした。これら以外は、実施例1と同様にして、実施例10の積層体を得た。
【0063】
(実施例11)
ラミネート層側のコロナ放電出力を調整して、ラミネート面の濡れ張力を44mN/mとし、ヒートシール層側のコロナ処理出力も調整して、ヒートシール面の濡れ張力を39mN/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例11の積層体を得た。
【0064】
(実施例12)
ラミネート層側のコロナ放電出力を調整して、ラミネート面の濡れ張力を36mN/mとした以外は、実施例11と同様にして、実施例12の積層体を得た。
【0065】
(実施例13)
ラミネート層(A)用樹脂として、LLDPE(2)とLDPEとを質量比が80/20となるように混合し、また、ヒートシール層側のコロナ処理出力も調整して、ヒートシール面の濡れ張力を39mN/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例13の積層体を得た。
【0066】
(実施例14)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)、LDPEおよび防曇剤(2)を質量比が77.5/20/2.5となるように混合して用いた。そのときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は0.5質量%であった。中間層(B2)用の樹脂として、LLDPE(1)、LDPEおよび防曇剤(2)を質量比が60/20/20となるように混合して用いた。そのときの防曇剤濃度は4%であった。また、ヒートシール層側のコロナ処理出力も調整して、ヒートシール面の濡れ張力を39mN/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例14の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0067】
(比較例1)
ヒートシール層にコロナ放電処理を実施しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の積層体を得た。
【0068】
(比較例2)
ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層の表面の濡れ張力を33mN/mとした以外は実施例1と同様にして、比較例2の積層体を得た。
【0069】
(比較例3)
ヒートシール層にコロナ放電処理を実施せず、全体厚みを150μmとし、(A)/(B1)/(B2)/(C)の各層の厚さが50μm/60μm/20μm/20μmになるように冷却ロールの回転速度を変え、引き取り速度を調整とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の積層体を得た。
【0070】
(比較例4)
ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層の表面の濡れ張力を39mN/mとした。中間層(B1)用樹脂として、LLDPE(2)のみを用い、防曇剤を添加せず、中間層(B2)用樹脂として、LLDPE(1)と防曇剤(2)とを質量比が90/10となるように混合して用いた。このときの中間層(B2)中の防曇剤濃度は2.0質量%であった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例4の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約0.6質量%であった。
【0071】
(比較例5)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が88/12となるように混合して用いた。このときの防曇剤濃度は中間層(B1)中の2.4質量%であった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例5の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.8質量%であった。
【0072】
(比較例6)
ラミネート層(A)用樹脂として、LDPEと防曇剤(2)を質量比が99/1となるように混合して用いた。このときのラミネート層(A)中の防曇剤濃度は0.2質量%であった。中間層(B1)および(B2)用樹脂として、LDPEと防曇剤(2)を質量比が98.5/1.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)及び(B2)中の防曇剤濃度は0.3質量%であった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例6の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.0質量%であった。
【0073】
(比較例7)
ラミネート層(A)用樹脂として、LDPE(分岐状)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例7の積層体を得た。
【0074】
(比較例8)
ラミネート層(A)用樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が99/1となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤量は0.2質量%であった。これ以外は、実施例1と同様にして、比較例8の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0075】
(比較例9)
中間層(B1)用の樹脂として、LDPEと防曇剤(3)を質量比が92.5/7.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は1.5質量%であった。ヒートシール層側のコロナ処理出力も調整して、ヒートシール面の濡れ張力を44mN/mとした以外は、実施例8と同様にして、比較例9の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0076】
(比較例10)
中間層(B1)用の樹脂として、LDPEと防曇剤(3)を質量比が97.5/2.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は0.5質量%であった。また、中間層(B2)用の樹脂として、LDPEと防曇剤(3)を質量比が80/20となるように混合して用いた。そのときの防曇剤濃度は4質量%であった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例10の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0077】
(比較例11)
ラミネート層側にコロナ放電処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例11の積層体を得た。
【0078】
(比較例12)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が95/5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は1質量%であった。また中間層(B2)用樹脂として、LLDPE(1)と防曇剤(2)とを質量比75/26となるように混合して用いた。ことのときの中間層(B2)中の防曇剤濃度は5%であった。ラミネート層(A)およびヒートシール層(C)には防曇剤は添加しなかった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例12の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0079】
(比較例13)
ラミネート層(A)用の樹脂として、LLDPE(2)を用い、中間層(B1)用の樹脂としてLLDPE(2)を用い、中間層(B2)用の樹脂としてLLDPE(1)を用い、防曇剤を添加せず、ヒートシール層(C)用の樹脂として、ポリプロピレン(1)と防曇剤(1)とを質量比が20/80となるように混合して用いた。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。それらを各押出機に導入して実施例1と同様に250℃で押出したが、顕著な面荒れによる外観不良が発生し、良好なフィルムが得られなかった。
【0080】
上記実施例及び比較例で得られた積層フィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果は表中に示した。なお表中の各層の配合成分の含有量は、層中の質量比である。
【0081】
[エージング後のフィルム外観評価]
共押出法により、Tダイから押出されたフィルムの38℃、24時間エージングしたサンプルの外観を目視により確認した。
○:防曇剤ブリードによる白化は見られず
×:防曇剤ブリードによる白化で、フィルムの透明性悪化
【0082】
[ラミネート強度の評価]
ポリエステルフィルムと共押出法で得られたフィルム間のラミネート強度の挙動について、引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/minの速度で剥離したときの状態を以下の基準で評価した。
○:十分なラミネート強度の保持により、ポリエステルフィルムと共押出法で得られたフィルム間で強固な接着を確認。
×:ラミネート強度の不足により、ポリエステルフィルムと共押出法で得られたフィルム間で容易な剥離を確認。
【0083】
[防曇効果確認試験]
得られた積層体を、38℃環境下24時間エージングを実施した後、8cm×8cmに切り出して、40℃の水30mlを入れた71φインジェクション容器(東光株式会社製)とヒートシールした後(圧力64kgf/cup、温度160℃、時間1.0秒)、目視により以下の判定基準を利用して低温室3℃で3時間保管し、防曇効果を確認した。
○:フィルム表面に連続的な水膜が形成され、視認性良好
△:フィルム表面に細かい水滴付着も視認性良好
×:水滴付着有、視認性悪化
【0084】
[ヒートシール試験]
得られた積層体を、10cm×5cmに切り出し、厚さ0.3mmのポリプロピレン製シートと、ヒートシール面がポリプロピレンシート側に来るように重ね合わせて、ヒートシールテスタ(テスター産業製精密ヒートシーラー)を用いて、所定の温度に調節された上部ヒートシールバーが、積層体の最外層側にくるようにセットし、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。
【0085】
[剥離強度の評価]
ヒートシールされた部分と垂直方向に15mm幅の短冊状のサンプルを切り出し、引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/minの速度で剥離したときの最大強度を剥離強度とした。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
上記表から明らかなとおり、実施例1〜12の本発明の防曇性積層フィルムは、好適な防曇性と剥離強度とを実現できるものであった。また、好適なフィルム外観を有し、ラミネート強度も好適であった。一方、比較例1〜6、9〜11の積層フィルムは、好適な防曇性と剥離強度とを両立できないものであった。また、比較例7〜8、12〜13の積層フィルムは、積層フィルム自体の特性に劣るものであり、実用上の使用が困難なものであった。