特許第5962864号(P5962864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5962864防曇性多層フィルム、これを用いる積層体、及び包装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962864
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】防曇性多層フィルム、これを用いる積層体、及び包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20160721BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20160721BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B32B27/18 C
   B32B27/32 E
   B65D65/40 D
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-539200(P2015-539200)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2014075041
(87)【国際公開番号】WO2015046131
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-201481(P2013-201481)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】木田 智久
(72)【発明者】
【氏名】古根村 陽之介
(72)【発明者】
【氏名】森谷 貴史
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−310431(JP,A)
【文献】 特開2007−038605(JP,A)
【文献】 特開2003−291282(JP,A)
【文献】 特開平11−198323(JP,A)
【文献】 特開2001−334617(JP,A)
【文献】 特開2005−028679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状ポリエチレン(a)を主成分とし、防曇剤を含まないラミネート層(A)、直鎖状ポリエチレン(b1)と防曇剤(b2)とを含有する中間層(B)、及びポリプロピレン系樹脂(c1)と防曇剤(c2)とを含有するヒートシール層(C)とが、(A)/(B)/(C)の順で積層されてなる多層フィルムであって、
前記多層フィルムの全質量に対して前記防曇剤(b2)と前記防曇剤(c2)との合計質量が0.8〜1.6質量%の範囲で含まれており、且つ前記多層フィルムの両外面の濡れ張力が35〜45mN/mの範囲であり、多層フィルムの全厚が20〜100μmであることを特徴とする防曇性多層フィルム。
【請求項2】
前記防曇性多層フィルムにおける中間層(B)が、密度の異なる層(B1)及び層(B2)から形成されるものであり、(A)/(B1)/(B2)/(C)の順で積層され、且つ層(B1)に含有される直鎖状ポリエチレンの密度が、層(B2)に含有される直鎖状ポリエチレンの密度よりも高いものである請求項1記載の防曇性多層フィルム。
【請求項3】
前記層(B1)に含有される直鎖状ポリエチレンの密度が0.920〜0.945g/cm3の範囲であり、前記層(B2)に含有される直鎖状ポリエチレンの密度が0.880〜0.920g/cmの範囲である請求項2記載の防曇性多層フィルム。
【請求項4】
前記直鎖状ポリエチレン(a)の密度が0.920〜0.945g/cmの範囲である請求項1〜3の何れか1項記載の防曇性多層フィルム。
【請求項5】
前記多層フィルムの全厚に対する中間層(B)の厚み比率が35〜60%の範囲であり、前記ヒートシール層(C)の厚み比率が8〜15%の範囲である請求項1〜の何れか1項記載の防曇性多層フィルム。
【請求項6】
前記多層フィルムが共押出積層法にて製造されたものである請求項1〜の何れか1項記載の防曇性多層フィルム。
【請求項7】
前記防曇剤(b2)及び(c2)がノニオン系界面活性剤である請求項1〜の何れか1項記載の防曇性多層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜の何れか1項記載の防曇性多層フィルムのラミネート層(A)と、熱可塑性樹脂フィルムとを積層してなることを特徴とする積層体。
【請求項9】
請求項記載の積層体を用いることを特徴とする包装材。
【請求項10】
食品包装容器の蓋材である請求項記載の包装材。
【請求項11】
前記食品包装容器のシール面がプロピレン系樹脂を含有する樹脂層である請求項10記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装容器の蓋材として好適に用いることができる、防曇性と易開封性とを兼備する多層フィルム及びこれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品パッケージ市場では、例えば青果物、惣菜等の内容物の視認性を高めるために、包装材には防曇性が求められている。これは、容器内の青果物、惣菜からの水分の蒸散で包装材内表面に曇りが生じてしまうと、内容物が見えにくく、商品価値の低下、すなわち食品の安全と安心を求める消費者の要求に応えることができなくなることに起因する。更に、容器の蓋材には、内容物を取り出すまでの確実なシール性を有することは必須である一方で、ユニバーサルデザイン化傾向の中で、社会的弱者(高齢者、幼児、障害者等)に対しての配慮として、消費者が開封しやすい方式、例えば易開封性が重要視されつつある。
【0003】
現在、包装材に防曇性を付与する方法として、防曇剤を包装材料に用いる樹脂中に練り込み、これをフィルム状に成形した後、各種包装材用に二次成形する方法(例えば、特許文献1参照。)と、樹脂をフィルム状に成形したのちに、少なくとも内容物に接する面に防曇剤を塗布する方法(例えば、特許文献2参照)とが知られている。
【0004】
防曇剤を樹脂に練り込む方法では、単層フィルムの場合や、多層フィルムの全層に防曇剤を練り込んだ場合、これの表面に印刷を施したり、他の基材フィルムと貼り合わせたりするときに、表面にブリードアウトした防曇剤が印刷インキや接着剤と反応して、印刷面の剥がれや、接着不良を起こすことがある。多層フィルムの場合に、特定の層のみに防曇剤を練り込む例も提供されている(例えば、特許文献3参照)が、防曇剤が多層フィルム中で移動しやすい性質を有することから、防曇性の効果が一定ではなく、効果に持続性がないという問題がある。
【0005】
また、防曇剤を含む塗液をフィルム表面に塗布する方法では、塗膜の乾燥工程が必要であって生産効率が低く、更に内容物からの水分の蒸散により塗布面の防曇剤が流されてしまい、防曇効果の持続性が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−047936号公報
【特許文献2】特開平09−248880号公報
【特許文献3】特開2007−253349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記実情を鑑み、本発明の課題は、内容物からの水蒸気による曇りを防止する防曇性が良好であると共に優れた易開封性を有し、包装容器の蓋材等の用途に好適な多層フィルムと、この多層フィルムを基材フィルムにラミネートしてなる積層体、及びこれを用いる包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のオレフィン系樹脂を積層してなる少なくとも3層の多層フィルムであって、防曇剤の練り込みを行う層の選択、防曇剤の使用割合の調整、及び多層フィルムの表面処理を適切に行うことによって得られる多層フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、直鎖状ポリエチレン(a)を主成分とし、防曇剤を含まないラミネート層(A)、直鎖状ポリエチレン(b1)と防曇剤(b2)とを含有する中間層(B)、及びポリプロピレン系樹脂(c1)と防曇剤(c2)とを含有するヒートシール層(C)とが、(A)/(B)/(C)の順で積層されてなる多層フィルムであって、前記多層フィルムの全質量に対して前記防曇剤(b2)と前記防曇剤(c2)との合計質量が0.8〜1.6質量%の範囲で含まれており、且つ前記多層フィルムの両外面が、濡れ張力35〜45mN/mの範囲に処理されたものであり、多層フィルムの全厚が20〜100μmであることを特徴とする防曇性多層フィルム、これと基材フィルムとを積層してなる積層体、及びこれを用いる包装材を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防曇性多層フィルム及びこれを用いた積層体は、包装容器の蓋材としてヒートシールした際や、袋状に形成してシートシールした際に、層間剥離に基づく易開封性を発現する。更に防曇性が良好であり、その持続性も有することから、青果物や惣菜等の包装材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の防曇性多層フィルムとこれを用いてなる積層体を構成する各部分について詳述する。
【0012】
[ラミネート層(A)]
本発明のラミネート層(A)は、直鎖状ポリエチレン(a)を主成分とするものであって、且つ当該層には防曇剤を含まないことを特徴とする。
【0013】
本発明において主成分とするとは、当該層を形成する樹脂成分全量に対して特定の樹脂を65質量%以上、好ましくは80質量%以上で含有することをいうものである。
【0014】
前記直鎖状ポリエチレン(a)としては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。コモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
【0015】
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、樹脂層間の接着強度の安定性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
【0016】
ラミネート層(A)に用いる直鎖状ポリエチレン(a)の密度としては、0.920〜0.945g/cmであることが好ましく、0.930〜0.940g/cmの範囲であることがより好ましい。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜125℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性や他の層と共押出加工する際の加工性が向上する。また、前記直鎖状ポリエチレン(a)のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
【0017】
前述のように、ラミネート層(A)は前記直鎖状ポリエチレン(a)を主成分とするものであるが、他の基材と接着剤を用いてラミネートする際や、印刷を施す等の際に、接着剤や印刷インキとの密着性を向上させる等の目的の観点から、その他の樹脂を併用してもよい。この時併用できるその他の樹脂としては、エチレン系樹脂であることが、得られる多層フィルムの透明性の観点から好ましく、例えば、分岐状ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等や、ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィン構造を有するモノマーとエチレン等との共重合体が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0018】
[中間層(B)]
本発明の多層フィルムにおける中間層(B)は、直鎖状ポリエチレン(b1)と防曇剤(b2)とを含有する。この直鎖状ポリエチレン(b1)は、前述のラミネート層(A)に用いる直鎖状ポリエチレン(a)と同様のものである。
【0019】
中間層(B)中における前記直鎖状ポリエチレン(b1)の使用割合としては、当該樹脂を主成分としていることが好ましく、特に90質量%以上で含有していることが好ましい。その他の併用できる樹脂種としては、ラミネート層(A)で併用できる樹脂として例示したものと同様である。
【0020】
前記防曇剤(b2)としては、一般的にオレフィン系樹脂へ添加され防曇性を付与するものとして知られているものであれば、とくに限定されるものではなく、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができ、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0021】
具体的には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート等のソルビタン系界面活性剤;グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等のグリセリン系界面活性剤;ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミネート等のポリエチレングリコール系界面活性剤;トリメチロールプロパンモノステアレート等のトリメチロールプロパン系界面活性剤;ラウリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等のジエタノールアルキルアミン系およびジエタノールアルキルアミド系界面活性剤;ペンタエリスリトールモノパルミテート等のペンタエリスリトール系界面活性剤およびポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ソルビタン- ジグリセリン縮合体のモノおよびジステアレートなどが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
前記中間層(B)中の防曇剤(b2)の使用割合としては、当該層の全質量に対して0.8〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、特に1.0〜3.0質量%の範囲であることが好ましい。この範囲で防曇剤(b2)を用いることにより、前述のラミネート層(A)への過剰な移行が起こらずに、フィルムとしての防曇性を良好にすることが容易となる。
【0023】
本発明の防曇性多層フィルムにおける中間層(B)は密度の異なる直鎖状ポリエチレンを複数用いてなる、2層以上の複層構成であってもよく、特に防曇剤のラミネート層への移行を効果的に抑制できる観点から、防曇性多層フィルムにおける中間層(B)が、密度の異なる層(B1)及び層(B2)から形成されるものであり、(A)/(B1)/(B2)/(C)の順で積層され、且つ層(B1)に含有される直鎖状ポリエチレンの密度が、層(B2)に含有される直鎖状ポリエチレンの密度よりも高いもので形成されていることが好ましい。
【0024】
2層以上の中間層(B)を有する場合において、前記層(B1)に含有される直鎖状ポリエチレンの密度が0.920〜0.945g/cmの範囲であり、前記層(B2)に含有される直鎖状ポリエチレンの密度が0.880〜0.920g/cmの範囲であることが、多層フィルムとしての防曇性と、ラミネート層への防曇剤の移行抑制のバランスに優れる点から好ましい。直鎖状ポリエチレンの密度条件以外は、前記中間層(B)に用いる直鎖状ポリエチレン(b1)、防曇剤(b2)は同様である。
【0025】
特にラミネート層(A)に隣接する中間層(B1)に用いる直鎖状ポリエチレンの密度は、前記ラミネート層(A)に用いる直鎖状ポリエチレン(a)の密度と同じか、あるいは小さいことが、防曇剤(b2)の移行を抑制する観点から好ましい。
【0026】
防曇剤(b2)の使用割合としては、全ての複数の中間層(B)で同一であっても、異なっていてもよく、更に使用する防曇剤(b2)の種類としても、同一であっても異なっていてもよいが、フィルムとしての防曇性の持続性の観点からは、同種の防曇剤を用いることが好ましい。
【0027】
[ヒートシール層(C)]
本発明の多層フィルムにおけるヒートシール層(C)としては、これを容器の蓋材や包装袋として使用する場合の易開封性の発現を容易にする観点から、ポリプロピレン系樹脂(c1)を用いることを必須とするものである。
【0028】
前記ポリプロピレン系樹脂(c1)としては、前述のラミネート層(A)、中間層(B)と積層できるものであれば特に限定されるものではなく、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、前述のように特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。これらのプロピレン系樹脂をヒートシール層(C)用の樹脂として用いることにより、特に包装容器のシール面がポリプロピレン系樹脂を含有する樹脂層である包装容器の蓋材として好適に用いることができる。
【0029】
また、ポリプロピレン系樹脂(c1)は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、ヒートシール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
【0030】
ヒートシール層(C)における前記ポリプロピレン系樹脂(c1)の使用割合としては、当該樹脂を主成分としていることが好ましく、特に90質量%以上で含有していることが好ましい。その他の併用できる樹脂種としては、ラミネート層(A)で併用できる樹脂として例示したものと同様である。
【0031】
ヒートシール層(C)に用いる防曇剤(c2)としては、前記中間層(B)で用いる防曇剤(b2)として例示したものを何れも用いることができ、好適なものも同様である。
【0032】
中間層(B)に用いる防曇剤(b2)と、ヒートシール層(C)に用いる防曇剤(c2)としては、同一であっても、異なっていてもよい。マスターバッチ化された防曇剤を使用する場合には、相溶性の観点より、ベース樹脂がそれぞれ、中間層(B)ではポリエチレン系樹脂、ヒートシール層(C)ではポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0033】
ヒートシール層(C)における防曇剤(c2)の使用割合としては、当該層の全質量に対して1.0〜6.0質量%の範囲であることが好ましく、特に1.2〜4.0質量%の範囲であることが好ましい。この範囲で防曇剤(c2)を用いることにより、フィルムとしての防曇性、防曇持続性が良好なものを得ることが容易となる。
【0034】
[防曇性多層フィルム]
本発明の防曇性多層フィルムは、上記ラミネート層(A)、中間層(B)及びヒートシール層(C)とが、(A)/(B)/(C)で積層された多層フィルムである。本発明の防曇性多層フィルムは、当該層構成において、ラミネート層(A)に防曇剤を含有せず、中間層(B)及びヒートシール層(C)の両層に防曇剤を含有し、さらに防曇剤の含有量を多層フィルムの全質量に対する防曇剤の合計質量が0.8〜1.6質量%の範囲であり、両外面の濡れ張力が35〜45mN/mであり、その全厚が20〜100μmである。当該構成の多層フィルムは、好適な防曇性を実現できると共に、ヒートシールした際に好適な接着強度を実現でき、開封時にも(B)/(C)層間で好適な易開封性を保持できる。また、防曇剤の脱落が生じにくいうえ、安定して防曇性を保持でき、かつ、印刷や他の基材との接着も良好となる。
【0035】
本発明の防曇性多層フィルムの全厚としては、これを他の基材と積層して用いる場合のラミネートが容易であり、好適な防曇性を得られることから20〜100μmの範囲であることが好ましく、特に30〜80μmの範囲であることが、成膜が容易である観点より好ましい。
【0036】
また、多層フィルムにおける各層の比率としては、シール性、易開封性、及びラミネート性の観点より、中間層(B)の厚み比率が35〜60%の範囲であり、ヒートシール層(C)の厚み比率が8〜15%の範囲であることが好ましい。
【0037】
本発明の防曇性多層フィルム全体に含まれる防曇剤の総量としては、0.8〜1.6質量%であり、特に1.0〜1.3質量%の範囲であることが、成膜性が良好である点と、防曇性、防曇持続性の観点から好ましい。
【0038】
本発明の防曇性多層フィルムの各層(A)、(B)、(C)、には、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性、充填機の包装適性を付与するため、フィルム表面の摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、多層フィルムの表面層に相当する樹脂層には、滑剤やアンチブロッキング剤や帯電防止剤を適宜添加することが好ましい。
【0039】
また、本発明の防曇性多層フィルムにおいては、フィルムの両外面を処理し、表面の濡れ張力35〜45mN/mの範囲、好ましくは38〜42mN/mの範囲とする。この様な処理方法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ放電処理である。この様な表面処理を行なうことにより、当該多層フィルムのラミネート層(A)に印刷や接着剤を塗布して基材と積層する等の後工程を施す場合の、インキや接着剤の塗工性が良好となり、インキやアルミ、アンカーコート剤等との密着性に優れ、インキや蒸着アルミの脱落やデラミ等の問題を回避することが容易となる。また、ヒートシール層(C)の表面を処理することにより、防曇剤を外表面に比較的長期にわたって固定することが可能となり、防曇性及び防曇持続性に優れたフィルムとなる。ラミネート層(A)とヒートシール層(C)の処理方法、及び処理度は同一であっても異なっていてもよいが、生産性の観点からは、同一の方法で処理することが好ましい。
【0040】
コロナ放電処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。処理時の放電周波数は、5kV〜40kV、より好ましくは10kV〜30kVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1mm〜10mm、より好ましくは1.0mm〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.34kV・A・分/m〜0.4kV・A・分/m、より好ましくは0.344kV・A・分/m〜0.38kV・A・分/mである。
【0041】
本発明の積層フィルムのヒートシール後の剥離強度は、使用態様に応じて適宜調整すればよいが、例えば、10cm×5cmに切り出した本発明の積層フィルムを、ポリプロピレン製シートに、180℃、0.2MPaで1秒間ヒートシールした際の剥離強度が5〜20N/15mmであることが好ましく、8〜12N/15mmであることがより好ましい。当該剥離強度とすることで積層フィルムの剥離や脱落が生じにくく、かつ、開封時の易開封性が特に好適となる。
【0042】
本発明の防曇性多層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ラミネート層(A)、中間層(B)、ヒートシール層(C)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)/(C)、または(A)/(B1)/(B2)/(C)の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。なかでも、Tダイ・チルロール法は、融点やTgの異なる樹脂を共押出する際のフィルム外観の劣化の抑制や均一な層構成の形成がしやすく、好適な透明性や光沢のフィルムを得やすいため好ましい。また、インフレーション法は、設備が簡便であるため好ましく、少量多品種の生産にも適している。
【0043】
本発明の防曇性多層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形やエンボス加工等の二次成形も可能となる。
【0044】
本発明の防曇性多層フィルムを、他の基材と貼りあわせて使用することもできる。この時使用することができる他の基材としては、特に限定されるものではないが、本発明の効果を容易に発現させる観点から、高剛性、高光沢を有する熱可塑性樹脂フィルム、特には二軸延伸された樹脂フィルムを用いることが好ましい。また透明性を必要としない用途の場合はアルミ箔を単独あるいは組み合わせて使用することもできる。
【0045】
延伸された樹脂フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。
【0046】
本発明の積層体は、上記によって得られた防曇性多層フィルムに前記熱可塑性樹脂フィルムを積層してなるラミネートフィルムであり、積層方法としては、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
【0047】
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。また各種の粘着剤を使用することもできるが、感圧性粘着剤を用いることが好ましい。感圧性粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンのような有機溶剤に溶解したゴム系粘着剤、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチレン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したもの、或いは、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解したアクリル系粘着剤などを挙げることができる。
【0048】
本発明の前記積層体の用途としては特に限定されないが、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装容器の蓋材等に好適に用いることが可能である。特に当該包装容器の最外層(本発明の多層フィルムのヒートシール層と接着する部分)が各種プロピレン系樹脂を含有するものであることが、易開封性とシール強度とのバランスの観点から好ましい。
【実施例】
【0049】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。以下、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0050】
(調製例1)
[プロピレン−エチレン共重合体をベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
プロピレン−エチレン共重合体〔MFR(230℃)7g/10min、融点130℃(以下、ポリプロピレン(1)とする)〕と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が90/10となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(1)とする)
【0051】
(調製例2)
[直鎖状ポリエチレンをベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
直鎖状ポリエチレン〔MFR(190℃)4g/10min、密度0.905g/cm〕〔以下、LLDPE(1)とする〕と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が80/20となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(2)とする)
【0052】
(調製例3)
[低密度ポリエチレンをベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
密度0.918g/cm、MFR3.4g/10minの低密度ポリエチレン〔以下、LDPEという〕と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が80/20となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(3)とする)
【0053】
(実施例1)
ヒートシール層(C)用の樹脂として、ポリプロピレン(1)76部と、防曇剤(1)24部を混合して用いた。このときのヒートシール層(C)の防曇剤濃度は2.4質量%であった。中間層(B2)用の樹脂として、LLDPE(1)80部と、防曇剤(2)20部を混合して用いた。このときの防曇剤濃度は4質量%であった。中間層(B1)用の樹脂として密度0.933g/cm、MFR5.0g/10minの直鎖状ポリエチレン〔以下、LLDPE(2)という〕97.5部と防曇剤(2)2.5部を混合して用いた。このときの防曇剤濃度は0.5%であった。ラミネート層(A)用の樹脂としてLLDPE(2)を用いた。ヒートシール層(C)用押出機(口径40mm)、中間層(B2)用押出機(口径40mm)、中間層(B1)用押出機(口径50mm)、とラミネート層(A)用押出機(口径50mm)とのそれぞれに樹脂を供給し、共押出法により押出温度250℃でTダイから(A)/(B1)/(B2)/(C)の各層の厚さが10μm/12μm/4μm/4μmになるように押出し、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却した。次いで、コロナ放電処理をラミネート層及びヒートシール層の両面に実施し、ロールに巻き取り、38℃の熟成室で24時間熟成させて、全厚が30μmの本発明の多層フィルムを得た。このときのフィルム全体の質量に対する防曇剤濃度は約1.1質量%である。ラミネート層表面の濡れ張力は39mN/m、ヒートシール層表面の濡れ張力は44mN/mであった。この後、得られた共押出フィルムと二軸延伸ポリエステルフィルム12μmとをポリウレタン系接着剤〔DIC株式会社製ディックドライLX510/KR90〕で貼り合わせ、積層体を得た。
【0054】
(実施例2)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を混合比99.5/0.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は0.1質量%(フィルム全体の防曇剤濃度は約0.9質量%)であった。また、ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層表面の濡れ張力を39mN/mとした。これら以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層体を得た。
【0055】
(実施例3)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が99.5/0.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は0.1質量%(フィルム全体の防曇剤濃度は約0.9質量%)であった。また、ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層表面の濡れ張力を35mN/mとした。これら以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層体を得た。
【0056】
(実施例4)
全体厚みを90μmとし、(A)/(B1)/(B2)/(C)の各層の厚さが30μm/36μm/12μm/12μmになるように冷却ロールの回転速度を変え、引き取り速度を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の積層体を得た。
【0057】
(実施例5)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が92/8となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は1.6質量%(フィルム全体の防曇剤濃度は約1.5質量%)であった。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例5の積層体を得た。
【0058】
(実施例6)
中間層(B2)用の樹脂として、LLDPE(1)に替えて、LLDPE(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の積層体を得た。
【0059】
(実施例7)
ラミネート層(A)用の樹脂として、密度0.920g/cm、MFR(190℃)4g/10minの直鎖状ポリエチレン〔以下、LLDPE(3)という〕を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の積層体を得た。
【0060】
(実施例8)
ヒートシール層(C)用樹脂として、ポリプロピレン(1)と防曇剤(1)とを質量比が76/24となるように混合して用いた。このときのヒートシール層(C)中の防曇剤濃度は2.4質量%であった。中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(1)と防曇剤(2)とを質量比が92.5/7.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は1.5質量%であった。ラミネート層(A)用樹脂として、LLDPE(2)を用いた。ヒートシール層(C)用押出機(口径30mm)、中間層(B1)用押出機(口径40mm)とラミネート層(A)用押出機(口径30mm)とのそれぞれに樹脂を供給し、共押出法により押出温度250℃でTダイから(A)/(B1)/(C)の各層の厚さが10μm/16μm/4μmになるように押出した以外は実施例3と同様にして、実施例8の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0061】
(実施例9)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(1)に替えて、LLDPE(2)を用いた以外は、実施例8と同様にして、実施例9の積層体を得た。
【0062】
(実施例10)
ヒートシール層(C)用の樹脂として、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体〔MFR(230℃)7g/10min、融点129℃(以下、ポリプロピレン(2)とする)〕と防曇剤(1)とを質量比が76/24となるように混合して用いた。また、ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層表面の濡れ張力を39mN/mとした。これら以外は、実施例1と同様にして、実施例10の積層体を得た。
【0063】
(実施例11)
ラミネート層側のコロナ放電出力を調整して、ラミネート面の濡れ張力を44mN/mとし、ヒートシール層側のコロナ処理出力も調整して、ヒートシール面の濡れ張力を39mN/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例11の積層体を得た。
【0064】
(実施例12)
ラミネート層側のコロナ放電出力を調整して、ラミネート面の濡れ張力を36mN/mとした以外は、実施例11と同様にして、実施例12の積層体を得た。
【0065】
(実施例13)
ラミネート層(A)用樹脂として、LLDPE(2)とLDPEとを質量比が80/20となるように混合し、また、ヒートシール層側のコロナ処理出力も調整して、ヒートシール面の濡れ張力を39mN/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例13の積層体を得た。
【0066】
(実施例14)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)、LDPEおよび防曇剤(2)を質量比が77.5/20/2.5となるように混合して用いた。そのときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は0.5質量%であった。中間層(B2)用の樹脂として、LLDPE(1)、LDPEおよび防曇剤(2)を質量比が60/20/20となるように混合して用いた。そのときの防曇剤濃度は4%であった。また、ヒートシール層側のコロナ処理出力も調整して、ヒートシール面の濡れ張力を39mN/mとした以外は、実施例1と同様にして、実施例14の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0067】
(比較例1)
ヒートシール層にコロナ放電処理を実施しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の積層体を得た。
【0068】
(比較例2)
ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層の表面の濡れ張力を33mN/mとした以外は実施例1と同様にして、比較例2の積層体を得た。
【0069】
(比較例3)
ヒートシール層にコロナ放電処理を実施せず、全体厚みを150μmとし、(A)/(B1)/(B2)/(C)の各層の厚さが50μm/60μm/20μm/20μmになるように冷却ロールの回転速度を変え、引き取り速度を調整とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の積層体を得た。
【0070】
(比較例4)
ヒートシール層側のコロナ放電出力を調整して、ヒートシール層の表面の濡れ張力を39mN/mとした。中間層(B1)用樹脂として、LLDPE(2)のみを用い、防曇剤を添加せず、中間層(B2)用樹脂として、LLDPE(1)と防曇剤(2)とを質量比が90/10となるように混合して用いた。このときの中間層(B2)中の防曇剤濃度は2.0質量%であった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例4の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約0.6質量%であった。
【0071】
(比較例5)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が88/12となるように混合して用いた。このときの防曇剤濃度は中間層(B1)中の2.4質量%であった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例5の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.8質量%であった。
【0072】
(比較例6)
ラミネート層(A)用樹脂として、LDPEと防曇剤(2)を質量比が99/1となるように混合して用いた。このときのラミネート層(A)中の防曇剤濃度は0.2質量%であった。中間層(B1)および(B2)用樹脂として、LDPEと防曇剤(2)を質量比が98.5/1.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)及び(B2)中の防曇剤濃度は0.3質量%であった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例6の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.0質量%であった。
【0073】
(比較例7)
ラミネート層(A)用樹脂として、LDPE(分岐状)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例7の積層体を得た。
【0074】
(比較例8)
ラミネート層(A)用樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が99/1となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤量は0.2質量%であった。これ以外は、実施例1と同様にして、比較例8の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0075】
(比較例9)
中間層(B1)用の樹脂として、LDPEと防曇剤(3)を質量比が92.5/7.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は1.5質量%であった。ヒートシール層側のコロナ処理出力も調整して、ヒートシール面の濡れ張力を44mN/mとした以外は、実施例8と同様にして、比較例9の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0076】
(比較例10)
中間層(B1)用の樹脂として、LDPEと防曇剤(3)を質量比が97.5/2.5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は0.5質量%であった。また、中間層(B2)用の樹脂として、LDPEと防曇剤(3)を質量比が80/20となるように混合して用いた。そのときの防曇剤濃度は4質量%であった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例10の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0077】
(比較例11)
ラミネート層側にコロナ放電処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例11の積層体を得た。
【0078】
(比較例12)
中間層(B1)用の樹脂として、LLDPE(2)と防曇剤(2)を質量比が95/5となるように混合して用いた。このときの中間層(B1)中の防曇剤濃度は1質量%であった。また中間層(B2)用樹脂として、LLDPE(1)と防曇剤(2)とを質量比75/26となるように混合して用いた。ことのときの中間層(B2)中の防曇剤濃度は5%であった。ラミネート層(A)およびヒートシール層(C)には防曇剤は添加しなかった。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例12の積層体を得た。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。
【0079】
(比較例13)
ラミネート層(A)用の樹脂として、LLDPE(2)を用い、中間層(B1)用の樹脂としてLLDPE(2)を用い、中間層(B2)用の樹脂としてLLDPE(1)を用い、防曇剤を添加せず、ヒートシール層(C)用の樹脂として、ポリプロピレン(1)と防曇剤(1)とを質量比が20/80となるように混合して用いた。このときのフィルム全体の防曇剤濃度は約1.1質量%であった。それらを各押出機に導入して実施例1と同様に250℃で押出したが、顕著な面荒れによる外観不良が発生し、良好なフィルムが得られなかった。
【0080】
上記実施例及び比較例で得られた積層フィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果は表中に示した。なお表中の各層の配合成分の含有量は、層中の質量比である。
【0081】
[エージング後のフィルム外観評価]
共押出法により、Tダイから押出されたフィルムの38℃、24時間エージングしたサンプルの外観を目視により確認した。
○:防曇剤ブリードによる白化は見られず
×:防曇剤ブリードによる白化で、フィルムの透明性悪化
【0082】
[ラミネート強度の評価]
ポリエステルフィルムと共押出法で得られたフィルム間のラミネート強度の挙動について、引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/minの速度で剥離したときの状態を以下の基準で評価した。
○:十分なラミネート強度の保持により、ポリエステルフィルムと共押出法で得られたフィルム間で強固な接着を確認。
×:ラミネート強度の不足により、ポリエステルフィルムと共押出法で得られたフィルム間で容易な剥離を確認。
【0083】
[防曇効果確認試験]
得られた積層体を、38℃環境下24時間エージングを実施した後、8cm×8cmに切り出して、40℃の水30mlを入れた71φインジェクション容器(東光株式会社製)とヒートシールした後(圧力64kgf/cup、温度160℃、時間1.0秒)、目視により以下の判定基準を利用して低温室3℃で3時間保管し、防曇効果を確認した。
○:フィルム表面に連続的な水膜が形成され、視認性良好
△:フィルム表面に細かい水滴付着も視認性良好
×:水滴付着有、視認性悪化
【0084】
[ヒートシール試験]
得られた積層体を、10cm×5cmに切り出し、厚さ0.3mmのポリプロピレン製シートと、ヒートシール面がポリプロピレンシート側に来るように重ね合わせて、ヒートシールテスタ(テスター産業製精密ヒートシーラー)を用いて、所定の温度に調節された上部ヒートシールバーが、積層体の最外層側にくるようにセットし、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。
【0085】
[剥離強度の評価]
ヒートシールされた部分と垂直方向に15mm幅の短冊状のサンプルを切り出し、引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/minの速度で剥離したときの最大強度を剥離強度とした。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
上記表から明らかなとおり、実施例1〜12の本発明の防曇性積層フィルムは、好適な防曇性と剥離強度とを実現できるものであった。また、好適なフィルム外観を有し、ラミネート強度も好適であった。一方、比較例1〜6、9〜11の積層フィルムは、好適な防曇性と剥離強度とを両立できないものであった。また、比較例7〜8、12〜13の積層フィルムは、積層フィルム自体の特性に劣るものであり、実用上の使用が困難なものであった。