【文献】
海老原祐介,ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウムを用いる曇点抽出/黒鉛炉原子吸光法による河川水中のクロム(III)とクロム(VI)の分別定量,分析化学,2007年,56/9,737-743
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(1)ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を含有する捕集剤含有液と、前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤と反応して発色する発色剤と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、を混合して濃度測定用試料を作製する工程と、
(2)前記濃度測定用試料の透過率及び/又は吸光度を測定する工程と、
(3)測定した透過率及び/又は吸光度から前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度を求める工程と、を含むジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定方法。
前記濃度測定用試料に、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩及び硫酸型アニオン性界面活性剤の少なくともいずれかを混合する請求項1に記載のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定方法。
【背景技術】
【0002】
メッキ排水、塗装排水等の重金属排水には、銅、クロム、亜鉛、鉛、マンガン、鉄、ニッケル、カドミウム等の重金属が含まれており、これらの重金属含有排水は水質汚濁防止法により適切な処理を行うことが義務付けられている。
【0003】
重金属含有排水の処理方法としては、ジチオカルバミン酸基を主体とするキレート系重金属捕集剤(ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤)を添加して、凝集沈殿処理を行う方法が知られている。これまでのジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を用いた処理は、重金属含有排水の水質変動を考慮して、重金属含有排水中の重金属量に対して、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を過剰に添加している。かかる処理は安定的な重金属の処理としては有効であるが、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を過剰に添加しているため、コストが嵩むことが問題であった。
【0004】
そこで特許文献1では、重金属含有排水の処理水中のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の残留濃度を管理することで、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の使用量とコストの最適化を行った。
【0005】
特許文献1には、排水中のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を二価の鉄イオンによって発色させて、その重金属捕集剤の濃度を吸光光度法によって測定することが記載されている。
【0006】
具体的には、まず、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を含有する試料に試薬を添加し、この試料を試薬中の塩化第一鉄によって発色させて被測定液とした後、この被測定液を透明な測定セル中に収容する。
次に、この被測定液に、測定セルを介して、発光体からの、吸収度合いの高い特定波長の光を透過させて、この被測定液に一部の光を吸収させた後、光源と対面に設置した受光体でこの透過光を受光し、このときの透過光強度を計測する。
続いて、このとき測定した透過光強度と、別に測定した、例えば透明液に対する特定波長の光の透過光強度とから吸光度(又は透過率)を求めることにより、この溶解物に関して予め既知濃度の試料により作成した、吸光度(又は透過率)と溶解物濃度との関係を示す検量グラフを用いて、試料中の溶解物濃度を求める。
【0007】
ここで、被測定液中の溶解物濃度を測定する場合、発光体及び受光体の光学方式は、(1)特許文献1に記載されているように、被測定液を収容した測定セルを挟むように対向して配置されている透過型と、(2)被測定液を収容した測定セルを挟むように、すなわち、特許文献2に記載されているように反射板と発光体および受光体とが対抗している反射型と、がある。
【0008】
そして、透過型測定及び反射型測定のいずれであっても、被測定液は試薬により発色されており、測定を繰り返す度に試薬と被測定物質との化合物が測定セルに付着し、測定セルが汚れることになる。
【0009】
したがって、測定セルに付着した汚れによって被測定光が減光されるために、透明液等の吸光度が徐々に大きくなり(又は透過率が徐々に小さくなり)検量グラフとの誤差が大きくなる。さらに、測定誤差の増大が制御結果に波及するという問題があった。このため、高頻度で物理洗浄または薬品洗浄せざるをえなかった。物理洗浄においては、洗浄を繰り返すことによる傷によって測定セルを交換しなければならなく、また薬品洗浄では、薬品の使用量が多量となる問題を伴ってしまう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定方法]
本発明のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定方法は、
(1)ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を含有する捕集剤含有液と、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤と反応して発色する発色剤と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、を混合して濃度測定用試料を作製する工程と、
(2)上記濃度測定用試料の透過率及び/又は吸光度を測定する工程と、
(3)測定した透過率及び/又は吸光度から前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度を求める工程と、を含む。
【0017】
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させることで、濃度測定用試料(被測定液)中の、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤と発色剤との反応により生成するキレート物質を良好に分散させることができる。例えば、試料に発色剤としての鉄及びジチオカルバミン酸のジチオカルバミド基のキレート物質の測定セルへの付着を抑制することができる。これにより、濃度測定における洗浄頻度及び洗浄剤の使用量を格段に削減することができる。また、測定セルへの汚れ付着による減光や散乱の影響を受けにくく、長期に渡って精度の良い測定を行うことができる。
以下、本発明の測定方法に係る(1)〜(3)の工程について説明する。
【0018】
(1)の工程:
本発明に係る測定方法は、例えば、重金属含有排水にジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を添加して、重金属含有排水中の重金属を当該捕集剤と反応させて重金属を不溶化させた後、固液分離した後の処理水(捕集剤含有液)中のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定に適用することができる。
なお、重金属含有排水に上記捕集剤を添加して生成した不溶化物を固液分離するための固液分離手段としては、沈降分離、濾過、遠心分離、膜分離などのいずれでもよい。
【0019】
この重金属含有排水としては、鉄鋼や半導体及び自動車製造のメッキ工程、清掃工場や発電所の洗煙、集塵工程、電池や硝子の製造工程、産業廃棄物処理場の埋め立て浸出水等からの排水が例示されるがこれに限定されない。また、この重金属含有排水中の重金属としては、水銀、カドミウム、砒素、鉛、6価クロム、セレン、銅、亜鉛、マンガン、2価鉄、ニッケル、3価鉄等が例示されるが、これに限定されない。
重金属含有排水中の重金属イオン濃度は、通常は約100ppm以下、例えば1〜50ppm程度であるが、これについても限定されない。
【0020】
ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤としては、ジチオカルバミン酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、シクロアルキルジチオカルバミン酸塩、ピペラジンビスジチオカルバミン酸塩、テトラエチレンペンタミンジチオカルバミン酸塩、ポリアミンのジチオカルバミン酸塩などが例示されるが、これに限定されない。なお、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
この固液分離後の処理水等に添加され、残留捕集剤と反応して発色する発色剤に含有される重金属化合物としては、Fe
2+、Fe
3+、Cu
2+、Zn
2+、Pb
2+、Ni
2+、Cd
2+、Mn
2+などの硫酸塩、塩酸塩等の水溶性塩が挙げられるが、発色の度合いや分析作業終了後の放流時に特段の処理が不要となることからFe
2+又はFe
3+の塩が好適である。
発色剤中の上記重金属の含有量は、5ppm以上であることが好ましく、25ppm以上であることがより好ましい。
【0022】
捕集剤含有液と発色剤とともに混合されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては下記式(I)で表されることが好ましい。
R−O−(EO)
m(PO)
n−H ・・・式(I)
(Rは炭素数12〜22(好ましくは18〜22)の直鎖又は分岐鎖の鎖式炭化水素基であり、EOはエチレンオキサイドを表し、POはプロピレンオキサイドを表し、n+mは10〜21の数である。)
【0023】
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、三洋化成工業社製サンノニックFN−100、サンノニックFN−140、サンノニックSS−120、セドランFF−180、セドランFF−200、セドランFF−210、ナクロアクティーCL−100、ナクロアクティーCL−120;花王社製、エマルゲン120、エマルゲン220、エマルゲン320P、エマルゲン420、エマルゲン2020G−HA;青木油脂工業社製FINESURF D−1310、FINESURF D−1310、BLAUNON EL−1512P、BLAUNON EL−1515、BLAUNON EL−1519P、BLAUNON EL−1521、BLAUNON CH−310、BLAUNON CH−310L、BLAUNON CH−313、BLAUNON CH−315L、BLAUNON SR−711、BLAUNON SR−715、BLAUNON SR−720、BLAUNON EN−914、BLAUNON EN−1513.5、BLAUNON EN−1520A等が挙げられる。
【0024】
捕集剤含有液、発色剤及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルの混合方法としては、(i)これらを同時に混合してもよいし、(ii)発色剤とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを混合し、さらに捕集剤含有液を混合してもよいし、(iii)捕集剤含有液とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを混合し、さらに発色剤を混合してもよいし、(iv)発色剤と捕集剤含有液とを混合し、さらにポリオキシアルキレンアルキルエーテルを混合してもよい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを添加するためのポンプを削減できるために経済的であること、あらかじめ発色剤と混合することにより、捕集剤含有液との混合性が向上することで、測定精度が良いことを考慮すると、(ii)発色剤とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを混合し、さらに捕集剤含有液を混合する態様が好ましい。
【0025】
濃度測定用試料中における捕集剤含有液、発色剤及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、それぞれ以下の含有量とすることが好ましい。
まず、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤は1〜100ppmであることが好ましく、3〜30ppmであることがより好ましい。1〜100ppmであることで、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤濃度を精度良く計測することができる。
また、発色剤は1〜10質量%であることが好ましく、3〜6質量%であることがより好ましい。1〜10質量%であることで、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤濃度を精度良く計測することができる。
さらに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは10〜6000ppmであることが好ましく、15〜100ppmであることがより好ましい。10〜6000ppmであることで、本発明の効果を経済的に実現することができる。
【0026】
本発明においては、濃度測定用試料に、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩及び硫酸型アニオン性界面活性剤の少なくともいずれかを混合することが好ましい。例えば、捕集剤含有液、発色剤及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルの少なくともいずれかに、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩及び硫酸型アニオン性界面活性剤の少なくともいずれかを混合することが好ましい。
アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩及び硫酸型アニオン性界面活性剤の少なくともいずれかを混合することにより、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの曇点を上昇させ、長期間安定させることができる。これにより、高温下でも試薬を安定させ発色物質のセルへの付着を抑制することができ、安定的に精度の良い濃度測定を行うことができる。
特に、測定セルの汚れの原因となる鉄およびジチオカルバミル基のキレート物質を分散し、他に設備を設けることなくセルへの汚れの付着を抑制することができる。
【0027】
アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩としては、三洋化成工業社製サンデットAL、サンデットALH;花王社製ペレックスSS−L、ペレックスSS−H等が挙げられる。
硫酸型アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンエステル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンエーテル硫酸、2−エチルヘキシル硫酸エステルナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウムが挙げられる。これらは、三洋化成工業社製サンデットEN、サンデットEND、サンデットONA、サンデットLNM、サンデットENR−20、サンデットET;花王社製エマール0、エマール0S、エマール10G、エマール2FG、エマール2F−30、エマール40、エマール20C、エマール270J、エマール20CM、エマールD−3−D、エマールD−4−D、ラムテルE−118B、ラムテルE−150、ラムテルWX、レベノールWX、エマール20T;ライオン社製サンノールLM−1130、サンノールLM−1140T、サンノールLMT−1430、サンノールTD−3130、サンノールPP−2030;日本BASF社製コリフォールSLS1216、コリフォールSLS、コリフォールSLSファイン等が挙げられる。
【0028】
また、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩及び硫酸型アニオン性界面活性剤の合計含有量は、1〜1600ppmであることが好ましく、20〜1000ppmであることがより好ましい。
【0029】
また、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩及び硫酸型アニオン性界面活性剤の合計含有量と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量との含有比は、0.1〜2.0であることが好ましく、0.3〜1.0であることがより好ましい。
【0030】
(2)及び(3)の工程
濃度測定用試料を作製した後は、当該試料の透過率及び/又は吸光度を測定する((2)の工程)。そして、予め求めておいた検量線(又は検量関係)に基づいて固液分離処理水中の捕集剤濃度を求めることが好ましい((3)の工程)。この検量線(又は検量関係)は、濃度既知の捕集剤水溶液に反応当量以上の重金属化合物を添加して測定した透過率及び/又は吸光度によって求められるものである。
【0031】
本発明に係る透過率及び/又は吸光度の測定は、発光体から被測定液(濃度測定用試料に相当)に向けて発せられた光は、一部の光が被測定液に吸収されつつ、この被測定液中を透過した後、発光体の反対側にある反射板で反射され、再度、一部の光が被測定液に吸収されつつ、この被測定液中を透過して、発光体側にある受光体にて受光されることで行われる。
もちろん、本発明では、被測定液の光の吸光度等を算出する必要性から、受光体は、発光体から発せられた光の被測定液に対する透過光強度を計測するとともに、被測定液による吸収が生じていない場合(例えば、被測定液に替えて透明液を使用する場合)の発光体からの光の透過光強度をも計測し、このことによって、この被測定液の光の吸光度等が算出される。そして、事前に作成した溶解物濃度と光の吸光度等との関係から、試料中の溶解物の濃度が算出される。
【0032】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。
図1は濃度測定装置の主要部を示しており、
図2はこの濃度測定装置の作用説明図である。
【0033】
濃度測定装置1は、重金属排水中に溶解する、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度を、吸光度や光の透過率を用いて簡便に測定するものである。この濃度測定装置1は、
図1で示されるように、内部に被測定液S1や調整液S0が流される測定部2と、測定部2の一側面に取り付けられ、測定部2側への発光と測定部2からの反射光の受光とを行う受発光部3と、測定部2に被測定液S1や調整液S0を供給する液供給ライン4と、測定部2からの被測定液S1や調整液S0を排出する液排出ライン5と、受発光部3からの出力が入力される演算処理装置6(
図3参照)とを有している。
なお、液供給ライン4には、チューブポンプ40とストレーナ41とが設けられている。
【0034】
測定部2は、
図1及び
図2で示されるように、左右幅の小さい箱状のものであり、左側面部が厚さt1=2mmの白い反射板21から形成され、この反射板21に対向する、内面黒色の右側面部22も厚さt2=2mmの板材で形成されているが、この右側面部22の中央部には、高さHが18mmで、幅Wが8mmの長方形状のアクリル製透明部23が形成されている。
【0035】
測定部2の前面部、後面部、上面部、下面部とも、所定厚さで内面が黒色の板材で形成されており、下面部には、液供給ライン4が連結され、上面部には、液排出ライン5が連結されている。測定部2の内面の左右幅サイズ、すなわち、被測定液S1等の流路の左右幅サイズTは、6mmに設定されている。
【0036】
また、この測定部2には、透明部23と、この透明部23を反射板21側に投影した被測定液S1の長方形流路部及び反射板21の長方形部とで、容量が0.7mLの測定セルGが形成されている。
なお、測定部2の内面の左右幅サイズTは、発光体31や受光体32の形状や性能、溶解物濃度によって変更できるようになっている。
【0037】
受発光部3は、測定部2側に開口30aが設けられたケーシング30内に、発光体31、受光体32、配線基盤等を収納したもので、電源供給用及び出力用のケーブル33が、ケーシング30からが突出するように設けられている。
【0038】
発光体31は、測定セルG内に光を発し、この光を被測定液S1中や調整液S0中に透過させるものである。この発光体31には、可視光域を含んだ光(白色光)を発する、例えば、発光ダイオード(LED)のような光源が使用される。
【0039】
受光体32は、発光体31から発せられた光の、被測定液S1や調整液S0からの透過光を受光して、これらの透過光の透過光強度を計測するものである。
この受光体32は、3つのフォトダイオードと、可視光域の光の波長帯を略3分割して得られる、レッド領域成分の光(以下赤色帯域光という)、グリーン領域成分の光(以下緑色帯域光という)、及びブルー領域成分の光(以下青色帯域光という)のみをそれぞれ透過させる3つのカラーフィルタF、すなわち、赤色(R)フィルタ、緑色(G)フィルタ、青色(B)フィルタとを有している。このように受光体32には、Rフィルタを備えたフォトダイオードD1と、Gフィルタを備えたフォトダイオードD2と、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3とを有したRGBカラーセンサが使用されており(
図3参照)、この受光体32により、被測定液S1等を透過した光のうち、各フィルタを透過した赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度が同時に計測される。
なお、Rフィルタは、赤色帯域光のうち赤色光を最も透過し、Gフィルタは、緑色帯域光のうち緑色光を最も透過し、Bフィルタは、青色帯域光のうち青色光を最も透過する。
【0040】
また、受光体32は、
図1や
図2で示されるように、測定セルGに対して、発光体31と同一側に配置されている。このため、受光体32は、発光体31から発せられた被測定液S1中の透過光が、被測定液S1を挟んで発光体31に対向する反射板21により反射され、被測定液S1中を再度透過したときの透過光を受光する。
【0041】
上記の場合、
図2で示されるように、発光体31と受光体32とは、発光体31の光軸K1が、反射板21に対してα=略45度をなすように向けられるとともに、受光体32の光軸K2が、反射板21に直交するように向けられ、かつ、発光体31の光軸K1の反射板21との交点Pと、受光体32の光軸の反射板21との交点とが略一致するように位置決めされている。このため、反射板21で反射される、発光体31からの主要光は、受光体32には達せず、受光体32は、発光体31からの主要光周りの周辺光による反射光の一部や反射板21で乱反射された光の一部を受光する。
【0042】
図3は測定部2内の回路図である。図中、符号D1は、Rフィルタを備えたフォトダイオードであり、符号D2は、Gフィルタを備えたフォトダイオードであり、符号D3は、Bフィルタを備えたフォトダイオードであり、これらが一体になって、受光体32を形成している。
【0043】
また、
図3中、符号Lは、発光体31となる発光ダイオード(LED)であり、符号C1,C2,C3は、各フォトダイオードD1,D2,D3用の主回路であり、符号O1,O2,O3は、各フォトダイオードD1,D2,D3用のオペアンプ(演算増幅器)である。
【0044】
受光体32から出力された各帯域光の透過光強度の信号は、オペアンプO1,O2,O3を通って、演算処理装置6に伝達される。演算処理装置6は、受光体32から出力された、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光との光の強度信号に基づいて、各帯域光についての時間平均強度を算出したり、特定色が吸収された光の透過光強度と吸収のない光の透過光強度とを用いて、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率を算出したり、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率から溶解物濃度を算出する演算部を有するとともに、溶解物の種類毎に、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、各吸光度や透過率と溶解物濃度との関係を示す表等を記憶する記憶部や、溶解物濃度等を表示する表示部を有している。
【0045】
つぎに、この濃度測定装置1を用いて試料中のジチオカルバミン酸を主成分とする重金属捕集剤の濃度を測定する手順について説明する。
【0046】
まず、塩化第一鉄3000mg/Lにポリオキシアルキレンアルキルエーテル(式(I):R−O−(EO)
m(PO)
n−H)を主成分とする非イオン界面活性剤(例えば三洋化成工業社製セドランFF−200を80g/L)、および試薬安定用のアニオン界面活性剤(アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩又は硫酸型アニオン性界面活性剤であり、例えば三洋化成工業社製サンデットLNMを80g/L)を添加し、かつ体積が50mLとなるように調整した発色試薬C1を作製する。
次に、ジチオカルバミン酸を主成分とする重金属捕集剤を溶解した一定量(10mL)の試料に、発色試薬C1を一定量(例えば0.2mL)添加後、この試料を充分に発色させて、被測定液S1(濃度測定用試料)を作る。この場合、被測定液S1の色は、溶解物(重金属捕集剤)の濃度によって濃淡が異なる。
【0047】
つづいて、光の吸収の生じない透明な調整液S0(例えば、純水や発色前の透明な試料)を、チューブポンプ40(例えば、EYELA製SMP21)を使用して、液供給ライン4から測定部2に、10mL/分の流量で3分間程度通水した後、通水を止め、1分間の間、発光体31からの光を、測定セルGの透明部23を介して、被測定液S1中に照射(発射)させる。
【0048】
このことにより、発光体31からの可視光域を含んだ光は、被測定液S1を透過して反射板21で反射された後、再度被測定液S1を透過して、受光体32により受光される。
この場合、受光体32は、発光体31からの被測定液S1の透過光を、RGBの3つのカラーフィルタFを介して受光するので、受光体32は、可視光域の光の波長帯を略3分割した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度を同時に計測する。
そして、演算処理装置6は、1分間にわたる受光体32からの出力値を平均して、被測定液S1による光の吸収が無い場合(透過率100%)の、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均の光強度を算出する。
【0049】
つぎに、試薬を加えて一定時間放置し、充分に発色した被測定液S1を、上記調整液S0の場合と同様に、測定部2(測定セルG)に10mL/分の流量で3分間通水して、通水を止め、その後1分間の間、発光体31からの光を、被測定液S1中に透過させて、受光体32により受光させる。
【0050】
受光体32は、受光時に、被測定液S1により一部の光の吸収がなされた、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの光の強度を計測する。
演算処理装置6は、1分間にわたる受光体32からの出力値を平均して、被測定液S1により一部の光の吸収がなされた、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均光強度を算出した後、透過率100%の調整液S0を用いて計測された、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの平均光強度を用いて、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光についての、それぞれの吸光度(又は透過率)を算出する。
【0051】
そして、演算処理装置6は、特定の溶解物(重金属捕集剤)について記憶している、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光についての、それぞれの吸光度(又は透過率)と溶解物の濃度との関係から、現在の被測定液S1中のその溶解物の濃度を算出して表示する。
【0052】
ここで、被測定液S1は、例えば、溶解物の濃度に比例するような色の濃さを示しており、発色した色光の補色光を、この濃さに比例する割合で吸収する。したがって、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)と、被測定液S1中の溶解物の濃度との関係を事前に求めておけば、被測定液S1を透過した、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光の、それぞれの吸光度(又は透過率)により、被測定液S1中の溶解物濃度は容易に算出できる。
【0053】
これらの操作を繰り返し透過率100%測定時の青色帯の光の強度を記憶しておくことで、測定セルGの汚れの度合いを評価することができる。
なお、被測定液S1が、試薬の添加により、例えば黄色に発色している場合は、この被測定液S1は、赤色帯域光と緑色帯域光をほとんど吸収せず、補色光である青色帯域光のみを吸収すると考えられるので、光の強度は、Bフィルタを備えたフォトダイオードD3により計測される青色帯域光のみを考慮すればよい。
【0054】
また、被測定液S1が、例えば、青色に発色している場合は、この被測定液S1は青色帯域光をほとんど吸収せず、赤色帯域光と緑色帯域光を吸収すると考えられるので、光の強度は、RフィルタとGフィルタとを備えたフォトダイオードD1,D2により計測される赤色帯域光と緑色帯域光の強度を考慮すればよい。
【0055】
[2.濃度測定用試薬]
本発明の濃度測定用試薬は、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度を測定するために使用され、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤と反応して発色する発色剤と既述のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有する。
ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤、発色剤、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル、並びにこれらの含有量については既述のとおりである。
【0056】
また、本発明の濃度測定用試薬は、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩及び硫酸型アニオン性界面活性剤の少なくともいずれかを含有することが好ましい。アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩及び硫酸型アニオン性界面活性剤、並びにこれらの含有量については、既述のとおりである。
【0057】
本発明の濃度測定用試薬では、発色剤とともに含有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルによって、鉄およびジチオカルバミル基のキレート物質を良好に分散させることができる。このため、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定では、試料に発色試薬を添加することによって生成された、鉄およびジチオカルバミル基のキレート物質が測定セルへ付着するのを抑制することができ、このことによって、濃度測定における洗浄頻度および洗浄剤の使用量の削減や、セルへの汚れ付着による減光や散乱の影響を受けずいつも精度の良い測定を行うことができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
[測定例1]ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有する塩化第一鉄によるジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定
【0060】
ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の発色試薬である塩化第一鉄および鉄イオンの酸化防止用の塩酸を純水に溶解して、塩化第一鉄濃度が3000mg/L、塩酸20mmol/Lとなるようにそれぞれ調整したものを発色試薬C1とした。
【0061】
さらに、式(I)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(Rの炭素数が12〜13、n+mが10〜14)である、三洋化成工業社製サンノニックFN−100(界面活性剤N1)、及びサンノニックFN−140(界面活性剤N2)、並びに、式(I)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(Rの炭素数が18〜22、n+mが20〜21)である、三洋化成工業社製セドランFF−200(界面活性剤N3)、及びセドランFF−210(界面活性剤N4)、をそれぞれ4gとり、これらに塩化第一鉄を加え塩化第一鉄の濃度が3000mg/Lかつ体積が50mLとなるようにそれぞれ調整したものを発色剤C2−1〜C2−4とした。
【0062】
重金属捕集剤(栗田工業社製ウェルクリン)を純水に溶解して、ジカリウム=ピペラジン−1,4ビス(カルボジチアート)濃度が、100mg/Lとなるように調整した試料を準備し、これに、発色試薬C1(界面活性剤なし)、及び発色剤C2−1〜C2−4(界面活性剤N1〜N4の何れかを含有)をそれぞれ添加し、これらの試料を発色させて、実施例1〜4(界面活性剤N1〜N4の何れかを含有)の被測定液S1、及び比較例(界面活性剤なし)の被測定液S1を作製した。各実施例で用いた界面活性剤は下記表1に示すとおりである。
【0063】
つづいて、これらの被測定液S1の吸光度を、濃度測定装置1を使用した、濃度測定方法により、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とについて、それぞれ測定した。
この場合、測定セルGに試薬添加前の透明な試料を通液した際の発光体31からの光を反射板21で反射して、この反射光を受光体32で受光した場合の各帯域光の強度を初期受光強度とし、初期受光強度=透過率100%とした。
【0064】
図4は、上記操作を繰り返したときの、測定開始時の青色帯の受光強度(初期受光強度)、及び初期受光強度を100%としたときの各測定回の受光強度を示しており、測定開始時よりもセルがどれ程汚れたかを示す。
また、下記表1は、各実施例及び比較例によるセルの汚れ抑制効果を表にまとめたものである。
【0065】
【表1】
【0066】
図4及び表1から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの添加されていない発色剤(比較例)の場合は28回程度で洗浄が必要となるが、界面活性剤を用いた場合には、少なくとも33回まで洗浄が必要ないことが分かる。したがって、実施例1〜4によれば、洗浄回数および洗浄薬品使用量を大きく低減できる。特に、Rの炭素数が18〜22の実施例3及び4は汚れ難く、洗浄せずに従来のおおよそ2倍測定することができることが分かる。
以上より、鉄とジチオカルバミン基とのキレートに対しては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることが好ましく、特にRの炭素数が18〜22のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることが好ましいことがわかる。
【0067】
[測定例2]ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびアニオン性界面活性剤を含有する塩化第一鉄による、ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定
【0068】
Rの炭素数が18〜22のポリオキシアルキレンアルキルエーテルである三洋化成工業社製セドランFF−200を4gとり、これに塩化第一鉄および塩酸を加え、塩化第一鉄の濃度が3000mg/L、塩酸20mmol/Lかつ体積が50mLとなるようにそれぞれ調整したものを発色剤C3とした。
【0069】
さらに、発色剤C3に、下記の試薬安定用界面活性剤を4g添加したものを発色剤C4−1〜C4−6とした。
試薬安定用界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤として、既述の式(I)のRの炭素数が12〜13、nが10〜14、mが0のポリオキシアルキレンアルキルエーテルである、三洋化成工業社製サンノニックFN−100(界面活性剤N5)、及びサンノニックFN−140(界面活性剤N6);アニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(C12〜15、EO3)である三洋化成工業社製サンデットEND(界面活性剤A1)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(C9〜14)である三洋化成工業社製サンデットALH(界面活性剤A2)、アルキル硫酸エステルナトリウム(C10〜18)である三洋化成工業社製サンデットLNM(界面活性剤A3)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(C12〜13、EO1〜2.5)である花王社製エマール20CM(界面活性剤A4)を使用した。
【0070】
栗田工業社製重金属捕集剤ウェルクリンを純水に溶解して、ジカリウム=ピペラジン−1,4ビス(カルボジチアート)濃度が、100mg/Lとなるように調整した試料を準備し、これに、発色剤C3(安定用界面活性剤なし)、及び発色剤C4−1〜C4−6(安定用界面活性剤N5,N6及びA1〜A4を含有)をそれぞれ添加し、これらの試料を発色させて、実施例5(安定用界面活性剤なし)の被測定液S1、及び実施例6〜11(安定用界面活性剤N5,N6及びA1〜A4を含有)の被測定液S1を作製した。各実施例で用いた安定用界面活性剤は下記表2に示すとおりである。
【0071】
つづいて、この被測定液S1の吸光度を、濃度測定装置1を使用した、この濃度測定方法により、赤色帯域光と緑色帯域光と青色帯域光とについて、それぞれ測定した。
この場合、測定セルGに試薬添加前の透明な試料を通液した際の発光体31からの光を反射板21で反射して、この反射光を受光体32で受光した場合の各帯域光の強度を初期受光強度とし、初期受光強度=透過率100%とした。
【0072】
図5は、上記操作を繰り返したときの、測定開始時の青色帯の受光強度(初期受光強度)、及び初期受光強度を100%としたときの各測定回の受光強度を示しており、測定開始時よりもセルがどれ程汚れたかを示す。
また、表2は、作製した発色試薬の曇点をまとめたものである。
なお、曇点は、恒温水槽で発色試薬を温め、発色試薬の温度を確認しながら、外観を目視確認して、試薬作製直後、及び常温で30日放置後のそれぞれについて測定した。
【0073】
【表2】
【0074】
図5において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルに対して、アニオン性界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムを添加したものは、汚れ抑制効果が持続している。これにより、長期的に安定してセルへの汚れ付着を防止することができ、安定的に濃度測定できるといえる。
また、表2から、安定用界面活性剤のなかでもアニオン性界面活性剤を添加したものは曇点が高く、酸性液体中でも安定していることがわかる。
試料中のジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度を測定するにあたり、洗浄回数が格段に少なく、精度良く当該濃度の測定ができるジチオカルバミン酸系重金属捕集剤濃度の測定方法等を提供する。
(1)ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤を含有する捕集剤含有液と、前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤と反応して発色する発色剤と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、を混合して濃度測定用試料を作製する工程と、(2)前記濃度測定用試料の透過率及び/又は吸光度を測定する工程と、(3)測定した透過率及び/又は吸光度から前記ジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度を求める工程と、を含むジチオカルバミン酸系重金属捕集剤の濃度測定方法等である。