(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962968
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】顕微鏡の調整方法及び顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/08 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
G02B21/08
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-91467(P2012-91467)
(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公開番号】特開2013-221960(P2013-221960A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100140800
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 丈世
(72)【発明者】
【氏名】小山 元夫
(72)【発明者】
【氏名】大内 由美子
【審査官】
瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−091809(JP,A)
【文献】
特開2006−162790(JP,A)
【文献】
特開平06−194595(JP,A)
【文献】
特開平04−077707(JP,A)
【文献】
特開平11−038299(JP,A)
【文献】
特開2002−116361(JP,A)
【文献】
特開昭49−053422(JP,A)
【文献】
特開2006−189741(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0168159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 7/18 − 7/24
G02B 9/00 − 17/08
G02B 19/00 − 21/36
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光をリレー光学系でリレーして前記光源の共役像を対物レンズの入射瞳面の近傍に形成することにより、前記光を前記対物レンズで略平行光にして試料に照射する照明光学系を有する顕微鏡において、
前記対物レンズの前記入射瞳面の位置に対する前記光源の前記共役像の位置のずれを検出し、前記ずれを少なくすることにより前記試料に照射される光を平行光に近づけることを特徴とする顕微鏡の調整方法。
【請求項2】
前記照明光学系の光軸と前記光源の光軸とを略一致させた状態で、前記対物レンズから出射した前記光を集光して形成した前記光のスポット像を検出し、前記スポット像の径が所定の値以下になるように調整することにより前記試料に照射される光を平行光に近づけることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡の調整方法。
【請求項3】
前記照明光学系の光軸に対して前記光源の光軸を偏心させた状態で、前記試料で反射した前記光を前記対物レンズで集光し、さらに、前記対物レンズで集光された前記光を集光して前記対物レンズの前記入射瞳面と共役な位置に配置された検出器で検出されるように調整することにより前記試料に照射される光を平行光に近づけることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡の調整方法。
【請求項4】
前記リレー光学系を構成するレンズの少なくとも一部、又は、前記光源を、前記照明光学系の光軸方向に移動させて調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の顕微鏡の調整方法。
【請求項5】
光源から放射された光をリレーして、前記光源の共役像を形成するリレー光学系と、前記光源の共役像の近傍に入射瞳面が位置するように配置され、前記リレー光学系でリレーされた前記光を試料に照射する対物レンズと、を含む照明光学系を有する顕微鏡であって、
前記対物レンズを透過した前記光を集光する集光レンズと、前記集光レンズの焦点面に配置され、前記集光レンズで集光された前記光のスポット像を検出する検出器と、を有する調整装置を着脱する取付部と、
前記調整装置を前記取付部に装着して前記光源の光軸と前記照明光学系の光軸とが略一致している状態で、前記試料に照射される光を平行光に近づけるための調整を行う調整部と、を備えたことを特徴とする顕微鏡。
【請求項6】
光源から放射された光をリレーして、前記光源の共役像を形成するリレー光学系と、前記光源の共役像の近傍に入射瞳面が位置するように配置され、前記リレー光学系でリレーされた前記光を試料に照射する対物レンズと、を含む照明光学系と、
前記試料を介して前記対物レンズと反対側に配置されたコンデンサレンズを含む透過照明光学系と、を有する顕微鏡であって、
前記対物レンズを透過した前記光を集光する前記コンデンサレンズの瞳位置近傍に、前記光のスポット像を検出する検出器を有する調整装置を着脱する取付部と、
前記調整装置を前記取付部に装着し前記光源の光軸と前記照明光学系の光軸とが略一致している状態で、前記試料に照射される光を平行光に近づけるための調整を行う調整部と、を備えたことを特徴とする顕微鏡。
【請求項7】
前記調整部は、前記検出器で検出される前記スポット像の径が所定の値以下になるように調整することを特徴とする請求項5又は6に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記調整部は、前記リレー光学系を構成するレンズの少なくとも一部を前記照明光学系の光軸に沿って移動させることにより前記調整を行うことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記調整部は、前記光源を前記照明光学系の光軸方向に移動させることにより前記調整を行うことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項10】
光軸から偏心した位置に配置された光源から放射された光をリレーして、前記光源の共役像を形成するリレー光学系と、前記光源の共役像の近傍に入射瞳面が位置するように配置され、前記リレー光学系でリレーされた前記光を試料に照射する対物レンズと、を含む照明光学系を有する顕微鏡であって、
前記リレー光学系を通過する前記光の一部を透過し、残りを反射するビームスプリッタと、
前記試料で反射した前記光を前記対物レンズで集光して前記リレー光学系に導き、前記リレー光学系に入射した前記光のうち、前記ビームスプリッタで反射した前記光を集光する集光レンズと、
前記入射瞳面と略共役な位置に配置され、前記集光レンズで集光された前記光を検出する検出器と、
前記試料に照射される光を平行光に近づける調整を行うために、前記試料で反射した前記光が前記検出器で検出されるように調整する調整部と、を備えたことを特徴する顕微鏡。
【請求項11】
前記調整部は、前記リレー光学系を構成するレンズのうち、前記ビームスプリッタよりも光源側にあるレンズの少なくとも一部を前記照明光学系の光軸に沿って移動させることにより前記調整を行うことを特徴とする請求項10に記載の顕微鏡。
【請求項12】
前記調整部は、前記光源を前記照明光学系の光軸方向に移動させることにより前記調整を行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の顕微鏡。
【請求項13】
前記ビームスプリッタ、前記集光レンズ及び前記検出器のうち、少なくとも前記ビームスプリッタを挿脱可能又は着脱可能に構成することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡の調整方法及び顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、顕微鏡の一種である全反射蛍光顕微鏡10は、照明光学系の光軸から偏心した位置Aに配置された光源1から放射された照明光LIを、対物レンズ5を介して略平行光束にした状態で試料台(カバーガラス6)とこのカバーガラス6上に載置された試料(図示せず)との境界面に照射して全反射させ、この全反射面の裏側に染み出す照明光(エバネッセント光)により試料を励起し、この励起により発生する蛍光LOを観察するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような全反射蛍光顕微鏡10において、光源1の光軸とこの全反射蛍光顕微鏡10の照明光学系の光軸とが一致するように光源1を配置すると(
図5の位置B)、対物レンズ5を通過した照明光LI′は光軸上を進み、
図5に示すように、十分な遠方に配置されたスクリーン50にスポット像として投射される。ここで、例えばリレー光学系2を構成するレンズの一部を光軸方向に移動させてスクリーン50上のスポット像の径が所定の値以下になる(最も小さくなる)ように調整を行うと、結果としてリレー光学系2により対物レンズ5の入射瞳面Pの近傍に集光された光源1の共役像が光軸に沿って移動してこの入射瞳面Pと略一致することになり、これにより、試料とカバーガラス6の境界面に照射される照明光LI′をコリメートすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−189741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような調整方法では、スクリーン50上のスポット像の径を目視して調整するため、照明光のコリメート精度に限界があるという課題があった。また、照明光として紫外光や赤外光を用いる場合には、目視で確認することができず、この調整方法を用いることはできない。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、対物レンズを介して試料に照射される照明光を高精度にコリメートすることができる顕微鏡の調整方法、及び、この調整方法を実行可能な顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る顕微鏡の調整方法は、光源からの光をリレー光学系でリレーしてこの光源の共役像を対物レンズの入射瞳面の近傍に形成することにより、前記光を対物レンズで略平行光にして試料に照射する照明光学系を有する顕微鏡において、対物レンズの入射瞳面の位置に対する光源の共役像の位置のずれを検出し、このずれを少なくすることにより試料に照射される光を平行光に近づけることを特徴とする。
【0008】
このような顕微鏡の調整方法は、照明光学系の光軸と光源の光軸とを略一致させた状態で、対物レンズから出射した光を集光して形成した光のスポット像を検出し、このスポット像の径が所定の値以下になるように調整することにより試料に照射される光を平行光に近づけることが好ましい。
【0009】
また、このような顕微鏡の調整方法は、照明光学系の光軸に対して光源の光軸を偏心させた状態で、試料で反射した光を対物レンズで集光し、さらに、この対物レンズで集光された光を集光して対物レンズの入射瞳面と共役な位置に配置された検出器で検出されるように調整することにより試料に照射される光を平行光に近づけることが好ましい。
【0010】
また、このような顕微鏡の調整方法は、リレー光学系を構成するレンズの少なくとも一部、又は、光源を、照明光学系の光軸方向に移動させて調整することが好ましい。
【0011】
また、第1の本発明に係る顕微鏡は、光源から放射された光をリレーして、光源の共役像を形成するリレー光学系と、光源の共役像の近傍に入射瞳面が位置するように配置され、リレー光学系でリレーされた光を試料に照射する対物レンズと、を含む照明光学系を有する顕微鏡であって、対物レンズを透過した光を集光する集光レンズと、集光レンズの焦点面に配置され、集光レンズで集光された光のスポット像を検出する検出器と、を有する調整装置を着脱する取付部と、調整装置を取付部に装着して光源の光軸と照明光学系の光軸とが略一致している状態で、試料に照射される光を平行光に近づけるための調整を行う調整部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第2の本発明に係る顕微鏡は、光源から放射された光をリレーして、光源の共役像を形成するリレー光学系と、光源の共役像の近傍に入射瞳面が位置するように配置され、リレー光学系でリレーされた光を試料に照射する対物レンズと、を含む照明光学系と、試料を介して対物レンズと反対側に配置されたコンデンサレンズを含む透過照明光学系と、を有する顕微鏡であって、対物レンズを透過した光を集光する
コンデンサレンズの瞳位置近傍に、光のスポット像を検出する検出器を有する調整装置を着脱する取付部と、調整装置を取付部に装着し光源の光軸と照明光学系の光軸とが略一致している状態で、試料に照射される光を平行光に近づけるための調整を行う調整部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
このような顕微鏡において、調整部は、検出器で検出されるスポット像の径が所定の値以下になるように調整することが好ましい。
【0014】
また、このような顕微鏡において、調整部は、リレー光学系を構成するレンズの少なくとも一部を照明光学系の光軸に沿って移動させることにより調整を行うことが好ましい。
【0015】
また、このような顕微鏡において、調整部は、光源を照明光学系の光軸方向に移動させることにより調整を行うことが好ましい。
【0016】
また、第3の本発明に係る顕微鏡は、光軸から偏心した位置に配置された光源から放射された光をリレーして、光源の共役像を形成するリレー光学系と、光源の共役像の近傍に入射瞳面が位置するように配置され、リレー光学系でリレーされた
光を試料に照射する対物レンズと、を含む照明光学系を有する顕微鏡であって、リレー光学系を通過する光の一部を透過し、残りを反射するビームスプリッタと、試料で反射した光を対物レンズで集光してリレー光学系に導き、このリレー光学系に入射した光のうち、ビームスプリッタで反射した光を集光する集光レンズと、入射瞳面と略共役な位置に配置され、集光レンズで集光された光を検出する検出器と、試料に照射される光を平行光に近づける調整を行うために、試料で反射した光が検出器で検出されるように調整する調整部と、を備えたことを特徴する。
【0017】
このような顕微鏡において、調整部は、リレー光学系を構成するレンズのうち、ビームスプリッタよりも光源側にあるレンズの少なくとも一部を照明光学系の光軸に沿って移動させることにより調整を行うことが好ましい。
【0018】
また、このような顕微鏡において、調整部は、光源を照明光学系の光軸方向に移動させることにより調整を行うことが好ましい。
【0019】
また、このような顕微鏡は、ビームスプリッタ、集光レンズ及び検出器のうち、少なくともビームスプリッタを挿脱可能又は着脱可能に構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、高精度にコリメートすることができる顕微鏡の調整方法、及び、この調整方法を実行可能な顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】全反射蛍光顕微鏡の構成を示す説明図である。
【
図2】第1の実施形態に係る調整装置が取り付けられた全反射蛍光顕微鏡の構成を示す説明図である。
【
図3】第1の実施形態の変形例の構成を示す説明図である。
【
図4】第2の実施形態に係る調整装置が取り付けられた全反射蛍光顕微鏡の構成を示す説明図である。
【
図5】全反射蛍光顕微鏡の従来の調整方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、
図1を用いて顕微鏡の一種である全反射蛍光顕微鏡10の構成について説明する。この全反射蛍光顕微鏡10は、光源1から放射された照明光LIを試料台(以下「カバーガラス6」と呼ぶ)上に載置された試料Oに照射する照明光学系11と、この照明光LIにより励起された試料Oから発生する蛍光LOをCCD等からなる撮像素子8の撮像面上に集光する結像光学系12と、から構成される。なお、この
図1における光源1は、別の光源装置から放射された照明光をこの照明光学系11に導く光ファイバーの端面でも良い。
【0023】
結像光学系12は、カバーガラス6側から順に、対物レンズ5と、ダイクロイックミラー4と、第2対物レンズ7と、を有し、この第2対物レンズ7の像側の焦点面が撮像素子8の撮像面と略一致するように配置されている。なお、この全反射蛍光顕微鏡10において、試料Oはカバーガラス6の対物レンズ5と反対側の面に載置される。なお、対物レンズ5の物体側の面とカバーガラス6の対物レンズ5側の面との間にはこのカバーガラス6とほぼ同じ屈折力を有するオイルIOが満たされている。
【0024】
また、照明光学系11は、ダイクロイックミラー4の側方に配置され、光源1側から順に、リレー光学系2と、遮光部材3とから構成されている。なお、照明光学系11は、ダイクロイックミラー4及び対物レンズ5を結像光学系12と共用している。このような照明光学系11において、リレー光学系2は光源1の像を対物レンズ5の入射瞳面P若しくはその近傍に形成するために、その光源1側の焦点面はこの光源1(光ファイバーの場合はその射出端)と略一致するように配置されている。また、遮光部材3は、対物レンズ5の入射瞳面Pの近傍でこの照明光学系11の光路の断面の略半分を遮光するように配置されている。さらに、ダイクロイックミラー4は、光源1からの照明光LIを対物レンズ5側に反射して結像光学系12の光路に導き、また、試料Oから射出する蛍光LOを透過させて第2対物レンズ7に導くように構成されている。
【0025】
この全反射蛍光顕微鏡10において、光源1を、照明光学系11の光軸と直交する面内で移動させて所望量光軸から離した(偏心させた)状態で照明光LIを放射させると、リレー光学系2でリレーされて対物レンズ5の入射瞳面P若しくはその近傍の光軸から離れた位置に光源1の像を形成し、さらに、この照明光LIはダイクロイックミラー4に入射して対物レンズ5側に反射する。そして、この照明光LIは、対物レンズ5によりコリメートされて略平行光束となりカバーガラス6に照射される。このとき、光源1が偏心して配置されていることから、この照明光LIはカバーガラス6に対して所定の入射角を有して斜めに照射されるが、この入射角が試料Oとカバーガラス6との境界面6aの臨界角を超えているときは、この境界面6aで全反射し、対物レンズ5で集光されてダイクロイックミラー4で反射され、対物レンズ5の入射瞳面Pに再び集光される。そして、この位置に上述した遮光部材3を配置することにより、全反射した照明光LIが結像光学系12に入射して迷光になることを防止することができる。
【0026】
照明光LIが全反射するカバーガラス6と試料Oとの境界面6aでは、試料O側に光(エバネッセント光)が染み出しエバネッセン場を形成し、試料O側の厚さ数百ナノメートルの範囲が照明される。このエバネッセント光により励起された試料Oからは蛍光LOが発生する。この位置に対物レンズ5の物体側の焦点面が位置するように調整すると、この蛍光LOは対物レンズ5で集光されて略平行光束となってダイクロイックミラー4を通過し、第2対物レンズ7により撮像素子8の撮像面に集光され、蛍光LOによる試料Oの像が形成される。このように、この全反射蛍光顕微鏡10によると、背景に光ノイズの少ない非常に暗い状態で試料Oを励起することができるので、コントラストの高い像を取得することができる。
【0027】
このような全反射蛍光顕微鏡10において、上述した境界面6aで染み出すエバネッセント光の量は、この境界面6aに入射する照明光LIの入射角に依存する。そのため、境界面6aに入射する照明光LIを平行光に近づける必要がある。この全反射蛍光顕微鏡10には、光源1若しくはリレー光学系2を構成するレンズの少なくとも一部を光軸方向に移動させて境界面6aに照射される照明光LIを平行光に近づけるための調整を行う調整部13が設けられている。それでは、上述した構成の全反射蛍光顕微鏡10において、対物レンズ5で集光されて境界面6aに照射される照明光LIを略平行光とするための調整方法について説明する。
【0028】
[第1の実施形態]
図2は、全反射蛍光顕微鏡10に第1の実施形態に係る調整装置20を取り付けて調整を行う構成を示している。この調整装置20は、
図2に示すように、カバーガラス6を挟んで対物レンズ5の反対側に、この全反射蛍光顕微鏡10の筐体に設けられた取付部9を介して取り付けるように構成されており、カバーガラス6側から順に、正の屈折力を有する集光光学系21と、この集光光学系21の焦点面に位置するように配置された検出器22と、を有している。
【0029】
上述したように、光源1の光軸とこの全反射蛍光顕微鏡10の照明光学系11の光軸とが略一致するように光源1を配置すると(
図2の位置B)、対物レンズ5を通過した照明光は光軸上を進む。このとき、リレー光学系2により形成された光源1の像が対物レンズ5の入射瞳面Pと略一致していると、対物レンズ5から出射した照明光LI′は略平行光束となる。調整装置20の検出器22は集光光学系21の焦点面と略一致するように配置されているため、対物レンズ5を出射した照明光LI′が略平行光束であれば、検出器22で検出される照明光LI′のスポット像の径は所定の値以下になる(最も小さくなる)。すなわち、調整装置20の検出器22で検出されるスポット像の径が所定の値以下になる(最も小さくなる)ように、調整部13により、リレー光学系2を構成するレンズの少なくとも一部を光軸に沿って移動させることにより、境界面6aに照射される照明光LI′を略平行光束とすることができる。あるいは、調整部13により、光源1の位置を照明光学系11の光軸方向に移動させても良い。
【0030】
なお、光源1は不図示のレーザダイオード(LD)とファイバーから構成され、点光源を形成するためにはシングルモードファイバーを用いることが好ましい。また、レーザ光を出射する光源であれば、LD以外でも使用可能である。レーザ波長としては、例えば、可視域では、488nm、561nm等が用いられ、赤外域では、730nm、785nmが用いられ、紫外域では、375nm、405nmが用いられる。
【0031】
ここで、調整装置20を構成する集光光学系21は、
図2に示すように、少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズと、少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズとを有することが好ましい。このような構成とすることで、この集光光学系21を、その全長に対して焦点距離を長くすることが可能となり、集光光学系21から検出器22までの機械的な間隔が多少の誤差を有していたとしても、照明光LI′の光束の集光点を検出器22上に作ることで、十分な精度でコリメート状態にすることができる。なお、この集光光学系21の全系の焦点距離は対物レンズ5の焦点距離の2倍以上であれば良い。
【0032】
以上のように、この第1の実施形態に係る調整方法によると、集光光学系21と検出器22とを有するコンパクトで簡単な構成の調整装置20を、全反射蛍光顕微鏡10に取り付け、検出器22で検出される照明光LI′のスポット像の径が所定の値以下になる(最も小さくなる)ように調整部13によりリレー光学系2の位置(又は光源1の位置)を調整するという簡単な操作で精度良く、境界面6aに照射される照明光LI,LI′を略平行光束とすることができる。この場合、光源1から放射される照明光LI,LI′が紫外光や赤外光のような不可視光であっても、検出器22の検出範囲の波長であれば調整を行うことができる。なお、この調整装置20は、上述したように全反射蛍光顕微鏡10の筐体に対して着脱可能であることが望ましい。あるいは、この全反射蛍光顕微鏡10の筐体内に取り付けられ、照明光学系11の光路上から、少なくとも集光光学系21を挿脱可能に構成しても良い。
【0033】
なお、この全反射蛍光顕微鏡10においては、上述した調整が終了したときは、
図1に示すように、光源1を全反射蛍光顕微鏡10の光軸に直交する面内でこの光軸から離すように移動させることで(
図2の位置A)、境界面6aに対して照明光LIを斜めに(全反射する角度で)照射することができる。
【0034】
[第1の実施形態の変形例]
図3に示すように、カバーガラス6を挟んだ対物レンズ5の反対側に、カバーガラス6に載置された試料を透過照明するための照明装置60が設けられている場合には、この照明装置60に上述した検出器22を装着することにより、同様の方法で照明光の調整を行うことができる。この
図3に示す照明装置60は、透過照明用の光源61を有し、この光源61側から順に、集光レンズ62と、この集光レンズ62の焦点面と略一致するように配置された開口絞り63と、開口絞り63を通過した照明光を略平行光にするコンデンサレンズ64と、コンデンサレンズ64を出射した略平行光をカバーガラス6上の試料に照射するミラー65と、を有して構成されている。そこで、コンデンサレンズ64の入射瞳の位置に相当する開口絞り63の付近の筐体に取付部9′を設け、この取付部9′を介して上述した検出器22と同じ検出器22′を有する調整装置20′を装着することにより、照明光LI′のスポット像を検出することができる。なお、検出器22′を配置する代わりに、この位置に、照明光LI′の像を投影するスクリーンを配置し、このスクリーンに投影されたスポット像をCCD等を有する撮像装置で撮像して、そのスポット像の径を検出するように構成することも可能である。
【0035】
[第2の実施形態]
図4は、全反射蛍光顕微鏡10に第2の実施形態に係る調整装置30を取り付けて調整を行う構成を示している。この調整装置30は、
図4に示すように、リレー光学系2の中に配置されるビームスプリッタ31と、このビームスプリッタ31で反射された光を集光する集光レンズ32と、集光レンズ32で集光された光を検出する検出器33と、から構成されている。ここで、検出器33は、対物レンズ5の入射瞳面Pと共役な位置に配置されている。なお、第1の実施形態で用いた遮光部材3は、この第2の実施形態では設けなくても良い。
【0036】
このような状態で光源1から照明光LIが放射されると、この照明光LIはリレー光学系2に入射し、一部の光がビームスプリッタ31を透過し、このリレー光学系2でリレーされて対物レンズ5の瞳面P若しくはその近傍の光軸から離れた位置に光源1の像を形成する。さらに、この照明光LIはダイクロイックミラー4に入射して対物レンズ5側に反射し、対物レンズ5を介してカバーガラス6に照射される。そして、カバーガラス6を透過した照明光LIはカバーガラス6の対物レンズ5と反対側の面(すなわち、上述した境界面6a)で全反射し、対物レンズ5で集光されてダイクロイックミラー4で反射され、対物レンズ5の瞳面Pに再び集光される。この第2の実施形態においては、照明光学系11に遮光部材3が設けられていないため、入射瞳面Pを透過した照明光LIは、リレー光学系2に入射し、一部の光がビームスプリッタ31で反射して集光レンズ32により検出器33に集光される。
【0037】
上述したように対物レンズ5の入射瞳面Pと検出器33とは共役な位置に配置されているため、対物レンズ5を出射した照明光LIが略平行光束であれば、照明光LIのスポット像は検出器33で検出される。すなわち、調整装置30の検出器33でスポット像が検出されるように、調整部13により、リレー光学系2を構成するレンズのうち、ビームスプリッタ31よりも光源1側のレンズを光軸に沿って移動させることにより、境界面6a(この境界面6aに配置されたミラー34)に照射される照明光LIを略平行光束とすることができる。調整部13により、リレー光学系2を構成するレンズのうち、ビームスプリッタ31よりも対物レンズ5側のレンズを光軸に沿って移動させて調整することも可能であるが、上述したように、検出器33は対物レンズ5の入射瞳面PIと共役な位置に配置されているため、この関係に影響を与えない、ビームスプリッタ31よりも光源1側のレンズを移動させる方が望ましい。また、調整部13により、光源1を光軸方向に移動させて調整しても良い。
【0038】
このように、この第2の実施形態に係る調整方法によると、ビームスプリッタ31、集光レンズ32及び検出器33を有するコンパクトで簡単な構成の調整装置30を、全反射蛍光顕微鏡10に設け、検出器33により検出される照明光LIのスポット像の径が所定の値以下になる(最も小さくなる)ように調整部13によりリレー光学系2の位置を調整するという簡単な操作で精度良く、境界面6aに照射される照明光LIを略平行光束とすることができる。第1の実施形態で説明した調整方法は、光源1を一旦照明光学系11の光軸上に移動して調整を行い(
図1の位置B)、その後、境界面6aで照明光LIが全反射する位置(
図1の位置A)に移動させていたが、この第2の実施形態に示す調整方法では、実際に観察を行う位置に光源1を配置して調整を行っているので、調整の前後で光源1の移動を行う必要がなく、光源1の移動による誤差の発生を防ぐことができる。
【0039】
なお、カバーガラス6に対する照明光LIの入射角がこのカバーガラス6上に試料を載置しないと全反射しない角度の場合は、
図4に示すように、カバーガラス6の上面(境界面6a)にミラー34を取り付けても良い。
【0040】
また、この第2の実施形態に係る調整装置30は、全反射蛍光顕微鏡30の筐体に図示しない取付部を介して着脱可能に構成しても良いし、ビームスプリッタ31のみを照明光学系11の光路上に挿脱可能に構成しても良い(調整時は、ビームスプリッタ31を光路に挿入し、調整後は、ビームスプリッタ31を光路から脱却させる)。しかし、照明光LIのコリメートの調整にために検出器33で検出する光量は小さくて良いため、ビームスプリッタ31の透過率を大きくする(反射率を小さくする)ことにより、調整装置30は、この全反射蛍光顕微鏡30に固定して配置することができる。このとき、ビームスプリッタ31は、リレー光学系2内であればどこに配置しても良いが、このリレー光学系2内の光束が略平行になる部分に配置する方が、収差等が発生が少なくなり好ましい。
【0041】
また、光源1の照明光学系11の光軸の偏心量により照明光LIの境界面6aに対する入射角が決定する。この光源1の位置は、対物レンズ5の入射瞳面Pにおける光源1の像の位置に対応する。そのため、検出器33で検出されるスポット像の位置により、光源1の位置を調整することも可能である。
【0042】
本発明の実施形態は、手動による調整に限られず、例えば、検出器22,22′,33(2次元撮像素子等)で検出されたビーム径の大きさから所望の大きさ以下になるように、不図示の制御部によって、リレー光学系2を構成するレンズの少なくとも一部を光軸に沿って移動させる(調整部13を駆動させる)、光源1の位置を照明光学系11の光軸方向に移動させる(調整部13を駆動させる)ようにしても良い。また、レーザ波長の切り替えに連動して、検出器22,22′,33(2次元撮像素子等)で検出されたビーム径の大きさから所望の大きさ以下になる(最も小さくなる)ように、不図示の制御部によって、前述の調整部13で照明光の平行化を行ってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 光源 2 リレー光学系 5 対物レンズ 9,9′ 取付部
10 全反射蛍光顕微鏡(顕微鏡) 11 照明光学系 13 調整部
20,20′,30 調整装置 21 集光レンズ 22,22′ 検出器
31 ビームスプリッタ 32 集光レンズ 33 検出器
P 入射瞳 O 試料