特許第5963033号(P5963033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963033
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】コーティング剤及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20160721BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20160721BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20160721BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20160721BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160721BHJP
   C09D 163/10 20060101ALI20160721BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20160721BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C09D175/04
   B32B27/40
   C09D5/00 D
   C09D5/02
   C09D7/12
   C09D163/10
   B32B27/38
   C09D175/06
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-553472(P2015-553472)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】JP2014082103
(87)【国際公開番号】WO2015093299
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年3月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-263816(P2013-263816)
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】小柳 達史
(72)【発明者】
【氏名】北田 満
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−154721(JP,A)
【文献】 特開2007−153958(JP,A)
【文献】 特開2011−256336(JP,A)
【文献】 特開2012−102182(JP,A)
【文献】 特開2012−246465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル樹脂(A)、芳香環を有するウレタン樹脂(B)及び水性媒体(C)を含有する水性樹脂組成物(D)、ならびに、カルボジイミド系架橋剤(E)を含有するコーティング剤であって、
前記ビニルエステル樹脂(A)が、ノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ樹脂(a1)と、酸基及び重合性不飽和基を有する化合物(a2)との反応物であり、
前記ウレタン樹脂(B)が、芳香環を有するポリオール(b1−1)及び親水性基を有するポリオール(b1−2)を含有するポリオール(b1)と、ポリイソシアネート(b2)との反応物であることを特徴とするコーティング剤。
【請求項2】
前記架橋剤(E)の使用量が、カルボジイミド基と反応可能な前記ウレタン樹脂(B)が有する親水性基の80〜100モル%と反応する量である請求項1記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記ポリオール(b1−1)中の芳香環濃度が、1.5〜8mol/kgの範囲である請求項1記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記芳香環を有するポリオール(b1−1)が、芳香族ポリエステルポリオール(b1−a)及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(b1−b)のうち、少なくとも1つを含むポリオールである請求項1記載のコーティング剤。
【請求項5】
前記ポリオール(b1)中に含まれる芳香環を有するポリオール(b1−1)の割合が40〜98質量%の範囲である請求項1記載のコーティング剤。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート(b2)が芳香族ポリイソシアネートを含むものである請求項1記載のコーティング剤。
【請求項7】
前記化合物(a2)がアクリル酸又はメタクリル酸である請求項1記載のコーティング剤。
【請求項8】
前記ビニルエステル樹脂(A)の一部又は全部が、前記ウレタン樹脂(B)粒子中に内在して樹脂粒子(F)を形成したものである請求項1記載のコーティング剤。
【請求項9】
前記ビニルエステル樹脂(A)と前記ウレタン樹脂(B)との質量割合[(A)/(B)]が60/40〜10/90の範囲である請求項1記載のコーティング剤。
【請求項10】
基材の表面に、請求項1〜9のいずれか1項記載のコーティング剤からなるプライマー層を有し、前記プライマー層の表面に、活性エネルギー線硬化性組成物硬化塗膜を有することを特徴とする積層体。
【請求項11】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、重合性不飽和基を有する樹脂と、重合性不飽和基を有する単量体とを含有するものである請求項10記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面に活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成する際に、基材と前記硬化塗膜との密着性を向上するプライマーとして用いることができるコーティング剤及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ウレタン樹脂組成物は、近年、光学用途向けのフィルムやシートへの適用が検討されている。前記光学用途としては、具体的には、液晶ディスプレイ、タッチパネル等が挙げられる。前記液晶ディスプレイ等の表示装置は、通常、鮮明な映像を表示するために各種機能を有する多数の光学フィルムが積層され構成されており、かかる光学フィルムとしては、反射防止フィルム、位相差フィルム、プリズムレンズシート等が挙げられる。
【0003】
これらの光学フィルムの基材としては、ポリエステルフィルム、とりわけ、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが光学特性、機械強度、耐久性に優れることから使用されている。また、光学用途においては、ポリエステルフィルムの表面に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工、硬化することによって、ハードコート層を形成したり、活性エネルギー線硬化性組成物を注型した層を設け、ポリエステルフィルムをプリズムシートとしたりするが、ポリエステルフィルムは結晶性が高いことに起因して、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性が低いという問題があった。
【0004】
ポリエステルフィルムと活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を向上する方法として、基材であるポリエステルフィルムと活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との間に、アクリル樹脂からなるプライマー層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、アクリル樹脂からなるプライマー層を設けても、ポリエステルフィルムと活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性は十分なものではなかった。
【0005】
また、プライマー層としてウレタン樹脂を用いたものは、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性は十分なものの、耐湿熱試験後の密着性及び耐薬品性に対しては十分な性能を発現できない問題があった。
【0006】
そこで、ポリエステルフィルムと活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を十分なものとし、また、優れた耐薬品性及び耐湿熱性を有するプライマー層に用いることのできるコーティング剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−215843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、基材や活性エネルギー線硬化組成物の硬化塗膜とのいずれに対しても優れた密着性を有し、かつ、耐薬品性及び耐湿熱性に優れたプライマー層を形成可能なコーティング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のエポキシ樹脂と酸基及び重合性不飽和基を有する化合物とを反応させて得られたビニルエステル樹脂、及び芳香環を有するウレタン樹脂が、水性媒体中に分散された水性樹脂組成物に架橋剤を組み合わせたプライマーを用いることで、ポリエステルフィルムのような難接着の基材であっても、その基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性の向上、ならびに、プライマー層の耐薬品性及び耐湿熱性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、ビニルエステル樹脂(A)、芳香環を有するウレタン樹脂(B)及び水性媒体(C)を含有する水性樹脂組成物(D)、ならびに、カルボジイミド系架橋剤(E)を含有するコーティング剤であって、
前記ビニルエステル樹脂(A)が、ノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ樹脂(a1)と、酸基及び重合性不飽和基を有する化合物(a2)との反応物であり、
前記ウレタン樹脂(B)が、芳香環を有するポリオール(b1−1)及び親水性基を有するポリオール(b1−2)を含有するポリオール(b1)と、ポリイソシアネート(b2)との反応物であることを特徴とするコーティング剤及び積層体に関するものである。

【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティング剤は、ポリエステルフィルムのような難接着の基材であっても、その基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を向上させ、ならびに、耐薬品性及び耐湿熱性に優れたプライマーとして用いることができることからポリエステルフィルムを基材として、その表面に活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成した積層体に好適である。このような積層体としては、例えば、反射防止フィルム、位相差フィルム、プリズムレンズシート等の光学フィルムが挙げられる。また、これらの光学フィルムは、液晶ディスプレイをはじめとする画像表示装置に応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のコーティング剤は、ビニルエステル樹脂(A)、及び芳香環を有するウレタン樹脂(B)が、水性媒体(C)中に分散された水性樹脂組成物(D)、ならびに、カルボジイミド系架橋剤(E)を含有するコーティング剤である。
【0013】
前記ビニルエステル樹脂(A)は、ノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ樹脂(a1)と、酸基及び重合性不飽和基を有する化合物(a2)とを反応させて得られたものである。
【0014】
前記化合物(a2)が有する重合性不飽和基は、前記エポキシ樹脂との反応において、その反応に関与しないため、結果として、前記ビニルエステル樹脂(A)は、前記化合物(a2)由来の重合性不飽和基を有する。このビニルエステル樹脂(A)が有する重合性不飽和基は、後述する活性エネルギー線硬化性組成物中に含まれる樹脂や単量体が有する重合性不飽和基と重合反応することにより共有結合が形成され、本発明のコーティング剤からなるプライマー層との密着が強固なものとなる。
【0015】
前記ビニルエステル樹脂(A)が有する重合性不飽和基の当量は、250〜2,000g/eq.の範囲が好ましい。
【0016】
前記エポキシ樹脂(a1)は、ノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上のものであるが、具体的には、以下のものを用いることができる。
【0017】
前記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂(a1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0018】
前記エポキシ樹脂(a1)の中でも、前記化合物(a2)が有する酸基と反応しうるエポキシ基を多数有するノボラック型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0019】
また、前記エポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量は、150〜2,000g/eq.の範囲が好ましく、160〜1,000g/eq.の範囲がより好ましい。
【0020】
さらに、前記エポキシ樹脂(a1)が有するエポキシ基の全量中の80〜100モル%を、前記化合物(a2)の酸基と反応させることが好ましく、前記エポキシ基のすべてが前記化合物(a2)の酸基と反応させることがより好ましい。
【0021】
前記化合物(a2)は、酸基及び重合性不飽和基を有するものである。前記化合物(a2)が有する酸基と、前記エポキシ樹脂(a1)が有するエポキシ基とを反応させることにより、前記ビニルエステル樹脂(A)に重合性不飽和基を導入することができる。
【0022】
前記化合物(a2)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2,2,2,−トリスアクリロイルオキシメチルエチルフタル酸等が挙げられる。これらの化合物の中でも、後述する活性エネルギー線硬化性組成物中の樹脂や単量体が有する重合性不飽和基と重合反応しやすいアクリロイル基を前記ビニルエステル樹脂(A)に導入することができるアクリル酸が好ましい。また、これらの化合物(a2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできるが、前記化合物(a2)の全量中にアクリル酸を50質量%以上用いることが好ましい。
【0023】
前記エポキシ樹脂(a1)と前記化合物(a2)との反応温度は、60〜150℃の範囲が好ましく、80〜120℃の範囲がより好ましい。
【0024】
また、前記エポキシ樹脂(a1)と前記化合物(a2)とを反応させる際には、前記化合物(a2)が有する重合性不飽和基の熱重合を防止するため、重合禁止剤を用いることが好ましい。重合禁止剤の添加量は、前記エポキシ樹脂(a1)及び前記化合物(a2)の合計質量に対して、500〜5,000ppmの範囲が好ましい。
【0025】
前記重合禁止剤としては、例えば、2,6−ビス(tert−ブチル)−4−メチルフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)、p−tert−ブチルカテコール、ニトロベンゼン、ニトロ安息香酸、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、2,4−ジニトロフェノール、トリニトロベンゼン等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0026】
さらに、前記エポキシ樹脂(a1)と前記化合物(a2)とを反応させる際には、反応触媒を用いることができる。前記反応触媒の使用量は、前記エポキシ樹脂(a1)100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲が好ましい。
【0027】
前記反応触媒としては、例えば、アミン触媒、イミダゾール触媒、リン触媒、ホウ素触媒、リン−ホウ素触媒等が挙げられる。具体的には、エチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアジニン、ジフェニルグアニジン等のアルキル置換グアニジン;3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素等の3−置換フェニル−1,1−ジメチル尿素;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン等のイミダゾリン;2−アミノピリジン等のモノアミノピリジン;N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミン−N’−ラクトイミド等のアミンイミド;エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン触媒、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のジアザビシクロウンデセン触媒などが挙げられる。これらの反応触媒は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
前記方法で得られるビニルエステル樹脂(A)の重量平均分子量としては、樹脂粒子の分散安定性が向上することから、500〜10,000の範囲が好ましく、1,000〜6,000の範囲がより好ましい。
【0029】
芳香環を有するウレタン樹脂(B)は、芳香環を有するポリオール(b1−1)及び親水性基を有するポリオール(b1−2)を含有するポリオール(b1)と、ポリイソシアネート(b2)とを反応させて得られたものである。
【0030】
前記ポリオール(b1−1)を前記ウレタン樹脂(B)の原料として用いることで、前記ウレタン樹脂(B)が芳香環を有するものとなる。また、前記ポリオール(b1−1)中の芳香環濃度は、1.5〜8mol/kgの範囲が好ましく、1.6〜5mol/kgの範囲がより好ましい。
【0031】
前記ポリオール(b1−1)としては、例えば、芳香族ポリエステルポリオール、芳香族ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリエーテルポリオール、ビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0032】
また、前記ポリオール(b1−1)の中でも、芳香族ポリエステルポリオール、ビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物の1種であるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、基材密着性と耐ブロッキング性に優れることから好ましい。したがって、前記ポリオール(b1−1)としては、芳香族ポリエステルポリオール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のうち、少なくとも1つを含むものを用いることが好ましい。
【0033】
前記芳香族ポリエステルポリオールは、多価カルボン酸と多価アルコールとをエステル化反応させて得られたものであるが、前記多価カルボン酸及びポリオールのうち、少なくとも1つに芳香環を有するものを用いる。
【0034】
前記多価カルボン酸のうち、芳香環を有するものとしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル化物が挙げられる。また、芳香環を有さないものとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、セバシン酸、クロレンド酸、1,2,4−ブタン−トリカルボン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル化物が挙げられる。これらの多価カルボン酸又はそのエステル化物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0035】
前記多価アルコールのうち、芳香環を有するものとしては、例えば、ベンゼンジメタノール、トルエンジメタノール、キシレンジメタノール等の芳香族ジオールが挙げられる。また、芳香環を有さないものとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコールエチレングリコール等の脂肪族ポリオールが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0036】
前記ポリオール(b1−2)は、親水性基を有するポリオールである。前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基が挙げられるが、アニオン性基が好ましく、アニオン性基の中でもカルボキシル基、スルホン酸基が好ましい。
【0037】
親水性基としてカルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。これらの中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。また、前記カルボキシル基を有するポリオールと多価カルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基を有するポリエステルポリオールも用いることができる。
【0038】
親水性基としてスルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸又はそれらの塩と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の低分子ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0039】
前記アニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物によって中和することで、前記ウレタン樹脂(B)に良好な水分散性を付与できることから好ましい。
【0040】
前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア;トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の金属水酸化物などが挙げられる。本発明の水性樹脂組成物の水分散安定性をより向上できることから、前記塩基性化合物の使用量は、塩基性化合物とアニオン性基とのモル比[塩基性化合物/アニオン性基]で、0.5〜3の範囲が好ましく、0.7〜1.5の範囲がより好ましい。
【0041】
前記芳香族ポリエステルポリオールを製造する際のエステル化反応においては、エステル化反応を促進する目的で、エステル化触媒を用いることが好ましい。前記エステル化触媒としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。
【0042】
前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、ビスフェノールAが有するフェノール性水酸基にアルキレンオキサイドを付加したものである。前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。また、1モルのビスフェノールAに対するアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、1〜8の範囲が好ましく、1〜4の範囲がより好ましい。
【0043】
本発明において、ポリオール(b1)は、前記ポリオール(b1−1)及び前記ポリオール(b1−2)を必須成分として含有するが、それ以外のポリオール(b1−3)を含有しても構わない。前記ポリオール(b1−3)としては、例えば、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール、水添ビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。また、前記ポリオール(b1−3)として、前記芳香族ポリエステルポリオールの原料として挙げた前記多価アルコールを用いてもよい。これらのポリオール(b1−3)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0044】
また、ポリオール(b1)中に含まれる芳香環を有するポリオール(b1−1)の割合は、基材に対する密着性がより向上することから、40〜98質量%の範囲が好ましく、60〜98質量%の範囲がより好ましい。
【0045】
前記ウレタン樹脂(B)の原料となるポリイソシアネート(b2)としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネート(b2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0046】
前記ポリイソシアネート(b2)の中でも、基材に対する密着性がより向上することから、芳香族ポリイソシアネートを含むものが好ましい。この際の前記ポリイソシアネート(b2)中の芳香族ポリイソシアネートの含有量は、15〜35質量%の範囲が好ましい。
【0047】
前記ウレタン樹脂(B)は、例えば、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、前記ポリオール(b1)と前記ポリイソシアネート(b2)とを混合し、40〜120℃の温度で、3〜20時間反応させることによって製造することができる。また、前記ウレタン樹脂(B)の製造の際に、必要に応じて鎖伸長剤を用いてもよい。
【0048】
前記ポリオール(b1)と前記ポリイソシアネート(b2)との反応は、前記ポリオール(b1)が有する水酸基と、前記ポリイソシアネート(b2)が有するイソシアネート基との当量比[イソシアネート基/水酸基]が、0.5〜3.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜2.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0049】
前記ウレタン樹脂(B)を製造する際に用いることのできる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0050】
上記の方法で得られる前記ウレタン樹脂(B)の重量平均分子量としては、基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性がより向上することから、3,000〜200,000の範囲が好ましく、3,000〜100,000の範囲がより好ましい。
【0051】
水性媒体(C)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル溶剤;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム溶剤などが挙げられる。これらの水と混和する有機溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0052】
また、前記水性媒体(C)としては、安全性や環境に対する負荷低減を考慮すると、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみがより好ましい。
【0053】
前記水性媒体(C)の割合は、10〜90質量%の範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲がより好ましい。
【0054】
水性樹脂組成物(D)は、前記水性媒体(C)中に、前記ビニルエステル樹脂(A)及び前記ウレタン樹脂(B)を分散したものである。この際、前記ビニルエステル樹脂(A)と前記ウレタン樹脂(B)とが、前記水性媒体(C)中で、別個の樹脂粒子として存在していてもよいが、前記ビニルエステル樹脂(A)の一部又は全部が、前記ウレタン樹脂(B)粒子中に内在した樹脂粒子(F)を形成したものを用いることが好ましい。より具体的には、前記ビニルエステル樹脂(A)がコア部を形成し、前記ウレタン樹脂(B)がシェル部を形成したコア・シェル型の樹脂粒子(F)であることが好ましい。
【0055】
前記樹脂粒子(F)は、前記ビニルエステル樹脂(A)及び前記ウレタン樹脂(B)を予め製造しておき、次いで、前記ウレタン樹脂(B)に、前記ビニルエステル樹脂(A)、前記ウレタン樹脂(B)が有するアニオン性基を中和する塩基性化合物及び前記水性媒体(C)を混合することによって製造することができる。
【0056】
前記方法で得られた水性樹脂組成物(D)中に有機溶剤が含まれる場合には、安全性や環境に対する負荷低減を図るため、蒸留法等によって前記有機溶剤を除去してもよい。これにより、水性媒体(C)中に前記樹脂粒子(F)が分散した水性樹脂組成物(D)を得ることができる。
【0057】
前記ビニルエステル樹脂(A)と前記ウレタン樹脂(B)との質量割合[(A)/(B)]は、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性がより向上することから、60/40〜10/90の範囲が好ましく、55/45〜20/80の範囲がより好ましい。なお、この範囲は、前記ビニルエステル樹脂(A)及び前記ウレタン樹脂(B)を前記樹脂粒子(F)として用いる場合も同様である。
【0058】
また、前記水性樹脂組成物(D)全量中の前記ビニルエステル樹脂(A)及び前記ウレタン樹脂(B)の合計量の割合は、10〜90質量%の範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲がより好ましい。
【0059】
前記水性樹脂組成物(D)には、必要に応じて、造膜助剤、硬化剤、可塑剤、帯電防止剤、ワックス、光安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光触媒性化合物、無機顔料、有機顔料、体質顔料等の添加剤;ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等のその他の樹脂などを配合することができる。
【0060】
本発明のコーティング剤は、カルボジイミド系架橋剤(E)を必須成分とする。前記架橋剤(E)が有するカルボジイミド基は、前記ウレタン樹脂(B)が有するカルボキシル基等の親水性基と反応して3次元の架橋構造を形成することで、基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を向上させ、また、本発明のコーティング剤をプライマーとして用いた場合に、形成されるプライマー層に耐湿熱試験後の高い密着性及び優れた耐薬品性を付与することができる。
【0061】
前記架橋剤(E)としては、カルボジイミド基を2つ以上有するものが好ましく、このようなものとしては、例えば、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニルカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミド;ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂環族ポリカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。
【0062】
また、前記架橋剤(E)としては、本発明のコーティング剤が、前記ビニルエステル樹脂(A)及び前記ウレタン樹脂(B)を水性媒体(C)中に分散したものであることから、水溶性または水分散性(エマルジョン型)があるものが好ましい。
【0063】
前記架橋剤(E)として用いることのできる市販品としては、日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」等が挙げられる。
【0064】
前記架橋剤(E)の使用量は、十分な架橋性能を発現することから、カルボジイミド基と反応可能な前記ウレタン樹脂(B)が有する親水性基の80〜100モル%と反応する量であることが好ましく、100モル%と反応する量であることがより好ましい。
【0065】
また、前記架橋剤(E)は、密着性や前記水性樹脂組成物(D)との保存安定性が向上することから、前記水性樹脂組成物(D)に対して3〜5質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0066】
本発明の積層体は、上記で説明した本発明のコーティング剤を用いて形成したプライマー層を有し、前記プライマー層の表面に活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成した硬化塗膜を有するものである。
【0067】
前記活性エネルギー線硬化性組成物としては、重合性不飽和基を有する樹脂と、重合性不飽和基を有する単量体とを含有するものが好ましく、これら重合性不飽和基を有する樹脂及び重合性不飽和基を有する単量体の種類は、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜に要求される特性に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0068】
前記重合性不飽和基を有する樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド基を有する樹脂等が挙げられる。これらの重合性不飽和基を有する樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0069】
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0070】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとをウレタン化反応させて得られるウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂等が挙げられる。
【0071】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。また、前記芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0072】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0073】
前記不飽和ポリエステル樹脂は、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物、及び、グリコールの重縮合によって得られる硬化性樹脂である。前記α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸、及びこれらのエステル等が挙げられる。前記芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。前記グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、その他にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸化物も同様に用いることができる。
【0074】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0075】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオールの水酸基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0076】
前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、グリシジルメタクリレート、及び必要に応じてアルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート単量体とを重合させて、エポキシ基を有するアクリル樹脂を得た後、そのエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0077】
前記マレイミド基を有する樹脂としては、N−ヒドロキシエチルマレイミドとイソホロンジイソシアネートとをウレタン化して得られる2官能マレイミドウレタン化合物、マレイミド酢酸とポリテトラメチレングリコールとをエステル化して得られる2官能マレイミドエステル化合物、マレイミドカプロン酸とペンタエリスリトールのテトラエチレンオキサイド付加物とをエステル化して得られる4官能マレイミドエステル化合物、マレイミド酢酸と多価アルコール化合物とをエステル化して得られる多官能マレイミドエステル化合物等が挙げられる。
【0078】
前記重合性不飽和基を有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングルリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−プロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート、N,N−ヘキサメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ジマレイミドシクロヘキサン等のマレイミド化合物などが挙げられる。これらの重合性不飽和基を有する単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0079】
前記活性エネルギー線硬化性組成物は、基材等に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。活性エネルギー線として紫外線を照射して、前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化塗膜とする場合には、前記活性エネルギー線硬化性組成物中に光重合開始剤を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、活性エネルギー線として電子線、α線、β線又はγ線を照射して、前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化塗膜とする場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するため、光重合開始剤や光増感剤を添加する必要はない。
【0080】
前記光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0081】
前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0082】
本発明の積層体に用いる基材としては、例えば、金属基材、プラスチック基材、ガラス基材、紙基材、木材基材、繊維質基材等が挙げられる。これらの基材の中でも、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜と基材との密着性を向上するため、本発明の水性樹脂組成物をプライマーとして用いる場合は、プラスチック基材が好適である。
【0083】
前記プラスチック基材の材質としては、ポリエステル、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ABS樹脂とポリカーボネートとの複合樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン(COP)等)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。
【0084】
本発明のコーティング剤は、上記のプラスチック基材の中でも、ポリエステル基材のプライマーとして、非常に有用である。前記ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0085】
前記プラスチック基材としては、例えば、携帯電話、家電製品、自動車内外装材、OA機器等のプラスチック成形品が挙げられる。また、プラスチックを素材としたフィルム基材も挙げられる。フィルム基材を本発明の積層体の基材とする場合には、反射防止フィルム、位相差フィルム、プリズムレンズシート等の光学フィルム;アルミ蒸着フィルム等の食品包装などの高機能フィルムに用いることができる。
【0086】
また、本発明の積層体を反射防止フィルム、位相差フィルム、プリズムレンズシート等の光学フィルムとする場合には、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)等の各種画面表示装置の部材として用いることができる。
【0087】
本発明のコーティング剤は、例えば、前記基材の表面に直接、塗布し、次いで、乾燥、硬化させることによって、基材の表面に塗膜を形成することができる。本発明のコーティング剤を乾燥し硬化を進行させる方法としては、常温下で1〜10日程度養生する方法であってもよいが、硬化を迅速に進行させることができるから、100℃〜150℃の温度で、1〜600秒程度加熱する方法が好ましい。また、比較的高温で変形や変色をしやすいプラスチック基材を用いる場合には、70℃〜100℃程度の比較的低温で加熱することが好ましい。
【0088】
前記基材の表面に、本発明のコーティング剤を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、フローコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、刷毛塗り、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法が挙げられる。
【0089】
本発明のコーティング剤を用いて形成する塗膜の膜厚は、使用される用途に応じて適宜調整可能であるが、通常は、0.01〜20μmの範囲であることが好ましい。
【0090】
本発明の積層体は、上記のようにして得られた本発明のコーティング剤の塗膜であるプライマー層の表面に、さらに、前記活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成することにより得ることができる。なお、前記活性エネルギー線硬化性組成物の塗布方法は、上記の本発明のコーティング剤の塗布方法と同じ方法を用いることができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例及び比較例により、具体的に説明する。
【0092】
(合成例1:芳香族ポリエステルポリオール(1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸27.6質量部、テレフタル酸27.6質量部、ジエチレングリコール19.9質量部及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み180〜230℃で酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、芳香族ポリエステルポリオール(1)〔酸価0.6、水酸基価50.0、芳香環濃度4.77mol/Kg〕を得た。
【0093】
(製造例1:ビニルエステル樹脂(1)の合成)
反応容器にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N−673−80M」、固形分エポキシ当量:209g/eq.、不揮発分:80質量%、溶媒:メチルエチルケトン)を46.7質量部、アクリル酸13.3質量部、メトキノン0.08質量部、メチルエチルケトン13.3質量部を仕込み、攪拌させて均一に混合した。次いでトリフェニルホスフィン0.37質量部を加え、反応温度80℃下で酸価が1.5以下になるまで反応させて、ビニルエステル樹脂(1)の不揮発分75質量%溶液を得た。
【0094】
製造例1で合成したビニルエステル樹脂(1)の原料を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
(製造例2:芳香環を有するウレタン樹脂(1)の合成)
反応容器に合成例1で得られた芳香族ポリエステルポリオール(1)100.0質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン66.6質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2’−ジメチロールプロピオン酸6.1質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート23.1質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、n−ブタノール3質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、芳香環を有するウレタン樹脂(1)の不揮発分65質量%溶液を得た。
【0097】
(調整例1:水性樹脂組成物(1)の調製)
製造例2で得られた芳香環を有するウレタン樹脂(1)の不揮発分65質量%溶液147.7質量部(前記ウレタン樹脂(1)として96質量部)に、製造例1で得られたビニルエステル樹脂(1)の不揮発分75質量%溶液128.0質量部(前記ビニルエステル樹脂(1)として96質量部)、トリエチルアミン5.5質量部を加え、イオン交換水938.5質量部をゆっくりと添加し水溶化を実施した。次いで減圧下、30〜50℃にてメチルエチルケトンを除去し、不揮発分40質量%の水性樹脂組成物(1)を得た。
【0098】
実施例1〜9で得られた水性樹脂組成物(1)の組成を表2に示す。なお、表中の組成は不揮発分量(樹脂のみの量)を表す。
【0099】
【表2】
【0100】
(調製例2:紫外線硬化性組成物(UV−1)の調製)
ウレタンアクリレート樹脂(DIC株式会社製「ユニディックV−4260」)50質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート50質量部及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)3質量部を混合することによって、紫外線硬化性組成物(UV−1)を得た。
【0101】
(調製例3:紫外線硬化性組成物(UV−2)の調製)
エポキシアクリレート樹脂(DIC株式会社製「ユニディックV−5500」)50質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート50質量部及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」)3質量部を混合することによって、紫外線硬化性組成物(UV−2)を得た。
【0102】
(実施例1:プライマー(1)の作製)
調製例1で得られた水性樹脂組成物(1)100質量部と、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトE−02」)2.8質量部と、イオン交換水593質量部とを混合することによってプライマー(P−1)を得た。
【0103】
(実施例2:プライマー(2)の作製)
調製例1で得られた水性樹脂組成物(1)100質量部と、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトV−02」)2.8質量部と、イオン交換水589質量部とを混合することによってプライマー(P−2)を得た。
【0104】
(実施例3:プライマー(3)の作製)
調製例1で得られた水性樹脂組成物(1)100質量部と、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)2.8質量部と、イオン交換水593質量部とを混合することによってプライマー(P−3)を得た。
【0105】
(実施例4:積層体(1)の作製)
ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する。)製フィルム基材(厚さ125μm)の表面に、乾燥後の膜厚が約1μmとなるように、実施例1で得られたプライマー(P−1)を塗布し、150℃で5分間加熱することによって、前記基材の表面にプライマー層を形成した。次いで、前記プライマー層の表面に、調整例2で得られた紫外線硬化性組成物(UV−1)を、15μmの塗布厚で塗布し、その塗布面に、高圧水銀灯を光源として、照射強度0.5J/cmで紫外線を照射することによって、前記基材の表面にプライマー層を有し、そのプライマー層の表面に紫外線硬化性組成物の硬化塗膜(以下、「UV塗膜」と略記する。)を備えた積層体(1)を得た。
【0106】
(実施例5:積層体(2)の作製)
実施例4で用いた紫外線硬化性組成物(UV−1)に代えて、調製例3で得られた紫外線硬化性組成物(UV−2)を用いた以外は、実施例4と同様に行い、積層体(2)を得た。
【0107】
(実施例6:積層体(3)の作製)
PETフィルム基材の表面に、乾燥後の膜厚が約1μmとなるように、実施例2で得られたプライマー(P−2)を塗布し、150℃で5分間加熱することによって、前記基材の表面にプライマー層を形成した。次いで、前記プライマー層の表面に、調整例3で得られた紫外線硬化性組成物(UV−2)を15μmの塗布厚で塗布し、その塗布面に、高圧水銀灯を光源として、照射強度0.5J/cmで紫外線を照射することによって、前記基材の表面にプライマー層を有し、そのプライマー層の表面にUV塗膜を備えた積層体(3)を得た。
【0108】
(実施例7:積層体(4)の作製)
実施例6で用いたプライマー(P−2)に代えて、実施例3で得られたプライマー(P−3)を用いた以外は、実施例6と同様に行い、積層体(4)を得た。
【0109】
上記の実施例及び比較例で得られたコーティング剤及び積層体を用いて、下記の密着性の評価を行った。
【0110】
[基材とプライマー層との密着性(初期)の評価方法]
膜厚125μmのポリエチレンテレフタレートからなる基材の表面に、乾燥時の膜厚が約1μmとなるようにプライマーを塗布し、150℃で5分間加熱することによって、前記基材の表面にプライマー層が積層した部材からなる試験板を作製した。
前記方法で作製した試験板のプライマー層の表面に、ニチバン株式会社製の24mm幅の粘着テープを貼付した。
【0111】
次いで、前記粘着テープを前記プライマー層に対して垂直方向に引張り、前記粘着テープをプライマー層の表面から剥がした際の、前記プライマー層の表面の状態を、下記評価基準に従って目視で評価した。
◎:試験板を構成する基材表面からプライマー層が全く剥離しなかった。
○:試験板を構成する基材表面から、ごく一部のプライマー層が剥離したが、その剥離した範囲は、試験板を構成する皮膜の全面積に対して10%未満であった。
△:試験板を構成するプライマー層の面積に対して10%以上50%未満の範囲のプライマー層が、試験板を構成する基材表面から剥離した。
×:試験板を構成するプライマー層の全面積に対して50%以上の範囲のプライマー層が、試験板を構成する基材表面から剥離した。
【0112】
[プライマー層とUV塗膜との密着性(初期)の評価方法]
実施例及び比較例で得た積層体を構成するUV塗膜の表面に、ニチバン株式会社製の24mm幅の粘着テープを貼付した。
【0113】
次いで、前記粘着テープを前記UV塗膜に対して垂直方向に引張り、前記粘着テープをUV塗膜の表面から剥がした際の、前記UV塗膜の表面の状態を、下記評価基準に従って目視で評価した。
◎:積層体を構成する基材表面からUV塗膜が全く剥離しなかった。
○:積層体を構成する基材表面から、ごく一部のUV塗膜が剥離したが、その剥離した範囲は、積層体を構成するUV塗膜の全面積に対して10%未満であった。
△:積層体を構成するUV塗膜の面積に対して10%以上50%未満の範囲のUV塗膜が、積層体を構成する基材表面から剥離した。
×:積層体を構成するUV塗膜の全面積に対して50%以上の範囲のUV塗膜が、積層体を構成する基材表面から剥離した。
【0114】
[プライマー層とUV塗膜との密着性(耐湿熱試験後)]
前記得られた積層体を温度60℃、相対湿度90%の高温恒湿器に50時間投入した。その後、前記積層体を取り出し、プライマー層とUV塗膜との密着性を、前記[プライマー層とUV塗膜との密着性(初期)]と同様の方法で評価した。
【0115】
[プライマー層とUV塗膜との密着性(耐薬品性試験後)]
前記得られた積層体を温度25℃、5%水酸化ナトリウム水溶液に30分間投入した。その後、前記積層体を取り出し、水洗・乾燥後、プライマー層とUV塗膜との密着性を、前記[プライマー層とUV塗膜との密着性(初期)の評価方法]と同様の方法で評価した。
【0116】
[造膜性の評価方法]
膜厚125μmのポリエチレンテレフタレートからなる基材の表面に、乾燥時の膜厚が約1μmとなるように前記プライマーを塗布し、150℃で5分間加熱することによって、前記基材の表面にプライマー層を形成した。
○:プライマー層の表面を目視観察すると、透明であった。
△:プライマー層の表面を目視観察すると、透明であるがクラックを確認できた。
×:プライマー層の表面を目視観察すると、白化する程のクラックが発現し、プライマー層の一部がポリエチレンテレフタレート基材から容易に剥離していた。
【0117】
実施例10〜20で得られた積層体(1)〜(4)に用いた基材、プライマー及び紫外線硬化性組成物と、評価結果とを表3に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
(比較例1:プライマー(P’−1)の作製)
水性樹脂組成物(1)100質量部とイオン交換水577質量部とを混合することによって、プライマー(P’−1)を得た。
【0120】
(比較例2:プライマー(P’−2)の作製)
水性樹脂組成物(1)100質量部とメラミン架橋剤(DIC株式会社製「ベッカミンM−3」)3質量部と、イオン交換水613質量部とを混合することによって、プライマー(P’−2)を得た。
【0121】
(比較例3:プライマー(P’−3)の作製)
水性樹脂組成物(1)100質量部とオキサゾリン架橋剤(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−700」)9.2質量部と、イオン交換水606質量部とを混合することによって、プライマー(P’−3)を得た。
【0122】
(比較例4:プライマー(P’−4)の作製)
水性樹脂組成物(1)100質量部とエポキシ系架橋剤(DIC株式会社製「CR−5L」)3質量部と、イオン交換水648質量部とを混合することによって、プライマー(P’−4)を得た。
【0123】
(比較例5:積層体(R1)の作製)
PETフィルム基材の表面に、乾燥後の膜厚が約1μmとなるように、比較例2で得られたプライマー(P’−1)を塗布し、150℃で5分間加熱することによって、前記基材の表面にプライマー層を形成した。次いで、前記プライマー層の表面に、調整例3で得られた紫外線硬化性組成物(UV−2)を、15μmの塗布厚で塗布し、その塗布面に、高圧水銀灯を光源として、照射強度0.5J/cmで紫外線を照射することによって、前記基材の表面にプライマー層を有し、そのプライマー層の表面にUV塗膜を備えた積層体(R1)を得た。
【0124】
(比較例6〜8:積層体(R2)〜(R4)の作製)
比較例5で用いたプライマー(P’−1)に代えて、比較例2〜4で得られたプライマー(P’−2)〜(P’−4)をそれぞれ用いた以外は、比較例5と同様に行い、積層体(R2)〜(R4)を得た。
【0125】
比較例4〜7で得られた積層体(R1)及び(R2)に用いた基材、プライマー及び紫外線硬化性組成物と、評価結果とを表4に示す。
【0126】
【表4】
【0127】
表3に示した評価結果から、本発明のコーティング剤を用いて形成されたプライマー層は、基材との密着性に優れ、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性にも優れることが確認できた。
【0128】
また、本発明のコーティング剤を用いて形成されたプライマー層は、耐湿熱試験後の高い密着性及び優れた耐薬品性を有することが確認できた。
【0129】
一方、比較例5は、架橋剤を含有しないコーティング剤を用いた例のものである。本発明のコーティング剤を用いて形成されたプライマー層に比べ、耐湿熱試験後の密着性は不十分であり、また、耐薬品性においても不十分であることが確認できた。
【0130】
比較例6は、メラミン架橋剤を用いた例のものである。本発明のカルボジイミド架橋剤含有のコーティング剤を用いて形成されたプライマー層に比べ、耐薬品性が不十分であることが確認できた。
【0131】
比較例7は、オキサゾリン架橋剤を用いた例のものである。本発明のカルボジイミド架橋剤含有のコーティング剤を用いて形成されたプライマー層に比べ、耐湿熱試験後の密着性は不十分であり、また、耐薬品性においても不十分であることが確認できた。
【0132】
比較例8は、エポキシ架橋剤を用いた例のものである。本発明のカルボジイミド架橋剤含有のコーティング剤を用いて形成されたプライマー層に比べ、耐薬品性が不十分であることが確認できた。