【実施例】
【0027】
下記実験1〜実験3では、キュウリを栽培し、キュウリうどん粉病に対する防除薬の治療効果、保護効果について検証した。
【0028】
下記実験1〜実験3における実験条件を以下に示す。紫外線及び可視光線のいずれもが透過するシート(商品名:F−CLEAN,旭硝子製)で金属枠を覆い、植物栽培チャンバーを構築した。この植物栽培チャンバーを国立大学法人広島大学キャンパスの平らな場所に設置した。この植物栽培チャンバー内でキュウリの種子を播種し育てた。二回/週の割合で肥料を含有する水を与えた。
【0029】
下記実験1〜実験3は2008年の秋に行った。この期間の平均気温は、日中が23±2℃、夜間が19±2℃、1日の日照時間が約14時間、相対湿度は76.2〜80%であり、うどん粉病の感染に適している。各日の終わりには、うどん粉病原菌(Sphaerotheca fuliginea)をプロモートすべく、温室の土に水を散布し湿度を上げた。
【0030】
うどん粉病原菌の接種には、それぞれの植物の上部の葉に病原菌の懸濁液を噴霧することで行った。うどん粉病原菌は、広島県立総合技術研究所農業技術研究センターから提供されたものを用いた。
【0031】
キュウリは、いずれも3つの処理区に分け、各処理区に対し、異なる液体をそれぞれ50mL噴霧した。各液体の噴霧は早朝に行った。各液体の噴霧は、ファインノズルが取り付けられた電子スプレー装置(BS−4000、藤原産業)で行った。また、これらの全ての噴霧は、それぞれのキュウリの葉の上面に行った。
【0032】
3つの処理区にそれぞれ、噴霧した液体を以下に記す。なお、防除薬のpHの調整には、硫酸を用いた。
・防除薬(50mM HOOH,0.7mM Fe
3+,3mM シュウ酸;pH4.0)
・フェナリモル(市販されている殺菌剤)
・純水(Milli−Q Water)
以下、防除薬を噴霧した処理区を防除薬処理区、フェナリモルを噴霧した処理区をフェナリモル処理区、純水を噴霧した処理区をコントロール処理区と記す。
【0033】
発病度、相対発病度、保護効果は式3〜式5を用いてそれぞれ算出した。
・発病度(%)=100×Σ(葉数×発病程度)/(4×全調査葉数)…(式3)
・保護効果(%)=100×(DT/DC)…(式4)
・相対発病度(%)=100×[(DT−DC)/DC]…(式5)
なお、上式中、発病程度は、0〜4の数であり、ここで、0〜4の数は、0:発病無し、1:発病面積が0.1〜5%、2:発病面積が5.1〜20%、3:発病面積が20.1〜40%、4:発病面積が40.1〜100%である。また、上式中、DCは、コントロール処理区の発病度を示し、DTは、防除薬処理区或いはフェナリモル処理区の発病度を示す。
【0034】
(実験1)
既にキュウリうどん粉病に感染しているキュウリについて、防除薬による治療効果を検証した。
【0035】
キュウリうどん粉病に罹患しているキュウリに、週に一回(実験開始の初日、実験開始から7日目及び14日目)、それぞれの液体を噴霧した。噴霧は、1植物当たり10枚の葉(うどん粉病に感染した症状の葉)に行った。
【0036】
そして、実験開始の初日、4日目、7日目、11日目、14日目、18日目、21日目に、それぞれの病状を観察して記録し、上記式3を用い、それぞれの発病度を算出した。
【0037】
それぞれの処理区の発病度の結果を
図1に示すとともに、実験開始から21日目におけるそれぞれの処理区の葉の様子を
図2に示す。
【0038】
図2(A)及び
図2(B)に示すように、防除薬処理区及びフェナリモル処理区は、ほとんど病状は観察されなかった。一方、
図2(C)に示すように、コントロール処理区の葉には病状が観察された。
【0039】
そして、
図1の発病度の結果を見ると、コントロール処理区の発病度は日ごとに高くなり、最終的に100%であった。一方、防除薬処理区、フェナリモル処理区の発病度は、徐々に低くなっていった。フェナリモル処理区では発病度が67%から17%へ、防除薬処理区では発病度が67%から35%へとそれぞれ減少した。
【0040】
この結果から、フェナリモルとほぼ同様に、防除薬はうどん粉病に感染したキュウリの治療に対して効果があることがわかる。
【0041】
(実験2)
キュウリうどん粉病に感染していない健全なキュウリに対し、フェントン試薬散布によるうどん粉病の予防効果について検証した。
【0042】
健全なキュウリにそれぞれ液体を噴霧した。液体の噴霧は、1固体当たり10枚の葉の上側表面に行った。そして、各処理区について、液体を噴霧してから1日後、4日後、7日後にうどん粉病原菌を接種した。
【0043】
そして、うどん粉病原菌の接種から11日後、20日後に、実験1と同様にして病状を調べ、上記式4を用い、それぞれの保護効果を算出した。
【0044】
保護効果の結果を
図3に示す。なお、
図3中、A1〜F2の処理区、病原菌接種時期、観察・記録時期の対応関係は表1の通りである。
【0045】
【表1】
【0046】
図3を見ると、保護効果はいずれも、防除薬、フェナリモルの噴霧1日後>噴霧4日後>噴霧7日後となっており、噴霧から日数が経過していないほど保護効果は高かった。
【0047】
(実験3)
上記実験2でキュウリうどん粉病を感染させたキュウリについて、防除薬による治療効果を検証した。
【0048】
実験2における病原菌を接種してから20日目のキュウリをそのまま用いた。それぞれの処理区に対応する液体を葉の表面に噴霧した。即ち、実験2における防除薬処理区のキュウリに対しては防除薬を、フェナリモル処理区のキュウリに対してはフェナリモルを、コントロール処理区のキュウリには純水をそれぞれ噴霧した。
【0049】
そして、噴霧から7日後に、病状を観察、記録し、式5を用いて相対発病度を算出した。
【0050】
その結果を
図4に示す。
図4(A)が液体噴霧前の相対発病度、
図4(B)が液体噴霧して7日目の相対発病度である。なお、
図4(A)、
図4(B)中、A2〜F2は、上記表1に対応している。
【0051】
図4から、防除薬処理区、フェナリモル処理区のいずれも、相対発病度は低下しており、フェナリモル同様に、防除薬についても治療効果が認められた。
【0052】
以上の実験結果から、本実施の形態に係る防除薬は、市販の殺菌剤であるフェナリモル同様に、キュウリうどん粉病の感染から保護できるとともに、感染後でも治療が可能であることが立証された。
【0053】
(実験4)
防除薬のpHによるOHラジカル発生量について検証した。
【0054】
水に過酸化水素(50μM)、Fe
2(SO
4)
3(0.7μM)、シュウ酸ナトリウム(3μM)を加え、pHが異なる6種(pHはそれぞれ1.75、3.45、4.05、5.60、6.20、7.30)の防除薬を調整した。pHの調整には硫酸、水酸化ナトリウムを用いた。
【0055】
300Wキセノンランプ及び300nmより小さい波長を制限する硝子フィルター(Oriel, AM0及びAM1.0)が装着されたソーラーシミュレータ(Oriel, Model 81160-1000)を使用して各溶液に光を照射し、OHラジカルを発生させた。
【0056】
各溶液におけるOHラジカル生成速度は、ケミカルトラップ試薬としてベンゼン、光照射装置としてソーラーシミュレータ(Oriel, Model 81160-1000)を用いたHPLC方法(Arakaki et al.; Measurement of photo-chemically formed hydroxy radical in rain and dew waters; Nippon Kagaku Kishi 1998, Vol.9, p.619-625)に基づいて決定した。
【0057】
その結果を
図5に示す。pHが3.5〜4.6におけるOHラジカル生成速度が15μM/h以上と高いことがわかる。そして、pH4付近、3.8〜4.3におけるOHラジカル生成速度がより高く、好ましい防除薬のpHであることがわかる。