特許第5963219号(P5963219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963219微小レンズアレイを使用してラインを生成する光学設計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963219
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】微小レンズアレイを使用してラインを生成する光学設計
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20160721BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20160721BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20160721BHJP
   B23K 26/073 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   H01L21/268 J
   H01L21/265 602C
   H01L21/268 T
   H01L21/20
   G02B13/00
   !B23K26/073
【請求項の数】21
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-539968(P2014-539968)
(86)(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公表番号】特表2015-503221(P2015-503221A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】US2012059991
(87)【国際公開番号】WO2013066600
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年9月16日
(31)【優先権主張番号】61/555,938
(32)【優先日】2011年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/649,028
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ホルムグレン, ダグラス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハウエルズ, サミュエル シー.
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06771686(US,B1)
【文献】 特開2006−330071(JP,A)
【文献】 特開2002−072132(JP,A)
【文献】 特表2009−543143(JP,A)
【文献】 特表2008−526511(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/087784(WO,A1)
【文献】 特開2006−309207(JP,A)
【文献】 特開平09−275081(JP,A)
【文献】 特開2008−283069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
H01L 21/265
G02B 13/00
B23K 26/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を処理する熱処理装置であって、
基板支持体と、
光路に沿ってレーザ放射を発射するレーザ放射源と、
前記光路に沿って配置された照明光学部品であり、
互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有する一組の遅軸レンズ、ならびに
互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有し、前記一組の遅軸レンズの前記第1の円柱レンズと前記第2の円柱レンズの間に配置された一組の速軸レンズ
を備える前記照明光学部品と、
前記光路に沿って前記照明光学部品と前記基板支持体の間に配置された、第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを備えるホモジナイザであり、前記第2のレンズアレイのレンズが前記第1のレンズアレイのレンズよりも相対的に大きいレンズピッチを有し、前記第1のレンズアレイのレンズ軸および前記第2のレンズアレイのレンズ軸が前記レーザ放射源の速軸に平行に配向されている、前記ホモジナイザと
を備える熱処理装置。
【請求項2】
前記光路に沿って前記ホモジナイザと前記基板支持体の間に配置された複数の集光レンズをさらに備え、前記複数の集光レンズが、少なくとも5つの球面レンズを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイがそれぞれ複数の曲面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイが円柱レンズである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記レーザ放射源は、3×9アレイとしてまとめられた27個のレーザダイオードバーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記一組の遅軸レンズの前記第1の円柱レンズが、前記レーザ放射源の方を向いた凸形のレンズ面を有し、前記一組の遅軸レンズの前記第2の円柱レンズが、前記基板の表面の方を向いた凸形のレンズ面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記一組の速軸レンズの前記第1の円柱レンズが、前記レーザ放射源の方を向いた凹形のレンズ面を有し、前記一組の速軸レンズの前記第2の円柱レンズが、前記基板の表面の方を向いた凸形のレンズ面を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
円柱レンズの第1のレンズアレイが0.15の開口数NAを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
半導体基板を処理する熱処理装置であって、
基板支持体と、
第1の波長のレーザ放射を発射するレーザダイオードバーのアレイであり、前記レーザダイオードバーの前記アレイが、遅軸に沿って延びる複数の平行な列として配置されており、前記レーザダイオードバーの前記列が、速軸に沿ったスタックとして配置されており、前記遅軸および前記速軸が、前記レーザダイオードバーの前記アレイと前記基板支持体の間の光路と直交する前記レーザダイオードバーの前記アレイと、
前記光路に沿って前記レーザダイオードバーの前記アレイと前記基板支持体の間に配置された照明光学部品であり、
偏光ビームスプリッタ、
互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有する一組の遅軸レンズ、
互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有し、前記一組の遅軸レンズの前記第1の円柱レンズと前記第2の円柱レンズの間に配置された一組の速軸レンズ、
前記一組の速軸レンズの下流に配置され、加熱された前記基板から反射された第2および第3の波長のレーザ放射の方向を高温計へ変えるように構成されたダイクロイックミラー、ならびに
前記ダイクロイックミラーの下流に配置され、レーザ放射の直線偏光を円偏光に変換する波長板
を備える前記照明光学部品と、
レーザ放射を前記遅軸に沿って均質にするため、前記光路に沿って前記照明光学部品と前記基板支持体の間に配置されたホモジナイザであり、
第1のレンズアレイ、ならびに
第2のレンズアレイ
を備え、前記第2のレンズアレイのレンズが前記第1のレンズアレイのレンズよりも相対的に大きいレンズピッチを有する、前記ホモジナイザと、
前記基板の表面にライン像を焦束させるため、前記光路に沿って前記ホモジナイザと前記基板支持体の間に配置された集光レンズセットであり、少なくとも5つの球面レンズを有する前記集光レンズセットと
を備える熱処理装置。
【請求項10】
前記レーザダイオードバーの前記アレイは、3×9アレイとしてまとめられた27個のダイオードバーを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記一組の遅軸レンズの前記第1の円柱レンズが、前記レーザダイオードバーの前記アレイの方を向いた凸形のレンズ面を有し、前記一組の遅軸レンズの前記第2の円柱レンズが、前記基板の表面の方を向いた凸形のレンズ面を有する、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記一組の速軸レンズの前記第1の円柱レンズが、前記レーザダイオードバーの前記アレイの方を向いた凹形のレンズ面を有し、前記一組の速軸レンズの前記第2の円柱レンズが、前記基板の表面の方を向いた凸形のレンズ面を有する、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記第1のレンズアレイの軸および前記第2のレンズアレイの軸が、前記レーザ放射源の速軸に平行な軸に沿って配向されている、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の波長が808nmであり、前記第2の波長が940nmであり、前記第3の波長が1550nmである、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記ホモジナイザが、
円柱レンズの前記第1のレンズアレイと円柱レンズの前記第2のレンズアレイの間に置かれた円柱レンズ
をさらに備える、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
半導体基板を処理する熱処理装置であって、
基板支持体と、
遅軸に沿って延びる複数の平行な列として配置されたレーザダイオードバーのアレイであり、前記レーザダイオードバーの前記列が、速軸に沿ったスタックとして配置されており、前記遅軸が、前記速軸に対して概ね垂直である前記レーザダイオードバーの前記アレイと、
前記レーザダイオードバーの前記アレイと前記基板支持体の間に配置された照明光学部品であり、
互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有し、前記遅軸におけるレーザビーム放射を平行にする一組の遅軸レンズ、ならびに
互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有し、前記一組の遅軸レンズの前記第1の円柱レンズと前記第2の円柱レンズの間に配置され、前記速軸におけるレーザビーム放射を平行にする一組の速軸レンズ
を備える前記照明光学部品と、
前記照明光学部品によって平行になったレーザ放射を前記遅軸に沿って均質にするため、前記照明光学部品と前記基板支持体の間に配置されたホモジナイザであり、
円柱レンズの第1のレンズアレイ、ならびに
円柱レンズの前記第1のレンズアレイと平行に間隔を置いて配置された円柱レンズの第2のレンズアレイ
を備え、円柱レンズの前記第2のレンズアレイのレンズが円柱レンズの前記第1のレンズアレイよりも相対的に大きいレンズピッチを有し、前記第1のレンズアレイの軸および前記第2のレンズアレイの軸が、前記レーザ放射源の速軸に平行に配向されている、前記ホモジナイザと、
前記基板の表面にライン像を焦束させるため、前記基板支持体と交差する光路に沿って前記ホモジナイザと前記基板支持体の間に配置された集光レンズセットであり、少なくとも5つの球面レンズを有する前記集光レンズセットと
を備える熱処理装置。
【請求項17】
前記一組の遅軸レンズの前記第1の円柱レンズが、前記レーザダイオードバーの前記アレイの方を向いた凸形のレンズ面を有し、前記一組の遅軸レンズの前記第2の円柱レンズが、前記基板の表面の方を向いた凸形のレンズ面を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記一組の速軸レンズの前記第1の円柱レンズが、前記レーザダイオードバーの前記アレイの方を向いた凹形のレンズ面を有し、前記一組の速軸レンズの前記第2の円柱レンズが、前記基板の表面の方を向いた凸形のレンズ面を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記一組の遅軸および速軸レンズが、明細書の表1(L2−L5)に示された光学規定を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
円柱レンズの前記第1のレンズアレイおよび円柱レンズの前記第2のレンズアレイが、明細書の表2に示された光学規定を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記集光レンズセットが、明細書の表3(L1−L5)および表4に示された光学規定を有する、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は一般に半導体基板の熱処理に関する。詳細には、本発明は、半導体基板のレーザ熱処理に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハまたは他の基板、例えばディスプレイ装置用のガラスパネルに形成されたシリコン集積回路および他の半導体集積回路の製造には熱処理が必要である。必要な温度は、250℃未満の比較的に低い温度から、1000℃超、1200℃超または1400℃超にも及ぶことがあり、熱処理は、ドーパント注入アニール、結晶化、酸化、窒化、ケイ化、化学気相堆積など、さまざまなプロセスに対して使用することができる。
【0003】
先進の集積回路に必要な非常に浅い回路フィーチャに関しては、必要な熱処理を達成するための全サーマルバジェット(total thermal budget)を低減させることが望ましい。サーマルバジェットは、所望の処理温度を達成するのに必要な高温にある時間の合計と考えることができる。ウエハを最高温度に維持する必要がある時間を非常に短くすることができる。例えば、高速熱処理(rapid thermal processing)(RTP)は、非常に高速にオン/オフすることができる放射ランプを使用して、チャンバの他の部分を加熱せずにウエハだけを加熱する。非常に短い(約20ns)レーザパルスを使用するパルスレーザアニールは、その下のウエハを加熱せずに表層だけを加熱するのに有効であり、したがって、非常に短いランプアップ(ramp up)およびランプダウン(ramp down)レートを可能にする。
【0004】
熱流束レーザアニールまたは動的表面アニール(dynamic surface annealing)(DSA)と時に呼ばれる、より最近になって開発された、さまざまな形態をとる1つの方法は、テーパの付いたライトパイプおよびアナモルフィック結像光学部品を使用して、細長い放射ラインとしてウエハに衝突する非常に強い光ビームを生み出す。次いで、この放射ラインを、ウエハの表面の上で放射ラインビームの長さ寸法に対して垂直の方向に走査する。しかしながら、像を遅軸(slow axis)(すなわち放射ラインの長さ方向)に沿って均質にし、拡大/縮小する目的に使用されるライトパイプは壊れやすく、製造が難しく、システムの他の光学部品に対する不良軸合わせを引き起こしやすいことが報告されている。
【0005】
したがって、レーザライン像を投影するより効率的でより経済的な光学システムであって、軸合わせエラーに対する感度がより低く、より壊れにくい光学システムが求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は一般に半導体基板の熱処理に関する。一実施形態では、半導体基板を処理する熱処理装置が提供される。この装置は、基板支持体と、レーザ放射源と基板支持体の間の光路に沿ってレーザ放射を発射するレーザ放射源と、光路に沿って配置された照明光学部品であり、互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有する一組の遅軸レンズ、ならびに互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有し、一組の遅軸レンズの第1の円柱レンズと第2の円柱レンズの間に配置された一組の速軸(fast axis)レンズを備える照明光学部品と、光路に沿って照明光学部品と基板支持体の間に配置された、レーザ放射源からのレーザ放射を均質にするホモジナイザであり、円柱レンズの第1の微小光学小型レンズアレイ、ならびに円柱レンズの第1の微小光学小型レンズアレイの小型レンズピッチよりも相対的に大きい小型レンズピッチを有する円柱レンズの第2の微小光学小型レンズアレイを備えるホモジナイザとを含む。一例では、第1の微小光学小型レンズアレイの小型レンズ軸および第2の微小光学小型レンズアレイの小型レンズ軸が、レーザ放射源の速軸に平行な軸に沿って配向されている。この装置はさらに、光路に沿ってホモジナイザと基板支持体の間に配置された、基板の表面にライン像を焦束させる複数の集光レンズを備え、この複数の集光レンズは、全ての面が球面である少なくとも5つのレンズを有する。
【0007】
他の実施形態では、半導体基板を処理する熱処理装置が提供される。この装置は、基板支持体と、第1の波長のレーザ放射を発射するレーザダイオードバーのアレイであり、遅軸に沿って延びる複数の平行な列として配置されており、レーザダイオードバーの列が、速軸に沿ったスタックとして配置されており、遅軸および速軸が、レーザダイオードバーのアレイと基板支持体の間の光路と直交するレーザダイオードバーのアレイと、光路に沿ってレーザダイオードバーのアレイと基板支持体の間に配置された照明光学部品であり、偏光ビームスプリッタ、互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有する一組の遅軸レンズ、互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有し、一組の遅軸レンズの第1の円柱レンズと第2の円柱レンズの間に配置された一組の速軸レンズ、一組の速軸レンズの下流に配置され、加熱された基板から反射された第2および第3の波長のレーザ放射の方向を高温計へ変えるように構成されたダイクロイックミラー、ならびにダイクロイックミラーの下流に配置され、レーザ放射の偏光を90度回転させる波長板を備える照明光学部品と、遅軸に沿ってレーザ放射を均質にするため、光路に沿って照明光学部品と基板支持体の間に配置されたホモジナイザであり、円柱レンズの第1の微小光学小型レンズアレイ、ならびに円柱レンズの第1の微小光学小型レンズアレイの小型レンズピッチよりも相対的に大きい小型レンズピッチを有する円柱レンズの第2の微小光学小型レンズアレイを備えるホモジナイザと、基板の表面にライン像を焦束させるため、光路に沿ってホモジナイザと基板支持体の間に配置された集光レンズセットであり、全ての面が球面である少なくとも5つのレンズを有する集光レンズセットとを含む。
【0008】
他の実施形態では、半導体基板を処理する熱処理装置が提供される。この装置は、基板支持体と、遅軸に沿って延びる複数の平行な列として配置されたレーザダイオードバーのアレイであり、レーザダイオードバーの列が、速軸に沿ったスタックとして配置されており、遅軸が、速軸に対して概ね垂直であるレーザダイオードバーのアレイと、レーザダイオードバーのアレイと基板支持体の間に配置された照明光学部品であり、互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有し、遅軸におけるレーザビーム放射を平行にする一組の遅軸レンズ、ならびに互いから間隔を置いて配置された第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズを少なくとも有し、一組の遅軸レンズの第1の円柱レンズと第2の円柱レンズの間に配置され、速軸におけるレーザビーム放射を平行にする一組の速軸レンズを備える照明光学部品と、照明光学部品によって平行になったレーザビーム放射を遅軸に沿って均質にするため、照明光学部品と基板支持体の間に配置されたホモジナイザであり、円柱レンズの第1の微小光学小型レンズアレイ、ならびに円柱レンズの第1の微小光学小型レンズアレイに対して平行に配置され、円柱レンズの第1の微小光学小型レンズアレイから間隔を置いて配置された円柱レンズの第2の微小光学小型レンズアレイであり、円柱レンズの第1の微小光学小型レンズアレイの小型レンズピッチよりも相対的に大きい小型レンズピッチを有する円柱レンズの第2の微小光学小型レンズアレイを備えるホモジナイザと、基板の表面にライン像を焦束させるため、光路に沿ってホモジナイザと基板支持体の間に配置された集光レンズセットであり、全ての面が球面である少なくとも5つのレンズを有する集光レンズセットとを含む。
【0009】
本発明の上記の特徴を詳細に理解することができるように、そのうちのいくつかが添付図面に示された実施形態を参照することによって、上で簡単に概説した発明のより具体的な説明を得ることができる。しかしながら、添付図面は本発明の典型的な実施形態だけを示したものであり、したがって、添付図面を、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。等しく有効な別の実施形態を本発明が受け入れる可能性があるためである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に基づく熱流束レーザアニール装置の例示的な透視図である。
図2】レーザダイオードバーアレイと、全体として機能して、ウエハの表面に導くレーザ光の均一な分布を生み出し、それをウエハの表面に集束させるいくつかの光学部品とを有する光学システムを概念的に示す図である。
図3】レーザダイオードバーアレイの端面図である。
図4A】例示的な照明光学部品内を伝搬する出力ビームの速軸図および遅軸図である。
図4B】例示的な照明光学部品内を伝搬する出力ビームの速軸図および遅軸図である。
図5A】微小レンズアレイホモジナイザの遅軸図である。
図5B】予備均質化レンズアレイの小型レンズアレイの一部分の拡大遅軸図である。
図6A】例示的なフーリエ変換レンズ内を伝搬するレーザビームの遅軸図である。
図6B】フーリエ変換レンズの歪み関数と正規化された放射強度I(θ)および放射照度関数H(y)との関係を示す図である。
図7】レーザダイオードバーアレイ、照明光学部品、微小レンズアレイホモジナイザ、フーリエ変換レンズおよび高温計集光光学部品を含む本発明の一実施形態に基づく光学システムのレンズ配置の遅軸図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に基づく熱流束レーザアニール装置の例示的な透視図である。装置2は一般に、2次元走査用のガントリ構造体10を含む。ガントリ構造体10は、固定された一対の平行レール12、14を含むことができる。2本の平行ガントリ梁16、18が、固定されたある距離だけ離して一緒に固定されており、平行ガントリ梁16、18は、固定されたレール12、14上に支持されており、モータ(図示せず)および駆動機構(図示せず)によって制御されて、ローラまたは玉軸受(図示せず)上を、固定されたレール12、14に沿って一緒にスライドする。ガントリ梁16、18にはビーム源20がスライド可能に支持されており、ビーム源20は、図示されていないモータおよび駆動機構によって制御された梁16、18から吊り下げられて、梁16、18に沿ってスライドすることができる。ガントリ構造体10の下方に、基板、例えばシリコンウエハ22を動かないように支持することができる。後により詳細に論じるビーム源20は一般に、レーザ光源と、ラインビーム26としてウエハ22に衝突するビーム24を生み出す光学部品とを含み、ラインビーム26は、以後、遅方向と呼ぶ、固定されたレール12、14に対して概ね平行な方向(すなわちラインの長さの方向)に延びる。
【0012】
この図には示されていないが、ガントリ構造体10はさらに、扇形のビーム24に対して概ね平行な方向にレーザ光源および光学部品を移動させ、それによってビーム源20とウエハ22の間の距離を制御可能に変化させ、そのようにしてウエハ22の表面へのラインビーム26の集束を制御するZ軸ステージを含むことができる。ラインビーム26の例示的な寸法は、約5mmから約1cm、例えば約12mmの長さ、および約50μmから約90μm、例えば約75μmの幅を含み、例示的なパワー密度は220kW/cmである。あるいは、ビーム源および関連光学部品を固定し、ステージ(例えばX−Yステージ)上にウエハを支持し、ステージがウエハを2次元で走査することもできる。
【0013】
一実施形態では、ガントリ梁16、18を、固定されたレール12、14に沿ったある特定の位置に固定し、ビーム源20を、ガントリ梁16、18に沿って均一な速度で移動させて、ラインビーム26を、速方向と呼ぶ方向(すなわちライン幅方向)に、ラインビーム26の長さ寸法に対して垂直に走査する。あるいは、ビーム源20を固定し、ウエハ22をビーム源20に対して移動させ、それによってウエハ22の一方の側からもう一方の側までラインビーム26を走査して、ウエハ22の1cmの帯に照射することもできる。ラインビーム26は十分に細く、速方向の走査速度は十分に速いため、ウエハの特定のエリアがラインビーム26の光放射にさらされるのは一瞬だけだが、ラインビームのピーク強度は、その表面領域を非常に高い温度に加熱するのに十分である。しかしながら、ウエハ22のより深い部分はあまり加熱されず、したがって、ウエハ22のより深い部分は、表面領域を急速に冷却するヒートシンクの役目を果たす。高速走査が完了した後、遅軸に沿って延びるラインビーム26の長さ寸法に沿ってラインビーム26が移動するような態様で、ガントリ梁16、18またはX−Yステージによって移動するウエハ22を新たな位置へ移動させる。次いで、高速走査を再び実行して、ウエハ22の隣接する帯に照射する。ウエハ22全体が熱処理されるまで、この高速走査と遅速走査を交互に繰り返す。このときビーム源20はおそらく蛇行経路に沿って移動する。
【0014】
例示的なビーム源20が図2に概念的に示されている。図2は、レーザダイオードバーアレイと、一緒に機能して、ウエハ22の表面に焦束させるレーザ光の均一な分布を生み出すいくつかの光学部品とを備える光学システム200を示す。一実施形態では、光学システム200が一般に、レーザダイオードバーアレイ202、照明光学部品204、微小レンズアレイとすることができるホモジナイザ206、フーリエ変換レンズ(または視野レンズ)208、および高温計集光光学部品210を含む。矢印「A」は、レーザダイオードバーアレイ202から約808nmのレーザ放射が発射され、このレーザ放射が、順に照明光学部品204、微小レンズアレイホモジナイザ206、フーリエ変換レンズ208を通過してウエハに伝わることを示している。加熱されたウエハから放出された熱放射の一部は、フーリエ変換レンズ208によって集められ、微小レンズアレイホモジナイザ206、照明光学部品204を通過して、レーザダイオードバーアレイ202の方へ向かう。微小レンズアレイホモジナイザ206と照明光学部品204の間にビームリフレクタ(図示せず)を配置して、加熱されたウエハから高温計波長(940nm、1550nm、矢印「B」)で放出された熱放射の一部を高温計集光光学部品210へ導き、それによって熱処理中のウエハの温度を監視することができる。レーザダイオードバーアレイ202に対する熱の影響を回避または最小化するため、照明光学部品204は、加熱されたウエハから反射された熱放射を集める1つまたは複数のビームダンプ(図示せず)を含むことができる。光学システム200については後により詳細に論じる。
【0015】
図3は、レーザダイオードバーアレイ202の端面図を示す。レーザダイオードバーアレイ202は複数のダイオードバー302を有することができ、ダイオードバー302はそれぞれ、ダイオードバー302上に取り付けられ、400μmのピッチで分離された所望の数のレーザダイオード(図示せず)、例えば約25個のレーザダイオードを含む。ダイオードバー302を互いに平行に配置してレーザバースタック304を形成することができる。処理に必要な出力パワーに応じて、ダイオードバー302およびスタック304の数は変更することができる。出力要件が、ダイオードバーアレイ全体から少なくとも1600Wを得ることができることである場合には、所与のダイオードバーからの全パワーを制限して、レーザダイオードの有効寿命を延ばすことが有利なことがある。例えば、それぞれのダイオードバー302の全体の出力パワーを約60Wに制限することができる。ピッチが約1.8mm(高さ)、ダイオードバーの長さが約10mmである一実施形態では、パワー密度/バーが約330W/cmである。全体のパワー要件を満たすためには、この低い光出力を補償するのに、(速軸方向の)9つのダイオードバー302の合計3つの(遅軸方向の)スタック304が必要であることが分かった。したがって、レーザダイオードバーアレイ202は、図示されているように3×9アレイとしてまとめられた合計27個のダイオードバー302を有する。
【0016】
それぞれのダイオードバー302は一般に、熱処理用途に適した波長のビーム、例えば約190nmから約950nmの間の波長、特定の用途では波長808nmのビームを発射するように構成されたpn接合に対応する。ダイオードバー302の形状寸法のため、分離したそれぞれのダイオードバー302からの未処理の出力ビームは、発散が大きく、(ともにビーム方向に対して垂直な)速軸と遅軸の両方について非対称である。典型的な速軸発散は約40°FWHM(Full Width Half Maximum、半値全幅)であり、遅軸発散は約10°FWHMである。大部分の用途では、1つまたは複数の光学要素を使用して、出力ビームを再整形して長方形断面を有するビームにした方が有利である。速軸方向ではより高い発散が観察されるため、発散角Φ(出力ビームの発散角Φの遅軸図が図4に示されている)を有する出力ビームを速軸方向に沿って平行にするために、円柱レンズ(図示せず)などの光学要素がそれぞれのレーザダイオードをカバーすることができる。一実施形態では、光学システム200を通過する出力ビームの発散は、全ての動作電流に対して、遅軸に沿って7.5°FWHM(半値全幅)未満、速軸に沿って0.2°FWHM未満である。
【0017】
一実施形態では、ダイオードバー302の遅軸方向の長さが約2mmから約20mm、例えば約10mmであり、ダイオードバー302が、隣接するダイオードバーから、速軸方向に、約0.5mmから約3mm、例えば約1.8mm以下のバーピッチ「p」だけ離れている。スタック間隔「d」(スタックの中心からスタックの中心まで)は約5mmから約25mmの間、例えば約12mm以下とすることができる。レーザダイオードバーアレイ202の高さ「H」(これはバーの数およびバー間隔によって定まる)は約5mmから約30mm、例えば約14.4mmとすることができ、幅「W」(これもやはりバーの数およびバー間隔によって定まる)は約15mmから約50mm、例えば約34mmとすることができる。ダイオードバー302の間隔、ピッチおよび/またはサイズを含む構成を出力パワー要件に応じて変更することが企図される。後により詳細に論じるように、この特定の形状寸法を有するレーザダイオードバーアレイ202は、1つまたは複数の微小円柱レンズアレイによる均質化および球面を有するレンズを使用したビームラインの結像のために有利なアスペクト比を有する光学ビームを提供すると考えられる。
【0018】
図4Aおよび4Bは、例示的な照明光学部品400内を伝搬する出力ビームの遅軸図および速軸図を示す。照明光学部品400は、レーザダイオードバーアレイ202からの出力ビームを平行にし、出力ビームが微小レンズアレイホモジナイザ206に到達するときに、適切な遅軸発散および開口数(NA)でビームを集光する。照明光学部品400はさらに、レーザダイオード電流に対するホモジナイザ照明の依存性を排除し、微小レンズアレイホモジナイザ206の一定角度の遅軸照明を提供するのに役立つ。一実施形態では、照明光学部品400が、偏光ビームスプリッタ402(図面では「L1」として識別される)、高温計ダイクロイックミラー404(「L6」として識別される)、波長板406(「L7」として識別される)、一組の遅軸レンズ408(「L2」および「L5」として識別される)、および一組の速軸レンズ410(「L3」および「L4」として識別される)を含む。偏光ビームスプリッタ402は、レーザダイオードバーアレイ202の下流に配置することができ、直交する偏光方向を有する一方または両方の成分を生み出すように構成することができる。偏光ビームスプリッタ402は、レーザダイオードバーアレイ202からの指定された直線偏光を有する出力ビームが偏光ビームスプリッタ402に到達し、偏光ビームスプリッタ402がその出力ビームを光軸Z(光路)に沿って透過させることを保証し、指定された直線偏光以外の光を光路から逸らしてビームダンプ(図示せず)へ導くように構成される。一例では、偏光ビームスプリッタ402が、遅軸に対して約45度の角度で配置される。ビーム経路上の偏光ビームスプリッタ402と微小レンズアレイホモジナイザ206の間の位置などに、1/4(λ/4)波長板などの波長板406を、波長板406を通過した直線偏光ビームが円偏光になるように配置することができる。一例では、波長板406が、高温計ダイクロイックミラー404と微小レンズアレイホモジナイザ206の間に配置される。
【0019】
偏光ビームが、一組の遅軸レンズ408、一組の速軸レンズ410、高温計ダイクロイックミラー404、波長板406、および光学システム200の残りの部分(すなわち図2に示されているように微小レンズアレイホモジナイザ206およびフーリエ変換レンズ208)を通過した後、ビームの一部がウエハ22の表面から反射されて、光学システム200内を逆方向へ進むことがある。このような逆方向への透過の間に、ビームは、波長板406との2度目の遭遇によって再び直線偏光になる。ただし、このときには90°回転している。偏光ビームスプリッタ402と2度目に遭遇すると、レーザ放射はビームダンプへ導かれ、これによって、レーザダイオードバーアレイ202は潜在的な損傷から保護される。
【0020】
加熱されたウエハ22から放出された波長950nm以上の熱放射は、高温計ダイクロイックミラー404によって方向が変えられて高温計へ導かれる(図7)。高温計の出力はコントローラ(図示せず)に供給され、コントローラは、検出された光電流をウエハ温度に変換し、それを所望の温度と比較し、それによって、レーザダイオードバーアレイ202に供給する電力を調整する(これについては後に詳細に論じる)。
【0021】
一組の遅軸レンズ408は、物体側Aから像側Bに向かって順に、互いから間隔を置いて配置された、有効焦点距離fが約120mmの円柱レンズ408aおよび円柱レンズ408bを含むことができる。円柱レンズ408aと408bの間には一組の速軸レンズ410が配置されており、一組の速軸レンズ410は、物体側Aから像側Bに向かって順に、速軸方向の倍率が1.18倍の焦点望遠鏡(focal telescope)またはビームエクスパンダを構成するように間隔を置いて配置された円柱レンズ410aおよび円柱レンズ410bを含むことができる。一実施形態では、円柱レンズ408aが、物体側Aの方を向いた凸形のレンズ面420を有し、円柱レンズ408bが、像側Bの方を向いた凸形のレンズ面422を有する。円柱レンズ410aは、物体側Aの方を向いた凹形のレンズ面426を有し、円柱レンズ410bは、像側Bの方を向いた凸形のレンズ面428を有する(図4B)。本発明の一実施形態に基づく遅軸レンズ408(すなわち円柱レンズ408aおよび円柱レンズ408b)および速軸レンズ410(すなわち円柱レンズ410aおよび円柱レンズ410b)に対する詳細な規定を下表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
レーザダイオードバーアレイ202は、焦点距離fの一組の遅軸レンズ408の前焦点面に位置し、微小レンズアレイホモジナイザ206は後焦点面に位置する。動作時、遅軸レンズ408は、遅軸に沿って一定の発散角を有するビームを生み出す。このビームは、図4Aに示されているように、集光され、収束して、光軸Zの方向の微小レンズアレイホモジナイザ206の入力端、すなわち予備均質化レンズアレイ502に入る。内側の速軸レンズ410は、レーザダイオード上の円柱レンズに起因する残留発散を除去しまたは低下させる。このビームは、図4Bに示されているように、速軸の方向に拡大され、平行にされて、微小レンズアレイホモジナイザ206に入る(分かりやすくするため偏光ビームスプリッタ402、高温計ダイクロイックミラー404および波長板406は省略されている)。一組の遅軸および速軸レンズ408、410は、遅軸方向の発散が大きく一定となり(次の段落論じる)、速軸方向に沿った発散角Φがより小さくなるように、レーザダイオードバーアレイ202のビーム出力を変換する。微小レンズアレイホモジナイザ206に入る速軸の発散角がより小さいことは、ウエハ22におけるラインの集束がより密であることを意味する。
【0024】
照明光学部品400は、予備均質化レンズアレイ502の開口数(NA)が約0.15である微小レンズアレイホモジナイザ206に、適切な遅軸発散を有するレーザビームを送達するのに役立つ。微小レンズアレイホモジナイザ206からの出力の均一性を良好にするためには、入射遅軸発散が、微小レンズアレイホモジナイザ206の開口数(NA)を超えないことが重要である。微小レンズアレイホモジナイザ206に入射する遅軸発散を制御するため(レーザダイオードバーアレイ202からのSA発散は、電流/電力出力の関数であることに留意されたい)、有効焦点距離fが約120mmの一対の円柱レンズ408a、408bによって、ダイオードアレイの発光平面を、遅軸方向において、光学的にフーリエ変換する。光学フーリエ変換の特性(後に論じる)のため、後焦点面における光の角度は、レーザダイオードバーアレイ202における光の空間位置によって決まる。レーザダイオードバーアレイ202の空間発光パターンは均一であり、ダイオードのパワーから独立しており、幾何学的に対称であるため、微小レンズアレイホモジナイザ206に入射する発散も同様に均一であり、ダイオードのパワーから独立している。一方、微小レンズアレイホモジナイザ206におけるビームの遅軸の空間的広がりは、レーザダイオードバーアレイ202からの遅軸発散によって定まり、処理スキームに応じて変更することができる。照明光学部品400は、速軸の発散を約1/1.18に低下させる。ある種の実施形態では、ダイオードアレイの速軸発散が0.135°である場合に、ウエハ22の像平面における最終的なライン幅が<80μmFWHMである要件を満たすことを保証するのに、このことが必要である。ダイオードアレイの速軸発散が<0.12°の目標を満たす場合には、速軸レンズ410を省くことができることに留意されたい。
【0025】
図5Aは、図2に関して上で論じた微小レンズアレイホモジナイザ206などの微小レンズアレイホモジナイザ500の遅軸図を示す。微小レンズアレイホモジナイザ500は一般に、予備均質化レンズアレイ502(図面では「L8」として識別される)、予備均質化レンズアレイ502に対して平行に配置され、予備均質化レンズアレイ502からこのレンズの焦点距離だけ離隔した最終均質化レンズアレイ504(「L10」として識別される)などの微小レンズアレイを使用して、レーザビームを遅軸に沿って均質にする。予備均質化レンズアレイ502および最終均質化レンズアレイ504が小型円柱レンズのアレイである場合には、予備均質化レンズアレイ502の小型円柱レンズ軸および最終均質化レンズアレイ504の小型円柱レンズ軸を、レーザダイオードバーアレイ202の速軸に平行な軸に沿って配向することができる。微小レンズアレイホモジナイザ500の開口数(NA)は特に、全ての面が球面であるフーリエ変換レンズ208を可能にするように選択することができる。2つの微小レンズアレイ(すなわち502、504)が示されているが、ウエハ位置における最終ライン像のスペックルを低減させるため、微小レンズアレイホモジナイザ500が3つ以上の微小レンズアレイを含むこともできる。
【0026】
動作時、光源、すなわちレーザダイオードバーアレイ202からの出力ビームを、上で論じた照明光学部品204の円柱レンズによって集束させ、微小レンズアレイホモジナイザ500に、遅軸に沿った有限の収束角で、しかし速軸に沿って実質的に平行に入射させる。微小レンズアレイホモジナイザ500は、遅軸上に間隔を置いて配置されたレーザバースタック304(図3)内の複数のレーザダイオードによって導入された遅軸に沿ったビーム構造を低減させ、光源の可能な不均一性を平滑化する。予備均質化レンズアレイ502および最終均質化レンズアレイ504は、円柱レンズまたは複数の曲面を有するレンズとすることができる。図5Aに示された一実施形態では、予備均質化レンズアレイ502および最終均質化レンズアレイ504が一般に、それぞれ円柱レンズ503、505からなる微小光学小型レンズアレイを含む。図5Bは、例えば予備均質化レンズアレイ502の小型レンズアレイの一部分の拡大遅軸図を示す。図示された小型レンズアレイは2つの隣接した円柱レンズ503a、503bを含み、円柱レンズ503aと503bの間には遷移領域510が位置する。遷移領域510では、表面の輪郭が、凸面円柱レンズ503a、503bになめらかに接続する凹形円柱レンズに近い。この遷移領域510の幅は、ライン像の端におけるラインの長さおよび縁の傾斜に影響を及ぼす。一例では、遷移領域510の長さが約20μmから約60μm、例えば約40μmであり、円柱レンズ503a、503bの長さがそれぞれ約180μmから約300μm、例えば約250μmである。
【0027】
微小レンズアレイに入射する光には、最終的なライン像における望ましくないコヒーレントアーチファクトにつながる可能性がある十分な空間的コヒーレンスがあるため、予備均質化レンズアレイ502と最終均質化レンズアレイ504の間に追加のレンズ、例えば弱い円柱レンズ506(図面では「L9」として識別される)を置いて、このコヒーレント不均一性を小さくするのに役立てることができる。弱い円柱レンズ506の焦点距離は約500mmとすることができる。後続のフーリエ変換レンズ208内の球面光学部品を使用して像ライン長の要件を満たすためには、微小レンズアレイホモジナイザ206に、遅軸の開口数NAが約0.16である微小レンズアレイ(すなわちレンズアレイ502、504)が必要なことがあることは上で示した。レンズアレイの開口数は下式によって表すことができる。
【0028】
【数1】
上式で、「ピッチ」は、小型レンズアレイ間隔(例えば円柱レンズ503aの中心から隣接した円柱レンズ503bの中心までの間隔)、「フィルファクタ」は、小型レンズの幅とピッチの比、「f」は小型レンズの焦点距離、「r」は、小型レンズの前面および後面の曲率半径、「n」は、設計波長におけるアレイ材料の屈折率である。小型レンズアレイが溶融シリカを使用する場合、屈折率nは、約808nmのλで約1.453である。小型レンズアレイのフィルファクタは主に製造方法によって決まる。一実施形態では、予備均質化レンズアレイ502および最終均質化レンズアレイ504に使用する小型レンズアレイがLIMOレンズアレイ(ドイツDortmundのLIMO GmbHから販売されている)であり、測定されたフィルファクタは90%よりも大きい。下表2は、本発明の一実施形態に基づく微小レンズアレイホモジナイザ500で使用される予備均質化レンズアレイ502および最終均質化レンズアレイ504に対する光学規定を示す。微小レンズアレイNo.1は、像ラインのコヒーレント不均一性を小さくする役目を果たす予備均質化レンズアレイ502を表す。予備均質化レンズアレイ502のピッチは約275μm、NAは約0.155であり、このピッチおよびNAは、より大きな約0.164のNAを与えるより大きな約290μmのピッチを除いてアレイNo.1と同じ光学規定を有する最終均質化レンズアレイ504を表す微小レンズアレイNo.2のピッチおよびNAよりもわずかに小さい。微小レンズアレイホモジナイザ500は、微小レンズアレイホモジナイザ206の小型レンズアレイNAに近く、微小レンズアレイホモジナイザ206の小型レンズアレイNAを超えない遅軸NAを有する入射光によって照明されたときに最もよく機能することが実験的に観察されている。特に、小型レンズアレイNAに近い入射光NAを有することによって、レーザダイオードバーアレイ202の空間的コヒーレンスに起因する干渉の影響は小さくなる。したがって、予備均質化レンズアレイ502と最終均質化レンズアレイ504の間のピッチの違いは、2つのレンズアレイ502と504が全く同じピッチを有する場合には生じるレンズアレイ502と504の間の周波数干渉を低減させるのに有利なことがある。
【0029】
これらの光学パラメータは、十分な数の小型レンズ、すなわち円柱レンズ503、505からなる微小光学小型レンズアレイが、レーザダイオードバーアレイ202および照明光学部品204によって照明されるのに十分な小さいピッチを提供するように選択した。一例では、予備均質化レンズアレイ502および最終均質化レンズアレイ504のそれぞれに、微小レンズアレイホモジナイザ206内で約15mmのビーム幅をカバーする約50個の円柱レンズ503、505がある。
【0030】
【表2】
【0031】
図6Aは、図2に関して上で論じたフーリエ変換レンズ208などの例示的な集光レンズセット600内を伝搬するレーザビームの遅軸図を示す。集光レンズセット600は、適当なフーリエ変換レンズ、または図6Aに関して後述する特定のレンズ配置を有する集光レンズセット600とすることができる。このフーリエ変換レンズは、ライン像をウエハ22に焦束させるように設計されており、最終微小レンズアレイによって生み出された放射強度分布にマッチした特定の光学歪みを有する。このレンズ設計は意図的に非点収差を生じさせ、それによって個々のレンズ要素の数がより少ないより単純な設計を可能にし、それにもかかわらず、ラインの均一性に負の影響を与えないライン像の高品質結像を可能にする。一実施形態では、集光レンズセット600が一般に、物体側Aから像側Bへ順に、光軸Zに沿って配置され、全ての面が球面である5つの個々のレンズ、例えば第1のレンズ602、第2のレンズ604、第3のレンズ606、第4のレンズ608および第5のレンズ610(図面ではそれぞれ「L11」、「L12」、「L13」、「L14」および「L15」として識別される)を含むレンズアレイを含む。全てのレンズが球面レンズである集光レンズセット600は、円柱光学部品と球面光学部品の両方を使用するアナモルフィック設計に比べてより経済的な製造およびより簡単な軸合わせを可能にする。本発明の一実施形態に基づく個々のそれぞれのレンズ602、604、606、608および610に対する詳細な規定を下表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
図6Aはさらに、交換可能な出力窓612(図面ではW1として識別される)およびチャンバ窓614(図面ではW2として識別される)を含むことができる。交換可能な出力窓612は光学システム200の内部を保護する。平行になったレーザビームは、チャンバ窓614を通ってチャンバに入ることができる。熱処理用途では、チャンバ窓614を、処理中のウエハ22よりも大きくすることができる。これは、処理の一部として、ウエハの全領域に光が到達する必要がある場合があるためである。本発明がこの特定の数のレンズだけに限定されないこと、および代替実施形態はさまざまな数のレンズを含むことができることに留意されたい。それぞれのレンズの特定の光学特性およびレンズを組み合わせる方式が、ウエハ22の表面に提供される重ねられた像の形状を規定することがある。
【0034】
フーリエ変換レンズ208などの集光レンズセット600は、ウエハ22(図2)の位置に最終ライン像を形成する。このレンズがフーリエ変換レンズと呼ばれるのは、その後焦点面に像が形成されるためである。そのようなレンズとして、このレンズは、無限共役で動作し、所与の入射角の入力ビームをウエハ22の像平面上の位置にマップする。レンズの一般化された歪み関数g(θ)は、y=fg(θ)によって定義される入力角θから像位置yへのマッピングを決定する。最終均質化レンズアレイ504の直後に生み出される正規化された放射強度I(θ)は、1ラジアン当たりの光強度の尺度であり、すなわち、I(θ)dθは、ビーム角θとθ+dθの間に含まれる光強度である(便宜上I(θ)=1と仮定する)。NAが適度に大きい微小レンズアレイに固有の収差により、関数I(θ)は、トップハット(top hat)形(図6Bの(a)参照)ではなく、2次方程式I(θ)=1+cθによってうまく表される(図6Bの(b)参照)。ウエハ22の像平面における正規化された放射照度関数H(y)は、H(y)dyが、yからy+dyの領域内の光強度であるような態様で定義される。非常に均一な放射照度に関してはH(y)が一定であり、H(y)は便宜上1と仮定され、歪みマッピングy=g(θ)は、H(y)=1となるマッピングである。エネルギー保存の法則により、角度θを位置yに変換するマッピングg(θ)の下で、式I(θ)dθ=H(y)dy、または均一なトップハット形の放射照度についてはH(y)=1であるため式
を得ることができる。
【0035】
最終均質化レンズアレイ504によって生み出される正規化された放射強度は、2次方程式I(θ)=1+cθによって表すことができるため、方程式
が得られる。これから、所望の一般化された歪みマッピング
に対する最終的な結果が容易に得られる。これは、ウエハ22の像平面においてフラットトップ(flat top)形の放射照度H(y)を与える一般化された歪みマッピングである。唯一のパラメータは放射強度の2次係数cである。光学設計の歪みは、tan(θ)に対して指定される規約による。これは、tan(θ)が、x−y物体平面をウエハ22のx’−y’像平面にマップする、有限の物体/像距離に歪みがないマッピングだからである。tan(θ)はおよそθ+θ/3+...であるため、この規約による「0」歪みを有するレンズに対しては、c=1と仮定することができる。より具体的には、一般的な光学設計ソフトウェアで使用される定義によって、上で定義した一般化されたマッピングg(θ)によって特徴づけられるレンズの歪みは、
【0036】
【数2】
と定義することができる。したがって、cが分かれば、集光レンズセット600の個々のレンズに必要な歪みを特定することができる。集光レンズセット600がフーリエ変換レンズであり、放射強度への2次曲線の当てはめがc=−1.35を与える一例では、所望のフーリエ変換レンズ歪み(tan(θ)歪みからの逸脱)が、1.66ラジアンまたは9.5°の視野角で−2.14%である。フーリエ変換レンズを設計する際に使用されるメリット関数は、速軸方向の像スポットサイズを最小化するように定義される。さまざまな実施形態では、集光レンズセット600が、(1)上で論じた80mmFWHMのライン幅を満たすように速軸発散によってセットされる約38mmの有効焦点距離、(2)微小レンズアレイホモジナイザ206のNA(約0.164)によってセットされる±9.5°の入力視野角(遅軸)、(3)約20.5mmの後焦点距離(すなわちチャンバ窓614からウエハ22の像まで)、および(4)最大視野角9.5°における約−2.14%の(tan(θ)に対する)歪みを提供するように構成される。本発明に基づく集光レンズセット600のその他の規定は上表3および下表4に示されている。
【0037】
【表4】
【0038】
集光レンズセット600は、速軸方向の像スポットサイズを最小化するように構築することができるが、球面レンズだけを使用することによって、レンズが非点収差を示すことを可能にすることができる。遅軸方向の像スポットの成長は、ラインの端における重大でないラインの伸びおよび軟化を引き起こす。しかしながら、このようなレンズ設計は、速軸方向のライン幅に対して不利にはならず、個々のレンズ要素の数がより少ないより単純な設計、およびラインの均一性に負の影響を与えないライン像の高品質結像を可能にすることが示されている。集光レンズセット600で使用されるレンズの数が、上で論じた5つの球面要素だけに限定されないことが企図される。当業者は、必要に応じて、上記の方程式を使用してレンズを追加または除去して、集光レンズセット600の個々のそれぞれのレンズに必要な歪みを最適化することができる。
【0039】
図7は、上で論じたレーザダイオードバーアレイ202、照明光学部品(402、408a〜b 410a〜b、404および406)、微小レンズアレイホモジナイザ(502、504および506)および集光レンズセット(602、604、606、608、610、612および614)、ならびに高温計集光光学部品(702、704、706および708)を含む本発明の一実施形態に基づく光学システム700のレンズ配置の遅軸図を示す。図7では、1つまたは複数の電磁波源(すなわちレーザダイオードバーアレイ202)からウエハ22の表面までの光軸をZ軸と称する。この図面では光学システム700の遅軸(「SA」)が識別される。図示されているように速軸(「FA」)は紙面に対して直角である。図4Aに関して上で簡単に論じたとおり、ウエハ温度を調整または制御するため、ウエハ22の照明された部分の温度が、高温計集光光学部品によって絶えず監視される。レーザ源ビームを平行にしウエハ22の表面に焦束させるのに使用する光学部品と同じ光学部品を使用して、加熱されたウエハ22から放出された熱放射を逆方向に高温計702まで導く。この熱放射を、集光レンズセット(602、604、606、608、610、612および614)、微小レンズアレイホモジナイザ(502、504および506)を通して、高温計ダイクロイックミラー404まで逆方向へ伝搬させることができる。高温計ダイクロイックミラー404は、高温測定波長(例えば940nmおよび1550nm)に対する高い反射率と主レーザ波長808nmに対する高い透過率とを同時に有するコーティング(例えばSiOおよび/またはTa)を有する。加熱されたウエハ22から放出された波長940±5nmまたは1550±5nmの熱放射は、高温計ダイクロイックミラー404と2度目に遭遇すると、高温計ダイクロイックミラー404によって方向が変えられて光学フィルタ704へ導かれる。光学フィルタ704は、レーザ放射の波長、例えば波長808nmを遮断する。高温測定波長を有するレーザ放射は、任意選択のプリズム706によって反射されてレンズ708に達し、レンズ708は、このレーザ放射を高温計702の面に焦束させる。高温計の出力はコントローラ(図示せず)に供給され、コントローラは、検出された光電流をウエハ温度に変換し、それを所望の温度と比較し、それによって、レーザダイオードバーアレイ202に供給する電力を調整する。
【0040】
以上の説明は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく本発明の他の追加の実施形態を考案することができ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7