特許第5963223号(P5963223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

<>
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000002
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000003
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000004
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000005
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000006
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000007
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000008
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000009
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000010
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000011
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000012
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000013
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000014
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000015
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000016
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000017
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000018
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000019
  • 特許5963223-ガラス材料の加工方法及びその装置 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963223
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ガラス材料の加工方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/02 20060101AFI20160721BHJP
   B23H 3/08 20060101ALI20160721BHJP
   B23H 9/00 20060101ALI20160721BHJP
   B23H 3/06 20060101ALI20160721BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 21/306 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   C03C15/02
   B23H3/08
   B23H9/00 A
   B23H3/06
   C03C15/00 Z
   C03C15/00 C
   !H01L21/306 M
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-103033(P2015-103033)
(22)【出願日】2015年5月20日
(62)【分割の表示】特願2013-548265(P2013-548265)の分割
【原出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-231939(P2015-231939A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2015年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2011-266659(P2011-266659)
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】山内 和人
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−058236(JP,A)
【文献】 特開2008−121099(JP,A)
【文献】 特開2008−081389(JP,A)
【文献】 特開2008−136983(JP,A)
【文献】 特開2011−146695(JP,A)
【文献】 特開2009−117782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C15/00−23/00
H01L21/304−21/3063,21/308,
21/463−21/467
B23H1/00−11/00
C25F3/00,3/02,3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物のうち、フッ素系光学ガラス、ランタン系光学ガラス又は石英ガラスからなる光学ガラス材料、熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックス又はSiO薄膜からなるガラス材料を被加工物とし、該被加工物の表面を平坦化加工又は任意曲面に加工する加工方法であって、
水分子が解離して被加工物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質を加工基準面として用い、水の存在下で、前記被加工物と加工基準面とを接触若しくは極接近させて配し、前記加工基準面の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲とし、前記被加工物と加工基準面とを相対運動させて、前記分解生成物を被加工物表面から除去することを特徴とするガラス材料の加工方法。
【請求項2】
前記加工基準面として、金属元素を含み、金属元素の電子のd軌道がフェルミレベル近傍の触媒物質表面を用いる請求項1記載のガラス材料の加工方法。
【請求項3】
前記金属元素が、遷移金属元素である請求項2記載のガラス材料の加工方法。
【請求項4】
前記加工基準面が、少なくとも表面に導電性の触媒物質を有し、該触媒物質の電位を変化させて加工速度を制御する請求項1〜3何れか1項に記載のガラス材料の加工方法。
【請求項5】
前記水は、純水又は超純水を用いたHパージ水であり、前記加工基準面の触媒物質に水素を吸着させた状態で加工を行う請求項4記載のガラス材料の加工方法。
【請求項6】
前記水は、純水又は超純水に分解生成物の溶解を助ける錯体を混合したものである請求項1〜5何れか1項に記載のガラス材料の加工方法。
【請求項7】
前記分解生成物に応じて、水のpHを2〜12の範囲で調整する請求項1〜6何れか1項に記載のガラス材料の加工方法。
【請求項8】
酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物のうち、フッ素系光学ガラス、ランタン系光学ガラス又は石英ガラスからなる光学ガラス材料、熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックス又はSiO薄膜からなるガラス材料を被加工物とし、該被加工物の表面を加工する加工装置であって、
水を保持する容器と、
水分子が解離して被加工物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質を少なくとも表面に有する加工基準面を備え、水に浸漬させて前記容器内に配置される加工ヘッドと、
前記被加工物を保持して水に浸漬させ、前記加工基準面と接触若しくは極接近させて前記容器内に配置される被加工物ホルダと、
前記加工ヘッドと被加工物ホルダとを接触若しくは極接近させながら相対運動させる駆動機構と、
よりなり、前記加工基準面の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲とし、前記分解生成物を水中に溶出させ、あるいは前記被加工物と加工基準面との相対運動により前記分解生成物を被加工物表面から除去することで、前記被加工物表面を加工することを特徴とするガラス材料の加工装置。
【請求項9】
酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物のうち、フッ素系光学ガラス、ランタン系光学ガラス又は石英ガラスからなる光学ガラス材料、熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックス又はSiO薄膜からなるガラス材料を被加工物とし、該被加工物の表面を加工する加工装置であって、
水分子が解離して被加工物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質を少なくとも表面に有する加工基準面を備えた加工ヘッドと、
前記被加工物を前記加工基準面に対面させて保持する被加工物ホルダと、
前記加工ヘッドの加工基準面と被加工物ホルダに保持された被加工物とを接触若しくは極接近させながら相対運動させる駆動機構と、
前記加工ヘッドの加工基準面と被加工物ホルダに保持された被加工物の間に水を供給する水供給手段と、
よりなり、前記加工基準面の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲とし、前記分解生成物を水中に溶出させ、あるいは前記被加工物と加工基準面との相対運動により前記分解生成物を被加工物表面から除去することで、前記被加工物表面を加工することを特徴とするガラス材料の加工装置。
【請求項10】
前記加工基準面として、金属元素を含み、金属元素の電子のd軌道がフェルミレベル近傍の触媒物質表面を用いる請求項8又は9記載のガラス材料の加工装置。
【請求項11】
前記金属元素が、遷移金属元素である請求項10記載のガラス材料の加工装置。
【請求項12】
前記加工基準面が、少なくとも表面に導電性の触媒物質を有し、該触媒物質の電位を変化させて加工速度を制御する電位制御手段を更に備えてなる請求項8〜11何れか1項に記載のガラス材料の加工装置。
【請求項13】
前記水は、純水又は超純水を用いたHパージ水であり、前記加工基準面の触媒物質に水素を吸着させた状態で加工を行う請求項12記載のガラス材料の加工装置。
【請求項14】
前記水は、純水又は超純水に分解生成物の溶解を助ける錯体を混合したものである請求項8〜13何れか1項に記載のガラス材料の加工装置。
【請求項15】
前記分解生成物に応じて、水のpHを2〜12の範囲で調整する請求項8〜14何れか1項に記載のガラス材料の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材料の加工方法及びその装置に係わり、更に詳しくは環境負荷の少ないガラス材料の加工方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加工物の表面を平坦化加工若しくは研磨する方法は各種提供されている。代表的には、CMP(Chemical Mechanical Polishing)があり、最近ではCARE(CAtalyst-Referred Etching)が提案されている。
【0003】
一方、光学分野や半導体デバイスの製造分野では、CMPが必須の研磨手段として確固たる地位を固めている。CMPは、研磨剤(砥粒)自体が有する表面化学作用又は研磨液に含まれる化学成分の作用によって、研磨剤と研磨対象物の相対運動による機械的研磨(表面除去)効果を増大させ、高速かつ平滑な研磨面を得る技術である。一般には、研磨対象物をキャリアと呼ばれる部材で保持し、研磨布または研磨パッドを張った平板(ラップ)に押し付けて、各種化学成分および硬質の微細な砥粒を含んだスラリーを流しながら、一緒に相対運動させることで研磨を行う。化学成分が研磨対象物の表面を変化させることで、研磨剤単体で研磨する場合に比べて加工速度を向上することができる。また、研磨剤単体で研磨する場合に残る表面の微細な傷や表面付近に残る加工変質層がきわめて少なくなり、理想的な平滑面を得ることができる。ここで、CMP用の研磨剤には、主に酸化セリウム(CeO)若しくはランタンを含む酸化セリウムの微粒子を用いているが、レアアースであるセリウムは近年価格が高騰し、また入手にも支障が生じるようになっている。
【0004】
本発明者は、特許文献1によって、被加工物に対して常態では溶解性を示さないハロゲンを含む分子が溶けた処理液中に該被加工物を配し、白金、金又はセラミックス系固体触媒からなる触媒を被加工物の加工面に接触若しくは極接近させて配し、前記触媒の表面で生成したハロゲンラジカルと被加工物の表面原子との化学反応で生成したハロゲン化合物を、溶出させることによって被加工物を加工することを特徴とする触媒支援型化学加工方法を提案している。具体的には、ハロゲンを含む分子が溶けた処理液として、フッ化水素溶液又は塩化水素溶液を用いて、Si、SiC、サファイア等を加工する例が示されている。
【0005】
この触媒基準面に基づく加工方法は、本発明者によってCAREと命名された超精密な平坦化技術である。CAREは、研磨剤や砥粒を全く使用しない加工技術であり、加工によって被加工面にスクラッチや加工変質層を全く導入しない理想的な加工方法であるが、ハロゲンを含む分子が溶けた処理液、特にフッ化水素溶液を用いるので、処理空間の気密性や排気ガスや廃液の処理設備が必要になるので、CMPよりも取り扱いと装置コストが高くなるといった問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水の存在下で、Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面と、表面の少なくとも前記基板と接触する部位に導電性部材を有する研磨パッドの該表面とを互いに接触させつつ相対運動させて、前記基板表面を研磨することを特徴とする研磨方法が提案されている。ここで、前記導電性部材は、貴金属、遷移金属、グラファイト、導電性樹脂、導電性ゴムまたは導電性有機物であり、前記研磨パッドと前記基板との間に電圧を印加して、表面にエッチングピッドを生成させた後、電圧の印加を停止し、それから研磨パッドで研磨することにより研磨レートを高めることが開示されている。また、前記弱酸性の水または空気が溶解した水のpHは、3.5〜6.0であり、前記電解イオン水のpHは、3.5〜6.0または8.0以上であることが開示されている。
【0007】
この特許文献2の研磨のメカニズムは、基板の表面と研磨パッドの白金等の導電性部材の接触部でひずみが発生し、価電子帯電子が伝導帯へと励起されて電子・正孔対が生成され、次に、伝導帯に励起した電子は(仕事関数が大きい)白金等の導電性部材に移動し、基板表面に残った正孔に水中のOHイオンまたはHO分子が作用し、この結果、接触部のみが酸化され、接触部に形成されたGa,Al,Inの酸化物が二酸化炭素溶液等の弱酸や弱アルカリに可溶なため、水の内部に溶解して基板の表面から除去されるというものである。つまり、先ず導電性部材と接触した基板表面を酸化させ、それを弱酸性の水または空気が溶解した水に溶出させるというものであり、最初から酸化物となっている被加工物に対して適用できる理論ではない。従って、特許文献2に記載の発明では、固体酸化物の研磨若しくは加工は全く想定していないのである。
【0008】
一方、特許文献3には、微量の不可避不純物を除き超純水のみを用い、超純水中に配設したイオン交換機能又は触媒機能を有する固体表面での電気化学反応を利用してイオン積を増大させ、この水酸基又は水酸基イオンの濃度が増大した超純水中に被加工物を浸漬し、該被加工物を陽極とし、又は被加工物の電位を高く維持して、該被加工物の表面に水酸基イオンを引き寄せて、被加工物を水酸基又は水酸基イオンによる化学的溶出反応若しくは酸化反応によって除去加工若しくは酸化被膜形成加工する加工方法が開示されている。
【0009】
この特許文献3に記載の加工方法は、基本的には高電圧を印加する電解加工であり、水中の水酸基又は水酸基イオンの濃度を増大させる水酸基増加処理が重要な要件となっている。この水酸基増加処理として、イオン交換機能又は触媒機能を有する固体表面を用いるが、被加工物と接触して損傷し、被加工物表面に付着するなどの問題があった。そのため、基本的にはイオン交換機能又は触媒機能を有する固体表面と被加工物は非接触状態で、固体表面で生成した水酸基又は水酸基イオンを被加工物表面に供給して加工を進行させるのであるが、この加工方法には加工基準面が存在せず、精度の高い表面が得られない、加工速度が遅いなどの理由で実用化に至ってない。また、水酸基増加処理として、その他に電解処理(特許文献4参照)、高温高圧処理、水プラズマ処理(特許文献5参照)が挙げられている。電解処理を併用する場合は、被加工物や電極表面で発生した気泡により、加工速度にバラツキが生じたり、加工速度の低下を来たすなどの課題があった。高温高圧処理は、工業的な加工には向かない。そして、水プラズマ処理は、水中で激しい気泡の発生を伴ってプラズマを発生させるので、被加工物表面が荒れる原因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−114632号公報
【特許文献2】特開2011−146695号公報
【特許文献3】特許第3837783号公報
【特許文献4】特開2006−176885号公報
【特許文献5】特許第4337827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これまで、強烈なフッ化水素溶液や研磨剤を用いたガラスやサファイアの加工はあったが、光学材料をはじめ固体酸化物一般の加工においてフッ化水素溶液や研磨剤を全く使用しない実用的な加工方法はなかった。
【0012】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、レアアースをはじめ、研磨剤や砥粒を一切使用せず、またフッ化水素等の取り扱いが難しく、環境負荷の大きな溶液を一切使用せず、固体酸化物からなるガラス材料を、加工変質層を導入することなく加工することが可能なガラス材料の加工方法及びその装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述の課題解決のために、酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物のうち、フッ素系光学ガラス、ランタン系光学ガラス又は石英ガラスからなる光学ガラス材料、熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックス又はSiO薄膜からなるガラス材料を被加工物とし、該被加工物の表面を平坦化加工又は任意曲面に加工する加工方法であって、水分子が解離して被加工物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質を加工基準面として用い、水の存在下で、前記被加工物と加工基準面とを接触若しくは極接近させて配し、前記加工基準面の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲とし、前記被加工物と加工基準面とを相対運動させて、前記分解生成物を被加工物表面から除去することを特徴とするガラス材料の加工方法を構成した。
【0014】
また、本発明は、酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物のうち、フッ素系光学ガラス、ランタン系光学ガラス又は石英ガラスからなる光学ガラス材料、熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックス又はSiO薄膜からなるガラス材料を被加工物とし、該被加工物の表面を加工する加工装置であって、水を保持する容器と、水分子が解離して被加工物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質を少なくとも表面に有する加工基準面を備え、水に浸漬させて前記容器内に配置される加工ヘッドと、前記被加工物を保持して水に浸漬させ、前記加工基準面と接触若しくは極接近させて前記容器内に配置される被加工物ホルダと、前記加工ヘッドと被加工物ホルダとを接触若しくは極接近させながら相対運動させる駆動機構と、よりなり、前記加工基準面の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲とし、前記分解生成物を水中に溶出させ、あるいは前記被加工物と加工基準面との相対運動により前記分解生成物を被加工物表面から除去することで、前記被加工物表面を加工することを特徴とするガラス材料の加工装置を構成した。
【0015】
また、本発明は、酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物のうち、フッ素系光学ガラス、ランタン系光学ガラス又は石英ガラスからなる光学ガラス材料、熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックス又はSiO薄膜からなるガラス材料を被加工物とし、該被加工物の表面を加工する加工装置であって、水分子が解離して被加工物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質を少なくとも表面に有する加工基準面を備えた加工ヘッドと、前記被加工物を前記加工基準面に対面させて保持する被加工物ホルダと、前記加工ヘッドの加工基準面と被加工物ホルダに保持された被加工物とを接触若しくは極接近させながら相対運動させる駆動機構と、前記加工ヘッドの加工基準面と被加工物ホルダに保持された被加工物の間に水を供給する水供給手段と、よりなり、前記加工基準面の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲とし、前記分解生成物を水中に溶出させ、あるいは前記被加工物と加工基準面との相対運動により前記分解生成物を被加工物表面から除去することで、前記被加工物表面を加工することを特徴とするガラス材料の加工装置を構成した。
【0016】
そして、これらの発明において、前記加工基準面として、金属元素を含み、金属元素の電子のd軌道がフェルミレベル近傍の触媒物質表面を用いることが好ましい。ここで、前記金属元素が、遷移金属元素であるとより好ましい。更に、前記加工基準面が、少なくとも表面に導電性の触媒物質を有し、該触媒物質の電位を変化させて加工速度を制御することが特に好ましい。
【0017】
また、前記水は、純水又は超純水を用いたHパージ水であり、前記加工基準面の触媒物質に水素を吸着させた状態で加工を行うことも好ましい。
【0018】
また、前記水は、純水又は超純水に分解生成物の溶解を助ける錯体を混合したものであることも好ましい。
【0019】
更に、前記分解生成物に応じて、水のpHを2〜12の範囲で調整することも好ましい。
【0020】
ここで、本発明において前記加工基準面は、硬い面の表面の全面又は部分を触媒物質で形成するもの、あるいは全面又は部分に触媒物質を成膜するもの、柔らかい面の表面の全面又は部分を触媒物質で形成する、あるいは全面又は部分に触媒物質を成膜するもの、ベース材料に触媒物質を練り込む、若しくは担持させ、表面の少なくとも一部に触媒物質が現れているものを含む概念である。
【発明の効果】
【0021】
以上にしてなる本発明のガラス材料の加工方法及びその装置は、酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物のうち、フッ素系光学ガラス、ランタン系光学ガラス又は石英ガラスからなる光学ガラス材料、熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックス又はSiO薄膜からなるガラス材料を被加工物とし、水の存在下で、前記被加工物と、水分子が解離して被加工物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質を少なくとも表面に有する加工基準面とを、接触若しくは極接近させて配し、前記加工基準面の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲とし、前記被加工物と加工基準面とを相対運動させて、前記分解生成物を被加工物表面から除去することにより、前記被加工物表面を加工するので、次のような効果を奏する。化学的な加工であるので、加工変質層を導入することなく、固体酸化物からなる各種ガラス材料の表面を加工することができ、加工面は研磨剤や砥粒を一切使用しないので表面粗さを極めて小さくできる。また、フッ化水素や他の取り扱いが難しい化学薬品や微粒子を使用しないので、廃液の処理が極めて簡単であり、環境負荷が少ない加工方法と言え、更に作業環境が大幅に改善されるといった利点がある。更に、レアアースを一切使用しないので、原料市況に影響されず、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0022】
そして、前記加工基準面として、金属元素を含み、金属元素の電子のd軌道がフェルミレベル近傍の触媒物質表面を用いると、水分子から電子を奪い共有する作用が大きく、それにより水分子が解離して固体酸化物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける作用が大きくなり、加工速度を高めることができる。特に、前記金属元素が、遷移金属元素であるとその作用が顕著である。
【0023】
加工基準面が、少なくとも表面に導電性の触媒物質を有する場合には、被加工物と触媒物質との間隔を、触媒物質の自由電子が水分子の解離や、固体酸化物のバックボンドがルーズになる際の両方の現象に対して反応の障壁を下げる作用をする程度に近づけることで、工業的に利用できる程度に加工能率を高めることができるとともに、触媒物質が加工基準面となるので精度の高い加工をすることができる。更に、本発明は、加工基準面を形成する触媒物質の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲で調整することにより、加工速度を制御できるので、加工速度の速い粗加工から加工速度の遅い精密加工まで加工条件を簡単に変えることができる。つまり、本発明は、被加工物を加工装置にセットしたまま、導電性の触媒物質の電位を変えるだけで、粗加工から精密加工までの一連の加工を行うことができるので作業効率が高い。それに対して、従来は、同じ加工装置を用いる場合は、加工作業を中断し、研磨パット、研磨剤や砥粒を交換する必要があり、あるいは粗加工装置と精密加工装置の専用装置を用いる場合には、それらの装置の間で被加工物を移し変える必要があった。
【0024】
本発明の加工方法では、高い電界によりイオンを被加工物に供給するなどといった気泡発生の原因となる手段を用いないので、高精度の加工を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の加工装置の第1実施形態(平坦化加工装置)を示す簡略斜視図である。
図2】本発明の加工装置の第2実施形態(平坦化加工装置)を示す簡略斜視図である。
図3】Hパージ水を作る水循環系の簡略説明図である。
図4】光学ガラス(フッ素系)の平坦化加工前後の表面の位相シフト干渉顕微鏡像とAFM像を示す。
図5】光学ガラス(ランタン系)の平坦化加工前後の表面の位相シフト干渉顕微鏡像とAFM像を示す。
図6】石英ガラスの平坦化加工前後の表面の位相シフト干渉顕微鏡像とAFM像を示す。
図7】サファイアの平坦化加工前後の表面の位相シフト干渉顕微鏡像とAFM像を示す。
図8】ZnOの平坦化加工前後の表面のAFM像を示す。
図9】本発明の加工装置の第3実施形態(局所加工装置)を示す簡略断面図である。
図10】加工速度の接触圧依存性を示すグラフである。
図11】各種の触媒物質(触媒金属)に対する石英ガラスの加工速度を示すグラフでる。
図12】pH1(HNO水溶液)での加工速度の触媒電位依存性を示すグラフである。
図13】pH3(HNO水溶液)での加工速度の触媒電位依存性を示すグラフである。
図14】pH7(リン酸緩衝液)での加工速度の触媒電位依存性を示すグラフである。
図15】pH11(KOH水溶液)での加工速度の触媒電位依存性を示すグラフである。
図16】各pHにおける自然電位と加工速度のピーク位置の関係を示したグラフである。
図17】各溶液pHにおける加工速度の最大値を示したグラフである。
図18】水素水中で石英ガラスを平坦化加工したときの電位と加工速度の関係のグラフである。
図19】局所加工装置を用いた自然電位下での石英ガラスの加工におけるpHと加工速度の関係のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のガラス材料の加工方法は、酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物のうち、フッ素系光学ガラス、ランタン系光学ガラス又は石英ガラスからなる光学ガラス材料、熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックス又はSiO薄膜からなるガラス材料を被加工物とし、水分子が解離して被加工物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質を加工基準面として用い、水の存在下で、前記被加工物と加工基準面とを接触若しくは極接近させて配し、前記加工基準面の電位を、自然電位を含みH及びOが発生しない範囲とし、前記被加工物と加工基準面とを相対運動させて、前記分解生成物を被加工物表面から除去し、被加工物の表面を平坦化加工又は任意曲面に加工するものである。ここで、一般的に研磨や洗浄と呼ばれている処理も、本発明の加工の範疇である。つまり、研磨は平坦化加工に相当し、洗浄は加工量を最小限に抑制して表面から不純物や異物を取り除く微量加工に相当する。
【0027】
一般的に、酸化物は、酸素と他の元素からなる化合物である。酸素は、ほとんどすべての元素と酸化物を生成し、金属元素の酸化物は塩基性酸化物、非金属元素の酸化物は酸性酸化物、その中間の元素の酸化物は両性酸化物となることが多い。本発明では、酸化物の中で常態では固体であり、酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物、あるいは複数の酸化物からなる多成分系の固体酸化物を対象としている。特に、本発明は光学ガラス材料の超精密加工、研磨に良好に適用できる。また、本質的に固体酸化物から構成され、非晶質と結晶質が混在した熱膨張率が実質的に零であるガラスセラミックスの加工にも適用可能である。このガラスセラミックスは、ハードディスク記録媒体に用いるガラス基板や、EUV露光装置のマスクブランクス用ガラス基板や、その他高精度が要求される光学・機械部品に使用されている。更に、一般的な酸化物系のセラミックスも加工対象である。また、固体酸化物は、バルクである必要はなく、薄膜であっても良い。
【0028】
一般に、金属酸化物は、電気的特性も多様であり、絶縁体、金属と同程度の導電率を有する電子伝導体、イオン伝導体、超伝導体(酸化物高温超伝導体)、熱電変換素子、強誘電体、強磁性体等がある。また最近では、強相関電子系酸化物が注目され、実用化に向けて各方面で活発に研究されてきているが、この加工にも適用できると思われる。このように、酸化物の性質は多様であるので、酸化物の種類によって加工条件を最適にする必要がある。
【0029】
水分子が解離して固体酸化物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質として、金属元素を含み、金属元素の電子のd軌道がフェルミレベル近傍の触媒物質表面を用いることが好ましい。本発明では、金属元素と反応性のある溶液は使用しないので、各種の金属元素を用いることができるが、中でも硬く形状が安定している遷移金属元素が用いることが特に好ましく、仕事関数の大きなPtをはじめ、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Mo等を用いることが可能である。更に、加工基準面となる触媒物質は、金属元素単体でも、複数の金属元素からなる合金でもよい。現在、Pt、Au、Ag、Cu、Mo、Ni、Cr、SUS316、Cで加工が可能であることを確かめている。この中で好ましいのは、Pt、Cu、Mo、Ni、Cr、SUS316である。AuやAgは加工速度が遅いことを確かめている。ここで、d電子軌道に空きがある金属を用いると、加工速度において効果が高いことが分かっている。これらの金属は導電性であるが、金属元素含む化合物で絶縁性の触媒物質でも、金属元素の電子のd軌道がフェルミレベル近傍の触媒物質であれば良好に使用できる。この場合、加工基準面の電位は自然電位のままとする。また、前記触媒物質の他の例として、加工速度は遅いが、グラファイト又はグラフェン等の炭素材料を用いることもできる。そして、前記加工基準面として使用する触媒物質は、水、あるいは酸性溶液や塩基性溶液に曝されるので、表面状態が安定である触媒物質が好ましい。
【0030】
そして、前記加工基準面は、水分子が解離して固体酸化物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質で形成する。前記加工基準面は、文字通り加工の基準面となるので、加工中に形状が変化してはならない。また、前記加工基準面は、その表面状態が被加工物の表面に転写されるので、できるだけ表面粗さが小さく、高い平坦度に形成されることが望ましい。尚、前記加工基準面と被加工物とを相対運動させることにより、加工基準面の表面粗さや平坦度は平均化されるので、被加工物の表面は加工基準面より精度の高い表面となる。前記加工基準面を導電性の触媒物質で形成した場合には、表面の電位を外部から制御することができる。ここで、前記触媒物質は、バルクである必要はなく、安価で形状安定性のよい母材の表面に、金属、あるいは遷移金属を蒸着、スパッタリング、電気めっき等によって形成した薄膜でも良い。また、前記触媒物質を表面に成膜する母材は、硬質の弾性材でも良く、例えばフッ素系ゴム材を用いることができる。また、高精度に平坦化加工したSiC基板を高温で熱処理し、熱分解法によってSiCの表面に複数層のグラフェンを形成したものを、前記加工基準面として用いることも可能である。
【0031】
また、前記水は、不純物が少なく特性が一定である純水又は超純水を用いることが、清純な加工環境を実現し、加工条件の正確な制御において必要である。一般的に、純水は電気抵抗率が1〜10MΩ・cm程度、超純水は電気抵抗率が15MΩ・cm以上とされているが、両者に境界があるわけではない。また、本発明では、純水又は超純水に水素をパージした水素水を用い、前記加工基準面の触媒物質に水素を吸着させた状態で加工を行うことが好ましい場合もある。そして、また、前記水は、純水又は超純水に分解生成物の溶解を助ける錯体を混合したものを用いることも好ましい。ここで、前記錯体は、分解生成物の溶解を促進するとともに、錯イオンを作り水中で安定に維持する作用をする。また、水(加工液)のpHは、2〜12の範囲で調整することが好ましい。pHがこの範囲よりも小さく(強酸性)ても、大きく(強アルカリ性)ても加工速度が小さくなる。加工対象の酸化物の性質は多様であり、加工過程で生成する分解生成物も多様であるので、それに応じてpHを調整することが望ましい。pHの調整には、例えば酸性領域はHNOの添加、アルカリ性領域はKOHの添加で行う。勿論、加工液のpHを7(中性:水のまま)としても差し支えなく、その場合、種々の酸化物の加工に汎用的に適用できる。
【0032】
本発明の加工メカニズムは、現象論的には以下のようであると考える。酸素を介して1種又は2種以上の元素が結合した固体酸化物の表面に、少なくとも表面にd電子軌道がフェルミレベル近傍にある触媒物質を有する加工基準面が接触若しくは極接近すると、つまり固体酸化物の表面近傍にd電子軌道が近づくことになる。d電子は、水分子の解離や、酸化物のバックボンドがルーズになる際の両方の現象に対して反応の障壁を下げる作用をする。現象論的には、該触媒物質が酸化物に近づくと、酸化物を構成する酸素元素と他の元素とのバックボンドの結合力が弱くなり、水分子が解離して酸化物の酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物を生成する。そして、分解生成物を加工液中に溶出させるという原理である。ここで、固体酸化物の表面に該触媒物質を有する加工基準面を接触させて擦ることにより、分解生成物に機械的な力を与えることで、水中への溶出を促進させるのである。また、固体酸化物の表面と加工基準面が接触しなくても、両者の相対運動によって生じる水の流動によって分解生成物の水中への溶出を促進する作用がある。
【0033】
また、加工基準面を形成する該触媒物質が導電性材料であれば、該触媒物質の電位を調整することにより、加工速度を制御することができる。酸化還元電位は、導電性物質(例えばPt)表面が酸化物側から電子を「抜く」、「与える」性質を変えるものである。導電性物質の電位は、最終的に目指したい精度に応じて最適な加工速度に変えるためのパラメータになる。しかし、導電性物質の電位を正に大きくするとOが発生し、また負に大きくするとHが発生し、気泡が加工の妨げになるので、H及びOが発生しない範囲で調整することが必要であり、電位の制御域は1.6V程度である。
【0034】
例えば、二酸化ケイ素(SiO)の結晶は、正四面体の中心にSiが位置し、4つの頂点にOが結合した構造で、Oを介してSiが三次元的に結合されており、その加工では、Si−O−Siの結合が切れ、HOの加水分解によってSi−OH、OH−Siとなる。このように、加水分解によってケイ酸{[SiO(OH)4-2x}が生成される。ここで、0<x<2である。代表的には、オルトケイ酸(HSiO)、メタケイ酸(HSiO)、メタ二ケイ酸(HSi)等がある。これらの分解生成物が、水に溶出するのである。
【0035】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1に示した第1実施形態の加工装置Aは、被加工物と加工基準面を水中に浸漬した状態で加工を行う構造である。加工装置Aは、水1を保持する容器2と、少なくとも表面に触媒物質を有する加工基準面3を備え、水1に浸漬させて前記容器2内に配置される加工ヘッド4と、前記被加工物5を保持して水1に浸漬させ、前記加工基準面3と接触若しくは極接近させて前記容器2内に配置される被加工物ホルダ6と、前記加工ヘッド4と被加工物ホルダ6とを接触若しくは極接近させながら相対運動させる駆動機構7と、前記加工基準面3を形成する触媒物質の電位をH及びOが発生しない範囲で調整する電圧印加手段8と、よりなり、水分子が解離して固体酸化物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物を水中に溶出させ、前記被加工物表面を加工するものである。また、前記容器2の水1を浄化し、水位を一定に保つために水循環系9を備えている。この水循環系9は、供給管9Aと排水管9Bと、図示しない処理液精製器、バッファタンク、ポンプ等で構成される。電圧印加手段8によって、前記加工基準面3を形成する触媒物質の電位を約−0.4〜+1.4Vの範囲(零を含む)に設定する。
【0036】
図示した加工装置Aは、前記加工ヘッド4が、円盤状の回転定盤であり、該定盤よりも小さな面積の被加工物5を保持した前記被加工物ホルダ6と加工ヘッド4を、互いに平行で偏心した回転軸で、所定速度で回転させるようにしている。また、前記被加工物ホルダ6は、荷重を調節して、加工基準面3に対する被加工物5の接触圧力を調節できるようになっている。また、前記加工ヘッド4や被加工物ホルダ6に温度制御機能を内蔵させれば、加工温度を所定温度で一定に維持することができるので望ましい。尚、前記被加工物5の表面より加工基準面3を狭くすれば、小さな加工ヘッド4の被加工物5の表面に対する位置と滞在時間を制御して、被加工物5の表面の局所加工量を制御し、つまり数値制御による局所加工を行うことができる。
【0037】
また、図2に示した第2実施形態の加工装置Bは、被加工物と加工基準面との間に滴下した水を供給しながら加工を行う構造である。加工装置Bは、少なくとも表面に触媒物質を有する加工基準面10を備えた加工ヘッド11と、被加工物12を前記加工基準面10に対面させて保持する被加工物ホルダ13と、前記加工ヘッド11の加工基準面10と被加工物ホルダ13に保持された被加工物12とを接触若しくは極接近させながら相対運動させる駆動機構14と、前記加工ヘッド11の加工基準面10と被加工物ホルダ13に保持された被加工物12の間に水15を供給する水供給手段16と、前記加工基準面10を形成する触媒物質の電位をH及びOが発生しない範囲で調整する電圧印加手段17と、よりなり、水分子が解離して固体酸化物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物を水中に溶出させ、前記被加工物表面を加工するものである。ここで、水が飛び散らないように、前記加工ヘッド11の周囲に容器18を設けている。
【0038】
また、この加工装置Bも前述の加工装置Aと同様に、平面の平滑化加工のみならず、任意曲面の数値制御加工を行うように構成することが可能である。更に、前記被加工物表面に特定波長の励起光を照射し、表面を活性化しながら加工することも好ましい。
【0039】
また、図3に示すように、前記水循環系9に気液混合器20を設け、ポンプ21で水を循環させながら、気液混合器20で水と水素ガスを混合し、水素が溶存した水素水を前記供給管9A、あるいは水供給手段16から加工面に供給することが好ましい。勿論、必要に応じて水素以外のガスを溶存させることができる。
【0040】
次に、加工基準面を形成する触媒物質としてPtを用いた加工装置Aによって、固体酸化物として光学ガラスと石英ガラス(純SiO)、単結晶サファイア(α−Al)及びZnO単結晶を試験的に加工した結果を図4図8に示す。試験加工に用いた光学ガラスは、一般光学レンズ等に用いるフッ素系光学ガラス(S−FPL51:株式会社オハラ製)とランタン系光学ガラス(S−LAH55:株式会社オハラ製)である。石英ガラスは、前加工面としてCMP面を用いた。光学ガラス、石英ガラス及びZnO単結晶は、加工前と加工後の表面を位相シフト干渉顕微鏡(Zygo社、NewView)と原子間力顕微鏡(AFM)で観察して加工特性を評価した。
【0041】
図4は、光学ガラス(フッ素系)の平坦化加工の結果である。加工圧力:200hPa、回転速度:10rpm、溶液:超純水、加工時間:1時間である。加工速度は、6751nm/hであった。加工によって位相シフト干渉顕微鏡像では、加工前はrms:0.879nmが加工後にrms:0.385nmとなり、AFM像では、加工前はrms:1.861nmが加工後にrms:0.371nmと大幅に表面粗さが改善した。注目すべきは、加工速度が6.7μm/hと高速であることであり、超純水のみで十分に工業的に加工できることが実証された。ここで用いたフッ素系光学ガラスは、弗リン酸塩系の光学ガラスであり、一般的にガラス中の結合がSi−Oのような共有結合性ではなくイオン結合性が強い硝種である。その組成は、P、Al、Ba、Gd、Nb、Fの酸化物を主成分とし、その他、Y、La、Yb、Ta、Lu、Ti、Zr、W、Bi、Mg、Ca、Sr、Zn、Li、Na、K、Cs、Tl、Si、B、Sb等の酸化物が選択的に微量配分されている。
【0042】
図5は、光学ガラス(ランタン系)の平坦化加工の結果である。加工圧力:200hPa、回転速度:10rpm、溶液:超純水、加工時間:1時間である。加工速度は、5977nm/hであった。加工によって位相シフト干渉顕微鏡像では、加工前はrms:0.232nmが加工後にrms:0.476nmとなり、AFM像では、加工前はrms:0.408nmが加工後にrms:0.828nmと若干表面粗さが悪化した。ここで用いたランタン系光学ガラスは、硼珪酸ランタン系の光学ガラスであり、Si、B、La、Y、Gd、Zr、Nb、Zn、Sr、Ba、Li、Sb、As等の酸化物を組成としている。
【0043】
図6は、石英ガラス(SiO)の平坦化加工の結果である。加工圧力:200hPa、回転速度:10rpm、溶液:超純水、加工時間:1時間である。加工速度は、831nm/hであった。加工によって位相シフト干渉顕微鏡像では、加工前はrms:0.338nmが加工後にrms:0.147nmとなり表面粗さが大幅に改善している。AFM像では、加工前はrms:1.455nmが加工後にrms:0.103nmと大幅に表面粗さが改善し、加工前表面にはスクラッチが確認されたが、このようなスクラッチは除去され、原子レベルで平滑な表面を有していることがわかった。
【0044】
図7は、単結晶サファイア(α−Al)の平坦化加工の結果である。試料には、2インチサファイア基板 (0001) 面を用いた。加工圧力:200hPa、回転速度:10rpm、溶液:純水、加工時間:3時間である。加工速度は、3nm/hであった。加工によって位相シフト干渉顕微鏡像では、加工前はrms:0.164nmが加工後にrms:0.151nmとなり、AFM像では、加工前はrms:0.122nmが加工後にrms:0.122nmと表面粗さは殆ど変化なかったが、結晶構造が改善した。位相シフト干渉顕微鏡観察領域において、加工前後で平坦性が維持されている。またAFM観察において、加工前にはステップテラス構造が確認されるもののステップ端は波打った形状である。一方、本発明の加工を行った表面は直線的なステップ形状を有するステップテラス構造を持つことが分かった。また、ステップ高さは1バイレイヤーに相当する約0.3 nmであり、本発明の加工後表面はステップバンチングのないステップテラス構造を有することが明らかとなった。
【0045】
図8は、ZnO単結晶の平坦化加工の結果である。試料にはCMPによって処理された2インチZnO基板 (0001) 面を用いた。加工圧力:200hPa、回転速度:10rpm、溶液:純水、加工時間:10分間である。加工速度は、126.1nm/hであった。加工によってAFM像では、加工前はrms:0.161nm(1×1μm領域)が、加工後にrms:0.163nm(1×1μm領域)、rms:0.164nm(5×5μm領域)と表面粗さはあまり変化がなかったが、加工後にはステップテラス構造が明確に観察できるようになり、結晶学的に優れた表面が得られた。因みに、干渉顕微鏡で観察した結果は、観察領域で加工前後ともにrms:0.1nm前後で変化がなかった。ZnO単結晶の前加工面は、CMPによって精密研磨した表面であることを考えれば、本発明の加工方法によってCMPよりも更に優れた結晶学的表面が得られることが実証できた。本発明の加工方法は、加工時間を短くすれば、精密洗浄として利用することも可能であることが分かる。
【0046】
これらの加工試験によって、本発明の加工方法及び加工装置で、固体酸化物として光学ガラスの平坦化加工を十分な精度で行えることが実証できた。光学ガラスの場合、単純な酸化物ではなく、多種類の酸化物の複合体であり、それを構成する酸化物毎に加工速度が異なるが、本発明では加工基準面を用い、その平坦性を転写するイメージの加工であるから、原理的にこのような多種類の酸化物の複合体でも十分な精度で平坦化加工することができるのである。前述の2種類の光学ガラスで加工後の表面粗さの結果が異なったのは、硝種の違いによるものと考える。それに対して、石英ガラスはSiOの単一種類の酸化物であり、ZnO単結晶も単一種類の酸化物であるので、表面の至る場所で加工速度が同じであるため、本発明の平坦化加工によって超精密な平坦面が得られたのである。この加工試験では、加工条件の最適化や平坦性を高める工夫は特に行ってないので、それらを行うことにより、更に表面粗さを改善することができ、加工速度も高めることができる。最終的な表面粗さの改善には、加工速度を落とした仕上げ加工をすることが効果的である。
【0047】
因みに、液晶ディスプレイやハードディスク記録媒体用のガラス基板を、CeO研磨剤を用いたCMPにより研磨した場合の加工速度は、約0.4μm/min(24μm/h)であるとされる。それに対して、前述のフッ素系光学ガラスに対する本発明による加工速度は6.7μm/hであった。この場合、本発明による加工速度は、CeOを用いるCMPの加工速度の1/4〜1/3となるが、水だけを用いる加工方法としては驚くべき結果である。今後、加工条件を最適化することにより、CMPに匹敵する加工速度が得られるものと確信する。例えば、Ptに代えて被加工物に最適な他の遷移金属を用いることにより、加工速度は大幅に早くなり、また回転速度を高めることによっても加工速度は早くなる。
【0048】
図9は、局所加工装置Cを示し、原理的に任意曲面を数値制御加工できる装置となる。本装置は平坦化を目的としておらず、触媒物質の回転体を回転させながら被加工物表面に接触させることで、被加工物の一部領域のみを加工するものである。
【0049】
局所加工装置Cは、水槽31に溜めた純水32中に被加工物33を保持し、ステッピングモータ34に連結した鉛直方向の回転軸35の先端に取付けた触媒物質球36を、水中で前記被加工物33の表面に一定の接触圧で接触させながら回転させて加工する装置である。更に詳しくは、Zステージ37の上に設けた水平板38の上に、前記水槽31とXYステージ39が固定され、該XYステージ39で駆動させる被加工物ホルダ40が前記水槽31の内部まで延び、前記被加工物33を保持している。振れを最小限にするために前記回転軸35は2重のベアリング41,41によって固定されており、前記触媒物質球36を取り付けるヘッド部42との接続部分はテーパー形状とすることで脱着ごとに発生する位置ずれを抑制している。前記触媒物質球36は、Oリングの表面に所定の触媒物質を成膜したものを用いた。Oリングは、フッ素ゴム製のP44規格サイズ(外径50.7mm,太さ3.5mm)を用いた。前記ステッピングモータ34、回転軸35及びベアリング41,41は同一の垂直板43に取付けられ、該垂直板43の上端を架台44に板バネ45で連結され、天秤型のバランサー46により回転軸35の鉛直性を調整するようになっている。
【0050】
Xステージを操作することで被加工物33を触媒物質球36の方向に任意量移動させることが可能であり、電気マイクロメータを用いて回転軸35の移動量を制御することで被加工物33の表面と触媒物質球36間の接触圧を調整する。触媒物質球36上の触媒金属は、ロータリージョイント47を介して電気的にポテンショスタットへと接続されており、三電極系セルを構成して電位制御を行っている。本発明では、触媒金属の電位を精度良く制御する必要がある。前記水槽31の中に前記触媒物質球36を作用電極とし、更に基準電極48と対向電極49を配置し、これら3つの電極とポテンショスタットを組み合わせて三電極系セルとした。電流の大部分は対向電極49へ流し,基準電極48へは微小電流を流して作用電極(触媒物質球36)の電位を定める。このとき電位の制御を図示しないポテンショスタットで自動的に行う。前記基準電極48としては銀−塩化銀電極を採用した。
【0051】
図9に示した局所加工装置Cは、各ステージを数値制御して駆動し、前記被加工物33と前記触媒物質球36の相対位置を変化させることにより、単位加工痕を移動させて、触媒物質球36の曲率より小さな任意曲面を創出することができるNC加工装置となる。
【0052】
前記局所加工装置Cを用いて加工速度の制御性を調べた。先ず、触媒金属としてPtを用いて石英ガラスを加工した。接触圧力は約1000hPa、回転速度は24rpm、加工液は純水であり、Ptの電位は自然電位である。Ptが接触した楕円形の領域のみが加工され、その加工痕における最大深さを加工量として、加工速度の接触圧力依存性を調べた結果を図10に示す。圧力が大きくなるとともに加工量が増加することがわかる。
【0053】
次に、各種の触媒金属を成膜した触媒物質球36を用いて、接触圧力は約1000hPa、回転速度は24rpm、加工液は純水とし、同一加工条件で石英ガラスを加工した。触媒金属の電位は自然電位である。触媒金属に対する解離吸着の起こりやすさはd軌道の電子非占有度によって定性的に整理でき、以下のようにグループ分けできることが知られている。グループAは、d軌道の空位軌道が多いCr、Fe、Moなどの4,5,6,8族元素である。グループB1は、1から3の空位d軌道が存在するNi、Coからなる9、10族元素である。グループB2は、Pt、Pdなどの9、10族元素である。グループCは、Cu、Mnからなる7、11族元素である。グループDは、d軌道が占有されているAuからなる11族元素である。グループEは、Ag、Znなどの11、12族元素である。化学吸着特性は、グループA、B1、B2、C、D、Eの順で小さくなることが知られている。
【0054】
そこで、各グループから1元素ずつ触媒金属として選んで石英ガラスを加工した。その加工速度の触媒金属依存性の結果を図11に示した。この結果、化学吸着特性と加工速度の間には明らかな相関があり,Cr(グループA)やNi(グループB1)を用いた場合の加工速度はPt(グループB2)を用いた場合に比べて最大で1桁大きいことがわかった。また、グループD又はEに属するAuやAgを使用した場合は、d軌道が電子で占有されているので加工が殆ど進行しない。以上の結果から、本発明において触媒金属はHO分子の解離を促進していることが明らかとなった。ここで、触媒金属としてステンレススチール(SUS316)を用いた場合も大きな加工速度が得られた。SUS316には、Niが10〜14重量%、Crが16〜18重量%、Moが2〜3重量%、その他の元素も含まれているが、主にCr、Niが加工に寄与しているものと考えている。また、触媒物質としてグラファイトを用いた場合も加工できるが、加工速度はAuやAgと同レベルと遅かった。
【0055】
この結果、単一元素からなる触媒金属としては、グループA、B1、B2の金属を用いることが、加工速度の面で好ましく、更に実用的には比較的安価で取扱いが容易なものを選択して使用する。この場合、金属元素単体の他に、複数の金属元素からなる合金を用いることも好ましい。また、Cuはd軌道が電子で占有されているので、それ自体では加工速度が遅いが、CuOとなると絶縁性でも触媒機能が備わる。このように、触媒機能に乏しい金属であっても化合物となることにより、金属元素の電子のd軌道がフェルミレベル近傍になって、それが表面に現れれば、水分子が解離して固体酸化物を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物の生成を助ける触媒物質として機能する。
【0056】
次に、前記局所加工装置Cを用いて、石英ガラス基板における加工速度の触媒電位依存を、pH1, 3, 7, 11の各溶液を用いて調べた。溶液にはHNO水溶液、リン酸緩衝液、KOH水溶液を用いて、それぞれのpHに調整した。加工条件として、触媒金属はPt、接触圧力は約1000hPa、回転速度は24rpm、加工液は純水である。尚、自然電位(開回路電位)の実測値は、pH1, 3, 7, 11でそれぞれ0.68, 0.57, 0.32, 0.17V vs. Ag/AgClであった。各溶液における加工結果を図12図15に示す。全ての溶液において加工速度が触媒電位に依存して変化することが明らかとなった。図15に示すpH11のKOH溶液を用いた際の加工結果を例にとり考察を行う。加工速度のピークがおよそ−0.7V vs. Ag/AgCl付近に存在しており、0.5V以上または−1.5V vs. Ag/AgCl以下の電位では加工速度はほぼ0であった。これは正負の向きについて電位を走査すると、それぞれ生成した酸素と水素が吸着するためであり、吸着量が過剰な場合は全く加工が進行しないことを示している。一方、ピーク値周辺ではPt表面の被吸着量が最小量であると考えられ、電圧非印加時に比べて約3倍の加工速度であった。この結果、加工基準面を構成する触媒物質の電位を制御することによって、加工速度を制御できることを示している。
【0057】
各pHにおける加工速度のピーク電位と自然電位の位置を比較して図16に示す。pHがアルカリ側に移動するにつれてピーク電位は負になっている。これは、より高いpHでは水酸基あるいは酸素の触媒金属への吸着が顕著になり、それらを脱離させるためにより負の電位が必要であると理解できる。逆にpH1では水素が過剰に吸着しており、自然電位より正側の電位に設定することで最大の加工速度が得られる。図16の下側の直線は、Hの発生限界、上側の直線はOの発生限界を示し、上下の直線の間で電位を制御することになる。
【0058】
図17に各溶液pHにおける加工速度の最大値を示している。Pt表面の吸着状態が与える影響を排除した、加工速度の溶液pH依存である。酸性溶液を用いた場合に加工速度が最大であり、続いて塩基性溶液、中性溶液と続く。この結果を考察すると、エッチング過程においてまずHO分子から触媒の作用によってH原子が解離し、生成した水酸基がSi原子に吸着する。続いてO原子にはH原子が吸着するが、このH原子はHO分子から解離した触媒上のH原子だけではなく、溶液中の水素イオンが移動してくるものと考えられる。そのため酸性溶液中では加工速度が大きい。一方、塩基性溶液中での加工速度が中性溶液に比べて大きいのは、加工生成物であるSi(OH)xの溶解速度は塩基性で最大であることが原因だと考えられる。
【0059】
図18は、水素水中で加工基準面にPtを用い、印加電圧を変化させて石英ガラスを加工した結果を示している。水素水中でのPtの自然電位は、−0.40V vs Ag/AgClである。水素水中で印加電圧0Vの場合、つまり加工基準面の電位が−0.40Vの場合、加工速度は0nm/hであった。これは、Pt表面が過剰な水素によって覆われたため、HO分子が相互作用を及ぼす距離まで接近できなくなったためだと考えられる。以上のことから、触媒上に生成された水素のみでは加工は進行しないこと、そして触媒表面の吸着状態が加工に与える影響は極めて大きいことが明らかとなった。それから、印加電圧を増加させて加工基準面の電位を増加させると、電位が約0.4V vs Ag/AgClで加工速度がピークの約500nm/hとなった後、電位が1.3Vvs Ag/AgClで加工速度が約50nm/hになるまで遅くなる。
【0060】
図19は、Ptからなる触媒物質球を用いた局所加工装置により、電位制御は行わず自然電位下で石英ガラスを加工した場合におけるpHと加工速度の関係のグラフである。加工条件は、加工圧力:200hPa、回転速度:10rpm、加工液:HNO水溶液(pH0−4)、KOH水溶液(pH10−13)である。加工時間は各30分である。この結果、pH3付近に加工速度のピークを持つことが分かる。
【0061】
本発明の加工メカニズムは、未だ解明されていない部分が多いが、加工基準面の電位を変化させることにより、加工速度を制御できることは明らかである。また、加工液のpHを変化させても加工速度を制御できる。固体酸化物の表面を任意形状に数値制御加工する場合には、加工速度を制御できることは重要である。本発明により、石英ガラスや各種光学ガラス等、また各種電気的特性の金属酸化物を精密に加工できるようになる。また、本発明の加工方法において、水中に金属微粒子を分散させて加工することも可能と思われ、更に従来のCMPで使用されている研磨剤を併用して加工することも可能と思われる。
【符号の説明】
【0062】
A 加工装置、 B 加工装置、
1 水、 2 容器、
3 加工基準面、 4 加工ヘッド、
5 被加工物、 6 被加工物ホルダ、
7 駆動機構、 8 電圧印加手段、
9 水循環系、 9A 供給管、
9B 排水管、 10 加工基準面、
11 加工ヘッド、 12 被加工物、
13 被加工物ホルダ、 14 駆動機構、
15 水、 16 水供給手段、
17 電圧印加手段、 18 容器、
20 気液混合器、 21 ポンプ、
30 局所加工装置、 31 水槽、
32 純水、 33 ガラス、
34 モータ、 35 回転軸、
36 触媒物質球、 37 Zステージ、
38 水平板、 39 XYステージ、
40 被加工物ホルダ、 41 ベアリング、
42 ヘッド部、 43 垂直板、
44 架台、 45 板バネ、
46 バランサー、 47 ロータリージョイント、
48 基準電極、 49 対向電極。
図1
図2
図3
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図4
図5
図6
図7
図8