【文献】
広田潔憲, et al.,抗体医薬品のためのテーラーメイド精製技術開発,ケミカル・エンジニヤリング,2011年,Vol.56, No.4,p.293-299
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プロテインA変異体が、アレイ基板に固定化したプロテインA変異体に抗体を結合させ、pH5.0の0.1Mクエン酸ナトリウム溶液で溶出したときの結合していた抗体の半分の量が解離するまでの経過時間T0.5及び、抗体との解離定数が、配列番号3で表されるプロテインA変異体のT0.5及び解離定数よりも低いプロテインA変異体である、請求項1記載の固定化担体。
一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質中に存在する唯一のシステイン残基のスルフフィドリル基をチオシアノ基に変換し、1級アミンを官能基として有する任意の固定化担体に作用させることにより、前記タンパク質中のシステイン残基よりアミノ末端側に存在するアミノ酸配列部分であるR1-R2-R3部分をアミド結合により結合させるための、請求項1又は2に記載の固定化担体。
一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列において、R3部分の配列が、1〜10個のグリシンからなる配列であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固定化担体。
一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列において、R5部分の配列が、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸のアミノ酸残基からなるアミノ酸残基数1〜10個の配列であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固定化担体。
一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列において、R5部分の配列が、1〜10個のアスパラギン酸からなる配列であることを特徴とする、請求項5記載の固定化担体。
一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列において、R6部分の配列が、4個以上のヒスチジン残基からなるアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固定化担体。
固定化担体にR1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化するために用いる一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を設計する方法であって、R1、R2、R3、R4、R5及びR6部分のアミノ酸配列を以下の条件に適合するように選択することを含む方法:
(a) R1部分の配列を存在させないか、または存在させる場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成される配列を選択し;
(b) R2部分の配列として、プロテインA変異体の配列、又はその配列を1〜3個連結した配列であり、リジン及びシステイン残基を含まない配列であり、該プロテインA変異体は、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を有する、配列番号4〜7のいずれかの配列からなるStaphylococcus aureus由来のプロテインAのAドメインの変異体タンパク質である配列、又は配列番号4〜7のいずれかの配列からなるプロテインAのAドメインの変異体タンパク質の配列を1〜3個連結した配列を選択し;
(c) R3部分の配列を存在させないか、または存在させる場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成されるスペーサー配列を選択し;
(d) R4部分の配列として、システイン−X(Xは、アラニンもしくはシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列を選択し;
(e) R5部分の配列は存在させないか、または存在させる場合はリジン及びシステイン残基を含まない配列であり、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列を選択し;そして
(f) R6部分の配列はタンパク質を精製するためのアフィニティータグ配列を選択する。
プロテインA変異体が、アレイ基板に固定化したプロテインA変異体に抗体を結合させ、pH5.0の0.1Mクエン酸ナトリウム溶液で溶出したときの結合していた抗体の半分の量が解離するまでの経過時間T0.5及び、抗体との解離定数が、配列番号3で表されるプロテインA変異体のT0.5及び解離定数よりも低いプロテインA変異体である、請求項14記載の方法。
【背景技術】
【0002】
近年、抗体を基にした副作用の少ない抗体医薬に対する需要が年々高まっている。抗体を精製する手段として、プロテインAを固定化した担体を用いるアフィニティークロマトグラフィーが広く使用されている。ここでいうプロテインAとは、Staphylococcus aureus由来のプロテインA(A. Forsgren and J. Sjoquist, J. Immunol. (1966) 97, 822-827.に記載)又はそれを構成する抗体結合機能を発揮できる一部のドメイン配列を指している。
【0003】
プロテインAを固定化した担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを使用する一般的な抗体の精製方法は以下のとおりである。すなわち、(1)抗体を含む原料粗液を、プロテインAを固定化した担体を充填したカラムに通液し、担体に目的とする抗体を吸着させる。(2)抗体を吸着させた担体を中性の緩衝液で洗浄し、不純物を取り除いた後、(3)酸性の緩衝液(具体的には、pH2.5〜3.0)を用いて、担体に吸着した抗体を溶出させる、というものである。
【0004】
本発明者らは、担体あたりの抗体の結合容量を増大させることにより、抗体を効率よく精製する手段として、配向を制御しながら抗体のFcドメインと特異的に結合するタンパク質であるプロテインA由来のタンパク質を不溶性担体に配向を制御して導入する技術を開発している(特許文献1〜16を参照)。
【0005】
本発明者らが開発した配向制御固定化法は、より一般化した形態で表すと、以下のとおりである。
【0006】
一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列
[式中、配列は、アミノ末端側からカルボキシ末端側に向かう配列を示し、
R1部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジンおよびシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成される配列であり:
R2部分の配列は、プロテインA由来の固定化対象タンパク質の配列であり、抗体との結合特性を保持するようにリジン残基とシステイン残基を全く含まないようにした配列であり:
R3部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成されるスペーサー配列であり;
R4部分の配列はシステイン−X(Xは、リジンもしくはシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列であり:
R5部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジン及びシステイン残基を含まない配列であり、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列であり;
R6部分の配列はタンパク質を精製するためのアフィニティータグ配列である]
からなるタンパク質を用いて、R4部分に唯一存在するシステイン残基のSH基をシアノ化し、シアノシステイン化したタンパク質を、アミノ基を官能基として導入された不溶性担体と反応させることにより、R1-R2-R3で表される部分が、そのカルボキシ末端が担体のアミノ基とアミド結合により固定化するという特徴を有する配向制御固定化法である。
【0007】
これまでに本発明者らが開発してきたプロテインAを配向制御して固定化した担体を用いた抗体の精製においても、(1)抗体を含む原料粗液を、プロテインAを固定化した担体を充填したカラムに通液し、担体に目的とする抗体を吸着させる。(2)抗体を吸着させた担体を中性の緩衝液で洗浄し、不純物を取り除いた後、(3)酸性の緩衝液(具体的には、pH2.5〜3.0)を用いて、担体に吸着した抗体を溶出させるという精製手段が適用され、担体あたりの抗体の結合容量の増大により、効率の良い抗体の精製手段を提供してきた。
【0008】
しかし、pH2.5〜3.0の酸性の緩衝液を用いて抗体を溶出させるという上記方法には重大な問題点がある。すなわち、抗体が強酸性(例えば、pH3.0以下)の緩衝液に接触することで、抗体が酸変性を起こし、抗体の高次構造が変化し、その結果、凝集を引き起こし、抗体が医薬品としての活性を失ってしまうという問題である。この課題を解決するため、より安定な抗体分子の開発が試みられているが、このような解決策は、プロテインAを固定化した担体を用いるアフィニティークロマトグラフィーによる精製に付随する問題に対しての一般的な解決策とはなりえないことは明らかであり、多くの抗体分子の調製に幅広く適用できる方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、プロテインAを含むタンパク質を固定化した担体を用いるアフィニティークロマトグラフィーによる精製に付随する上記の問題に対しての一般的な解決策を提供するために、多くの抗体が酸変性を引き起こさない温和なpH条件(具体的には、pH4.0〜5.5)で抗体の脱離を可能にする特定のアミノ酸配列を持つプロテインAを固定化した担体、及びその製造方法を提供するものである。さらには、上記プロテインAを含むタンパク質を固定化した担体を充填した抗体精製用アフィニティークロマトグラフィー用カラム、及び前記カラムを用いた抗体の精製方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、プロテインAの固定化における上記の解消すべき問題点を解決すべく鋭意検討を行なった。
【0012】
本発明者らは、タンパク質の配向制御固定化に利用される、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなる配列部分の内、抗体との結合機能を担うR2部分に用いるプロテインAとして、抗体の精製過程の、抗体を含む原料粗液を、プロテインAを固定化した担体を充填したカラムに通液し、担体に目的とする抗体を吸着させ、溶出する工程において、抗体を吸着させた担体を中性の緩衝液で洗浄し、不純物を取り除くという操作には影響を与えず、かつ酸性の緩衝液を用いて、担体に吸着した抗体を溶出させる際に温和なpH条件として、pH4.0〜5.5の範囲で、抗体の脱離を行わせることができる、という特性を有するプロテインA変異体を開発できれば、上記問題を解決できるとの着想を得た。
【0013】
本発明がなされるより前の時点で、本発明者らは、配列番号1で示されるプロテインAのAドメイン由来の配列中の全てのリジン残基をアルギニン又はグリシンに置換することによりR2部分にリジン及びシステインを全く含まないようにしたプロテインAが、抗体と強い結合反応を示すことを明らかにした(特開2011-132140号公報、特開2011-132145号公報、特開2011-132141号公報)。そこで、該プロテインAのアミノ酸配列を含む、上記の一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6に適合させた配列からなるタンパク質を作製し(これを、AD-1と称する。配列番号2)、さらに、この配列を元に、網羅的に1アミノ酸置換を行わせ、上記のAD-1について、約800個の変異体を作製した。本発明者らが開発したタンパク質の改良方法(特許4534030号公報、特許再公表01/000797号公報、M.Iwakura et al. J.Biol.Chem. 281, 13234-13246(2006)、特開2005-058059号公報)に従うことにより、これら約800個の変異体全てについて、酸性条件での抗体の溶出特性を明らかにできれば、本発明が目的とする変異体にたどりつけるものと考えられた。
【0014】
プロテインAのAドメイン由来の配列(配列番号1):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Lys-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Lys-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Lys-Lys
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Lys
【0015】
AD-1の配列(プロテインAのAドメイン配列を元に、R1-R2-R3-R4-R5-R6の形式に適合させて作製した配列)(配列番号2):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly-Gly-Gly
Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
His-His-His-His-His-His
【0016】
ここで、配列番号2に示される配列(AD-1)の一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6における、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は以下の配列である。
R1(大腸菌での発現開始コドン由来のメチオニン、発現とともにほとんど除去されるため、通常は存在しない):
Met
R2(プロテインAのAドメインのアミノ酸配列を、システイン及びリジンを全く含まないように改変した配列)(配列番号3):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly
R3(リンカー配列、システイン及びリジンを全く含まない):
Gly-Gly-Gly-Gly
R4(シアノシステインを介した固定化反応を起こさせる配列):
Cys-Ala
R5(等電点を負にするための配列):
Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
R6(精製用タグ配列):
His-His-His-His-His-His
【0017】
本発明者らは、上記AD-1と名づけたアミノ酸配列を元に、R2を構成するアミノ酸残基全てについて1アミノ酸置換を行った変異体タンパク質を網羅的に作製してきた。
【0018】
しかしながら、これまでの知見では、本発明が目的とする、多くの抗体が酸変性を引き起こさない温和なpH条件(4.0〜5.5)で抗体の脱離を可能にする特定のアミノ酸配列を持つ変異体タンパク質を、800種もの1アミノ酸置換変異体の中から効率よく選別することが困難であった。このため、上記の変異体タンパク質を得るという目的を達成することができなかった。これは、変異体が目的とする特性を有するか否かを判定するためには、候補となる変異体のすべてを担体に固定化し、アフィニティカラムを作製し、作製したカラムを用いて精製実験を行う必要があったためである。このため、一つの変異体について、目的とする特性を明らかにするだけで、数日から2週間を必要とし、これを約800種の1アミノ酸置換体に対して適用することは、時間と費用の観点で、事実上困難であった。
【0019】
本発明者らは、このような状況において、鋭意研究を行った結果、本発明者らが既に開発しているアレイ解析装置(特許4528951号公報、特開2010-127856号公報、特許4006523号公報)を活用することを着想した。
【0020】
本発明で用いたアレイ解析装置において、アレイ基板には、シリカモノリス多孔質体の薄層を支持層に用いている。該シリカモノリス多孔質体表面にポリLリジンを導入し、この薄層に変異体をスポッターによりスポットすることにより変異体タンパク質をイオン相互作用により吸着させた後、シアノ化試薬によりスポット吸着したタンパク中のシステイン残基のSH基をシアノ化し、シアノシステインを介した配向制御固定化反応を行わせる。その後、高塩濃度の緩衝液で洗浄することにより、変異体タンパク中のR4-R5-R6由来部分を除去し、R1-R2-R3部分がそのカルボキシ末端でシリカモノリス多孔質体に配向制御した形で、スポット状に固定化したアレイ基板を作製した。変異体タンパク質を固定化したアレイ基板に、(1)抗体溶液を通液し、(2)中性の緩衝液で洗浄して、(3)抗体溶出用の緩衝液としてpH5.0の緩衝液を通液し、その後、(4)再生用として、pH2.5の緩衝液を通液した。この過程において、アレイ解析装置を用いて各スポットの280nmの透過光量の変化を経時的に測定した。各変異体スポットに抗体が結合した場合は、結合した抗体の280nmの吸収に伴い、280nmの透過光量が減少する。
【0021】
一方、抗体溶出に伴い、各変異体スポットから抗体が解離した場合は、280nmの透過光量が増大する。この測定の際に、抗体溶出用の緩衝液としてpH5.0の緩衝液を通液した時(上記の(3)の工程)の、280nmの透過光の対数をとり(吸光度の変化量に対応する量)、これを経過時間に対してプロットした。pH5.0の緩衝液を通液した時の280nmの透過光の対数の値が、再生用として、pH2.5の緩衝液を通液した(上記の(4)の工程)後に、280nmの透過光の対数の値との差の半分になるまでの経過時間、T
0.5の値を求めた。この値を指標にして、できるだけ小さい値を与える変異体を選びだした。次に、小さいT
0.5を与える変異を組み合わせた変異体を作製し、同様の測定を行い、組み合わせ変異体を作製し、T
0.5の値を測定した。そのような組み合わせ変異体の中に、目的とする変異体を見出すことができた。見出した変異体配列をいくつか繰り返し連結した変異体を作製し、これを担体に配向制御固定化した担体を作製した。この担体を用いてアフィニティカラムを作製し、溶出条件として各種pHでの溶出を行い、クロマトグラムを解析した結果、温和なpH条件で抗体の脱離を可能にする特定のアミノ酸配列を持つプロテインAを含む担体を得るという本発明の課題が達成できていることを確認し、本発明を完成させた。
【0022】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列
[式中、配列は、アミノ末端側からカルボキシ末端側に向かう配列を示し、
R1部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成される配列であり:
R2部分の配列は、固定化対象タンパク質であるプロテインA変異体の配列、又はその配列を1〜3個連結した配列であり、リジン及びシステイン残基を含まない配列であり、該プロテインA変異体は、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を有する;
R3部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成されるスペーサー配列であり;
R4部分の配列はシステイン−X(Xは、アラニンであるか、もしくはアラニンとシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列であり:
R5部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジン及びシステイン残基を含まない配列であり、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列であり;
R6部分の配列はタンパク質を精製するためのアフィニティータグ配列である]
からなるタンパク質であって、R1-R2-R3で表される部分を固定化担体に固定化するために用いるタンパク質が静電相互作用により吸着している固定化担体(但し、モノリス構造体を有する固定化担体を除く)。
【0023】
[2] プロテインA変異体が、アレイ基板に固定化したプロテインA変異体に抗体を結合させ、pH5.0の0.1Mクエン酸ナトリウム溶液で溶出したときの結合していた抗体の半分の量が解離するまでの経過時間T
0.5及び、抗体との解離定数が、配列番号3で表されるプロテインA変異体のT
0.5及び解離定数よりも低いプロテインA変異体である、[1]の固定化担体。
【0024】
[3] プロテインA変異体が、Staphylococcus aureus由来のプロテインAのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸を置換したアミノ酸配列からなる変異体である、[1]又は[2]の固定化担体。
【0025】
[4] プロテインA変異体が、プロテインAのAドメインの変異体である、[1]〜[3]のいずれかの固定化担体。
【0026】
[5] R2部分の配列が、配列番号4〜7のいずれかの配列からなるプロテインAのAドメインの変異体タンパク質の配列、又は配列番号4〜7のいずれかの配列からなるプロテインAのAドメインの変異体タンパク質の配列を1〜3個連結した配列である、[1]〜[4]のいずれかの固定化担体。
【0027】
[6] 一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質中に存在する唯一のシステイン残基のスルフフィドリル基をチオシアノ基に変換し、1級アミンを官能基として有する任意の固定化担体に作用させることにより、前記タンパク質中のシステイン残基よりアミノ末端側に存在するアミノ酸配列部分であるR1-R2-R3部分をアミド結合により結合させるための、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の固定化担体。
【0028】
[7] 一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列において、R3部分の配列が、1〜10個のグリシンからなる配列であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかの固定化担体。
【0029】
[8] 一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列において、R5部分の配列が、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸のアミノ酸残基からなるアミノ酸残基数1〜10個の配列であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかの固定化担体。
【0030】
[9] 一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列において、R5部分の配列が、1〜10個のアスパラギン酸からなる配列であることを特徴とする、[8]の固定化担体。
【0031】
[10] 一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列において、R6部分の配列が、4個以上のヒスチジン残基からなるアミノ酸配列であることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかの固定化担体。
【0032】
[11] 担体がシリカ担体、ガラスビーズ、及びポリマーからなる群から選択される、[1]〜[10]のいずれかの固定化担体。
【0033】
[12] 一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を担体に静電相互作用により吸着させることを含む、[1]〜[11]のいずれかの固定化担体を作製する方法。
【0034】
[13] [1]〜[11]のいずれかの一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質中に存在する唯一のシステイン残基のスルフフィドリル基をチオシアノ基に変換し、1級アミンを官能基として有する任意の固定化担体に作用させることにより、前記タンパク質中のシステイン残基よりアミノ末端側に存在するアミノ酸配列部分であるR1-R2-R3部分をアミド結合により結合させて製造された、プロテインAの変異体が固定化された固定化担体。
【0035】
[14] [1]〜[11]のいずれかの一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質中に存在する唯一のシステイン残基のスルフフィドリル基をチオシアノ基に変換し、1級アミンを官能基として有する任意の固定化担体に作用させることにより、前記タンパク質中のシステイン残基よりアミノ末端側に存在するアミノ酸配列部分であるR1-R2-R3部分をアミド結合により結合させることを含む、[12]の固定化担体を作製する方法。
【0036】
[15] [13]の固定化担体が充填された、抗体精製用アフィニティークロマトグラフィーカラム。
【0037】
[16] [15]の抗体精製用アフィニティークロマトグラフィーカラムに抗体を含む溶液をアプライし、抗体をプロテインA変異体に結合させ、次いで溶出緩衝液により抗体を解離溶出させることを含む、抗体の精製方法。
【0038】
[17] 固定化担体にR1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化するために用いる一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を設計する方法であって、R1、R2、R3、R4、R5及びR6部分のアミノ酸配列を以下の条件に適合するように選択することを含む方法:
(a) R1部分の配列を存在させないか、または存在させる場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成される配列を選択し;
(b) R2部分の配列として、プロテインA変異体の配列、又はその配列を1〜3個連結した配列であり、リジン及びシステイン残基を含まない配列であり、該プロテインA変異体は、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を有する、配列を選択し;
(c) R3部分の配列を存在させないか、または存在させる場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成されるスペーサー配列を選択し;
(d) R4部分の配列として、システイン−X(Xは、アラニンもしくはシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列を選択し;
(e) R5部分の配列は存在させないか、または存在させる場合はリジン及びシステイン残基を含まない配列であり、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列を選択し;そして
(f) R6部分の配列はタンパク質を精製するためのアフィニティータグ配列を選択する。
【0039】
[18] プロテインA変異体が、アレイ基板に固定化したプロテインA変異体に抗体を結合させ、pH5.0の0.1Mクエン酸ナトリウム溶液で溶出したときの結合していた抗体の半分の量が解離するまでの経過時間T
0.5及び、抗体との解離定数が、配列番号3で表されるプロテインA変異体のT
0.5及び解離定数よりも低いプロテインA変異体である、[17]の方法。
【0040】
[19] プロテインA変異体が、Staphylococcus aureus由来のプロテインAのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸を置換したアミノ酸配列からなる変異体である、[17]又は[18]の方法。
【0041】
[20] プロテインA変異体が、プロテインAのAドメインの変異体である、[17]〜[19]のいずれかの方法。
【0042】
[21] R2部分の配列が、配列番号4〜7のいずれかの配列からなるプロテインAのAドメインの変異体タンパク質、又は配列番号4〜7のいずれかの配列を1〜3個連結した配列からなるプロテインAのAドメインの変異体タンパク質の配列である、[17]〜[20]のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0043】
本発明の方法により、R2としてプロテインA変異体を含む一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列を設計し、該アミノ酸配列からなるタンパク質を作製し、該タンパク質を用いてプロテインA変異体を担体に固定化することにより、抗体精製の際に、プロテインAに結合した抗体をより温和なpH条件(pH4.0〜5.5)で行うことができるという溶出性能に優れた固定化担体を得ることができる。また、上記固定化担体を用いることにより、温和なpH条件(pH4.0〜5.5)で抗体を溶出することが可能となり、得られる抗体の回収率も向上する。さらに、上記固定化担体を充填剤として用いることにより、精製能力に優れるアフィニティークロマトグラフィー用カラムを得ることができ、該カラムを用いて効率的な抗体の精製方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質中のR2部分の配列は、固定化しようとする固定化対象プロテインAであり、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を用いることにより、R2部分が固定化された固定化タンパク質を得ることができる。上記一般式中、配列は、アミノ末端側からカルボキシ末端側に向かうアミノ酸配列を示す。
【0046】
R1部分の配列は、存在しなくてもよく、存在する場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成される配列である。具体的には、例えば、大腸菌での発現開始コドン由来のメチオニンが挙げられる。但し、該メチオニンは発現とともにほとんど除去されるため、通常は存在しない
【0047】
R2部分の配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる天然のプロテインAの変異体のアミノ酸配列である。また、プロテインAの変異体のアミノ酸配列を配列単位として該配列単位の繰り返しよりなるアミノ酸配列を用いてもよい。この場合繰り返し数は1〜3である。ここで、繰り返しよりなるアミノ酸配列を、プロテインAの変異体のアミノ酸配列を1〜3個連結した配列ともいう。R2部分に用いるプロテインAの変異体のアミノ酸配列中には、リジン残基及びシステイン残基は全く含まれない。また、用いるプロテインAの変異体は、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特徴を有する。
【0048】
R2部分のプロテインAの一例として、Staphylococcus aureus由来のプロテインA(A. Forsgren and J. Sjoquist, J. Immunol. (1966) 97, 822-827.に記載)を通常の遺伝子改変技術を用いて設計することにより、アミノ酸配列を改変したプロテインA変異体をあげることができる。また、R2部分のタンパク質として、プロテインAの抗体のFc領域と結合し得るドメインの変異体を用いてもよい。このようなドメインとして、Eドメイン、Dドメイン、Aドメイン、Bドメイン及びCドメインが挙げられる。この中でもAドメインの変異体が好ましい。本発明において、プロテインAという場合、これらのドメインも含む。
【0049】
プロテインAのアミノ酸配列中にε-アミノ基を有するリジン又はスルフヒドリル基を有するシステイン残基が含まれる場合、プロテインAの抗体との結合活性が低下しないように、リジン及びシステインを他のアミノ酸で置換し、プロテインAのアミノ酸配列中にリジン及びシステインが含まれないようにする。既に、本発明者らは、リジン及びシステインを全く含まないタンパク質を作製する方法を確立している(特開2008-266219号公報)。該方法に従って、天然由来のプロテインAのアミノ酸配列を基に、アミノ酸配列を改変し、リジン及びシステイン残基を含まない18種のアミノ酸より構成されるアミノ酸配列からなるプロテインAであって、抗体との結合特性において天然のプロテインAと同等の性能を発揮するタンパク質を作製することができる。
【0050】
Staphylococcus aureus由来のプロテインAのAドメインのアミノ酸配列は以下の配列番号1で示される。
【0051】
プロテインAのAドメイン由来の配列(配列番号1):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Lys-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Lys-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Lys-Lys
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Lys
【0052】
このプロテインAは4残基のリジン(35番目、49番目、50番目及び58番目のアミノ酸位置)を有しており、上記の方法により、リジン残基をアルギニン残基又はグリシン残基で置換したプロテインAのAドメインのアミノ酸配列を以下の配列番号3で示す。
【0053】
プロテインAのAドメインをシステイン及びリジンを全く含まないように改変した配列(配列番号3):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly
【0054】
配列番号3に示すアミノ酸配列をベースに改変した、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を有するプロテインAのAドメインとして、以下の変異体が挙げられる。それぞれの変異体のアミノ酸配列をR2部分として含む、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をAD-3、AD-4、AD-6-1及びAD-6-2と呼ぶ。
【0055】
AD-3のR2部分のプロテインAのAドメイン変異体は、下記のアミノ酸配列(配列番号4)からなり、配列番号3のアミノ酸配列において、15番目のE(グルタミン酸)がH(ヒスチジン)に置換され、29番目のG(グリシン)がA(アラニン)に置換されている。
【0056】
AD-3のアミノ酸配列(配列番号4):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-His-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Ala-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly
【0057】
AD-4のR2部分のプロテインAのAドメイン変異体は、下記のアミノ酸配列(配列番号5)からなり、配列番号3のアミノ酸配列において、15番目のE(グルタミン酸)がH(ヒスチジン)に置換され、19番目のM(メチオニン)がV(バリン)に置換され、29番目のG(グリシン)がA(アラニン)に置換されている。
【0058】
AD-4のアミノ酸配列(配列番号5):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-His-Ile-Leu-Asn-Val-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Ala-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly
【0059】
AD-6-1のR2部分のプロテインAのAドメイン変異体は、下記のアミノ酸配列(配列番号6)からなり、配列番号3のアミノ酸配列において、15番目のE(グルタミン酸)がH(ヒスチジン)に置換され、19番目のM(メチオニン)がV(バリン)に置換され、29番目のG(グリシン)がE(グルタミン酸)に置換されている。
AD-6-1のアミノ酸配列(配列番号6):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-His-Ile-Leu-Asn-Val-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Glu-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly
【0060】
AD-6-2のR2部分のプロテインAのAドメイン変異体は、下記のアミノ酸配列(配列番号7)からなり、配列番号3のアミノ酸配列において、15番目のE(グルタミン酸)がH(ヒスチジン)に置換され、19番目のM(メチオニン)がV(バリン)に置換され、29番目のG(グリシン)がD(アスパラギン酸)に置換されている。
AD-6-2のアミノ酸配列(配列番号7):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-His-Ile-Leu-Asn-Val-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Asp-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly
【0061】
R3部分の配列は、リジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成される任意のスペーサー配列である。R3部分は存在しなくてもよい。R3部分の配列は、固定化担体にR2部分と共に固定化される。R3部分は固定化に際して固定化担体との結合によりR2部分が有する機能が阻害されないようにする適切なリンカーとしての役割を担っている。リンカーとしての役割は、R2部分の特定の機能を有するタンパク質と固定化担体との間に適切な距離を保つことである。従って、R3部分は一定の長さを有する任意のアミノ酸配列で且つ不活性であることが求められる。R3部分のアミノ酸の数は限定されないが、0、すなわち存在しないか、1〜10アミノ酸、好ましくは2〜5アミノ酸である。R3部分の配列として、例えば、0〜10個、又は2〜5個のグリシンからなるポリグリシン等が挙げられ、具体的には、例えば、Gly-Gly-Gly-Glyで表される配列が挙げられる。
【0062】
R4部分の配列は、システイン−X(Xは、リジン及びシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列であり、例えばCys-Alaが挙げられる。一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質においてR4配列部分にのみ、唯一のシステイン残基を有する。従って、この唯一のシステイン残基の側鎖の官能基であるSH基をシアノ化することによりシアノシステイン残基に変化させ、該シアノシステイン残基と固定化担体上の1級アミンとの反応により、上記の一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列のR1-R2-R3で表される部分のみを固定化担体上に配向制御して固定化させることができる。
【0063】
R5部分の配列は、リジン残基及びシステイン残基を全く含まない任意の配列で且つ一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列である。ここで、「タンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含む配列」とは、酸性アミノ酸の種類及び数がタンパク質全体の等電点を酸性にするだけ含まれている配列をいう。R5部分としては、アスパラギン酸やグルタミン酸を多く含む配列が好適である。タンパク質の等電点は、構成するアミノ酸の種類と数に依存する。例えば、リジンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸を多く含む場合は、塩基性アミノ酸の総数を超える数のアスパラギン酸やグルタミン酸が必要である。タンパク質の等電点の計算は、当業者であれば容易に計算により推定できる。好ましくは、上記一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の等電点を4〜5の間の値になるように、アスパラギン酸やグルタミン酸を多く含む配列を設計すればよい。R5部分の配列のアミノ酸の数は限定されないが、0すなわち存在しないか、又は1〜20個、好ましくは1〜10個、あるいは0〜20個、好ましくは0〜10個である。例えば、アスパラギン酸2〜10個からなるポリアスパラギン酸を挙げることができ、具体的にはAsp-Asp-Asp-Asp-Aspが挙げられる。R5部分を含まない部分の等電点が最初から酸性の場合は、R5部分は存在しなくてもよい。
【0064】
R6部分の配列は、特定の化合物と結合し得る任意のアフィニティータグ配列である。R6部分の配列は、合成した一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を精製するために利用される配列部分である。R6部分の配列として、特定の化合物と結合し得る配列、すなわちアフィニティータグ配列が挙げられる。該タグに特異的な抗体を用いて該タグを含むタンパク質の精製を行なう場合、エピトープタグという場合もある。アフィニティータグ配列として例えば、2〜12個、好ましくは4個以上、さらに好ましくは4〜7個、さらに好ましくは5個若しくは6個のヒスチジンからなるポリヒスチジン配列が挙げられ、具体的にはHis-His-His-His-His-Hisが挙げられる。この場合、ニッケルをリガンドとしたニッケルキレートカラムクロマトグラフィーを利用することにより上記ポリペプチドを精製することができる。また、ポリヒスチジンに対する抗体をリガンドとして固定化したカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによっても精製することができる。その他、ヒスチジンを含む配列からなるHATタグ、HNタグ等も用いることができる。
【0065】
一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなる固定化用タンパク質の具体的な例を配列番号2に示す。
【0066】
AD-1の配列(プロテインAのAドメイン配列を元に、R1-R2-R3-R4-R5-R6の形式に適合させて作製した配列)(配列番号2):
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly-Gly-Gly
Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
His-His-His-His-His-His
【0067】
配列番号2に示す配列において、R1部分は存在せず、R2部分は上記のリジン及びシステインを含まないプロテインAのAドメインのアミノ酸配列(配列番号3)であり、R3部分はGly-Gly-Gly-Glyで表される配列であり、R4部分はCys-Alaで表される配列であり、R5部分はAsp-Asp-Asp-Asp-Asp-Aspで表される配列であり、R6部分はHis-His-His-His-His-Hisで表される配列である。
【0068】
また、AD-3、AD-4、AD-6-1及びAD-6-2のR1部分、R3部分、R4部分、R5部分及びR6部分は、上記のAD-1と同じである。
【0069】
本発明の一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなる固定化用タンパク質を用いた、固定化対象タンパク質の担体への固定化は、特許第3788828号公報、特許第2990271号公報、特許第3047020号公報、特開2003-344396号公報、特開2008-115151号公報、特開2008-115152号公報、特開2008-115153号公報、特開2008-266221号公報等に記載の方法に従って行なうことができる。
【0070】
具体的には、本発明の一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質のR4部分のシステイン残基をシアノ化によりシアノシステインとし、シアノシステインを有するタンパク質を一般式「NH
2-Y」(Yは任意の固定化担体を表す)で示される1級アミノ基を官能基として有する固定化担体とを弱アルカリ条件下(pH8〜10)で反応させることにより、R1-R2-R3部分が固定化担体に固定化される。固定化担体にR1-R2-R3部分が結合したものは、R1-R2-R3-CO-NH-Y(式中、Yは上記の意味を有する。)で表され、R2部分のカルボキシ末端一箇所で固定化担体に結合している。シアノ化反応は、シアノ化試薬を用いて行うことができる。シアノ化試薬としては、2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸(2-nitro-5-thiocyanobennzoic acid (NTCB)) (Y.Degani, A.Ptchornik, Biochemistry, 13,1-11 (1974)参照)又は、1−シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロ硼酸(1-cyano-4dimethylaminopyridinium tetrafluoroborate(CDAP))等を用いることができる。
【0071】
また、特開2003-344396号公報に記載の方法においては、本発明の一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化担体に吸着させた後に、システイン残基をシアノ化し、上記の反応を行なわせ、固定化担体にR1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化担体に固定化する。タンパク質を固定化担体に吸着させるには、中性から弱アルカリ条件下(pH7〜10)で、タンパク質と固定化担体を反応させればよい。弱アルカリ反応条件化において、タンパク質は負に帯電し、一方、固定化担体は正に帯電し、静電相互作用により互いに吸着結合する。
【0072】
本発明は、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を吸着させた固定化担体であり、システイン残基をシアノ化する前の固体化担体、及びシアノ化を行い、R1-R2-R3で表される部分が固定化された固定化担体を包含する。
【0073】
本発明の一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を用いて、シアノシステインを介した固定化反応により作製される、R1-R2-R3部分を固定化した固定化タンパク質においては、固定化担体部分に未反応の一級アミンが多数存在する。固定化されたタンパク質にリジン残基又はシステイン残基が存在する場合、残存の活性アミンが本発明の固定化タンパク質の利用を制限することがあり得る。しかしながら、固定化されたタンパク質部分であるR1-R2-R3部分は、全くリジン残基及びシステイン残基を含まないことから、タンパク質部分の化学的統制を変えることなく、タンパク質を固定化した担体表面に残存する1級アミンをマスク剤で処理することができる。マスク剤としては、無水酢酸、無水マレイン酸等が好適であるが、どのようなマスク剤であれ利用できる。
【0074】
本発明は、さらに、上記方法で得られた、システイン残基及びリジン残基を含まないアミノ酸配列よりなるタンパク質を適当なリンカー配列を介して、1級アミノ基を有する固定化担体とアミド(ペプチド)結合で強固に結合した固定化タンパク質を提供する。
【0075】
本発明において、固定化の担体としては、クロマトグラフィーに利用し得る担体を用いることができる。但し、本発明において用いる担体は、モノリス構造体を有する担体は除かれる。ここで、モノリス構造体とは、上面から下面まで貫通しているマクロ細孔を持つ多孔質体であり、多孔質体はマクロ細孔の内部にミクロ細孔を有することを特徴とし、多孔質体はマクロ細孔1〜100μm、ミクロ細孔0〜100nmである。モノリス構造体として、例えばケイ素を含むシリカモノリス構造体が挙げられる。モノリス構造体については、特公平08-029952号公報、特開平07-041374号公報、特開2010-127853号公報等に記載されている。
【0076】
また、粒子状の担体、膜状の担体、繊維状の担体、ホロファイバー状の担体、板状やシート状の基板、磁気ビーズ等タンパク質を固定化し得る不溶性のものならば、いずれも含まれる。「固定化担体」は、「固定化基板」を含む。このような形状の担体を形成する素材としては、表面に介在タンパク質を配向制御固定化するための官能基が導入されているものならどのようなものでもよくポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレンジビニルベンゼン、ポリメタクリエート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアクリレートに代表される重合体や共重合体であるポリマー素材やハイドロゲル、アガロース、デキストラン、セルロース、キトサンなどに代表される天然素材、シリカ、ガラス、セラミックなどに代表される無機素材、さらには、金、アルミナ、銀などに代表される金属素材など幅広く利用可能である。担体としては、Sepharose(登録商標)、Sephadex(登録商標)、Cellufine(登録商標)等の市販のものを用いることができる。さらに、ミクロ流路も担体として利用することができる。ここで、ミクロ流路とは、フローチャンネルセルやガラス基板上にミクロンオーダーの高精度の流路を形成したマイクロチップ等をいい、流路内のガラス上にタンパク質を固定化すればよい。
【0077】
ここで、官能基を導入した市販の固定化担体としては、アミノ−セルロファイン(生化学工業で販売)、AF-アミノトヨパール(TOSOHで販売)、EAH-セファロース4B及びリジン-セファロース4B(アマシャムバイオサイエンスで販売)、ポラス20NH(ベーリンガーマンハイムで販売)、ポロス(ライフテクノロジーズで販売)、CNBr活性化セファロースFF、NHS活性化セファロースFF、などがある。また、1級アミノ基を有するシラン化合物(例えば、3−アミノプロピルメトキシシランなど)を用いて、シリカ担体、ガラスビーズ又はガラス平板などにアミノ基などの官能基を導入することは当業者であれば容易にできる。
【0078】
本発明の、プロテインA変異体を含む担体を、抗体生成用のためのアフィニティークロマトグラフィーに用いる場合、粒子状の担体がクロマトグラフィー用カラムに充填されて用いられる。
【0079】
上記の抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を有する、プロテインAの変異体は以下の方法で取得することができる。
【0080】
最初にリジン及びシステインを含まないように改変したプロテインA(例えば、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるプロテインAのAドメイン)の1個のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したタンパク質を作製する。このタンパク質について、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を有するプロテインA変異体を選択する。必要ならば、選択したプロテインA変異体について、さらに1個のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したタンパク質、すなわち複数のアミノ酸置換を組合せた変異体を作製し、変異体の中から、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を有するプロテインA変異体を選択する。この操作を数回繰り返すことにより、上記の特性を強く呈するプロテインA変体を製造することができる。最終的には抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を有するプロテインA変異体として又は複数のアミノ酸が置換されたプロテインA変異体を得ることができる。例えば、プロテインAとしてプロテインAのAドメインを用いた場合、リジン及びシステイン残基を含まないようにリジン及びシステインを他のアミノ酸に置換した変異体において、さらに1個、2個又は3個のアミノ酸が置換されたプロテインA変異体を得ることができる。この場合、リジン及びシステインを含む野生型のアミノ酸からは6〜9個のアミノ酸が置換される。また、プロテインA全体としても、リジン及びシステイン残基を含まないようにリジン及びシステインを他のアミノ酸に置換した変異体において、さらに、1〜9個のアミノ酸が置換された変異体を得ることができる。この場合、リジン及びシステインを含む野生型のアミノ酸からは7〜15個のアミノ酸が置換される。このうちの6個がリジン及びシステインの他のアミノ酸への置換であり、残りの1〜9個が抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性を付与するための置換である。具体的には、上記のAD-3、AD-4、AD-6-1及びAD-6-2のアミノ酸配列のR2部分で表されるアミノ酸配列からなる変異体が挙げられる。
【0081】
プロテインA変異体の抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性の検定は、例えば以下の方法で行うことができる。
【0082】
一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなる固定化用タンパク質中、R2部分としてプロテインAの変異体のアミノ酸配列を含むタンパク質を製造し、該タンパク質を用いてR1-R2-R3部分をアレイ用基板に、シアノ化を利用した上記方法により固定化する。ここで用いるアレイとしては、特許4528951号公報、特開2010-127856号公報、特許4006523号公報等に記載されているアレイを用いればよい。
【0083】
変異体を固定化したアレイ基板を、アレイ解析装置にセットし、装置の送液系に接続し、以下に記載する解析のための溶液を自動通液しながらアレイに280nmの紫外光を照射し、その透過光をCCDで継時的に撮影しアレイの画像をPCに取り込む。初期化緩衝液(150mM 塩化ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0)、抗体溶液(ヒトポリクローナル抗体を0.2mg/mlになるようにランニング緩衝液で希釈した溶液)、洗浄用緩衝液(1M 塩化ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0)、溶出用緩衝液(0.1M クエン酸ナトリウム、pH5.0)、再生用緩衝液(0.1M グリシン、pH2.5)の各々を0.6ml/minの速さで25分間、この順に通液し、8秒間隔でアレイの画像を継時的に撮影し、画像としてPCに取り込み保存する。データの解析においては、装置に付属した解析用ソフトフェアを用いて、アレイ画像の中にスポットを自動検出し、スポット領域のピクセルの平均輝度、及び、スポット周辺のピクセルの平均輝度を計算し、その比の対数をスポットのシグナル強度として求める。この値は、スポット上のタンパク質の量に比例することが確認されている。各スポットのシグナル強度をアレイ基板に対して通液を開始してからの経過時間に対してプロットする。経過時間に対するシグナル強度のプロットから得られる曲線を解析することにより変異体タンパク質の特性を評価することができる。このシグナル強度の時間経過を求めることにより、抗体が吸着、解離する状況を定量的に解析することができる。この溶出過程のシグナル強度変化に減衰曲線をフィッティングし、結合していた抗体の半分の量が解離するまでの経過時間T
0.5を求め、アレイ近傍の上記のAD-1中のプロテインAのAドメインのT
0.5との比を計算することによって規格化したT
0.5を求め、この値を酸溶出特性の指標、あるいは、酸溶出の容易さの指標として評価する。T
0.5が低い方が酸溶出特性、すなわち、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性が良好であると判断することができる。さらに、T
0.5に加えて、抗体との解離定数(Kd)を指標にしてもよい。
【0084】
解離定数は、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサーであるBiacore(ビアコア社)を用いてプロテインA変異体と抗体との結合特性解析を行うことにより測定することができる。この際、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなる固定化用タンパク質中、R2部分としてプロテインAの変異体のアミノ酸配列を含むタンパク質を用いてR1-R2-R3部分を担体に結合し、該タンパク質固定化担体を用いればよい。観測された表面プラズモン共鳴によるセンサー表面の質量変化の経時変化は、Biacoreにより定義される単位RUにより測定し、結合速度定数(kass)、解離速度定数(kdis)及び解離定数(Kd =kass/kdis)を求めればよい。解離定数が小さいプロテインA変異体ほど、抗体と中性条件で強く結合し得る変異体であると判断することができる。
【0085】
上記の方法で求めたT
0.5及び解離定数を
図1に示すような座標上にプロットし、T
0.5及び解離定数が一定値範囲にあるもの、すなわち、座標上の特定の範囲にプロットされたプロテインAのAドメイン変異体を、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性が優れた変異体として選択すればよい。
【0086】
例えば、上記の配列番号2で表されるAD-1を用いて作製したプロテインAのAドメイン固定化担体について同様の検討を行い、T
0.5がAD-1中のプロテインAのAドメインを用いて測定したT
0.5よりも小さく、かつ解離定数がAD-1中のプロテインAのAドメインを用いて測定した解離定数よりも小さいプロテインAを本発明の、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性が優れた変異体として選択することができる。本発明の、抗体と中性条件で強く結合し、pH4.0〜pH5.5の範囲の弱酸性の条件で、中性条件で結合した抗体と解離するという特性が優れた変異体の、上記のアレイを用いて測定した場合のT
0.5は1.00以下、好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.55以下であり、上記のビアコアにより測定した解離定数は6×10
-9以下、好ましくは8×10
-9以下、さらに好ましくは10
-10以下である。
【0087】
本発明の、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化した固定化担体を用いることにより、R1-R2-R3で表される部分が固定化された固定化タンパク質を得ることができる。一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化した固定化担体は、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化担体に吸着させることにより製造することができる。タンパク質の固定化担体への吸着は上記のように、中性から弱アルカリ条件下(pH7〜10)で、タンパク質と固定化担体を反応させればよい。一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化した固定化担体において、タンパク質のR3部分に含まれるシステイン残基をシアノ化することにより、上記のように、固定化担体にR1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が固定化された固定化担体を製造することができる。本発明は、R1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が固定化された固定化担体も包含する。
【0088】
R1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が固定化された固定化担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより抗体を精製することができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるアフィニティークロマトグラフィー用カラムは、カラムにR1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が固定化された固定化担体を充填することにより、製造することができる。担体のカラムへの充填は公知の方法により行うことができる。本発明は、R1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が固定化された固定化担体を含む抗体精製用アフィニティークロマトグラフィー用カラムも包含する。
【0089】
本発明のアフィニティークロマトグラフィー用カラムを用いた抗体精製は公知のアフィニティークロマトグラフィーの方法により行うことができるが、プロテインA変異体に結合させた抗体を温和なpH条件で溶出することができるという特徴を有する。抗体精製は、最初に、精製しようとする抗体を含む溶液(原料粗液)を、R1-R2-R3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が固定化された固定化担体を充填したアフィニティークロマトグラフィー用カラムに通液し、担体上のプロテインA変異体に抗体を吸着させる。この際、原料粗液はpH6.0〜8.5に調整しておく。pHの調整に用いる緩衝液は限定されないが、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、HEPES; 2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid、 MES; 2-Morpholinoethanesulfonic acid等を用いればよい。また、アフィニティークロマトグラフィー用カラムは、あらかじめ上記のpH6.0〜8.5の緩衝液を用いて平衡化しておくのが好ましい。次いで、抗体を吸着させた担体をリン酸ナトリウム緩衝液やTris-HCl緩衝液等の中性緩衝液で洗浄し、不純物を除去する。その後、pH4.0〜pH5.5の緩衝液を用いて結合した抗体を溶出させ回収すればよい。pH4.0〜pH5.5の緩衝液としては、酢酸ナトリウム緩衝液やクエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液あるいはMES;2-Morpholinoethanesulfonic acid等を用いればよい。用いる緩衝液の濃度は限定されないが、例えば、10〜50mMの濃度で用いればよい。カラムサイズはサンプルとして用いる抗体含有原料粗液の容積にもよるが、例えば長さ2.5〜30cmのものを用いればよい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【0091】
以下の実施例においては、下記の実験方法が共通的に用いられている。
(実施例1)
遺伝子合成
実施例に記載されている遺伝子の合成は、合成遺伝子受託製造業者にて合成を行った。以下に示した塩基配列(配列番号8)にもとづき、dsDNAを合成しpUC18vectorのBamHI-EcoRI siteへの挿入、取得されたクローンについて片鎖解析による配列を確認、塩基配列情報の照合、ミスマッチが確認された部位についてはSite directed mutagenesis等の手法により変異修正を実施、得られた取得したプラスミドDNA(約1μg)が納入された。納入されたプラスミド中の目的部分に関しては、再度シーケンシングにより配列確認を行った。
【0092】
配列番号8の塩基配列
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTAACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACTATGGCGGATAACAACTTTAACCGCGAACAGCAGAACGCGTTTTATGAAATTCTGAACATGCCGAACCTGAACGAAGAACAGCGCAACGGCTTTATTCAGAGCCTGCGCGATGATCCGAGCCAGAGCGCGAATCTGCTGAGCGAAGCGCGTCGTCTGAATGAAAGCCAGGCGCCGGGCTGTGCGGATGACGACGACGATGATCACCACCATCACCATCATTAAGAATTC
【0093】
1アミノ酸置換変異体作製
AD-1(アミノ酸配列を配列番号2に示す)を元にしたプロテインAのAドメインのアミノ酸置換は、置換部位のアミノ酸をコードするDNA配列を目的のコドン配列に転換して両方に24塩基ずつ元の配列を持つDNAプライマーとその相補DNAプライマーを用いて、クイックチャンジ法(Stratagene社のQuickChang Site-directed Mutagenesis kitに記載に記載されている方法)に従って行った。
【0094】
タンパク質精製
組換えプラスミドを形質転換した大腸菌JM109株を、2Lの培地(20gの塩化ナトリウム、20g酵母エキス、32gのトリプトン、100mgのアンピシリンナトリウムを含んでいる)で、35℃で一晩培養した。その後、培養液を20分間低速遠心(毎分5,000回転)することにより、湿重量3〜5gの菌体を得た。これを20mLの10mMの燐酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、フレンチプレス装置により菌体を破砕した後、20分間高速遠心(毎分20,000回転)することにより、上清を分離した。得られた上清にストレプトマイシン硫酸を最終濃度が2%になるように加え20分間撹拌後、20分間高速遠心(毎分20,000回転)することにより、上清を分離した。この後、硫酸アンモニウム処理を行い、得られた上清をニッケルキレートカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社より購入)にアプライし、洗浄用緩衝液(5mMイミダゾール、20mMリン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.4)を20ml以上用いて、カラムを十分洗浄し、洗浄後、溶出用緩衝液(0.5Mイミダゾール、20mMリン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.4)を20mlアプライすることにより、目的のタンパク質を溶出した。その後、このタンパク質溶液からイミダゾールを除去するため、5Lの10mM燐酸緩衝液(pH7.0)に対して透析を行った。透析膜にはMWCO3500(Spectrum Laboratories社より購入)を用いた。透析後、遠心真空乾燥機を用いて目的のタンパク質を乾燥させた。
【0095】
ヒト抗体IgG分子との結合特性解析
目的タンパク質の結合特性解析には、表面プラズモン共鳴バイオセンサーであるBiacore(ビアコア社)を用い、ビアコア社の提供するプロトコールに従って解析を行った。
【0096】
ランニング緩衝液は、10mM HEPES (pH7.4)、150mM塩化ナトリウム、5μM EDTA、0.005% Surfactant P20(ビアコア社)の組成のものを用い、あらかじめ脱気したものを用いた。
【0097】
センサーチップとしては、SensorChip NTA(ビアコア社)を用いた。センサーチップをランニング緩衝液にて十分平衡化した後、5mM塩化ニッケル溶液を注入することにより、ニッケルイオンの配位を完成させた。その後、センサーチップを、組み換えタンパク質溶液(ランニング緩衝液中、濃度100μg/mL)を注入することにより、組み換えタンパク質の固定化を行った。
【0098】
固定化組換えタンパク質とヒトIgGとの結合反応は、ランニング緩衝液を用いて0.25〜20μg/mlの範囲で7種類の濃度になるように希釈・調製したヒトIgG(シグマ−アルドリッチ社)溶液を逐次注入し、引き続きランニング緩衝液に切り替えて送液を保持することにより、抗体の結合・解離現象を定量的に観測した。なお、送液流量は20μL/min、結合観測時間(抗体溶液注入時間)は4分間、解離観測時間は4分間とした。各濃度の抗体溶液を注入し、結合・解離現象を観測した後には、引き続き6M塩酸グアニジン溶液を3分間注入し、固定化されている組換えタンパク質に結合しているヒトIgGをすべて解離させ、ランニング緩衝液で再生し、その後の測定に使用した。
【0099】
観測された表面プラズモン共鳴によるセンサー表面の質量変化の経時変化は、Biacoreにより定義される単位RUにより測定し、結合速度定数(kass)、解離速度定数(kdis)及び解離定数(Kd =kass/kdis)を求めた。
【0100】
AD-1のプロテインAのAドメインの網羅的1アミノ酸置換変異体のビアコア測定による抗体との結合の強さを示す解離定数に対する、アレイ解析装置を用いた測定から得られたpH5.0における溶出から求めた溶出パラメータ、T
0.5の値のプロット結果を
図1に示す。
【0101】
アレイ解析装置を用いた抗体の酸溶出特性の解析
アレイ解析装置を用いた測定は以下のように行った。
【0102】
タンパク質のアレイ基板への固定化
各変異型タンパク質をpH7.0の10mMリン酸緩衝液に溶解し、BCA法で濃度を測定し、最終濃度が2mg/mlになるように調整した。約2mg/mlの各タンパク質溶液をアレイ用基板(シリカモノリス多孔質体の薄層)に対して、8行12列の96箇所に1.2mm間隔で0.2μLずつスポットした。その際、1枚のアレイ上に同じ変異型タンパク質を二箇所にスポットし、データの再現性を確認できるようにした。また、比較用タンパク質としてAD-1タンパク質を各行の中2か所にスポットし、変異型タンパク質のデータとAD-1のデータとを比較できるようにした。スポットした後、タンパク質の還元反応、シアノ化反応、シアノシステインを介した配向制御固定化反応、高塩濃度の緩衝液による洗浄、及び残存アミノ基のマスク反応を逐次行うことにより、タンパク質をアレイ用基板に固定化した。
【0103】
測定
各変異体をスポット固定化したアレイ基板を、アレイ解析装置にセットし、装置の送液系に接続し、以下に記載する解析のための溶液を自動通液しながらアレイに280nmの紫外光を照射し、その透過光をCCDで継時的に撮影しアレイの画像をPCに取り込んでいった。初期化緩衝液(150mM 塩化ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0)、抗体溶液(ヒトポリクローナル抗体を0.2mg/mlになるようにランニング緩衝液で希釈した溶液)、洗浄用緩衝液(1M 塩化ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0)、溶出用緩衝液(0.1M クエン酸ナトリウム、pH5.0)、再生用緩衝液(0.1M グリシン、pH2.5)、各々を0.6ml/minの速さで25分間、この順に通液し、8秒間隔でアレイの画像を継時的に撮影し、画像としてPCに取り込み保存した。
【0104】
データ解析
データの解析においては、装置に付属した解析用ソフトフェアを用いて、アレイ画像の中にスポットを自動検出し、スポット領域のピクセルの平均輝度、及び、スポット周辺のピクセルの平均輝度を計算し、その比の対数をスポットのシグナル強度として求めた。この値は、スポット上のタンパク質の量に比例することが確認されている。各スポットのシグナル強度をアレイ基板に対して通液を開始してからの経過時間に対してプロットした。経過時間に対するシグナル強度のプロットから得られる曲線を解析することにより変異体タンパク質の特性を評価した。このシグナル強度の時間経過を求めることにより、抗体が吸着、解離する状況を定量的に解析することができる。
【0105】
このような解析の結果、溶出用緩衝液を通液した時の抗体の解離の速さ、すなわち、抗体の酸溶出特性は、変異型タンパク質の種類によって大きく異なっていることが分かった。そこで、この溶出過程のシグナル強度変化に減衰曲線をフィッティングし、吸着していた抗体の半分の量が解離するまでの経過時間T
0.5を求め、アレイ近傍のAD-1のプロテインAのAドメインのT
0.5との比を計算することによって規格化したT
0.5を求め、この値を酸溶出特性の指標、あるいは、酸溶出の容易さの指標とした。
【0106】
次に、この酸溶出特性とともに、先述のヒト抗体IgG分子との結合特性解析に記載した方法で求めた解離定数(Kd)の両方の指標を基に、変異型タンパク質の選抜を試みた。その結果、AD-1のプロテインAのAドメインよりも結合親和性が高く(Kdの値が小さく)、且つ、酸溶出の容易な(T
0.5の値が小さい)変異型タンパク質を複数選びだすことが出来た。また、それらの変異を組み合わせた変異型タンパク質を作製し、それらのアレイを作製して抗体の酸溶出特性を測定・解析することによって、さらに酸溶出の容易な変異型タンパク質を見出すことが出来た。
【0107】
配列番号1に示すアミノ酸配列の15番目のE(グルタミン酸)をH(ヒスチジン)に置換したもの(E15H)の酸溶出特性が良好であった。
【0108】
(実施例2)
実施例1の結果を元に、さらに、E15H変異に他の1アミノ酸置換変異を行った。付け加える変異としては、M19(配列番号1に示すアミノ酸配列の19番目のメチオニン)とG29(配列番号1に示すアミノ酸配列の29番目のグリシン)の部位の置換変異について検討した。M19は、AD-1中に唯一存在する空気酸化を受けやすいメチオニン残基であり、この部位のアミノ酸置換により、化学的な性質として抗酸化性能が付加されることが期待されるからである。G29の部位は、アレイ解析の結果、pH5.0における溶出特性が改良する変異が期待される部位の一つとして示された部位である。M19の部位ではpH5における溶出のし易さのパラメータであるT
0.5が改良された変異として,M19V(19番目のメチオニンのV(バリン)への置換)が、G29の部位では、G29A(29番目のグリシンのA(アラニン)への置換)、G29D(29番目のグリシンのD(アスパラギン酸)への置換及びG29E(29番目のGのE(グルタミン酸への置換)が選択された。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
これらの変異を組み合わせた組み合わせ変異体として、E15H+G29A(AD-3のR2部分)、E15H+M19V+G29A(AD-4のR2部分)、E15H+M19V+G29D(AD-6-2のR2部分)、E15H+M19V+G29E(AD-6-1のR2部分)の4種類の組み合わせ変異について、上記方法に従って発現遺伝子の作製、大腸菌での発現、発現した大腸菌からの組み換えタンパク質の分離精製を行い、それぞれのタンパク質の精製品をそれぞれ約1gずつ調製した。調製したそれぞれのタンパク質を用いて、一般式R1-R2-R3-R4-R5-R6で表されるタンパク質を作製した。R2部分がプロテインAの上記変異体であり、R1は存在せず、R3はGly-Gly-Gly-Glyで表される配列であり、R4はCys-Alaで表される配列であり、R5はAsp-Asp-Asp-Asp-Asp-Aspで表される配列であり、R6はHis-His-His-His-His-Hisで表される配列であった。特許第3788828号公報、特許第2990271号公報、特許第3047020号公報、特開2003-344396号公報、特開2008-115151号公報、特開2008-115152号公報、特開2008-115153号公報、特開2008-266221号公報等に記載の方法に従って、R4部分のシステインをシアノ化によりシアノシステインとし、R1-R2-R3部分(実際には、R2-R3部分)を担体へ固定化し、リガンドを導入したアフィニティー担体をそれぞれ作製した。作製方法は、下記の「組換えタンパク質の固定化」に示す。前記の「リガンドを導入したアフィニティー担体」と下記の「タンパク質固定化シリカゲル」は同じ物である。それぞれのアフィニティー担体を約1ml用いた分離カラムを作製した。作製したそれぞれの分離カラムについて、ポリクローナル抗体を用いたクロマトグラフィーを行い、溶出時のpHを変化させ、抗体の溶出・回収量のpH依存性を測定した。
【0111】
固定化担体を用いたクロマトグラフィーは以下に記載の方法で行った。
【0112】
液体クロマトグラフィー装置としてGEヘルスケア社のアクタを用いた。
【0113】
上記のリガンドを固定化した担体(タンパク質固定化シリカゲル)を1mlのカラム(サイズ φ=5mm、高さ=50mm)に充填し、液体クロマトグラフィー装置に取り付けた。
【0114】
まず、(1)(初期化)10mMリン酸ナトリウムバッファーを10ml通液した後、
(2)(サンプルアプライ)、サンプルループを用いて、ポリクローナルIgG抗体溶液(1ml)を通液し、溶媒切り替えバルブを切り替え、
(3)(洗浄)、10mMリン酸ナトリウムバッファーを10ml通液した後、溶媒切り替えバルブを切り替え、
(4)(溶出)、あらかじめ設定したそれぞれのpHのクエン酸緩衝液を10ml通液し、溶媒切り替えバルブを切り替え、
(5)(再生)、再生用溶液(0.1Mクエン酸溶液)を、10ml通液し、溶媒バルブを切り替え、
(6)(完了)、(1)の10mMリン酸ナトリウムバッファーを10ml通液し、クロマトグラフィーの通液操作を完了した。
【0115】
通液中は、カラムから溶出されてくる溶液を、装置に備え付けのUV検出器及び電導度計を用いて、280nmの吸光度と電導度を測定し、その値を記録した。280nmの吸光度を用いたクロマトグラム曲線から、溶出のピークの同定とそのピーク面積を計算し、アプライした抗体がどのように回収されてくるかを計算により求めた。
【0116】
結果を、
図2に示す。なお、
図2のAはAD-2のR2部分、BはAD-3のR2部分、CはAD-4のR2部分、DはAD-5のR2部分、EはAD-6-1のR2部分、FはAD-6-2のR2部分の結果をそれぞれ示す。
【0117】
図3に固体化担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。
図3A、B及びCは、それぞれ
図2のAのpH3.0、4.0及び4.5の時のクロマトグラムを示している。
図3中、(1)は、pH3.0、4.0又は4.5の溶出液を流した時の溶出ピークを示し、(2)は再生溶液(pH2.5)を流した時の溶出ピークを示す。この(1)と(2)溶出ピークの面積(それぞれ、S1及びS2とする)を用いて、回収率を100*S1/(s1+S2)で計算し、その値を溶出溶液のpHに対してプロットした図が
図2である。
【0118】
組換えタンパク質の固定化
シリカゲル(ダイソー株式会社製)50gと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン10gを水溶媒中還流条件下(95℃)で、4時間反応させ、エポキシ化シリカゲル50gを調製した。
【0119】
上記のようにして得たエポキシ化シリカゲルを0.1Mホウ酸バッファー(pH9.5)中に懸濁させ、ポリ-L-リジン5g(Sigma社P6516)を加え、室温で24時間撹拌した。その後、5mMの2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸溶液500mlと組み換えタンパク質(AD-3、AD-4、AD-6-1、AD-6-2共通)2gをそれぞれ加え、24時間撹拌、続いて10mMホウ酸バッファー(pH9.5)にバッファーを切り替え、再び24時間撹拌することで、最終的に各組み換えタンパク質固定化シリカゲル47gを調製した。
【0120】
固定化担体のIgG結合容量の測定
上記で作製した固定化シリカゲルのIgG結合能を以下のようにして測定した。
AD-3のプロテインAのAドメイン固定化担体を5mmφx20mmのガラスカラム(GEHealthcare製、0.4ml)に充填した。様々な接触時間条件下(1.0、2.4、6.0min)で、pH7のリン酸ナトリウムバッファーに溶解させた既知濃度のポリクローナルヒトIgG抗体(オリエンタル酵母製、0.5mg/ml)を負荷させた。その際の破過曲線から10%破過点を算出し、それにより各接触時間毎に以下の動的結合容量(DBC)を得た。なお、この表から静的結合容量は約60mg/mlと推測できた。結果を表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
AD-4、AD-6-1、AD-6‐2それぞれのタンパク質のプロテインAのAドメインの固定化担体においても同様にして、結合容量を測定し、以下の結果を得た。結果を表3に示す。
【0123】
【表3】