(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963263
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】フレキシブル光学測定用治具
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
G01M11/00 T
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-265186(P2012-265186)
(22)【出願日】2012年12月4日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3173958号
【原出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-152217(P2013-152217A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高木 晃
【審査官】
平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−301787(JP,A)
【文献】
特開昭61−223539(JP,A)
【文献】
特開昭58−037615(JP,A)
【文献】
特開昭62−025560(JP,A)
【文献】
特開平07−174980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00
G01J 1/00 − 1/02
G01J 3/00 − 3/51
G01B 21/00
G01N 21/25 − 21/29
G01N 21/84 − 21/958
G02F 1/13
G02F 1/167
G09F 9/00
G09G 3/18
G09G 3/36
H01L 51/50
H04N 17/00 − 17/06
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネルを保持することが可能な所定の曲率をもった保持部材と、
前記保持部材を移動させるための前記保持部材と同一の曲率を有し、且つ前記保持部材を移動させるための台部材とからなり、
前記保持部材は、所定の曲率の表面を有する矩形の板状であり、
前記フレキシブル光学表示パネルを所定の曲率の表面に保持可能である保持部と、
前記保持部に形成された光学測定するための開口部と、
前記保持部の両端で構成された移動するためのスライド部と、を有し、
前記台部材は、
置くことを可能にする台部と、
前記台部に形成された光学測定するための開口部と、
前記台部に設けられた前記保持部材のスライド部を移動可能にするガイド部と、を有し、
前記フレキシブル光学表示パネルを、前記保持部材の開口部に位置させて、保持部の所定の曲率の表面に保持させ、
前記フレキシブル光学表示パネルの曲率を、前記保持部材の曲率に一致させた状態とし、
前記保持部材のスライド部と前記台部材のガイド部とにより前記台部材の曲率に沿って前記保持部材を移動させ、前記保持部材の移動に伴い、前記フレキシブル光学表示パネルを移動して光学測定するいずれの測定においても、
前記フレキシブル光学表示パネルの測定位置を、法線方向から光学測定可能にすることを特徴とするフレキシブル光学測定用治具。
【請求項2】
前記台部材は、前記保持部材の移動量を表示する目盛と、前記フレキシブル光学表示パネルの測定位置を表示する測定印と、を有することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル光学測定用治具。
【請求項3】
前記台部材は、前記フレキシブル光学表示パネルを測定位置で固定させるために前記保持部材を締付ける締付部材を有することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル光学測定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネルの光学特性を測定することができるフレキシブル光学測定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子看板(デジタルサイネージ)が注目を集めており、どの形状にも設置可能なフレキシブル光学表示パネルの開発が進んでいる。このようなフレキシブル光学表示パネルについて光学特性の測定を行う必要があり、従来からディスプレイ装置の製造工程において、ディスプレイ装置の表示部の輝度、色度等の物理量を測定することで、表示部の光学特性を測定することが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−91509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光学測定装置は、フラットパネルを測定することを前提とした構造になっており、フレキシブル光学表示パネルを曲げて測定すると、端部と中央部では焦点位置が異なり測定スポット径が変化することや測定面に対して斜めから評価することになり、正確な値が得られなかった。
【0005】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネルのいずれの測定においても、常に測定位置を法線方向から測定できるフレキシブル光学測定用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0007】
請求項1に記載の発明は、任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネルを保持することが可能な所定の曲率をもった保持部材と、
前記保持部材を移動させるための前記保持部材と同一の曲率を有し、且つ前記保持部材を移動させるための台部材とからなり、
前記保持部材は、所定の曲率の表面を有する矩形の板状であり、
前記フレキシブル光学表示パネルを所定の曲率の表面に保持可能である保持部と、
前記保持部に形成された光学測定するための開口部と、
前記保持部の両端で構成された移動するためのスライド部と、を有し、
前記台部材は、
置くことを可能にする台部と、
前記台部に形成された光学測定するための開口部と、
前記台部に設けられた前記保持部材のスライド部を移動可能にするガイド部と、を有し、
前記フレキシブル光学表示パネルを、前記保持部材の開口部に位置させて、保持部の所定の曲率の表面に保持させ、
前記フレキシブル光学表示パネルの曲率を、前記保持部材の曲率に一致させた状態とし、
前記保持部材のスライド部と前記台部材のガイド部とにより前記台部材の曲率に沿って前記保持部材を移動させ、前記保持部材の移動に伴い、前記フレキシブル光学表示パネルを移動して
光学測定するいずれの測定においても、
前記フレキシブル光学表示パネルの測定位置を、法線方向から
光学測定可能にすることを特徴とするフレキシブル光学測定用治具である。
【0010】
請求項
2に記載の発明は、前記台部材は、前記保持部材の移動量を表示する目盛と、前記フレキシブル光学表示パネルの測定位置を表示する測定印と、を有することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル光学測定用治具である。
【0011】
請求項
3に記載の発明は、前記台部材は、前記フレキシブル光学表示パネルを測定位置で固定させるために前記保持部材を締付ける締付部材を有することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル光学測定用治具である。
【発明の効果】
【0012】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0013】
請求項1乃至請求項
3に記載の発明では、台部材は、保持部材と同一の曲率を有し、且つ保持部材を移動させ、保持部材が台部材により移動することで、フレキシブル光学表示パネルを移動して測定するいずれの測定においても、測定位置を法線方向から測定可能であり、焦点位置が異なり、測定スポット径が変化することや測定面に対して斜めから評価することがなく、正確な測定値が得られ、精度良くフレキシブル光学表示パネルを評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】フレキシブル光学測定用治具の斜視図である。
【
図3】保持部材にフレキシブル光学表示パネルを固定した状態の斜視図である。
【
図6】フレキシブル光学測定用治具と光学測定装置における測定位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明のフレキシブル光学測定用治具の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
(フレキシブル光学測定用治具の構成)
図1はフレキシブル光学測定用治具の斜視図、
図2は保持部材の斜視図、
図3は保持部材にフレキシブル光学表示パネルを固定した状態の斜視図、
図4は台部材の斜視図、
図5は締付部材の配置位置を示す断面図である。
【0016】
この実施の形態のフレキシブル光学測定用治具1は、フレキシブル光学表示パネル2の製造工程において、フレキシブル光学表示パネル2の表示部の輝度、色度、セルギャップ等の光学特性を測定するものであり、任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネル2を保持することが可能な所定の曲率をもった保持部材10と、保持部材10を移動させるための保持部材10と同一の曲率を有し、且つ保持部材10を移動させるための台部材20とからなり、台部材20により保持部材10が移動可能であり、フレキシブル光学表示パネル2のいずれの測定においても、測定位置を法線方向から測定可能にする。
【0017】
保持部材10は、所定の曲率の表面を有する板状であり、フレキシブル光学表示パネル2を所定の曲率の表面に保持可能である保持部11と、保持部11に形成された光学測定するための開口部12と、保持部11の両端に台部材20に移動可能にするスライド部13とを有する。
【0018】
保持部材10は、厚さt、曲率半径Rを有し、保持部11の曲率半径R側の凸表面にフレキシブル光学表示パネル2を固定する。フレキシブル光学表示パネル2の固定方法に関しては、フレキシブル光学表示パネル2の表示領域に影響を与えず、取扱い時にフレキシブル光学表示パネル2と保持部材10の位置がずれないように固定する。
【0019】
例えば、保持部材10とフレキシブル光学表示パネル2にネジ穴を設けて締付手段により締付固定する方法やフレキシブル光学表示パネル2の外周部、もしくは曲げ方向の端部のみを金具やプラスチック板で固定する方法、または簡易に強力粘着テープで固定する方法などがある。この実施の形態では、強力粘着テープ19により固定しているが、この発明における固定方法に関しては、これに限定されない。
【0020】
保持部材10は、保持部11に1ないし複数の開口部12を有し、この開口部12の大きさ及び数は、フレキシブル光学表示パネル2の測定スポット径や測定箇所に準じるため、任意とする。
【0021】
この台部材20は、置くことを可能にする台部21と、台部に形成された光学測定するための開口部22と、台部21に設けられた保持部材10を移動可能にするガイド部23とを有する。ガイド部23には、保持部材10の支持部13を移動可能にするため保持部材10と同一の曲率半径Rを持ち且つ保持部材10のスライド部13を可動するためのガイド溝部24が形成されている。
【0022】
台部材20のガイド部23は、保持部材10の移動量を表示する目盛25と、フレキシブル光学表示パネル2の測定位置を表示する測定印26とを有する。目盛25及び測定印26は、ガイド部23のガイド溝部24に形成されているために保持部材10は透明樹脂で成形される。また、目盛り25と測定印26をガイド部23の側面にガイド溝部24に沿って形成すれば、保持部材10も透明樹脂に限定されない。このようにして、目盛25及び測定印26を外部から容易に目視可能になっている。
【0023】
また、台部材20は、フレキシブル光学表示パネル2を測定位置で固定させるために保持部材10を締付ける締付部材27を有する。締付部材27は、締付ネジで形成され、
図5(a)に示すように、ガイド部23の上端からガイド溝部24に位置する保持部材10の表面側端面を締付けて固定する構造でも、
図5(b)に示すように、ガイド部23の外側からガイド溝部24に位置する保持部材10の厚さ側端面を締付けて固定する構造でもよい。
【0024】
台部材20は、保持部材10の大きさによってある程度決まるが、必ずしも保持部材10の大きさに比例して大きく成形する必要はない。台部材20には、保持部材10を台部材20に固定する締付部材27を有しており、フレキシブル光学表示パネル2の測定位置で締付部材27を締めることによって十分測定可能である。
【0025】
測定印26はガイド溝部24の高さD1の最も低い位置D2であり、さらに曲面半径R上に一定の長さごとに印しをつけた目盛25を有する。測定印26とフレキシブル光学表示パネル2の測定したい箇所を一致させ、且つ保持部材10を移動させることで、いずれの測定においても、測定位置を法線方向から測定可能にする。
【0026】
また、目盛25は、保持部材10の移動量を表示し、目盛25に基づいて保持部材10を移動し、フレキシブル光学表示パネル2の測定位置を変化させることができる。この目盛25を利用することで、繰り返し測定の再現性が向上する。
【0027】
(フレキシブル光学測定用治具を用いた光学測定)
次に、フレキシブル光学測定用治具を用いた光学測定を、
図6に基づいて説明する。
図6はフレキシブル光学測定用治具と光学測定装置における測定位置関係を示す図である。
【0028】
この光学測定装置50は、発光部51と受光部52を備え、フレキシブル光学表示パネル2の製造工程において、フレキシブル光学表示パネル2の表示部の輝度、色度等の物理量を測定することで、表示部の光学特性を測定し、この光学特性の測定は発光部51からの光をフレキシブル光学表示パネル2の表示部に照射し、受光部52によって受光することで行う。
【0029】
この光学測定装置50を用いた測定時に、フレキシブル光学測定用治具1を光学測定装置50の光線S上に、対向するガイド部23の測定印26を結ぶ線Kとフレキシブル光学表示パネル2の測定したい箇所が一致するようにセットする。この光学測定装置50の光線Sと線Kの交点上にあるフレキシブル光学表示パネル2の位置は、フレキシブル光学表示パネル2の測定箇所を法線方向から測定した位置にあたる。この光学特性の測定は、フレキシブル光学測定用治具1の保持部材10が台部材20により移動することで、いずれの測定においても、測定位置を法線方向から測定可能にする。このフレキシブル光学表示パネル2の移動は、目盛25に基づいて保持部材10を移動し、フレキシブル光学表示パネル2の測定位置を変化させる。
【0030】
図7の光学測定の概念図に示すように、この実施の形態では、フレキシブル光学測定用治具1を用いて光学測定装置50により任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネル2の光学測定を行う。この光学測定装置50では、フレキシブル光学表示パネル2の測定ポイントA1の法線方向を光学測定装置50の光線Sと一致させて測定を行い(
図7(a))、測定ポイントA1でのフレキシブル光学表示パネル2の厚さはD1で、光線Sと一致する法線方向での厚さである。そして、このフレキシブル光学表示パネル2の測定位置を変えるために、フレキシブル光学測定用治具1を用いてフレキシブル光学表示パネル2を移動して測定ポイントA2で測定すると(
図7(b))、この測定ポイントA2でもフレキシブル光学表示パネル2の法線方向と光学測定装置50の光線Sは一致しており、フレキシブル光学表示パネル2の厚さはD1で、法線方向での厚さである。このように、フレキシブル光学表示パネル2の測定位置を変化させるいずれの測定においても測定ポイントでのフレキシブル光学表示パネル2の厚さは常にD1の法線方向での厚さであり、フレキシブル光学表示パネル2の測定箇所を法線方向から評価できる。
【0031】
フレキシブル光学測定用治具1を用いない比較例では、フレキシブル光学表示パネル2の測定ポイントA2の法線方向を光学測定装置50の光線Sと一致させずに測定を行うと(
図7(c))、測定ポイントA2でのフレキシブル光学表示パネル2の厚さはD1より長いD2となる。このように、比較例では、フレキシブル光学測定用治具1を用いないで測定を行うと、法線方向からズレた厚さで測定することになる。
【0032】
このように、この実施の形態では、任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネル2の測定位置を変化させるいずれの測定においても、フレキシブル光学表示パネル2の法線方向から測定することになり、測定の焦点位置が異なり、測定スポット径が変化することや測定面に対して斜めから評価することがなく、正確な測定値が得られ、精度良くフレキシブル光学表示パネル2を評価できる。
【0033】
例えば、電圧‐透過率測定では、フレキシブル光学表示パネル2に所定の電圧を印加させ、その時の輝度を測定する。フレキシブル光学表示パネル2に対して法線方向から測定しないと、フレキシブル光学表示パネル2を通る距離が長くなり、正確な輝度が得られない。
【0034】
また、例えば、セルギャップ測定では、ある所定の直線偏光をフレキシブル光学表示パネル2に当て、位相がどのように変わったかでセルのギャップを測定する。フレキシブル光学表示パネル2に対して法線方向から測定しないと、フレキシブル光学表示パネル2を通る距離が長くなり、正確な位相の変化を測定できない。
【0035】
また、フレキシブル光学測定用治具1は、保持部材10は一定の曲率を持っているため、フレキシブル光学表示パネル2を保持部材10に沿わすだけで均一に曲げることが可能である。また、この保持部材10は、耐熱性や耐湿性の高い材質を用いれば、フレキシブル光学表示パネル2を固定したまま信頼性試験に投入することができ、容易に曲面フレキシブル光学表示パネル2の特性を評価することができる。さらに、フレキシブル光学測定用治具1は、縦にも横にも設置可能であり、様々な光学測定装置に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネルの光学特性を測定することができるフレキシブル光学測定用治具に適用可能であり、任意な曲率を有するフレキシブル光学表示パネルのいずれの測定位置においても、常に測定位置を法線方向から測定できる。
【符号の説明】
【0037】
1 フレキシブル光学測定用治具
2 フレキシブル光学表示パネル
10 保持部材
11 保持部
12 開口部
13 スライド部
20 台部材
21 台部
22 開口部
23 ガイド部
24 ガイド溝部
25 目盛
26 測定印
27 締付部材