【実施例】
【0062】
実施例1.
持続発現型センダイウイルスベクター再構成用細胞の作製
動物細胞での発現効率を向上させるためにコドンを最適化したT7 RNA polymeraseをコードするcDNA(配列表・配列番号1)をレトロウイルスベクター作成用プラスミドpCX4SRalpha-neoベクター(Akagi, et al., PNAS, 100 13567-13572, 2003)にクローニングした。またセンダイウイルスCl151株Mタンパク質をコードするcDNA(Nishimura, et al., JBC, 282, 27383-27391, 2007)をレトロウイルスベクター作成用プラスミドpCX4SRalpha-puroベクター(Akagi, et al., PNAS, 100 13567-13572, 2003)にクローニングした。PLAT-Eパッケージング細胞(Morita, et al., Gene Therapy, 7, 1063-1066, 2000)にLipofectamine 2000(Life Technologies)を用いてそれぞれ上記プラスミドDNAを導入し、培養上清にレトロウイルス(T7 RNA polymerase組み換えレトロウイルス、151M組み換えレトロウイルス)を得た。BHK-21細胞にT7 RNA polymerase組み換えレトロウイルスを感染させ、G418 800 μg/mlと10% ウシ胎児血清(FCS)を含むDulbecco’s Modified Minimal Essential Medium (DMEM)に移しT7 RNA polymeraseを安定に発現するG418耐性細胞 (BHK/T7(SE)) を単離した。続いてBHK/T7(SE)細胞に151M組み換えレトロウイルスを感染させ、G418 800 μg/ml、puromycin 15 μg/ml、10%FCSを含むDMEM培地に移し、T7 RNA polymeraseとMタンパク質を安定に発現するG418+puromycin耐性細胞 (BHK/T7/151M(SE))を単離した。
【0063】
実施例2.
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1の作製
ベクターcDNAの作製 Avr II認識配列-ヒトOct4 ORF-センダイウイルス(SeV)ゲノムcDNA(6617-6666塩基)-ヒトSox2 ORF-Age I認識配列をこの順序で含む二本鎖DNA(配列表・配列番号2)を合成し 、プラスミドベクターpUC57にクローニングした(GenScript社に委託)(pUC57-OctSox)。pUC57-OctSoxからAvr II、Age Iで切断したDNA配列をプラスミドpMO078(pBluescript II SK(+)(Agilent Technologies, Inc.)にCla I認識配列-SeV Cl.151株ゲノムcDNA(2871-3650塩基)-NotI認識配列-ブラストサイジンS耐性遺伝子-Mlu I認識配列-SeV Cl.151株ゲノムcDNA(4728-4828塩基)-AvrII認識配列-ヒト化クサビラオレンジ遺伝子-SeV Cl.151株ゲノムcDNA(6617-6666塩基)-gp91phox遺伝子-Age I認識配列-SeV Cl.151株ゲノムcDNA(8442-10479塩基)をこの順序で挿入したプラスミドベクター:配列表・配列番号3)のAvr II-Age I間に挿入することによってプラスミドpMO084を得た(
図1)。
【0064】
Nhe I認識配列-ヒトKlf4 ORF-センダイウイルス転写終結配列-センダイウイルス転写開始配列-Not I認識配列をこの順序で含む二本鎖DNA(配列表・配列番号4)を合成し 、プラスミドベクターpUC57にクローニングした(GenScript社に委託)(pUC57-KLF4)。hKlf4遺伝子増幅用プライマーとして、
5’-ACTAGCTAGCAGTCTGACATGGCTGTCAGCGACGCGCT-3’( 配列表・配列番号5(N末端側))、5’-GGTCCACGCGTTTAAAAATGCCTCTTCATGTG-3’( 配列表・配列番号6(C末端側))の2本のプライマーを用いてpUC57-KLF4上からヒトKlf4遺伝子をPCR法によって増幅し、得られた二本鎖DNAの末端をNhe I、Mlu Iで切断し、pMO026(pBluescript II SK(+)にCla I認識配列-SeV Cl.151株ゲノムcDNA(2871-3650塩基)-NotI認識配列-Nhe I認識配列-ブラストサイジンS耐性遺伝子-Mlu I認識配列-SeV Cl.151株ゲノムcDNA(4728-5335塩基)をこの順番で挿入したプラスミドベクター)(配列表・配列番号7)のNhe I-Mlu I間に挿入することによって、pMO097を得た。さらにpMO097のCla I-Mlu I断片とpMO084のCla I-Mlu Iを結合することによりpMO099を得た(
図1)。
【0065】
pUC57-KLF4からNhe I、Not Iで切断したDNA配列をpNK214(pBluescript II SK(+)(Agilent Technologies, Inc.)にSeV Nagoya株ゲノムcDNA(1-43塩基)-センダイウイルス転写終結配列-SeV Nagoya株ゲノムcDNA(56-2870塩基)-SeV Cl.151株ゲノムcDNA(2871-3656塩基)-NheI認識配列-Not I認識配列をこの順序で挿入したプラスミドベクター)(配列表・配列番号8)のNhe I-Not I間に挿入することによってプラスミドpMO094(配列表・配列番号9)を得た(
図1)。hc-Myc遺伝子増幅用プライマーとして、5’-ACTAGCTAGCTTAGACGCTGGATTTTTTTCGGGTAGTGG-3’( 配列表・配列番号10(N末端側))、5’-GTCCGACGTCCTTACGCACAAGAGTTCCGT-3’( 配列表・配列番号11(C末端側))の2本のプライマーを用いてヒトc-Myc cDNA全長を含むプラスミドpJL1上からヒトc-Myc遺伝子をPCR法で増幅し、得られた二本鎖DNAの末端をNhe I、Aat IIで切断し、pMO094のNhe I-Aat II間に挿入することによって、pMO103を得た(
図1)。
【0066】
以上によって得られた各プラスミドのうち、pMO103からT7プロモーター配列〜SeV: 1-3655を、pMO099からSeV: 3655-10480を切り出し、λ/151(Nishimura, et al., JBC, 282, 27383-27391, 2007)をEcoR I切断することによって得た、SeV: 10480-1538+λDASHII right armのDNA断片と合わせてクローニングし、λ/SeVp (Mp+myc, ΔM::Klf4, ΔF::Oct4, ΔHN::Sox2)を作製した(
図1
)(h-cMyc, hOct4, hSox2, hKlf4持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1ゲノム全長に相補的なcDNAは配列表・配列番号12)。
【0067】
(2)hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1の調製
BHK/T7/151M(SE)細胞を5 × 10
5 cells / wellで6-wellプレートに播種し、24時間培養した後に洗浄した。λ/SeVp (Mp+myc, ΔM::Klf4, ΔF::Oct4, ΔHN::Sox2)ファージDNA、NPタンパク質発現プラスミドpGEM/NP、Pタンパク質発現プラスミドpGEM/P、Lタンパク質発現プラスミドpGEM/L(pGEM/NP、pGEM/P、pGEM/Lは、Garcin, et al., EMBO J., 14, 6087-6094, 1995)、Fタンパク質発現プラスミドpSRD-FZmut、HNタンパク質発現プラスミドpMKIT-NaHN(pSRD-FZmut、pMKIT-NaHNはTaira, et al., Arch. Virol., 140, 187-194, 1995)をそれぞれ2 μg、1 μg、1 μg、1 μg、1 μg、1 μgの量比でOptiMEM 300 μLに懸濁し、10 μLのLipofectamine 2000を含む300 μLのOptiMEM(Life Technologies)と混合して20分間室温放置した培地を、細胞に添加して4時間培養した。細胞を再度洗浄後、10%FCS含有DMEM培地を加えてさらに32℃で3日間培養した。さらに37℃で3日間培養後、センダイウイルスNPタンパク質に対する抗体、及び、hOct4, hSox2, hKlf4遺伝子産物に対する抗体を用いて蛍光抗体法で染色することにより、トランスフェクションした細胞中でベクターゲノムの再構成が起こったことを確認し、この細胞集団をこれ以上のクローニングせずにhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1産生細胞として用いた。
【0068】
5.0 x 10
5 個の hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1産生細胞に、欠損遺伝子発現プラスミドであるpMKIT-151M(Taira, et al., Arch. Virol., 140, 187-194, 1995)、pSRD-ZFmut、pMKIT/NaHN各2μgをLipofectamine 2000を用いて導入し、4時間後に細胞を洗浄した後、10%FCS含有DMEM培地を加えてさらに32℃で4-9日間培養した。その後、 hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターを含む培養上清を回収し、0.45μmのフィルターで濾過後、必要ならば超遠心法によりベクターを濃縮した。ベクター懸濁液は液体窒素にて急速冷凍し、-80℃にて保存した。
【0069】
実施例3.
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2の作製
(1)ベクターcDNAの作製 hc-Myc遺伝子増幅用プライマーとして、5’- ACTAGCTAGCTTAGACGCTGGATTTTTTTCGGGTAGTGG-3’( 配列表・配列番号13(N末端側))、5’- GTCCACCGGTCTTACGCACAAGAGTTCCGT-3’( 配列表・配列番号14(C末端側))の2本のプライマーを用いてヒトc-Myc cDNA全長を含むプラスミドpJL1上からヒトc-Myc遺伝子をPCR法で増幅し、得られた二本鎖DNAの末端をNhe I、AgeIで切断し、実施例2で作製したpMO084のNheI-Age I間に挿入することによってプラスミドpMO118を得た(
図2)。
hSox2遺伝子増幅用プライマーとして、
5’- AGTACCTAGGCGCATGTACAACATGATGGAGACGG-3’( 配列表・配列番号15(N末端側))、5’- GTCCGACGTCCTCACATGTGTGAGAGGGGCAGT-3’( 配列表・配列番号16(C末端側))の2本のプライマーを用いてpUC57-Sox2上からヒトSox2遺伝子をPCR法によって増幅し、得られた二本鎖DNAの末端をAvr II、Aat IIで切断し、pMO118のAvr II-Aat II間に挿入することによって、pMO119を得た(
図2)。
【0070】
hOct4遺伝子増幅用プライマーとして、
5’- ACTAGCTAGCGGTTCCCCATGGCGGGACACCTGGCTTCGG-3’( 配列表・配列番17(N末端側))、5’- GGTCCACGCGTTCAGTTTGAATGCATGGGAGAGCC-3’( 配列表・配列番号18(C末端側))の2本のプライマーを用いてpUC57-Oct4上からヒトOct4遺伝子をPCR法によって増幅し、得られた二本鎖DNAの末端をNhe I、Mlu Iで切断し、pMO097のNhe I-Mlu I間に挿入することによって、pMO116を得た。次に、pMO116のCla I-Cla Iフラグメントの向きを入れ替えてpMO120を得た。さらにpMO119のSal I-Mlu I断片とpMO120のSal I-Mlu Iを結合することによりpMO122を得た(
図2)。
【0071】
以上によって得られた各プラスミドのうち、pMO094(実施例2,
図1)からT7プロモーター配列〜SeV: 1-3655を、pMO122からSeV: 3655-10480を切り出し、λ/151をEcoR I切断することによって得たSeV: 10480-1538+λDASHII right armのDNA断片と合わせてクローニングし、λ/SeVp (Mp+Klf4, ΔM::Oct4, ΔF::Sox2, ΔHN::c-Myc)を作製した(
図2)(hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2ゲノム全長に相補的なcDNAは配列表・配列番号19)。
【0072】
(2)hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2の調製
上記hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2ゲノム全長に相補的なcDNAから、実施例2(2)に記載の方法に従って、hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2を調製した。
【0073】
実施例4.
iPS細胞から自動除去されるhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3の作製
(1)ベクターcDNAの作製
ES細胞特異的miRNAであるmir-302aの標的配列を4つつなげた配列をクローニングするために、5’- CCGGTTATCACCAAAACATGGAAGCACTTACGATTCACCAAAACATGGAAGCA CTTAGGTACC-3’( 配列表・配列番号20)と
5’-TAAGTGCTTCCATGTTTTGGTGAATCGTAAGTGCTTCCATGTTTTGGTGATAA-3’
( 配列表・配列番号21)、
5’- TCACCAAAACATGGAAGCACTTACGATTCACCAAAACATGGAAGCACTTAA-3’( 配列表・配列番号22)と
5’-CCGGTTAAGTGCTTCCATGTTTTGGTGAATCGTAAGTGCTTCCATGTTTTGGTGAGGTACC-3’( 配列表・配列番号23)、の2組のオリゴDNAをアニーリングさせた後にライゲーションし、Age Iで切断したpGL4.12(Promega Corp.)にクローニングしてpNK300を得た(
図3)。
【0074】
pNK15 (pBluescript II SK(+)(Agilent Technologies, Inc.)にSeV Cl.151株ゲノムcDNA(9014-15384塩基)-タバコリングスポットウイルスのヘアピンリボザイム配列-T7 RNA polymerase終止配列をこの順序で挿入したプラスミドベクター:配列表・配列番号24)に対してXma I認識配列挿入部位作製用プライマーとして、5’- GACAGCTCGTAATCCCGGGTCCCTATCGTGC -3’(配列表・配列番号25(センス鎖))5’- GCACGATAGGGACCCGGGATTACGAGCTGTC -3’(配列表・配列番号26(アンチセンス鎖))を用いて、Quikchange Site-directed Mutagenesis II kit (Agilent Technologies, Inc.) によってXma I認識配列をSeV: 15244の後ろに挿入してpNK287を得た。pNK300をAgeIで切断した断片を、pNK287のXma I部位に挿入することによってプラスミドpNK309を得た(
図3)。
【0075】
実施例2で作製したpMO103からT7プロモーター配列〜SeV: 1-3655を、pMO099からSeV: 3655-10480を切り出し、pNK309からSeV: 9014-15384-ヘアピンリボザイム配列-T7 RNA polymerase終止配列を切り出し、λDASHII right arm、left armのDNA断片と合わせてクローニングし、λ/SeVp (Mp+myc,ΔM::Klf4,ΔF::Oct4,ΔHN::Sox2, L+mir302T4)を作製した(
図3)(hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3ゲノム全長に相補的なcDNAは配列表・配列番号27)。
【0076】
(2)hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3の調製
上記hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3ゲノム全長に相補的なcDNAから、実施例2(2)に記載の方法でhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3を調製した。
【0077】
実施例5.
iPS細胞から自動除去されるhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 4の作製
(1)ベクターcDNAの作製
実施例3で作製したpMO094からT7プロモーター配列〜SeV: 1-3655を、pMO122からSeV: 3655-10480を切り出し、実施例4で作製したpNK309からSeV: 9014-15384-ヘアピンリボザイム配列-T7 RNA polymerase終止配列を切り出し、λDASHII right arm、left armのDNA断片と合わせてクローニングし、λ/SeVp (Mp+Klf4, ΔM::Oct4, ΔF::Sox2, ΔHN::c-Myc, L+mir302T4)を作製した(
図4)(hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 4ゲノム全長に相補的なcDNAは配列表・配列番号28)。
【0078】
(2)hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 4の調製
上記hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 4ゲノム全長に相補的なcDNAから、実施例2(2)に記載の方法でhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 4を調製した。
【0079】
実施例6
持続発現型センダイウイルスベクターのRNAゲノムの、siRNAを用いた細胞からの除去についての経時的検討
実施例2から実施例5で示した持続発現型センダイウイルスベクターのRNAゲノムは、細胞内で安定に維持され、発現した初期化遺伝子産物によって細胞の初期化が起こることが期待される。一方、最終的にiPS細胞を完成するためには、外来の初期化遺伝子を搭載した持続発現型センダイウイルスベクターを細胞から除去する必要がある。そこで、持続発現型センダイウイルスベクターを安定に保持している細胞からsiRNAを用いてベクターゲノムを除去する方法について、マーカー遺伝子を搭載した持続発現型センダイウイルスベクターを使って除去の経時変化を定量的に解析すると共に、siRNA処理を行った細胞にベクターゲノムが存在しないことを確認した。
持続発現型センダイウイルスベクターによる遺伝子発現のマーカーとして、不安定型ホタル・ルシフェラーゼ遺伝子(Luc2CP, Promega Corp.)と大腸菌ハイグロマイシンB耐性遺伝子(HygBpapertrou)を使用した。ルシフェラーゼ活性はゲノムRNAのコピー数を反映し、ハイグロマイシンB耐性細胞の数は持続発現型センダイウイルスベクターを保持している細胞の数を反映する。
【0080】
Luc2CP遺伝子とHygB遺伝子を搭載したKO/HygB/EGFP/Luc2CP搭載持続発現型センダイウイルスベクターは、実施例2で示したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1の作製と同じ手法を用い、hc-Myc遺伝子をKusabira Orange(KO)遺伝子(Medical & Biological Laboratories, Co.Ltd.)で、hKlf4遺伝子をHygB遺伝子で、hOct4遺伝子をEnhanced Green Fluorescent Protein(EGFP)遺伝子で、hSox2遺伝子をLuc2CP遺伝子でそれぞれ置換して作製した。L遺伝子の発現は、short interfering RNA(siRNA)(#1:センス鎖 5’-GGUUCAGCAUCAAAUAUGAAG-3’( 配列表・配列番号29)、アンチセンス鎖 5’-UCAUAUUUGAUGCUGAACCAU-3’ (配列表・配列番号30)を使って抑制した。陰性対照siRNAは使用したセンダイウイルスベクターゲノムの塩基配列と相同性が無いウミボタル・ルシフェラーゼ遺伝子(Promega Corp., Rluc)と相補性を持つsiRNAを用いた。
【0081】
該siRNAによるベクターゲノム除去効果を調べるため、Luc2CP遺伝子とHygB遺伝子を搭載した持続発現型センダイウイルスベクターのゲノムを安定に保持しているHeLa細胞を、3x10
4個/0.4 mL培地(MEM, 10%ウシ胎児血清)/wellの濃度で24-wellプレートに播種した。siRNAは最終濃度40 nMになるようにOpti-MEMで希釈してLipofectamine RNAiMAX(Life Technologies, Inc.)1 μLを加えて室温20分反応後、上記細胞に加えた。以後、細胞を経時的に回収し、3日目と6日目に細胞を上記の条件で継代すると同時に、siRNAを上記の条件で細胞に導入した。その結果、細胞内のベクターの量の指標となるルシフェラーゼの活性は経時的に低下し、8日目以降はルシフェラーゼ活性が検出限界となった(
図5A)。
【0082】
さらにsiRNAを3回導入した細胞を、siRNA非存在下で4週間培養し、次に10
4個の細胞を200 μg/mLのハイグロマイシンBを含む選択培地中に移してさらに1週間培養した。その結果、ハイグロマイシンB耐性クローンは出現せず、HygB遺伝子を搭載した持続発現型センダイウイルスベクターのゲノムを持つ細胞が存在しないことが示された(
図5B)。
【0083】
実施例7
持続発現型センダイウイルスベクターに搭載した2つの外来遺伝子の遺伝子発現様式の検討
iPS細胞の作製には4つの初期化遺伝子が同時に一つの細胞で発現する必要がある。また、4つの初期化遺伝子の発現の強さのバランスを変えることにより初期化効率が変化する(参考文献:Papapetrou, et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 106, 12759-12764, 2009)だけでなく、iPS細胞に形態が似ていても多分化能を持たない質の低い細胞株が出現する可能性が指摘されている(参考文献:Chan, et al., Nat. Biotech., 27, 1034-1037, 2009)。そのため、iPS細胞を高効率でかつ再現性良く作製する方法は、1)4つの初期化遺伝子が同時に1個の細胞に導入されること、2)これら4つの遺伝子がすべての細胞で同じバランスで発現すること、の2点を満たす必要がある。センダイウイルスベクターを使って4個の初期化遺伝子を細胞に導入する場合、本発明で例示しているようにすべての初期化遺伝子を1つのベクターに搭載して遺伝子導入する方法と、特許文献1・非特許文献12・非特許文献21で示されているように1〜3種類の初期化遺伝子を搭載したベクターを別々に作製してから混合して遺伝子導入する方法が考えられる。そこで、Kusabira Orange(KO)遺伝子とEnhanced Green Fluorescent Protein(EGFP)遺伝子の2つの遺伝子の発現を指標にして、上記の2つの方法における外来遺伝子の発現様式に違いがあるかどうかを検討した。
【0084】
KO遺伝子とEGFP遺伝子を同時に搭載したベクターとしては、実施例6に記載されたKO/HygB/EGFP/Luc2CP搭載持続発現型センダイウイルスベクターを用いた。また、KO遺伝子を搭載したベクターとしては、実施例2で記述したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1からhc-Myc遺伝子を除去し、Klf4遺伝子をゼオシン耐性(Zeo)遺伝子で、Oct4遺伝子をKO遺伝子で、Sox2遺伝子を分泌型ルシフェラーゼ(CLuc)遺伝子で置換したZeo/KO/CLuc搭載持続発現型センダイウイルスベクターを用いた。またEGFP遺伝子を搭載したベクターとしては、実施例2で記述したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1からhc-Myc遺伝子を除去し、Klf4遺伝子をBsr遺伝子で、Oct4遺伝子をEGFP遺伝子で、Sox2遺伝子を慢性肉芽種症原因遺伝子(gp91phox)で置換したBsr/EGFP/gp91phox搭載持続発現型センダイウイルスベクターを用いた。
【0085】
サルLLCMK2細胞に、KO/HygB/EGFP/Luc2CP搭載ベクターを細胞あたり5ベクター粒子の条件で感染させ、ハイグロマイシンBで選択して、KO/HygB/EGFP/Luc2CP搭載ベクターを保持する細胞プールLLCMK2(SeVdp/ KO/HygB/EGFP/Luc2)を樹立した。また、同様にZeo/KO/CLuc搭載ベクターとBsr/EGFP/gp91phox搭載ベクターをベクター粒子比1:1で混合し、それぞれ細胞当たり5ベクター粒子の条件でLLCMK2細胞に感染させた後、ブラストサイジンSとゼオシンで同時に選択して、この2つのベクターゲノムを同一の細胞中に持つ細胞プールLLCMK2(SeVdp/Zeo/KO/CLuc + SeVdp/Bsr/EGFP/gp91phox)を樹立した。
この2つの細胞株を蛍光顕微鏡(Zeiss)で観察し、KOが発する蛍光に赤色の疑似カラーを、EGFPが発する蛍光に緑色の疑似カラーを割り当てて画像を重ねたところ、LLCMK2(SeVdp/KO/HygB/EGFP/Luc2)はすべてKOとEGFPが同時に発現していることを示す黄色の画像となったのに対し、LLCMK2(SeVdp/Zeo/KO/CLuc + SeVdp/Bsr/EGFP/gp91phox)は赤色・黄色・緑色の細胞が混在しており、KOとEGFPの発現のバランスが細胞によって非常に異なっていることが示された(
図6A)
【0086】
さらにKOとEGFPの発現のバランスを定量的に解析するため、これらの細胞を蛍光細胞解析装置(Fluorescent-activated Cell Analyzer)(BD FACSCalibur、Becton, Dickinson and Company)で解析した。10
4個のLLCMK2(SeVdp/ KO/HygB/EGFP/Luc2)およびLLCMK2(SeVdp/Zeo/KO/CLuc + SeVdp/Bsr/EGFP/gp91phox)をそれぞれ2mLの生理的緩衝液に懸濁し、EGFPの蛍光強度(FL1)とKOの蛍光強度(FL2)を測定した。その結果、LLCMK2(SeVdp/ KO/HygB/EGFP/Luc2)ではEGFPの蛍光強度とKOの蛍光強度の比が常に一定であるのに対し、LLCMK2(SeVdp/Zeo/KO/CLuc + SeVdp/Bsr/EGFP/gp91phox)ではその比が非常に分散していることが示された(
図6B)。またFL1とFL2の比を解析すると、LLCMK2(SeVdp/ KO/HygB/EGFP/Luc2)では50%以上の細胞が単一の比を示すのに対し、LLCMK2(SeVdp/Zeo/KO/CLuc + SeVdp/Bsr/EGFP/gp91phox)では0%から100%の間に広く分布していた(
図6C)。
【0087】
以上の結果から、2つ以上の遺伝子を細胞に同時に導入して同じ比率で発現させることは、本発明で実施する4つの初期化遺伝子を同一のセンダイウイルスベクター上に搭載する方法では可能であるが、特許文献1・非特許文献12・非特許文献21で示されているような4つの初期化遺伝子を2つ以上のセンダイウイルスベクターに分けて別々に搭載する方法では不可能であることが示された。
【0088】
実施例8
ヒト胎児由来線維芽細胞からのヒトiPSマーカー発現細胞の誘導
(1)ヒトiPSマーカー発現細胞の誘導
ヒト胎児由来線維芽細胞であるTIG3細胞を12 well plateに1.0 x 10
5 cells/wellで播種し、翌日に実施例2で作製したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1、及び実施例3で作製したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2をそれぞれ培地中に加え、室温で2時間放置した後に37 ℃で一晩培養することによって感染させた。マイトマイシンC処理をしたMEFをフィーダー細胞として、ゼラチンコートしたディッシュ上に準備し、上記ベクター感染細胞をその上に蒔いて、hES medium(DMEM/F12, 20% KnockOut Serum Replacement (KSR), 0.1 mM nonessential amino acids, 0.55 mM 2-ME, 10 ng/ml bFGF)もしくは霊長類ES細胞用培地(ReproCELL)中で培養する。
【0089】
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1感染10日後ほどからヒトES細胞様のコロニーの形成が確認され、アルカリフォスファターゼ活性(後記(b))が確認された(
図7)。また、RT-PCR法(後記(c)により、ヒトiPS細胞のマーカーであるヒトNanogが、これらのコロニーを形成する細胞において誘導されていることを確認した。(
図8)。また、蛍光抗体法(後記(a))により、ヒトiPS細胞のマーカーであるSSEA-4が、これらのコロニーを形成する細胞において誘導されていることを確認した(
図9)。また、hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2を用いても同様の結果が得られた。
【0090】
(2)ヒトiPSマーカー発現細胞の誘導効率の検定
持続発現型センダイウイルスベクターで遺伝子導入した細胞のベクターゲノムRNA保持率を感染2日目にNPタンパク質に対する蛍光抗体法によって定量し、アルカリフォスファターゼ活性陽性コロニー数をベクター保持率で補正することによって、ヒトiPSマーカー発現細胞の誘導効率を算出した。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示される結果から、これまで報告されているレトロウイルスベクターによってhOct4, hSox2, hKlf4, h-c-Mycの4遺伝子を導入したiPS細胞作製の報告よりも有意に高い効率でヒトiPSマーカー発現細胞が誘導できることが明らかになった。また、hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2を用いても同様の結果が得られた。
【0093】
実施例9
持続発現型センダイウイルスベクターのRNAゲノムの除去によるヒトiPS細胞の作製
実施例8で得たヒトiPSマーカー発現細胞を実施例6で示したようにL遺伝子に対するsiRNAで処理し、その後継続して培養することによって、ベクター感染約1ヶ月後には、センダイウイルスNPタンパク質に対する蛍光抗体染色(後記(a))でベクターのRNAゲノムが細胞中に残存していないコロニーの存在が確認された。さらにそのコロニーをクローニングし、NP遺伝子由来メッセンジャーRNA(mRNA)を検出するRT-PCR法(後記(c))によって確認し、ベクターゲノムが残存していないヒトiPS細胞クローンを得た(
図10A)。また、ベクターRNAを除去した後もiPS細胞マーカーであるヒトNanogの発現が持続的に維持されていることをRT-PCR法(後記(c))により確認した(
図10B)。また、蛍光抗体法(後記(a))により、ベクターRNAを除去した後もiPS細胞マーカーであるヒトSSEA-4とOct4の発現が持続的に維持されていることを確認した(
図11)。
【0094】
実施例10
ヒトiPS細胞からのテラトーマ形成
実施例9で得られたヒトiPS細胞を1.0 x 10
6 cells/40 μL Hepes Buffered生理食塩水(HBSS)/匹になるように調製する。ネンブタール、イソフルラン麻酔下でマウス(C.B17/Icr-scidJcl)の精巣を露出させ、調製したiPS細胞を注入した後に縫合した。接種後約8週間で、肉眼で確認可能な奇形種が形成され、移植60日後に奇形種を摘出した。ブアン固定液(75%飽和ピクリン酸、12%ホルマリン、3%酢酸)によって固定した後、70%エタノール(1時間)、90%エタノール(1時間)、100%エタノール(1時間、2回)、50%エタノール:50%2-ブタノール(1時間)、100%2-ブタノール(30分を2回)の処理で脱水した。サンプルをパラフィン固定後、ミクロトームで厚さ6μmの切片を作製した。切片を脱パラフィン後、HE染色により観察した結果、三胚葉すべてへの分化が確認された(
図12)。
【0095】
実施例11
初期化遺伝子を別々に搭載した持続発現型センダイウイルスベクターを用いたiPS細胞誘導
本発明で実施している4つの初期化遺伝子を同一のベクター上に搭載してiPS細胞を作製する方法と、特許文献1・非特許文献12・非特許文献21で示されているような4つの初期化遺伝子を2つ以上のベクター上に分けて搭載してiPS細胞を作製する方法について、iPS細胞の作製効率の比較を行った。4つの初期化遺伝子を同一のベクター上に搭載したベクターとして、実施例2で示したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1を用いた。また、4つの初期化遺伝子を2つ以上のベクター上に分けて搭載したベクターとして、実施例2で示したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1からhc-Myc遺伝子を除いたhOct4, hSox2, hKlf4持続発現用センダイウイルスベクターと、初期化遺伝子としてc-Mycだけを搭載したZeo/KO/hc-Myc持続発現型センダイウイルスベクターを用いた。Zeo/KO/hc-Myc持続発現型センダイウイルスベクターは、実施例3で作製したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 2からKlf4遺伝子を除き、Oct4遺伝子をZeo遺伝子で、Sox2遺伝子をKO遺伝子でそれぞれ置換して作製した。
【0096】
マウス胎児由来線維芽細胞に、hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクター単独、もしくはhOct4, hSox2, hKlf4持続発現用センダイウイルスベクターとZeo/KO/hc-Myc持続発現型センダイウイルスベクターをベクター粒子比1:1で混合したものを実施例8に従って感染させ、iPS細胞コロニーの出現をアルカリフォスファターゼ陽性の細胞コロニーの出現を指標に検定した。その結果、本発明で実施している4つの初期化遺伝子を同一のベクター上に搭載してiPS細胞を作製する方法は、特許文献1・非特許文献12・非特許文献21で示されているような4つの初期化遺伝子を2つのベクター上に分けて搭載してiPS細胞を作製する方法に比較してはるかにiPS細胞作製効率が高いことが示された(
図13)
【0097】
実施例12
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3を用いたiPS細胞誘導
TIG3細胞を12 well plateに1.0 x 10
5 cells/wellで播種し、翌日に実施例3で作製したhOct4, hSox2, hKlf4, h-c-Myc持続発現用センダイウイルスベクターもしくは実施例4で作製したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3を培地中に加え、実施例8に従ってヒトiPS細胞を誘導した。
出現したコロニーをsiRNAの非存在下で2回植え継いだ後の感染24日後に、コロニーに対してNPタンパクに対する抗体を用いて蛍光染色したところ、hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3を用いた場合、多くのコロニーでベクターの除去が確認された(
図14)。それに対し、hOct4, hSox2, hKlf4, h-c-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 1を用いた場合はベクターがまだ残存していた。
【0098】
以上の結果から、hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 3を用いてヒトiPS細胞を誘導した場合、誘導されたiPS細胞で発現するmir-302aの働きによって自動的にベクターが除去されることが明らかになった。また、hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターVersion 4でも同様の効果があった。
【0099】
実施例13
ヒト末梢血単核細胞からのiPS細胞の樹立
成人の末梢血20mLをPBS(-) 20mLで希釈し、Lymphoprep 6mLに重層して1,800回転30分の遠心で、血小板を含む上層、単核細胞を含む中間層、赤血球を含む下層に分離した。中間層をPBS(-)で洗浄してヒト末梢血単核細胞とした。この細胞を使い、実施例8の方法に従ってhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターを感染させ培養したところ、アルカリフォスファターゼ陽性でヒトES細胞と同様の形態を持ったiPS細胞が出現した(
図15)。ベクターを感染させなかった陰性対照からは、このような細胞コロニーは出現しなかった。
【0100】
実施例14
ヒト末梢血からの単球の精製
成人(54歳、男性)の末梢血38mLをPBS(-) 42mLで希釈し、全体量を80mLとした。希釈した末梢血8mLを、7mLのFicoli-Paque PREMIUM 1.073 (GE Healthcare)に重層し、1800回転30分の遠心分離を行った。Ficoll層と上層の中間層から単球を含む単核細胞を回収した。この分画2.5mLに12mLのPBS(-), 2%ウシ胎児血清、1mM EDTAを加え、1000回転10分の遠心分離を行い、血小板を除いて単核細胞を沈渣として回収した。この単核細胞からさらに、抗CD14抗体結合磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)を使って磁力により単球特異的抗原であるCD14陽性の細胞を精製した。精製した細胞は、抗CD14-FITC(DAKO)で染色し、フローサイトメーターで純度を検定した。Ficoli-Paqueによる精製後の純度は31%(
図16A)、さらに抗CD14抗体結合磁気ビーズによる精製を行うと純度は98%以上となった(
図16B)。最終精製細胞をライト染色で観察したところ、ほぼすべてが典型的な単球の形状を保持していた(
図16C)。以上の試験を経て、計6 x 10
6個の純度98%以上の単球が回収された。
【0101】
実施例15
ヒト末梢血由来単球からのiPSマーカー発現細胞の誘導
(1)ヒトiPSマーカー発現細胞の誘導
実施例14で単離したヒト単球3 x 10
5個に、実施例2から5で作製したhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクター(Version 1、2、3及び4)を加えて200μLとし、室温で2時間感染させた。比較対照としては、初期化遺伝子を搭載していない持続発現型センダイウイルスベクターを使用した。感染後、培地(RPMI1640, 10%ウシ血清)500μLを加えて低速遠心し、ベクターを除去した。感染した単球はヒトES細胞用培地(ReproCELL)に懸濁し、フィーダー細胞(マイトマイシンCで前処理したマウス胎児由来線維芽細胞)を1.8 x 10
5個細胞/wellの密度で培養した12-wellプレートに、1 x 10
5細胞/well/500 μLで播種した後、37℃、5%炭酸ガス存在下で培養した。培養液は隔日で交換した。
【0102】
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターを感染させたヒト単球では、培養5日目から8日目に、細胞が凝集して増殖するコロニーが観察された(
図17A)。比較対照とした初期化遺伝子を搭載していない持続発現型センダイウイルスベクターを感染させた単球からはこのような細胞塊は出現しなかった。これらの細胞塊を構成する細胞は、ヒトiPS細胞のマーカーであるSSEA-4抗原及びTRA-1-60-抗原を発現していた(
図17B、
図17C)。
【0103】
(2)ヒト末梢血由来単球からのコロニー誘導効率の検定
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクター(Version 1、2、3及び4)感染後8日目において、[0091]
図17Aで示した形状を持つコロニーの数を測定し、播種した細胞数(1 x 10
5細胞)で割って、コロニー誘導効率を算出した。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示された結果から、使用したベクターによって若干の差はあるが、およそ0.1%から0.6%の細胞が将来iPS細胞になる可能性を持つコロニーを形成していると考えられた。
【0106】
実施例16
持続発現型センダイウイルスベクターのRNAゲノムの除去によるヒトiPS細胞の作製
実施例15で出現したヒトiPSマーカー発現細胞をトリプシンで解離し、同じ培養条件で継代した。同時に、実施例6で示した方法により、培地に抗L遺伝子siRNAを合計で3回加え、センダイウイルスベクターを除去した。感染15日目に、ヒトES細胞用解離液を使って継代し、さらに2回siRNAで処理した。感染31日目には、典型的なヒトES/iPS細胞と同様に平板な形状を持つ細胞のコロニーが出現した(
図18A、B)。出現したコロニーは、ヒトiPS細胞のマーカーであるNanog(
図19A、B),Oct4(
図19C、D)、SSEA-4抗原(
図19E、F)、TRA-1-60抗原(
図19G、H)、TRA-1-81抗原(
図19I、J)を発現していたが、センダイウイルスのNP抗原は発現しておらず(
図19K、L)、センダイウイルスベクターを含まないヒトiPS細胞であることが確認された。
【0107】
実施例17
ヒト単球由来iPS細胞におけるT細胞レセプター遺伝子のリアレンジメント解析
実施例14から16で示したヒト末梢血単球由来のiPS細胞の作製において、作製に使った単球の純度は98%以上であるため、実施例16で示したiPS細胞は単球由来である可能性が極めて高い。しかし、抗CD14抗体結合磁気ビーズによる精製前の単核細胞にはリンパ球(T細胞及びB細胞)が含まれている。特に、T細胞からはiPS細胞が作製できることが既に知られている(非特許文献10-12)ため、実施例16で示したiPS細胞が、使用した細胞材料に2%以下の確率で含まれるT細胞あるいはB細胞に由来する可能性を検討した。
【0108】
まず、ヒト末梢血B細胞はセンダイウイルスに感染できないことが知られている(Nakanishi, et al., J. Cont. Rel., 54, 61-68, 1998)ので、実施例16で示したiPS細胞がB細胞由来である可能性は否定される。一方、実施例16で示したiPS細胞がT細胞由来であるかどうかを検討するため、T細胞レセプター遺伝子のリアレンジメントを検討した。この手法は、白血病細胞がT細胞由来であるかどうかを診断する方法として臨床分野で確立している。
【0109】
ヒトiPS細胞のゲノムDNAは、DNeasy Blood & Tissue kit(QIAGEN社)を使って精製し、40ng(
図20A)または20ng(
図20B)を解析に使用した。T細胞レセプター・ベータ鎖遺伝子のリアレンジメントは、van Dongen, et al., Leukemia, 17, 2257-2317, 2003に記された方法によりPCR法で解析した。また、T細胞レセプター・ガンマ鎖遺伝子のリアレンジメントは、Benhattar, et al, Diagn. Mol. Pathol., 4, 108-112, 1995に記された方法によりPCR法で解析した。その結果を
図20に示す。
【0110】
T細胞レセプター・ベータ鎖遺伝子にリアレンジメントが起こっている場合は、約300bpまたは約180bpのところに明確なDNAのバンドが検出される。比較対照として用いたT細胞由来iPS細胞のゲノムDNAではリアレンジメントが起こっており、明瞭なバンドが検出されるが、実施例16で示したiPS細胞2検体のゲノムDNAでは相当するバンドは検出されなかった(
図20A)。同様に、
T細胞レセプター・ガンマ鎖遺伝子にリアレンジメントが起こっている場合は、約200bpのところに明確なDNAのバンドが検出される。比較対照として用いたT細胞由来iPS細胞のゲノムDNAではリアレンジメントが起こっており、明瞭なバンドが検出されるが、実施例16で示したiPS細胞2検体のゲノムDNAでは相当するバンドは検出されなかった(
図20B)。
以上により、実施例16で示したiPS細胞はT細胞あるいはB細胞に由来するものではなく、単球に由来することが示された。
【0111】
上記実施例8〜16で用いた確認手段は以下のとおりである。
(a)間接蛍光抗体法による遺伝子発現の確認
各細胞におけるヒトOct4,ヒトSSEA-4, センダイウイルス NP遺伝子の発現を、それぞれの遺伝子産物に対する抗体を用いて蛍光抗体法で確認した。用いた一次抗体と希釈率は以下の通りである。ヒトOct4: rabbit anti-Oct4 polyclonal antibody (Abcam) [x400]; SSEA-4: マウスanti-SSEA-4 monoclonal antibody (Millipore) [x200];TRA-1-60: マウスanti-TRA-1-60 monoclonal antibody (Millipore) [x200];TRA-1-81: マウスanti-TRA-1-81 monoclonal antibody (Millipore) [x200];ヒトNanog: ウサギanti-Nanog polyclonal antibody (Abcam) [x1000];センダイウイルスNP: mouse anti-NP monoclonal antibody [x1000]もしくはrabbit anti-NP polyclonal antibody [x1000]
【0112】
(b)
アルカリフォスファターゼ染色
培地を除去し、PBSで一回洗浄後、Vector Red Alkaline Phosphatase Substrate Kit I (Vector社)を加えて室温で20〜30分反応させた。アルカリフォスファターゼ活性を有する細胞は赤色に染色された。
【0113】
(c)
逆転写Polymerase Chain Reaction法(RT-PCR法)によるヒトNanog, センダイウイルスNP遺伝子発現の確認
細胞からISOGEN(Nippon Gene)を用いてtotal RNAを抽出した。抽出したRNAを鋳型に用い、ランダムプライマーとSuperScript III First strand synthesis system(Life Technologies)を用いてcDNAを合成した後、以下に示したプライマーを用いて標的となるcDNAをPCR法で増幅し、発現の確認を行った。;ヒトNanog: 5’-AGCATCCGACTGTAAAGAAT-3’( 配列表・配列番号31(センス鎖))、5’-CCTCTCCACAGTTATAGAAG-3’( 配列表・配列番号32(アンチセンス鎖));SeV NP: 5’-AGACCCTAAGAGGACGAAGA-3’( 配列表・配列番号33(センス鎖))、5’-ACTCCCATGGCGTAACTCCATAGTG-3’( 配列表・配列番号34(アンチセンス鎖))。
【0114】
実施例18
ヒト末梢血単球由来iPS細胞からのテラトーマ形成
実施例16で得られたヒト末梢血単球由来iPS細胞を1.0 x 10
6 cells/40 μL Hepes Buffered生理食塩水(HBSS)/匹になるように調製する。ネンブタール、イソフルラン麻酔下でマウス(C.B17/Icr-scidJcl)の精巣を露出させ、調製したiPS細胞を注入した後に縫合した。接種後約8週間で、肉眼で確認可能な奇形種が形成され、移植60日後に奇形種を摘出した。ブアン固定液(75%飽和ピクリン酸、12%ホルマリン、3%酢酸)によって固定した後、70%エタノール(1時間)、90%エタノール(1時間)、100%エタノール(1時間、2回)、50%エタノール:50%2-ブタノール(1時間)、100%2-ブタノール(30分を2回)の処理で脱水した。サンプルをパラフィン固定後、ミクロトームで厚さ6μmの切片を作製した。切片を脱パラフィン後、HE染色により観察した結果、三胚葉すべてへの分化が確認され、ヒト末梢血単球由来iPS細胞が多能性を持っていることが確認された(
図21)。
【0115】
実施例19
ヒト末梢血単球由来iPS細胞の血球細胞への再分化能の検討
ヒトiPS細胞は、しばしば作製に使った体細胞のエピジェネティックな性質を残しているため、元の体細胞と同じ組織の細胞に再分化しやすい傾向があることが知られている。もし、ヒト末梢血単球由来iPS細胞が完全なゲノムを持った造血前駆細胞に再分化しやすい傾向を持っていれば、再生医療や試験管内での血小板の製造などに極めて有用である。そこでES細胞を試験管内で血液細胞に分化させる系(Takayama, et al., Blood, 111, 5298-5306 (2008))を用いて、ヒト末梢血単球由来iPS細胞とヒト線維芽細胞由来iPS細胞の血液細胞への分化傾向を比較した。
【0116】
実施例16で得られたヒト末梢血単球由来iPS細胞および実施例9で得られたヒト線維芽細胞由来iPS細胞を、高山・中内らの方法(Takayama, et al., Blood, 111, 5298-5306 (2008))に従い、血球細胞へ再分化させた。使用直前に50Gyのガンマ線を照射して増殖能を失わせたマウス間葉系幹細胞株C3H10T1/2(理化学研究所バイオリソースセンターより入手)(100mmディッシュ1枚)の上に、100細胞程度の小塊にしたiPS細胞を重層して、分化培地(Iscove modified DMEM, 10 μg/mL human insulin, 5.5 μg/mL human transferring, 5 ng/mL sodium selenite, 2 mM L-glutamine, 0.45 mM monothioglycerol, 50 μg/mL ascorbic acid, 15% FCS, VEGF 20 ng/mL)にて2週間培養する。2週間後に、iPS-sacと呼ばれる袋状の構造を単離し、その中に含まれるCD34/CD43陽性の造血前駆細胞マーカー陽性の細胞数をフローサイトメーターで計測した(
図22A)。結果は、ヒトiPS細胞10
5個あたりに出現するCD34/CD43陽性細胞の数で表した。
【0117】
ヒト末梢血単球由来iPS細胞4株のうち3株は、ヒト線維芽細胞由来iPS細胞に比べて造血前駆細胞への分化能が有意に高く、1株は同程度であった。このことから、同じようにhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターを使って作製しても、ヒト末梢血単球由来iPS細胞はヒト線維芽細胞由来iPS細胞に比べてヒト造血前駆細胞に再分化しやすいことが示された。
【0118】
また、iPS-sac内に含まれる細胞2 x 10
4個を、ガンマ線照射済みC3H10T1/2細胞(6-well plate)の上にまき直し、サイトカイン・カクテル(human IL-6, IL-11, SCFを含む。Pharmacia & Upjohn社製)を含む分化培地で3種間培養した。培地は3日に一回交換し、3週間後に出現した血液細胞のコロニーをその形状で判定して数を定量した(
図22B)。結果は、ヒトiPS細胞10
5個あたりに出現する顆粒球・マクロファージ・コロニー形成ユニット(CFU-GM)、赤芽球コロニー形成ユニット(CFU-E)、赤芽球バースト形成ユニット(BFU-E)、混合コロニー形成ユニット(CFU-Mix)の数とその総和で表した。ヒト末梢血単球由来iPS細胞4株のうち3株は、ヒト線維芽細胞由来iPS細胞に比べて、分化した血液細胞コロニーを作る活性が高く、1株は同程度であった。このことから、ヒト末梢血単球由来iPS細胞に由来するヒト造血前駆細胞は、マクロファージ・顆粒球・赤芽球への正常な分化能を持っていることが確認された。
【0119】
実施例20
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターを使って樹立したヒト末梢血単球由来iPS細胞と、ヒト線維芽細胞由来iPS細胞やヒトES細胞との遺伝子発現の比較
(1)解析用RNAサンプルの用意
実施例16で得られたヒト末梢血単球由来iPS細胞、及び実施例9で得られたヒト線維芽細胞由来iPS細胞を、フィーダー細胞を使わずに、MEF conditioned medium中でマトリゲル(Becton, Dickinson and Company)上に培養し、1.0 x 10
6細胞ずつ回収した。回収した細胞から、ISOGEN(Nippon Gene Co. Ltd.)を用いて全細胞RNAを抽出した。比較対象としては、ヒト正常線維芽細胞、ヒトES細胞およびレトロウイルスベクターでhOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc遺伝子を導入して作製した標準ヒトiPS細胞株201B7(京都大学・山中伸弥博士より供与された)を、同様に培養してRNAを抽出した。
【0120】
(2)遺伝子発現の解析
0.5 μgの全細胞RNAをQuick Amp Labelng Kit(Agilent Technologies, Inc.)を用いてCy3で標識する。標識したRNAはGene Expression Hybridization Kit(Agilent Technologies, Inc.)を用いて、Whole Human Genome (4x44k) DNA array(Agilent Technologies, Inc.)にハイブリダイゼーションさせ、Agilent DNAマイクロアレイスキャナを用いてシグナルを取得する。取得したシグナルはGeneSpringGX10ソフトウェア(Agilent Technologies, Inc.)を用いて解析し、各細胞クローン間の遺伝子発現を、発現の強度を赤から緑へのグラジエントで示すHeat Mapという表示方法で解析した(
図23)。その結果、hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターを使って樹立したヒト末梢血単球由来iPS細胞は、同じ方法を用いて作製したヒト線維芽細胞由来iPS細胞や、標準ヒトiPS細胞株201B7、ヒトES細胞とほぼ同等の遺伝子発現パターンを示した。
【0121】
実施例21
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターを使って樹立したヒト末梢血単球由来iPS細胞のゲノムDNAにおけるT細胞レセプター遺伝子の再構成の解析
実施例16で得られたヒト末梢血単球由来iPS細胞が、使用した単球分画に少量混入しているTリンパ球由来ではないことを確認するために、T細胞レセプター遺伝子の再構成を検討した。分化したT細胞では必ずT細胞レセプター遺伝子の再構成が起こっており、α/β鎖からなるT細胞レセプターか、γ/δ鎖からなるT細胞レセプターのいずれかを持っている。このうちα/β鎖からなるT細胞レセプター持つ細胞では必ずβ鎖遺伝子の再構成が先に起こるため、この遺伝子を解析した。γ/δ鎖からなるT細胞レセプターを持つ細胞ではγ鎖とδ鎖の遺伝子が再構成しているので、両方の遺伝子を解析した。
【0122】
ヒトiPS細胞のゲノムDNAは、DNeasy Blood & Tissue kit(QIAGEN社)を使って精製し、0.5 μgを解析に使用した。陽性対象としては解析キットに付属している末梢血全T細胞由来のゲノムDNAと、各T細胞レセプター遺伝子に再構成が起こっていることが確認されているT細胞由来細胞株由来のゲノムDNAを使用した。また、陰性対照としては、線維芽細胞由来ヒトiPS細胞のゲノムDNAとマウス・フィーダー細胞のゲノムDNAを使用した。β鎖遺伝子とγ鎖遺伝子の再構成はTCRB+TCRG T-Cell Clonality Assay for ABI Fluorescence Detection (InvivoScribe Technologies社)を、δ鎖遺伝子の再構成はTCRD Clonality Assay for ABI Fluorescence Detection (InvivoScribe Technologies社)をそれぞれ用いて検出し、PCR産物のサイズを3130 Genetic Analyzer (Applied Biosystem社)で解析した。いずれの場合も、ゲノムDNAに含まれるT細胞レセプター遺伝子に再構成が起こっていれば特異的なPCR産物が検出できる。β鎖遺伝子の再構成の結果を
図24に、γ鎖遺伝子の再構成の結果を
図25に、δ鎖遺伝子の再構成の結果を
図26に、それぞれ示す。いずれの場合も、ヒト末梢血単球由来iPS細胞のゲノムDNAではT細胞レセプター遺伝子の再構成に特異的なPCR産物は認められず、これらのiPS細胞が、その作製に使用した単球分画に少量混入しているTリンパ球由来ではないことが確認された。
【0123】
実施例22
hOct4, hSox2, hKlf4, hc-Myc持続発現用センダイウイルスベクターを使って樹立したヒト末梢血単球由来iPS細胞のゲノムDNAにおける免疫グロブリンH鎖遺伝子の再構成の解析
実施例16で得られたヒト末梢血単球由来iPS細胞が、使用した単球分画に少量混入しているBリンパ球由来ではないことを確認するために、分化しているB細胞では必ず起こっている免疫グロブリンH鎖遺伝子の再構成があるかどうかを検討した。
ヒトiPS細胞のゲノムDNAは、DNeasy Blood & Tissue kit(QIAGEN社)を使って精製し、0.5 μgを解析に使用した。陽性対象としては解析キットに付属している末梢血全B細胞由来のゲノムDNAと、再構成が起こっていることが確認されているB細胞由来細胞株由来のゲノムDNAを使用した。また、陰性対照としては、線維芽細胞由来ヒトiPS細胞のゲノムDNAとマウス・フィーダー細胞のゲノムDNAを使用した。免疫グロブリンH鎖遺伝子の再構成はIGH Gene Rearrangement Assay for ABI Fluorescence Detection (InvivoScribe Technologies社)を用いて検出し、PCR産物のサイズを3130 Genetic Analyzer (Applied Biosystem社)で解析した。いずれの場合も、ゲノムDNAに含まれる免疫グロブリンH鎖遺伝子に再構成が起こっていれば特異的なPCR産物が検出できる。解析結果を
図27に示す。ヒト末梢血単球由来iPS細胞のゲノムDNAではいずれも免疫グロブリンH鎖遺伝子の再構成に特異的なPCR産物は認められず、これらのiPS細胞が、その作製に使用した単球分画に少量混入しているBリンパ球由来ではないことが確認された。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。