特許第5963745号(P5963745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963745リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池
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  • 特許5963745-リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963745
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20160721BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-507626(P2013-507626)
(86)(22)【出願日】2012年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2012057974
(87)【国際公開番号】WO2012133434
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/072865
(32)【優先日】2011年10月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-79268(P2011-79268)
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太郎
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−017052(JP,A)
【文献】 特開2005−053764(JP,A)
【文献】 特開平07−029603(JP,A)
【文献】 特開平10−302779(JP,A)
【文献】 特許第4175026(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/108720(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/065391(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/065423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62、10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式:Li(LixNi1-x-yy)O2+α
(前記式において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上であり、0≦x≦0.1であり、0<y≦0.7であり、α>0である。)
で表され、
一次粒子の平均粒径D50が1.6〜2.3μmであり、
2段階中和滴定により測定された粒子表面のアルカリ量が1.2質量%以下であり、該粒子表面のアルカリ量のうち、水酸化リチウムをA質量%、炭酸リチウムをB質量%とすると、A/Bが1以下であるリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項2】
前記粒子表面のアルカリ量が0.8質量%以下である請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項3】
前記A/Bが0.7以下である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項4】
前記Mが、Mn及びCoから選択される1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項5】
前記組成式において、α>0.05である請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項6】
前記組成式において、α>0.1である請求項5に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極。
【請求項8】
請求項7に記載のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の正極活物質には、一般にリチウム含有遷移金属酸化物が用いられている。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)等であり、特性改善(高容量化、サイクル特性、保存特性、内部抵抗低減、レート特性)や安全性を高めるためにこれらを複合化することが進められている。車載用やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウムイオン電池には、これまでの携帯電話用やパソコン用とは異なった特性が求められている。
【0003】
電池特性の改善には、従来、種々の方法が用いられており、例えば特許文献1には、
LixNi1-yy2-δ
(0.8≦x≦1.3、0<y≦0.5であり、Mは、Co、Mn、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Al、Ga、Bi、Sn、Zn、Mg、Ge、Nb、Ta、Be、B、Ca、Sc及びZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示し、δは酸素欠損又は酸素過剰量に相当し、−0.1<δ<0.1を表す。)の組成で表されるリチウムニッケル複合酸化物を分級機に通し、粒子径の大きい物と小さい物とに平衡分離粒子径Dh=1〜10μmで分離し、粒子径の大きい物と小さい物を、重量比で0:100〜100:0で配合することを特徴とするリチウム二次電池用正極材料の製造方法が開示されている。そして、これによれば、レート特性と容量のさまざまなバランスのリチウム二次電池用正極材料を容易に製造できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4175026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のリチウムニッケル複合酸化物は、その組成式中の酸素量が過剰のものであるが、それでもなお高品質のリチウムイオン電池用正極活物質としては改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、良好な電池特性を有するリチウムイオン電池用正極活物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、正極活物質の酸素量及び一次粒子の粒径と電池特性との間に密接な相関関係があることを見出した。すなわち、正極活物質の酸素量がある値以上とし、正極活物質の一次粒子の粒径を適切な範囲に制御することにより、良好な電池特性が得られることを見出した。
また、正極活物質の粒子表面のアルカリ含有量、及び、該粒子表面のアルカリ量のうち水酸化リチウム量Aと炭酸リチウム量Bとの比と、電池特性との間に密接な相関関係があることを見出した。すなわち、正極活物質の粒子表面のアルカリ含有量がある値以下であるとき、また、該粒子表面のアルカリ量のうち水酸化リチウム量Aと炭酸リチウム量Bとの比A/Bがある値以下であるとき、特に良好な電池特性が得られることを見出した。
【0008】
上記知見を基礎にして完成した本発明は一側面において、
組成式:Li(LixNi1-x-yy)O2+α
(前記式において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上であり、0≦x≦0.1であり、0<y≦0.7であり、α>0である。)
で表され、一次粒子の平均粒径D50が1.6〜2.3μmであり、2段階中和滴定により測定された粒子表面のアルカリ量が1.2質量%以下であり、該粒子表面のアルカリ量のうち、水酸化リチウムをA質量%、炭酸リチウムをB質量%とすると、A/Bが1以下であるリチウムイオン電池用正極活物質である。
【0009】
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は一実施形態において、2段階中和滴定により測定された粒子表面のアルカリ量が0.8質量%以下である。
【0010】
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は別の実施形態において、A/Bが0.7以下である。
【0011】
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、Mが、Mn及びCoから選択される1種以上である。
【0012】
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、組成式において、α>0.05である。
【0013】
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、組成式において、α>0.1である。
【0014】
本発明は、別の側面において、本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極である。
【0015】
本発明は、更に別の側面において、本発明に係るリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好な電池特性を有するリチウムイオン電池用正極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、正極活物質の一次粒子及び二次粒子の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(リチウムイオン電池用正極活物質の構成)
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質の材料としては、一般的なリチウムイオン電池用正極用の正極活物質として有用な化合物を広く用いることができるが、特に、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)等のリチウム含有遷移金属酸化物を用いるのが好ましい。このような材料を用いて作製される本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、
組成式:Li(LixNi1-x-yy)O2+α
(前記式において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上であり、0≦x≦0.1であり、0<y≦0.7であり、α>0である。)
で表される。
【0019】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、酸素が組成式において上記のようにO2+α(α>0)と示され、過剰に含まれており、リチウムイオン電池に用いた場合、容量、レート特性及び容量保持率等の電池特性が良好となる。ここで、αについて、好ましくはα>0.05であり、より好ましくはα>0.1である。
【0020】
リチウムイオン電池用正極活物質は、一次粒子、一次粒子が凝集して形成された二次粒子、又は、一次粒子及び二次粒子の混合物で構成されている(図1参照)。このうち、一次粒子の平均粒径D50は1.6〜2.3μmである。一次粒子の平均粒径D50が1.6μm未満であると、電池作製の際のプレスによる粒子の割れを引き起こしたり、電池のサイクル時の粒子のクラックによる劣化という問題が生じる。また、一次粒子の平均粒径D50が2.3μm超えであると、電解液の液枯れや電解液の量を増やすことにより電池劣化という問題が生じる。一次粒子の平均粒径D50は、好ましくは1.8〜2.1μmである。
【0021】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、2段階中和滴定により測定された粒子表面のアルカリ量が1.2質量%以下である。リチウムイオン電池用正極活物質中の粒子表面のアルカリ量が1.2質量%超であると、その正極活物質を用いたリチウムイオン電池は充放電を繰り返すうちに電解液と反応する。また、アルカリ量が多いとガスが発生してしまう。そのため、電池の劣化が起こり、リチウムイオン電池の電池特性、特にサイクル特性が不良となる。2段階中和滴定により測定されるアルカリ量は、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.6質量%以下である。
【0022】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、粒子表面のアルカリ量のうち、水酸化リチウムをA質量%、炭酸リチウムをB質量%とすると、A/Bが1以下である。リチウムイオン電池用正極活物質に含まれるアルカリには水酸化リチウムと炭酸リチウムとがあり、このうち、炭酸リチウム量に対する水酸化リチウム量の比である前記A/Bが1超であると、強アルカリである水酸化リチウムの割合が弱アルカリである炭酸リチウムより多くなるためpH値が高くなり、その正極活物質を用いたリチウムイオン電池の電池特性、特にサイクル特性が不良となる。A/Bは、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.4以下である。
リチウムイオン電池用正極活物質の2段階中和滴定としては常法を用いることができ、また、例えばJIS K1201−3−1(中和滴定)で規定されている。具体的には、当該滴定法は、以下のアルカリと酸との反応に基づく。
LiOH+HCl→LiCl+H2O (1)
Li2CO3+HCl→LiCl+LiHCO3 (2)
LiHCO3+HCl→LiCl+CO2+H2O (3)
従来の指示薬を用いる滴定法では(1)及び(2)の反応においてpH7.8を検出し、当該測定点を第1終点とする。また、(3)の反応においてpH3.9を検出し、当該測定点を第2終点とする。また、JIS K1201−3−2(電位差滴定)の規定に準拠する滴定法では、2箇所の変曲点を検出し、それぞれ第1終点、第2終点とする。そして、それぞれの終点までに用いたHCl量から水酸化リチウム及び炭酸リチウムの質量%が算出される。
【0023】
(リチウムイオン電池用正極及びそれを用いたリチウムイオン電池の構成)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを混合して調製した正極合剤をアルミニウム箔等からなる集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極を備えている。
【0024】
(リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
まず、金属塩溶液を作製する。当該金属は、Ni、及び、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上である。また、金属塩は硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等であり、特に硝酸塩が好ましい。これは、焼成原料中に不純物として混入してもそのまま焼成できるため洗浄工程が省けることと、硝酸塩が酸化剤として機能し、焼成原料中の金属の酸化を促進する働きがあるためである。金属塩に含まれる各金属を所望のモル比率となるように調整しておく。これにより、正極活物質中の各金属のモル比率が決定する。
【0025】
次に、炭酸リチウムを純水に懸濁させ、その後、上記金属の金属塩溶液を投入して金属炭酸塩溶液スラリーを作製する。このとき、スラリー中に微小粒のリチウム含有炭酸塩が析出する。なお、金属塩として硫酸塩や塩化物等熱処理時にそのリチウム化合物が反応しない場合は飽和炭酸リチウム溶液で洗浄した後、濾別する。硝酸塩や酢酸塩のように、そのリチウム化合物が熱処理中にリチウム原料として反応する場合は洗浄せず、そのまま濾別し、乾燥することにより焼成前駆体として用いることができる。
次に、濾別したリチウム含有炭酸塩を乾燥することにより、リチウム塩の複合体(リチウムイオン電池正極材用前駆体)の粉末を得る。
【0026】
次に、所定の大きさの容量を有する焼成容器を準備し、この焼成容器にリチウムイオン電池正極材用前駆体の粉末を充填する。次に、リチウムイオン電池正極材用前駆体の粉末が充填された焼成容器を、焼成炉へ移設し、焼成を行う。焼成は、酸素雰囲気下で所定時間加熱保持することにより行う。また、101〜202KPaでの加圧下で焼成を行うと、さらに組成中の酸素量が増加するため、好ましい。
焼成工程における加熱保持温度は、リチウムイオン電池正極材の一次粒子の粒径に影響を与える。本発明では、原料に炭酸リチウムを用いているため、水酸化リチウムを原料として用いる場合に比べて反応性が弱い。従って、高温で長時間の焼成が必要となるが、この高温且つ長時間の焼成によって粒子の結晶性が向上し正極材の一次粒子の粒径が大きくなる。本発明では、原料に炭酸リチウムを用いて、750℃以上で12時間以上の焼成を行うことで、一次粒子の平均粒径D50を1.6〜2.3μmに制御している。これに対し、水酸化リチウムを原料とする場合、通常、反応性が高いために焼成温度は低下し、焼成時間は少なくなるため、生成する一次粒子の平均粒径D50は0.5μm程度と小さくなってしまう。
その後、焼成容器から粉末を取り出し、市販の解砕装置等を用いて解砕を行うことにより正極活物質の粉体を得る。このときの解砕は、微粉がなるべく生じないように、適宜解砕強度及び解砕時間を調整して行う。具体的には、当該解砕により、解砕後の粒径6μm以下の微粉の体積%が4.0〜7.0%、好ましくは4.3〜6.9%となるように調整する。
このように解砕時の微粉の発生を制御することにより、体積当たりの粉末の表面積が減少するため、粒子表面の水酸化リチウム量を抑制することができる。
また、炭酸リチウムは水分があるような場所では、水酸化リチウムに変わってしまうため、解砕を乾燥空気雰囲気下で行うことで、水分を取り込まないように制御する。
【実施例】
【0027】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0028】
(実施例1〜15)
まず、表1に記載の投入量の炭酸リチウムを純水3.2リットルに懸濁させた後、金属塩溶液を4.8リットル投入した。ここで、金属塩溶液は、各金属の硝酸塩の水和物を、各金属が表1に記載の組成比になるように調整し、また全金属モル数が14モルになるように調整した
の処理により溶液中に微小粒のリチウム含有炭酸塩が析出したが、この析出物を、フィルタープレスを使用して濾別した。
続いて、析出物を乾燥してリチウム含有炭酸塩(リチウムイオン電池正極材用前駆体)を得た。
次に、焼成容器を準備し、この焼成容器内にリチウム含有炭酸塩を充填した。次に、焼成容器を、大気圧下、酸素雰囲気炉に入れて、表1に記載の焼成温度で10時間加熱保持した後冷却して酸化物を得た。
次に、小型粉砕機(ホソカワミクロン ACM−2EC)を用いて、所定の粒径の微粉が所定の粒度分布の分布幅となるように、得られた酸化物を解砕し、リチウムイオン二次電池正極材の粉末を得た。
【0029】
(実施例16)
実施例16として、実施例16として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、金属塩を塩化物とし、リチウム含有炭酸塩を析出させた後、飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、濾過する以外は、実施例1〜15と同様の処理を行った。
【0030】
(実施例17)
実施例17として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、金属塩を硫酸塩とし、リチウム含有炭酸塩を析出させた後、飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、濾過する以外は、実施例1〜15と同様の処理を行った。
【0031】
(実施例18)
実施例18として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、焼成を大気圧下ではなく120KPaの加圧下で行った以外は、実施例1〜15と同様の処理を行った。
【0032】
(実施例19)
実施例19として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、金属塩を硝酸塩とし、リチウム含有炭酸塩を析出させた後、飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、濾過する以外は、実施例1〜15と同様の処理を行った。
【0033】
(比較例1〜3)
比較例1として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、最後の酸化物の解砕について実施例1〜15のような調整を行わない以外は、実施例1〜15と同様の処理を行った。
【0034】
(比較例4〜6)
比較例4〜6として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、酸素雰囲気炉ではなく空気雰囲気炉で焼成工程を行った点以外は、比較例1と同様の処理を行った。
【0035】
(評価)
−正極材組成の評価−
各正極材中の金属含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)で測定し、各金属の組成比(モル比)を算出した。また、酸素含有量はLECO法で測定しαを算出した。これらの結果が表1に記載の通りであることを確認した。
【0036】
−一次粒子の粒径の評価−
各正極材の粉末を採取し、一次粒子の平均粒径D50をレーザー回折粒度分布測定機(マイクロトラックMT3300EX II)によって測定した。
【0037】
−アルカリ量の評価−
正極材中のアルカリ量は、2段階中和滴定法により測定した。具体的には、各正極材の粉末を1g採取し、50mLの純水に加えて10分間撹拌した後、ろ過を行った。続いて、マクロピペットを用いて、ろ液10mLと純水15mLとを50mLのトールビーカーに入れた。続いて、指示薬としてフェノールフタレインを加えたビーカーに撹拌子を入れてスターラーに乗せ、ビーカー内に電極をセットした。次に、ビーカー内の溶液を撹拌させながら、0.01NのHClを滴下した。
ここで、2段階中和滴定法は、以下のアルカリと酸との反応に基づく。
LiOH+HCl→LiCl+H2O (1)
Li2CO3+HCl→LiCl+LiHCO3 (2)
LiHCO3+HCl→LiCl+CO2+H2O (3)
(1)及び(2)の反応においてpH7.8を検出し、当該測定点を第1終点とした。また、(3)の反応においてpH3.9を検出し、当該測定点を第2終点とした。そして、第1の終点までに用いたHCl量をx(mL)とし、第2終点までに用いたHCl量をy(mL)として、Li2CO3量を(y−x)×0.369質量%、LiOH量を(2x−y)×0.12質量%により求めた。
また、算出したLiOH量とLi2CO3量とから、それらの比(LiOH量/Li2CO3量)を求めた。
なお、上記Li2CO3量に係る計算式:(y−x)×0.369質量%、及び、LiOH量に係る計算式:(2x−y)×0.12質量%は、以下の式から導かれたものである。
・上記(3)式のHClのモル数は以下の式で求められる。
(y−x)×1/1000×0.01mol/L=10-5×(y−x)mol
・上記(2)のLi2CO3のモル数は上記HClのモル数と同じであり、Li2CO3の分子量が73.89であり、滴定には50mLのうちの10mL使用し、元の正極材の投入量が1gであることから、Li2CO3量は以下の式で求められる。
73.89g/mol×10-5×(y−x)mol×(50mL/10mL)÷1g×100%=(y−x)×0.369質量%
・上記(1)のLiOHのモル数は以下の式で求められる。
x×1/1000×0.01mol/L-10-5×(y−x)mol=10-5×(2x−y)mol
・LiOHの分子量が23.95であり、滴定には50mLのうちの10mL使用し、元の正極材の投入量が1gであることから、LiOH量は以下の式で求められる。
23.95g/mol×10-5×(2x−y)mol×(50mL/10mL)÷1g×100%=(2x−y)×0.12質量%
【0038】
−電池特性の評価−
各正極材と、導電材と、バインダーとを85:8:7の割合で秤量し、バインダーを有機溶媒(N−メチルピロリドン)に溶解したものに、正極材料と導電材とを混合してスラリー化し、Al箔上に塗布して乾燥後にプレスして正極とした。続いて、対極をLiとした評価用の2032型コインセルを作製し、電解液に1M−LiPF6をEC−DMC(1:1)に溶解したものを用いて、電流密度0.2Cの際の放電容量を測定した。また電流密度0.2Cのときの電池容量に対する電流密度2Cのときの、放電容量の比を算出してレート特性を得た。さらに、容量保持率は、室温で1Cの放電電流で得られた初期放電容量と100サイクル後の放電容量を比較することによって測定した。
これらの結果を表1及び2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
(評価)
実施例1〜19は、いずれも電池特性が良好であった。また、原料の金属塩を硝酸塩とした実施例1〜15、18は特に電池特性が良好であった。さらに、焼成を大気圧下ではなく加圧下で行った実施例18は最も電池特性が良好であった。
比較例1〜3は、原料とした金属の組成は本発明と同様に酸素が過剰に含まれているものであったが、解砕条件が原因で、電池特性が不良であった。比較例4〜6は、原料とした金属の組成が本発明の範囲外のものであり、さらに解砕条件が原因で、電池特性が不良であった。
図1