特許第5963808号(P5963808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963808吸収性物品用包装体における開封部の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963808
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】吸収性物品用包装体における開封部の形成方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   A61F13/15 358
   A61F13/15 351Z
   A61F13/15 220
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-135286(P2014-135286)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-13161(P2016-13161A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年11月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100141438
【弁理士】
【氏名又は名称】吉迫 大祐
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(72)【発明者】
【氏名】井上 直人
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3183250(JP,U)
【文献】 特開2014−080215(JP,A)
【文献】 特開2012−117164(JP,A)
【文献】 特開2012−166835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸収性物品を包装する包装体に、該包装体から吸収性物品を取り出すための開封部を形成する方法であって、
複数の前記包装体が展開された状態で一方向に連続的に形成された、前記複数の包装体が連続する方向に長いフィルム部材を、該フィルム部材の長さ方向に間欠的に搬送する搬送工程と、前記フィルム部材に対して個々の包装体用の開封部を形成する形成工程とを有し、
前記形成工程は、前記フィルム部材の搬送を停止した状態において、該フィルム部材の長さ方向に張力を作用させながら、前記フィルム部材における前記開封部の形成対象部位に対してレーザによる切断及び/又はハーフカットを行い
前記開封部は、該開封部の幅方向の中央に設けられた中央部と、該中央部を挟んだ両側に設けられた一対の側部とを備えていて、前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、前記開封部の一方の側部に相当する部分にミシン目の形成及び/又はハーフカットを行った後、他方の側部に相当する部分にミシン目の形成及び/又はハーフカットを行い、最後に前記中央部に相当する部分を切断する、吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【請求項2】
前記形成工程は、前記フィルム部材の長さ方向と交差する方向に向けて該フィルム部材の切断及び/又はハーフカットを行う、請求項1に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【請求項3】
前記形成工程は、前記フィルム部材における前記開封部の形成対象部位を上方且つ水平に浮かせた状態で行う、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【請求項4】
前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、ミシン目の形成及びハーフカットを行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【請求項5】
前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、該フィルム部材の長さ方向に0.01〜1N/mmの張力を作用させた状態で行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【請求項6】
前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、該フィルム部材の長さ方向に0.02〜0.7N/mmの張力を作用させた状態で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【請求項7】
前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、該フィルム部材の長さ方向に0.025〜0.05N/mmの張力を作用させた状態で行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【請求項8】
前記開封部は、該開封部の幅方向の中心を通る中心軸線を基準とした線対称の形状に形成されて、前記中央部は、前記中心軸線上に設けられ、前記一対の側部は、該中央部を挟んだ両側に設けられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【請求項9】
前記フィルム部材は、厚さが30〜80μmのポリエチレン製の単層フィルムである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生理用ナプキンやパンティーライナー、失禁パッド、使い捨ておむつ等の吸収性物品を搬送、販売する際に包装する包装体において、該包装体内の吸収性物品を取り出すための開封部を形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の複数の吸収性物品を包装する包装体は、内部に収容している吸収性物品を取り出すために開封部が形成されている。
前記開封部は、包装体を形成しているポリエチレン等のフィルム部材に、一定の間隔で該フィルム部材を切断したミシン目を形成したり、そのフィルム部材を厚さ方向に薄くしたハーフカットを形成したり、あるいは開封部を開封するに際して、指で摘み上げる部分を形成するための切断部分を形成するなどして、前記フィルム部材を手で切断して開封し易くなっている。
【0003】
このような包装体の開封部を形成するに際しては、例えば特許文献1に示すようなミシン目形成装置を用いるが、このようなミシン目形成装置は、フィルム部材にミシン目のみを形成するものであるため、ハーフカットやミシン目以外の切断部分を形成することができない。そのため、ハーフカット等を形成する場合には、他の装置を用いて別途作業を行う必要があり、非常に面倒であった。
また、前記特許文献1のミシン目形成装置は、ミシン目を形成するミシン目刃をフィルム部材に押し込んで切断する構成であり、ミシン目刃がフィルム部材を巻き込みながら切断を行うため、ミシン目を予め定めた位置に正確に形成できない可能性があった。
【0004】
一方、近年においては、前記吸収性物品に香料等を塗布して芳香を付与したものが広く存在するが、製品の購入者は吸収性物品がどのような芳香を放っているのか、あるいは無香料であるか等、吸収性物品の香りに興味を惹かれることが多い。
このとき、前記特許文献1のミシン目形成装置が形成したミシン目は、単にフィルム部材が切れているのみで、切断部分の開口縁は閉じてほとんど隙間がないため、通常の状態においては、このミシン目の切断した部分からは、包装体内の吸収性物品の香りが包装体の外部に漏れ出ることがほとんどない。そのため、製品の購入者が吸収性物品の香りを確認できないばかりでなく、購入意欲を損なわせるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−70199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、吸収性物品を包装する包装体を形成するフィルム部材に開封部を形成するに際して、該フィルム部材に対して、ミシン目を含む切断やハーフカットを容易且つ確実に行うことができ、また、そのフィルム部材を切断した場合には、その切断部分に隙間を形成することができる形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法は次の通りである。
(1)複数の吸収性物品を包装する包装体に、該包装体から吸収性物品を取り出すための開封部を形成する方法であって、複数の前記包装体が展開された状態で一方向に連続的に形成された、前記複数の包装体が連続する方向に長いフィルム部材を、該フィルム部材の長さ方向に間欠的に搬送する搬送工程と、前記フィルム部材に対して個々の包装体用の開封部を形成する形成工程とを有し、前記形成工程は、前記フィルム部材の搬送を停止した状態において、該フィルム部材の長さ方向に張力を作用させながら、前記フィルム部材における前記開封部の形成対象部位に対してレーザによる切断及び/又はハーフカットを行う、吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【0008】
(2)前記形成工程は、前記フィルム部材の長さ方向と交差する方向に向けて該フィルム部材の切断及び/又はハーフカットを行う、前記(1)に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【0009】
(3)前記形成工程は、前記フィルム部材における前記開封部の形成対象部位を上方且つ水平に浮かせた状態で行う、前記(1)又は(2)に記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【0010】
(4)前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、ミシン目の形成及びハーフカットを行う、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【0011】
(5)前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、該フィルム部材の長さ方向に0.01〜1N/mmの張力を作用させた状態で行う、前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
(6)前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、該フィルム部材の長さ方向に0.02〜0.7N/mmの張力を作用させた状態で行う、前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
(7)前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、該フィルム部材の長さ方向に0.025〜0.05N/mmの張力を作用させた状態で行う、前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【0012】
(8)前記開封部は、該開封部の幅方向の中心を通る中心軸線を基準とした線対称の形状に形成されて、前記中心軸線上に設けられた中央部と、該中央部を挟んだ両側に設けられた一対の側部とを備えていて、前記形成工程は、前記フィルム部材に対して、前記開封部の一方の側部に相当する部分にミシン目の形成及び/又はハーフカットを行った後、他方側の側部に相当する部分にミシン目の形成及び/又はハーフカットを行い、最後に前記中央部に相当する部分を切断する、前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【0013】
(9)前記フィルム部材は、厚さが30〜80μmのポリエチレン製の単層フィルムである、前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、開封部の形成工程において、フィルム部材の搬送を停止した状態において、該フィルム部材の長さ方向に張力を作用させながら、前記フィルム部材における開封部の形成対象部位に対してレーザによる切断及び/又はハーフカットを行う。
これにより、フィルム部材に対して、ミシン目を含む切断やハーフカットを容易且つ確実に行うことができ、また、前記フィルム部材に張力を作用させながら該フィルム部材を切断するため、その切断部分がある程度開いて隙間が空いた状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明に係る吸収性物品用包装体における開封部の形成方法の一実施の形態を実施するための形成装置の一例を示す模式図である。
図2図2は本発明に係る吸収性物品用包装体における開封部の形成方法の一実施の形態を実施する際に使用するフィルム部材を模式的に示す平面図である。ただし、長さ方向の両端側を省略している。
図3図3図2のフィルム部材における開封部の部分を模式的に示す、要部拡大図である。ただし、図中の矢印は、開封部を形成する方向を示し、図中の(1)〜(5)は開封部を形成する順序を示している。
図4図4図3のA部内の状態を模式的に示す要部拡大図である。
図5図5図4におけるB−B断面図である。
図6図6は、図3とは異なる順序で開封部を形成する場合について説明する図である。ただし、図中の矢印は、開封部を形成する方向を示し、図中の(1)〜(7)は開封部を形成する順序を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法の一実施の形態を実施するための形成装置の一例を示すものである。
この形成装置1は、前記包装体形成用のフィルム部材2に対してミシン目を含む切断やハーフカット等の加工を行って開封部20を形成する加工装置3と、前記フィルム部材2を該加工装置3によって加工を行う加工位置まで搬送すると共に、加工後のフィルム部材2を、吸収性物品の包装等の下流工程に係る設備に向けて搬送する搬送装置4とを備えている。
【0017】
前記搬送装置4は、原反ロール24から巻き出された前記フィルム部材2の撓みを矯正する原反アキューム装置5と、該原反アキューム装置5よりも搬送方向MDの下流側に配設された、フィルム部材2を前記加工位置に向けて間欠的に繰り出させる繰出装置6とを備えている。
さらに、前記繰出装置6よりも搬送方向MDの下流側に配設された、前記搬送装置4によって搬送されているフィルム部材2の張力を調整する張力調整装置7と、該張力調整装置7よりも搬送方向MDの下流側に配設された、前記フィルム部材2の下流工程への搬送を停止又はその解除を行うストッパ装置8とを備えている。
【0018】
前記ストッパ装置8は、下流工程から前記フィルム部材2が引っ張られた場合に、該フィルム部材2が一定長さだけ送り出された後、該フィルム部材2の下流工程への送り出しを停止させるものである。
この実施の形態においては、前記フィルム部材2の搬送ラインの下方側に設けられた基台8aと、搬送ラインの上方側に昇降自在に設けられた昇降部材8bとを備えている。そして、フィルム部材2の下流工程への送り出しを停止する場合には、図示しないアクチュエータ等を駆動させて前記昇降部材8bを降下させることにより、該昇降部材8bと前記基台8aとの間でフィルム部材2を挟持させて、該フィルム部材2の移動を停止することが可能となっている。
【0019】
また、前記張力調整装置7は、前記フィルム部材2を、該フィルム部材2の長さ方向に引っ張る力を調整することにより、前記加工装置3による加工位置において、フィルム部材2に対して、該フィルム部材2の長さ方向に作用する張力を調整するものである。
この張力調整装置7は、上段側及び下段側にそれぞれ複数設けられた、前記フィルム部材2を上下に折り返しながら上下方向に搬送する複数の張力調整用のロール9,10と、前記下段側のロール10が取付けられて、その下段側のロール10の位置を上下方向に移動させる張力調整用の昇降部材11と、該昇降部材11を昇降させる流体圧シリンダ等のアクチュエータ7aとを備えている。そして、前記フィルム部材2は、上段側のロール9と下段側のロール10との間に交互且つ上下方向に架け渡された状態で搬送方向MDに搬送されるようになっている。
【0020】
この実施の形態においては、前記張力調整装置7は前記加工装置3による加工位置よりも下流側に配設されていて、前記ストッパ装置8によってフィルム部材2の下流工程への搬送が一時停止している時に前記昇降部材11が下降することにより、前記加工装置3による加工位置でのフィルム部材2の長さ方向の張力が上昇するようになっている。一方、前記昇降部材11が上昇することにより、フィルム部材2の長さ方向の張力が低下するようになっていて、この昇降部材11が昇降することにより、フィルム部材2に対して予め定めた張力を該フィルム部材2の長さ方向に作用させ、且つその張力を一定に保つことができるようになっている。
また、前記張力調整装置7には、前記昇降部材11が上昇限に至った場合に、その昇降部材11が上昇限に至ったことを感知する上昇限センサ7bが設けられていて、該上昇限センサ7bが昇降部材11を感知した場合には、前記アクチュエータ7aは昇降部材11の上昇を停止するようになっている。
【0021】
より具体的に、この実施の形態の張力調整装置7は、位置が固定された4本の上段側のロール9と、前記昇降部材11に取付けられた3本の下段側のロール10とを備えていて、これらのロール9,10に、前記フィルム部材2が搬送方向MDの上流側から下流側にかけて順次架け渡された状態となっている。
即ち、前記フィルム部材2を、最初に最も上流側に位置する上段側のロール9に最初に当接させて下方向きに方向転換させ、次に最も上流側に位置する下段側のロール10に接触させている。その後、前記フィルム部材2を、上流側から2番目に位置する上段側のロール9、上流側から2番目に位置する下段側のロール10、上流側から3番目に位置する上段側のロール9、上流側から3番目に位置する下段側のロール10の順に、各ロールに接触させる度に方向転換させながら架け渡した状態としている。最後に、前記フィルム部材2を最も下流側に位置する上段側のロール9に当接させて、前記ストッパー装置8に向けて送出させるようになっている。
【0022】
なお、前記張力調整装置7は、上段側のロール9と下段側のロール10との間に、開封部20を形成した後のフィルム部材2を、ある程度の長さ分蓄積した状態で保持することができるようになっている。即ち、前記昇降部材11が最も下降した状態においては、上段側のロール9と下段側のロール10との間の距離が最も大きくなるため、張力調整装置7はフィルム部材2を最も長く蓄積することができる。一方で、前記昇降部材11が上昇するにつれて、上段側のロール9と下段側のロール10との間の距離も次第に小さくなるため、張力調整装置7における前記フィルム部材2の蓄積長さも次第に小さくなる。そして、前記昇降部材11が上昇限まで上昇した場合には、張力調整装置7における前記フィルム部材2の蓄積長さは最も小さくなる。
【0023】
前記原反アキューム装置5は、前記原反ロール24から巻き出されたフィルム部材2を、上下に複数回折り返しながら搬送することにより、該フィルム部材2をある程度の長さ分蓄積しながら該フィルム部材2の撓みを除去するものである。
この実施の形態においては、上段側及び下段側のそれぞれに、フィルム部材2を搬送するためのロール12,13が複数配設されていて、該フィルム部材2を上下方向に搬送することが可能となっている。そして、これらのロール12,13により前記フィルム部材2を上下に順次折り返させることより、撓みを矯正して除去することができ、且つその撓みが除去されたフィルム部材2をある程度の長さ分蓄積することができるようになっている。
なお、この原反アキューム装置5と、該原反アキューム装置5よりも下流側に配設された前記繰出装置6との間には、原反アキューム装置5から送出された搬送中のフィルム部材2の蛇行を抑制するガイド部材19が配設されていて、フィルム部材2が搬送方向MDに向けて適切に搬送されるように搬送方向を矯正している。
【0024】
前記繰出装置6は、前記フィルム部材2を、下流側である前記加工装置3による加工位置に向けて、予め定めたタイミングで繰出させるもので、該フィルム部材2を上下において挟む、繰出し用の上下一対のロール14,15を備え、これらの一対のロール14,15が一定角度回転することによりフィルム部材2を予め定めた長さだけ繰出すことができるようになっている。
また、この繰出装置6は、前記フィルム部材2に設けられたレジマーク26を検出する繰出センサ16を備えていて、該フィルム部材2の繰り出し中において、この繰出センサ16が前記レジマーク26を検出した場合には、前記一対のローラ14,15は回転を止めてフィルム部材2の繰出しを停止することが可能となっている。
【0025】
ここで、前記繰出装置6と前記張力調整装置7との間には、前記加工装置3がフィルム部材2に対する加工を行う加工スペースが設けられていて、該加工スペースには、フィルム部材2の搬送方向が略水平となるように該フィルム部材2を、そのフィルム部材2を下方側から支持する一対の支持ロール17,18が設けられている。
これらの一対の支持ロール17,18は、前記加工装置3による加工時において、該加工装置3のフィルム部材2に対する加工を阻害しないように、搬送方向MDに沿う位置に相互に一定の間隔を空けた状態で配設されている。なお、これらの一対の支持ロール17,18の間の空間が、フィルム部材2に対して前記加工装置3が加工を行う加工位置となっている。
また、これらの一対の支持ロール17,18は、前記フィルム部材2を宙に浮かせた状態に支持していて、前記加工装置3による加工位置においては、該フィルム部材2に何も接触させないようになっている。
【0026】
なお、前記一対の支持ロール17,18のうち、搬送方向MDの上流側に位置する支持ロール17の上流側には第1の補助ロール31が、搬送方向MDの下流側に位置する支持ロール18の下流側には第2の補助ロール32がそれぞれ配設されている。
前記第1の補助ロール31は、前記繰出装置6から繰り出されたフィルム部材2を、前記支持ロール17に対して、上流側の下方側から45〜90°の範囲で上方向きに搬送できる位置に配設されている。また、前記第2の補助ロール32は、前記支持ロール18からの搬送されるフィルム部材2を、下流側の下方に向けて45〜90°の範囲で搬送できる位置に配設されている。これにより、フィルム部材2を前記一対の支持ロール17,18の間で、ほぼ平行に安定的に支持、搬送することができる。
【0027】
一方、前記加工装置3は、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位に対してレーザを照射することによってフィルム部材2を溶かし、切断(溶断)やハーフカット等の加工を施すものである。
この加工装置3は、フィルム部材2に向けてレーザを照射するレーザヘッド21と、該レーザヘッド21に電気的に接続された、照射するレーザのエネルギーの出力を増幅するレーザアンプ22と、これらのレーザヘッド21及びレーザアンプ22とを制御する制御装置(電子計算機)23とを備えている。
前記レーザヘッド21は、前記フィルム部材2の搬送ラインの上方側に配置されていて、下方に向けてレーザを照射自在となっている。また、このレーザヘッド21は、レーザの照射方向を一定の範囲で変更自在となっていて、これにより、予め定めた開封部の形状に応じて、レーザを前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位に照射することが可能となっている。
さらに、前記制御装置23は、予め定めた開封部20の形状や構成を入力することにより、前記レーザアンプ22の出力を制御すると共に、前記レーザーヘッド21に対して、ミシン目の形成のための切断を含むフィルム部材2の切断、あるいはフィルム部材2を厚さ方向に薄く削るハーフカット等の各種加工を行わせるための制御を行う。
なお、前記レーザヘッド21やレーザアンプ22、制御装置23については、前記フィルム部材2に対して、ミシン目形成を含む切断やハーフカットを行うことができれば、公知のものを任意に選択することができる。
【0028】
ところで、前記フィルム部材2は、図2に示すように、合成樹脂に形成された、前記搬送方向MDに長い長尺のもので、このフィルム部材のフィルム面には、吸収性物品の包装体の形状に合わせて、模様や色彩、あるいは文字やイラスト等の包装体のデザインに係るパターン25が、フィルム部材2の長さ方向に一定の間隔で連続的に印刷されている。この実施の形態においては、前記パターン25の一部に前記開封部20を形成するようになっている。なお、このフィルム部材2は、別工程において単一のパターン毎に切断した後に複数の吸収性物品を被覆した状態で折り曲げられ、最終的には内部にそれらの吸収性物品を収容した箱状や袋状等の各種形状の包装体となる。
また、前記フィルム部材2における、長さ方向と直交し且つ該フィルム部材2のフィルム面に沿う方向である幅方向の両側部分には、前記パターン26の位置に適合する位置に、前記レジマーク26が印刷されている。これにより、このレジマーク26を前記繰出装置6の繰出センサ16に検出させて、前記繰出装置6によるフィルム部材2の繰出し長さを制御できるようにし、前記一対の支持ロール17,18の間において、前記加工装置3からのレーザが、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位に正確に照射されるようにしている。
【0029】
この実施の形態においては、前記フィルム部材2は、表面側に前記パターン25及びレジマーク26が印刷されていて、前記一対の支持ロール17,18上に位置するフィルム部材2は、裏面側が上面となるように搬送されている。
したがって、前記加工装置3は、このフィルム部材2の裏面側に対してレーザを照射して加工するようになっている。
【0030】
本発明において用いられるフィルム部材としては、包装体内に収容される吸収性物品の種類や大きさ、形状等にもよるが、特にポリエチレン製の単層フィルムであることが好ましい。フィルム部材をポリエチレン製の単層フィルムとすることにより、任意の印刷によるデザインが容易であって、軟包装を低コストで実現できるという利点がある。
また、前記フィルム部材を。ポリエチレン製の単層フィルムで形成した場合、厚さは30〜80μmとすることが好ましく、さらに好ましく40〜70μm、より好ましくは50〜60μmとすることである。厚さが30μm未満であると包装体としては強度不足となる可能性があり、厚さが80μmを超えると成形が行いにくく、またコスト増となる。
なお、前記フィルム部材としては、必ずしもポリエチレンである必要はなく、その他の適当な合成樹脂製のフィルムを選択してもよい。また、フィルム部材は必ずしも単層である必要はなく、複数層に形成されたものであってもよい。また、フィルム部材の厚さについは、素材や、包装体内に収容される吸収性物品の種類や大きさ、数、重さ等によって任意に選択することができる。
【0031】
前記構成を有する形成装置1を用いて本発明に係る吸収性物品用包装体における開封部の形成方法を実施する場合について説明する。
本発明の開封部の形成方法は、複数の吸収性物品を包装する包装体に、該包装体から吸収性物品を取り出すための開封部を形成する方法であって、複数の前記包装体が展開された状態で一方向に連続的に形成された、前記複数の包装体が連続する方向に長い前記フィルム部材2を、該フィルム部材2の長さ方向に間欠的に搬送する搬送工程S1〜S3と、前記フィルム部材2に対して個々の包装体用の開封部20を形成する形成工程S4とを含んでいる。
【0032】
具体的に、前記搬送工程は、下流工程の要請に応じて行っていた下流工程へのフィルム部材2の搬送を一時停止する、搬送停止工程S1と、該搬送停止工程S1後において、開封部20を形成されていない未加工部分の前記フィルム部材2を、予め定めた長さ分だけ前記形成工程S4を実施する加工位置に繰出させる繰出工程S2と、該繰出工程S2によって前記加工位置に繰出された前記フィルム部材2の張力を調整する張力調整工程S3とを含んでいる。
そして、前記形成工程S4を、前記張力調整工程S3が完了した後に実施し、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位にレーザを照射することにより、該フィルム部材2に前記開封部20を形成する。
【0033】
前記搬送停止工程S1は、前記形成装置のストッパ装置8において、上昇していた昇降部材8bを下降させ、該昇降部材8bと基台部8aとの間でフィルム部材2を挟持することにより行う。
即ち、下流工程からのフィルム部材2の引き出し要請に応じて行っていた該フィルム部材2の下流工程への搬送を、前記ストッパ装置8により停止させると共に、前記フィルム部材2を該ストッパ装置8により位置不動に一時的に保持する。
【0034】
なお、このとき、前記下流工程に引出されるフィルム部材2は、後述するように、搬送方向MDにおいて、前記加工装置3において開封部20の形成が終了した部分のもの、即ち、形成工程S4が終了して該開封部20を形成済みの状態の部分である。
また、この搬送停止工程S1の実施前、即ち、下流工程からのフィルム部材2の引き出しの要請に応じて該フィルム部材2を下流工程に搬送する際には、前記張力調整装置7における昇降部材11を徐々に上昇させる。そして、張力調整装置7が上段側及び下段側のロール9,10間に蓄積、保持していた開封部20を形成後のフィルム部材2を、前記フィルム部材2に作用している予め定めた張力を一定に維持しながら、該フィルム部材2を下流工程に向けて搬送することができるようになっている。このとき、前記昇降部材11が上昇限まで上昇しきった場合には、該昇降部材11が上昇限に達したことを上昇限センサ7bが感知し、その昇降部材11を昇降させるアクチュエータ7aの駆動を停止して該昇降部材11の上昇を停止させる。
【0035】
前記搬送停止工程S1の完了後、前記繰出工程S2を実施する。
前記繰出工程S2は、前記繰出装置6によって、前記フィルム部材2を、前記形成工程S4を行うための加工位置に向けて予め定めた長さだけ繰出す。
なお、前記繰出装置6が形成工程S4を行う加工位置に向けて繰出すフィルム部材2は、形成装置1において原反ロール24から巻出して前記原反アキューム装置5によって撓みが矯正された、開封部20が未形成のものである。
また、この繰出工程S2の実施は、前記搬送停止工程S1において、前記昇降部材11が上昇限まで上昇しきったことを上昇限センサ7bが感知した場合、即ち、張力調整装置7が蓄積していた開封部20を形成済みのフィルム部材2のほとんどを下流工程に搬送した後である。
【0036】
具体的に、この繰出工程S2においては、前記繰出装置6の一対のロール14,15が、前記フィルム部材2を間に挟んだ状態で回転して、該フィルム部材2を前記形成工程S4を行う加工位置、即ち、前記加工スペースに配設した一対の支持ロール17,18の間に向けて繰出す。なお、繰出された前記フィルム部材2は、一対の支持ロール17,18の間に架け渡され、該フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位は、一対の支持ロール17,18によって下方側から支持され、且つこれらの一対の支持ロール17,18の間において、上方且つ水平に浮いた状態となる。
一方で、前記繰出装置6の繰出センサ16が、前記フィルム部材2に印刷されたレジマーク26を検出した場合には、前記一対のロール14,15が回転を停止して、フィルム部材2の前記加工位置への繰出しを停止する。
ここで、図2に示すように、前記フィルム部材2のレジマーク26は、該フィルム部材2の幅方向の両側部分における、吸収性物品の包装体の形状や大きさに合わせて印刷されている複数のパターン21のそれぞれに対応する位置に配設されている。そのため、前記繰出装置6は、前記繰出センサ16がレジマーク26を検出した場合には、前記フィルム部材2における開封部20の形成対象部位が、形成工程S4を行うための適正な加工位置に配置されるようにフィルム部材2の繰出し長さを調整している。
なお、前記繰出装置6は、前記フィルム部材2の繰出しが停止した場合には、前記形成工程S4で使用する形成装置1の加工装置3における制御装置23に対して、前記フィルム部材2の繰出しが終了して、該フィルム部材2における開封部20の形成対象部位が形成工程S4を行うための加工位置に達し、且つ位置決めが行われた旨の信号を出力する。
【0037】
そして、前記繰出工程S2の開始後又は該繰出工程S2と同時に、前記張力調整工程S3を実施する。
前記張力調整工程S3は、前記張力調整装置7により行い、前記形成工程を行う加工位置から送出されたフィルム部材2、即ち、既に開封部20が形成されて、前記加工位置よりも搬送方向MDの下流側に位置するフィルム部材2の長さ方向に対する張力を、前記張力調整装置7によって調整する。これにより、前記フィルム部材2の加工位置である、前記一対の支持ロール17,18の間、即ち、形成工程S4が実施される位置におけるフィルム部材2の張力を調整する。
具体的に、この張力調整工程S3における前記張力調整装置7でのフィルム部材2の張力の調整は、前記フィルム部材2を、張力調整用の前記複数の上段側のロール9と複数の下段側のロール10との間に上下方向に交互に架け渡した状態において、前記下段側のロール10が回転自在に取付けられている張力調整用の昇降部材11を上下方向に昇降させることにより行う。
【0038】
この実施の形態においては、前記形成工程S4での加工位置におけるフィルム部材2の張力は、前記ストッパ部材8によってフィルム部材2の下流工程への搬送が停止している状態において、前記昇降部材11を昇降させることにより、前記加工位置におけるフィルム部材2に、該フィルム部材2の長さ方向に一定の張力を作用させている。
なお、この実施の形態の場合は、前述のように、搬送停止工程S1の実施前、即ち、下流工程からのフィルム部材2の引き出しの要請に応じて該フィルム部材2を下流工程に搬送する際に、前記張力調整装置7における昇降部材11を上昇限まで上昇させているため、張力調整工程S3においては、前記昇降部材11を下降させて、前記フィルム部材2に対して、該フィルム部材2の長さ方向に一定大きさの張力が作用するようにしている。
【0039】
このとき、この張力調整工程S3においては、後工程である前記形成工程S4を実施する際に、加工位置でのフィルム部材2に、該フィルム部材2の長さ方向に予め定めた張力が作用した状態が維持されるようにしている。
このように、張力調整工程S3において前記フィルム部材2の長さ方向の張力を調整して、後工程である前記形成工程S4を、該フィルム部材2に対して、そのフィルム部材2の長さ方向に予め定めた張力を作用させながら実施できるようにしたのは、形成工程S4において確実にミシン目の形成を含む切断部分の形成や、ハーフカットの形成を行うと共に、切断部分を形成した場合に、その切断部分を広げて確実に隙間が生じるようにするためである。
【0040】
即ち、前記フィルム部材2に、そのフィルム部材2の長さ方向の張力が作用している場合には、前記加工位置におけるフィルム部材2の上面側がほぼ水平に緊張した状態となり、該フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位が、撓みがないほぼ水平な平面状となる。
これにより、形成工程S4において、前記フィルム部材2の適正な位置にレーザを照射し易くなるため、該フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位に、正確且つ安定的にレーザを照射することができ、所望の位置に確実に開封部20を形成することができる。
【0041】
また、前記フィルム部材2に、そのフィルム部材2の長さ方向の張力が作用した状態で、前記形成工程S4で前記開封部20を形成した場合において、該フィルム部材2を切断(ミシン目の形成に伴う切断含む)すると、フィルム部材2の長さ方向に切断した場合を除き、その切断部分の開口縁がフィルム部材2の長さに引っ張られて適度に開いた状態が維持され、該切断部分に定常的に隙間が形成された態様となる。この切断部分の隙間は、フィルム部材2により吸収性物品を内部に収容する包装体を形成した場合には、包装体の内部が外部とを連通する空間となる。
この点に関して詳しく説明すると、既に述べたように、近年においては、前記吸収性物品に香料等を塗布して芳香を付与したものが広く存在するが、需要者は吸収性物品がどのような芳香を放っているのか、あるいは無香料であるか等、吸収性物品の香りに興味を惹かれることが多い。そのため、包装体の内部に収容されている吸収性物品の香りが包装体の外方に流出して、需要者が吸収性物品の香りを確認することできることが望ましい。
このとき、前記フィルム部材に対して、その長さ方向に適切な張力が作用していない場合には、切断したとしてもその切断部分の開口縁は相互に接した状態で閉じていることが多い。そのため、吸収性物品を内部に収容する包装体を形成したとしても、通常の状態においては、包装体が収容している吸収性物品の香りが外部に流出しにくく、需要者が吸収性物品の香りを確認しづらい状態となる。
しかしながら、本発明においては、フィルム部材の長さ方向に張力を作用させながら、該フィルム部材における開封部の形成対象部位に対してレーザによる切断を行うため、切断部分の開口縁が開いて定常的に隙間が形成された態様となり、この隙間を通して包装体内に収容した吸収性物品の香りが外部に流出し、これにより、需要者はきわめて容易に吸収性物品の香りを確認することができる。
【0042】
ここで、本発明において、前記フィルム部材に作用させる張力は、包装体が包装する吸収性物品の大きさや、フィルム部材の素材、開封部の形状や大きさ等にもよるが、前記形成工程を実施時に、該フィルム部材の長さ方向、即ち、搬送方向に沿う方向に0.01〜1N/mm程度とすることが好ましい。
前記フィルム部材の長さ方向に作用させる張力が0.01N/mm未満であると、張力が小さすぎて前記フィルム部材における前記開封部の形成対象部位の張りが不足し、ほぼ水平な平面状となりにくい上、フィルム部材を切断した場合にその切断部分の開口縁が開きづらく、隙間ができにくい。
一方で、前記フィルム部材の長さ方向に作用させる張力が1N/mmを超えると、ミシン目を含む切断を行った場合には、その切断部分を起点としてフィルム部材が裂け、切断範囲が拡がってしまう可能性がある。また、ハーフカットを施した場合には、そのハーフカットを施した部分が伸びすぎて裂けてしまい、切断に至る可能性がある。
【0043】
また、本発明においては、前記フィルム部材に作用させる張力は、搬送方向に沿う方向に0.02〜0.7N/mmの程度とすることが、さらに好ましい。
前記フィルム部材の長さ方向に作用させる張力が0.01N/mm以上、0.02N/mm未満の範囲では、前記フィルム部材における前記開封部の形成対象部位は、ほぼ水平な平面状となり、フィルム部材を切断した場合にはその切断部分の開口縁も一応は開き、隙間が形成される。しかしながら、開口縁の開きが不足して、レーザによって溶断した部分が溶着し、開口縁の一部又は全部が再び閉じてしまう可能性がある。
一方で、前記フィルム部材の長さ方向に作用させる張力が0.7N/mmを超え、1N/mm以下の範囲であると、フィルム部材にミシン目を含む切断を行った場合やハーフカットを施した場合であっても、フィルム部材が裂けたりすることはない。しかしながら、フィルム部材の素材や厚み等によっては、開封部の形状が変形する可能性が考えられる。
【0044】
さらに、本発明においては、前記フィルム部材に作用させる張力は、搬送方向に沿う方向に0.025〜0.05N/mmの程度とすることが、より好ましい。
前記フィルム部材の長さ方向に作用させる張力をこの範囲とすることにより、開封部の形状の変化を防ぎつつ、適切な形状の切断部分の形成やハーフカットを行うことができるという利点がある。
また、前記フィルム部材の長さ方向に作用させる張力が0.02N/mm以上、0.025N/mm未満の範囲では、切断部分において、包装体内に収容された吸収性物品の香りを外部に流出させるのに必要な開口縁の開きが不足する可能性がある。
一方で、前記フィルム部材の長さ方向に作用させる張力が0.05N/mmを超え、0.7N/mm以下の範囲であると、切断部分の開口縁の開きが必要以上に大きくなる可能性がある。
【0045】
前記張力調整工程S3の実施後、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位に対してレーザによる切断及び/又はハーフカットを行って前記開封部20を形成する、形成工程S4を実施する。
前記形成工程S4は、前記加工装置3を用いて、前記フィルム部材2の搬送を停止した状態において、該フィルム部材2に対して、そのフィルム部材2の長さ方向に張力を作用させながら行う。
また、前記開封部20の形成は、前記加工装置3の制御装置23に、該開封部20の形状や構成(ミシン目、ハーフカット、ミシン目以外の切断の位置や形状)等のデータを入力して、該制御装置23によりレーザーアンプ22の出力やレーザヘッド21がレーザを照射する方向等を制御し、フィルム部材2に対して加工を施すことにより行う。
【0046】
この実施の形態においては、前記形成工程S4は、図2図5に示すような開封部20、即ち、該開封部20の幅方向の中心を通る中心軸線L1を基準とした線対称の形状に形成されて、前記中心軸線L1上に設けられた、開封部20を指でつまみ上げるための中央部36と、該中央部36を挟んだ両側に設けられた一対の側部37,38とを備えた、中央部36に向かって先細る形状の開封部20を形成するための加工を実施する。
具体的には、ミシン目の形成に伴う切断と、ハーフカット、開封部20を開封するに際して指で摘み上げる部分を形成するための、ミシン目形成以外の切断との3種類の加工を施す。
また、この実施の形態における前記形成工程S4は、主に、前記フィルム部材2の長さ方向と交差する方向に向けて該フィルム部材2の切断やハーフカットを行う。これにより、該フィルム部材2に対して切断を行った場合に、フィルム部材2に対して、該フィルム部材2の長さ方向に作用させている張力が、この切断部分に作用して、切断部分については開口縁が開き易くなり、隙間が形成され易くなる。
【0047】
さらに、前記形成工程S4は、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位を、地面あるいは形成装置1を載置している載置面よりも上方且つ水平に浮かせた状態で行う。これにより、前記加工装置3のレーザヘッド21からのレーザの照射を行い易くなるため、切断やハーフカットを安定的に行うことが可能となる。
なお、前述のように、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位は、一対の支持ロール17,18の間に架け渡されているため、これらの一対の支持ロール17,18の間において水平状態で宙に浮いた状態が維持されている。
【0048】
前記形成工程S4を実施するに際しては、次のような手順でフィルム部材2に対して開封部20を形成する。
即ち、図3に示すように、前記形成工程S4は、前記フィルム部材2に対して、前記開封部20の一方の側部、即ち第1の側部37(図3中の右側に位置する側部)に相当する部分にミシン目の形成やハーフカットを行った後、他方側の側部、即ち第2の側部38(図3中の左側に位置する側部)に相当する部分にミシン目の形成やハーフカットを行い、最後に前記中央部36に相当する部分を摘みの形状に合わせて切断する。
【0049】
具体的に、第1段階として、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位であって、前記開封部20の第1の側部37に相当する部分に、ミシン目の形成及びハーフカットを行う。
このとき、まず、前記第1の側部37における前記中心軸線L1とは相反する側の端部41に相当する部分に対して、ハーフカットを行う(図3中の(1)の部分)。
そして、前記端部41をハーフカットにより形成した後、該端部41から前記中央部36に近づく方向に延びる傾斜部分42を、前記中央部36方向に向かってハーフカットやミシン目の形成を行うことにより形成する(図3中の(2)の部分)。
図3及び図4に示すように、この傾斜部分42は、略L字状に屈曲した部分43が、一定の間隔で一直線状に並んだ構成となっていて、このL字状に屈曲した部分43のほとんどはハーフカットにより形成する。
さらに、図4及び図5に示すように、前記L字状に屈曲した部分43におけるハーフカット部分43aの一部、具体的には、L字状部分43における屈曲部分については切断して、フィルム部材2の厚さ方向に貫通した貫通部分43bを形成する。したがって、前記傾斜部分42は、全体として、一定の間隔で切断されたミシン目が形成された態様となる。
なお、前記第1の側部37の形成に際しては、該第1の側部37の形状や構造に応じて、前記加工装置3のレーザヘッド21からのレーザの照射方向や出力を変更しながら、ハーフカット及びミシン目の形成を連続的に行う。
これにより、第1の側部37が、ミシン目及びハーフカットにより形成されることとなる。また、このとき、フィルム部材2の長さ方向への張力により、前記ミシン目の貫通部分43bは、切断時に比べて開口縁が開き、隙間が形成されることとなる。
【0050】
次に、第2段階として、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位であって、前記開封部20の第2の側部38に相当する部分に、ミシン目の形成及びハーフカットを行う。
まず、前記第2の側部38における前記中心軸線L1とは相反する側の端部46に相当する部分に対してハーフカットを行う(図3中の(3)の部分)。
そして、前記端部46をハーフカットにより形成した後、該端部46から前記中央部36に近づく方向に延びる傾斜部分47を、前記中央部36方向に向かってハーフカット及びミシン目の形成を行うことにより形成する(図3中の(4)の部分)。
この傾斜部分47については、前記第1の側部37と同様に、略L字状(あるいは略く字形状)に屈曲したL字状部分48が、一定の間隔で一直線状に並んだ構成となっていて、このL字状部分48のほとんどはハーフカットにより形成する。
さらに、前記第1の側部37と同様、前記L字状部分48におけるハーフカット部分の屈曲部分については切断して、フィルム部材2の厚さ方向に貫通した貫通部分を形成するため、前記傾斜部分47は、全体として、一定の間隔で切断されたミシン目が形成された態様となる。
なお、前記第2の側部38の形成に際しては、該第2の側部38の形状や構造に応じて、前記加工装置3のレーザヘッド21からのレーザの照射方向や出力を変更しながら、ハーフカット及びミシン目の形成を連続的に行う。
これにより、第2の側部38が、ミシン目及びハーフカットにより形成されることとなる。また、このとき、フィルム部材2の長さ方向への張力により、前記ミシン目の貫通部分は、切断時に比べて開口縁が開き、隙間が形成されることとなる。
【0051】
最後に、第3段階として、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位であって、開封部20の前記中央部36に相当する部分を、該開封部20の摘みの形状に切断する(図3中の(5)の部分)。
この中央部36の形成は、前記第2の側部38を形成後に行い、該第2の側部38側の端部から前記第1の側部37側の端部に向け、前記フィルム部材2に対して前記加工装置3のレーザヘッド21からのレーザを連続的に照射し、該フィルム部材2の厚さ方向に貫通するように切断を行う。
これにより、前記中央部36が形成されると共に、フィルム部材2の長さ方向への張力により、切断部分の開口縁が開き、隙間が形成されることとなる。
以上により、開封部20の形成が完了する。
前記開封部20をこのような順序、即ち、第1の側部37と第2の側部38とをそれぞれ独立した状態で形成した後に、中央部36を形成することにより、フィルム部材2に、該フィルム部材2の長さ方向に作用している張力における、フィルム部材2の幅方向の偏りが軽減されるため、前記開封部20の形成を、フィルム部材2が破れたり裂けたりすることなく安定的に行うことができる。
【0052】
このように、この実施の形態の吸収性物品用包装体における開封部の形成方法によれば、前記形成工程S4において、フィルム部材2の搬送を停止した状態において、該フィルム部材2の長さ方向に張力を作用させながら、前記フィルム部材2における開封部20の形成対象部位に対して、レーザによる切断(ミシン目形成のための切断を含む)やハーフカットを行う。
これにより、前記フィルム部材2に対して、ミシン目の形成を含む切断やハーフカットを容易且つ確実に行うことができる。また、前記フィルム部材2に張力を作用させながら該フィルム部材2を切断するため、その切断部分がある程度開いて隙間が空いた状態とすることができ、吸収性物品の香りが包装体の外部に流出しやすいため、吸収性物品の香りを確認し易い。
【0053】
前記実施の形態においては、開封部20の形成に際しては、第1の側部37の全体を形成した後、第2の側部38の全体を形成し、最後に中央部36に形成するようにしていた。
しかしながら、開封部の形成は、フィルム部材に作用する該フィルム部材の長さ方向の張力が、フィルム部材の幅方向に関して偏りがでないように行うことができれば、開封部の各部を任意の順番で形成することができる。
【0054】
例えば、図6に示すように、前記実施の形態と同様の形状及び構成の、中心軸線L2上に位置する中央部66、第1及び第2の側部67,68を有する開封部60をフィルム部材2に形成するに際して、次のような順番で形成することができる。
まず、前記フィルム部材2における前記開封部60の形成対象部位であって、該開封部60の第1の側部67に相当する部分における、中心軸線L2とは相反する側の端部71に相当する部分に対して、ハーフカットを行う(図6中の(1)の部分)。
そして、前記端部71をハーフカットにより形成した後、今度は、前記開封部60の第2の側部68に相当する部分における、前記中心軸線L2とは相反する側の端部76に相当する部分に対して、ハーフカットを行う(図6中の(2)の部分)。
前記端部76をハーフカットにより形成した後、第1の側部67における傾斜部分72のうちの前記端部71側の半部72aを、前記中央部66方向に向かってハーフカット及びミシン目の形成を行うことにより形成する(図6中の(3)の部分)。
その次に、第2の側部68における傾斜部分77のうちの前記端部76側の半部77aを、前記中央部66方向に向かってハーフカット及びミシン目の形成を行うことにより形成する(図6中の(4)の部分)。
さらに、第1の側部67における傾斜部分72のうちの前記中央部67側の半部72bを、前記中央部66方向に向かってハーフカット及びミシン目の形成を行うことにより形成する(図6中の(5)の部分)。
その後、第2の側部68における傾斜部分77のうちの前記中央部67側の半部77bを、前記中央部66方向に向かってハーフカット及びミシン目の形成を行うことにより形成する(図6中の(6)の部分)。
最後に、前記開封部60の前記中央部66に相当する部分を、第2の側部68側から、前記第1の側部67側の端部に向けて連続的に切断する(図6中の(7)の部分)。
【0055】
以上により、開封部60の形成が完了するが、この場合であっても、該開封部60を、即ち、第1の側部67と第2の側部68とをそれぞれ独立した状態で形成した後に、中央部66を形成しているため、前記実施の形態と同様に、フィルム部材2に、該フィルム部材2の長さ方向に作用している張力における、フィルム部材2の幅方向の偏りが軽減される。したがって、前記開封部の形成を、フィルム部材が破れたり裂けたりすることなく安定的に行うことができる。
なお、この場合であっても、フィルム部材の長さ方向への張力により、切断部分の開口縁が開き、隙間が形成されるため、この点においても、前記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
前記実施の形態においては、開封部20が、中央部36側に行くに従って次第に先細る形状となっているが、開封部の形状については、包装体内の吸収性物品を取り出すことができれば、任意の形状とすることができる。
また、前記開封部20は、第1及び第2の側部37,38を、ハーフカット及びミシン目により形成しているが、ハーフカットのみ、あるいはミシン目のみにより形成してもよい。さらに、開封部の中央部についても、ミシン目のみ、又はハーフカットのみ、あるいはミシン目とハーフカットとの両方とのより形成してもよい。
【0057】
前記実施の形態においては、前記形成工程S4において、主に、前記フィルム部材2の長さ方向と交差する方向に向けて該フィルム部材2の切断やハーフカットを行うようにしているが、フィルム部材の切断やハーフカットの方向については、任意に設定することができる。
また、前記形成工程S4においては、前記フィルム部材2における前記開封部20の形成対象部位を上方且つ水平に浮かせた状態で行っているが、形成工程は必ずしもこのような状態で行う必要はなく、前記フィルム部材に対して開封部を適切に形成することができれば、形成工程はどのような状態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 形成装置
2 フィルム部材
3 加工装置
4 搬送装置
5 原反アキューム装置
6 繰出装置
7 張力調整装置
8 ストッパ装置
17,18 支持ロール
20 開封部
図1
図2
図3
図4
図5
図6