(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された吸収体と、を具備し、前記吸収体が、吸収体コアと前記吸収体コアを包むコアラップシートとを備え、前記表面シートと前記コアラップシートの前記表面シート側の面とを接合する接着剤を更に具備する、吸収性物品であって、
前記表面シートは、
長手方向と、前記長手方向に直交する幅方向と、前記長手方向及び前記幅方向に直交する厚み方向とを有し、
前記長手方向に延び、前記幅方向に所定の間隔で互いに平行に並んだ複数の融着部と、
前記複数の融着部のうちの隣り合う融着部の間において、前記長手方向に延び、前記厚み方向における前記融着部の肌側及び非肌側に突出した複数の突出部と、を備え、
前記接着剤は、細線の形状を有し、所定パターンを形成しており、
前記所定パターンは、
前記幅方向に沿って延び、少なくとも一つの融着部と、前記少なくとも一つの融着部に隣接する突出部とを接続する横方向部分であって、前記所定パターンを形成する接着剤の細線の任意の点における接線が前記幅方向に平行な仮想線に対して成す角が45°以内である横方向部分と、
前記長手方向に沿って延び、一端を前記横方向部分の一端に連結される縦方向部分であって、前記所定パターンを形成する接着剤の細線の任意の点における接線が前記幅方向に平行な仮想線に対して成す角が45°より大きい縦方向部分と、をそれぞれ少なくとも一つ含み、
前記所定パターンは、複数個、前記長手方向に沿って並び、前記長手方向に沿って連続的に延びる所定パターン列を形成しており、
前記所定パターン列は、複数列、前記幅方向に互いに平行に並んでおり、
前記所定パターン列と重なる前記突出部において、前記長手方向に隣り合う前記横方向部分同士間の長手方向の距離のうち最小の距離は、前記突出部及び前記融着部の一組分の前記幅方向の距離未満である、
吸収性物品。
前記所定パターン列と重なる前記突出部において、前記長手方向に隣り合う前記横方向部分同士間の長手方向の距離のうち最大の距離は、前記突出部及び前記融着部の一組分の前記幅方向の距離未満である、
請求項1に記載の吸収性物品。
前記コアラップシート側の前記突出部における前記繊維同士が融着している交点の密度は、前記コアラップシート側と反対側の前記突出部における前記繊維同士が融着している交点の密度よりも高い、
請求項6に記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記凹凸構造(畝溝構造)を有する表面シートをエンボス加工で形成した場合、幅方向において、凹部は繊維同士が融着して高密度で固着しているので伸縮性をほとんど有さないが、凸部は繊維同士が融着しておらず低密度で変形容易なので伸縮性を有している。したがって、上記構成を有する表面シートは幅方向において伸縮性を有している。そのような表面シートが吸収性物品に使用され、吸収性物品が使用により幅方向に引っ張られると、表面シートも幅方向に引っ張られて、すなわち幅方向に引っ張り荷重を受けて幅方向に伸ばされる。ここで、吸収体は吸収体コアと吸収体コアを包むコアラップシートとを含んでおり、表面シートと表面シート側のコアラップシート(以下、単に「コアラップシート」ともいう。)とは接着剤で接合されている。したがって、表面シートが幅方向に伸ばされることに伴い、コアラップシートも伸ばされることになる。ところが、コアラップシートは吸収性や拡散性などの要請によりティッシュのような材料で形成されており、そのような材料は一般に伸縮性がほとんどないため、表面シートほどには伸びることができない。そのため、表面シートが伸び易く、その伸長量が大き過ぎると、コアラップシートは、十分に伸びることができないため、表面シートの伸びに追従できず、破断してしまうおそれがある。そうなると、高吸収性ポリマーが吸収体コアの外側に出て、更に表面シートの外側に出てきてしまい吸収体の吸収量が低下したり、表面シートと吸収体との間に空間が生じてしまい吸収体の吸収速度が低下したりするなど、吸収性物品の吸収性能が低下してしまう。
【0007】
本発明の目的は、吸収性物品において、長手方向に延びる凹部と凸部とが交互に並んだ表面シートを備えた吸収性物品の特性と、表面コアラップシートの破断の抑制とを両立させることが可能な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸収性物品は次のとおりである。
(1)表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された吸収体と、を具備し、前記吸収体が、吸収体コアと前記吸収体コアを包むコアラップシートとを備え、前記表面シートと前記コアラップシートの前記表面シート側の面とを接合する接着剤を更に具備する、吸収性物品であって、前記表面シートは、長手方向と、前記長手方向に直交する幅方向と、前記長手方向及び前記幅方向に直交する厚み方向とを有し、前記長手方向に延び、前記幅方向に所定の間隔で互いに平行に並んだ複数の融着部と、前記複数の融着部のうちの隣り合う融着部の間において、前記長手方向に延び、前記厚み方向における前記融着部の肌側及び非肌側に突出した複数の突出部と、を備え、前記接着剤は、細線の形状を有し、所定パターンを形成しており、前記所定パターンは、前記幅方向に沿って延び、少なくとも一つの融着部と、前記少なくとも一つの融着部に隣接する突出部とを接続する横方向部分であって、前記所定パターンを形成する接着剤の細線の任意の点における接線が前記幅方向に平行な仮想線に対して成す角が45°以内である横方向部分と、前記長手方向に沿って延び、一端を前記横方向部分の一端に連結される縦方向部分であって、前記所定パターンを形成する接着剤の細線の任意の点における接線が前記幅方向に平行な仮想線に対して成す角が45°より大きい縦方向部分と、をそれぞれ少なくとも一つ含み、前記所定パターンは、複数個、前記長手方向に沿って並び、前記長手方向に沿って連続的に延びる所定パターン列を形成しており、前記所定パターン列は、複数列、前記幅方向に互いに平行に並んでおり、前記所定パターン列と重なる前記突出部において、前記長手方向に隣り合う前記横方向部分同士間の長手方向の距離のうち最小の距離は、前記突出部及び前記融着部の一組分の前記幅方向の距離未満である、吸収性物品。
【0009】
本吸収性物品では、長手方向に延びる融着部(凹部)及び突出部(凸部)が交互に配置された表面シートを用いると共に、伸長し難い融着部(凹部)に伸長し易い突出部(凸部)を接着剤の横方向部分で固定している。接着剤及び融着部は伸長し難いため、突出部は伸長しようとしても伸長困難になり、それゆえ表面シートは全体として伸長困難になる。それにより、長手方向に延びる凹部と凸部とが交互に並んだ表面シートを備えた吸収性物品の特性を利用しつつ、表面シートへの引張荷重に対する表面シートの伸長を抑制して、コアラップシートの破断の抑制を可能としている。言い換えると、表面シートの幅方向の伸縮性をある程度犠牲にして、コアラップシートの破断を抑制している。
ただし、長手方向に隣り合う横方向部分同士の間隔が広過ぎると、横方向部分の近傍の領域では突出部が伸長することを抑えられるが、各横方向部分から遠い、例えば長手方向における横方向部分同士の中間の領域では突出部が幅方向に伸長し過ぎることがあり得る。その場合、突出部の幅方向への伸長により、隣接する所定パターン列における接着剤の縦方向部分が幅方向に引っ張られ移動し、その縦方向部分の移動にコアラップシートが引き摺られ、幅方向に引っ張られて、破断するおそれがある。すなわち、長手方向に隣り合う横方向部分同士の間隔が広過ぎると、突出部の伸長を十分に抑えられないおそれがある。
そこで、本吸収性物品では、接着剤の所定パターン列における長手方向に隣り合う横方向部分同士の長手方向の最小の距離を突出部及び融着部の一組分の幅方向の幅未満に狭くしている。このように横方向部分同士の間隔を狭くすることにより、横方向部分同士の中間の領域であっても表面シートが伸長し過ぎることはなく、突出部の伸長を十分に抑えることができ、それにより表面シートの伸長を十分に抑えることができる。その結果、表面シートが幅方向に引っ張られても、表面シートが幅方向にあまり伸長せず、すなわちコアラップシートもほとんど伸長されないためコアラップシートが破断することを抑制することができる。
また、本吸収性物品では、上記の接着剤の所定パターン(列)により、伸縮性をある程度犠牲にしているが、その分、伸長に伴い突出部が潰れて薄くなるという事態を抑制できるので、幅方向に引張荷重がかかったときでも、伸長の程度が抑制され、凹部と凸部とが交互に並んだ表面シートを備えた吸収性物品の特性を維持することができる。
【0010】
(2)前記所定パターン列と重なる前記突出部において、前記長手方向に隣り合う前記横方向部分同士間の長手方向の距離のうち最小の距離は、前記突出部及び前記融着部の一組分の前記幅方向の距離未満である、上記(1)に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、更に、横方向部分同士の長手方向の最大の距離を突出部及び融着部の一組分の幅方向の幅未満に狭くしている。このように横方向部分同士の間隔を狭くすることにより、横方向部分同士の中間の領域の伸長、延いては突出部の伸長をより確実に抑えることができる。それにより表面シートの伸長を十分に抑えることができ、コアラップシートが破断することを抑制することができる。
ただし、長手方向における横方向部分同士の中間の領域でコアラップシートが部分的に破断した場合、横方向部分同士の距離が大きいと、破断が両側の横方向部分に達するまでに大きくなり過ぎて、細線状の接着剤では破断の伸展を止めることは困難になるおそれがある。
しかし、本吸収性物品では、上記のように横方向部分同士の間隔が狭くなっているので、破断が大きくなり過ぎる前に両側の横方向部分に達するので、細線状の接着剤でも破断の伸展を止めることができる。それにより、仮にコアラップシートの一部に破断が発生したとしても、破断を極めて狭い範囲に抑えることができるので、全体としての破断を抑制することができる。
【0011】
(3)前記コアラップシート側の前記突出部の繊維密度は、前記コアラップシート側と反対側の前記突出部の繊維密度よりも高い、上記(1)又は(2)に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、コアラップシート側の突出部の繊維密度が高いことにより、接着剤は、コアラップシート側の突出部に深く浸透し、コアラップシート側の突出部と非常に良く結着した状態で、コアラップシートと結着することができる。それにより、突出部の幅方向での伸長を接着剤でより確実に抑制することができ、それによりコアラップシートの破断をより確実に抑制することができる。
【0012】
(4)前記表面シートを構成する複数の繊維において、前記繊維同士の交点の少なくとも一部では前記繊維同士が融着している、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、繊維同士の交点において繊維同士が融着しているので、接着剤に加えて繊維同士の融着により、突出部の幅方向での伸長をより確実に抑制することができ、それによりコアラップシートの破断をより確実に抑制することができる。
【0013】
(5)前記突出部の前記幅方向の幅は、前記融着部の前記幅方向の幅よりも大きい、上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、突出部の幅方向の幅が大きいため、突出部の厚み方向の高さを高くすることができ、それにより凹部と凸部とが交互に並んだ表面シートを備えた吸収性物品の特性をより発揮することができる。したがって、表面シートを備えた吸収性物品の特性をより生かしつつ、表面シートの伸長を抑えて、コアラップシートの破断を抑制することができる。
【0014】
(6)前記コアラップシート側の前記突出部における前記厚み方向の高さは、前記コアラップシート側と反対側の前記突出部における前記厚み方向の高さよりも低い、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、突出部において、コアラップシート側の厚み方向の高さが低いことにより、コアラップシート側の表面シートの凹凸が小さくなるため、コアラップシート側の表面シートに接着剤がより確実に結着できる。その結果、表面シートの伸長をより確実に抑制することができ、それによりコアラップシートの破断をより確実に抑制することができる。
【0015】
(7)前記コアラップシート側の前記突出部における前記繊維同士が融着している交点の密度は、前記コアラップシート側と反対側の前記突出部における前記繊維同士が融着している交点の密度よりも高い、上記(6)に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、突出部において、コアラップシート側における繊維同士が融着している交点の密度が高い、すなわち繊維同士の相対的な移動がし難いことにより、突出部の伸長を抑制することができる。それにより、コアラップシートの破断をより確実に抑制することができる。
【0016】
(8)前記接着剤は、一つ又は複数の前記所定パターンにより、前記細線状の接着剤により囲まれた複数の閉領域を形成している、上記(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、幅方向の伸長に対して、突出部の伸長する領域を閉領域という狭い領域内に留まらせることができる。その結果、突出部の伸長が制限されるので、突出部の幅方向での伸長をより確実に抑制することができる。また、突出部の伸長によるコアラップシートを破断させる力の及ぶ範囲を、その閉領域に閉じ込めることができる。すなわち、突出部に破断が発生したとしても閉領域内に留まらせることができる。それによりコアラップシートの破断をより確実に抑制することができる。
【0017】
(9)前記所定パターン列は、互いに重なるように、前記幅方向に互いに平行に並んでいる、上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、所定パターン列が互いに重なることで、突出部において、接着剤の存在する密度が高まるため、突出部の幅方向での伸長をより確実に抑制することができる。加えて、所定パターン列が互いに重なることで、複数の閉領域を形成することができる。それにより、突出部の伸長する領域を閉領域内に留まらせることができる。これらにより、表面シートの伸長が制限されるので、コアラップシートの破断をより確実に抑制することができる。
【0018】
(10)前記所定パターン列の前記所定パターンは、互いに重なるように、前記長手方向に沿って並んでいる、上記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、所定パターンが互いに重なることで、突出部において、接着剤の存在する密度が高まるため、突出部の幅方向での伸長をより確実に抑制することができる。加えて、所定パターンが互いに重なることで、複数の閉領域を形成することができる。それにより、突出部の伸長する領域を閉領域内に留まらせることができる。これらにより、表面シートの伸長が制限されるので、コアラップシートの破断をより確実に抑制することができる。
【0019】
(11)前記所定パターン列は、オメガパターン、ウェイブパターン又はスパイラルパターンを有する、上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、所定パターン列がオメガパターン、ウェイブパターン又はスパイラルパターンを有することで、細線状の接着剤を表面シートとコアラップシートとの間に満遍なく配置することができる。それにより、表面シートの幅方向での伸長を満遍無く抑制することができ、それにより、表面コアラップシートの破断をより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、吸収性物品において、長手方向に延びる凹部と凸部とが交互に並んだ表面シートを備えた吸収性物品の特性と、表面コアラップシートの破断の抑制とを両立させることが可能な吸収性物品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施の形態に係る吸収性物品について図面を参照して説明する。本発明の吸収性物品の種類及び用途はその例に限定されるものではなく、例えば、使い捨ておむつ(テープ型、パンツ型)、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、汗取りシート等の衛生用品・生理用品が挙げられ、これらはヒトを対象としてもよいし、ペット等のヒト以外の動物を対象としてもよい。本発明の吸収性物品が吸収対象とする液体は特に限定されるものではなく、例えば、着用者の液状排泄物、体液等が挙げられる。以下では、使い捨ておむつ(テープ型)を例として、本実施の形態に係る吸収性物品について説明する。
【0023】
なお、本明細書において、特に断りのない限り、展開して平坦に広げた状態の吸収性物品を、上面側から厚さ方向に見ることを単に「平面視」という。さらに、本明細書において、「肌側」とは、吸収性物品の着用者が吸収性物品を着用したときに、吸収性物品の厚さ方向において相対的に着用者の肌面に近い側のことを意味し、また、「非肌側」とは、吸収性物品の着用者が吸収性物品を着用したときに、吸収性物品の厚さ方向において相対的に着用者の肌面から遠い側のことを意味する。
【0024】
図1及び
図2は吸収性物品1(使い捨ておむつ)を示す図であり、具体的には
図1は吸収性物品1を展開した状態での平面図を示し、
図2は
図1のII−II’の拡大断面図を示している。吸収性物品1は、長手方向Lと、長手方向Lに直交する幅方向Wと、長手方向L及び幅方向Wに直交する厚さ方向Tを有しており、着用者の肌側に位置する液透過性の表面シート2と、着用者の非肌側に位置する液不透過性の裏面シート3と、これら両シートの間に位置する吸収体4と、を備えている。吸収体4と表面シート2及び裏面シート3とはそれぞれ接着剤により接合されている。
【0025】
ただし、表面シート2、裏面シート3及び吸収体4の長手方向、幅方向及び厚み方向は、それぞれ吸収性物品1の長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tと一致する。したがって、表面シート2、裏面シート3及び吸収体4において、長手方向、幅方向及び厚み方向に対してそれぞれ長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを用い、厚さ方向で相対的に着用者の肌面に近い側及び遠い側に対してそれぞれ肌側及び非肌側を用いることとする。
【0026】
吸収性物品1は、更に、一対の側部シートからなる一対の防漏壁部5、5と、着用者の大腿部に当接する左右の脚周り部をそれぞれ長手方向Lに伸縮させるためのゴムのような弾性材からなる伸縮部材6と、着用時に使い捨ておむつの腹部領域と背側領域を連結するための連結テープ7とを備えている。吸収性物品1は、裏面シート3の非肌側に、裏面シート3を補強すると共に、その手触りを良くするための外装シート8を更に備えている。外装シート8は、裏面シート3の非肌側に接合された状態で、一対の防漏壁部5、5とその周縁部分において相互に接合されている。なお、一対の防漏壁部5、5の各々をそれぞれ長手方向Lに伸縮させるための伸縮部材が一対の防漏壁部5、5の各々に配置されていてもよい。
【0027】
裏面シート3は、吸収体4の非肌側に設けられており、排出された排泄液の透過を防止して肌着や衣服等に漏れ出るのを防止する。なお、裏面シート3は、排泄液等の液体を透過しないものの、所定の通気性を有している。このように裏面シートが通気性を有していると、吸収体から非肌側に放出される湿気を、裏面シートを介して放出させることができ、吸収性物品内に或いは吸収性物品と着用者の肌面との間に留まる湿気を低減できる。また、本実施の形態では、裏面シート3は、表面シート2との間に吸収体4を挟んだ状態で、表面シート2とその周縁部分において相互に接合されており、排泄液等の液体などが外側へ漏れ出さないように構成されている。
【0028】
裏面シート3の材料としては、例えば、防水処理を施した不織布(例えば、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等)、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート等が挙げられる。裏面シート3の材料、厚み、目付、密度等は、吸収体4に吸収・保持される液状排泄物の漏れを防止可能な範囲で適宜調整することができる。
【0029】
吸収体4は、尿などの排泄液を吸収するものであり、排泄液を吸収・保持する吸収性材料を含有したものを用いている。また、この吸収体4は、平面視で長手方向Lに長い略矩形状に形成されており、且つ一定の厚さを有している。なお、他の形状、例えば平面視で、長手方向Lの両端側が長手方向Lの外方向きに凸となるように湾曲し、表面シート2や裏面シート3よりも小さな略長円形状に形成されていてもよい。本実施の形態における吸収体4は、表面シート側、すなわち肌側の面及び裏面シート側、すなわち非肌側の面においていずれも平坦な形状を有している。
【0030】
吸収体4は、着用者の肌側に位置する液透過性の表面コアラップシート401と、着用者の非肌側に位置する液透過性又は液不透過性の裏面コアラップシート402と、これら両シートの間に位置し、吸収体材料で形成された吸収体コア403とを備えている。本実施の形態では、表面コアラップシート401と裏面コアラップシート402とは、両シートの間に吸収体コア403を挟んだ状態で、それらの周縁部分において相互に接合されて、吸収性材料等が外側へ漏れ出さないように構成されている。なお、表面コアラップシート401と裏面コアラップシート402とは、一枚の部材で吸収体コア403を包むようにして構成されてもよい。
【0031】
吸収体コア403に含有される吸収性材料は、着用者の液状排泄物を吸収・保持可能である限り特に限定されない。吸収性材料としては、例えば、吸水性繊維及び高吸水性材料(例えば、高吸水性樹脂、高吸水性繊維等)が挙げられる。吸収性材料は、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、その他の各種改良剤を含有してもよい。
【0032】
吸水性繊維としては、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ(例えば、砕木パルプ、リファイナーグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;クラフトパルプ、サルファイドパルプ、アルカリパルプ等の化学パルプ;半化学パルプ等);木材パルプに化学処理を施して得られるマーセル化パルプ又は架橋パルプ;バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えばコットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース;アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース等が挙げられるが、コストが低く、成形しやすいこと点から、粉砕パルプが好ましい。
【0033】
高吸水性材料としては、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高吸水性材料が挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸水性材料としては、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられ、合成ポリマー系の高吸水性材料としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸水性樹脂(Superabsorbent Polymer:SAP)等が挙げられるが、これらのうちポリアクリル酸塩系(特に、ポリアクリル酸ナトリウム系)の高吸水性樹脂が好ましい。高吸水性材料の形状としては、例えば、粒子状、繊維状、鱗片状等が挙げられる。
【0034】
吸収体コア403の厚み、坪量等は、特に制限されず、吸収体4(例示:使い捨ておむつ)が備えるべき特性(例えば、吸収性、強度、軽量性等)に応じて適宜調整することができる。例えば、吸収体4の厚みは、通常0.1〜15mmの範囲内であり、好ましくは1〜10mmの範囲内であり、坪量は、通常20〜1000g/m
2の範囲内であり、好ましくは50〜800g/m
2の範囲内である。また、なお、吸収体コア403の厚み、坪量等は、吸収体4全体に亘って一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。本実施の形態では、吸収体4全体に亘って一定である。
【0035】
また、表面コアラップシート401と裏面コアラップシート402の材料としては液透過性及び吸収体コアの保持性を有する限り特に限定されない。両シートの材料としては、例えば、ティッシュや親水性繊維の不織布、親水処理された繊維からなる親水性不織布など公知の材料があげられる。低コスト性及び吸収体保持性の点から、粉砕パルプを主材料とし湿式法で成形されるティッシュが好ましい。
【0036】
表面コアラップシート401と裏面コアラップシート402の厚み、坪量、繊度、繊維長等は、液透過性を有し、吸収体コア403を保持可能であれば、特に制限されず、吸収性物品に公知の値を用いることができる。例えば、両シートの厚みは、0.01〜2mmの範囲内であり、好ましくは0.05〜1mmの範囲内であり、坪量は、5〜50g/m
2の範囲内であり、好ましくは10〜30g/m
2である。繊度は、通常0.5〜5dtex、好ましくは1.0〜4.0dtexであり、繊維長は、通常30〜60mm、好ましくは35〜55mmである。本実施の形態では、両シートの厚み、坪量、繊度、繊維長等は、吸収体4全体に亘って一定である。ただし、両シートの厚み、坪量、繊度、繊維長等は、部分的に異なっていてもよい。
【0037】
表面シート2は、吸収体4の肌側に設けられており、着用者の肌に当接して、その着用者からの排泄液を素早く吸収或いは透過させて、吸収体4に向けて移行させる。表面シート2は、長手方向Lに延びる凹部と凸部とが幅方向Wに交互に並んだ凹凸構造を有している。また、本実施の形態では、表面シート2は、長手方向Lに沿う方向に長く略矩形状に形成されている。
【0038】
表面シート2の材料としては液透過性を有し、かつ熱融着性の繊維を含んでいる限り特に限定されない。表面シート2の材料としては、例えば不織布が挙げられる。その不織布は、例えば、ウェブ(フリース)を形成し、繊維同士を物理的・化学的に結合させることにより製造することができる。ウェブの形成方法としては、例えば、スパンボンド法、乾式法(カーディング方式、エアレイド方式)、湿式法等が挙げられる。繊維同士の結合方法としては、例えば、サーマルボンド法(カレンダー法、エアスルー法など)、ケミカルボンド法、メカニカルボンド法(ニードルパンチ法、水流交絡法、ステッチボンド法など)が挙げられる。不織布を構成する繊維としては、例えば、天然繊維(羊毛、コットン等)、再生繊維(レーヨン、アセテート等)、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)、合成樹脂繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド)等が挙げられる。不織布を構成する繊維は、単一成分で構成されていてもよいし、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維で構成されていてもよい。単層の不織布でも良いし、単層の不織布が積層された積層体でもよい。
【0039】
表面シート2の厚み、坪量、繊度、繊維長等は、液透過性を有していれば、特に制限されず、吸収性物品に公知の値を用いることができる。例えば、表面シート2の厚みは、0.1〜5mmの範囲内であり、好ましくは0.2〜3mmの範囲内であり、坪量は、5〜100g/m
2の範囲内であり、好ましくは10〜50g/m
2である。繊度は、通常0.5〜10dtex、好ましくは1.0〜5.0dtexであり、繊維長は、通常20〜100mm、好ましくは30〜70mmである。本実施の形態では、表面シート2の厚み、坪量、繊度、繊維長等は、表面シート2全体に亘って一定である。ただし、表面シート2の厚み、坪量、繊度、繊維長等は、部分的に異なっていてもよい。
【0040】
本実施の形態では、吸収体4は、表面コアラップシート401の肌側の面において表面シート2と接着剤により接合されており、裏面コアラップシート402の非肌側の面において裏面シート3と接着剤により接合されている。接着剤の材料としては特に制限はないが、例えばホットメルト接着剤が挙げられる。ホットメルト接着剤としては、合成ゴム系、ポリオレフィン系、エチレン−酢酸ビニル系、ポリウレタン系、アクリル系等の公知のホットメルト接着剤から適宜選択することができる。
【0041】
次に、吸収性物品1の表面シート2について更に説明する。表面シート2は、長手方向Lに延びる凹部と凸部とが幅方向Wに交互に並んだ凹凸構造を有している。本実施の形態では、そのような凹凸構造を有する表面シート2をエンボス加工で製造している。
図3は、そのような表面シート2の製造方法を示す拡大断面図である。
【0042】
まず、表面シート2の材料として未加工の不織布2Pを準備する。不織布2Pは、上述の表面シート2の材料として挙げられた不織布である。その不織布2Pをエンボス加工装置へ搬送する。そのエンボス加工装置には、外周面に幅方向に沿って所定のピッチで波状の歯が形成されたエンボスロールと、アンビルロールとが対面配置されており、それらエンボスロールとアンビルロールとの間に不織布2Pが挟み込まれる。エンボスロールとアンビルロールとの間に挟み込まれた不織布2Pには、
図3(a)に示すように、所定のピッチで圧力Peが印加される。
【0043】
その結果、
図3(b)に示すように、圧力Peが印加された箇所には、搬送方向(MD方向)に延び、搬送方向に垂直な幅方向(CD方向)に所定の間隔で並んだ複数の凹部、すなわち複数の融着部21が形成される(エンボス加工)。一方、複数の融着部21の隣り合う融着部21同士の間には、搬送方向(MD方向)に延び、融着部21から相対的に厚み方向Tに突出した複数の凸部、すなわち複数の突出部11が幅方向(CD方向)に所定の間隔で形成される。ここで、融着部21は、不織布2Pが圧縮され融着されて形成されるので、極めて薄い板形状を有し、ほとんど伸縮しない構造となる。一方、突出部11は、不織布2Pが圧縮されずに形成されるので、不織布2Pの厚みと概ね同じ短径を有する楕円状の断面を有する楕円柱形状を有し、幅方向(CD方向)に伸縮可能であり、厚さ方向に柔軟性を有する構造となる。なお、エンボスロールは、不織布2Pを加熱しながら圧力Peを印加してもよい。
【0044】
このようなエンボス加工法を用いることで、凹凸構造を有する表面シート2を容易かつ低コストで形成することができる。すなわち、エンボス加工法は、凹凸構造を有する表面シート2の形成方法として好ましい形態の一つということができる。
【0045】
このようにして形成された表面シート2は、その後、接着剤を介して吸収体4と接合される。このとき、本実施の形態では、表面シート2は吸収体4に強く押し付けられながら接合されるので、表面シート2の吸収体4側の面は突出部11だけでなく融着部21も吸収体4に貼り付く。その結果、
図3(c)に示すように、突出部11の吸収体4側の部分15は押しつぶされて突出の程度が低くなり、突出部11の吸収体4と反対側の部分13は押しつぶされずに突出の程度が高くなる。このとき、表面シートの引張強度も向上されている。
【0046】
図4は表面シート2と吸収体4とが重なった状態を示す平面図である。
図4に示すように、本実施の形態では、表面シート2は、表面シート2の融着部21及び突出部11が延びる方向、すなわち製造時の搬送方向を長手方向とされる。そして、表面シート2の長手方向と吸収体4の長手方向とが互いに平行になるように、表面シート2と吸収体4とが接合される。
【0047】
また、本実施の形態では、突出部11は、吸収体4の長手方向Lにおける両方の端縁を超えて延設されているが、本発明はこのような形態に限定されず、突出部11は、吸収体4の長手方向Lにおける少なくとも一方の端縁まで又は一方の端縁を超えて延設されていてもよい。突出部11をこのように延設すると、表面シート2の通気性をより高めることができる。
【0048】
図5〜
図6は表面シート2の構成を示す図であり、
図5はその表面シート2の斜視図であり、
図6は
図2の枠Q1内の拡大断面図である。
図5、
図6に示すように、表面シート2は、吸収体4とは反対側に位置する第1面2aと、第1面2aとは反対側、すなわち吸収体4側に位置する第2面2bとを有している。表面シート2の複数の融着部21は、長手方向Lに延び、幅方向Wに所定の間隔で互いに平行に並んでいる。一方、複数の突出部11は、複数の融着部21のうちの隣り合う融着部21の間において、長手方向Lに延び、厚み方向Tにおける融着部21の第1面2a側及び第2面2b側、すなわち肌側及び非肌側に突出している。
【0049】
表面シート2と吸収体4の表面コアラップシート401とは接着剤9を介して密接に接合されている。接着剤9は、後述される所定パターンで配置されている。したがって、接着剤9の無い部分であっても、表面シート2と表面コアラップシート401との間にはほとんど隙間が無い構成となっている。また、突出部11の下側にも接着剤9が存在するので、接着剤9より突出部11を幅方向Wに伸縮しにくくすることができる。それにより、表面シート2の幅方向Wへの伸長を抑制することができる。加えて、表面シート2が幅方向Wへ伸長して突出部11が幅方向Wに引き伸ばされて潰れてしまい凹凸構造が崩れて、凹凸構造に伴う特性が発揮できなくなる、という事態を抑制できる。
【0050】
また、本実施の形態では、
図6に示すように、厚さ方向Tにおいて、第1面2a側の突出部11の頂部12と、第1面2a側の融着部21の底部22との差、すなわち底部22を基準とした頂部12の高さをTuとし、第2面2b側の突出部11の頂部14と、第2面2b側の融着部21の底部24との差、すなわち底部24を基準とした頂部14の高さをTdとする。その場合、本実施の形態では、上記のように、Tu>Tdとなる。言い換えると、第2面2b側の突出部11は、第1面2a側の突出部11よりも潰れた形状を有している。すなわち、第2面2b側(表面コアラップシート401側)の表面シート2の凹凸が小さくなる。そのため、表面シート2の第2面2b側の凹部となる融着部21にも接着剤9を容易に配置でき、表面コアラップシート401側の表面シート2に接着剤9をより確実に結着できる。それにより、表面シート2の幅方向Wへの伸長を抑制することができ、凹凸構造が崩れる事態を抑制できる。
【0051】
また、本実施の形態では、突出部11の吸収体4(表面コアラップシート401)側の部分15は潰されている、すなわち突出の程度が低く、繊維密度が高くなる。一方、突出部11の吸収体4(表面コアラップシート401)側と反対側の部分13は潰されていない、すなわち突出の程度が高く、繊維密度が低くなる。したがって、表面コアラップシート401側の部分15では、繊維密度が高いことにより、高繊維密度の部分15内に接着剤9が非常によく浸透することができる。それにより、接着剤9を高繊維密度の部分15に非常に良く結着でき、突出部11を幅方向Wに伸縮し難くすることができる。それにより、表面シート2の幅方向Wへの伸長を抑制することができ、凹凸構造が崩れる事態を抑制できる。
【0052】
また、本実施の形態では、繊維同士を熱により結合させた不織布(例示:エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンポンド不織布又はSMS不織布)を用いて表面シート2を形成している。これらの不織布では、不織布を構成する繊維同士を熱により結合させるため、繊維同士の交点の少なくとも一部が互いに融着している。そのため、不織布を構成する繊維同士の交点で融着の無い不織布を用いた表面シート2と比較して、表面シート2を伸長し難くすることができる。特に、突出部11において、繊維密度が高い表面コアラップシート401側の部分15では、繊維同士が融着している交点の密度も高くなる。それにより、突出部11の幅方向Wの伸長をより抑制することができる。
【0053】
表面シート2では、幅方向Wにおいて、突出部11の幅Wnは1〜5mmであることが好ましく、より好ましくは1.5〜4mmであり、更に好ましくは2〜3mmである。突出部11の幅Wnが1mm未満であると、表面シート2の凹凸構造が微細すぎて、突出部11と着用者の肌との接触面積をあまり減らすことができず、表面シート2の表面の肌触りが低下する可能性がある。一方、突出部11の幅Wnが5mmを超えると、凹凸賦形加工前の不織布との構造上の差異が少なくなるため、凹凸構造を有する表面シート2を備えた吸収性物品1の特性を発現し難くなる。
【0054】
更に、表面シート2では、幅方向Wにおいて、隣り合う突出部11間の間隔、すなわち融着部21の幅Wmは0.3〜2mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5mmであり、更に好ましくは0.7〜1mmである。隣り合う突出部11の間の間隔の距離が0.3mm未満であると、表面シート2の凹凸構造が微細すぎて、突出部11と着用者の肌との接触面積をあまり減らすことができず、表面シート2の肌触りが低下する可能性がある。一方、隣り合う突出部11の間の間隔の距離が5mmを超えると、凹凸賦形加工前の不織布との構造上の差異が少なくなるため、凹凸構造を有する表面シート2を備えた吸収性物品1の特性を発現し難くなる。
【0055】
したがって、表面シート2では、幅方向Wにおいて、一つの融着部21の幅Wmと一つの突出部11の幅Wnとの和である一つのピッチPIの大きさは、1.3〜7mmであることが好ましく、より好ましくは2〜5.5mmであり、更に好ましくは2.7〜4mmである。
【0056】
また、表面シート2では、幅方向Wにおいて、突出部11の幅Wnが融着部21の幅Wmよりも大きいことが好ましい。突出部11の幅Wnが大きいことにより、突出部11の厚み方向Tの高さTuをより高くすることができ、それにより凹部と凸部とが交互に並んだ表面シート2を備えた吸収性物品1の特性をより発揮することができる。
【0057】
更に、表面シート2では、厚さ方向Tにおいて、突出部11の第1面側の高さTuは0.2〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.4〜4mmであり、更に好ましくは0.6〜3mmである。この突出部11の高さが0.25mm未満であると、突出部11の突出が小さ過ぎて、凹凸賦形加工前の不織布との構造上の差異が少なくなるため、凹凸構造を有する表面シート2を備えた吸収性物品1の特性を発現し難くなる。一方、突出部11の高さが5mmを超えると、突出部11の突出が大き過ぎて鋭利な構造となってしまうため、柔軟な肌触りが得られにくくなる。
【0058】
更に、表面シート2では、厚さ方向Tにおいて、融着部21の厚みTmは0.05〜2mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5mmであり、より好ましくは0.2〜1mmである。この融着部21の厚みが0.05mm未満であると、融着部21の繊維密度が非常に高くなり、融着部21が固くなり過ぎて、着用者に違和感を生じさせるおそれがある。一方、融着部21の厚みが2mmを超えると、融着部21の窪みが小さ過ぎて、凹凸賦形加工前の不織布との構造上の差異が少なくなるため、凹凸構造を有する表面シート2を備えた吸収性物品1の特性を発現し難くなる。
【0059】
このような本実施の形態に係る吸収性物品1は、表面シート2が凹凸構造、すなわち長手方向Lに連続的に延びる融着部21及び突出部11を有しているので、少なくとも以下のような凹凸構造を有する表面シート2を備えた吸収性物品1の特性(作用効果)を奏することができる。すなわち、排泄物が凹部(融着部21)に入ることにより肌に排泄物が付着し難い。凹凸構造(融着部21及び突出部11)により表面シート2の表面積が大きくなることにより排泄物の吸収が促進される。凹部(融着部21)内の排泄物が長手方向Lに沿って拡散することにより吸収体4の全体を無駄なく排泄物の吸収に利用できる。凹部(融着部21)により長手方向Lに沿って通気性が良くなる。凹部(融着部21)により着用者の肌との接触面積が低下する。凸部(突出部11)の柔軟性により凹凸構造を生かした柔軟な肌触りが得られる。特に本実施の形態の吸収性物品1では、融着部21及び突出部11が直線状に延設されている、すなわち長手方向Lに延びる畝溝構造を構成しているので、これらの効果を極めて顕著に奏することができる。
【0060】
次に、接着剤9の塗工のパターンである所定パターン30について説明する。
図7は
図4の枠Q2内における表面シート2と接着剤9の所定パターンとの関係の一例を説明する模式図である。ただし、
図7(a)は、表面シート2の突出部11及び融着部21と接着剤9を塗工するときの所定パターン30との関係を示す模式図である。
図7(b)は、接着剤9の所定パターン30を示す拡大図である。
【0061】
接着剤9は細線の形状を有している。接着剤9の線径としては、10〜500μmであることが好ましく、より好ましくは50〜300μmである。この接着剤9の線径が10μmより小さいと、塗工中に接着剤9が途切れて、所定パターン30を形成し難くなる。一方、この接着剤9の線径が500μmより大きいと、接着剤9が太すぎて排泄物の吸収の妨げとなり、吸収性能が低下するおそれがある。この接着剤9の材料としては、例えば、ホットメルト接着剤を用いることができる。
【0062】
細線の形状の接着剤9は、所定パターン30を形成している。
図7に示す例では、所定パターン30としてオメガパターンが用いられている。オメガパターンを用いて所定パターン列31を形成することで、細線状の接着剤9を表面シート2と表面コアラップシート401との間に満遍なく配置することができる。
【0063】
図7(b)に示すように、所定パターン30は、少なくとも横方向部分32a及び縦方向部分33aを有している。横方向部分32aは、幅方向Wに沿って延び、少なくとも一つの融着部21と、少なくとも一つの融着部21に隣接する突出部11とを接続する横方向部分32aであって、所定パターン30を形成する接着剤9の細線の任意の点における接線が幅方向Wに平行な仮想線に対して成す角がα=45°以内である。縦方向部分33aは、長手方向Lに沿って延び、一端を横方向部分32aの一端に連結される縦方向部分33aであって、所定パターン30を形成する接着剤9の細線の任意の点における接線が幅方向Wに平行な仮想線に対して成す角がα=45°より大きい。ただし、仮想線に対して成す角は考え得る角度のうちの最小の角度とする。
図7(b)の例では、横方向部分32aの一端はE2であり、他端はE1であり、縦方向部分33aの一端はE2であり、他端はE3である。
【0064】
図7に示す例では、所定パターン30は、更に、横方向部分32b及び縦方向部分33bを有している。横方向部分32bは、幅方向Wに沿って延び、少なくとも一つの融着部21と、少なくとも一つの融着部21に隣接する突出部11とを接続する横方向部分32bであって、所定パターン30を形成する接着剤9の細線の任意の点における接線が幅方向Wに平行な仮想線に対して成す角がα=45°以内である。縦方向部分33bは、長手方向Lに沿って延び、一端を横方向部分32bの一端に連結される縦方向部分33bであって、所定パターン30を形成する接着剤9の細線の任意の点における接線が幅方向Wに平行な仮想線に対して成す角がα=45°より大きい。ただし、仮想線に対して成す角は考え得る角度のうちの最小の角度とする。
図7(b)の例では、横方向部分32bの一端はE4であり、他端はE3である。このとき、横方向部分32bは他端E3を縦方向部分33aの他端E3に連結される。また、縦方向部分33bの一端はE4であり、他端は他のE1であり、縦方向部分33bは、他端E1を次の所定パターン30の横方向部分32aの他端に連結される。
【0065】
図7(a)に示すように、
図7(b)の所定パターン30は、複数個、長手方向Lに沿って並んでおり、長手方向Lに沿って連続的に延びる所定パターン列31を形成している。そして、
図7(a)に更に示すように、所定パターン列31は、複数列、幅方向Wに互いに平行に並んでいる。
【0066】
ここで、所定パターン列31と重なる突出部11、すなわち長手方向Lに隣り合う横方向部分32で区切られた一つの突出部11内の領域40について考える。ただし、横方向部分32は、長手方向Lに隣り合っていれば、同一の所定パターン30内の横方向部分32aと横方向部分32bであってもよいし、異なる所定パターン30の横方向部分32aと横方向部分32bであってもよい。すなわち、所定パターン列31ごとに、長手方向Lに並んだ複数の横方向部分32(同一の所定パターン30内の横方向部分32に限らない。)によって一つの突出部11が区切られることにより、その一つの突出部11内に長手方向Lに並んだ複数の領域40が画定されている。
【0067】
このとき、その複数の領域40の各々のいずれにおいても、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士間の長手方向Lの距離のうち最小の距離LMINは、突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの距離(幅)(=Wm+Wn)未満となる。好ましくは、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士間の長手方向Lの距離のうち最大の距離LMAXは、突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの距離(幅)(=Wm+Wn)未満となる。
【0068】
本発明では、このように長手方向Lに隣り合う接着剤9の横方向部分32同士の長手方向の最小の距離LMINが突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの幅(距離)未満に狭くなっている。そのため、後述される理由から、横方向部分32同士の中間の領域であっても表面シート2が伸長し過ぎることはなく、突出部11の伸長を十分に抑えることができる。すなわち、表面シート2の伸長を十分に抑えることができ、それにより表面シート2が幅方向Wに引っ張られても、表面シート2が幅方向Wにあまり伸長せず、すなわち表面コアラップシート401もほとんど伸長されないため表面コアラップシート401が破断することを抑制することができる。
【0069】
また、上記の接着剤9の所定パターン30や所定パターン列31により、表面シート2の伸縮性がある程度犠牲になっているが、その分、伸長に伴い突出部11が潰れて薄くなるという事態を抑制できる。それにより、幅方向Wに引張荷重がかかったときでも、伸長の程度が抑制され、凹凸構造を有する表面シート2を備えた吸収性物品1の特性を維持することができる。
【0070】
更に、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士間の長手方向Lの距離のうち最大きい距離LMAXは、突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの距離(幅)(=Wm+Wn)未満であることが好ましい。すなわち、複数の領域40の各々のいずれにおいても、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士間の長手方向Lの距離のうち最大の距離LMAXは、突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの距離(幅)(=Wm+Wn)未満であることが好ましい。
【0071】
このように長手方向Lに隣り合う接着剤9の横方向部分32同士の長手方向の最大の距離LMAXが突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの幅未満に狭い場合、横方向部分32同士の中間の領域の伸長、延いては突出部11の伸長をより確実に抑えることができる。それにより表面シート2が幅方向Wに引っ張られても、表面シート2が幅方向Wにあまり伸長せず、すなわち表面コアラップシート401もほとんど伸長されないため表面コアラップシート401が破断することをより抑制することができる。
【0072】
また、長手方向Lにおける横方向部分32同士の中間の領域で表面コアラップシート401が部分的に破断した場合、横方向部分32同士の距離が大きいと、破断が両側の横方向部分32に達するまでに大きくなり過ぎて、細線状の接着剤9では破断の伸展を止めることは困難になるおそれがある。しかし、この場合、横方向部分32同士の間隔が狭くなっているので、破断が両側の横方向部分32に達するまでに大きくなり過ぎることはなく、細線状の接着剤9でも破断の伸展を止めることができる。その結果、仮に表面コアラップシート401の一部に破断が発生したとしても、破断を極めて狭い範囲に抑えることができるので、表面コアラップシート401全体の破断を抑制することができる。
【0073】
ここで、所定パターン30(
図7(b))の幅方向Wの大きさ(幅方向Wの一方の端から他方の端までの距離)は、一つの融着部21と、その一つの融着部21に隣接する突出部11とを接続できる大きさを有していれば特に制限はない。好ましくは、所定パターン30の幅方向Wの大きさは、一つの融着部21の幅方向Wの幅Wmと一つの突出部11の幅方向Wの幅Wnとを加えた大きさ以上であることが好ましい。それにより、より確実に、一つの融着部21と、その一つの融着部21に隣接する突出部11とを接続できる横方向部分32を形成できるからである。
【0074】
また、所定パターン30(
図7(b))の長手方向Lの大きさ(長手方向Lの一方の端から他方の端までの距離)は、所定パターン列31において、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士の長手方向Lの間隔の最小の距離が突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの幅未満であれば特に制限はない。好ましくは、所定パターン30の長手方向Lの大きさは、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士の長手方向Lの間隔の最大の距離が突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの幅未満である。
【0075】
次に、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士の長手方向Lの間隔の最小の距離を、突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの幅(Wm+Wn)未満にする理由について、以下に説明する。
【0076】
図8は吸収性物品の破断を生じる機構を説明する模式図である。説明を簡単にするために、
図8(a)の左側の図に示すように、表面シート2上の仮想的な領域40を考える。その領域40は、突出部11の幅方向Wの両側に配置された融着部21(幅Wmb0)と、その突出部11を幅方向Wに横断する二本の接着剤9とにより突出部11(幅Wnb0)内に画定される。ただし、二本の接着剤9は長手方向Lに間隔Lp0で離間しているものとする。この場合、二本の接着剤9は所定パターン30の横方向部分と見ることができる。すなわち領域40は、突出部11の両側の融着部21と二本の接着剤9とで囲まれた領域である。この領域40では、吸収性物品1が幅方向Wに引張荷重Gで引っ張られるとき、接着剤9は固く伸びないので、
図8(a)の右図に示すように、突出部11のうちの接着剤9の存在する領域及びその近傍の領域(横方向部分及びその近傍の領域)は幅方向Wにほとんど伸びることはない。一方、融着部21は伸縮性をほとんど有さないが、少しなら湾曲することはできるので、融着部21のうちの接着剤9から離れた領域は、幅がほとんど変わらずに(Wma0≒Wmb0)、幅方向Wに少し湾曲する。その結果、突出部11のうちの接着剤9から離れた領域(長手方向Lにおける横方向部分同士の中間の領域41)は幅方向Wにある程度伸びることになる。すなわち、突出部11の幅はやや大きくなる(Wnb0→Wna0)。このとき、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lp0が十分に小さければ、二本の接着剤9の影響により融着部21はあまり湾曲できず、すなわち突出部11は幅方向Wにほとんど伸ばされない。すなわち、突出部11の幅はあまり大きくならない。それにより、表面シート2に接合された表面コアラップシート401において、表面シート2の横方向部分同士の中間の領域41に対応する位置に、破断が生じることはない。
【0077】
しかし、領域40が
図8(b)の左側の図に示すような場合、
図8(a)の領域40とは状況が異なる。
図8(b)では、領域40が、突出部11の幅方向Wの両側に配置された融着部21(幅Wmb1=幅Wmb0)と、その突出部11を幅方向Wに横断する二本の接着剤9とにより突出部11(幅Wnb1=幅Wnb0)内に確定される。ただし、二本の接着剤9は、長手方向Lに間隔Lp1(>Lp0)で離間している。すなわち、
図8(a)の領域40と比較して、二本の接着剤9、すなわち長手方向Lで隣り合う横方向部分同士の間隔が大きくなっている。この場合、吸収性物品1が幅方向Wに引張荷重Gで引っ張られると、
図8(b)の右図に示すように、接着剤9は固く伸びないので、突出部11のうちの接着剤9の存在する領域及びその近傍の領域は幅方向Wにほとんど伸びることはない。しかし、融着部21のうちの接着剤9から離れた領域は、幅がほとんど変わらずに(Wma1≒Wmb1)、
図8(a)の場合と比較して幅方向Wに大きく湾曲する。その結果、突出部11のうちの接着剤9から離れた領域(領域41)は幅方向Wに大きく度伸びることになる。すなわち、突出部11の幅は非常に大きくなる(Wnb1→Wna1>Wna0)。このように、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lp1が大き過ぎると、二本の接着剤9の影響が接着剤9から離れた領域に及ばずに融着部21が大きく湾曲して、すなわち突出部11は幅方向Wに大きく伸ばされる。それにより、表面シート2に接合された表面コアラップシート401において、表面シート2の横方向部分同士の中間の領域41に対応する位置に、破断42が生じることになる。
【0078】
上記のように、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lpが十分に小さければ、
図8(a)のように突出部11は幅方向Wにほとんど伸ばされず、間隔Lpが十分に大きければ、
図8(b)のように突出部11は幅方向Wに大きく伸ばされてしまう。言い換えると、間隔Lpには閾値が存在し、間隔Lpが閾値未満であれば、突出部11は幅方向Wにあまり伸ばされない、ということができる。そのような閾値、すなわち許容し得る間隔Lpの最大値としては、領域40を正方形とするような値が考えられる。それは以下の理由による。
図9は、領域40における力の関係を示す模式図である。
図9に示すように、領域40(の正方形)の融着部21(の辺)に幅方向Wの引張荷重Gが印加されると、領域40に黒矢印に示すような応力が生じ、その黒矢印の応力により接着剤9(の辺)に応力が生じる。このとき、領域40が正方形であると、
図9の、幅方向Wの両側の融着部21(の辺)の応力が長手方向Lの両側の接着剤9(の辺)にバランス良く分散され、融着部21(の辺)の長手方向Lの中心付近の荷重まで、接着剤9(の辺)で支えることができると考えられる。しかし、接着剤9の間隔がこの場合よりも広くなると、すなわち領域40が長手方向Lに長い長方形になると、融着部21の長手方向Lの中心付近の荷重を接着剤9で支え難くなり、融着部21の長手方向Lの中心付近が幅方向Wに湾曲し、
図8(b)のような状態になり易くなる。以上の理由から、閾値(間隔Lpの最大値)としては、領域40が正方形となるような値、すなわち突出部11の幅Wnとすることが考えられる。
【0079】
ただし、融着部21の幅Wmが大きい場合には、融着部21は湾曲し難くなるので、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lpを正方形の場合よりも大きくしても破断の問題は生じないと考えられる。そこで、融着部21の幅Wmを考慮した閾値(間隔Lpの最大値)を以下のように検討した。
【0080】
図10は、領域40における長手方向Lの接着剤9の間隔と融着部21の幅Wmの関係を示す模式図である。
図10(a)は、
図8(a)において、領域40を正方形とし、融着部21の幅Wmが小さい値(例示:接着剤9の太さ程度)Wmb3に設定している。この場合、上述のように、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lp3をほぼ突出部11の幅Wnb3にしているので、領域40は概ね正方形と見ることができる。すなわち突出部11は幅方向Wに大きく伸ばされることはない。
【0081】
ここで、
図10(b)に示すように、融着部21の幅Wmをより大きい値Wmb4(>Wmb3)に設定すると、幅方向Wの引張荷重Gに対して、融着部21が幅方向Wに湾曲し難くなる。すなわち突出部11は幅方向Wにより伸ばされ難くなる。したがって、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lp4を、領域40が正方形になる値、すなわちWnb4(=Wnb3)よりもある程度大きくしても、突出部11は幅方向Wに大きく伸ばされることはない、ということができる。この場合、幅Wmb4>>幅Wmb3と考えると、融着部21の幅Wmは、
図10(a)の場合と比較してWmb4だけ大きくなり、その分だけ融着部21が湾曲する程度を抑制している。したがって、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lp4は、領域40を正方形とする値よりもある程度(ΔL1、とする)大きくすることができる。
【0082】
同様に、
図10(c)に示すように、融着部21の幅Wmを更に大きい値Wmb5(>Wmb3)に設定すると、幅方向Wの引張荷重Gに対して、融着部21が幅方向Wに更に湾曲し難くなる。すなわち突出部11は幅方向Wに更に伸ばされ難くなる。したがって、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lp5を、領域40が正方形になる値、すなわちWnb5(=Wnb3)よりもある程度大きくしても、突出部11は幅方向Wに大きく伸ばされることはない、ということができる。この場合、幅Wmb5>>幅Wmb3と考えると、融着部21の幅Wmは、
図10(a)の場合と比較してWmb5だけ大きくなり、その分だけ融着部21が湾曲する程度を抑制している。したがって、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lp5は、領域40を正方形とする値よりもある程度(ΔL2、とする)大きくすることができる。
【0083】
以上の考察から融着部21の幅Wmを大きくすれば大きくするほど、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lpの最大値(閾値)を、突出部11の幅Wnより大きくすることができる。ただし、融着部21の幅Wmを大きくしても、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lpに与える効果としては、最大でも概ね融着部21の幅Wm分の距離であろうと考えられる。すなわち、ΔL1及びΔL2は最大でも概ね融着部21の幅Wmb4及びWmb5であろうと考えられる。したがって、二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lp(閾値)は、最終的に以下のようになる。
閾値:(二本の接着剤9の長手方向Lの間隔Lpの最大値)
=(突出部11の幅Wn)+ΔL、
=(突出部11の幅Wn)+(融着部21の幅Wm)
である。
図10の例では、
(a)Lp4=Wnb4+Wmb4
(b)Lp5=Wnb5+Wmb5
となる。
【0084】
ここで、上記考察では、
図8(a)に示すような仮想的な形状の領域40に基づいて閾値が導出されている。このように導出された閾値を実際の接着剤9の所定パターン30及び所定パターン列31、例えば
図7に示すオメガパターンに適用する場合、以下のように考えることができる。所定パターン列31は、所定パターン30が長手方向Lに沿って連続的に並んだ構成、すなわち互いに連結され延設された構成(ただし製造歩留り等で部分的に途切れていても可)を有している。したがって、領域40のうち、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士(同一の所定パターン30内の横方向部分32に限らない。)の長手方向Lの間隔のうちの少なくとも一部が上記の閾値を満たせば、突出部11の伸長の抑制に効果があると考えられる。すなわち、少なくとも横方向部分32同士の長手方向Lの間隔の最小の距離が上記閾値を満たせばよいことがわかる。よって、突出部11の伸長の抑制には、少なくとも、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士の長手方向Lの間隔の最小の距離を、突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの幅(Wm+Wn)未満にすればよい。より好ましくは、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士の長手方向Lの間隔の最大の距離を、突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの幅(Wm+Wn)未満にする。
【0085】
このように、閾値を設定し、接着剤9の所定パターン30及び所定パターン列31を、閾値を満たすように形成することで、突出部11の伸長を十分に抑えることができる。すなわち、表面シート2の伸長を十分に抑えることができる。それにより表面シート2が幅方向Wに引っ張られても、表面シート2が幅方向Wにあまり伸長せず、すなわち表面コアラップシート401もほとんど伸長されないため、表面コアラップシート401が破断することを抑制することができる。
【0086】
また、上記閾値は、
図8(a)に示すような仮想的な領域40や
図7に示すオメガパターンに限定されるものでは無く、上記の所定パターン30の条件を満たすことができれば、他のパターン、例えばウェイブパターンやスパイラルパターンにおいても同様に適用可能である。また、例えば、接着剤9が隣接する突出部11同士に必ず架け渡されている必要はない。
【0087】
以上のように、本実施の形態の吸収性物品において、少なくとも、長手方向Lに隣り合う横方向部分32同士の長手方向Lの間隔の最小の距離を突出部11及び融着部21の一組分の幅方向Wの幅(Wm+Wn)未満に狭くすることで、凹凸構造を有する表面シートを備えた吸収性物品の特性と、表面コアラップシートの破断の抑制とを両立させられることが分る。
【0088】
次に、別の実施の形態について説明する。以下では、上記の実施の形態と相違する点について主に説明する。
図11は、
図4の枠Q2内における表面シート2と接着剤9の所定パターン30との関係について別の例を説明する模式図である。
図11は表面シート2の突出部11及び融着部21と接着剤9を塗工するときの所定パターン30との関係を模式的に示している。
【0089】
図11に示す例では、所定パターン30としてオメガパターン又はウェイブパターンが用いられている。オメガパターン又はウェイブパターンを用いて所定パターン列31を形成することで、細線状の接着剤9を表面シート2と表面コアラップシート401との間に満遍なく配置することができる。それにより、表面シート2の幅方向Wでの伸長を満遍無く抑制することができ、それにより表面コアラップシート401の破断をより確実に抑制することができる。
【0090】
また、
図11に示す所定パターン列31では、幅方向Wにおいて、各所定パターン30の縦方向部分が少なくとも両側の融着部21に達し、横方向部分(及び縦方向部分)が少なくとも突出部11の一方の側から他方の側まで横断している。このように各所定パターン30を配置して所定パターン列31を形成することで、幅方向Wにおいて、突出部11を両側の融着部21により確実に固定することができ、突出部11の伸長をより確実に抑えることができる。
【0091】
また、
図11に示す例では、所定パターン30は一つの突出部11を挟んでその両側の融着部21の間で接着剤9が架け渡されている。しかし、本発明はこの例に限定されるものでは無く、複数の突出部11及びそれらの間の複数の融着部21を挟んでそれらの両側の融着部21の間で接着剤9が架け渡されていてもよい。その場合、より安定的に突出部11の伸長を抑えることができる。
【0092】
次に、更に別の実施の形態について説明する。以下では、上記の実施の形態と相違する点について主に説明する。
図12は、
図4の枠Q2内における表面シート2と接着剤9の所定パターン30との関係について別の例を説明する模式図である。
図12(a)は、表面シート2の突出部11及び融着部21と接着剤9を塗工するときの所定パターン30との関係を示す模式図である。
図12(b)は接着剤9の所定パターン30を示す拡大図である。
【0093】
図12に示す例では、所定パターン30としてスパイラルパターンが用いられている。である。スパイラルパターンを用いて所定パターン列31を形成することで、細線状の接着剤9を表面シート2と表面コアラップシート401との間に満遍なく配置することができる。それにより、表面シート2の幅方向Wでの伸長を満遍無く抑制することができ、それにより表面コアラップシート401の破断をより確実に抑制することができる。
【0094】
また、
図12に示す複数の所定パターン列31では、一つ又は複数の所定パターン30の接着剤9により囲まれた複数の閉領域が形成されている。このような表面シート2を用いると、幅方向Wの伸長に対して、突出部11の伸長する領域を閉領域という狭い領域内に留まらせることができる。その結果、突出部11の伸長が制限されるので、突出部11の幅方向Wでの伸長をより確実に抑制することができる。また、突出部11の伸長による表面コアラップシート401を破断させる力の及ぶ範囲を、その閉領域に閉じ込めることができる。すなわち、突出部11に破断が発生したとしても閉領域内に留まらせることができる。それにより表面コアラップシート401の破断をより確実に抑制することができる。
【0095】
また、
図12に示す複数の所定パターン列31は、互いに重なるようにして、幅方向Wに互いに平行に並んでいる。このような表面シート2を用いると、複数の所定パターン列31が互いに重なるので、突出部11において、接着剤9の存在する密度が高まるため、突出部11の幅方向Wでの伸長をより確実に抑制することができる。加えて、所定パターン列31同士が互いに重なることで、複数の閉領域を形成することができる。
【0096】
また、
図12に示す所定パターン列31では、
図12(b)に示す所定パターン30が互いに重なるように長手方向Lに沿って並んで配置されている。このような表面シート2を用いると、所定パターン30が互いに重なるので、突出部11において、接着剤9の存在する密度が高まり、更に、複数の閉領域を形成することができる。
【0097】
図13は吸収性物品の表面シートと接着剤のパターンとの関係の比較例を説明する模式図である。
図13は表面シート2と同一の凹凸構造を有する表面シート102において、突出部111及び融着部121と接着剤109を塗工するときの所定パターン130との関係を模式的に示している。この比較例では、所定パターン列131と重なる突出部111において、複数の領域140のうちの多くは、長手方向Lに隣り合う横方向部分同士間の長手方向Lの距離のうち最小の距離LMINcが、突出部111及び融着部121の一組分の幅方向Wの距離以上であり、具体的には例えば約1.6倍以上ある。このような場合では、引張荷重Gで幅方向Wに引っ張られると、突出部111の幅方向Wの伸長量が大き過ぎて、表面シート2に接着剤9で接合された表面コアラップシートが破断してしまうことが確認されている。
【解決手段】吸収性物品は表面シート2と裏面シートと吸収体コア403及びコアラップシート401とを備える。表面シートは、長手方向に延びる複数の融着部21と、隣り合う融着部の間に形成され、肌側及び非肌側に突出した複数の突出部11とを備える。表面シートとコアラップシートとを接続する細線状の接着剤9は、所定パターンを形成する。所定パターンは、幅方向に沿って延び、融着部と突出部とを接続する横方向部分と、長手方向に沿って延びる縦方向部分と、を含む。所定パターンは、複数個、長手方向に沿って並んで、所定パターン列を形成する。所定パターン列は、複数列、幅方向に互いに平行に並ぶ。所定パターン列と重なる突出部において、隣り合う横方向部分同士間の長手方向の距離の最小値は、突出部及び融着部の一組分の幅方向の距離未満である。