(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
製パン用途に用いられる小麦粉は、主に小麦粒の胚乳部分を細かく砕いて粉にしたものであるが、胚乳部分は胚芽や外皮と強固に結着しているため、分離することが大変に難しい。そのため、小麦粉を製品化する際には、まず小麦粒を粉砕して、胚乳部分と、外皮や胚芽を含有する部分とに分離し、胚乳部分はそのまま小麦粉とし、外皮や胚芽を含有する部分は、更に数回の粉砕と分離工程に供して得られた胚乳部分から同様に小麦粉を得て、最終的に外皮と胚芽がほとんど除去されるまで粉砕・分離作業が行われている。
【0003】
最初の分離で得られた小麦粉は胚芽や外皮の混入が少なく、後の分離で得られた小麦粉ほど外皮や胚芽の混入の多い小麦粉となる。この外皮や胚芽には、澱粉質やグルテン蛋白質以外の夾雑物が多く含まれるため、得られる小麦粉も灰分含量が高く、色がくすんでいて、品質劣化につながる酵素活性が高く、平均粒径が粗く、損傷澱粉粒含量が高くなる。
【0004】
このため、パンを製造する場合、最初の分離で得られた小麦粉、即ち灰分含量の少ない小麦粉を主として使用したパンに比べ、後の分離で得られた小麦粉、即ち灰分含量の高い小麦粉を主として使用したパンは、外観は、クラストが赤茶けた色となり、体積が小さく、内相が粗く不均一で、色がくすみ、ムレ臭がする等風味が悪く、老化が早いという問題があった。
【0005】
また、パン生地の段階でも、後の分離で得られた小麦粉は、損傷澱粉が多いことから生地がべたつきやすく、生成するグルテンも弾性が強く粘性が低く脆いことから生地の伸展性が悪い等、生地が扱いにくいという問題があった。
また、このような灰分含量の高い、後の分離で得られた小麦粉は、2等粉と称され、製パン用、特に風味を大切にする高級なパンの製造には使用できないという問題があった。
【0006】
そのため、このような小麦粉を使用した場合でも良好な物性のパン生地が得られ、更には灰分含量の少ない小麦粉を使用したパンと同等の品質のパンを得るための方法が各種考案されてきた。
【0007】
例えば、小麦粉を製粉する際に、灰分含量の高い画分を含有しながらも、灰分含量の低い小麦粉と同等の品質とすることができる小麦粉の改質方法が提案されている。
そのような小麦粉改質方法の一つとして、小麦粉を湿熱処理する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法では、澱粉に起因する問題は解決可能であるが、灰分に起因する問題を解決することができず、そのため、良好な品質のパン生地やパンを得ることはできなかった。
【0008】
別の小麦粉改質方法として、小麦粉のふすま成分を含まないように製粉する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。しかし、この方法は特殊な製粉方法であるため大量生産ができないことに加え、パンの風味以外の問題(生地物性やパンの内相や外観等)の改良効果が得られないという問題があった。
【0009】
更に別の小麦粉改質方法として、小麦粉の分画物を使用する方法が提案されている(例えば特許文献3及び4参照)。しかし、これらの方法は、2等粉等の灰分の多い小麦粉を通常の小麦粉に添加して粒度を特定範囲にして使用する発明であり、2等粉そのものを使用して良好なパンを得るという発明ではなく、また、得られたパン生地やパンについても灰分含量の少ない小麦粉のみから得られたパン生地やパンに比べて劣るものであった。
【0010】
このように、小麦粉を直接改質する方法では、パン生地の物性は、ある程度改良は可能であるが、充分良好な品質のパン生地やパンを得ることはできなかった。
【0011】
一方、灰分含量の高い小麦粉を直接使用するパンにおいて、タンパク質分解酵素、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、酸化剤及び糊化膨潤抑制澱粉を含有する乳化油脂組成物を用いることが提案されている(例えば特許文献5参照)。しかし、この方法ではパンをトーストした際に型崩れしやすく、また、歯切れが良い反面、しとり感が十分ではなかった。
【0012】
また、一般の小麦粉を使用したパンにおいて、体積をアップさせるため或いはしとり感や耐老化性の付与を目的として、各種製パン改良成分、例えばコンニャク芋に含まれる多糖類の主成分であるグルコマンナンを用いてパンの食感を改良する方法も試みられている(例えば特許文献6、7参照)。グルコマンナンは、高粘性、高い保水性、ゲル形成能等の特性を有し、パン類に使用した場合は保水性向上による老化防止や、しとり感の付与といった効果が期待される。
【0013】
しかし、グルコマンナンを粉末の状態でベーカリー生地に添加する場合、均一に分散させるのが難しいだけでなく、経時的に生地が締まってくるという問題があった。また、グルコマンナンをゲル化してから添加する方法では、ゲル中のグルコマンナンの濃度を高くしないと生地がべとつきやすいという問題があり、逆にグルコマンナンの量を増やすと粘りの強い食感となってしまうという問題があった。
【0014】
さらに、特許文献6、7に記載の方法では、灰分含量の少ない小麦粉に使用した場合に高い効果が得られるようにその成分や成分含量比が設定されているため、灰分含量の高い小麦粉を使用した場合では上述の諸問題を解決することはできず、むしろ更にべたついたパン生地になり、製パン作業性が悪化したりパンの体積が小さくなる等、良好な品質のパン生地やパンを得ることはできなかった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物について詳細に説明する。
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、水相中に(1)グルコマンナン及び(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する。
【0022】
先ず、上記(1)グルコマンナンについて述べる。
グルコマンナンは食用コンニャクの塊茎に含まれ、D−グルコースとD−マンノースがほぼ1:1.6のモル比でβ−1,4結合により多数結合した複合多糖類(難消化性多糖類)である。その分子量は産地や品種等によって異なるものの、約100万〜200万である。その物性は、水との親和性に優れ保水力が非常に高い。また、グルコマンナンは、従来増粘安定剤として用いられており、増粘安定剤の中でも特に粘度が高いことが知られている。
【0023】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物における上記(1)グルコマンナンの含有量は、可塑性乳化油脂組成物基準で0.01〜2.1質量%含有させるのが好ましく、0.03〜1.1質量%がさらに好ましく、0.04〜0.4質量%が最も好ましい。含有量が0.01質量%よりも少ないと、本発明の効果が非常に小さくなるため好ましくない。また、2.1質量%よりも多くなると、最終的に得られるパンが粘りの強いねちゃついた食感となるため好ましくない。
【0024】
また、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物において、上記(1)グルコマンナンは、水相基準で0.021〜15質量%含有させるのが好ましく、0.04〜10質量%含有させるのが更に好ましく、0.1〜5質量%含有させるのが最も好ましい。水相基準での含有量が0.021質量%よりも少ないと、可塑性乳化油脂組成物中のグルコマンナン含有量も低く抑えられることとなり、本発明の効果が非常に弱くなる。また、水相基準での含有量が15質量%よりも多くなると、粘度が高くなりすぎ、マーガリン製造が困難となる等、作業性が悪くなるため好ましくない。
【0025】
製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物における水相量(質量%)は、以下の方法によって測定することができる。
まず、製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を60〜65℃に加熱し完全に溶解させる。その後、溶解した上記乳化油脂組成物から油相を分離し、残りの量を上記水相量(質量%)とする。
尚、上記の水相とは、水及び水溶性成分から構成されるものをいう。
【0026】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物に上記(1)グルコマンナンを含有させるためには、精製されたグルコマンナン、コンニャク粉又は簡易精製したコンニャク粉等のグルコマンナン含有物質を使用することができ、好ましくはこれらのグルコマンナン含有物質を上述のグルコマンナン含量を満たすように使用する。これらのグルコマンナン含有物質のグルコマンナンの純度は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。グルコマンナンの純度が50質量%未満のコンニャク粉等ではエグ味が残り、風味が損なわれやすいため好ましくない。上記グルコマンナン含有物質における、グルコマンナン以外の不純物成分としては、例えば、澱粉類、シュウ酸、シュウ酸カリウムが挙げられ、その他にも、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、リン等の灰分が挙げられる。
【0027】
次に、上記(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルについて述べる。
通常の製パン時には、グリセリンモノ脂肪酸エステルをはじめとする乳化剤は、パン生地中で澱粉と強く結合して複合体を形成することで澱粉の膨潤を抑制する。その結果として、余分となった水がグルテン構造の生成に使われることでしっかりとした伸展性良好なグルテン構造が形成される。このように、乳化剤は、パン生地の物性の改良や、得られるパンの体積の増大やソフトな食感を得ることを目的として使用される。しかし、灰分含量の高い小麦粉を使用した場合は、グリアジンの比率が高く、弾性が強いため、水分をたとえ多く供給したとしても良好なグルテン構造が得られない。
【0028】
灰分含量の高い小麦粉を使用した場合でも、本発明のように、上記(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルを可塑性乳化油脂組成物の水相に上記(1)グルコマンナンと共に含有させると、良好なグルテン構造が形成され、結果として良好な物性のパン生地が得られ、更には良好な品質のパンが得られる。
上記グリセリンモノ脂肪酸エステルは油溶性であるため、通常、乳化油脂組成物中では油相中に溶解して使用される。しかし、本発明においては、グリセリンモノ脂肪酸エステルを水相中に含有させないとグルコマンナンとの相乗効果が得られない。
【0029】
本発明で使用するグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、公知のグリセリンモノ脂肪酸エステルを使用することができる。グリセリンモノ脂肪酸エステルの脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でも使用可能であるが、本発明の効果が大きくなる点で飽和脂肪酸が好ましい。脂肪酸の鎖長についても制限はないが、好ましくは8〜26、より好ましくは12〜24、さらに好ましくは16〜22である。
【0030】
本発明では、上記グリセリンモノ脂肪酸エステルを、油相ではなく水相に含有させることに特徴がある。尚、本発明において、グリセリンモノ脂肪酸エステルは、水相だけではなく、油相にも含有させてもよい。
【0031】
水相中に上記グリセリンモノ脂肪酸エステルを安定して分散させるためには、水分散型のグリセリンモノ脂肪酸エステルを使用することが好ましい。この水分散型のグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、水溶液中でカゼインナトリウム等の高分子物質と複合体を形成させた後噴霧乾燥した粉末状のグリセリンモノ脂肪酸エステルや、親水基を外側に向けた薄片状のミセル構造である、ハイドレート型のグリセリンモノ脂肪酸エステルを挙げることができ、本発明では、ハイドレート型のグリセリンモノ脂肪酸エステルを使用することが好ましい。
【0032】
また、水分散型でないグリセリンモノ脂肪酸エステルを使用することも可能であり、その場合には、水分散型でないグリセリンモノ脂肪酸エステルを水相に添加した後、50〜70℃まで加熱することによって、該グリセリンモノ脂肪酸エステルをハイドレート型とすることができる。この際、ハイドレート型の安定化のため水相のpHを5以下に調整する必要があり、pHを3〜5に調整することがさらに好ましい。pHの調整には、例えばクエン酸、リンゴ酸等の有機酸、リン酸ナトリウム等の無機酸塩、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩等を用いることができる。
【0033】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物における上記(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、水相中に、可塑性乳化油脂組成物基準で好ましくは0.5〜14質量%、更に好ましくは1.0〜9.5質量%、最も好ましくは2.0〜5.5質量%である。含有量が0.5質量%よりも少ないと、本発明の効果が十分に得られず、また14質量%よりも大きいと乳化剤に由来するエグ味が感じられるようになるため好ましくない。
【0034】
製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の水相中におけるグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量(質量%、可塑性乳化油脂組成物基準)は、以下の方法により測定することができる。
まず、製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を60〜65℃で完全に溶解させ、溶解した該乳化油脂組成物から油相を分離し水相部分だけを100〜110℃で完全に乾燥させる。乾燥した水相部分に含まれる脂質成分をガスクロマトグラフィーで分析し、モノグリセリドを定量する。
【0035】
また、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物における上記(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、水相中に、水相基準で好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは5〜45質量%、最も好ましくは10〜40質量%である。上記(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量が1質量%未満では、本発明の効果が乏しいものとなる。また、50質量%を超えると、粘度が高くなりすぎ、乳化安定性が低下しやすいことに加え、得られるパンの食感がねちゃついたり、口溶けの悪いものになってしまうおそれがある。
【0036】
また、グリセリンモノ脂肪酸エステルの本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物中の含有量は、油相中に含有させたグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量も含め、好ましくは0.1〜15質量%、更に好ましくは1.5〜10質量%、最も好ましくは2〜7質量%である。この範囲でグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有させると、しとり感の良好なパンをより確実に得ることができる。
【0037】
本発明において、グルコマンナンとグリセリンモノ脂肪酸エステルとを水相に含有させることにより、なぜ顕著な効果が現れるのか明らかではないが、次のように推測される。
グリセリンモノ脂肪酸エステルは一般に老化防止効果に優れるものの、水への分散性が悪く、性能を発揮しにくいという欠点を有する。本発明では、グリセリンモノ脂肪酸エステルをグルコマンナンと共に水相に含有させることで、水相中においてもグリセリンモノ脂肪酸エステルが効果的に作用することができ、さらにグルコマンナンが有する多様な機能が最大限に引き出され本発明の効果が発揮されると考えられる。
【0038】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、油脂を含有している。該油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0039】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、油相中に直接β型の油脂結晶を含有することが好ましい。直接β型の油脂結晶を含有しないと、結晶安定性の良好な可塑性乳化油脂組成物が得られにくくなることがあり、製パン作業時に練り込みが不十分となることがある。
但し、本発明においては、直接β型の油脂結晶を含有していれば、直接β型の油脂結晶でない油脂結晶、例えばβプライム型の油脂結晶を含有していても良い。
【0040】
上記の直接β型の油脂結晶とは、油脂結晶を融解し、冷却し、結晶化したときに、熱エネルギー的に不安定なα型結晶から、準安定形のβプライム型を経由せず、最安定形のβ型結晶に直接転移する油脂結晶のことである。この際、結晶化条件は如何なる結晶化条件であってもよく、テンパリング等の特殊な熱処理を必要としない。
【0041】
本発明において、油脂結晶が直接β型であることを確認する方法としては、例えば、油脂結晶を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶が、β型結晶であることを確認する方法が挙げられる。
【0042】
上記の油脂結晶がβ型結晶であることを確認する方法としては、例えば、X線回折測定において、以下のように短面間隔を測定する方法が挙げられる。
具体的には、油脂結晶について、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示した場合に、該油脂結晶はβ型結晶であると判断する。さらにより高い精度で測定する場合は、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度1)及び4.2〜4.3オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比が1.3以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは2.2以上、最も好ましくは2.5以上となった場合にβ型結晶であると判断する。
【0043】
また、上記の直接β型の油脂結晶は、トリグリセリド分子のパッキング状態が2鎖長構造であることが好ましい。油脂結晶が2鎖長構造であることを確認する方法としては、例えばX線回折測定による方法が挙げられる。
具体的には、油脂結晶について、長面間隔を2θ:0〜8度の範囲で測定し、40〜50オングストロームに相当する回折ピークを示した場合に、該油脂結晶は2鎖長構造をとっていると判断する。
【0044】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物において、上記の直接β型の油脂結晶の含有量は、油相中に油相基準で好ましくは5質量%以上、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、最も好ましくは5〜20質量%である。直接β型の油脂結晶の含有量が、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の油相中、5質量%未満であると経日的に20μmを超えたサイズを有するβ型結晶が出現しやすく、経日的に硬くなりやすい。その結果、製パン作業時に練り込みが不十分となりやすくなる。
尚、上記の油相とは、油脂に、必要に応じて、乳化剤、着色料、酸化防止剤、着香料、調味料等を添加したものを指す。また、上記の油脂には、乳製品、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材から抽出される脂肪分も含まれる。更に、上記の油脂には、製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物に含まれる油脂として上記で挙げた各種植物油脂、動物油脂及び加工油脂等のほか、後述するS
1MS
2を含有する油脂及びMS
3Mを含有する油脂として挙げるものが含まれる。
【0045】
本発明における直接β型の油脂結晶の例を挙げる。
上記の直接β型の油脂結晶の例としては、S
1MS
2(S
1及びS
2は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド(以下S
1MS
2とする)と、MS
3M(S
3は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド(以下MS
3Mとする)とからなるコンパウンド結晶が挙げられる。
上記のS
1MS
2とMS
3Mとからなるコンパウンド結晶とは、構造の異なるS
1MS
21分子とMS
3M1分子とが混合された際、あたかも単一のトリグリセリド分子であるかの如き結晶化挙動を示すものである。コンパウンド結晶は分子間化合物とも呼ばれる。
【0046】
上記のS
1MS
2のS
1及びS
2並びにMS
3MのS
3は、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸であり、さらに好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸である。また、本発明において、上記のS
1、S
2及びS
3が、同じ飽和脂肪酸であるのが最も好ましい。
また、上記のS
1MS
2のM及びMS
3MのMは、好ましくは炭素数16以上のモノ不飽和脂肪酸、さらに好ましくは炭素数18以上のモノ不飽和脂肪酸、最も好ましくはオレイン酸である。
【0047】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物において、上記のS
1MS
2とMS
3Mとからなるコンパウンド結晶は、可塑性乳化油脂組成物の油相中、油相基準で好ましくは5質量%以上、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、最も好ましくは5〜20質量%となるように含有させる。
尚、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物において、上記のS
1MS
2とMS
3Mとからなるコンパウンド結晶の含有量は、S
1MS
2とMS
3Mのうち、少ない方の含有量の2倍とみなすことができる。
【0048】
また、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の油相中、油相基準で、上記のS
1MS
2の含有量は、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは2.5〜25質量%、さらに好ましくは2.5〜15質量%、最も好ましくは2.5〜10質量%であり、上記のMS
3Mの含有量は、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは2.5〜25質量%、さらに好ましくは2.5〜15質量%、最も好ましくは2.5〜10質量%である。
【0049】
さらに、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物において、S
1MS
2及びMS
3Mは、S
1MS
2のモル数/MS
3Mのモル数が、好ましくは0.4〜7、さらに好ましくは0.8〜5となるように含有させる。
【0050】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物中に、好ましくは上記のような範囲で、S
1MS
2とMS
3Mとからなるコンパウンド結晶を含有させるためには、本発明ではS
1MS
2を含有する油脂及びMS
3Mを含有する油脂を混合して用いてもよい。
【0051】
上記のS
1MS
2を含有する油脂としては、例えば、蒸留により精製したパーム油、通常精製したパーム油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、コクム脂、デュパー脂、モーラー脂、フルクラ脂、チャイニーズタロー等の各種植物油脂、これらの各種植物油脂を分別した加工油脂、並びに下記に記載するエステル交換油、該エステル交換油を分別した加工油脂を用いることができる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記のエステル交換油としては、蒸留により精製したパーム油、通常精製したパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加及び/又は分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。
【0052】
上記のMS
3Mを含有する油脂としては、例えば、豚脂、豚脂分別油、下記に記載するエステル交換油を用いることができ、本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記のエステル交換油としては、蒸留により精製したパーム油、通常精製したパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加及び/又は分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。
【0053】
上記のS
1MS
2を含有する油脂は、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の油相中、油相基準でS
1MS
2が好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは2.5〜25質量%、さらに好ましくは2.5〜15質量%、最も好ましくは2.5〜10質量%となるよう含有させる。上記のMS
3Mを含有する油脂は、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の油相中、油相基準でMS
3Mが好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは2.5〜25質量%、さらに好ましくは2.5〜15質量%、最も好ましくは2.5〜10質量%となるよう含有させる。
【0054】
ここで、ある可塑性乳化油脂組成物が、直接β型の油脂結晶を含有していることを確認する方法について述べる。
まず、第1の方法として、ある可塑性乳化油脂組成物の油相のトリグリセリド組成を分析し、直接β型の油脂結晶となるトリグリセリド、例えばS
1MS
2及びMS
3Mの油相中の含有量を測定し、直接β型の油脂結晶となるトリグリセリドが油相中に含有されていること、好ましくはその含有量が前記範囲内にあることを確認することにより、可塑性乳化油脂組成物が直接β型の油脂結晶を含有していることを確認する方法が挙げられる。
【0055】
また、第2の方法として、油相中に上記直接β型の油脂結晶となるトリグリセリド、例えば、S
1MS
2及びMS
3Mを含有している油脂が配合されていること、好ましくは上記S
1MS
2及びMS
3Mが油相中に前記範囲内の含有量となるように配合されていることを確認する方法が挙げられる。
【0056】
更に、より簡単な方法である第3の方法として、ある可塑性乳化油脂組成物の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることを確認することによって、可塑性乳化油脂組成物が直接β型の油脂結晶を含有していることを確認する方法が挙げられる。
【0057】
第3の方法においては、可塑性乳化油脂組成物の油相の油脂結晶が微細結晶であることが確認された場合は、油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で7日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることを確認することによって、直接β型の油脂結晶を含有していることを確認することができる。尚、上記微細結晶とは、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、最も好ましくは3μm以下のサイズの油脂結晶を指す。上記サイズとは、結晶の最大部位の長さを示すものである。
【0058】
この場合、5℃で7日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが好ましいが、5℃で4日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることがさらに好ましく、5℃で1日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが一層好ましく、5℃で1時間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることがさらに一層好ましく、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが最も好ましい。
上記の第3の方法において、ある可塑性乳化油脂組成物中の直接β型の油脂結晶の含有量が多いほど、5℃での保持時間が短くても、得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶となる。
【0059】
上記の第3の方法において、5℃での保持期間後に得られた油脂結晶がβ型結晶であることを判断する方法としては、X線回折測定において、以下のように短面間隔を測定することにより判断できる。
具体的には、油脂結晶について、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示した場合に、該油脂結晶はβ型結晶であると判断する。さらにより高い精度で測定する場合は、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度1)及び4.2〜4.3オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比が1.3以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは2.2以上、最も好ましくは2.5以上となった場合にβ型結晶であると判断する。
【0060】
また、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の油相の油脂結晶は、トリグリセリド分子のパッキング状態が2鎖長構造であることが好ましい。この2鎖長構造であることを確認する方法としては、例えばX線回折測定による方法が挙げられる。
具体的には、油脂結晶について、長面間隔を2θ:0〜8度の範囲で測定し、40〜50オングストロームに相当する回折ピークを示した場合に、該油脂結晶は2鎖長構造をとっていると判断する。
【0061】
製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の油相中における上記のS
1MS
2とMS
3Mとからなるコンパウンド結晶の含有量(質量%、油相基準)は、以下の方法によって測定することができる。以下の方法で測定された上記コンパウンド結晶の含有量は、製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の油相中における直接β型の油脂結晶の含有量(質量%、油相基準)とみなすことができる。
まず、製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を60〜65℃に加熱し完全に溶解させる。その後、溶解した上記乳化油脂組成物から油相を分離する。得られた油相について、さらに高速液体クロマトグラフィー等でトリグリセリドを定量すると共にその組成を分析し、該トリグリセリドに含まれるS
1MS
2及びMS
3Mのそれぞれの含有量を得る。S
1MS
2の含有量及びMS
3Mの含有量のうち、少ない方の2倍量をS
1MS
2とMS
3Mとからなるコンパウンド結晶の含有量とする。
ここで、製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物における油相量(質量%)は、以下の方法によって測定することができる。
まず、製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を60〜65℃に加熱し完全に溶解させる。その後、溶解した上記乳化油脂組成物から油相を分離し、その量を上記油相量(質量%)とする。
【0062】
また、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、実質的にトランス酸を含まない方が好ましい。水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。ここで、「実質的にトランス酸を含まない」とは、可塑性乳化油脂組成物の全構成脂肪酸中、トランス酸が好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることをいう。
【0063】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物中、油脂の含有量は、組成物基準で好ましくは51〜94質量%、より好ましくは55〜90質量%、更に好ましくは60〜85質量%である。該油脂の含有量が51質量%未満では、パン生地に添加した際のパン生地への練りこまれやすさ(混合性)が悪化することに加え、得られるパン生地の伸展性が悪化することがあり、その場合、得られるパンの体積が減少し、また内相、食感、更には老化耐性も悪化してしまうおそれがある。一方、94質量%超では、上記(1)グルコマンナン及び(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルを安定的に配合することが困難になってしまうおそれがある。尚、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物に、油脂を含有する副原料を使用した場合は、上記油脂の含有量には、それらの副原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0064】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物における水分含有量は、組成物基準で好ましくは5〜48質量%、より好ましくは9〜44質量%、更に好ましくは14〜39質量%である。ここで、水分含有量が、組成物基準で5質量%未満であると、上記(1)グルコマンナン及び(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルを安定的に配合することが困難になってしまうおそれがある。また、得られるパン生地の伸展性が悪化するおそれがあることに加え、パン生地が乾きやすいため、得られるパンの体積が減少し、食感や老化耐性が悪化してしまうおそれもある。一方、48質量%超では、得られるパン生地が、べとつきやすく、油分が分離しやすくなる。尚、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物に、水分を含有する副原料を使用した場合は、上記水分含有量には、それらの副原料に含まれる水分も含めるものとする。
【0065】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物では、油中水型の乳化形態をとっていることが好ましい。油中水型の乳化形態とは、連続した油相中に水相が分散していることをいう。即ち、油脂組成物がグルコマンナンの膨潤に必要とする水分以上の水分を含有していることが好ましい。また、本発明でいう油中水型には油中水中油型を含むものとする。
【0066】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、タンパク質分解酵素を含有しないことが好ましい。灰分含量の高い小麦粉を使用する場合、上述のように得られるパン生地中のグルテンは弾性が強く脆いという特徴がある。そのため、良好なグルテン構造を得るために、タンパク質分解酵素を使用して、一旦グルテン構造を一部分解するという方法が一般に行われている。しかし、タンパク質分解酵素によって焼成後の保型性に必要な好ましいグルテン構造も一部分解されてしまうため、焼成後あるいはトースト時に型崩れしてしまうという問題が生じやすい。
【0067】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物では、タンパク質分解酵素を使用しなくても良好なグルテン構造を形成することができるため、タンパク質分解酵素を使用しないことが好ましい。タンパク質分解酵素としては、市販品では、商品名「スミチームLPL」(新日本化学工業)、商品名「プロテアーゼA『アマノ』」(天野エンザイム)、商品名「デナチームAP」(ナガセケムテックス)、商品名「パンチダーゼP」(ヤクルト薬品工業)、商品名「PTN」(ノボザイムズジャパン)、商品名「ニュートラーゼ」(ノボザイムズジャパン)等が挙げられる。
【0068】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、必要に応じ一般の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物に使用することのできる上記以外のその他の原料を使用することができる。該その他の原料としては、例えば、α−アミラーゼ、マルトース生成α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼ等のタンパク質分解酵素以外の酵素、グルコマンナン以外の増粘多糖類、グリセリンモノ脂肪酸エステル以外の乳化剤、澱粉類、酸化剤、アミノ酸類、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・乳清ミネラル・カゼイン・ホエーパウダー・乳脂肪球皮膜蛋白質・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳等の乳や乳製品、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0069】
上記その他の原料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができるが、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物中、合計で好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下となる範囲で使用する。
【0070】
次に、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、油相と、グルコマンナン及びグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する水相又は水中油型乳化物とを均一に混合することにより得ることができる。
【0071】
上記油相は、油脂に、必要に応じその他の成分としての油溶性成分を添加したものである。一方、上記水相は、水に、上記(1)グルコマンナン及び(2)グリセリンモノ脂肪酸エステル並びに必要に応じその他の成分としての水溶性成分を添加したものである。上記(1)、(2)成分を水に溶解する際は、先ず(1)成分を溶解してから、(2)成分を溶解する、2段階で溶解することが好ましい。これは、後から(1)成分を添加すると、水和に時間がかかりすぎて好ましくないためである。
【0072】
また、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を油中水中油型とする場合には、常法に従って、上記水相に、油相の一部を予め添加混合して水中油型乳化物としておく。該水中油型乳化物の油相(油中水中油型乳化油脂組成物の最内相)は、後から用いる油相(油中水中油型乳化油脂組成物の最外相)と同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0073】
上記油相と、上記水相又は上記水中油型乳化物との混合は、均一に混合できればよく、常法に従って行えばよい。
【0074】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の好ましい製造方法について、油中水型乳化物の場合を例にさらに説明する。
先ず、上述のようにして、油相と水相をそれぞれ用意する。次に、上記油相を溶解し、そこへ上記水相を加え、混合乳化し予備乳化物を得る。そして次に、この予備乳化物を必要に応じて殺菌処理する。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
【0075】
次に、上記予備乳化物を冷却化し、結晶化させて、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を得る。冷却の際には、冷却可塑化する。冷却速度は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より、急速冷却の方が好ましい。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
また、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を製造する際の何れかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
【0076】
尚、タンパク質分解酵素を含有する製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、以下の方法で製造することが好ましい。
グリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する第1の水相又は水中油型乳化物と、タンパク質分解酵素を含有する第2の水相又は水中油型乳化物とを用意し、油相と第1の水相又は水中油型乳化物とを混合、冷却可塑化させ、得られた可塑性乳化油脂組成物に、第2の水相又は水中油型乳化物を混合する。尚、第1の水相又は水中油型乳化物及び第2の水相又は水中油型乳化物は、その組成が、グリセリンモノ脂肪酸エステル及びタンパク分解酵素以外の成分について同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0077】
本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は、山形食パン、角型食パン、コッペパン、バラエティブレッド、ロールパン、菓子パン、スイートロール、デニッシュ・ペストリー、バンズ、ブリオッシュ、マフィン、ベイグル、スコーン、イングリッシュマフィン、ドーナツ、ピザ、蒸しパン、ワッフル等の各種パン生地に用いることができる。
【0078】
次に、本発明のパン生地について述べる。
本発明のパン生地は、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を使用したパン生地である。
本発明のパン生地における本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物の使用量は、従来の製パン練り込み用可塑性油脂組成物と同様であり、パンの種類によっても異なるが、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは4〜20質量部である。
【0079】
上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、小麦粉を、穀粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
【0080】
小麦粉以外の穀粉類を使用する場合、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は穀粉類とグルテンをあわせた合計量に対し、タンパク質含量が好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜18質量%となる量である。
【0081】
また、小麦粉を使用する場合、小麦粉の灰分含量はどのようなものであっても使用可能であり、灰分含量が0.45質量%以上のものであっても使用することができる。一般にこのような灰分含量の高い小麦粉は、パン生地、特に食パン生地には適していないとされるが、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を使用することにより、灰分含量が0.45質量%未満である一般的な小麦粉と同様の品質のパンを得ることができる。
【0082】
本発明のパン生地においては、必要に応じ、一般の製パン材料として使用することのできるその他の原料を使用することができる。該その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
【0083】
上記その他の原料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができるが、水については、好ましくは、上記穀粉類100質量部に対して合計で30〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部となる範囲で使用する。また、水以外のその他の原料については、好ましくは、上記穀粉類100質量部に対して合計で100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。
【0084】
次に、本発明のパン生地を製造する方法について説明する。
本発明のパン生地は、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を生地に練り込むことにより、製造することができる。
本発明のパン生地は、中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等、従来から製パン法として使用されているあらゆる製パン法を採ることができる。尚、本発明のパン生地を中種法で製造する場合は、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を中種生地及び/又は本捏生地に練り込むことにより製造することができる。
また、得られた本発明のパン生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
【0085】
上記の本発明のパン生地を、適宜、分割、成形し、必要に応じホイロ、リタード、レストをとった後、加熱処理することによりパンを得ることができる。
上記成形は、どのような形状に成形してもよく、型詰めを行っても構わない。これらの成形は、手作業で行っても、連続ラインを用いて全自動で行っても構わない。
上記加熱処理としては、焼成、蒸し、フライ等を挙げることができる。尚、これらのうちの2種以上の加熱処理を併用してもよい。
また、得られたパンを、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
【実施例】
【0086】
以下に、本発明の実施例、比較例、使用例等によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等によって制限されるものではない。
下記実施例1〜15及び比較例1〜5においては、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物及び比較用の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物をそれぞれ製造し、下記使用例1〜16及び比較使用例1〜5においては、これらの製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物をそれぞれ用いてパン生地を製造し、該パン生地からパンを焼成し、得られたパンの評価を行った。パン生地の製造に際し、使用例1〜15及び比較使用例1〜5においては灰分含量の高い小麦粉を使用し、使用例16においては灰分含量の低い小麦粉を使用した。
尚、以下の実施例等において、Sは飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す。
【0087】
〔実施例1〕
<可塑性乳化油脂組成物1の製造>
パームオレイン(ヨウ素価56)のランダムエステル交換油脂80質量部及び大豆油20質量部を均一に混合した混合油脂68.47質量部に、60%トコフェロール0.01質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステル1.5質量部及び香料0.02質量部を、添加、混合、溶解した油相を60℃に保温した。
一方、水22.9質量部に、(1)成分としてグルコマンナン含有物質(グルコマンナンの純度が70質量%、残部の不純物は、澱粉類、シュウ酸、シュウ酸カリウム等、以下同じ)0.1質量部を添加、溶解させ、60℃に調温した。ここに(2)成分としてグリセリンモノパルミチン酸エステル3.0質量部を添加し分散させた後、60℃に保ったまま、クエン酸を用いてpHを4に調整して水相1を得た。
【0088】
上記油相に上記水相1を加え混合乳化し予備乳化物とした後、コンビネーターを用いて急冷可塑化を行った。
さらに15℃まで冷却し、ここに、水3.92質量部、タンパク質分解酵素の液体製剤(ノボザイムズジャパン社製、商品名:ニュートラーゼ、酵素の純タンパク質含量は30質量%)0.08質量部を混合して調製した水相2を添加し、インラインミキサーで均一に混合し、油中水型の本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物1を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物1の油相中において、油相基準でSMSの含有量は7.5質量%で、MSMの含有量は6.5質量%であった。
【0089】
〔実施例2〕
<可塑性乳化油脂組成物2の製造>
パームオレイン(ヨウ素価56)のランダムエステル交換油脂80質量部及び大豆油20質量部を均一に混合した混合油脂68.47質量部に、60%トコフェロール0.01質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステル1.5質量部及び香料0.02質量部を、添加、混合、溶解した油相を60℃に保温した。
一方、水26.9質量部に、(1)成分としてグルコマンナン含有物質0.1質量部を添加、溶解させ、60℃に調温した。ここに(2)成分としてグリセリンモノパルミチン酸エステル3.0質量部を添加し分散させた後、60℃に保ったまま、クエン酸を用いてpHを4に調整して水相を得た。
【0090】
上記油相に上記水相を加え混合乳化し予備乳化物とした後、コンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、油中水型の本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物2を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物2の油相中において、油相基準で、SMSの含有量は7.5質量%で、MSMの含有量は6.5質量%であった。
【0091】
〔実施例3〕
<可塑性乳化油脂組成物3の製造>
水を26.94質量部、グルコマンナン含有物質を0.06質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物3を得た。
【0092】
〔実施例4〕
<可塑性乳化油脂組成物4の製造>
水を24.60質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステルを5.0質量部、グルコマンナン含有物質を0.40質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物4を得た。
【0093】
〔実施例5〕
<可塑性乳化油脂組成物5の製造>
水を26.98質量部、グルコマンナン含有物質を0.02質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物5を得た。
【0094】
〔実施例6〕
<可塑性乳化油脂組成物6の製造>
水を26.30質量部、グルコマンナン含有物質を0.70質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物6を得た。
【0095】
〔実施例7〕
<可塑性乳化油脂組成物7の製造>
水を26.00質量部、グルコマンナン含有物質を1.00質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物7を得た。
【0096】
〔実施例8〕
<可塑性乳化油脂組成物8の製造>
水を24.50質量部、グルコマンナン含有物質を2.50質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物8を得た。
【0097】
〔実施例9〕
<可塑性乳化油脂組成物9の製造>
水を29.30質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステルを0.6質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物9を得た。
【0098】
〔実施例10〕
<可塑性乳化油脂組成物10の製造>
水を20.90質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステルを9.0質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物10を得た。
【0099】
〔実施例11〕
<可塑性乳化油脂組成物11の製造>
パームオレイン(ヨウ素価65)のランダムエステル交換油脂95質量部及びパームステアリン5質量部を均一に混合した混合油脂68.47質量部に、60%トコフェロール0.01質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステル1.5質量部及び香料0.02質量部を、添加、混合、溶解した油相を60℃に保温した。
一方、水26.9質量部に、(1)成分としてグルコマンナン含有物質0.1質量部を添加、溶解させ、60℃に調温した。ここに(2)成分としてグリセリンモノパルミチン酸エステル3.0質量部を添加し分散させた後、60℃に保ったまま、クエン酸を用いてpHを4に調整して水相を得た。
上記油相に上記水相を加え混合乳化し予備乳化物とした後、コンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、油中水型の本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物11を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物11の油相中において、油相基準で、SMSの含有量は7.1質量%で、MSMの含有量は7.0質量%であった。
【0100】
〔実施例12〕
<可塑性乳化油脂組成物12の製造>
パーム油80質量部及び大豆油20質量部を均一に混合した混合油脂68.47質量部に、60%トコフェロール0.01質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステル1.5質量部及び香料0.02質量部を、添加、混合、溶解した油相を60℃に保温した。
一方、水26.9質量部に、(1)成分としてグルコマンナン含有物質0.1質量部を添加、溶解させ、60℃に調温した。ここに(2)成分としてグリセリンモノパルミチン酸エステル3.0質量部を添加し分散させた後、60℃に保ったまま、クエン酸を用いてpHを4に調整して水相を得た。
上記油相に上記水相を加え混合乳化し予備乳化物とした後、コンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、油中水型の本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物12を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物12の油相中において、油相基準で、SMSの含有量は19.9質量%で、MSMの含有量は1.3質量%であった。
【0101】
〔比較例1〕
<可塑性乳化油脂組成物13の製造>
グルコマンナン含有物質0.1質量部を0.0質量部とし、水を27質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物13を得た。
【0102】
〔比較例2〕
<可塑性乳化油脂組成物14の製造>
グルコマンナン含有物質0.1質量部に代えてキサンタンガムを0.1質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物14を得た。
【0103】
〔比較例3〕
<可塑性乳化油脂組成物15の製造>
グルコマンナン含有物質0.1質量部に代えてアルギン酸ナトリウムを0.1質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物15を得た。
【0104】
〔比較例4〕
<可塑性乳化油脂組成物16の製造>
パームオレイン(ヨウ素価56)のランダムエステル交換油脂80質量部及び大豆油20質量部を均一に混合した混合油脂68.47質量部に、60%トコフェロール0.01質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステル1.5質量部、コハク酸モノグリセリン脂肪酸エステル3.0質量部及び香料0.02質量部を、添加、混合、溶解した油相を60℃に保温した。
一方、水26.9質量部に、(1)成分としてグルコマンナン含有物質0.1質量部を添加、溶解させ、60℃に調温した。さらに、クエン酸を用いてpHを4に調整して水相を得た。
上記油相に上記水相を加え混合乳化し予備乳化物とした後、コンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、油中水型の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物16を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物16の油相中において、油相基準で、SMSの含有量は7.5質量%で、MSMの含有量は6.5質量%であった。
【0105】
〔比較例5〕
<可塑性乳化油脂組成物17の製造>
パームオレイン(ヨウ素価56)のランダムエステル交換油脂80質量部及び大豆油20質量部を均一に混合した混合油脂68.47質量部に、60%トコフェロール0.01質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステル4.5質量部及び香料0.02質量部を、添加、混合、溶解した油相を60℃に保温した。
一方、水26.9質量部に、(1)成分としてグルコマンナン含有物質0.1質量部を添加、溶解させ、60℃に調温した。さらに、クエン酸を用いてpHを4に調整して水相を得た。
上記油相に上記水相を加え混合乳化し予備乳化物とした後、コンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、油中水型の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物17を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物17の油相中において、油相基準で、SMSの含有量は7.5質量%で、MSMの含有量は6.5質量%であった。
【0106】
〔実施例13〕
<可塑性乳化油脂組成物18の製造>
水を24.45質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステルを5.0質量部、グルコマンナン含有物質を0.55質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物18を得た。
【0107】
〔実施例14〕
<可塑性乳化油脂組成物19の製造>
水を23.5質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステルを5.0質量部、グルコマンナン含有物質を1.5質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物19を得た。
【0108】
〔実施例15〕
<可塑性乳化油脂組成物20の製造>
水を17.4質量部、グリセリンモノパルミチン酸エステルを12.5質量部とした以外は<可塑性乳化油脂組成物2の製造>と同様の方法で本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物20を得た。
【0109】
上記の実施例1において、得られた可塑性乳化油脂組成物1が、水相中にグリセリンモノパルミチン酸エステルを含有していることは、以下の方法で確認した。
まず、可塑性乳化油脂組成物1を60〜65℃で完全に溶解させ、溶解した該乳化油脂組成物1から油相を分離し水相部分だけを100〜110℃で完全に乾燥させた。その後、乾燥した水相部分中に含まれる脂質成分をガスクロマトグラフィーで分析することにより、水相中のグリセリンモノパルミチン酸エステルの存在を確認した。実施例2〜15においても同様の確認を行った。
【0110】
〔使用例1〜15、比較使用例1〜5〕
<プルマン型食パンの配合・製法>
強力粉(輸入小麦粉、タンパク質含量13.0質量%、灰分0.52質量%)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。
この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、更に、強力粉(輸入小麦粉、タンパク質含量13.0質量%、灰分0.52質量%)30質量部、上白糖5質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.5質量部及び水25質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。ここで、製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物8質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、 モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
尚、各使用例、比較使用例で使用した製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物は表2−1及び2−2に示した。
【0111】
〔使用例16〕
強力粉(輸入小麦粉)に代えて、強力粉(商品名:カメリア、日清製粉製、タンパク質含量11.8質量%、灰分0.37質量%)を用いた以外は使用例1と同様にしてプルマン型食パンを得た。
【0112】
以上の各使用例及び比較使用例で得られたプルマン型食パンについて、下記評価基準に従って、生地作業性、外観(着色、体積、保型性)、内相(キメ、色相)、風味、食感(しとり感、ソフト性、歯切れ)、二日後の食感、及びトースト時の形状の評価を行った。評価結果を表2−1及び2−2に示す。尚、表1−1及び1−2には、使用した可塑性乳化油脂組成物1〜20中のSMS及びMSM含量、グリセリンモノ脂肪酸エステル含量並びにグルコマンナン含量をまとめた。
【0113】
<評価基準>
・生地作業性
◎:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった。
○:良好な作業性であった。
△:ややべとつきが感じられるか、又は、やや伸展性が悪く、若干劣る作業性であった。×:べとつきがあるか、又は、伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
・外観(着色)
◎:きわめて良好
○:良好
△:ややくすんだ焼き色である。
×:赤茶けた色である。
・外観(体積)
◎:体積が大きく、細い均一なホワイトラインを有し、上面の4隅の角もしっかり出たプルマンブレッドである。
○:体積が大きく、ホワイトラインを有し、上面の4隅の角もしっかり出たプルマンブレッドである。
△:体積がやや小さく、明瞭なホワイトラインがなく、上面の4隅の角も丸いプルマンブレッドであった。
×:体積が小さいため、上面が平らにならず、曲面であるプルマンブレッドである。
・外観(保型性)
◎:腰折れは全く見られなかった。
○:若干の焼き細りはあるが、腰折れは見られなかった。
△:若干の腰折れが見られた。
×:激しい腰折れが見られた。
【0114】
・内相(キメ)
◎:気泡膜が薄く、均一で、タテ目である。
○:気泡膜が薄く、均一である。
△:不均一で、やや目が詰まっている。
×:気泡膜が厚く、不均一で、目が詰まっている。
・内相(色相)
◎:光沢のある白色であり、きわめて良好
○:ほぼ白色であり良好
△:ややくすんだ色である。
×:暗くくすんだ色である。
・風味
◎:きわめて良好
○:良好
△:エグ味がありムレ臭がある。
×:エグ味がありムレ臭が激しい。
【0115】
・食感(しとり感)
◎:きわめて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(ソフト性)
◎:きわめて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(歯切れ)
◎:きわめて良好
○:良好
△:ややねちゃつく
×:ねちゃつきが激しい
【0116】
・2日後の食感
◎:ソフトで歯切れも良好である。
○:ソフトである。
△:硬い食感でありやや悪い。
×:硬い食感でヒキが強く極めて悪い。
・2日後にトーストした際の形状
◎:形状の変化がなく極めて良好である。
○:形状にわずかな歪みが見られる。
△:形状に歪みがみられる。
×:形状が大きく湾曲し、極めて悪い。
【0117】
【表1-1】
【0118】
【表1-2】
【0119】
【表2-1】
【0120】
【表2-2】
【0121】
表2−1の結果から、本発明の製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を使用すると、たとえ、灰分含量の高い小麦粉を使用した場合であっても、得られたパン生地はべたつきがなく伸展性が良好であり、また、該パン生地を用いて得られたパンは、内相がタテ目で均一であり、色相も良く、ムレ臭がなく良好な風味であり、ソフトで良好なしとり感、歯切れを有し、耐老化性に優れたものであることがわかる。
これに対して、表2−2の結果から、水相中に(1)グルコマンナン及び(2)グリセリンモノ脂肪酸エステルの一つでも欠けた製パン練り込み用可塑性乳化油脂組成物を使用すると、製パン作業性とパンの品質の全てを満足するものにならないことがわかる。