(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、モッコ式の起重機には、以下のような課題があることを本発明者らは見出した。
図23は公知とされたものではないが、本発明者が検討した起重機であるクレーン50の要部斜視図を示しており、その概要は以下のとおりである。
【0007】
クレーン50の第1、第2ワイヤドラム51a,51bに巻回されたワイヤロープ52a〜52dは、それぞれパイロン53に設置されたシーブ54a〜54dと、副トロリ55に設置されたシーブ56a〜56dと、主トロリ57に設置されたシーブ58a〜58dとを順に介してモッコ59に接続されている。
【0008】
パイロン53および主トロリ57には、油圧シリンダ等のようなシリンダ装置60a〜60d,61a〜61dが設置されており、これにより各々のシーブ54a〜54d,58a〜58dを水平方向に移動させることが可能になっている。パイロン53上のシリンダ装置60a〜60dは動力源と接続されているが、主トロリ57上のシリンダ装置61a〜61dは動力源とは接続されておらず、ワイヤロープ52a〜52dの張力変化を動力として受動的に作動するようになっている。
【0009】
モッコ59の旋回操作に際しては、パイロン53上のシリンダ装置60a〜60dを駆動することによりパイロン53上の一対のシーブ54a,54cまたは一対のシーブ54b,54dを互いに逆方向に移動すると、一対のワイヤロープ52a,52cまたは一対のワイヤロープ52b,52dの張力の変化に応じて主トロリ57上のシリンダ装置61a〜61dが受動的に駆動して主トロリ57上の一対のシーブ58a,58cまたはシーブ58b,58dが互いに逆方向に移動することにより、一対のワイヤロープ52a,5
2cまたはワイヤロープ52b,52dの各々に加わる力が変わりモッコ59が旋回する。
【0010】
しかしながら、このクレーン50においては、主トロリ57上にモッコ59の旋回機構としてシリンダ装置61a〜61dを設置するため、主トロリの構造が複雑になるとともに大型重量化する、という問題がある。
【0011】
また、運搬物収容体としてモッコ59等のように自重の軽いものを用いる場合、パイロン53上のシリンダ装置60a〜60dを駆動しても、ワイヤロープ52a〜52dの荷重差が小さく、主トロリ57上のシリンダ装置61a〜61dの摺動抵抗がワイヤロープ52a〜52dの張力よりも大きいために、主トロリ57上のシーブ58a〜58dが移動せず、モッコ59を旋回させることができない場合が生じる、という問題がある。
【0012】
本発明の目的は、運搬物を収容した運搬物収容体を動力により吊り上げ、かつ、上下方向および横方向に移動して荷役を行う起重機において、運搬物収容体を移動させるトロリの構造の簡単化および小型軽量化を実現することが可能な起重機を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、運搬物を収容した運搬物収容体を動力により吊り上げ、かつ、上下方向および横方向に移動して荷役を行う起重機において、運搬物収容体の旋回操作を良好に行うことが可能な起重機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の起重機は、運搬物を収容した運搬物収容体を鉛直方向である第1方向に吊り上げて、該第1方向に対して交差する第2方向に移動して荷役を行う起重機において、前記運搬物収容体が運搬袋であり、前記第1方向に地面から離れた位置において前記第2方向に延在する橋桁部と、該橋桁部に前記運搬袋を吊り下げた状態で前記第2方向に移動可能に設置された主トロリと、該主トロリから離間して設置された副トロリと、前記運搬袋に接続された複数本の吊索を巻き上げる吊索巻上機と、前記運搬袋を前記第1方向に交差する面内で旋回させる旋回機構とを備え、前記運搬袋に接続された複数本の吊索をそれぞれ、前記主トロリに設置された第1の滑車群と、前記副トロリに設置された第2の滑車群と、前記橋桁部上に設置された第3の滑車群との各滑車を順に介して前記吊索巻上機に接続するとともに、前記旋回機構は、前記第3の滑車群のうちの少なくとも一対の滑車を互いに逆方向に能動的に移動させる旋回用第1手段と、前記主トロリに支持軸を介して回転可能な状態で軸支されるリンクからなる旋回用第2手段とを備え、
前記第1の滑車群が4つの滑車からなり、前記4つの滑車がその軸方向に並んだ状態で前記主トロリに配置され、前記主トロリには2つの前記リンクが設置され、前記4つの滑車のうち一方から数えて第1番目と第3番目とが一方の前記リンクの前記支持軸を中心とする両側にそれぞれ接続され、第2番目と第4番目とが他方の前記リンクの前記支持軸を中心とする両側にそれぞれ接続され、前記一方のリンクの前記支持軸が上方に延びて前記主トロリの天井部に設置され、前記他方のリンクの前記支持軸が下方に延びて前記主トロリの基台に設置され、平面視において2つの前記リンクの少なくとも一部が重なる構成を備えていて、前記第3の滑車群の一対の滑車を互いに逆方向に移動させることにともなう一対の吊索の張力差に応じて前記リンクを従動的に回転させて該一対の吊索が掛かった前記第1の滑車群の一対の滑車を互いに逆方向に従動的に移動するように構成したことを特徴とする。
【0015】
主トロリの運搬袋の旋回用第2手段を、揺動体の回転軸回り方向への揺動により主トロリ上の第1の滑車群の一対の滑車を互いに逆方向に移動させるように構成したことにより、摺動抵抗を小さくすることができる上、てこの原理を利用して小さな力で大きな動力を得ることができる。このため、自重の軽いモッコ等のような運搬袋を用いた場合でも、小さな吊索荷重差で主トロリの一対の第1の滑車を移動させることができるので、運搬袋の旋回操作を良好に行うことができる。
【0016】
主トロリと運搬袋との間に配置される吊具を備えていて、吊具の上面の四隅近傍に吊索を接続するロープ接続部が配置される構成にすることができる。
【0017】
二組の一対の吊索の各々は、運搬袋の上部において互いに対角の位置関係になるように接続されていて、一対の吊索をそれぞれ結ぶ対角線どうしは交差する構成にすることができる。
【0018】
第1の滑車群が4つの滑車からなり、4つの滑車がその軸方向に並んだ状態で主トロリに配置され、主トロリには2つのリンクが設置され、4つの滑車のうち一方から数えて第1番目と第3番目とが一方のリンクに接続され、第2番目と第4番目とが他方のリンクに接続される構成にすることもできる。この一方のリンクの支持軸が上方に延びて主トロリの天井部に設置され、他方のリンクの支持軸が下方に延びて主トロリの基台に設置され、
平面視において2つのリンクの少なくとも一部が重なる構成にすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の起重機によれば、運搬物を収容した運搬物収容体を鉛直方向である第1方向に吊り上げて、該第1方向に対して交差する第2方向に移動して荷役を行う起重機において、主トロリの旋回用第2手段を、揺動体の回転軸回り方向への揺動により、第1の滑車群の一対の滑車を互いに逆方向に従動的に移動させるように構成したことにより、旋回用第2手段としてシリンダ装置等を用いないので、主トロリの構造の簡単化および小型軽量化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の起重機について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1に本実施の形態の起重機であるクレーン1の全体構成を示す。なお、以下の説明では、便宜上、鉛直方向である第1方向をZ軸方向で示し、これに交差(直交)する第2方向をX軸方向で示す。
【0023】
クレーン1は、岸壁2に接岸係留中のばら積み船3と岸壁2の仮貯場4との間において、穀物、鉱石、石炭または型銑等のばら積み貨物(運搬物)5をモッコ(運搬物収容体、運搬袋)6に収容した状態でZ軸方向に動力により吊り上げ、X軸方向に移動して荷役を行う装置である。
【0024】
ここでは、クレーン1として橋形クレーンを例示しているが、これに限定されるものではなく種々適用可能であり、例えば天井クレーンまたはジブクレーン(つち型クレーン、引込みクレーン等)を適用しても良い。また、運搬物は、ばら積み貨物に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば土砂やゴミを運搬物としても良い。
【0025】
クレーン1は、岸壁2の上面においてZ軸方向に立設する海および陸側の脚部8a,8bと、これら脚部8a,8bを橋渡すようにX軸方向に延在する橋桁部(桁部)9とを有している。
【0026】
これら脚部8a,8bは、岸壁2の上面において走行可能な状態で設置されている。また、橋桁部9は、脚部8a,8b間に設けられたガーダ9aと、このガーダ9aよりも海側に延在したブーム9bとを有している。特に限定されるものではないが、岸壁2の上面からガーダ9aまでの高さは、例えば30m程度、橋桁部9の長手方向の全長は、例えば100m程度、ばら積み船3の船倉3aからブーム9bまでの距離は、例えば10m程度である。
【0027】
この橋桁部9上には、主トロリ10および副トロリ11がX軸方向に横行(移動)可能に、かつ、互いに離間して設置されている。主トロリ10は、モッコ6を吊り下げた状態で橋桁部9上を横行することで、モッコ6をX軸方向に移動させる移動体である。この主トロリ10の下方には、モッコ6のZ軸方向およびX軸方向の移動を操作するための運転席12が設置されている。
【0028】
また、橋桁部9上において、脚部8bと交差する部分には、これらに対して斜めになるようにパイロン(支柱)8cが設置されている。主トロリ10、副トロリ11およびパイロン8cの各々には、後述のように複数のシーブ(滑車)が設けられている。
【0029】
また、橋桁部9上には、機械室15が設置されている。この機械室15には、第1ワイヤドラム15aおよび第2ワイヤドラム15bが設置されている。この第1、第2ワイヤドラム15a,15bは、それぞれに巻回されたワイヤロープ16を通じてモッコ6をZ軸方向に吊り上げる吊索巻上機である。第1、第2ワイヤドラム15a,15bの各々には、ドラム駆動用の電動機および減速機が接続されている。この電動機への電力供給は、岸壁2に設置された図示しない給電設備により行われる。
【0030】
このワイヤドラム15a,15bから巻出されたワイヤロープ16は、パイロン8c、副トロリ11および主トロリ10の各々のシーブを順に介してモッコ6に接続されている。このようなワイヤロープ16の架け回しにより、パイロン8c、副トロリ11および主トロリ10の各々のシーブとワイヤロープ16との係合力を高めることができる。このため、ワイヤロープ16の巻出しおよび巻き取りを円滑に行うことができる上、ワイヤロープ16がシーブから外れる不具合を防止することができる。したがって、ワイヤロープ16の高速巻出しおよび巻き取りが可能となり、主トロリ10の高速横行が可能となるので、荷役作業の効率を向上させることができる。ここで、複数のシーブを有する副トロリ11を、橋桁部9又はパイロン8cに固定して構成してもよい。
【0031】
次に、クレーン1の要部について
図2〜
図15を参照しながら詳細に説明する。なお、
以下の説明では、X軸方向に直交する方向をY軸方向で示す。
【0032】
図2はクレーン1の要部斜視図を模式的に示している。
図2に示すように、モッコ6は、例えば鋼製または布製の網で形成されており、その平面形状は、例えば一辺が6m程度の方形状に形成されている。このモッコ6の各角部には、ロープ接続部17a〜17dが設けられており、その各々にはワイヤロープ16a〜16d(16)が接続されている。
【0033】
モッコ6は、4本のワイヤロープ16a〜16dによって支持された状態でX軸およびZ軸方向に移動可能になっているとともに、Z軸を中心として回転する回転方向Rに旋回可能になっている。なお、α、βはモッコ6の旋回角度を示しており、特に限定されるものではないが、X軸に対して、例えば±45度またはそれ以上の予め決められた範囲内で旋回させることが可能になっている。
【0034】
4本のワイヤロープ16a〜16dのうち、ロープ接続部17a,17dに接続された2本のワイヤロープ16a,16dは、主トロリ10、副トロリ11およびパイロン8cの各々の最外側に配置された2つのシーブ20a,20d、21a,21d、22a,22dを順に介して、第1ワイヤドラム15aに巻き上げられている。
【0035】
一方、モッコ6のロープ接続部17b,17cに接続された2本のワイヤロープ16b,16cは、主トロリ10、副トロリ11およびパイロン8cの各々の内側に配置された2つのシーブ20b,20c、21b,21c、22b,22cを順に介して、第2ワイヤドラム15bに巻き上げられている。
【0036】
また、4本のワイヤロープ16a〜16dのうち、モッコ6において互いに対角に位置するロープ接続部17a,17cに接続されたワイヤロープ16a,16cにより一つの対が形成され、モッコ6において互いに対角に位置するロープ接続部17b,17dに接続されたワイヤロープ16b,16dにより一つの対が形成されている。
【0037】
なお、主トロリ10の下方において、ワイヤロープ16a,16d間およびワイヤロープ16b,16c間には、それぞれリンクバー24が接続されている。これにより、モッコ6の開口幅が規定されるとともに、シーブ20a〜20dからワイヤロープ16a〜16dが外れないようになっている。また、符号6a,6bはモッコ6の排出縁を示している。
【0038】
次に、
図3はクレーン1の初期状態時のパイロン8c部分の平面図、
図4は
図3のB方向から見たパイロン8c部分の側面図を示している。なお、クレーン1の初期状態とはモッコ6の荷役操作や旋回操作を行っていない時の状態をいう。
【0039】
図2〜
図4に示すように、パイロン8cには、4つのシーブ(第3の滑車)22a〜22dが軸方向に並んで配置されている。各シーブ22a〜22dは、各ケース25a〜25dに回転可能な状態で内包されている。
【0040】
この4つのシーブ22a〜22dのうち、最外側の2つのシーブ22a,22dは、隣接する中央のシーブ22b,22cからそれぞれ海側と陸側に距離Lだけ離れて配置されている。これにより、互いに隣接するワイヤロープ16a,16b間およびワイヤロープ16c,16d間の干渉を防止することができ、また、ワイヤロープ16a,16dとワイヤロープ16b,16cとが略平行な状態で均衡を保つことができる。
【0041】
また、この4つのシーブ22a〜22dのうち、一対のワイヤロープ16a,16cが架かるシーブ22a,22cにより一つの対が形成され、他の一対のワイヤロープ16b
,16dが架かるシーブ22b,22dにより一つの対が形成されている。
【0042】
このようなシーブ22a〜22dは、それぞれ伸縮装置(旋回用第1手段)26a〜26dに接続されている。伸縮装置26a〜26dは、
図2のモッコ6を回転方向Rに旋回させる装置であり、例えば油圧シリンダ装置、空圧シリンダ装置または電動シリンダ装置により形成されている。
【0043】
伸縮装置26a〜26dのロッド26ar〜26drは、X軸方向に伸縮することが可能となっている。この各ロッド26ar〜26drはシーブ22a〜22dのケース25a〜25dに接続されている。これにより、シーブ22a〜22dは、X軸方向に往復運動することが可能になっている。
【0044】
この伸縮装置26a〜26dのうち、一対のシーブ22a,22cに接続された一対の伸縮装置26a,26cは、モッコ6の旋回操作に際して、伸縮ロッド26ar,26crがX軸方向において互いに逆方向に伸縮し、一対のシーブ22a,22cがX軸方向において互いに逆方向に移動するように制御される。
【0045】
一方、一対のシーブ22b,22dに接続された一対の伸縮装置26b,26dは、モッコ6の旋回操作に際して、伸縮ロッド26br,26drがX軸方向において互いに逆方向に伸縮し、一対のシーブ22b,22dがX軸方向において互いに逆方向に移動するように制御される。
【0046】
伸縮装置26a〜26dとして油圧シリンダ装置を用いた場合は、一対の伸縮装置のヘッド側同士およびロッド側同士を油圧配管で接続して、一方の油圧シリンダ装置のロッドが延びると、他方の油圧シリンダ装置のロッドが自動的に縮むように設定する。伸縮装置26a〜26dは、シリンダ装置に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば後述のシーソー型のリンク機構を用いても良い。これにより、伸縮装置の構造を簡単化することができるとともに、小型軽量化することができる。また、シリンダ装置に比べてメンテナンス作業を容易にすることもできる。
【0047】
次に、
図5は副トロリ11の平面図、
図6は
図5のB方向から見た副トロリ11の側面図を示している。
図2、
図5および
図6に示すように、副トロリ11には、4つのシーブ(第2の滑車)21a〜21dが各回転軸位置を一致させた状態で軸方向に並んで配置されている。各シーブ21a〜21dは、各ケース27a〜27dに回転可能な状態で内包されている。
【0048】
次に、
図7は主トロリ10の平面図、
図8は
図7のB方向から見た主トロリ10の側面図、
図9は
図7のB方向に直交するC方向から見た主トロリ10の側面図を示している。
【0049】
図2、
図7〜
図9に示すように、主トロリ10には、4つのシーブ(第1の滑車)20a〜20dが軸方向に並んで配置されている。各シーブ20a〜20dは、各ケース28a〜28dに回転可能な状態で内包されている。
【0050】
パイロン8c部分で説明したのと同様に、主トロリ10の最外側の2つのシーブ20a,20dも、これらに隣接する中央のシーブ20b,20cからそれぞれ海側と陸側に距離Lだけ離れて配置されている。これにより、互いに隣接するワイヤロープ16a,16b間およびワイヤロープ16c,16d間の干渉を防止することができ、また、ワイヤロープ16a,16dとワイヤロープ16b,16cとが略平行な状態で均衡を保つことができる。
【0051】
このシーブ20a〜20dのうち、一対のワイヤロープ16a,16cが架かるシーブ20a,20cにより一つの対が形成され、一対のワイヤロープ16b,16dが架かるシーブ22b,22dにより一つの対が形成されている。
【0052】
この一対のシーブ20a,20cは、シーソー型のリンク機構(旋回用第2手段)30Aにより互いに接続されており、モッコ6の旋回操作時にX軸方向において互いに逆方向に移動するようになっている。同様に、一対のシーブ20b,20dは、シーソー型のリンク機構(旋回用第2手段)30Bにより互いに接続されており、モッコ6の旋回操作時にX軸方向において互いに逆方向に移動するようになっている。
【0053】
このシーソー型のリンク機構30A,30Bは、
図2のモッコ6を回転方向Rに旋回させる装置であり、リンク(揺動体)31a,31bと、支持軸32a,32bと、ロッド33a,33bとを有している。
【0054】
リンク31a,31bは、支持軸32a,32bを中心にしてXY軸で形成される水平面に沿って揺動可能な状態で設置されている。支持軸32a,32bは、主トロリ10の基台10a上に立設されており、リンク31a,31bの揺動運動を邪魔しないように離れて配置されている。
【0055】
リンク機構30Aのリンク31aの長手方向一端は、一方のロッド33aを介してケース28aに接続され、リンク31aの長手方向の他端は、他方のロッド33aを介してケース28cに接続されている。同様に、リンク機構30Bのリンク31bの長手方向一端は、一方のロッド33bを介してケース28bに接続され、リンク31bの長手方向の他端は、他方のロッド33bを介してケース28dに接続されている。
【0056】
このロッド33a,33bの一端とリンク31a,31bの一端とはXY軸で形成される水平面に沿って回転可能な状態で接続されている。また、ロッド33a,33bの他端とケース28a〜28dとはXY軸で形成される水平面に沿って回転可能な状態で接続されている。
【0057】
ここで、上記のパイロン8cの伸縮装置26a〜26dでは動力源として油圧ポンプや空気圧ポンプ等を備えているのに対して、シーソー型のリンク機構部30A,30Bは、油圧ポンプや空気圧ポンプ等のような動力源を備えておらず、パイロン8cの伸縮装置26a〜26dの駆動によるワイヤロープ16a〜16dの張力変化を動力源として、ワイヤロープ16a〜16dにかかる張力の均衡が保たれるように従動的に駆動するようになっている。
【0058】
ただし、リンク機構30A,30Bにダンパを設けることによりリンク31a,31bの急激な揺動を抑えるようにしても良い。
【0059】
次に、
図10および
図11にシーソー型のリンク機構30Aの駆動状態を示す。なお、リンク機構30Bの駆動は同じなので説明を省略する。
【0060】
図10に示すように、リンク機構30Aのリンク31aが左回転(反時計回り)方向に揺れると、一対のシーブ20a,20cのうちのシーブ20aは、矢印Dに示すようにX軸方向の海側(
図10の左方向)に直線移動するのに対して、シーブ20cは、矢印Eに示すようにX軸方向の陸側(
図10の右方向)に直線移動する。
【0061】
一方、
図11に示すように、リンク機構30Aのリンク31が右回転(時計回り)方向に揺れると、一対のシーブ20a,20cのうちのシーブ20aは、矢印Fに示すように
X軸方向の陸側(
図11の右方向)に直線移動するのに対して、シーブ20cは、矢印Gに示すようにX軸方向の陸側(
図11の左方向)に直線移動する。
【0062】
このように、主トロリのモッコ旋回用機構として、シーソー型のリンク機構30A,30Bを用いたことにより、以下の効果を得ることができる。
【0063】
主トロリ10上にモッコ旋回用機構としてシリンダ装置を用いた場合、構造が複雑になる上、主トロリ10が大型化重量化して移動速度が遅くなるのに対して、シーソー型のリンク機構30A,30Bを用いた場合は、機構の構成を簡単化できる。また、主トロリ10を小型軽量化することができるので、主トロリの移動速度を高めることができる。
【0064】
また、主トロリ10上にモッコ旋回用機構としてシリンダ装置を用いた場合、流体圧リークによりシリンダ位置が変わるのでシリンダ位置の再設定が必要になる等、面倒で煩雑なメンテナンス作業が必要になるのに対して、シーソー型のリンク機構30A,30Bを用いた場合は、シリンダ位置の再設定作業を無くせるので、メンテナンス作業を簡単化することができる。
【0065】
また、シーソー型のリンク機構30A,30Bは、シリンダ装置に比べて構成が簡単で規模も小さいので、これを導入したとしても既設のクレーン1の構成を大幅に変更することがない。このため、主トロリ10にシリンダ装置を設置する場合に比べてコストを低減することができる。
【0066】
さらに、シーソー型のリンク機構30A,30Bを用いた場合、摺動抵抗を小さくすることができる上、回転力(てこの原理)を利用するので小さな力で大きな動力を得ることができる。このため、自重の軽いモッコ6を用いた場合でも、一対のワイヤロープ16の小さなロープ荷重差で主トロリ10のシーブ20a〜20dを移動させることができるので、モッコ6の旋回操作を良好に行うことができる。
【0067】
次に、主トロリ10のシーソー型のリンク機構30A,30Bの配置の変形例を
図12〜
図15に示す。
図12は主トロリ10の平面図、
図13は
図12のシーソー型のリンク機構30Aを取り外して示した主トロリ10の平面図、
図14は
図12のB方向から見た主トロリ10の側面図、
図15は
図12のC方向から見た主トロリ10の側面図を示している。
【0068】
ここでは、シーソー型のリンク機構30A,30Bのリンク31a,31bを平面的(XY軸平面)に重ねてレイアウトした場合を例示している。シーソー型のリンク機構30Aの支持軸32aは、主トロリ10の天井部10bに立設されている。一方、シーソー型のリンク機構30Bの支持軸32bは、主トロリ10の基台10aに立設されている。
【0069】
この場合、支持軸32a,32bがリンク31a,31bの回転の邪魔にならないのでリンク31a,31bを平面的に重ねてレイアウトすることができる。これにより、シーソー型のリンク機構30A,30Bの配置面積を縮小することができるので、主トロリ10をさらに小型化することができる。これ以外の効果は上記したのと同じである。
【0070】
次に、クレーン1の荷役方法について
図1、
図2、
図16および
図17を参照して説明する。なお、
図16および
図17は、ばら積み貨物5の積み下ろし時のクレーン1の要部斜視図である。この
図16および
図17では、図面を見易くするため、副トロリ11からパイロン8cまでの部分の図示を省略している。
【0071】
[ばら積み貨物の積み込み操作例]
まず、
図1および
図2に示すように、ばら積み貨物5をモッコ6に積み込む場合は、第1、第2ワイヤドラム15a,15bを同時に駆動して4本のワイヤロープ16a〜16dを繰り出して、ばら積み船3の船倉3a内にモッコ6を下降させて展開状態とし、油圧シャベル等によってばら積み貨物5をモッコ6上に載せる。
【0072】
[ばら積み貨物の積み下ろし操作例1]
次に、ばら積み貨物5をモッコ6から積み下ろす場合は、以下のようにする。まず、第1、第2ワイヤドラム15a,15bを同時に駆動してワイヤロープ16a〜16dを巻き取ってモッコ6を船倉3aから上昇させる。
【0073】
続いて、主トロリ10を橋桁部9に沿って移動してモッコ6を仮貯場4の上方まで移動した後、第1、第2ワイヤドラム15a,15bを同時に駆動してワイヤロープ16a〜16dを繰り出してモッコ6を下降し、予め設定された高さで止める。
【0074】
その後、
図16に示すように、第2ワイヤドラム15bのみを駆動して2本のワイヤロープ16b,16cを繰り出してモッコ6の排出縁6bを下降させて、モッコ6内のばら積み貨物5を仮貯場4上に積み下ろす。なお、第1ワイヤドラム15aのみを駆動して2本のワイヤロープ16a,16dを巻き上げてモッコ6の排出縁6aを上昇させることで、その向かい側の排出縁6bを下降させても良い。
【0075】
[ばら積み貨物の積み下ろし操作例2]
また、
図17に示すように、第1ワイヤドラム15aのみを駆動して2本のワイヤロープ16a,16dを繰り出してモッコ6の排出縁6aを下降させて、モッコ6内のばら積み貨物5を仮貯場4上に積み下ろしても良い。なお、第1ワイヤドラム15bのみを駆動して2本のワイヤロープ16b,16cを巻き上げてモッコ6の排出縁6bを上昇させることで、その向かい側の排出縁6aを下降させても良い。
【0076】
このようにクレーン1では、ばら積み貨物5を分散して積み下ろすことができるので、仮貯場4上において、ばら積み貨物5を均すための作業を軽減することができる。
【0077】
次に、クレーン1によるモッコ6の旋回方法について
図18および
図19を参照しながら説明する。
【0078】
[モッコの右旋回操作例]
まず、
図18に示すように、モッコ6を時計回り(右回り)の回転方向R1に旋回させる場合は、パイロン8cの伸縮装置26bのロッド26brを伸ばすことによりシーブ22bを陸側に移動してワイヤロープ16bの張りを緩める。同時に、伸縮装置26dのロッド26drを縮めることによりシーブ22dを海側に移動してワイヤロープ16dの張りを強める。
【0079】
この時、
図23で説明したように、モッコ6のように自重の軽い吊り具を用いている場合、ワイヤロープ16b,16dの荷重差が小さく、主トロリのシーブにシリンダ装置等が接続されているとシリンダ装置等の摺動抵抗がロープ張力よりも大きいために、パイロン8c上の伸縮装置26b,26dを駆動してもシーブ20b,20dが動かず、モッコ6を旋回させることができない場合がある。
【0080】
これに対して本実施の形態のクレーン1においては、一対のシーブ20b,20dにシーソー型のリンク機構30Bを接続したことにより、摺動抵抗を小さくすることができ、また、回転力(てこの原理)を利用して小さな力で大きな駆動力を得ることができるので、小さなロープ荷重差でも主トロリ10上のシーブ20b,20dを容易に動かすことができる。すなわち、ワイヤロープ16bが緩む一方で、ワイヤロープ16dが緊張するので、このロープ張力差により、シーソー型のリンク機構30Bのリンク31bが左回転方向に揺動する結果、主トロリ10においてワイヤロープ16bが架かるシーブ20bが海側に移動すると共に、主トロリ10においてワイヤロープ16dが架かるシーブ20dは陸側に移動する。そして、ワイヤロープ16b,16dの張力が均衡したところでシーブ20b,20dの移動が止まる。
【0081】
このように主トロリ10のシーブ20b,20dが移動することにより、モッコ6において互いに対角に位置するロープ接続部17b,17dに、それぞれ海側に向かう捻れ力F1およびこれとは逆方向の陸側に向かう捻れ力F2が掛かるので、モッコ6は時計回りの回転方向R1に旋回する。
【0082】
[モッコの左旋回操作例]
次に、
図19に示すように、モッコ6を反時計回り(左回り)の回転方向R2に旋回させる場合は、パイロン8cの伸縮装置26aのロッド26arを伸ばすことによりシーブ22aを陸側に移動してワイヤロープ16aの張りを緩める。同時に、伸縮装置26cのロッド26crを縮めることによりシーブ22cを海側に移動してワイヤロープ16cの張りを強める。
【0083】
この時、一対のシーブ20a,20cもシーソー型のリンク機構30Aに接続されているので、上記と同様の理由により、小さいロープ荷重差でも主トロリ10上のシーブ20a,20cを動かすことができる。すなわち、ワイヤロープ16aが緩む一方で、ワイヤロープ16cが緊張するので、このロープ張力差により、シーソー型のリンク機構30Aのリンク31aが左回転方向に揺動する結果、主トロリ10においてワイヤロープ16aが架かるシーブ20aが海側に移動すると共に、主トロリ10においてワイヤロープ16cが架かるシーブ20cは陸側に移動する。そして、ワイヤロープ16a,16cの張力が均衡したところでシーブ20a,20cの移動が止まる。
【0084】
これにより、モッコ6において互いに対角に位置するロープ接続部17a,17cに互いに逆方向に向かう捻れ力F1,F2が掛かる結果、モッコ6は、
図18で説明したのとは反対の反時計回りの回転方向R2に旋回する。
【0085】
このように本実施の形態のクレーン1においては、上記したばら積み貨物5の荷役操作(
図16および
図17参照)に際して、モッコ6を良好に旋回させることができる。これにより、ばら積み貨物5を細かく分散して積み下ろすことができるので、ばら積み貨物5の均し作業を軽減することができる。したがって、ばら積み貨物5の積み下ろし作業の効率を向上させることができる。また、ばら積み貨物5の積み下ろし作業の自動化を推進することができる。
【0086】
なお、
図18および
図19の説明では、その各々の旋回操作に際して、説明を簡単にするため、一対の伸縮装置26b,26dおよび一対の伸縮装置26a,26cを駆動した場合について説明したが、その各々の旋回操作において、ワイヤロープ16a〜16dの張力のバランスを保つ等の理由から、一対の伸縮装置26b,26dの駆動時に他の一対の伸縮装置26a,26cを駆動する等、一対の伸縮装置を駆動している時に他の一対の伸縮装置を駆動しても良い。
【0087】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について
図20〜
図22を参照しながら説明する。
【0088】
図20は
図1に示したクレーン1の要部の変形例を示している。パイロン8cに設置さ
れた4つのシーブ22a〜22dのうち、最外側の2つのシーブ22a,22dは、1つの対を成しており、それぞれ伸縮装置26a,26dに接続され、X軸方向において互いに反対側に移動するようになっている。一方、内側の2つのシーブ22b,22cは、X軸方向への移動ができないように固定された状態で、各々の回転軸を一致させて並んで配置されている。
【0089】
また、主トロリ10に配置された4つのシーブ20a〜20dのうち、最外側の2つのシーブ20a,20dは、1つの対を成しており、上記と同様にシーソー型のリンク機構30Aに接続され、X軸方向において互いに反対側に移動するようになっている。一方、内側の2つのシーブ20b,20cは、X軸方向への移動ができないように固定された状態で、各々の回転軸を一致させて並んで配置されている。
【0090】
さらに、主トロリ10と、モッコ6との間には、吊具35がワイヤロープ16a〜16dにより吊られた状態で設けられている。ワイヤロープ16a〜16dは、それぞれ吊具35の上面の四隅近傍に配置されたロープ接続部36a〜36dに接続されている。モッコ6は、この吊具35から巻出されたワイヤロープ37a〜37dにより吊り下げられている。
【0091】
次に、
図21に吊具35の内部構成を示す。吊具35の内部には、電動機Mが設置されている。電動機Mは、減速機38を介して第3ワイヤドラム39aおよび第4ワイヤドラム39bに接続されている。この電動機Mへの給電は吊具35内に設けられた図示しないエンジン発電機により行われており、第3、第4ワイヤドラム39a,39bの回転が図示しないブレーキ機構を有する制御装置により制御されるようになっている。
【0092】
減速機38の回転軸38aは第3、第4ワイヤドラム39a,39bに共通の回転軸となっており、第3、第4ワイヤドラム39a,39bは同時に同方向に回転するようになっている。
【0093】
第3ワイヤドラム39aに巻かれたワイヤロープ37a,37bは、それぞれモッコ6のロープ接続部17a,17bに接続されている。また、第4ワイヤドラム39bに巻かれたワイヤロープ37c,37dは、それぞれモッコ6のロープ接続部17c,17dに接続されている。そして、ワイヤロープ37b,37cが巻き取られる時に、ワイヤロープ37a,37dが巻き出され、ワイヤロープ37b,37cが巻き出される時に、ワイヤロープ37a,37dが巻き取られるようになっている。
【0094】
モッコ6のばら積み貨物5を積み下ろす時は、第3、第4ワイヤドラム39a.39bを電動機Mにより回転させることにより、モッコ6の排出縁6a,6bの一方を下降する。
【0095】
次に、第2の実施の形態のクレーン1によるモッコ6の旋回方法について
図22を参照しながら説明する。
【0096】
[モッコの左旋回操作例]
モッコ6を反時計回り(左回り)の回転方向R2に旋回させるには、パイロン8cの伸縮装置26aのロッド26arを伸ばしシーブ22aを陸側に移動してワイヤロープ16aの張りを緩めると同時に、伸縮装置26dのロッド26drを縮めシーブ22dを海側に移動してワイヤロープ16dの張りを強める。
【0097】
これにより、上記と同様に、ワイヤロープ16aが緩む一方で、ワイヤロープ16dが緊張するので、このロープ張力差により、シーソー型のリンク機構30Aのリンク31a
が左回転方向に揺動する結果、主トロリ10においてワイヤロープ16aが架かるシーブ20aが海側に移動すると共に、主トロリ10においてワイヤロープ16dが架かるシーブ20dは陸側に移動する。そして、ワイヤロープ16a,16dの張力が均衡したところでシーブ20a,20dの移動が止まる。
【0098】
この時、上記と同様に、吊具35において互いに対角に位置するロープ接続部36a,36dに互いに反対側に向かう捻れ力が掛かる結果、吊具35およびこれに吊るされたモッコ6は、
図20に対して反時計回りの回転方向R2に90°程度旋回する。ここで、第2の実施の形態においては、一度に旋回できる範囲を前記した場合よりも大きくすることができるので、ばら積み貨物5をより分散して積み下ろすことができる。
【0099】
このモッコ6の旋回角度は、伸縮装置26a,26dのロッド26ar,26drの伸縮量で変更でき、例えば120°以上にすることもできる。すなわち、モッコ3の運搬環境や運搬条件に応じてモッコ6の旋回角度を広い範囲で変えることができるので、モッコ3による運搬行程の柔軟性および適用性を向上させることができる。
【0100】
[モッコの右旋回操作例]
モッコ6を時計回り(右回り)に旋回させるには、
図20において、パイロン8cの伸縮装置26aのロッド26arを縮めシーブ22aを海側に移動してワイヤロープ16aの張りを強めると同時に、伸縮装置26dのロッド26drを伸ばしてシーブ22dを陸側に移動してワイヤロープ16dの張りを緩める。
【0101】
これにより、上記と同様に、ワイヤロープ16aが緊張する一方で、ワイヤロープ16dが緩むので、このロープ張力差により、シーソー型のリンク機構30Aのリンク31aが右回転方向に揺動する結果、主トロリ10においてワイヤロープ16aが架かるシーブ20aが陸側に移動すると共に、主トロリ10においてワイヤロープ16dが架かるシーブ20dは海側に移動する。その結果、上記と同様に、吊具35において互いに対角に位置するロープ接続部36a,36dに互いに逆方向に向かう捻れ力が掛かるので、吊具35およびこれに吊るされたモッコ6は、
図20に対して時計回りの回転方向に90°程度旋回する。