(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照射検出部は、前記放射線画像検出器の中央付近に配置される画素の信号電荷を変換した電気信号に基づき検出を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置。
前記制御部は、前記画素に発生した暗電荷を読み出さずに掃き出すリセット動作を前記放射線画像検出器に行わせることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置。
前記リセット動作は、配列された複数の前記画素から1行毎に前記暗電荷を掃き出させる順次リセット方式、配列された複数の前記画素の複数行を一グループとしてグループ内で順次リセットを行い、前記グループ数分の行の前記暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式、または前記画素の全てから前記暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式のうちのいずれか一つの方式で行われることを特徴とする請求項8に記載の放射線画像検出装置。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影システム、例えばX線撮影システムは、X線を発生するX線発生装置と、X線を受けてX線画像を撮影するX線撮影装置とからなる。X線発生装置は、X線を被検体に向けて照射するX線源、X線源の駆動を制御する線源制御装置、およびX線の照射開始指示を入力するための照射スイッチを有している。X線撮影装置は、被検体を透過したX線を受けてX線画像を検出するX線画像検出装置、およびX線画像検出装置の駆動を制御する撮影制御装置を有している。
【0003】
X線画像検出装置には、X線フイルムやイメージングプレート(IP)に代わり、フラットパネルディテクタ(FPD;flat panel detector)を検出器として用いたものが最近普及している。FPDには、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素がマトリックス状に配列されている。FPDは、画素毎に信号電荷を蓄積することで、被検体の画像情報を表すX線画像を検出し、これをデジタルな画像データとして出力する。
【0004】
FPDを直方体形状の筐体に内蔵した可搬型のX線画像検出装置(以下、電子カセッテという)も実用化されている。電子カセッテは、フイルムカセッテやIPカセッテ用の撮影台に取り付けて使用される他、据え置き型では撮影困難な部位を撮影するために被検体自身に持たせて使用される。また、自宅療養中の高齢者や、事故、災害等による急病人を撮影するため、撮影台の設備がない病院外に持ち出して使用されることもある。
【0005】
従来、照射スイッチの押下によってX線源からX線が照射されるタイミングと、X線画像検出装置が信号電荷の蓄積動作を開始するタイミングとを同期させるため、X線発生装置(線源制御装置)とX線撮影装置(撮影制御装置)とは、照射スイッチが発生する操作信号をX線の照射開始を示す同期信号として遣り取りしていた。しかし、同期信号の遣り取りのためにX線発生装置とX線撮影装置を電気的に接続する必要があり、X線発生装置とX線撮影装置のメーカが異なり各装置同士の接続インターフェース(ケーブルやコネクタの規格、同期信号の形式等)が適合しない場合は、新たにインターフェースを用意しなければならなかった。
【0006】
この問題を解決するため、同期信号の遣り取りをせず(X線発生装置とX線撮影装置を電気的に接続せず)にX線画像検出装置自らがX線の照射開始を検出して、X線発生装置との同期を取る技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
一般に電気部品の出力は、部品自体の内的要因、または周囲環境等の外的要因によるノイズの影響を受ける。多くの電気部品が搭載されたX線画像検出装置も例外ではなく、撮影制御装置との通信時等にノイズが発生する。このノイズがX線の照射開始を検出するための信号に乗ると、実際はX線が照射されていないにも関わらず、X線が照射されたと誤って検出してしまう可能性がある。誤検出した場合はX線画像検出装置に無用な動作を行わせることになるので消費電力が嵩む。そのうえ上記動作中は撮影を行うことができないので、撮影チャンスを逃すおそれがある。
【0008】
さらに、撮影制御装置や撮影条件を設定する装置(いわゆるコンソール)が、あたかも撮影が行われたかのような振る舞いをし、その結果撮影条件を設定し直す等の煩わしい操作が必要となる。また、X線が照射されたと誤って検出した場合にX線画像検出装置が動作して出力された画像が正規の画像の如く扱われ、医師の元に転送されてしまうといった医療ミスに繋がる不都合が生じる危険性もある。
【0009】
そこで特許文献1では、X線の照射開始が検出されてから所定期間経過したタイミングを蓄積動作の開始タイミングとして検出することで、ノイズによる誤検出を防止している。X線の照射開始を検出した信号が単発的なノイズによるものであれば、所定期間経過後その信号は消滅しているので、この場合は誤って蓄積動作に移行することはない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
図1において、X線撮影システム10は、X線発生装置11と、X線撮影装置12とからなる。X線発生装置11は、X線源13と、X線源13の駆動を制御する線源制御装置14と、照射スイッチ15とで構成される。X線源13は、X線を放射するX線管13aと、X線管13aが放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)13bとを有する。
【0022】
X線管13aは、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とからなる。ターゲットは円板形状をしており、回転により円周軌道上で焦点が移動して、熱電子が衝突する焦点の発熱が分散する回転陽極である。照射野限定器13bは、X線を遮蔽する複数枚の鉛板を井桁状に配置し、X線を透過させる照射開口が中央に形成されたものであり、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0023】
線源制御装置14は、X線源13に対して高電圧を供給する高電圧発生器と、X線源13が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧、単位時間当たりの照射量を決める管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部とからなる。高電圧発生器は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブル16を通じてX線源13に駆動電力を供給する。本例のX線発生装置11は、X線撮影装置12との通信機能を持たないものであり、管電圧、管電流、照射時間といった撮影条件は、線源制御装置14の操作パネルを通じて放射線技師により手動で設定される。
【0024】
照射スイッチ15は、放射線技師によって操作され、線源制御装置14に信号ケーブル17で接続されている。照射スイッチ15は二段階押しのスイッチであり、一段階押しでX線源13のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源13に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブル17を通じて線源制御装置14に入力される。
【0025】
線源制御装置14は、照射スイッチ15からの制御信号に基づいて、X線源13の動作を制御する。ウォームアップ開始信号を受けた場合、線源制御装置14は、ヒータを作動させてフィラメントの予熱を行わせる他、ターゲットの回転を開始させて目標の回転速度に到達させる。ウォームアップに必要な時間は、約200msec〜1500msec程度である。放射線技師は、照射スイッチ15の一段階押しでウォームアップの開始指示を入力した後、ウォームアップに必要な間をおいて二段階押しして照射開始指示を入力する。
【0026】
照射開始信号を受けた場合、線源制御装置14は、X線源13への電力供給を開始するとともに、タイマを作動させてX線の照射時間の計測を開始する。そして、撮影条件で設定された照射時間が経過すると、X線の照射を停止させる。X線の照射時間は、撮影条件に応じて変化するが、静止画撮影の場合には、X線の最大照射時間が約500msec〜約2s程度の範囲に定められている場合が多く、照射時間はこの最大照射時間を上限として設定される。
【0027】
X線撮影装置12は、電子カセッテ21、撮影台22、撮影制御装置23、およびコンソール24から構成される。電子カセッテ21は、FPD36(
図2参照)とFPD36を収容する可搬型の筐体とからなり、通常はケーブルレスで使用される。電子カセッテ21は、X線源13から照射されて被検体Hを透過したX線を受けてX線画像を出力する。電子カセッテ21は、平面形状が略矩形状で偏平な形状を有し、平面サイズはフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさである。
【0028】
撮影台22は、電子カセッテ21が着脱自在に取り付け可能なスロットを有し、X線が入射する入射面をX線源13と対向する姿勢で電子カセッテ21を保持する。電子カセッテ21は、筐体のサイズがフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさであるため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の撮影台にも取り付け可能である。なお、撮影台22として、被検体Hを立位姿勢で撮影する立位撮影台を例示しているが、被検体Hを臥位姿勢で撮影する臥位撮影台でもよい。
【0029】
図2において、電子カセッテ21にはバッテリ31、およびアンテナ32が内蔵されており、撮影制御装置23との無線通信が可能である。バッテリ31は、電子カセッテ21の各部を動作させるための電力を供給する。バッテリ31は、薄型の電子カセッテ21内に収まるよう比較的小型のものが使用される。バッテリ31は、電子カセッテ21から外部に取り出して充電することが可能である。アンテナ32は、無線通信のための電波を撮影制御装置23との間で送受信する。
【0030】
電子カセッテ21には、アンテナ32に加えてソケット33が設けられている。ソケット33は撮影制御装置23と有線接続するために設けられており、ソケット33には撮影制御装置23に繋がれた通信ケーブル25(
図1参照)のコネクタが差し込まれる。通信ケーブル25は、バッテリ31の残量不足等で電子カセッテ21と撮影制御装置23との無線通信が不可能になった場合に使用される。通信ケーブル25を使用した場合、撮影制御装置23との有線通信が可能になるとともに撮影制御装置23から電子カセッテ21に給電することが可能となる。なお、図示は省略したが、電子カセッテ21には、電源スイッチやその他操作スイッチ、電源のオン/オフ、バッテリ31の残量、動作エラー、無線通信状況等を表示するインジケータが設けられている。
【0031】
通信部34には、アンテナ32およびソケット33が接続されている。通信部34は、アンテナ32またはソケット33と制御回路41、メモリ51間の画像データを含む各種情報、信号の送受信を媒介する。
【0032】
通信部34は、画像データやインジケータの表示制御信号等の不定期な情報、信号の送受信の他、無線または有線による通信状態の良否を報せるため、撮影制御装置23との間で定期的に通信確認信号を遣り取りしている。通信確認信号は、まず撮影制御装置23側から先に送信され、これを受けた通信部34が応じる形式で電子カセッテ21と撮影制御装置23の間で相互に送受信される。
【0033】
通信部34は、アンテナ32またはソケット33を介した撮影制御装置23との情報、信号の送受信の状態を制御回路41に逐次送信する。これにより制御回路41で撮影制御装置23との通信状態が常時把握可能となる。
【0034】
FPD36は、TFTアクティブマトリクス基板を有し、この基板上にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素37を配列してなる撮像領域38と、画素37を駆動して信号電荷の読み出しを制御するゲートドライバ39と、画素37から読み出された信号電荷をデジタルデータに変換して出力する信号処理回路40と、ゲートドライバ39と信号処理回路40を制御して、FPD36の動作を制御する制御回路41とを備えている。複数の画素37は、所定のピッチで二次元にn行(x方向)×m列(y方向)のマトリクス状に配列されている。
【0035】
FPD36は、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素37で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、画素37が配列された撮像領域38の全面と対向するように配置されている。なお、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレン等)を用いた直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0036】
画素37は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード42、フォトダイオード42が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)、およびスイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)43を備える。
【0037】
フォトダイオード42は、電荷を発生する半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード42は、下部電極にTFT43が接続され、上部電極には図示しないバイアス線が接続されており、バイアス線を通じてバイアス電圧が印加される。バイアス電圧の印加により半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動し、キャパシタに電荷が蓄積される。
【0038】
TFT43は、ゲート電極が走査線44に、ソース電極が信号線46に、ドレイン電極がフォトダイオード42にそれぞれ接続される。走査線44と信号線46は格子状に配線されており、走査線44は撮像領域38内の画素37の行数分(n行分)、信号線46は画素37の列数分(m列分)それぞれ設けられている。走査線44はゲートドライバ39に接続され、信号線46は信号処理回路40に接続される。
【0039】
ゲートドライバ39は、TFT43を駆動することにより、X線の入射量に応じた信号電荷を画素37に蓄積する蓄積動作と、画素37から信号電荷を読み出す読み出し(本読み)動作と、リセット(空読み)動作と、照射開始検出動作とを行わせる。制御回路41は、通信部34を通じて入力される撮影制御装置23からの制御信号に基づいて、ゲートドライバ39によって実行される上記各動作の開始タイミングを制御する。
【0040】
蓄積動作ではTFT43がオフ状態にされ、その間に画素37に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、ゲートドライバ39から同じ行のTFT43を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、走査線44を一行ずつ順に活性化し、走査線44に接続されたTFT43を一行分ずつオン状態とする。画素37のキャパシタに蓄積された電荷は、TFT43がオン状態になると信号線46に読み出されて、信号処理回路40に入力される。
【0041】
フォトダイオード42の半導体層には、X線の入射の有無に関わらず暗電荷が発生する。この暗電荷はバイアス電圧が印加されているためにキャパシタに蓄積される。画素37において発生する暗電荷は、画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにリセット動作が行われる。リセット動作は、画素37において発生する暗電荷を、信号線46を通じて掃き出す動作である。
【0042】
リセット動作は、例えば、一行ずつ画素37をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式では、信号電荷の読み出し動作と同様、ゲートドライバ39から走査線44に対してゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、画素37のTFT43を一行ずつオン状態にする。TFT43がオン状態になっている間、画素37から暗電荷が信号線46を通じて積分アンプ47に流れる。リセット動作では、読み出し動作と異なり、マルチプレクサ(MUX)48による積分アンプ47に蓄積された電荷の読み出しは行われず、各ゲートパルスG1〜Gnの発生と同期して、制御回路41からリセットパルスRSTが出力され、積分アンプ47がリセットされる。電荷の読み出しが行われない分、リセット動作に掛かる時間は読み出し動作に掛かる時間よりも短くなる。
【0043】
信号処理回路40は、積分アンプ47、MUX48、およびA/D変換器49を備える。積分アンプ47は、各信号線46に対して個別に接続される。積分アンプ47は、オペアンプとオペアンプの入出力端子間に接続されたキャパシタとからなり、信号線46はオペアンプの一方の入力端子に接続される。積分アンプ47のもう一方の入力端子はグランド(GND)に接続される。積分アンプ47は、信号線46から入力される電荷を積算し、電圧信号D1〜Dmに変換して出力する。各列の積分アンプ47の出力端子には、増幅器、サンプルホールド部(ともに図示せず)を介してMUX48が接続される。MUX48の出力側には、A/D変換器49が接続される。
【0044】
MUX48は、パラレルに接続される複数の積分アンプ47から順に一つの積分アンプ47を選択し、選択した積分アンプ47から出力される電圧信号D1〜DmをシリアルにA/D変換器49に入力する。A/D変換器49は、入力された電圧信号D1〜Dmをデジタルデータに変換して、電子カセッテ21の筐体に内蔵されるメモリ51に出力する。
【0045】
MUX48によって積分アンプ47から一行分の電圧信号D1〜Dmが読み出されると、制御回路41は、積分アンプ47に対してリセットパルスRSTを出力し、積分アンプ47のリセットスイッチ47aをオンする。これにより、積分アンプ47に蓄積された一行分の信号電荷がリセットされる。積分アンプ47がリセットされると、ゲートドライバ39から次の行のゲートパルスが出力され、次の行の画素37の信号電荷の読み出しを開始させる。これらの動作を順次繰り返して全行の画素37の信号電荷を読み出す。
【0046】
全行の読み出しが完了すると、一画面分のX線画像を表す画像データがメモリ51に記録される。この画像データは、メモリ51から読み出され、通信部34を通じて撮影制御装置23に出力される。こうして被検体HのX線画像が検出される。
【0047】
オフセット補正部52は、メモリ51から画像データを受け取り、画像データから暗電荷に起因するノイズを差し引くオフセット補正を実行する。具体的には、オフセット補正部52は、X線の非照射時に読み出し動作を行って得た暗画像データ(オフセット補正データ)を画像データから減算する。オフセット補正部52は、オフセット補正後の画像データを再びメモリ51に記録させる。なお、暗画像データを得るためのX線の非照射時の読み出し動作は、一日の作業開始前に行ってもよいし、X線撮影の都度行ってもよい。また、暗電荷以外のノイズや、周囲環境(温度)、あるいは電子カセッテ21の動作モード等の影響を取り除くため、X線の非照射時の読み出し動作を連続して複数回行い、各回で得られた暗画像データの平均値をオフセット補正に採用してもよい。
【0048】
照射開始検出動作では、蓄積動作に掛ける時間を、X線の最大照射時間よりもはるかに短く、且つX線の照射を検出するに十分な長さの時間とし、該蓄積動作と読み出し動作を所定回数繰り返す。
図3において、照射開始検出動作では、画素37のうちの少なくとも一つを検出画素37aとして用い、照射検出部53にてX線源13からX線が照射されたことを検出する。
【0049】
検出画素37aには、例えば、撮像領域38の中央付近の画素37を複数個用いる。撮像領域38の中央付近の画素37を検出画素37aに用いれば、撮影部位の大きさに応じてX線の照射範囲が撮像領域38より小さく設定された場合でも、撮像領域38の中央付近は照射範囲から外れることはないので、X線の照射範囲の大きさに関わらず照射開始の検出を確実に行うことができる。なお、全ての画素37を検出画素37aとして用いてもよい。
【0050】
照射検出部53は、比較回路61および判定回路62からなる。比較回路61は二つの入力端子と一つの出力端子を有する。比較回路61の一方の入力端子には、複数個の検出画素37aのオフセット補正済みデジタル電圧信号の平均値Daveが入力される。比較回路61の他方の入力端子には閾値Drefが入力される。平均値Daveは、メモリ51に記録された全画素分のオフセット補正済みデジタル電圧信号から検出画素37aに該当する信号を抽出し、これらを加算して検出画素37aの個数で割ることで求められる。比較回路61の出力端子は判定回路62に繋がれている。
【0051】
比較回路61は、電圧信号Daveと閾値Drefとを比較し、電圧信号Daveが閾値Drefを下回っている場合と、閾値Dref以上となった場合とで異なる電圧値V1a、V1bを出力する。判定回路62は、比較回路61の出力端子の電圧値を監視して、電圧値がV1a1からV1bに変化したとき、つまり電圧信号Daveが閾値Dref以上となったときに、X線源13からX線の照射が開始されたと判定する。そして、この旨を表す照射開始検出信号を制御回路41に出力する。
【0052】
X線が照射されていない状態では、画素37には暗電荷のみが蓄積される。この暗電荷はオフセット補正で除かれるため、比較回路61に入力される検出画素37aの電圧信号Daveは略ゼロとなり閾値Drefより低い値となる。一方、X線が照射されると、これに応じた信号電荷が画素37に蓄積される。信号電荷は暗電荷と比べるとはるかに大きいため、X線が照射された直後に電圧信号Daveは閾値Dref以上となる。照射検出部53は、このX線の照射開始前後における電圧信号Daveの変化を監視して、X線の照射開始を検出する。
【0053】
制御回路41と判定回路62との間にはスイッチング素子63が設けられている。制御回路41は、通信部34で送受信(通信)動作を行っていない場合、スイッチング素子63にオン信号を出力する。スイッチング素子63は図示するようにオンし、制御回路41と判定回路62は接続される。
【0054】
一方、通信部34で送受信動作を行っている場合、制御回路41はスイッチング素子63にオフ信号を出力する。この場合はスイッチング素子63がオフして、制御回路41と判定回路62との接続が切断される。制御回路41は通信部34の送受信動作が終了したらオフ信号をオン信号に切り替える。これにより制御回路41と判定回路62は接続状態に復帰する。
【0055】
通信部34は、照射開始検出動作中も通信確認信号やその他の情報、信号の送受信を行っている。こうした通信部34の送受信動作によりノイズが発生して、このノイズ成分が電圧信号に加算されてしまうということが起きる。電圧信号にノイズ成分が加算されてしまうと、照射開始検出動作中に出力される電圧信号Daveも当然その分嵩上げされる。そして、ノイズ成分のために電圧信号Daveが閾値Dref以上となり、実際はX線が照射されていないにも関わらずX線の照射が開始されたと照射検出部53で誤検出するおそれがある。
【0056】
本例では、通信部34が送受信動作を行っているときにスイッチング素子63をオフして制御回路41と判定回路62との接続を切断する。つまり照射検出部53の機能を一時的に無効にする。このため、仮にノイズ成分が加算されて電圧信号Daveが閾値Dref以上となり、照射検出部53の判定回路62から照射開始検出信号が出力されても、制御回路41には照射開始検出信号は入力されない。従って、電子カセッテ21はX線の照射開始検出後の蓄積動作に誤って移行することはなく、引き続き照射開始検出動作を実行する。そして、真にX線の照射が開始されたときのみ照射開始検出信号が制御回路41に入力され、蓄積動作に移行する。
【0057】
制御回路41は、電子カセッテ21の電源投入後、撮影制御装置23から撮影条件が送信されるまでFPD36にリセット動作を行わせる。そして、撮影制御装置23から撮影条件が送信されたら、FPD36の動作をリセット動作から照射開始検出動作に移行させる。制御回路41は、照射開始検出動作中に照射検出部53からの照射開始検出信号を受けた場合、FPD36の動作を照射開始検出動作から蓄積動作へ移行させる。このとき、蓄積動作に移行する前に一回リセット動作を行わせる。制御回路41は、蓄積動作を開始してからの経過時間をタイマにより計時する。そして、経過時間が撮影条件で設定された時間に達したら、FPD36を蓄積動作から読み出し動作に移行させる。
【0058】
撮影制御装置23は、アンテナ32による無線方式、あるいは通信ケーブル25による有線方式により電子カセッテ21と通信可能に接続されており、電子カセッテ21を制御する。具体的には、電子カセッテ21に対して撮影条件を送信して、FPD36の信号処理の条件(増幅器のゲイン等)を設定させるとともに、FPD36の前記各動作を間接的に制御し、また、電子カセッテ21からの画像データをコンソール24に送信する。
【0059】
図1において、撮影制御装置23は、装置を統括的に制御するCPU23aと、電子カセッテ21と無線方式または有線方式により通信するとともに、コンソール24と通信ケーブル26を介して通信する通信部23bと、メモリ23cとを有する。通信部23b、メモリ23cはCPU23aに接続されている。メモリ23cには、CPU23aが実行する制御プログラムが格納される他、閾値Dref等の各種情報が格納される。メモリ23cの閾値Drefは、電子カセッテ21の電源投入後に電子カセッテ21に送信され、比較回路61の入力にセットされる。
【0060】
コンソール24は、通信ケーブル26で撮影制御装置23と接続されており、撮影制御装置23に対して撮影条件を送信するとともに、撮影制御装置23から送信されるX線画像のデータに対して各種画像処理を施す。画像処理済みのX線画像はコンソール24のディスプレイに表示される他、そのデータがコンソール24内のハードディスクやメモリ、あるいはコンソール24とネットワーク接続された画像蓄積サーバといったデータストレージデバイスに格納される。
【0061】
コンソール24は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影目的といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイに表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、放射線技師により手動入力される。放射線技師は、検査オーダの内容をディスプレイで確認し、その内容に応じた撮影条件をコンソール24の操作画面を通じて入力する。
【0062】
以下、上記構成による作用について、
図4のタイミングチャート、および
図5のフローチャートを参照して説明する。なお、
図4と
図5のS10等の表記はそれぞれ対応している。
【0063】
X線撮影システム10で撮影を行う場合には、まず、撮影台22にセットされた電子カセッテ21の高さを調節して、被検体Hの撮影部位と位置を合わせる。また、電子カセッテ21の高さおよび撮影部位の大きさに応じて、X線源13の高さや照射野の大きさを調整する。
【0064】
次いで、
図5のステップ10(S10)に示すように、電子カセッテ21の電源を投入する。このとき、電源回路からバイアス電圧がFPD36の画素37に供給され、ゲートドライバ39および信号処理回路40が動作して、制御回路41によりFPD36はリセット動作を開始する(S11)。続いてコンソール24から撮影条件を入力し、撮影制御装置23を介して電子カセッテ21に撮影条件を設定する。また、線源制御装置14にも撮影条件を設定する。撮影制御装置23から撮影条件を受信すると(S12でYES)、制御回路41によりFPD36はリセット動作から照射開始検出動作に移行する(S13)。
【0065】
以上の撮影準備が完了すると、放射線技師によって照射スイッチ15が一段階押しされる。これにより線源制御装置14にウォームアップ開始信号が送信されて、X線源13のウォームアップが開始される。所定時間経過後に照射スイッチ15が二段階押しされて線源制御装置14に照射開始信号が送信され、X線の照射が開始される。
【0066】
FPD36では照射開始検出動作の蓄積動作と読み出し動作が所定回数繰り返し行われており、照射検出部53で検出画素37aの電圧信号の平均値Daveと閾値Drefが比較され、X線の照射開始を検出している(S13)。なお、蓄積動作と読み出し動作を所定回数行う間にX線の照射開始が検出されない場合は、制御回路41によりFPD36はリセット動作に戻される。
【0067】
照射開始検出動作中、撮影制御装置23との通信確認信号の遣り取り等で通信部34が送受信動作を行っていた場合(S14でYES)、制御回路41と判定回路62とを繋ぐスイッチング素子63に制御回路41からオフ信号が送信されてスイッチング素子63がオフされる。つまり制御回路41と判定回路62の接続が切断され、照射検出部53の機能が無効になる(S15)。そして、通信部34の送受信動作終了後、制御回路41からスイッチング素子63にオン信号が送信され、スイッチング素子63がオンされる。これにより制御回路41と判定回路62は接続状態に復帰し、照射検出部53の機能も有効になる。
【0068】
一方、通信部34が送受信動作を行っていない場合(S14でNO)は、スイッチング素子63はオンのままで照射検出部53の機能も有効化され、電圧信号Daveと閾値Drefを比較回路61で比較した結果出力される電圧V1a、V1bに基づいてX線の照射開始が検出される。
【0069】
X線源13からX線が照射されて電圧信号Daveが閾値Dref以上となり、比較回路61の出力がV1bに変化したことが判定回路62で検出(X線の照射開始が検出)されると(S16でYES)、制御回路41は、FPD36に一回リセット動作を行わせた後(
図4、
図5では図示省略)、全画素37のTFT43をオフ状態にして、蓄積動作へ移行させる(S17)。蓄積動作の間、被検体Hを透過したX線がFPD36の撮像領域38に入射し、画素37にはX線の入射量に応じた信号電荷が蓄積される。
【0070】
線源制御装置14は、撮影条件で設定された照射時間が経過するとX線の照射を停止する。また、FPD36も撮影条件で設定された照射時間に相当する所定時間経過後(S18でYES)、蓄積動作を終了して読み出し動作へ移行する(S19)。読み出し動作では、先頭行から順に一行ずつ画素37に蓄積された信号電荷が読み出され、一画面分のX線画像データとしてメモリ51に記録される。この画像データはオフセット補正後撮影制御装置23を介してコンソール24に送信される。読み出し動作が完了すると、FPD36は、次の撮影条件が設定されていない場合は電源投入直後のS11のリセット動作の状態に戻り、設定されていた場合はS13に戻り照射開始検出動作を再開する。
【0071】
なお、通信部34は、
図4に例示する定期的な送受信動作に限らず、インジケータの表示制御信号等を不定期で撮影制御装置23と送受信することがある。この場合はその都度スイッチング素子63をオフしてノイズ成分によるX線の照射開始の誤検出を防ぐ。
【0072】
以上説明したように、本発明は、通信部34で送受信動作を行っているときは照射検出部53の機能を無効化するので、X線の照射開始を誤って検出することを確実に防ぐことができる。このため、誤検出により電子カセッテ21に無用な動作を行わせることがなく、無用な動作で撮影チャンスを逃すおそれもなくなり、X線撮影の高効率化、省電力化を達成することができる。
【0073】
上記実施形態では、制御回路41と判定回路62の間のスイッチング素子63をオフすることで、X線の照射開始検出の機能を無効にしているが、本発明はこれに限定されない。スイッチング素子63でハードウェア的に機能を無効にするのではなく、制御回路41からオフ信号に相当する信号が出力されている間は、照射検出部53から照射開始検出信号が出力されても制御回路41で受け付けない等、制御回路41でソフトウェア的に処理してもよい。あるいは、通信部34で送受信動作を行っていた場合に、比較回路62の両入力端子にDrefを入力するよう構成し、比較回路62の出力を強制的にV1aのままにして、照射開始検出信号が出力されないようにしてもよい。もしくは照射検出部53への電力供給を停止して、照射検出部53自体の動作を停止させてもよい。
【0074】
[第二実施形態]
上記第一実施形態では、照射検出部53の機能を無効化することで、ノイズ成分の影響を除去している。対して本実施形態では、
図6および
図7に示すように、照射開始検出動作中は通信部34による送受信動作を行わせないことで誤検出を防止する。なお、第一実施形態と同様の処理は、
図6および
図7に同符号を付して説明を省略する。
【0075】
図6および
図7において、通信部34は、FPD36が照射開始検出動作に移行したら撮影制御装置23への送信動作を行わない。また、撮影制御装置23は、通信部23bを介して電子カセッテ21に撮影条件を送信したら電子カセッテ21に信号等を送信しない(S25)。動作エラーの通知等、電子カセッテ21と撮影制御装置23間でどうしても通信が必要な場合は、第一実施形態と同様に照射開始検出機能を無効化して通信を行う。こうすることで、照射開始検出動作中は通信部34の送受信動作は行われず、従って通信ノイズも発生しないので、第一実施形態と同様に通信ノイズによりX線の照射開始を誤って検出することもない。
【0076】
なお、本発明に係るX線撮影システムは、上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0077】
X線撮影システム10は病院の撮影室に据え置かれるタイプに限らず、回診車に搭載されるタイプや、X線源13、線源制御装置14、電子カセッテ21、撮影制御装置23等を事故、災害等の緊急医療対応が必要な現場や在宅診療を受ける患者の自宅に持ち運んでX線撮影を行うことが可能な可搬型のシステムに適用してもよい。
【0078】
上記各実施形態では、A/D変換後のデジタル化した電圧信号と閾値を比較することで照射検出を行っているが、積分アンプから出力されるアナログ電圧信号と閾値を比較してもよい。
【0079】
上記各実施形態の順次リセット方式に代えて、配列画素の複数行を一グループとしてグループ内で順次リセットを行い、グループ数分の行の暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式や、全行にゲートパルスを入れて全画素の暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式を用いてもよい。並列リセット方式や全画素リセット方式によりリセット動作を高速化することができる。
【0080】
X線源の中には、陽極が回転しない固定陽極型のものや、予熱が不要な冷陰極型の線源等、ウォームアップが不要なものもある。このため、照射スイッチとしては照射開始信号を発生する機能のみを有するものでもよい。また、ウォームアップが必要なX線源の場合でも、照射スイッチから線源制御装置に対して照射開始信号を入力し、線源制御装置が照射開始信号に基づいてウォームアップを開始させ、ウォームアップ終了後、照射を開始させるようにすれば、照射スイッチにウォームアップ開始信号を発生する機能を設ける必要もない。
【0081】
上記各実施形態では、電子カセッテ21と撮影制御装置23を別体で構成した例で説明したが、撮影制御装置23の機能を制御回路41に内蔵する等、電子カセッテと撮影制御装置を一体化してもよい。また、コンソール24で画像処理を行うとしているが、撮影制御装置23で行ってもよい。
【0082】
上記各実施形態では、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテを例に説明したが、据え置き型のX線画像検出装置に本発明を適用してもよい。
【0083】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。