【実施例】
【0048】
以下、各実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
(コメスラリーの生成)
まず、試料米(品種:北陸193号、玄米)を、5℃の蒸留水に約12時間(一晩)で浸漬した。次に、
図2に示すような粉砕装置10を用いて、米に対する蒸留水の重量比が8倍程度となるように加水しながら、浸漬後の米を3回で繰り返して湿式粉砕し、コメスラリーを調製した。同様の条件で、コメスラリーを2サンプルで調製した。
【0050】
(比較例1−1〜比較例1−3)
実施例1のコメスラリーとの比較のため、米粉(株式会社 波里製)、白玉粉(株式会社 渡英商店製)、及び上新粉(カドヤ株式会社製)の各10重量%水溶液を調製した。米粉の10重量%水溶液を比較例1−1、白玉粉の10重量%水溶液を比較例1−2、上新粉の10重量%水溶液を比較例1−3とする。
【0051】
(評価)
レーザ回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて、実施例1のコメスラリーに含まれる米の粒子のメディアン径を測定した。また、比較例1−1の米粉の10重量%水溶液、比較例1−2の白玉粉の10重量%水溶液、及び比較例1−3の上新粉の10重量%水溶液に含まれる米の粒子のメディアン径も測定した。実施例1及び比較例1−1〜比較例1−3における米の粒子のメディアン径を、表3に示す。また、実施例1及び比較例1−1〜比較例1−3のpHも、表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、実施例1のコメスラリーは、米の粒子のメディアン径が10μm以下となっており、米粉、白玉粉、及び上新粉の各10重量%水溶液と比較して、米の粒子のメディアン径が非常に小さい。このことから、コメスラリーは、米粉、白玉粉、及び上新粉よりも分散性が良好であり、加工適性に優れていることがわかる。
【0054】
また、実施例1のコメスラリー及び比較例1−1の米粉の10重量%水溶液を、デジタル顕微鏡で観察した。実施例1のコメスラリー及び比較例1−1の米粉の10重量%水溶液のデジタル顕微鏡画像(倍率:450倍、2000倍)を、
図4A、
図4B、
図5A、及び
図5Bに示す。これらの図から、比較例1−1の米粉の10重量%水溶液は、大小様々な米の粒子が混在し、米の粒径が不均一であるのに対し、実施例1のコメスラリーは、米の粒径が均一であることがわかる。また、
図5A及び
図5Bから、比較例1−1の米粉の10重量%水溶液は、米の粒子の形状が丸みを帯びたものとなっているのに対し、実施例1のコメスラリーは、米の粒子の形状が角ばったものとなっていることがわかる。
【0055】
なお、実施例1のコメスラリーの米固形分濃度を、乾燥重量法により測定したところ、9.8重量%であった。また、実施例1のコメスラリーは、玄米をそのまま使用しているため、GABA(ギャバ)が多く、栄養価が高い。
【0056】
(卵を含まないライスプリンの製造)
(実施例2−1)
以下の手順で、実施例2−1に係るライスプリンを製造した。
【0057】
まず、実施例1のコメスラリーを、クリーム、砂糖、ホエイプロテイン単離物(WPI)、脱脂粉乳、デキストリン、及び原料水と混合して、ライスプリン原液を得た。原材料の配合比は、表4に示すように、コメスラリー:20.0重量%に対し、クリーム(生クリーム(乳脂肪分:47重量%)、株式会社 明治製):12.0重量%、砂糖:10.0重量%、WPI:3.0重量%、脱脂粉乳:6.0重量%、デキストリン:4.1重量%、及び原料水(蒸留水):44.9重量%とした。ライスプリン原液中の米固形分濃度は、2重量%であった。
【0058】
次に、このライスプリン原液を60℃まで加温し、容器に充填した。その後、容器の上面をアルミホイルで覆った状態で、上段が150℃・下段が160℃のオーブンにおいて50分間で湯煎焼成し、実施例2−1に係るライスプリンを得た。なお、オーブンに入れた1回のサンプル数は8(焼成後の重量:各130g)とした。
【0059】
(実施例2−2)
実施例2−2に係るライスプリンは、原材料の配合比が実施例2−1に係るライスプリンとは異なるが、サンプル数及び製造の手順は同じである。実施例2−2に係るライスプリンの原材料の配合比は、表4に示すように、コメスラリー:40.0重量%に対し、実施例2−1と同様のクリーム:12.0重量%、砂糖:10.0重量%、WPI:2.5重量%、脱脂粉乳:6.0重量%、デキストリン:2.5重量%、及び原料水(蒸留水):27.0重量%である。実施例2−2に係るライスプリン原液中の米固形分濃度は、4重量%であった。
【0060】
(実施例2−3)
実施例2−3に係るライスプリンは、原材料の配合比が実施例2−1に係るライスプリンとは異なるが、サンプル数及び製造の手順は同じである。実施例2−3に係るライスプリンの原材料の配合比は、表4に示すように、コメスラリー:70.0重量%に対し、実施例2−1と同様のクリーム:12.0重量%、砂糖:10.0重量%、WPI:2.0重量%、及び脱脂粉乳:6.0重量%である。実施例2−3に係るライスプリン原液中の米固形分濃度は、7重量%であった。
【0061】
(比較例2)
比較例2に係るプリンは、サンプル数及び製造の手順が実施例2−1に係るライスプリンと同じであるが、原材料としてコメスラリーを使用していない。比較例2に係るプリンの原材料の配合比は、表4に示すように、実施例2−1と同様のクリーム:12.0重量%、砂糖:10.0重量%、WPI:3.3重量%、及び脱脂粉乳:6.0重量%である。
【0062】
【表4】
【0063】
(評価)
(官能評価)
実施例2−1〜実施例2−3のライスプリン、及び比較例2のプリンについて、順位法による官能評価を行った。具体的には、実施例2−1〜実施例2−3のライスプリン、及び比較例2のプリンについて、米風味の強さ及び粘弾性(もっちりとした食感)の強さの2項目を、米風味の強い順、及び粘弾性の強い順として、10名のパネルに評価させた。そして、実施例2−1〜実施例2−3のライスプリン、及び比較例2のプリンの各々について、項目ごとの順位の合計、及び順位の合計同士の差を算出した。米風味の強さ及び粘弾性の強さについて、各パネルが評価した順位、順位の合計、及び順位の合計同士の差を、表5及び表6に示す。米風味の強さ及び粘弾性の強さについて、順位の合計が大きい方から並べると、比較例2、実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3であった。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
(米風味の強さ)
順位の合計同士の差の絶対値が15以上であれば、有意差ありと判定した。すなわち、表5に示すように、米風味の強さに関しては、比較例2の順位の合計と実施例2−1の順位の合計との差の絶対値は9であるため、比較例2と実施例2−1との間に有意差はない。また、実施例2−1の順位の合計と実施例2−2の順位の合計との差の絶対値は11であるので、実施例2−1と実施例2−2との間に有意差はない。そして、実施例2−2の順位の合計と実施例2−3の順位の合計との差の絶対値は3であるため、実施例2−2と実施例2−3との間に有意差はない。しかしながら、比較例2の順位の合計と実施例2−2の順位の合計との差の絶対値は20であるので、比較例2と実施例2−2との間には有意差がある。このことから、卵を含まないライスプリンの場合、米固形分濃度が2.5重量%以上10重量%以下、好ましくは3重量%以上9重量%以下、より好ましくは3.5重量%以上8重量%以下、さらに好ましくは4重量%以上7重量%以下であれば、しっかりと確実に米風味を感じられるものとなることがわかった。
【0067】
(粘弾性の強さ)
表6に示すように、粘弾性の強さに関しては、比較例2の順位の合計と実施例2−1の順位の合計との差の絶対値は6であるため、比較例2と実施例2−1との間に有意差はない。また、実施例2−1の順位の合計と実施例2−2の順位の合計との差の絶対値は12であるので、実施例2−1と実施例2−2との間に有意差はない。そして、実施例2−2の順位の合計と実施例2−3の順位の合計との差の絶対値は10であるため、実施例2−2と実施例2−3との間に有意差はない。しかしながら、比較例2の順位の合計と実施例2−2の順位の合計との差の絶対値は18であるので、比較例2と実施例2−2との間には有意差がある。このことから、卵を含まないライスプリンの場合、米固形分濃度が2.5重量%10重量%以下以上、好ましくは3重量%以上9重量%以下、より好ましくは3.5重量%以上8重量%以下、さらに好ましくは4重量%以上7重量%以下であれば、しっかりと確実に米風味を感じられるだけでなく、確実に粘弾性の強い食感(もっちりとした食感)となることがわかった。
【0068】
(せん断応力の測定)
粘弾性測定装置(Anton Paar社製、MCR−301)を使用し、せん断速度が0.1〜1000(1/s)、温度が20℃の条件で、実施例2−1〜実施例2−3のライスプリン、及び比較例2のプリンのせん断応力を測定した。
図6に示すように、実施例2−2及び実施例2−3のライスプリンのせん断応力は、特にせん断速度が10〜100(1/s)において、実施例2−1のライスプリン及び比較例2のプリンのせん断応力よりも高くなっている。例えば、せん断速度が100(1/s)において、比較例2のプリンのせん断応力が142Paであるのに対し、実施例2−1のライスプリンのせん断応力は227Pa、実施例2−2のライスプリンのせん断応力は1105Pa、実施例2−3のライスプリンのせん断応力は1474Paとなっている。この結果からも、卵を含まないライスプリンの場合、米固形分濃度が2.5重量%以上10重量%以下、好ましくは3重量%以上9重量%以下、より好ましくは3.5重量%以上8重量%以下、さらに好ましくは4重量%以上7重量%以下であれば、粘弾性の強い食感(もっちりとした食感)となることがわかった。そして、卵を含まないライスプリンの場合、せん断速度が100(1/s)における、せん断応力(温度:20℃)として、200Pa以上10000Pa以下、好ましくは300Pa以上5000Pa以下、より好ましくは500Pa以上3000Pa以下、さらに好ましくは800Pa以上2000Pa以下、特に好ましくは1000Pa以上1500Pa以下となることがわかった。
【0069】
(破断強度及び破断歪の測定)
クリープメーター(山電製、RHEONERII)を使用し、実施例2−1〜実施例2−3のライスプリン、及び比較例2のプリンの破断強度及び破断歪を3回ずつ測定し、その平均値を計算した。表7に平均値の計算結果を示す。表7に示すように、比較例2のプリンの破断歪の平均値が45%超となっているのに対し、実施例2−1、実施例2−2及び実施例2−3のライスプリンの破断歪の平均値は、10%〜45%の範囲内となっており、実施例2−2及び実施例2−3のライスプリンの破断歪の平均値は、15%〜35%の範囲内となっている。このことから、卵を含まないライスプリンの場合、米固形分濃度の増加とともに破断歪が小さくなることがわかる。
【0070】
【表7】
【0071】
(卵を含むライスプリンの製造)
(実施例3−1)
以下の手順で、実施例3−1に係るライスプリンを製造した。実施例3−1に係るライスプリンは、実施例2−1〜実施例2−3と異なり、卵を含んでいる。
【0072】
まず、実施例1のコメスラリーを、全卵液、クリーム、砂糖、脱脂粉乳、及び原料水と混合して、ライスプリン原液を得た。原材料の配合比は、表8に示すように、コメスラリー:20.0重量%に対し、全卵液:20.0重量%、クリーム(あじわいクリーム(乳脂肪分:40重量%)、株式会社 明治製):8.0重量%、砂糖:12.0重量%、脱脂粉乳(株式会社 明治製):5.0重量%、及び原料水(蒸留水):35.0重量%とした。ライスプリン原液中の米固形分濃度は、2重量%であった。
【0073】
次に、このライスプリン原液を50℃まで加温し、容器に充填した。その後、上段が130℃・下段が140℃のオーブンにおいて45分間で焼成し、実施例3−1に係るライスプリンを得た。なお、オーブンに入れた1回のサンプル数は8(焼成後の重量:各120g)とした。
【0074】
(実施例3−2)
実施例3−2に係るライスプリンは、原材料の配合比が実施例3−1に係るライスプリンとは異なるが、サンプル数及び製造の手順は同じである。実施例3−2に係るライスプリンの原材料の配合比は、表8に示すように、コメスラリー:40.0重量%に対し、全卵液:20.0重量%、実施例3−1と同様のクリーム:8.0重量%、砂糖:12.0重量%、実施例3−1と同様の脱脂粉乳:3.0重量%、及び原料水(蒸留水):17.0重量%である。ライスプリン原液中の米固形分濃度は、4重量%であった。
【0075】
(比較例3)
比較例3に係るプリンは、サンプル数及び製造の手順が実施例3−1に係るライスプリンと同じであるが、原材料としてコメスラリーを使用していない。比較例3に係るプリンの原材料の配合比は、表8に示すように、全卵液:20.0重量%、実施例3−1と同様のクリーム:8.0重量%、砂糖:12.0重量%、実施例3−1と同様の脱脂粉乳:7.4重量%、及び原料水(蒸留水):52.6重量%である。
【0076】
【表8】
【0077】
(評価)
(官能評価)
実施例3−1及び実施例3−2のライスプリン、並びに比較例3のプリンについて、4名のパネルによる官能評価を行ったところ、実施例3−1及び実施例3−2のライスプリンについては、粘弾性のある食感(もっちりとした食感)であるとの評価を得た。このことから、卵を含むライスプリンの場合、米固形分濃度が1重量%以上7重量以下、好ましくは1.5重量%以上6重量%以下、より好ましくは1.5重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以上4重量%以下であれば、粘弾性の強い食感を実現できることがわかった。
【0078】
(せん断応力の測定)
粘弾性測定装置(Anton Paar社製、MCR−301)を使用し、せん断速度が0.1〜1000(1/s)、温度が20℃の条件で、実施例3−1及び実施例3−2のライスプリン、並びに比較例3のプリンのせん断応力を測定した。
図7に示すように、実施例3−1及び実施例3−2のライスプリンのせん断応力は、比較例3のプリンのせん断応力よりも高くなっている。例えば、せん断速度が100(1/s)において、比較例3のプリンのせん断応力が105Pa程度であるのに対し、実施例3−1のライスプリンのせん断応力は836Pa、実施例3−2のライスプリンのせん断応力は1176Paとなっている。このことからも、卵を含むライスプリンの場合、米固形分濃度が1重量%以上7重量以下、好ましくは1.5重量%以上6重量%以下、より好ましくは1.5重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以上4重量%以下であれば、粘弾性の強い食感(もっちりとした食感)となることがわかった。そして、卵を含むライスプリンの場合、せん断速度が100(1/s)における、せん断応力(温度:20℃)として、200Pa以上10000Pa以下、好ましくは300Pa以上5000Pa以下、より好ましくは500Pa以上3000Pa以下、さらに好ましくは800Pa以上2000Pa以下、特に好ましくは1000Pa以上1500Pa以下となることがわかった。
【0079】
(実施例4−1)
以下の手順で、実施例4−1に係るライスプリンを製造した。実施例4−1に係るライスプリンは、実施例3−1及び実施例3−2と同様、卵を含んでいる。
【0080】
まず、実施例1のコメスラリーを、全卵液、砂糖、牛乳と混合して、ライスプリン原液を得た。原材料の配合比は、表9に示すように、コメスラリー:25.0重量%に対し、全卵液:20.0重量%、砂糖:12.0重量%、及び牛乳:43.0重量%とした。ライスプリン原液中の米固形分濃度は、3重量%であった。
【0081】
次に、このライスプリン原液を50℃まで加温し、容器に充填した。続いて、160℃のオーブンにおいて40分間で湯煎焼成した後、オーブン内に5分間で放置して、実施例4−1に係るライスプリンを得た。なお、オーブンに入れた1回のサンプル数は4とした。
【0082】
(実施例4−2)
実施例4−2に係るライスプリンは、原材料の配合比が実施例4−1に係るライスプリンとは異なるが、サンプル数及び製造の手順は同じである。実施例4−2に係るライスプリンの原材料の配合比は、表9に示すように、コメスラリー:50.0重量%に対し、全卵液:20.0重量%、砂糖:12.0重量%、及び牛乳:18.0重量%である。ライスプリン原液中の米固形分濃度は、5重量%であった。
【0083】
(比較例4)
比較例4に係るプリンは、サンプル数及び製造の手順が実施例4−1に係るライスプリンと同じであるが、原材料としてコメスラリーを使用していない。比較例4に係るプリンの原材料の配合比は、表9に示すように、全卵液:20.0重量%、砂糖:12.0重量%、及び牛乳:68.0重量%である。
【0084】
【表9】
【0085】
(評価)
(破断強度及び破断歪の測定)
クリープメーター(山電製、RHEONERII)を使用し、実施例4−1及び実施例4−2のライスプリン、並びに比較例4のプリンの破断強度及び破断歪を2回ずつ測定し、その平均値を計算した。表10に平均値の計算結果を示す。表10に示すように、比較例4のプリンの破断強度の平均値が45g/cm
2超となっているのに対し、実施例4−1及び実施例4−2のライスプリンの破断強度の平均値は、10g/cm
2〜40g/cm
2の範囲内となっている。このことから、卵を含むライスプリンの場合、米固形分濃度の増加とともに破断強度が小さくなることがわかる。
【0086】
【表10】
【0087】
(ライス発酵乳の製造)
(実施例5−1)
実施例1のコメスラリーを121℃、1分間の条件で加熱した後、乳酸菌を添加して、43℃、16時間の条件で発酵させ、実施例5−1に係るライス発酵乳を製造した。コメスラリー及び乳酸菌の配合比は、表11に示すように、コメスラリー:98.0重量%に対し、乳酸菌:2.0重量%とした。
【0088】
(実施例5−2)
実施例5−1と同様にして、コメスラリーを加熱した後、牛乳を混合して、ライス発酵乳の原料液を得た。このライス発酵乳の原料液に乳酸菌を添加して、実施例5−1と同様の条件で発酵させ、実施例5−2に係るライス発酵乳を製造した。表11に示すように、各原材料及び乳酸菌の配合比は、コメスラリー:49.0重量%に対し、牛乳:49.0重量%、乳酸菌:2.0重量%とした。
【0089】
(実施例5−3)
実施例5−1と同様にして、コメスラリーを加熱した後、食塩を混合してライス発酵乳の原料液を得た。このライス発酵乳の原料液に乳酸菌を添加して、実施例5−1と同様の条件で発酵させ、実施例5−3に係るライス発酵乳を製造した。表11に示すように、各原材料及び乳酸菌の配合比は、コメスラリー:97.0重量%に対し、食塩:1.0重量%、乳酸菌:2.0重量%とした。
【0090】
(実施例5−4)
実施例5−1と同様にして、コメスラリーを加熱した後、砂糖を混合して、ライス発酵乳の原料液を得た。このライス発酵乳の原料液に乳酸菌を添加して、実施例5−1と同様の条件で発酵させ、実施例5−4に係るライス発酵乳を製造した。表11に示すように、各原材料及び乳酸菌の配合比は、コメスラリー:93.0重量%に対し、砂糖:5.0重量%、乳酸菌:2.0重量%とした。
【0091】
(実施例5−5)
実施例5−1と同様にして、コメスラリーを加熱した後、牛乳及び食塩を混合してライス発酵乳の原料液を得た。このライス発酵乳の原料液に乳酸菌を添加して、実施例5−1と同様の条件で発酵させ、実施例5−5に係るライス発酵乳を製造した。表11に示すように、各原材料及び乳酸菌の配合比は、コメスラリー:48.5重量%に対し、牛乳:48.5重量%、食塩:1.0重量%、乳酸菌:2.0重量%とした。
【0092】
(実施例5−6)
実施例5−1と同様にして、コメスラリーを加熱した後、牛乳及び砂糖を混合してライス発酵乳の原料液を得た。このライス発酵乳の原料液に乳酸菌を添加して、実施例5−1と同様の条件で発酵させ、実施例5−6に係るライス発酵乳を製造した。表11に示すように、各原材料及び乳酸菌の配合比は、コメスラリー:46.5重量%に対し、牛乳:46.5重量%、砂糖:5.0重量%、乳酸菌:2.0重量%とした。
【0093】
【表11】
【0094】
(評価)
実施例5−1〜実施例5−6のライス発酵乳の風味について、4名のパネルに評価させたところ、各ライス発酵乳の風味は全体として良好であるとの評価を得た。特に、実施例5−3及び実施例5−5のライス発酵乳に関しては、適度な塩味を感じ、独特で面白い風味であるとの評価を得た。また、実施例5−4及び実施例5−6のライス発酵乳に関しては、適度な甘味を感じ、濃厚で美味しく、飲みやすい風味であるとの評価を得た。
【0095】
なお、表11には、実施例5−1〜実施例5−6のライス発酵乳について、発酵の開始から16時間後のpHも示している。ライス発酵乳のpHが表11に示す程度の値であれば、十分に発酵が進んでいるということを意味する。つまり、一般的な発酵乳(ヨーグルト)では、発酵の開始から16時間後のpHが3.8程度であれば、発酵の開始から3〜4時間後のpHが4程度まで低下している。このことから、ライス発酵乳の場合、発酵温度を好ましくは30℃〜50℃、より好ましくは35℃〜45℃、さらに好ましくは40℃〜45℃として、発酵時間が好ましくは3時間〜24時間、より好ましくは4時間〜20時間、さらに好ましくは5〜16時間であれば、良好な発酵を実現できることがわかった。そして、ライス発酵乳の場合、米固形分濃度が好ましくは2重量%以上15重量%以下、より好ましくは3重量%以上13重量%以下、さらに好ましくは4重量%以上12重量%以下であれば、良好な風味を実現できることがわかった。このとき、ライス発酵乳の場合、乳固形分濃度が1重量%以上10重量%以下、1重量%以上8重量%以下、1重量%以上6重量%以下などであっても、良好な風味を実現できることがわかった。
【0096】
(市販の粉砕装置を用いたコメスラリーの生成)
(実施例6−1)
まず、試料米(品種:北陸193号、玄米)を、5℃の蒸留水に約12時間(一晩)で浸漬した。次に、浸漬後の米:1.0kg及び蒸留水:4.0kgを、市販の粉砕装置(増幸産業株式会社製、スーパーマスコロイダー(電動石臼))に投入して湿式粉砕し、コメスラリーを調製した。型番「MK−E 46標準」の摩砕砥石を使用し、回転速度は1500rpmとした。また、湿式粉砕の回数は3回とし、処理時間は、1回目:1分、2回目:6分30秒、3回目:6分10秒とした。表12に粉砕条件の詳細を示す。
【0097】
(実施例6−2)
摩砕砥石を型番「MK−GA 120標準」に変更し、実施例6−1と同じ粉砕装置を用いて、コメスラリーを調製した。粉砕装置の回転速度、湿式粉砕の回数、使用した試料米、及びその浸漬条件は、実施例6−1と同様である。ただし、湿式粉砕の処理時間は、1回目:1分、2回目:14分20秒、3回目:5分10秒とした(表12)。
【0098】
【表12】
【0099】
(評価)
実施例6−1及び実施例6−2において、コメスラリーに含まれる米の粒子の平均径、25%径、及びメディアン径を、湿式粉砕の回数毎に測定した。また、実施例6−1及び実施例6−2のコメスラリーに含まれる米の粒径の標準偏差を、湿式粉砕の回数毎に計算した。表13に測定結果及び計算結果を示す。
【0100】
【表13】
【0101】
表13に示すように、実施例6−1及び実施例6−2のコメスラリーにおいて、湿式粉砕の回数が1回であっても、米の粒子のメディアン径は40μm以下となり、米粉、白玉粉、及び上新粉の水溶液に含まれる米の粒子のメディアン径(表3)よりも小さいことがわかる。さらに、湿式粉砕の回数が2回以上になると、米の粒子のメディアン径が8μm以下となり、米がより微細化されるため、分散性及び加工適性に非常に優れたコメスラリーとなることがわかる。
【0102】
また、湿式粉砕の回数が1回であっても、標準偏差は1未満と小さく、米が均一に粉砕されていることがわかる。湿式粉砕の回数が2回以上になると、標準偏差は0.8以下となり、米がより微細化されるだけでなく、米の粒子の寸法(大きさ)がより均一になることがわかる。
【0103】
(コメスラリー生成時の米及び水の比率)
図2に示す粉砕装置10に対する米及び水の供給量と、コメスラリーに含まれる米の粒径との対応関係を調べることにより、米及び水の適当な比率を確認した。
【0104】
(実施例7−1)
まず、試料米(品種:北陸193号、玄米)を、5℃の蒸留水に約12時間(一晩)で浸漬した。次に、浸漬後の米及び蒸留水を粉砕装置10に供給し、コメスラリーを調製した。このとき、粉砕装置10に対する米の供給量を27.5g/min、蒸留水の供給量を46.7g/minとした。
【0105】
(実施例7−2)
粉砕装置10に対する蒸留水の供給量以外は実施例7−1と同様にして、コメスラリーを調製した。このとき、蒸留水の供給量を90.0g/minとした。
【0106】
(実施例7−3)
粉砕装置10に対する蒸留水の供給量以外は実施例7−1と同様にして、コメスラリーを調製した。このとき、蒸留水の供給量を130.0g/minとした。
【0107】
(実施例7−4)
粉砕装置10に対する米及び蒸留水の供給量以外は実施例7−1と同様にして、コメスラリーを調製した。このとき、米の供給量を17.8g/min、蒸留水の供給量を46.7g/minとした。
【0108】
(実施例7−5)
粉砕装置10に対する蒸留水の供給量以外は実施例7−4と同様にして、コメスラリーを調製した。このとき、蒸留水の供給量を90.0g/minとした。
【0109】
(実施例7−6)
粉砕装置10に対する蒸留水の供給量以外は実施例7−4と同様にして、コメスラリーを調製した。このとき、蒸留水の供給量を130.0g/minとした。
【0110】
(評価)
実施例7−1〜実施例7−6において、コメスラリーに含まれる米の粒子の平均径、25%径、及びメディアン径を測定した。また、米の供給量に対する蒸留水の供給量の比、及び実施例7−1〜実施例7−6のコメスラリーに含まれる米の粒径の標準偏差を計算した。表14に測定結果及び計算結果を示す。表14に示すように、実施例7−1〜実施例7−4のコメスラリーは、米の粒子のメディアン径が30μm以下であり、米粉、白玉粉、及び上新粉の水溶液に含まれる米の粒子のメディアン径(表3)よりも小さい。その中でも、実施例7−1及び実施例7−4は、米の粒子のメディアン径が特に小さくなっている。よって、米の供給量に対する蒸留水の供給量は、米を微細化する観点から、5重量倍以下とすることが好ましく、3重量倍以下とすることがより好ましいことがわかる。
【0111】
【表14】
【0112】
また、実施例7−1〜実施例7−6のコメスラリーは、いずれも米の粒径の標準偏差が1以下と小さく、米の粒子の寸法(大きさ)が均一であることがわかる。特に、実施例7−1及び実施例7−4のコメスラリーは、米の粒径の標準偏差が0.7以下であり、米の粒子の寸法(大きさ)がより均一になることがわかる。
【0113】
(まとめ)
以上の通り、各実施例から、コメスラリーを様々な加工食品に適用して、米の消費を促進することができるだけでなく、コメスラリーを用いることで、米独特の風味及び食感を有する加工食品を製造することができることがわかった。また、コメスラリーは、米粉などと比較して、米の粒子が小さく均一であることもわかった。
【0114】
この発明を添付図面に示す実施態様について説明したが、この発明は、その詳細な説明の記載をもって制約しようとするものではなく、特許請求の範囲に記載する範囲において広く構成される。