(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NOxの排出量規制はエンジンの回転数によって定められているため、エンジンの回転数によってはEGR装置を使用しない場合もある。また、TierIIIは、当面は指定されたNOxECA(Emission Control Area:排出規制領域)のみに適用され、それ以外の海域ではTierIIが適用される。このため、NOxECA外の海域ではEGR装置を使用しない場合もある。さらに、NOxECA外の海域では、エンジンを高出力にするため、排気のエネルギーは過給機における圧縮機の駆動に用いられるエネルギーと比較して大きくなるため、吸気が過剰に圧縮されてしまう。一方、これを防ぐために排気の一部を過給機に供給せずに外部へ放出すると、排気のエネルギーが無駄になってしまう。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、排気再循環装置の停止時にディーゼルエンジンの排気のエネルギーを効率的に回収し、回収したエネルギーを有効に利用することができる動力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、動力装置であって、
ディーゼルエンジンと、
前記ディーゼルエンジンの排気により駆動され、前記ディーゼルエンジンに供給する空気を圧縮する過給機と、
前記排気が供給されたときに前記排気を圧縮した後、前記ディーゼルエンジンの吸気管に供給する排気再循環装置と、
前記排気のエネルギーを回収し、回収したエネルギーを負荷装置に供給する排気エネルギー回収装置と、
前記排気エネルギー回収装置により回収されたエネルギーを使用する負荷装置と、
前記過給機および前記排気再循環装置への前記排気の供給量を調整する排気制御部と、
を有し、
前記排気制御部は、前記排気再循環装置への排気の供給を減少させるときに、前記過給機に供給する排気の量を増大させ、前記排気再循環装置への排気の供給を増加させるときに、前記過給機に供給する排気の量を減少させることを特徴とする。
【0009】
前記排気制御部が前記排気再循環装置への排気の供給を停止するときに、前記排気エネルギー回収装置の駆動を開始してもよい。
また、前記排気制御部が前記排気再循環装置への排気の供給を開始するときに、前記排気エネルギー回収装置の駆動を停止してもよい。
【0010】
前記過給機は、
前記排気により駆動されるタービンと、
前記タービンにより駆動され前記空気を圧縮する圧縮機を備え、
前記排気エネルギー回収装置は、
前記排気制御部が前記排気再循環装置に前記排気を供給するときに前記圧縮機の駆動を補助する補助駆動装置を備えることが好ましい。
【0011】
前記排気エネルギー回収装置は、前記過給機により駆動される発電機であってもよい。
【0012】
前記排気エネルギー回収装置は、前記過給機により駆動される油圧ポンプを備え、
前記負荷装置は、前記油圧ポンプにより昇圧される作動油により駆動され前記ディーゼルエンジンの駆動を補助する第1の油圧モータであってもよい。
【0013】
前記排気エネルギー回収装置は、前記過給機により駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより昇圧される作動油により駆動される第2の油圧モータと、
前記第2の油圧モータにより駆動される発電機とを備えてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様は、動力装置であって、
ディーゼルエンジンと、
前記ディーゼルエンジンの排気により駆動され、前記ディーゼルエンジンに供給する空気を圧縮する第1の過給機と、
前記排気が供給されたときに前記排気を圧縮した後、前記ディーゼルエンジンの吸気管に供給する排気再循環装置と、
前記排気が前記排気再循環装置に供給されないときに前記排気により駆動され、空気を圧縮して前記排気再循環装置を通して前記ディーゼルエンジンに供給する第2の過給機と、
前記第2の過給機により駆動され前記排気からエネルギーを回収する排気エネルギー回収装置と、
前記排気エネルギー回収装置により回収されたエネルギーを使用する負荷装置と、
前記第2の過給機および前記排気再循環装置への前記排気の供給量を調整する排気制御部と、
を有し、
前記排気制御部は、前記排気再循環装置への排気の供給を減少させるときに、前記第2の過給機に供給する排気の量を増大させ、前記排気再循環装置への排気の供給を増加させるときに、前記第2の過給機に供給する排気の量を減少させることを特徴とする。
【0015】
前記排気制御部が前記排気再循環装置への排気の供給を停止するときに、前記排気エネルギー回収装置の駆動を開始してもよい。
また、前記排気制御部が前記排気再循環装置への排気の供給を開始するときに、前記排気エネルギー回収装置の駆動を停止してもよい。
【0016】
前記第2の過給機は、
前記排気により駆動されるタービンと、
前記タービンにより駆動され前記空気を圧縮する圧縮機を備え、
前記排気エネルギー回収装置は、
前記排気制御部が前記排気再循環装置に前記排気を供給するときに前記圧縮機の駆動を補助する補助駆動装置を備えることが好ましい。
【0017】
前記排気エネルギー回収装置は、前記第2の過給機により駆動される発電機であってもよい。
【0018】
前記排気エネルギー回収装置は、前記第2の過給機により駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより昇圧される作動油により駆動される第2の油圧モータと、
前記第2の油圧モータにより駆動される発電機とを備えてもよい。
【0019】
前記排気再循環装置は、前記排気の一部を圧縮する排気圧縮機と、
作動油の油圧により駆動され、前記排気圧縮機を駆動する第3の油圧モータを備えてもよい。
【0020】
燃料タンク内の燃料を加圧して前記ディーゼルエンジンに供給する燃料ポンプと、
作動油の油圧により駆動され、前記燃料ポンプを駆動する第4の油圧モータをさらに備えてもよい。
【0021】
前記ディーゼルエンジンの燃焼室内に燃料を噴射する燃料弁と、
前記燃焼室内の気体を排出する排気弁と、
作動油の油圧により、前記燃料弁および前記排気弁の開閉制御を行う油圧制御ユニットと、
を備えてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、排気再循環装置の停止時にディーゼルエンジンの排気のエネルギーを効率的に回収し、回収したエネルギーを有効に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る動力装置の概要について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は第1実施形態にかかる動力装置の全体構成を示すブロック図である。第1実施形態に係る動力装置は、燃料供給装置10、主機関20、過給機40A、排気制御部90A、排気再循環装置50A、排気エネルギー回収装置70A、図示しない負荷装置等を備える。動力装置の構成要素は全て船舶に搭載される。
【0025】
燃料供給装置10は主機関20へ燃料を供給する。
主機関20は、過給機40Aから供給される圧縮空気とともに燃料供給装置10から供給される燃料を燃焼させる内燃機関(ディーゼルエンジン)を有する。内燃機関から排出される排気は排気制御部90Aへ排出される。
過給機40Aは排気制御部90Aから供給された排気により駆動されるタービンと、タービンにより駆動され外気を圧縮して内燃機関に供給する圧縮機を備える。
排気再循環装置50Aは、排気制御部90Aから供給された排気を浄化し、圧縮した後に主機関20の内燃機関に供給する。
排気エネルギー回収装置70Aは、過給機40Aのタービンが排気から得る動力が圧縮器を駆動するのに必要なエネルギーよりも大きい場合、この余剰のエネルギーを油圧や電力として回収し、この回収したエネルギーを使用する負荷装置に供給する。負荷装置とは、例えば、ディーゼルエンジンの駆動を補助する補助駆動装置や、燃料供給装置10に用いられる燃料ポンプ12、排気再循環装置50Aで排気圧縮機64を駆動するモータ65等である。
【0026】
排気制御部90Aは、主機関20からの排気の一部又は全部を過給機40Aに供給するとともに、排気再循環装置50Aを駆動するときに排気の他の一部を排気再循環装置50Aに供給する。この場合、排気制御部90Aは、排気再循環装置50Aへの排気の供給を減少させるときに、過給機40Aに供給する排気の量を増大させ、排気再循環装置50Aへの排気の供給を増加させるときに、過給機40Aに供給する排気の量を減少させるように調整する。
【0027】
本実施形態においては、排気再循環装置50Aに排気を最大限供給した場合でも、残りの排気により過給機40Aのタービンから圧縮機を駆動するのに充分な動力が得られるように、タービンおよび圧縮機が選定されている。
この場合、排気再循環装置50Aを停止するときや、排気再循環装置50Aに供給する排気の量を減少させるときには、全ての排気を過給機に供給すると、圧縮空気が過剰に内燃機関に供給されることとなる。そのため、従来は余剰の排気を過給機に供給せずに大気中に放出していた。
これに対し、本実施形態においては、排気再循環装置50Aを停止するときや、排気再循環装置50Aに供給する排気の量を減少させるときに、この余剰の排気のエネルギーを排気エネルギー回収装置70Aで回収する。このため、内燃機関の排気のエネルギーを効率的に回収することができる。
以下、燃料供給装置10、主機関20、過給機40A、排気制御部90A、排気再循環装置50A、排気エネルギー回収装置70Aの各構成について詳細に説明する。
【0028】
〔燃料供給装置〕
図2は燃料供給装置10を示すブロック図である。燃料供給装置10は、主機関20へ燃料を供給する装置である。なお、本実施形態においては、液体燃料を加熱した高圧の燃料を供給する装置について説明するが、本発明はこれに限られない。
燃料供給装置10は、液体燃料タンク11、燃料ポンプ12、油圧モータ13、熱交換器14、等を備える。
【0029】
液体燃料タンク11は、主機関20に供給される燃料が気化される前の液体燃料を貯留する。液体燃料として、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)等を用いることができる。以下の説明では、液体燃料としてLNGを用いる場合を例に挙げて説明する。
液体燃料タンク11内の圧力は、例えば約0.1MPa(大気圧)である。液体燃料がLNGである場合、その温度は約−160℃である。
液体燃料タンク11の下端は配管15により燃料ポンプ12と接続されている。
【0030】
燃料ポンプ12は配管15により液体燃料タンク11の下端と接続されているとともに、配管16により熱交換器14と接続されている。燃料ポンプ12は、油圧モータ13により駆動され、液体燃料タンク11内の液体燃料を昇圧して熱交換器14へ送出する。
燃料ポンプ12には、例えば、可動部が往復運動を行う形式の往復ポンプを用いることができる。この場合、燃料ポンプ12を駆動する油圧モータ13の回転運動は、例えば図示しないクランク機構等により可動部の往復運動に変換される。
燃料ポンプ12の回転数は、主機関20に供給される燃料の圧力が一定となるように制御される。
【0031】
熱交換器14は、燃料ポンプ12から送出された液体燃料を加熱する。熱交換器14として、例えば、多管円筒形熱交換器(Shell and tube heat exchanger)を用いることができる。熱源として、温水を用いることができる。熱交換器14で加熱された燃料は、配管17を通じて
図3に示す主機関20へ供給される。なお、燃料ポンプ12が加熱された燃料を圧縮して送出する場合には、熱交換器14は不要である。
【0032】
油圧モータ13は内部の油圧が相対的に高い高油圧配管1と、高油圧配管1内の油圧よりも内部の油圧が低い低油圧配管2とに接続されている。ここで、高油圧配管1および低油圧配管2は、燃料供給装置10、主機関20、排気再循環装置50A、排気エネルギー回収装置70Aに共通して油圧駆動機構の制御に用いられている。油圧モータ13は高油圧配管1と低油圧配管2との作動油の油圧の差(差圧)を利用して回転運動し、燃料ポンプ12を駆動する。油圧モータ13は可変容量型であり、配管16内の液体燃料の圧力に応じて油圧モータ13の回転数が調整される。なお、配管17には、配管16内の液体燃料の圧力を計測する図示しない圧力計が設けられており、油圧モータ13の回転数は圧力計の計測結果に基づいて調整される。
【0033】
図3は主機関20、排気制御部90Aおよび過給機40Aを示すブロック図である。
〔主機関〕
主機関20は、内燃機関21、パイロット燃料弁22、ガス燃料弁23、ガス制御部24、吸気マニホールド25、排気弁26、冷却器30、等を備える。
内燃機関21には、メタノールや天然ガスのような代替燃料を使用するエンジンであり、例えば2ストロークサイクルのシリンダを有する低速ディーゼルエンジンを用いることができる。内燃機関21は、船舶の動力源となる主軸100を回転させる。
パイロット燃料弁22は、内燃機関21の起動時に内燃機関21の燃焼室内にパイロット燃料を噴射する燃料弁である。パイロット燃料弁22の開閉は油圧制御ユニット8により制御される。
ガス燃料弁23は燃料供給装置10から供給される燃料を内燃機関21の燃焼室内に噴射する燃料弁である。ガス燃料弁23の開閉は油圧制御ユニット8により制御される。
ガス制御部24は配管17を通じて燃料供給装置10から供給される燃料の元弁を有し、ガス燃料弁23への燃料の供給を制御する。
【0034】
吸気マニホールド25は吸気管32により過給機40Aと接続され、吸気管33により内燃機関21の燃焼室と接続され、排気循環管53により
図4に示す排気再循環装置50Aと接続されている。吸気マニホールド25は吸気管32より供給される圧縮空気と、排気循環管53より供給される排気とを混合し、得られた混合気体を貯留し、吸気管33より内燃機関21の燃焼室に供給する。
【0035】
排気弁26は、排気管34により内燃機関21の燃焼室と接続され、排気管35により排気レシーバ91と接続されている。排気弁26は内燃機関21の燃焼室内の気体を排出するための弁である。排気弁26の開閉は油圧制御ユニット8により制御される。
油圧制御ユニット8は、高油圧配管1と低油圧配管2との差圧を利用して、パイロット燃料弁22、ガス燃料弁23、および排気弁26の開閉制御を行う。高油圧配管1と低油圧配管2との差圧は、油圧ポンプ3によって昇圧される。油圧ポンプ3は主軸100に設けられた変速機101と連結されている。主軸100の回転に伴い、油圧ポンプ3が駆動されることで、高油圧配管1と低油圧配管2との差圧が昇圧される。
【0036】
冷却器30は吸気管32内を通る圧縮空気を冷却する。吸気管32内を通る圧縮空気は圧縮機41により断熱圧縮されることで高温となっている。この圧縮空気と冷却器30内を通る冷媒(例えば海水)との間で熱交換が行われることで、吸気管32内の圧縮空気が冷却される。冷却器30には、例えば、多管円筒形熱交換器(Shell and tube heat exchanger)を用いることができる。
【0037】
〔排気制御部〕
排気制御部90Aは、排気レシーバ91、バイパス弁92、バイパス排気弁93、開閉弁94等を備える。
排気レシーバ91は、排気管35により排気弁26と接続され、排気管37により過給機40Aと接続され、排気循環管51により排気再循環装置50Aと接続されている。排気レシーバ91には、内燃機関21の燃焼室から排出された排気が貯留される。
排気レシーバ91はバイパス管36により吸気管32と接続されている。バイパス管36には、バイパス弁92が設けられている。バイパス弁92の開度は、吸気マニホールド25内の圧力に基づいて調整される。例えば、排気再循環装置50Aを駆動しないとき、吸気マニホールド25内の圧力が上昇しすぎることを防ぐために、バイパス弁92を開き、吸気管32内の圧縮空気を排気レシーバ91へ排出する。
また、排気レシーバ91はバイパス排気管39により排気管38と接続されている。バイパス排気管39にはバイパス排気弁93が設けられている。バイパス排気弁93の開度は、吸気マニホールド25内の圧力に基づいて調整される。例えば、排気再循環装置50Aを駆動しないとき、タービン42が排気によって過剰に回転し、圧縮機41により圧縮空気が吸気マニホールド25内に過剰に供給されることを防ぐために、バイパス排気弁93を開き、バイパス排気管39を通じて排気レシーバ91内の排気を排気管38より外部へ排出する。
開閉弁94は排気循環管51に設けられている。開閉弁94を開くことで排気が排気再循環装置50Aに供給され、開閉弁94を閉じることで排気の排気再循環装置50Aへの供給が停止される。
排気制御部90Aでは図示しない制御部によりバイパス弁92、93、開閉弁94の開閉を制御する。
【0038】
〔過給機〕
過給機40Aは、圧縮機41A、タービン42A、回転軸43Aを備える。圧縮機41Aは吸気管31、32に接続されている。圧縮機41Aは吸気管31より外気を吸引し、圧縮する。吸気管32は冷却器30を通っており、圧縮機41Aで圧縮された外気(圧縮空気)は冷却器30で冷却された後、吸気管32を介して吸気マニホールド25に供給される。
タービン42Aは排気管35、37と接続されている。タービン42Aは排気管35から供給される排気を受けて回転する。タービン42Aを回転させた排気は排気管37を通じて外部へ排出される。
回転軸43Aはタービン42Aの回転を圧縮機41Aに伝達し、圧縮機41Aを駆動する。また、回転軸43Aは
図5に示す排気エネルギー回収装置70Aの油圧ポンプ73と接続されており、タービン42Aの回転を油圧ポンプ73に伝達する。
【0039】
〔排気再循環装置〕
図4は排気再循環装置50Aを示すブロック図である。排気再循環装置50Aは、開閉弁94、集塵器62、冷却器63、排気圧縮機64、モータ65、等を備える。
集塵器62は排気循環管51および排気循環管52と接続されており、排気循環管51から供給される排気中の環境汚染物質を除去する。例えば、集塵器62内では、水酸化ナトリウム混合水により、排気中の硫黄酸化物を中和させて除去する。環境汚染物質が除去された排気は排気循環管52に排出される。
冷却器63は、排気循環管52内を通る排気と、冷却器63内を通る冷媒(例えば海水)との間で熱交換をすることで、排気循環管52内の排気を冷却する。冷却器30には、例えば、多管円筒形熱交換器(Shell and tube heat exchanger)を用いることができる。
排気圧縮機64は排気循環管52および排気循環管53と接続されており、排気循環管52から供給される排気を圧縮する。圧縮された排気は排気循環管53を介して
図3の吸気マニホールド25に供給される。
排気圧縮機64はモータ65により駆動される。モータ65の回転数は、吸気マニホールド25内の酸素濃度に応じて調整される。なお、吸気マニホールド25には、吸気マニホールド25内の酸素濃度を計測する図示しない酸素濃度計が設けられており、モータ65の回転数は酸素濃度計の計測結果に基づいて調整される。開閉弁94を開いた状態でモータ65を駆動することにより排気再循環装置50Aが駆動され、排気循環管51〜53を通じて排気が吸気マニホールド25に供給される。
なお、モータ65の代わりに、高油圧配管1と低油圧配管2との差圧を利用して回転運動する可変容量型の油圧モータを用いて、排気圧縮機64を駆動してもよい。また、排気圧縮機64の前段に、複数の集塵器を設けてもよい。この場合、冷却器63は任意の位置に設けることができる。なお、冷却器63の後段に集塵器を設けることで、冷却された排気中の環境汚染物質をさらに除去することができる。
また、排気圧縮機64と並列に、集塵器62で環境汚染物質を除去された排気を吸気マニホールド25に供給する他の排気圧縮機を1又は複数台設けてもよい。
【0040】
〔排気エネルギー回収装置〕
排気エネルギー回収装置70Aは、減速機71、回転軸72、油圧ポンプ73、74、油圧モータ75、開閉弁76、発電機77等を備える。
減速機71は
図3の過給機40Aの回転軸43Aに取り付けられており、回転軸43Aの回転速度を適宜変更して回転軸72へ伝達する。
【0041】
油圧ポンプ73は油圧配管81および油圧配管82と接続されている。油圧ポンプ73は回転軸72の回転により駆動され、油圧配管82から油圧配管81へ作動油を送出する。なお、油圧配管81を高油圧配管1に接続するとともに、油圧配管82を低油圧配管2に接続してもよい。
【0042】
油圧ポンプ74は油圧配管81および油圧配管82と接続されており、かつ図示しない変速機を介して主軸100と連結されている。油圧ポンプ74は主軸100の回転によって駆動され、油圧配管82から油圧配管81へ作動油を送出する。油圧ポンプ74は可変容量型のポンプである。なお、油圧ポンプ74を主軸100の回転を補助する油圧モータとして使用してもよい。また、油圧ポンプ74を主機関20の油圧ポンプ3と並べて配置してもよい。
【0043】
油圧モータ75は油圧配管83および油圧配管84と接続されている。油圧配管83は油圧配管81と接続されており、油圧配管84は油圧配管82と接続されている。油圧モータ75は油圧配管83と油圧配管84との差圧によって駆動される。
油圧配管81と油圧配管82との間には、両者を接続するバイパス配管85が設けられている。開閉弁76はバイパス配管85に設けられている。
発電機77は油圧モータ75により駆動され、油圧モータ75の回転力を電力に変換する。発電機77により発電された電力は、例えば図示しない二次電池に充電しておき、排気再循環装置50Aのモータ65を駆動するのに用いてもよい。また、発電機77を電動モータとして使用し、油圧モータ75を油圧ポンプとして使用してもよい。
【0044】
本実施形態においては、排気再循環装置50Aを駆動しているときには、排気エネルギー回収装置70Aによる排気のエネルギーの回収を停止してもよい。
具体的には、排気再循環装置50Aの開閉弁94が開き、モータ65が駆動しているときには、開閉弁76を開き、油圧配管81と油圧配管82との間で圧力差が生じないようにする。なお、減速機71による回転軸43から回転軸72への動力伝達を解除しておいてもよい。また、主軸100から油圧ポンプ74への動力伝達を解除しておいてもよい。
【0045】
一方、排気再循環装置50Aを停止したときには、タービン42により排気から得られるエネルギーを排気エネルギー回収装置70Aにより回収する。
具体的には、排気再循環装置50Aの開閉弁94を閉じ、モータ65を停止することにより排気再循環装置50Aの駆動を停止するときには、開閉弁76を閉じ、油圧ポンプ73を駆動することで、油圧配管81と油圧配管82との間に圧力差を生じさせる。すると、油圧モータ75が駆動され、発電機77が駆動される。これにより、排気のエネルギーが電力として回収される。
【0046】
船速が速く、内燃機関21の負荷が大きいほど、内燃機関21からの排気量が多くなる。一方、TierIIIが適用される排出規制領域は近海であり、速い船速で航行する外洋では、排気再循環装置50Aを駆動させる必要がない。このため、特に外洋において、排気再循環装置50Aを停止すると、タービン42により排気から得られるエネルギーが圧縮機41の駆動に用いられるエネルギーと比較して非常に大きくなる。本実施形態においては、排気再循環装置50Aを停止したときに、排気エネルギー回収装置70Aを駆動し、余剰のエネルギーを排気エネルギー回収装置70Aで回収することで、回収したエネルギーを有効に利用することができる。
【0047】
なお、過給機40Aの選定において、排気再循環装置50Aに内燃機関21の排気を供給しない状態で、全ての排気によりタービン42を回転させたときに圧縮機41を駆動するのに充分な動力が得られるように、圧縮機41およびタービン42を選択してもよい。
この場合、排気再循環装置50Aを駆動すると、排気の一部を排気再循環装置50Aに供給した残りの排気によりタービン42を回転させても、圧縮機41を駆動するのに充分な動力が得られない。そこで、油圧ポンプ73を、圧縮機41の駆動を補助する補助駆動装置として用いることができる。すなわち、油圧ポンプ73を、油圧配管81と油圧配管82との差圧により駆動される油圧モータとして、圧縮機41の駆動を補助することができる。
【0048】
また、過給機40Aの選定において、排気再循環装置50Aに供給する排気の量を最大量よりも少ない所定の基準量としたときに、残りの排気によりタービン42を回転させて圧縮機41を駆動するのに充分な動力が得られるように、圧縮機41およびタービン42を選択してもよい。
この場合、排気再循環装置50Aに基準量未満の排気を供給したとき、タービン42により排気から得られるエネルギーが圧縮機41の駆動に用いられるエネルギーと比較して大きくなり、油圧ポンプ73によって、排気再循環装置50Aの停止時に作動油の油圧を高めることができる。一方、排気再循環装置50Aに基準量よりも多い排気を供給したとき、排気再循環装置50Aに供給した残りの排気によりタービン42を回転させても、圧縮機41を駆動するのに充分な動力が得られない。そこで、油圧ポンプ73を油圧モータとして用いて、圧縮機41の駆動を補助することができる。
【0049】
また、油圧ポンプ73を、高油圧配管1と低油圧配管2との作動油の油圧の差を上昇させるのに用いてもよい。これにより、排気から回収したエネルギーを燃料ポンプ12や油圧制御ユニット8で使用することができる。
【0050】
なお、排気エネルギー回収装置70Aにおいて、油圧ポンプ74および油圧モータ75を介して発電機77を駆動する代わりに、回転軸72を発電機77に直結し、回転軸43Aの回転により発電機77を駆動してもよい。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
図6は第2実施形態の動力装置の全体構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る動力装置は、燃料供給装置10、主機関20B、過給機40A、40B、排気再循環装置50B、排気エネルギー回収装置70B、排気制御部90B等を備える。第2実施形態においては、排気エネルギー回収装置70Bが過給機40Aではなく、過給機40Aに接続されている点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態において、排気制御部90Bは、主機関20からの排気の一部を過給機40Aに供給するとともに、排気の他の一部を排気再循環装置50B又は過給機40Bに供給する。この場合、排気制御部90Bは、排気再循環装置50Bへの排気の供給を減少させるときに、過給機40Bに供給する排気の量を増大させ、排気再循環装置50Bへの排気の供給を増加させるときに、過給機40Bに供給する排気の量を減少させるように調整する。
過給機40Bは、排気制御部90Bから供給された排気により駆動されるタービンと、タービンにより駆動され外気を圧縮して排気再循環装置50Bに供給する圧縮機を備える。
排気再循環装置50Bは、排気制御部90Bから供給された排気を浄化し、圧縮した後に主機関20の内燃機関に供給する。また、排気再循環装置50Bは、過給機40Bから供給される圧縮空気を主機関20の内燃機関に供給する。
【0052】
図7は第2実施形態の主機関20、排気制御部90Bおよび過給機40Aを示すブロック図である。第2実施形態においても、第1実施形態と同様の過給機40Aが設けられている。しかし、第2実施形態の過給機40Aには、排気エネルギー回収装置70Aが接続されていない点が第1実施形態と異なる。
また、第2実施形態の排気レシーバ91は、排気循環管51とともに排気管56により排気再循環装置50Bと接続されている。排気レシーバ91から排出される排気の一部は排気循環管51又は排気管56から
図8に示す排気再循環装置50Bに供給される。
【0053】
図8は第2実施形態の排気再循環装置50B、排気制御部90B、過給機40Bおよび排気エネルギー回収装置70Bを示すブロック図である。第2実施形態の排気再循環装置50Bは、第1実施形態の排気再循環装置50Aの構成に加えて、排気管56、57、吸気管58、59等を有する。また、第2実施形態の排気制御部90Bは、第1実施形態の排気制御部90Aに加えて、開閉弁95、96を有する。
【0054】
過給機40Bは、圧縮機41B、タービン42B、回転軸43Bを備える。過給機40Bは過給機40Aと同様の容量であってもよいし、過給機40Aよりも小さい容量であってもよい。圧縮機41Bは吸気管58、59に接続されている。タービン42Bは排気管56、57と接続されている。回転軸43Bはタービン42Bの回転を圧縮機41Bに伝達し、圧縮機41Bを駆動する。また、回転軸43Bは
図5に示すのと同様の排気エネルギー回収装置70Bの油圧ポンプ73と接続されており、タービン42Bの回転を排気エネルギー回収装置70Bの油圧ポンプ73に伝達する。
排気管56には開閉弁95が設けられており、吸気管59には開閉弁96が設けられている。
【0055】
次に、第2実施形態の排気再循環装置50Bの動作について説明する。
排気再循環装置50Bを駆動しているときには、開閉弁94を開き、開閉弁95、96を閉じ、モータ65を駆動している状態である。このときの動作は第1実施形態の排気再循環装置50Aを駆動しているときの動作と同様である。
【0056】
排気再循環装置50Bの駆動を停止するときには、開閉弁94を閉じ、開閉弁95、96を開き、モータ65の駆動を停止する。このとき、排気レシーバ91からの排気が排気管56を通じてタービン42Bに供給され、タービン42Bを回転させ、排気管57から外部へ排出される。
一方、タービン42Bにより駆動される圧縮機41Bは、吸気管58から外部の空気を吸引し、圧縮して吸気管59から排気循環管52へ供給する。排気循環管52に供給された圧縮空気は冷却器63で冷却された後、排気循環管53を介して吸気マニホールド25に供給される。このとき、必要であればモータ65により排気圧縮機64を駆動して圧縮空気をさらに圧縮して吸気マニホールド25に供給する。
タービン42Bにより排気から得られるエネルギーが圧縮機41Bの駆動に用いられるエネルギーと比較して大きい場合には、回転軸43Bによってタービン42Bの回転が排気エネルギー回収装置70Bに伝達されることにより、第1実施形態と同様に排気のエネルギーが回収される。
【0057】
このように、第2実施形態では、排気制御部90Bが開閉弁94、95、96の開閉を制御することにより、排気の一部を排気循環管51、52、53に供給して循環させるか、又は過給機40Bに供給して排出するかを切り替え、排気再循環装置50Bを駆動して排気エネルギー回収装置70Bを停止させるか、又は、排気再循環装置50Bを停止して排気エネルギー回収装置70Bを駆動させるかを切り替えることができる。
また、排気制御部90Bが開閉弁94、95、96の開閉を調整することにより、再循環させる排気と圧縮機41Bから供給される圧縮空気とを所望の比率で混合して吸気マニホールド25に供給することができる。
【0058】
なお、第2実施形態の主機関20Bの過給機40Aに、第1実施形態と同様に、過給機40Bの排気エネルギー回収装置70Bとは別の排気エネルギー回収装置70Aを設けてもよい。また、過給機40Aのみに排気エネルギー回収装置70Aを設け、排気再循環装置50Bの過給機40Bに排気エネルギー回収装置70Bを設けなくてもよい。
【0059】
<変形例>
図9は第1実施形態の変形例に係る主機関20、排気制御部90A、過給機40A、タービン42Cおよび排気エネルギー回収装置70Cのブロック図である。なお、主機関20、排気制御部90Aおよび過給機40Aの構成は
図3に示す第1実施形態の構成と同様であるので、説明を割愛する。
【0060】
本変形例においては、バイパス排気弁93と排気管38とを接続するバイパス排気管39a、39bにタービン42Cが接続されている。また、本変形例においては、過給機40Aの回転軸43Aに排気エネルギー回収装置70Aが取り付けられる代わりに、タービン42Cの回転軸43Cに排気エネルギー回収装置70Cが取り付けられている。
タービン42Cはバイパス排気弁93から供給される排気により駆動され、回転軸43Cを回転させる。回転軸43Cには排気エネルギー回収装置70Cが取り付けられており、回転軸43Cはタービン42Cの回転を排気エネルギー回収装置70Cに伝達する。排気エネルギー回収装置70Cの構成は第1実施形態の排気エネルギー回収装置70Aと同様であるので説明を割愛する。
【0061】
本変形例においても、過給機40Aを駆動するのに余剰の排気をタービン42Cに供給して排気エネルギー回収装置70Cを駆動することで、過給機40Aを駆動するのに余剰のエネルギーを排気エネルギー回収装置70Cで回収し、回収したエネルギーを有効に利用することができる。
【0062】
上記説明においては、液体燃料がLNGである場合について説明したが、本発明はこれに限らず、LPG等の液体燃料を用いてもよい。また、液体燃料に限らず、気体や固体の燃料を用いてもよい。上記説明における油圧配管やバルブ、ポンプ等は一例であり、本発明はこれに限られるものではない。
【解決手段】ディーゼルエンジンと、ディーゼルエンジンの排気の一部を圧縮した後、ディーゼルエンジンの吸気管に供給する排気再循環装置と、排気により駆動され、ディーゼルエンジンに供給する空気を圧縮する過給機と、排気からエネルギーを回収する排気エネルギー回収装置と、過給機および排気再循環装置への排気の供給量を調整する排気制御部と、を有する動力装置において、排気制御部が排気再循環装置への排気の供給を停止するときに、排気エネルギー回収装置の駆動を開始する。