(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリコーン系油剤が付与された前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気下で耐炎化処理を行った後、300〜1000℃での前炭素化処理をし、さらに1000℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化を行う炭素繊維の製造方法であって、
焼成炉内で発生する排出ガスを排出ガス燃焼路で燃焼処理を行うにあたり、
排出ガスが5000NM3 /h×800℃の高温排出ガスであり、
排出ガスの通過領域が内径500mmの円筒管路であり、
風速が27. 8m/sであり、
密度×風速2 の値が250である、炭素繊維の製造方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリアクリロニトリル系繊維束を前駆体繊維束として用いて炭素繊維束を製造する方法として、前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気下で耐炎化処理(耐炎化工程)を行った後、300〜1000℃での前炭素化処理(前炭素化工程)をし、さらに1000℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化(炭素化工程)を行うことが知られている。
【0003】
前駆体繊維束を耐炎化繊維束に転換する耐炎化工程において、単繊維間に融着が発生し、焼成が不均一になり、毛羽や糸切れといった障害が発生する。この障害を回避するために、高い耐熱性を有し融着を効果的に抑えることから、通常、耐炎化前の前駆体繊維束にシリコーン系油剤が付与されている。しかし、前駆体繊維束にシリコーン系油剤を用いると、耐炎化工程ではシリコーン系油剤の分解物である酸化珪素等が発生し、耐炎化炉壁に付着して蓄積され、或いは炭素化工程における炭素化炉の排ガス処理ラインに堆積して、各工程の操業性を低下させたり、炭素繊維の強度を低下させたりする。
【0004】
炭素繊維束の強度を低下させるメカニズムとしては、前駆体繊維束を構成する単繊維が前駆体繊維束中に存在する酸化珪素(シリカ)と高温で反応して酸化され、一酸化炭素としてガス化し、得られる炭素繊維束に欠陥が導入され強度が低下すると考えられている。その反応が起こる温度は、反応する珪素化合物の種類により異なるが、概して炭素化工程における1000℃以上の高い温度下において反応速度は速いと考えられている。なお、前駆体繊維束中に存在するシリカは、上述のとおり炭素繊維束を製造するための原料として前駆体繊維束に付与されているシリコーン系油剤に由来すると考えられている。
【0005】
このように、シリコーン油剤の付与により発生すると考えられるシリカは炭素繊維の製造工程における耐炎化炉や炭素化炉などの各種焼成炉の排出ガス処理通路内に堆積されて、上述のように操業性の低下や、炭素繊維の強度を低下させる要因となっている。そこで、従来も排出ガス処理通路内でシリカが詰まらないように排除するための提案が多くなされている。
【0006】
例えば、特開2001−324119号公報(特許文献1)によれば、炭素化炉の上方に水平に配されて排出ガス燃焼室内に開口する排出ガス管通路に、炭素化炉内にて発生する排出ガスを案内して前記排出ガス燃焼室内へと導入するにあたって、排出ガス燃焼室内への排出ガスの導入量を調整する排出ガス流量調整弁が排出ガス管通路と前記開口との間に配されている。排出ガス流量調整弁は、その弁体の燃焼室側の前面中央から排出ガス燃焼室外へと水平に延びる操作杆を有しており、この操作杆を前後に進退させることにより、前記開口から導入される排出ガスの流量を調整するとともに、特殊な形状をもつ前記弁体により開口周辺に付着したシリカを排出ガス燃料室内へと掻き出す、いわゆるスクレーパーによる掻き出しによってその詰まりを防止している。
【0007】
また熱交換器やボイラーなどでは、エアや蒸気などの流体を用いたスートブローを利用してシリカを吹き飛ばすことが行われている。例えば、特開2008−231644号公
報(特許文献2)や特開2009−174078号公報(特許文献3)などでは、炭素化炉の排出ガス用熱処理室内で燃焼処理された高温の排出ガスを熱交換器を介して低温化したのち、フィルターを介して外気へと放出するとともに、前記熱交換器で熱交換されて高温化された外気を耐炎化炉へと導入し、その導入される高温の外気を耐炎化炉に設けられた循環用ファンにて耐炎化炉内の熱風循環路に強制的に循環させながら、その一部をいわゆるエアーブローにより耐炎化炉壁などに付着するシリカを熱風と共に炉外へと排出している。また前記特許文献2によれば、前記熱交換器の内部の、前記炭素化炉の排出ガス用熱処理室から発生するシリカを含有する高温の排出ガスを耐炎化炉へと案内する排出ガス通路内に回転又は揺動するチェーンを垂下させて、同チェーンの運動により排出ガス通路内に付着するシリカを掻き出すことも行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記スクレーパーやチェーンによるシリカの詰まり防止法は間欠運転である場合が多く、そのため間欠運転ごとに系内の圧力変動が発生し、上流に設置している焼成炉内の圧力が変動して、品質に影響を及ぼす場合がある。また、スクレーパーやチェーン等などの機械式の場合は、その使用材料が耐熱金属である必要があり、しかも熱疲労に対する定期的なメンテナンスを要求され、さらには数年ごとに更新の必要があるため、必然的にコストアップにつながる。
【0010】
一方、エア、蒸気などのブローによるシリカの詰まり防止法の場合は連続運転が多いが、連続運転によって全体風量が増えるため、ファン動力の増加を余儀なくされ、そのための消費電力が増加し、コストアップにつながる。また、特に蒸気を使う場合には、低温部における酸露点到達による腐食の問題がある。
【0011】
いずれにしても上述のような従来技術にあっては、どの技術も部分的にシリカの詰まりが残るため完全には排除できず、ダクト内においては管内抵抗が増加し、ファン出力が不足するようになる。また、出力をアップするごとに系内の圧力ぶれが生じ、品質に影響を及ぼす。特に熱交換器においては、伝熱効率が低下するという問題がある。これらを防止するため定期的に系内を掃除するなどの煩雑なメンテナンス作業が発生する。また、堆積したシリカは突然飛散したりするため、系内で急激な圧力変動を発生させて工程安定性に欠けるケースが多い。従って、シリカが詰まらないことは、工程安定性のために重要である。
【0012】
本発明は、こうした従来の課題を解決すべくなされたものであり、その目的は炭素繊維製造において可能なかぎり系内に堆積するシリカを簡単に且つ円滑に排除できる炭素繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的は、本発明の基本構成である、シリコーン系油剤が付与された前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気下で耐炎化処理を行った後、300〜1000℃での前炭素化処理をし、さらに1000℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化を行う炭素繊維の製造方法であって、焼成炉内で発生する排出ガスを排出ガス燃焼路で燃焼処理を行うにあたり、
排出ガスが5000NM3 /h×800℃の高温排出ガスであり、排出ガスの通過領域が内径500mmの円筒管路であり、風速が27. 8m/sであり、密度×風速2 の値が250である、炭素繊維の製造方法により達成される
。
【0014】
また、上記目的は本発明の次の基本構成である、シリコーン系油剤が付与された前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気下で耐炎化処理を行った後、300〜1000℃での前炭素化処理をし、さらに1000℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化を行う炭素繊維の製造方法であって、焼成炉内で発生する排出ガスを排出ガス燃焼路で燃焼処理を行うにあたり、排出ガスが5000NM3 /h×800℃の高温排出ガスであり、排出ガスの密度が325g/m3 であり、排出ガスの通過領域が内径500mmの円筒管路であり、風速が27. 8m/sである、炭素繊維の製造方法によっても達成される。
【0015】
前記排出ガスの通過領域は、排出ガス用管路、ボイラー缶内流路及び熱交換器流路であ
る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、密度×風速
2 の値を
250以上とすれば、その排出ガス自体の運動エネルギーにより流路内を移動する排出ガスに含まれるシリカを流路の壁面に付着させることなく、シリカと共に流路を円滑に移動させることができる。例えば、5000NM
3/h ×800℃における高温排出ガスの場合、通常、風速は排出ガス標準風速や低圧ガス標準風速を参考に2〜20m/s の範囲で設計される。この範囲であると、密度×風速
2 の値は1.3〜130となるため管路中にシリカが詰まってしまう。しかしながら、管路を円形管路として、その内径を500mm以下とすれば、風速27. 8m/s 、密度×風速
2 の値は250以上となりシリカの詰まりが防止できる。このときの風速は、流路内の平均風速であり、密度×風速
2 の値は250以上となり、シリカが堆積する壁面において排出ガスに充分な運動エネルギーを与えることができて、壁面へのシリカの詰まりを大幅に低減させることができる。
【0017】
また現在では、前駆体繊維束を梱包した容器の改良と糸継技術に進展により、前駆体繊維束を連続供給することが可能となっているが、以降の炭素繊維製造工程中のシリカの詰まりにより、定期的に工程を停止して掃除をする必要があり、連続運転を阻害していた。本発明によれば、上述のようにシリカの詰まりがなくなり、さらなる連続運転が可能となる。
【0018】
このように、本発明にあっては、排出ガスの通過領域における風速と流路の内径とを調整するだけで、簡単にシリカの詰まりを排除することができ、シリカの詰まり防止のための設備点数を大幅に削減でき、設備費削減、メンテナンス費用削減につながるばかりでなく、連続運転をも可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の代表的な実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
図3は、特開2009−174078号公報(特許文献3)に開示された炭素繊維製造装置の概略構成を示している。以下に、同公報に基づいて炭素繊維製造装置と同繊維の製造方法を具体的に説明する。ここで、同炭素繊維製造装置は同特許文献3に詳しく説明されているため、以下の説明では、本発明のシリカ詰まり防止装置が適用される部位を中心
に、その概要を述べるに止める。なお、本実施形態では炭素繊維製造装置の一例を挙げているが、例えば原材料中にシリコーンなどを含み、燃焼処理されてシリカが発生する場合の排出ガス処理装置など一般的な排出ガスの処理に適用されるものである。
【0021】
炭素繊維製造装置は、熱風を循環させて前駆体繊維束Fを耐炎化処理する耐炎化炉1と、耐炎化炉1で耐炎化処理された耐炎化繊維を炭素化処理する炭素化炉12と、炭素化炉12から送出された排出ガスと外気との間で熱交換を行う熱交換器14と、熱交換器14から送出される加熱された外気(加熱外気)を耐炎化炉1に給気する加熱外気給気路18とを有する。更に、この炭素繊維製造装置は、加熱外気給気路18を流れる加熱外気の風量を検出する風量検出手段27と、加熱外気給気路18を流れる加熱外気の風量を調整する風量調整手段28と、風量検出手段27からの情報に基づいて、風量調整手段28を制御する制御手段21とを備える。
【0022】
以下では前駆体繊維束に熱風を吹き付けて耐炎化処理する、いわゆる垂直流型で説明するが、前駆体繊維束に平行に熱風を流し耐炎化処理する、平行流型でも同様である。耐炎化炉1には、前駆体繊維束Fに熱風を吹き付けて耐炎化処理するための熱処理室2が設けられている。熱処理室2内は、多数本の前駆体繊維束Fが水平面(本紙面に垂直方向の面)に並んで走行するように構成されている。これらのパスを形成している前駆体繊維束Fは、熱処理室2の外部に配設された所定組の折返しローラー(不図示)によってジグザグに折り返されて複数段となって熱処理室2へと繰り返し供給されている。
【0023】
この耐炎化炉1において、熱処理室2の一方側には側壁19aが設けられ、熱処理室2の他方側には側壁19bが設けられている。また、熱処理室2の上方には熱風吹出し口3が設けられ、熱風吹出し口3の上方には上方流路7が設けられている。上方流路7の一方端には、ファン6が設けられている。熱処理室2の下方には熱風吸気口4が設けられ、熱風吸気口4の下方には下方流路8が設けられている。下方流路8には、熱風排出口11が設けられている。また、熱処理室2内には温度検出手段20が設けられている。熱処理室2と側壁19aを隔てた一方側には、上方流路7と下方流路8とを連通する熱風循環路9が設けられている。耐炎化炉1内の熱風流路は、上方流路7、下方流路8、熱風循環路9により形成され、熱風は
図1中の矢印Hに示すように循環する。熱風吹出し口3および熱風吸気口4としては、例えばメッシュ板やパンチング板などの熱風透過性の板状部材が使用される。
【0024】
加熱外気給気路18には風量検出手段27が設けられている。風量検出手段27及び温度検出手段20は、耐炎化炉1外に設けられている制御手段21に電気的に接続され、制御手段21は熱風加熱手段5と電気的に接続されている。制御手段21は、温度検出手段20からの温度検出信号に基づいて、熱風加熱手段5に温度制御信号を送ることで、熱風加熱手段5の出力を制御可能に構成されている。これにより前記加熱外気の風量や温度が変動した場合にも、熱処理室2内の温度が一定に保たれやすくなる。熱風加熱手段5は、熱風を前駆体繊維束Fの耐炎化に必要な温度まで加熱するために設けられている。熱風加熱手段5としては、耐炎化炉1内の熱風を200〜300℃程度に加熱できるものであればよく、例えばガスヒーター、電気ヒーター、熱媒ヒーター等が挙げられる。
【0025】
加熱外気給気口10は、耐炎化炉1内に加熱外気を給気するために設けられ、この実施形態例のように熱風循環路9に設けることが好ましいが、これに限定されることはなく、熱風流路内のいずれの位置に設けられていても構わない。また、加熱外気給気口10から給気される加熱外気の温度は、熱処理室2の設定温度(200℃以上)から400℃までの間が好ましい。
【0026】
熱風排出口11は、耐炎化炉1内の熱風の一部を系外に排出するために設けられている
。熱風排出口11からシリカを含む熱風が排出されることで、熱風流路内の揮発性珪素の濃度が低減され、前駆体繊維束Fのケバ発生や異物の付着を低減できる。熱風排出口11は、熱処理室2で発生した揮発性珪素を速やかに耐炎化炉1外に排出するため、この実施形態例のように下方流路8に設けるのが好ましいが、これに限定されることはなく、前記熱風流路の何れの位置に設けても構わない。なお、熱風排出口11には、前記排出ガスを系外に排出するための排出路(不図示)が取り付けられている。該排出路には、必要に応じて、炉内ガスを燃焼して分解する炭素化炉排出ガス処理装置13や、シリカなどの粒子状物を除去するためのフィルター24などを設けてもよい。
【0027】
一方、炭素化炉12は、耐炎化工程の後工程である炭素化工程を行うための装置である。炭素化炉12としては公知のものを使うことができる。炭素化炉12からは、炭素化炉12からの排出ガスを流す炭素化炉排気路17が延びている。炭素化炉排気路17は、炭素化炉12から近い順に、燃焼用外気導入口16、炭素化炉排出ガス処理装置13、熱交換器14、温度検出手段26、フィルター24、第2送風機25を連通して、最終的に排出ガスが系外に排出されるようされている。この炭素化炉12は単数とは限らず、複数設けることができる。
【0028】
ここで、本発明にあっては燃焼処理されたシリカを含有する排出ガスに、例えばエアを積極的に導入して、そのエア混合排出ガス自体の運動エネルギーを増加させることにより、系内に堆積しようとするシリカを積極的に流動させることにより堆積を防止する。すなわち、前記エア混合排出ガスの密度(kg/m
3) ×風速(m/s)
2の値を
250以上となるように、ダクト内径、ボイラー缶内流路、熱交換器流路などを適正に設計できれば、シリカの詰まりが大幅に抑えられる。またダクトの場合には、風速が極端に遅くなるデッドスペースを作らないようにするため、その断面を円形とすることが望ましい。
【0029】
図1に示す実施形態によれば、上記炭素化炉12の炭素化炉排出ガス処理装置13と熱交換器14との間の炭素化炉排出ガス処理装置13に近接する炭素化炉排気路17の一部位置に二次エア供給路30を合流させている。この二次エア供給路30には二次エア供給用ファン31が設けられており、この二次エア供給用ファン31を作動させて炭素化炉排出ガス処理装置13から排出される排出ガス中に外気を積極的に導入して、排出ガス自身の運動エネルギーを増加させ、前記炭素化炉排気路17に堆積しようとするシリカをエア混合排出ガス共々強制的に流動させて前記フィルター24へと送り込む。
【0030】
図1にあって炭素化炉排出ガス処理装置13は、炭素化炉12からの排出ガスを燃焼させ、排出ガスに含まれるシアン、アンモニア、一酸化炭素、タール分などを分解処理する装置である。具体的には、炭素化炉排出ガス処理装置13に燃料および空気を給気し、燃料を燃焼させることで発生した高温部(図示略)に、排出ガスを接触させることによって、排出ガスを燃焼処理する。
【0031】
熱交換器14は、
図1に示すように、筐体23と、熱交換器14内を貫通する熱交換路22とにより構成され、熱交換路22を流れる外気と、炭素化炉排気路17から熱交換器14内を通過する高温の排出ガスとの間で熱交換を行う。また、本実施形態において、熱交換器14は耐炎化炉1に送り込む外気を加熱する手段としても機能する。熱交換器14としては、チューブ式熱交換器、多管式熱交換器、プレート式熱交換器などが挙げられ、シリカなどの粒子状物に起因する詰まり防止のため、詰まり防止機構を備えたものであれば特に限定されないが、チューブ式熱交換器が最も好ましく用いられる。
【0032】
また、熱交換路22の一端に、外気を熱交換路22に送入するための第1送風機15が連結され、熱交換路22の他端は加熱された外気を耐炎化炉1に給気するための加熱外気
給気路18に連結されている。この加熱外気給気路18の熱交換路22が連結されていない端部は、耐炎化炉1の加熱外気給気口10に連結されている。
【0033】
上記フィルター24の材質としては、捕捉粒子径、圧損、耐熱温度、耐久性等を考慮し適宜選定されるが、フッ素樹脂、ガラス繊維、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等を含有する耐熱バグフィルターが好ましく用いられる。フィルター24の下流側に、上記第2送風機25が、炭素化炉排気路17を流れるシリカを含む排出ガスを系外に排出するために設けられている。熱交換器14とフィルター24との間に設けられた温度検出手段26は、フィルター24に送入されるエア混合排出ガスの温度を検出するためのもので、熱電対、測温抵抗体などの温度計が挙げられる。この温度検出手段26と熱交換路22に外気を送入する第1送風機15とは、インバーターなどの図示せぬ制御手段を介して接続され、温度検出手段26で検出された温度検出信号により、第1送風機15が制御される。ここで、上記炭素化炉排気路17にも図示せぬ風速検出手段を設けて、炭素化炉排気路17内のエア混合排出ガスの風速を検出し、前記制御手段を介して炭素化炉排気路17を流れるエア混合排出ガスの風速を自動的に制御することもできる。
【0034】
次に、以上の炭素繊維製造装置を用いた炭素繊維の製造方法の概要を
図1に基づいて具体的に説明する。
(耐炎化工程)
耐炎化工程においては、熱風加熱手段5で加熱された熱風が、ファン6によって上方流路7から熱風吹出し口3を通過し、熱処理室2内へと送られる。そして、前記熱風が、熱処理室2を連続して走行する前駆体繊維束Fに鉛直方向から吹き付けられることで、前駆体繊維束Fが耐炎化処理される。
【0035】
次いで、熱風は熱処理室2から熱風吸気口4を通過して下方流路8へ送られ、下方流路から熱風循環路9に配設される熱風加熱手段5へと戻される。熱風加熱手段5で加熱された熱風は、連続して走行する前駆体繊維束Fに耐炎化処理を施すため、再び熱処理室2へと送られる。このようにして、熱風の循環による前駆体繊維束Fへの連続した耐炎化処理が行われる。
【0036】
加熱外気給気口10より加熱外気が給気されると、耐炎化炉1の内部は加圧される。そのため、炉内ガスを含む熱風が、前駆体繊維束Fの走行方向の一方と他方とに配設される前駆体繊維束Fの出入り口(不図示)から、耐炎化炉1外へ漏れ出しやすくなる。熱風の漏れ出しを抑制するには、熱風排出口11から排気される排出ガスの風量を、加熱外気給気口10より給気される加熱外気の風量と同量以上とすることが好ましい。そのため、熱風排出口11から排気される排出ガス排出路に上記第1送風機15と連動する図示せぬファンを設けるとよい。
【0037】
耐炎化工程に用いられる前駆体繊維束Fは、単繊維が数千〜数十万本束ねられたトウである。単繊維としては、PAN系、ピッチ系繊維などが挙げられる。耐炎化工程で前駆体繊維束Fに吹き付けられる熱風(酸化性気体)としては、空気などの含酸素気体などが挙げられる。工業的には空気が好ましい。熱風の加熱温度は、通常、200〜300℃である。また、前駆体繊維束Fに吹き付けられる熱風の風速は、0.2〜1.5m/s の範囲であることが多いが、この範囲に限定されることなく、前駆体繊維束Fの張力および投入ピッチなどを考慮して適宜決定される。なお、前記耐炎化処理は、単数の耐炎化炉で行ってもよく、複数台の耐炎化炉を用い、同時及び/又は段階的に行ってもよい。
【0038】
(炭素化工程)
前駆体繊維束Fを耐炎化処理して得られた耐炎化繊維束は、次いで、炭素化炉12に導入され、窒素などの不活性雰囲気中で、300〜2000℃の温度で炭素化処理されて炭
素繊維束となる。炭素化炉としては公知のものが用いられる。炭素化処理は、単数の炭素化炉で行ってもよく、複数台の耐炎化炉を用い、耐炎化処理を同時及び/又は段階的に行ってもよい。
【0039】
本実施形態にあっては、例えば、炭素化炉排出ガス処理装置13から排出される高温の排出ガスが5000NM
3/h ×800℃である場合、風速は排出ガス標準風速や低圧ガス標準風速を参考に風速は2〜20m/s の範囲で設計される。このとき、密度×風速
2 は1.3〜130となる。この値であると、炭素化炉排気路17にシリカが詰まる。しかるに、炭素化炉排気路17に二次エアを供給して風速を27. 8m/s とするとともに、炭素化炉排気路17を内径が500mm以下の円形断面とすると、密度×風速
2 は250以上となって、炭素化炉排気路17内のシリカの詰まりが防止できるようになる。このときの風速は流路内平均風速をいい、密度×風速
2 が
250以上となるように密度と風速を設定すれば、シリカが壁面において流路が詰まらない充分な密度とすることができる。
【0040】
(熱交換工程)
炭素化炉排出ガス処理装置13内で燃焼処理され、炭素化炉排気路17を流れて熱交換器14に送入された排出ガスは、熱交換路22を流れる外気と熱交換された後、熱交換器14から送出される。ここで、熱交換器14から送り出される前記排出ガスは、160〜180℃の温度範囲と冷却される。これは、フィルター24に好適に用いられる耐熱バグフィルターの実用耐熱限界は約200℃であり、前記排出ガスの温度が180℃以上では、フィルター24の機能が損なわれる恐れがあるためである。また、前記排出ガスが160℃未満では、排出ガスが炭素化炉排気路17の内壁に結露し、前記排出ガスに含まれる硫黄酸化物によって炭素化炉排気路17が腐食する恐れがある。
【0041】
そこで、熱交換器14の後段に設けられた温度検出手段26で排出ガスの温度を検出し、この温度検出信号に基づいて、インバーター制御などによって第1送風機15を制御することで、熱交換路22に送り込まれる外気の風量が調整され、前記熱交換器14から送出される排出ガスの温度が160〜180℃の範囲に調整される。排出ガスの温度を前記範囲に調整することで、炭素化炉排気路17の腐食やフィルター24の機能損失を防止できる。このようにして温度調整された排出ガスは、次いで、フィルター24に送入され、シリカなどの粒子状物を除去された後、第2送風機25により系外へと排出される。
【0042】
ところで、堆積したシリカは環境規制を上回る量で大気放出できないため、
図2に示すように、単なるフィルター24に代えて集塵機32を設置する必要が生じる。確実に集塵できる方法として、バグフィルター式集塵機があるが、耐熱が最高250℃であり、燃焼後の排出ガス温度に耐え得ることができない。そのため、前記熱交換器14に代えて排出ガス系統に排出ガス冷却装置33を配置する方法もある。例えば、この排出ガス冷却装置33はガス−ガス式の熱交換器とすることができる。このガス−ガス式の熱交換器は通常の熱交換器と同様に外気と排出ガスを熱交換し、排出ガス温度を下げるとともに外気を昇温させて熱風とする。この熱風は熱風循環式炉、例えば上述のように耐炎化炉1に導入することができる。ここでボイラーを用いれば蒸気を発生させ、耐炎化炉などの工程へと供給することができる。いずれの場合も排熱回収としてコストダウンに大きく寄与できる。
【0043】
(加熱外気給気工程)
一方、第1送風機15により熱交換器14に送入された外気は、熱交換路22を流れるうちに、炭素化炉排気路17から送入された排出ガスと熱交換がなされて、加熱された外気(加熱外気)となって熱交換器14から送出され、加熱外気給気路18を流れる。加熱外気給気路18を流れる加熱外気の風量は、以下のように調整された後、耐炎化炉1に導入される。加熱外気給気路18を流れる加熱外気の風量を風量検出手段27が検出し、風
量検出手段27は風量検出信号を制御手段21に送る。次いで、制御手段21は、該風量検出信号に基づいた風量制御信号を風量調整手段28に送る。次いで、風量調整手段28は、前記風量制御信号に基づいて加熱外気排出路29を流れる加熱外気の風量を制御し、余剰な加熱外気を系外に排出する。このようにして加熱外気給気路18を流れる加熱外気は、風量調整された後、加熱外気給気口10から耐炎化炉1内に給気される。
【0044】
以上の炭素化工程を経て得られる炭素繊維束には、更に必要に応じて、樹脂との接着性を付与するために表面処理が施される。表面処理の方法としては、樹脂との接着性を付与できる方法であれば特に限定されないが、例えば、オゾン酸化などの乾式法や、電解液中で電解表面処理する湿式法が挙げられる。表面処理された炭素繊維束には、さらに、必要に応じてサイジング剤が付与される。サイジング剤には、炭素繊維束の取り扱い性や、樹脂との親和性を向上させる働きがある。サイジング剤の種類としては、所望の特性を得ることができれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を主成分としたサイジング剤が挙げられる。
【0045】
図3は本発明の第2実施形態を示している。
同図によれば、上記第1実施形態における熱交換器14を排除して、焼成炉34からの排出ガスを燃焼処理する排出ガス燃焼炉35と集塵機32とを排出ガス通路36を介して直接連結するとともに、前記排出ガス通路36の排出ガス燃焼炉35との連結端部に二次エア供給用ファン31’から外気を送入する外気送入通路37を合流させている。図示は省略しているが、前記排出ガス通路36に送入される外気を所要の温度まで低下させる冷却装置を外気送入通路37に設けることもできる。
【0046】
本実施形態が以上の構成を備えているため、前記外気の送入量を適切に設定することによって、排出ガス通路36を通る排出ガスの密度(kg/m
3) ×風速(m/s)
2の値を250以上とすることが可能となり、排出ガス通路36の内壁部に堆積されるシリカの詰まりを大幅に減少させることができ、排出ガス通路36の早期の詰まりがなくなり、メンテナンスの期間も大幅に延長されることになる。
【0047】
なお本発明にあって、熱交換器やボイラーのような複雑な構造の装置では流体速度が極端に遅くなるデッドスペースが存在することが多いため、デッドスペースの存在しない部分のエア混合排出ガスの密度×風速
2 の値を400以上としても、デッドスペース部分にシリカが残ってしまうことがある。この残存が熱交換効率に著しく影響を及ぼす場合は、スートブローやエアーブロー設備を併設してもよい。この場合、系内の圧力変動が懸念されるが、シリカの詰まりは部分的でかつ微量であるため、スートブロー等の圧力は従来より小さくて済み、上流側の焼成炉には影響を及ぼすことはない。また、スートブロー等の動作回数も少なくて済むため格別の負担とはならない。