【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段では、請求項1の発明は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.10〜0.50%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.80〜3.00%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.02〜0.10%を含有し、さらに、N:0.0300%以下を含有し、残部FeおよびNi:0.25%未満、Mo:0.05%未満を含有する不可避不純物からな
る鋼であり、焼準組織又は焼鈍組織がフェライト・パーライト組織であり、そのフェライト粒径の平均値が15μm以上であることを特徴とする耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の手段の鋼の化学成分において、質量%で、N:0.0300%以下に代えてN:0.010%未満とし、さらに、請求項1の手段の鋼の化学成分に加えて、Ti:0.050%未満、B:0.0010〜0.0050%を含有し、残部
がFeおよびNi:0.25%未満、Mo:0.05%未満を含有する不可避不純物からな
る鋼であり、焼準組織又は焼鈍組織がフェライト・パーライト組織であり、そのフェライト粒径の平均値が15μm以上であることを特徴とする耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼である。
【0010】
次いで、本発明の機械構造用鋼の化学成分の限定理由並びに機械構造用鋼の熱処理条件について説明する。なお、成分の%は質量%である。
【0011】
C:0.10〜0.30%
Cは機械構造用部品としての鋼材の浸炭処理後の芯部強度を確保するために必要な元素である。しかし、Cが0.10%未満ではその効果が十分に得られない。一方、Cが0.30%を超えると加工性を低下させ、かつ、靱性を低下させる。そこでCは0.10〜0.30%とする。
【0012】
Si:0.05〜2.0%、望ましくは0.05〜1.0%
Siは脱酸に必要な元素である。しかし、Siが0.05%未満では脱酸が十分に行われない。一方、Siが2.0%を超えると加工性を低下させる。そこでSiは0.05〜2.0%とし、望ましくは0.05〜1.0%とする。
【0013】
Mn:0.10〜0.50%、望ましくは0.20〜0.50%
Mnは焼入れ性を確保するために必要な元素である。しかし、Mnが0.10%未満では焼入れ性の効果は十分に得られない。また、Mnが0.50%を超えると焼準あるいは焼鈍により現れるフェライト・パーライト組織の結晶粒が15μmよりも小さくなる。そこでMnは0.10〜0.50%とし、より望ましくは0.20〜0.50%とする。
【0014】
P:0.030%以下
Pはスクラップから含有される不可避な元素であり、オーステナイト粒界に偏析して衝撃強度や曲げ強度などの靱性を低下する。そこで、Pは0.030%以下とする。
【0015】
S:0.030%以下
Sは被削性を向上させる元素である。しかし、SはMnと結合して非金属介在物であるMnSを生成して横方向の靱性および疲労強度を低下させる。そこでSは0.030%以下とする。
【0016】
Cr:1.80〜3.00%
Crは鋼の焼入性を上昇させる元素であるが、1.80%未満ではその効果が十分得られない。また、Crが過剰に添加されると加工性を損なうだけでなく浸炭性を阻害する。そこで、Crは1.80〜3.0%とする。
【0017】
Ni:0.25%未満
Niは鋼の焼入性や靱性を上昇させる元素であるが、Niを0.25%以上添加すると本発明においては結晶粒度特性に不利なベイナイトが析出し、ベイナイトを核として結晶粒が粗大化する。そのため合金添加による靱性向上の効果よりも結晶粒粗大化による靱性の低下の方が大きく靱性が低下する。そこで、ベイナイトの析出を回避するため、Niは不可避的不純物量レベルとして0.25%未満とする。
【0018】
Mo:0.05%未満
Moは鋼の焼入性や靱性を上昇させる元素であるが、Moを0.05%以上添加すると本発明においては結晶粒度特性に不利なベイナイトが析出し、ベイナイトを核として結晶粒が粗大化する。そのため合金添加による靱性向上の効果よりも結晶粒粗大化による靱性の低下の方が大きく靱性が低下する。そこで、ベイナイトの析出を回避するため、Moは不可避的不純物量レベルとして0.05%未満とする。
【0019】
Al:0.005〜0.050%、望ましくは0.015〜0.050%
Alは脱酸材として使用される元素であり、また後記するようにNと結合してAlNを析出してピン止め効果により結晶粒粗大化抑制効果をもたらす。この効果を得るためには、Alは0.005%以上を添加する必要がある。一方、Alは0.050%を超えるとアルミナ系酸化物が増加し、疲労特性および加工性を低下する。そこで、Alは0.005〜0.050%とし、望ましくは0.015〜0.050%とする。
【0020】
N:0.0300%以下、望ましくはN:0.0250%以下、ただし、TiおよびBを1種又は2種を含む鋼ではN:0.0100%未満
Nは鋼中でAlNやNb窒化物あるいはNb炭窒化物として微細析出し、そのピン止め効果により結晶粒粗大化を防止する効果をもたらす。しかし、0.030%を超えると窒化物が増加し、疲労強度や加工性が低下する。そこで、請求鋼1の発明で、Nは0.0300%以下とし、望ましくは0.0250%以下とする。しかしながら、請求項2の手段のように、TiやBを含有する鋼では、Nが0.0100%以上含有されると、TiNが過剰に生成して加工性や疲労強度を損なう。また、Bは固溶Bとして存在することで鋼の焼入性の向上効果があるが、Nが0.0100%以上含有されると、化合物のBNが生成して固溶Bが減少し、Bによる焼入性の向上効果が阻害される。そこで、請求項2の発明のTiおよびBを含む場合は、Nは0.0100%未満とする。
【0021】
Nb:0.02〜0.10%、望ましくは0.02〜0.08%
NbはNb炭化物やNb窒化物あるいはNb炭窒化物を形成して、それらのピン止め効果により、結晶粒粗大化防止効果をもたらす。特に鋼中に微細に分散したナノオーダーのNbC又はNb(CN)が結晶粒の成長を抑制する。Nbが0.02%未満ではその効果が得られず、0.10%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Nbは0.02〜0.10%、望ましくは0.02〜0.08%とする。
【0022】
Ti:0.050%未満
Tiは鋼中のfree−Nを固定して、Bが化合物BNとなることを抑制することにより、Bを焼入性向上に寄与させることができる。その効果を得るためには、Tiを0.050%未満添加する必要がある。
【0023】
B:0.0010〜0.0050%
Bは極少量の含有によって鋼の焼入性を著しく向上させる元素で選択的に含有される。その効果を得るためには、0.0010%未満では焼入性向上の効果が小さく、一方、0.0050%を超えると強度を低下する。そこで、Bは0.0010〜0.0050%とする。
【0024】
本願の請求項に係る発明の鋼では、上記したようにMnの含有量を0.10〜0.50%との低Mnとしている。したがって、圧延後に、通常の焼準処理又は焼鈍処理を行うことで、フェライトおよびパーライトの結晶粒からなるミクロ組織の大きな鋼が得られ、この鋼を冷間鍛造または他の冷間加工を行い、さらに浸炭処理が施される場合、浸炭時に結晶粒粗大化の要因となる浸炭初期のオーステナイト粒径の微細化を抑制出来る。そこで上記したように、この鋼の化学成分のMn量は0.10〜0.50%とし、望ましくは0.20〜0.50%とする。
【0025】
本発明の鋼はA
3点以上の温度である、例えば925℃に十分な時間、例えば1時間保持した後、空冷して焼準を行うか、あるいは、この焼準に代えて、焼鈍条件として880〜930℃に加熱して所定時間保持した後に徐冷を行って、フェライトおよびパーライトの組織とする。このように、本発明の鋼成分に加えて、上記条件の焼準あるいは焼鈍を行うことにより、均質なフェライトおよびパーライトからなる結晶粒の大きなミクロ組織が得られる。その結果、冷間鍛造もしくは冷間加工が行われた後、必要に応じた形状の部品に切削加工してから浸炭処理を行った場合に、浸炭初期のオーステナイト粒径の微細化を抑制することで、結晶粒が粗大化することはない。