(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光ディスクに対して開口数が1以上の固体浸レンズ(SIL)を対物レンズに用いた光ディスク装置にて前記対物レンズを固定するSIL光ヘッドと前記光ディスクとの間の間隔を制御するギャップサーボ装置であって、
記録再生前の初期設定時にて引き込み制御を行う目標ギャップ長を記録再生時の所望のギャップ長の値より大きい所定値に設定するギャップ目標位置設定部と、
前記所定値でフィードバック制御による引き込み制御が行なわれた後、フィードフォワード制御を更に適用してギャップエラー信号を補償するフィードフォワード制御部と、
前記目標ギャップ長を当該記録再生時の所望のギャップ長の値に変更して設定するギャップ目標位置変更部と、
前記ギャップエラー信号を監視して、前記フィードバック制御のみのサーボ系から前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御の併用によるサーボ系への切り替えを制御し、当該サーボ系の切り替えに応じて前記目標ギャップ長を切り替えるように、前記フィードフォワード制御部及び前記ギャップ目標位置変更部を制御するフィードバック‐フィードフォワード制御管理部と、を備え、
前記フィードバック‐フィードフォワード制御管理部は、前記サーボ系の切り替えを、当該フィードバック制御による引き込み制御を行なって前記ギャップエラー信号の安定化を判別した後に行うように制御するとともに、当該フィードバック制御及びフィードフォワード制御による引き込み制御を行なって前記ギャップエラー信号の安定化を判別した後に更に前記サーボ系の切り替えを行うよう制御することを特徴とするギャップサーボ装置。
光ディスクに対して開口数が1以上の固体浸レンズ(SIL)を対物レンズに用いた光ディスク装置にて前記対物レンズを固定するSIL光ヘッドと前記光ディスクとの間の間隔を制御するギャップ引き込み制御方法であって、
記録再生前の初期設定時にて引き込み制御を行う目標ギャップ長を記録再生時の所望のギャップ長の値より大きい所定値に設定するステップと、
前記所定値でフィードバック制御による引き込み制御が行なわれた後、フィードフォワード制御を更に適用してギャップエラー信号を補償するステップと、
前記目標ギャップ長を当該記録再生時の所望のギャップ長の値に変更して設定するステップと、
前記ギャップエラー信号を監視して、前記フィードバック制御のみのサーボ系から前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御の併用によるサーボ系への切り替えを制御し、当該サーボ系の切り替えに応じて前記目標ギャップ長を切り替えるように制御するステップと、
前記サーボ系の切り替えを、当該フィードバック制御による引き込み制御を行なって前記ギャップエラー信号の安定化を判別した後に行うように制御するとともに、当該フィードバック制御及びフィードフォワード制御による引き込み制御を行なって前記ギャップエラー信号の安定化を判別した後に更に前記サーボ系の切り替えを行うステップと、
を含むことを特徴とするギャップ引き込み制御方法。
【背景技術】
【0002】
現在、波長が約405nmのレーザ光と、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用いた光ディスク装置が商品化されており、この記録媒体はブルーレイディスク(BD)として知られている。ブルーレイディスク(BD)のフォーマットによるデータ容量は25GBである。
【0003】
そして更なる大容量・高転送レートの光ディスクへの記録方式として、記録密度を高めるために光ディスク装置における対物レンズの開口数(NA)の増大化が検討されている。
【0004】
このため、1より大きい開口数(NA)を達成する技法として、エバネッセント波、即ち界面から指数関数的に減衰する光、いわゆる近接場光を用いた記録再生方式(「ニアフィールド光記録(NFR: Near Field Optical Recording)再生方式」とも称される)が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
これらの特許文献1及び2には、対物用の光学レンズと固体浸レンズ(SIL)とを組み合わせて近接場光学系の対物レンズを構成し、光ディスクに近接場光を照射して情報の記録再生を行う近接場光ディスク装置が開示されている。
【0006】
また、近接場光ディスク装置におけるSIL光ヘッドのタンジェンシャルチルト(TT)及びラジアルチルト(RT)の調整にフィードフォワード制御(FFC:Feedforward Control)を行うことにより光ディスクに対するSIL光ヘッドのギャップ誤差量を改善する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、光ディスク装置における光ヘッドのトラッキングサーボ又はフォーカスサーボにおいて高精度な追従制御を実現するためのフィードフォワード制御(FFC)に関する技術(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0008】
このように、近接場光を用いた光ディスク装置においては高精度なサーボ技術が要求され、タンジェンシャルチルト(TT)及びラジアルチルト(RT)の調整や、光ディスクの偏心外乱や面振れ外乱に起因して発生する外乱(特に、高調波成分の外乱)の抑圧のために、フィードフォワード制御(FFC)が用いられる。
【0009】
一方で、固体浸レンズ(SIL)を用いた近接場光記録再生方式では、SIL光ヘッドのギャップサーボの高精度化が重要となる。
【0010】
近接場光を用いた光ディスク装置においては、ポリカーボネートやガラスの材料による基板を有する1.2mm厚の光ディスクを用いており、この1.2mm厚基板の光ディスクは、通常およそ30μm(Peak‐Peak値)から150μm(Peak‐Peak値)の面振れを持ちながら回転する。
【0011】
このため、ギャップサーボの引き込み制御において、光ディスク装置のフォーカスサーボ系と同様に、ヴォイスコイルモータ(VCM)によるギャップサーボ用のアクチュエータを用いて、ゲイン余有及び位相余有を確保しつつ安定なサーボ動作(例えば、DCゲイン80dB程度)になるよう位相補償等の制御器によるフィードバック制御(FBC:Feedback control)を行うのが一般的である。このサーボループを形成したギャップサーボ系では、残留するギャップサーボ誤差(RGSE:Residual Gap Servo Error)を監視することでサーボ制御が行われる。このようなギャップサーボ誤差を表す信号(RGSE)は、ギャップエラー信号(GES:Gap Error Signal)から得られる。このフィードバック制御(FBC:Feedback control)では、ギャップサーボ誤差は高次周波数成分も含め、1000rpm(回転/分)以下の低回転数において、±1〜5nm程度となるが、2000rpm以上の高速回転時には、±20nm〜±35nmにも及ぶ。
【0012】
これまでの固体浸レンズ(SIL)を用いた近接場光記録(NFR)によるギャップサーボにおいては、データの記録再生のために、固体浸レンズ(SIL)と光ディスクの間隔であるギャップ長(GL:Gap Length)を18nm〜30nm以下に近接保持するようにフィードバック制御(FBC:Feedback control)でギャップサーボを動作させ、記録再生を行うのに実績がある(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0013】
例えば、データ転送レートとして、通常のブルーレイディスク(BD)の方式と同様に、画素数1920×1080(横方向画素数×縦方向画素数)程度の高精細度テレビジョン放送(HDTV:High Definition Television)が情報圧縮符号化により記録可能な36Mbpsでの記録を想定すると、固体浸レンズ(SIL)を用いた場合の開口数(NA)がブルーレイディスク(BD)の方式の2倍に相当する1.7の場合、線速度はブルーレイディスク(BD)の半分の2.4585m/sで回転させる必要がある。このとき、光ディスクの最内周付近の半径が24mmの位置において最高角速度は978rpmとなる。この回転数は低回転であるため、このとき残留するギャップサーボ誤差は5nm以下と低くなるので問題が起こらない。まして、ディスク起動時にこの回転数で回転させてから、SIL光ヘッドのギャップサーボ引き込み動作を行う場合にも、起こりうる想定としてギャップサーボ誤差に対し最大で20〜50%の過渡応答があったとしても、SIL光ヘッドが光ディスクに衝突することにはならない。
【0014】
しかしながら、記録レートを放送用の低圧縮率で符号化されたHDTV映像や、情報圧縮符号化制御を行った後の画素数が3840×2160(横方向画素数×縦方向画素数)や7680×4320(横方向画素数×縦方向画素数)の高精細映像の記録再生を行う場合を考える。このとき、記録レートが250Mbpsの映像を記録する場合、2000rpm以上の高速回転時(例えば7500rpm回転時)を想定する。仮に1000rpm以下の低回転でギャップサーボ引き込み制御を行い、その後、2000rpm以上の高速回転を行うと、残留するギャップサーボ誤差を表す信号(RGSE)の値は増大する。仮にギャップ長(GL)を20nmに設定したとすると、
RGSE>GL (1)
となってしまい、フィードバック制御(FBC)のみではSIL光ヘッドがディスクに衝突してしまうおそれがある。
【0015】
そこで、このようなギャップサーボの引き込み制御においても、フィードフォワード制御(FFC)を適用することが有効であることが開示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置、この光ディスク装置における記録及び/又は再生に必要な対物レンズのギャップ引き込み制御を行うギャップサーボ装置、及び、そのギャップ引き込み制御方法について説明する。
【0033】
〔光ディスク装置〕
図1は、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置1の概略図である。この例において、光ディスクに対して開口数(NA)が1以上の固体浸レンズ(SIL)を対物レンズ5に用いている。このような対物レンズ5は、非球面レンズ等よりなる対物用光学レンズと半球状又は超半球状の固体浸レンズ(SIL)とを組み合わせた集光光学レンズとして実現することができるし、半球状のSIL固体浸レンズ(SIL)で一体化させた集光光学レンズとして構成することもできる。対物レンズ5は、SIL光ヘッド6に固定される。
【0034】
光ディスク装置1は、光ディスク2を装着する装着部3と、回転中心Oを基に一点鎖線Rを回転軸として装着部3を回転駆動するスピンドルモータ4と、対物レンズ5を固定するSIL光ヘッド6と、ギャップアクチュエータ7と、折り返しミラー8と、ビームスプリッタ9と、コリメートレンズ10と、レーザーダイオード等の光源11と、ビームスプリッタ4の分岐光路上に配置される集光レンズ12と、4分割フォトダイオード等の光検出部13と、光検出部13からの検出信号sを演算してギャップアクチュエータ7を制御する引込制御信号C
G及びスピンドルモータ4の回転駆動を制御する回転制御信号C
Rを生成する制御部14とを備える。ただしこれらの構成部品は、これら光ディスク装置1の機能が満足に動作すれば様々な構成とすることができ、例えば、折り返しミラー8などは省くことができる。
【0035】
尚、SIL光ヘッド6に対してチルト制御用のアクチュエータを設け、制御部14により、SIL光ヘッド6の光ディスク2に対するチルト量を制御する制御信号を生成するように構成することもできるが、本発明とは直接的に関係しないため、その説明は省略する。
【0036】
光ディスク装置1において、光源11から出射されたレーザビームは、コリメートレンズ10により平行光とされ、ビームスプリッタ9を透過し、折り返しミラー8で反射してSIL光ヘッド6に固定される固体浸レンズ(SIL)の対物レンズ5に入射する。この対物レンズ5により光ディスク2の記録面に近接場光Lとして照射される。光ディスク2から反射された戻り光は、折り返しミラー8で反射してビームスプリッタ9で分岐して集光レンズ12により光検出部13に集光される。
【0037】
光検出部13により検出された検出信号sの一部を、情報の記録又は再生に必要な記録信号又は再生信号として利用することができる。ここでは、記録再生に係る説明は本発明の趣旨とは直接的に関係しないので省略し、本発明に係るギャップサーボの引き込み制御に関して光検出部13により検出された検出信号sを用いる例について説明する。制御部14は、光検出部13により検出された検出信号sを基に、引込制御信号C
Gを、詳細に後述するフィードバック制御(FBC)により生成し、更にフィードバック制御(FBC)及びフィードフォワード制御(FFC)の併用により生成して、ギャップアクチュエータ7を制御する。ギャップアクチュエータ7は、ヴォイスコイルモータ(VCM)により2軸又は3軸で構成することができる。尚、
図1に示す構成の他、収差補正用等の種々の光学素子を付加的に配置してもよいことは勿論である。ギャップアクチュエータ7は、引込制御信号C
Gを基に、光ディスク2とSIL光ヘッド6に固定される固体浸レンズ(SIL)の対物レンズ5との間のギャップ長(GL)を所定の目標位置となるように、且つ所定の位置誤差内となるように追従制御する。
【0038】
光ディスク装置1において、光ディスク2が装着部3に装着されると、制御部14は、回転制御信号C
Rを生成して、スピンドルモータ4の回転駆動を制御する。また、図示を省略するが、光ディスク装置1には、光ディスク2の記録面に沿ってSIL光ヘッド6をラジアル方向に平行移動させるラジアル方向移動機構が設けられる。したがって、光ディスク装置1における記録再生時には、制御部14は、このラジアル方向移動機構とギャップサーボのギャップアクチュエータ7とを連動させて、近接場光Lが光ディスク2の記録トラックに沿って例えばスパイラル状又は同心円状に走査するように制御する。
【0039】
本発明に係る光ディスク装置1においては、光ディスク2を2000rpm以上の高速回転で駆動する場合においても安定した高転送レート記録を可能とするべく、開口数(NA)が1以上の固体浸レンズ(SIL)を対物レンズ5に用いており、且つ制御部14によって、引込制御信号C
Gの生成に関して、フィードバック制御(FBC)とフィードフォワード制御(FFC)のギャップ長の制御目標値を管理し、光ディスク装置1における記録及び/又は再生に必要な対物レンズ5のギャップ引き込み制御を行うことにある。
【0040】
フィードバック制御(FBC)は、後述する
図5で明らかとなるが、位相進み遅れ回路で構成した位相補償器を用いたフィードバックギャップ制御部154とヴォイスコイルモータによるギャップアクチュエータ制御部156で制御されるSIL光ヘッド6とでフィードバック・ループを形成し、引込制御を行うギャップ長(GL)の設定値を中心にフィードバック制御することで、フィードバックギャップサーボを構成している。
【0041】
先ず、このフィードバック制御(FBC)によるギャップサーボ系において、光ディスク2の静止状態、或いは任意の回転数でスピンドルモータ4を用いて光ディスク2を回転させた状態において、光源11からのレーザビーム(近接場光L)を光ディスク2の表面に集光し、光ディスク2の通常のフォーカスサーボの引き込み動作と同様に、ギャップサーボの引き込み動作をギャップアクチュエータ7により行う。
【0042】
尚、ギャップアクチュエータ制御部156を引き込み制御回路のイコライザで構成した場合、引き込みにかかる速度が遅くても過渡応答の少なくなるような低いカットオフ周波数のローパスフィルタに設定していればSIL光ヘッド6は光ディスク2に近づかないが、高速に引き込もうとすると(高速に引き込むようなイコライザの設定、例えばLPFではバターワース型ではなくチェビシェフ型とするなど)、ある程度の過渡応答が発生し、SIL光ヘッド6がギャップ長(GL)の設定値よりも狭くなるような過渡応答による動作を起こしながら、サーボが引き込まれる。その後、ギャップサーボの追従制御が動作する。
【0043】
本例では、光ディスク2の回転数が7500rpmの高速回転時で、フィードバック制御(FBC)のみで、ギャップサーボ誤差(RGSE)が±23nmで追従制御されているとする。
【0044】
本発明においては、更に品質のよい記録再生を行うことを目指しており、ギャップ長(GL)を狭め、GL=20nmを目標とする。残留するギャップサーボ誤差(RGSE)がギャップ長(GL)よりも大きい状態では、ギャップ長(GL)を狭めることは不可能である。
【0045】
そこで、適応的なフィードフォワード制御(FFC)を更に適用することにより、フィードバック制御(FBC)のみでは抑圧しきれないギャップサーボ誤差(RGSE)を抑圧する。例えば非特許文献3に開示されるようなフィードフォワード制御器(RHD‐FFC)を利用することができる(
図5を参照して詳細に後述する)。
【0046】
このフィードフォワード制御器(RHD‐FFC)では、予め、フィードバック制御(FBC)によるギャップエラー信号(GES)を入力されるフィードフォワード制御(FFC)に対し、フィードフォワード制御(FFC)の演算出力をフィードバック制御系に切り替えスイッチSW31により接続できる構成とした系としている。この切り替えスイッチSW31により、フィードフォワード制御(FFC)の演算出力をフィードバック制御系に接続すると、FF補償部164からの補償信号がフィードバック制御系に入力され、ギャップサーボ系における残留するギャップサーボ誤差(RGSE)が抑圧される。これにより、高精度な追従制御を行うことができる。例えば、残留するギャップサーボ誤差(RGSE)=±6nm(GL=40nmの設定時)で追従制御される。
【0047】
残留するギャップサーボ誤差(RGSE)が狭められた状態で、ギャップ長(GL)を狭めるよう変化させても、光量の微少変化によるサーボゲインは変わっても、ゲイン余有が確保されている範囲内であれは、ギャップ追従制御の状態は変わらず動作し続ける。そこで、ギャップ長(GL)を、記録再生時の所望のギャップ長(GL)の設定に変更する。例えば、ここでは、GL=40nmをGL=20nmに変更する。
【0048】
これにより、記録再生を行うための所望のギャップ長(GL)とギャップサーボ誤差(RGSE)を安定的に得ることができるようになる。
【0049】
以下、本発明の理解をより高めるために、先ず、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置1において、従来からのギャップサーボ装置としてフィードバック制御を行う場合の制御部14について説明する。
図2は、光ディスク装置1において、従来からのギャップサーボ装置としてフィードバック制御(FBC)を行う場合の制御部14の概略図である。この例において、制御部14は、ビーム位置信号生成部141と、ギャップ目標位置設定部142と、GES生成部143と、引込制御信号生成部144と、ディスク回転制御部146と、記録再生制御部147とを備える。ビーム位置信号生成部141、GES生成部143及び引込制御信号生成部144は、フィードバック制御部145を構成する。
【0050】
ビーム位置信号生成部141は、光検出部13により検出された検出信号sと、込制御信号生成部144から得られるギャップアクチュエータ7の制御量に対応する位置を表す信号を用いて、光ディスク2とSIL光ヘッド6に固定される固体浸レンズ(SIL)の対物レンズ5との間のギャップ長(GL)を示す実際のビーム位置を表す信号量x(即ち、光ディスク2に集光するレーザビームの垂直方向位置)を生成し、GES生成部143に送出する。一般に、検出信号s及びギャップアクチュエータ7の制御量に対応する位置を表す信号から実際のビーム位置を表す信号量xへの変換は、検出信号s及びギャップアクチュエータ7の制御量に対応する位置を表す信号とビーム位置を表す信号量xとの相対関係を予め定義して、対応するビーム位置を表す信号量xへと変換する変換テーブルに基づいて行われる。
【0051】
ギャップ目標位置設定部142は、記録再生時の所望のギャップ長(GL)を目標位置としてビーム位置を表す信号量x
dを設定し、GES生成部143に送出する。
【0052】
GES生成部143は、実際のビーム位置を表す信号量xと、目標位置としてビーム位置を表す信号量x
dとの差分から、ギャップエラー信号(GES)を生成し、引込制御信号生成部144に送出する。このギャップエラー信号(GES)から、実際のビーム位置を表す信号量xと、残留するギャップサーボ誤差(RGSE)を把握することができる。
【0053】
引込制御信号生成部144は、ギャップエラー信号(GES)を基に引込制御信号C
Gを生成してギャップアクチュエータ7に出力するとともに、ギャップアクチュエータ7の制御量に対応する位置を表す信号をビーム位置信号生成部141に送出する。一般に、ギャップエラー信号(GES)から引込制御信号C
Gを生成するために、ギャップエラー信号(GES)とギャップアクチュエータ7の制御量との相対関係を予め定義して、引込制御信号C
Gへと変換する変換テーブルに基づいて行われる。
【0054】
したがって、フィードバック制御部145は、光検出信号sを用いて、ギャップアクチュエータ7による引き込み制御を行うギャップサーボのフィードバック制御(FBC)系を構成する。
【0055】
このようにして、フィードバック制御部145によってフィードバック制御(FBC)によるギャップサーボの引き込み制御が行われる。尚、
図3に示すように、ギャップサーボの引き込み制御に関して、ギャップエラー信号(GES)は、光源11のレーザビームの波長をλとすると、λ/4以下では、ギャップ長(GL)に応じてほぼ線形の信号量が得られるため、ギャップエラー信号(GES)がλ/4以下に入っていれば、記録再生時の所望のギャップ長(GL)でいきなり引き込み制御を行わなくとも(即ち、所望のギャップ長(GL)より大きい値で引き込んでも)、ギャップサーボが動作する(例えば、特開2006−338843号参照)。
【0056】
ディスク回転制御部146は、光ディスク2の記録再生のための回転制御信号C
Rを生成して、スピンドルモータ4に出力する。
【0057】
記録再生制御部147は、ギャップサーボの引込制御が安定化した後、光検出部13により検出された検出信号sの一部を用いて、情報の記録又は再生の制御を行う。
【0058】
光ディスク2について1000rpm以下の低回転であれば、
図2に示すように、制御部14によってフィードバック制御を行うように構成することができる。しかしながら、従来技術として前述したように、記録レートを放送用の低圧縮率で符号化されたHDTV映像や、情報圧縮符号化制御を行った後の画素数が3840×2160(横方向画素数×縦方向画素数)や7680×4320(横方向画素数×縦方向画素数)の高精細映像の記録再生を行う場合を考えると、2000rpm以上の高速回転が要求され、フィードバック制御(FBC)のみではSIL光ヘッド6が光ディスク2に衝突してしまうおそれがある。
【0059】
そこで、本発明においては、引込制御信号C
Gの生成に関して、フィードバック制御(FBC)とフィードフォワード制御(FFC)におけるギャップ長の制御目標値を管理し、光ディスク装置1における記録及び/又は再生に必要な対物レンズ5のギャップ引き込み制御を行うように、制御部14を構成する。
【0060】
図4は、本発明に係るギャップサーボ装置としてフィードバック制御(FBC)とフィードフォワード制御(FFC)との併用時の制御管理を行う場合の制御部14の概略図である。尚、同様な構成要素には同一の参照番号を付している。この例において、制御部14は、ビーム位置信号生成部141と、ギャップ目標位置設定部142と、GES生成部143と、引込制御信号生成部144と、ディスク回転制御部146と、記録再生制御部147と、フィードフォワード制御部148と、ギャップ目標位置変更部149と、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150とを備える。ビーム位置信号生成部141、GES生成部143及び引込制御信号生成部144は、フィードバック制御部145を構成する。また、制御部14は、フィードバック制御(FBC)とフィードフォワード制御(FFC)のサーボ系の切り替えのための切り替えSW31を備え、切り替えSW31は、FBC‐FFC管理部150によってオン又はオフが制御される。
【0061】
ビーム位置信号生成部141、ギャップ目標位置設定部142、GES生成部143、引込制御信号生成部144、フィードバック制御部145、ディスク回転制御部146及び記録再生制御部147について、
図2に示す例と同様に動作するため更なる詳細な説明は省略する。つまり、
図4に示す例においては、切り替えSW31と、フィードフォワード制御部148と、ギャップ目標位置変更部149及びFBC‐FFC管理部150が更に備えられている点で
図2に示す例とは相違する。
【0062】
フィードフォワード制御部148は、フィードバック制御(FBC)による引き込み制御を行なった後、切り替えSW31をオンにすることより、フィードフォワード制御(FFC)を更に適用してギャップエラー信号を補償する機能を有し、この補償したギャップエラー信号(GES)を基に引き込み制御が行なわれるようにしてサーボ系の切り替え制御系が構成される。より具体的には、フィードフォワード制御部148は、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150による制御管理下で、フィードバック制御(FBC)系内のギャップエラー信号(GES)についてフィードフォワード制御(FFC)の補償信号でGES生成部143におけるギャップエラー信号(GES)を補償する。これにより、補償したギャップエラー信号(GES)を基に生成される引込制御信号CGがギャップアクチュエータ7に供給され、ギャップアクチュエータ7の制御量に対応するレーザビームの垂直方向位置を表す信号がビーム位置信号生成部141に送出されることになる。
【0063】
ギャップ目標位置変更部149は、ギャップ目標位置設定部142にて設定される記録再生時の所望のギャップ長(GL)の目標位置を、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150による制御管理下で切り替えSW31を介したサーボ系の切り替えに応じてギャップ目標位置の値をより大きい所定値に変更し、この変更したギャップ目標位置の値を新たなビーム位置を表す信号量x
dとしてフィードバック制御部145に設定するためにGES生成部143に送出する。ここで、「大きい所定値」とは、フィードバック制御部145の制御内の値であればよい。詳細に例示するが、その都度、ギャップエラー信号(GES)を監視しながらループ演算して増大させる所定値とするか、又はギャップエラー信号(GES)として安定化することが確実な予め定めた所定値とすることができる。
【0064】
フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視して、サーボ系の切り替えに応じてギャップ目標位置の値を切り替え制御する。より具体的には、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、先ず、記録再生前の初期設定時にてフィードバック制御(FBC)で引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値より大きい所定値に変更を指示してフィードバック制御部145に設定させる。次に、FBC‐FFC管理部150は、フィードフォワード制御部148に対して、フィードバック制御(FBC)によるギャップサーボ引き込み制御で追従制御させギャップ誤差を所定範囲内に安定化させる。次に、FBC‐FFC管理部150は、フィードフォワード制御部148に対して指示し、適応的なフィードフォワード制御(FFC)を更に適用してギャップサーボ引き込み制御で追従制御させギャップ誤差を更に抑圧させる。次に、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、引き込み制御を行う目標ギャップ長(GL)を記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値に変更を指示してフィードフォワード制御(FFC)が適用されているフィードバック制御部145に設定させる。
【0065】
これにより、光ディスク2について2000rpm以上の高速回転が要求される場合においても、固体浸レンズ(SIL)を用いた対物レンズ5及びSIL光ヘッド6が光ディスク2に衝突してしまうのを防止して、安定な記録再生を行うことが可能となる。また、光ディスク2について2000rpm以上であれば、現時点で要求される高い転送レートでの記録も可能であり、20000rpmでサーボ動作することも確認できている。
【0066】
ここで、ビーム位置信号生成部141、ギャップ目標位置設定部142、GES生成部143、引込制御信号生成部144、フィードフォワード制御部148、ギャップ目標位置変更部149及びフィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150は、「ギャップサーボ装置」として構成することができ、更なる詳細について以下に説明する。
【0067】
〔ギャップサーボ装置〕
図5は、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置1において、本発明に係るギャップサーボ装置として構成される制御部14の詳細なブロック図である。
図5に示す例において、零位相誤差追従制御法に基づくフィードフォワード制御部148を例に説明する。初期設定では、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150は、切り替えSW31をオフし、フィードバック制御(FBC)のみのサーボ系を動作するように設定する。本発明においては、フィードバック制御(FBC)及びフィードフォワード制御(FFC)のサーボ系の構成自体は特段に限定するものではないが、非特許文献3に開示される内容を基に説明する。
【0068】
(フィードバック制御)
フィードバック制御(FBC)は、位相進み遅れ回路で構成した位相補償器を用いたフィードバックギャップ制御部154とヴォイスコイルモータによるギャップアクチュエータ制御部156で制御されるSIL光ヘッド6とでフィードバック・ループを形成し、引込制御を行うギャップ長(GL)の設定値を中心にフィードバック制御することで、ギャップサーボを構成している。まず、記録再生時に所望されるギャップ目標位置xd(t)がギャップ目標位置変更部149に入力される。続いて、ギャップ目標位置変更部149は、記録再生時の所望のギャップ長(GL)の目標位置x
d(t)を、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150による制御管理下でサーボ系の切り替えに応じて、そのギャップ目標位置の値をより大きい所定値に変更する。続いて、変更されたギャップ目標位置x
d(t)は、加算部151に入力される。
【0069】
加算部151によって、現時点のギャップ長(GL)を示すビーム位置を表す信号量x(即ち、光ディスク2に集光するレーザビームの垂直方向位置)x(t)と、当該変更されたギャップ目標位置x
d(t)との差分が演算され、その差分信号がA/Dコンバータ152に入力される。この差分信号は、A/Dコンバータ152によってサンプリングされ、ギャップエラー信号(GES)のデジタル値e(t)が生成される。フィードバック制御(FBC)のみのサーボ系では、フィードバックギャップ制御部154により、このデジタル値e(t)からフィードバック制御(FBC)のサーボ系における最大誤差余有と広波長帯域で決まる伝達関数C
1(z
−1)により制御量を演算し、D/Aコンバータ155により零次ホールドでアナログ値に変換される。
【0070】
続いて、ギャップアクチュエータ制御部156により、ギャップアクチュエータ7を制御するための引込制御信号C
Gが生成されるとともに、このギャップアクチュエータ7の制御量に対応するレーザビームの垂直方向位置を表す信号が、ギャップ長(GL)を示すビーム位置を表す信号量x(t)として加算部151に供給される。このようにして、フィードバック制御(FBC)によるサーボ動作が行われ、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150では、ギャップエラー信号(GES)の安定化を監視する。
【0071】
(フィードフォワード制御)
続いて、フィードバック制御(FBC)によるサーボ動作の安定後、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150は、切り替えSW31をオンし、フィードバック制御(FBC)に対してフィードフォワード制御(FFC)を加える。切り替えSW31のオン・オフに関わらず、ギャップエラー信号(GES)のデジタル値e(t)は加算部158に入力されており、加算部158では、デジタル値e(t)と、波形推定部157にてサンプリング時間tに応じて現時点で推定される波形値を加算してサンプリングの時刻としてk番目(t=k)における誤差量e’(k)が生成され、第1メモリ159に入力される。第1メモリ159では、予め定めた周波数成分(本例では、回転数の基本周波数(Fundamental frequency)成分)を抽出して保持する。同様に、他の高調波成分(m次の高調波成分、m>1、例えば4次の高調波成分)を抽出して保持する第2メモリ160を1つ以上設けてもよい。尚、第1メモリ159で抽出した周波数成分と、第2メモリ160で抽出した高調波成分とが重複して抽出される場合には各次数に応じた高調波成分を抽出するように減算部161が設けられる。
【0072】
抽出した周波数成分及び各次数の高調波成分は加算部162により加算され、制御外の高周波成分を除去する所定のローパスフィルタ(LPF)163を介してt=k+2における高次成分の誤差量e’(k+2)が生成される。フィードフォワード(FF)補償部164は、高次成分の誤差量e’(k+2)を加味して、t=kにおけるフィードフォワード補償信号e
ff(k)を生成する。このフィードフォワード補償信号e
ff(k)は、波形推定部157にてサンプリング時間tに応じて現時点で推定される波形値を生成するのに用いられ、切り替えSW31を介して加算部153に供給される。加算部153では、フィードバック制御(FBC)によるギャップエラー信号(GES)にフィードフォワード補償信号e
ff(k)を加味して高精度化したギャップエラー信号(GES)が生成されフィードバックギャップ制御部154に供給される。このようにして、フィードバック制御(FBC)及びフィードフォワード制御(FFC)によるサーボ動作が行われ、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150では、ギャップエラー信号(GES)の安定化を監視する。
【0073】
(ギャップ目標位置の変更制御)
続いて、フィードバック制御(FBC)及びフィードフォワード制御(FFC)によるサーボ動作の安定後、フィードバック‐フィードフォワード制御(FBC‐FFC)管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、記録再生時の所望のギャップ長(GL)となるように、ギャップ目標位置の値の変更を指示する。この指示に応じて、ギャップ目標位置変更部149は、ギャップ目標位置の値を、記録再生時の所望のギャップ長(GL)に変更して設定する。このようにして、フィードバック制御(FBC)及びフィードフォワード制御(FFC)によるサーボ動作を、記録再生時の所望のギャップ長(GL)にするとともに、その誤差変動を抑圧した状態に安定化させる。
【0074】
尚、フィードバックギャップ制御部154における伝達関数C
1(z
−1)と、ギャップアクチュエータ制御部156における制御量を示す伝達関数P(s)における複素数sについて、サンプリング時間tの1周期(1クロック)だけ信号を遅延するとしてP(z
−1)として表すことができ、波形推定部157は、式(3)の伝達関数で波形値を算出する。
【0076】
また、フィードフォワード(FF)補償部164は、高次成分の誤差量e’(k+2)を加味して、t=kにおけるフィードフォワード補償信号e
ff(k)を演算するが、この演算に用いる伝達関数G
f(z
−1)は、式(4)に示すように、式(3)の逆伝達関数で表される。
【0078】
また、第1メモリ159で抽出する周波数成分や第2メモリ160等で抽出するm次高調波成分は、光ディスク2のディスク回転数rotと、サンプリング時間tに対応する制御サンプリング周波数fsとの間でN=rot/fs*60としたとき、(N/m−2)でサンプリングするように構成したが、単なる一例にすぎず、光ディスク2の材質やSIL光ヘッド6等の構成により適宜変更できるものとし、フィードフォワード補償信号e
ff(k)でも残留してしまうような残留誤差成分が最も小さくなるように選択すればよい。
【0079】
このようにして、本発明に係るギャップサーボ装置を構成することで、高精度のギャップ引き込み制御を安定的に行うことができるようになる。
【0080】
〔ギャップ引き込み制御方法〕
次に、
図4及び
図5で構成されるギャップサーボ装置におけるギャップ引き込み制御方法について、図面を参照して3つの制御例を順に説明する。
【0081】
(第1のギャップ引き込み制御例)
図6は、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置において、本発明に係るギャップサーボ装置として構成される制御部14の第1のギャップ引き込み制御例を示す図である。先ず、光ディスク2が光ディスク装置1に装填されると、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、記録再生前の初期設定時にてフィードバック制御(FBC)で引き込み制御を行う目標ギャップ長(GL)を記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値より大きい所定値(例えば、GL=40nmに設定)に変更を指示し、ギャップ目標位置変更部149は、引き込み制御を行う目標ギャップ長(GL)をその所定値に設定する(ステップS11)。このときのディスク回転数は、式(2)の保てる範囲なら、高速でも低速でも回転していてよい。引き込み制御を行う目標ギャップ長(GL)を変更する点は従来の光ディスク装置と異なる点に留意する。そもそも、ビームスポットの焦点が合う点でサーボ動作させるCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disk)やブルーレイディスク(BD)などのファーフィールド記録(FFR:Far Field Optical Recording)方式によるフォーカスサーボ方式では、光ディスク2の記録層に焦点を合せるように構成される対物レンズと光ディスクとの間隔は常時一定の距離に保つ必要があり、ディスク記録面と垂直方向でサーボさせる点では似ていても、近接場光記録におけるギャップサーボ動作では、光ディスク2とSIL光ヘッド6との間隔は、ギャップサーボが動作する範囲内であれば、任意の距離に設定できる。
【0082】
続いて、フィードバック制御部145は、フィードバック制御(FBC)によるギャップサーボ引き込み制御を実行し(ステップS12)、追従制御させギャップ誤差を所定範囲内に安定化させる。FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップサーボ引き込み動作の安定化の確実な所定時間を経過するまで待機し、安定化していなければ更に所定時間待機し(ステップS13:N)、安定化すればステップS14に移行する(ステップS13:Y)。例えば、このときのギャップ制御で、残留するギャップサーボ誤差が±15nmの範囲内となる精度を想定することができる。
【0083】
次に、FBC‐FFC管理部150は、フィードフォワード制御部148に対して指示し、適応的なフィードフォワード制御(FFC)を更に適用してギャップサーボ引き込み制御を行い、追従制御させギャップ誤差を更に抑圧させる(ステップS14)。例えば、このときのギャップ制御で、残留するギャップサーボ誤差が±10nmの範囲内となる高精度を想定することができる。
【0084】
次に、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値に変更を指示して設定させる(ステップS15)。
【0085】
続いて、FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップサーボ引き込み動作の安定化の確実な所定時間を経過するまで待機し、安定化していなければ更に所定時間待機し(ステップS16:N)、安定化すればステップS17に移行する(ステップS16:Y)。これにより、2000rpm以上の高速回転が要求される場合においても、固体浸レンズ(SIL)を用いた対物レンズ5及びSIL光ヘッド6が光ディスク2に衝突してしまうのを防止して、安定な記録再生を行うことが可能な状態となる。
【0086】
ここで、FBC‐FFC管理部150は、記録再生制御部147に対して安定な記録再生を行うことが可能な状態である旨を指示するように構成することもでき、記録再生制御部147は、光ディスク2の記録又は再生の制御を実行する(ステップS15)。
【0087】
これにより、2000rpm以上の高速回転が要求される場合においても、固体浸レンズ(SIL)を用いた対物レンズ5及びSIL光ヘッド6が光ディスク2に衝突してしまうのを防止して、安定な記録再生を行うことが可能となる。ただし、この第1のギャップ引き込み制御例では、ステップS13及びステップS16にて、安定化の確実な所定時間の経過を待つように制御する点で制御構成が容易に実現できるという利点がある反面、光ディスク装置1に関するあらゆる固体ばらつきをも考慮した所定時間を設定する必要があり、安定化の即応性の観点での課題が残る。そこで、第2のギャップ引き込み制御例においては、この課題を解決する。
【0088】
(第2のギャップ引き込み制御例)
図7は、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置において、本発明に係るギャップサーボ装置として構成される制御部14の第2のギャップ引き込み制御例を示す図である。先ず、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、記録再生前の初期設定時にてフィードバック制御(FBC)で引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値より大きい所定値に変更を指示し、ギャップ目標位置変更部149は、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)をその所定値に設定する(ステップS21)。
【0089】
続いて、フィードバック制御部145は、フィードバック制御(FBC)によるギャップサーボ引き込み制御を実行し(ステップS22)、追従制御させギャップ誤差を所定範囲内に安定化させる。FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップサーボ引き込み動作が安定化したか否かの判別を行い、安定化していなければギャップ目標位置変更部149に対して記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値より大きい別の所定値に変更を指示して設定させ(ステップS23:N)、安定化していればステップS24に移行する(ステップS23:Y)。ここで、この更なる所定値の変更に際し、予め大きな値から徐々に小さい値に変更することや、これとは逆に予め小さな値から徐々に大きい値に変更することや、或いは、予め大きな値と小さい値とを適宜入れ替えながら適応的に変更することなどが考えられるが、安定化の即応性の観点で実験的に定めたシーケンスを採用するようにすればよい。
【0090】
次に、FBC‐FFC管理部150は、フィードフォワード制御部148に対して指示し、適応的なフィードフォワード制御(FFC)を更に適用してギャップサーボ引き込み制御を行い、追従制御させギャップ誤差を更に抑圧させる(ステップS24)。
【0091】
次に、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を、当該所定値から記録再生時の所望のギャップ長(GL)までの間の値に変更を指示して設定させる(ステップS25)。
【0092】
続いて、FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップサーボ引き込み動作が安定化したか否かの判別を行い、安定化していなければギャップ目標位置変更部149に対して記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値より大きい別の所定値に変更を指示して設定させ(ステップS26:N)、安定化していればステップS27に移行する(ステップS26:Y)。ここで、この更なる所定値の変更に際し、所望のギャップ長(GL)の値に近づく方向で、予め大きな値から徐々に小さい値に変更するように構成するのが安定化の即応性の観点からも有効である。安定後、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を、最終目標値である記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値に変更を指示して設定させる(ステップS27)。
【0093】
尚、ステップS25にて、FBC‐FFC管理部150が、ギャップ目標位置変更部149に対して、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を、最終目標値である記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値に変更を指示して設定させるように構成した場合には、ステップS26及びS27の手順を省略して、ステップS28に移行する。
【0094】
FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップサーボ引き込み動作が安定化し、最終目標値である記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値となるまで、ステップS25〜S27までの手順を繰り返すか、又は安定化するまで所定時間待機する(ステップS28)。これにより、2000rpm以上の高速回転が要求される場合においても、固体浸レンズ(SIL)を用いた対物レンズ5及びSIL光ヘッド6が光ディスク2に衝突してしまうのを防止して、安定な記録再生を行うことが可能な状態となる。
【0095】
ここで、FBC‐FFC管理部150は、記録再生制御部147に対して安定な記録再生を行うことが可能な状態である旨を指示するように構成することもでき、記録再生制御部147は、光ディスク2の記録又は再生の制御を実行する(ステップS29)。
【0096】
これにより、2000rpm以上の高速回転が要求される場合においても、固体浸レンズ(SIL)を用いた対物レンズ5及びSIL光ヘッド6が光ディスク2に衝突してしまうのを防止して、安定な記録再生を行うことが可能となる。さらに、この第2のギャップ引き込み制御例では、安定化の即応性の観点での課題も解決することができる。次に、残留するギャップサーボ誤差の安定化の精度がそれほど要求されず、特に、低消費電力化が重要視されるような用途に対しては、次に説明する第3のギャップ引き込み制御例とすることができる。
【0097】
(第3のギャップ引き込み制御例)
図8は、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置において、本発明に係るギャップサーボ装置として構成される制御部14の第3のギャップ引き込み制御例を示す図である。先ず、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、記録再生前の初期設定時にてフィードバック制御(FBC)で引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値より大きい所定値に変更を指示し、ギャップ目標位置変更部149は、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)をその所定値に設定する(ステップS31)。
【0098】
続いて、フィードバック制御部145は、フィードバック制御(FBC)によるギャップサーボ引き込み制御を実行し(ステップS32)、追従制御させギャップ誤差を所定範囲内に安定化させる。FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップサーボ引き込み動作が安定化したか否かの判別を行い、安定化していなければギャップ目標位置変更部149に対して記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値より大きい別の所定値に変更を指示して設定させ(ステップS33:N)、安定化していればステップS34に移行する(ステップS33:Y)。ここで、この更なる所定値の変更に際し、予め大きな値から徐々に小さい値に変更することや、これとは逆に予め小さな値から徐々に大きい値に変更することや、或いは、予め大きな値と小さい値とを適宜入れ替えながら適応的に変更することなどが考えられるが、安定化の即応性の観点で実験的に定めたシーケンスを採用するようにすればよい。
【0099】
次に、FBC‐FFC管理部150は、フィードフォワード制御部148に対して指示し、適応的なフィードフォワード制御(FFC)を更に適用してギャップサーボ引き込み制御を行い、追従制御させギャップ誤差を更に抑圧させる(ステップS34)。
【0100】
次に、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を、当該所定値から記録再生時の所望のギャップ長(GL)までの間の値に変更を指示して設定させる(ステップS35)。
【0101】
続いて、FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップサーボ引き込み動作が安定化したか否かの判別を行い、安定化していなければギャップ目標位置変更部149に対して記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値より大きい別の所定値に変更を指示して設定させ(ステップS36:N)、安定化していればステップS27に移行する(ステップS36:Y)。ここで、この更なる所定値の変更に際し、所望のギャップ長(GL)の値に近づく方向で、予め大きな値から徐々に小さい値に変更するように構成するのが安定化の即応性の観点からも有効である。安定後、FBC‐FFC管理部150は、ギャップ目標位置変更部149に対して、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を、最終目標値である記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値に変更を指示して設定させる(ステップS37)。
【0102】
尚、ステップS35にて、FBC‐FFC管理部150が、ギャップ目標位置変更部149に対して、引込制御を行う目標ギャップ長(GL)を、最終目標値である記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値に変更を指示して設定させるように構成した場合には、ステップS36及びS37の手順を省略して、ステップS38に移行する。
【0103】
FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップサーボ引き込み動作が安定化し、最終目標値である記録再生時の所望のギャップ長(GL)の値となるまで、ステップS35〜S37までの手順を繰り返すか、又は安定化するまで所定時間待機する(ステップS38)。ここまでの制御手順は、第2のギャップ引き込み制御例と同様であり、これにより、2000rpm以上の高速回転が要求される場合においても、固体浸レンズ(SIL)を用いた対物レンズ5及びSIL光ヘッド6が光ディスク2に衝突してしまうのを防止して、安定な記録再生を行うことが可能な状態となる。
【0104】
ここで、第3のギャップ引き込み制御例では、FBC‐FFC管理部150は、切り替えSW31をオフし、フィードバック制御(FBC)のみのサーボ系を動作するように設定して、フィードフォワード制御部148の動作を停止して省電力化を図る(ステップS39)。
【0105】
FBC‐FFC管理部150は、ギャップエラー信号(GES)を監視しており、ギャップエラー信号(GES)が許容範囲内で安定化しているか否かを判別し、安定化していなければステップS34の制御手順に再度移行し(ステップS40:N)、許容範囲内で安定化していればステップS41に移行する(ステップS40:Y)。
【0106】
ここで、FBC‐FFC管理部150は、記録再生制御部147に対して安定な記録再生を行うことが可能な状態である旨を指示するように構成することもでき、記録再生制御部147は、光ディスク2の記録又は再生の制御を実行する(ステップS41)。
【0107】
これにより、2000rpm以上の高速回転が要求される場合においても、固体浸レンズ(SIL)を用いた対物レンズ5及びSIL光ヘッド6が光ディスク2に衝突してしまうのを防止して、安定な記録再生を行うことが可能となる。さらに、この第3のギャップ引き込み制御例では、残留するギャップサーボ誤差の安定化の精度がそれほど要求されず、特に、低消費電力化が重要視されるような用途に対して有効となる。
【0108】
図9は、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置1において、制御部14における第2のギャップ引き込み制御例を基に、光ディスクを7500rpmの高速回転で駆動した際のフィードバック制御(FBC)時のギャップエラー信号(GES)を示す図である。フィードバック制御(FBC)のみのサーボ動作時では、残留するギャップサーボ誤差(RGSE)は、±21.53nmとなり、本例で所望される制御誤差±20nm以下でギャップ長(GL)を制御できないことが分かる。
図10は、本発明に係る一実施形態の光ディスク装置1において、制御部14における第2のギャップ引き込み制御例を基に、
図9に示す状態から更にフィードフォワード制御(FFC)を適用した際の残留するギャップサーボ誤差(RGSE)を示す図である。本例で所望される制御誤差±20nm以下でギャップ長(GL)を制御できるようになったことが分かる。
【0109】
上記の実施形態では特定の例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、制御部14の制御例として、3つのギャップ引き込み制御例を具体的に説明したが、これらを組み合わせ、所定時間の経過とギャップエラー信号(GES)の監視による組み合わせで安定化判断を行いサーボ系の切り替えを行うような引き込み制御とすることもできる。