【文献】
Noeon Park et al.,Biofouling potential of various NF membranes with respect to bacteria and their solube microbial products(SMP): Characterizations,flux decline, and transport parameters,journal of MEMBRANE SCIENCE,2005年,Vol.258,pp.43-54,[検索日:2016年5月27日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファウリングの原因としては、特許文献1にも記載されるように、被処理水の水質に起因する部分が一つ挙げられるが、別の大きな要素としては水処理膜の物性に起因する部分もある。つまり、ファウリングを抑えるためには、被処理水と水処理膜の両方について適切に評価をし、それに基づき対応をすることが重要となる。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被処理水と水処理膜の両方の特性からファウリングの起こりやすさを予測し、適切な水処理膜を選定したり、水処理設備の設計諸元を把握することを可能とする水処理膜の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができた本発明の水処理膜の評価方法とは、水処理膜の親疎水性を表す指標Aを求める工程と、被処理水に含まれる菌体の親疎水性を表す指標Bを求める工程と、指標Aと指標Bから、水処理膜への菌体の付着性を表す指標Xを求める工程とを有する水処理膜の評価方法であって、指標Aとして、水処理膜の構成材料から形成されたフィルムの空気接触角θm(°)を用い、指標Bとして、菌体の水接触角θb(°)を用い、下記式(1)に基づき指標Xを求めるところに特徴を有する。
X=exp(−((θm−0.55θb−110)/22.6)
2) ・・・(1)
【0008】
本発明によれば、指標Aと指標Bから上記式(1)に基づき指標Xを求めることにより、被処理水の性状、すなわち、被処理水に含まれる菌体の種類に応じて、ファウリングが起こりにくい水処理膜を選定することができる。従って、膜を用いて水処理を行う際に、事前に指標Aと指標Bを求めることにより、ファウリングの起こりにくい適切な水処理膜を選定することが可能となる。
【0009】
本発明はまた、水処理膜の親疎水性を表す指標Aを求める工程と、被処理水に含まれる菌体の親疎水性を表す指標Bを求める工程と、菌体の初期の増殖性能を表す指標Cを求める工程と、指標Aと指標Bと指標Cから、長期における水処理膜への菌体の付着量を見積もる工程を有する水処理膜の評価方法であって、指標Aとして、水処理膜の構成材料から形成されたフィルムの空気接触角θm(°)を用い、指標Bとして、菌体の水接触角θb(°)を用い、指標Cとして、菌体を含む溶液中にポリエーテルスルホンフィルムを12時間浸漬した後の菌体のフィルムの表面占有率S(%)を用い、下記式(2)に基づき、135時間後の水処理膜への菌体の付着量Y(μm
3/μm
2)を求めることを特徴とする水処理膜の評価方法も提供する。
Y=K(0.0366+0.964×exp(−((θm−0.55θb−110)/22.6)
2)) ・・・(2)
(上記式(2)において、Sが4.0%未満の場合はKは4.9であり、Sが4.0%以上の場合はKは34である。)
【0010】
指標Aと指標Bに加え指標Cを求めることにより、上記式(2)に基づき、135時間後の水処理膜への菌体の付着量Y(μm
3/μm
2)を求めることができる。このように長期における水処理膜への菌体の付着量Yを見積もることができれば、水処理設備の設計段階で水処理膜の洗浄頻度を予め設定することが可能となり、被処理水量に応じた適切な膜処理面積を確保したり、適切な水処理運転シーケンスを構築することの事前検討が簡単に行えるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水処理膜の評価方法によれば、水処理膜の構成材料と被処理水の性状を事前に測定することで、実際に当該水処理膜を用いて当該被処理水を処理した場合にどの程度ファウリングが起こりやすいかを予測することができる。従って、ファウリングの起こりにくい水処理膜の選定が可能となり、また、水処理設備の設計段階で水処理膜の洗浄頻度を予め設定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ファウリングの起こりやすさを予測可能とする水処理膜の評価方法に関するものであり、具体的には、水処理膜の構成材料と被処理水(水処理膜によって処理される水;原水)の性状を事前に測定することで、実際に当該水処理膜を用いて当該被処理水を処理した場合にどの程度ファウリングが起こりやすいかを予測可能とするものである。
【0014】
膜を用いた水処理では、長期間処理を継続すると、原水中に含まれる溶質が膜表面や膜内部に吸着・堆積して膜の目詰まりが発生し、透水性能が低下することが知られている。このような現象は一般に「ファウリング」と呼ばれており、ファウリングの原因物質としては、無機塩類、フミン酸や脂肪酸等の低分子有機化合物、粘土や泥等の粒子やコロイド物質、微生物やその代謝物等が知られている。これらの中でも、微生物やその代謝物が原因で引き起こされるファウリングは「バイオファウリング」と呼ばれ、特に重視されている。ファウリングは、水処理膜を定期的に洗浄することにより、過度にファウリングが進行しないように管理されているが、バイオファウリングでは特に強固に水処理膜の表面に付着物や堆積物が形成されやすく、それを洗浄することが膜を用いた水処理を行う上で重要となる。従って、膜を用いた水処理では、バイオファウリングの生成をできるだけ抑制することが、大きな技術課題の一つとなっている。
【0015】
このような事情のもと、本発明者らが検討を重ねた結果、バイオファウリングは水処理膜の材質と被処理水の性状に大きく影響を受けることが明らかになり、事前に水処理膜の材質と被処理水の性状の特定の物性を把握することにより、バイオファウリングの起こりやすさを予測できることを見出した。具体的には、バイオファウリングの主な原因は、膜表面に付着した菌体が集団となることで形成されるバイオフィルムであるといわれているが、菌体の膜表面への付着性が、水処理膜の親疎水性を表す指標Aと、前記水処理膜に供給される被処理水に含まれる菌体の親疎水性を表す指標Bから予測できることが分かった。すなわち、本発明の水処理膜の評価方法は、水処理膜の親疎水性を表す指標Aを求める工程と、被処理水に含まれる菌体の親疎水性を表す指標Bを求める工程と、指標Aと指標Bから、水処理膜への菌体の付着性を表す指標Xを求める工程とを有するものであり、本発明によれば、この指標Xの値に基づいてバイオファウリングの起こりやすさを予測することができる。
【0016】
水処理膜の親疎水性を表す指標Aとしては、水処理膜の構成材料から形成されたフィルムの空気接触角θmを用いる。親疎水性を評価する指標としては、水接触角が一般によく知られている。水接触角は、水処理膜の上に水滴を載せて水処理膜と水滴との接触角を測ることで知ることができ、接触角が小さいほど水処理膜の親水性が高いこととなる。しかし、本発明者らが水処理膜と水滴との水接触角を測定したところ、水接触角は水処理膜の乾燥状態や表面状態に大きく影響を受けることが明らかとなった。従って、本発明では、これらの影響を排除してできるだけ正確に水処理膜の親疎水性を評価するために、水処理膜の構成材料から形成されたフィルムの空気接触角θmを用いることとした。
【0017】
水処理膜の構成材料から形成されたフィルムは、水処理膜を構成する材料からフィルム形成することにより得ることができる。例えば、水処理膜を構成するポリマーを溶融してプレスしたり、あるいはポリマーを溶媒に溶かしてガラス板上に塗布したりして、薄いフィルム状に形成する。また、市販品があれば、市販のフィルムを用いてもよい。
【0018】
空気接触角θmは、水処理膜の構成材料から形成されたフィルムを水中で水平に広げて、フィルムの下側に空気を供給して、空気とフィルムとの接触角を測定することにより求める。
【0019】
本発明者らが、代表的な水処理膜の構成材料として、ポリビニルアルコール(PVA)、酢酸セルロース(CA、酢化度40%)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のそれぞれについて、空気接触角θmを実際に測定した結果を表1に示す。なお、PVA、CA、PESについては、15質量%の濃度となるように、それぞれ純水、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンに溶解してポリマー溶液を調製し、1000μmのアプリケーターを用いてガラス板上にキャストし、窒素雰囲気下60℃で12時間、次いで真空下100℃で6時間乾燥を行った後、純水に浸漬させることにより、フィルムを得た。PVDFは、210℃、8.5atmの条件で2分間ホットプレスすることにより、フィルムを得た。PTFEについては、市販品(日東電工社製)のフィルムを用いた。
【0021】
表1に示すように、空気接触角θmは、PTFE<PVDF<PES<CA<PVAの順番で大きくなる。従って、表1に示した水処理膜の構成材料の中では、PTFEが最も疎水性が強く、PVAが最も親水性が強いこととなる。なお、空気接触角θmの測定値にばらつきが生じる場合は、複数の測定値の平均値を空気接触角θmとして用いればよい。
【0022】
被処理水に含まれる菌体の親疎水性を表す指標Bとしては、菌体の水接触角θbを用いる。菌体の水接触角θbは、被処理水に含まれる菌体をマット状に形成し、菌体マットの上に水滴を載せて、菌体マットと水滴との接触角を測ることで知ることができる。菌体マットは、孔径0.45μmの平板状の膜(メルク(メルクミリポア)社製、「MF−ミリポア」(登録商標)HAWP 04700)を用いて被処理水を吸引ろ過し、2時間室温で静置し乾燥させることにより形成する。
【0023】
例えば、特定の菌体の水接触角θbを測定すると、表2に示すような結果が得られる。なお、表2の結果を得るにあたり、菌体の水接触角θbは次のように菌体マットを作成して測定した。すなわち、菌体をTSB培地で30℃で18時間培養した後、40mLの培養液が入った100mLの蓋付三角フラスコに1/50植菌を行って30℃で8時間培養した上で、菌体数が10
7〜10
8cells/mLとなるように調整することにより菌体液を調製し、この菌体液を吸引ろ過することで菌体マットを作成し、この菌体マットの水接触角θbを測定した。被処理水中の菌体量が不十分な場合は、このように菌体を培養して菌体マットを作製してもよい。水接触角θbの測定値にばらつきが生じる場合は、複数の測定値の平均値を水接触角θbとして用いればよい。
【0025】
本発明の水処理膜の評価方法では、上記に説明したように、指標Aとして、水処理膜の構成材料から形成されたフィルムの空気接触角θmを求め、指標Bとして、被処理水に含まれる菌体の水接触角θbを求めることで、水処理膜への菌体の付着性を表す指標Xを求める。指標Xは下記式(1)に基づき求められ、菌体の膜表面への堆積のしやすさを表す。指標Xは、0から1の値をとり、値が大きいほど菌体が膜表面に堆積しやすいことを表す。
X=exp(−((θm−0.55θb−110)/22.6)
2) ・・・(1)
【0026】
本発明によれば、上記式(1)に基づき指標Xを求めることで、被処理水の性状(具体的には、被処理水に含まれる菌体の種類)に応じて、ファウリングが起こりにくい水処理膜を選定することができる。例えば、被処理水中に菌体として大腸菌(E. coli)のみが含まれる場合(この場合、θbは18.7(°)となる)は、水処理膜として酢酸セルロース(CA)を用いると指標Xは約1.0となるのに対し、それより疎水性の高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いると指標Xは0.05と算出され、それより親水性の高いポリビニルアルコール(PVA)を用いると指標Xは0.36と算出される。従ってこの場合は、水処理膜の構成材料としてPTFEやPVAを用いる方が、CAを用いるよりもファウリングが起こりにくくなる。
【0027】
図1には、表1に示した材料で構成されるフィルムを表2に示した菌体をそれぞれ含む被処理水に浸漬した場合に、実際に計測されたバイオフィルム形成量の測定結果を示す。
図1では、表2に示したそれぞれの菌体について、空気接触角θmとバイオフィルム形成量との相関がグラフで表されており、さらに、上記式(1)に基づく関数が重ね合わせて示されている。なお、
図1に示したグラフはそれぞれ、各菌体を含む被処理水にフィルムを浸漬したときの面積当たりのバイオフィルム形成量が、各フィルム間の相対値で示されている。
【0028】
バイオフィルムの形成はフローセル培養により行った。すなわち、フローセル(BioSurface Technologies社製、FC81)内に、菌体を付着させるフィルム(水処理膜の構成材料から形成したフィルム:水処理膜フィルム)が下面になるように設置し、そこに菌体液を供給し、30℃で1時間静置した。なお、菌体液は、それぞれの菌体をTSB培地で30℃で18時間培養した後、40mLの培養液が入った100mLの蓋付三角フラスコに1/50植菌を行って30℃で8時間培養した上で、菌体数が10
7〜10
8cells/mLとなるように調整することにより、調製した。次に、フローセルを上下反転させて水処理膜フィルムがフローセルの上面になるように設置し、そこに菌体を含まないTSB培地を30℃で135時間、流速0.2mL/分で供給し続けることで、水処理膜フィルム上にそれぞれの菌体のバイオフィルムを形成させた。
【0029】
バイオフィルム形成量の測定は、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)により行った。水処理膜フィルム上に形成されたバイオフィルムを、Invitrogen社製のLIVE/DEAD Bacterial Viability Kitを用いて蛍光染色して、生菌体を判別可能な状態とした。そして、これを共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)により、水処理膜フィルム表面から高さ方向に任意の距離ごとに平面蛍光画像を取得し、これらの画像を積層・再構築することで、水処理膜フィルム上に形成されたバイオフィルムの三次元画像を得て、単位面積当たりのバイオフィルム形成量(μm
3/μm
2)を算出した。
【0030】
図1の結果から、いずれの菌体を対象とした場合でも、上記式(1)に基づく関数によって、水処理膜フィルムの空気接触角θmとバイオフィルム形成量との相関関係が比較的フィット性良く表せることが分かる。従って、上記式(1)に基づいて指標Xを算出することで、被処理水の性状に応じた適切な水処理膜を選定することができる。なお大まかな傾向として、親疎水性が中程度の酢酸セルロース(CA)やポリエーテルスルフォン(PES)を用いた場合に、バイオフィルムの形成量が増え、指標Xが比較的高い値を示した。
【0031】
本発明によれば、例えば、膜を用いない既存の水処理設備を膜を用いた設備に更新する際に、ファウリングの起こりにくい水処理膜を適切に選定することを可能とする。例えば、既存の水処理設備の活性汚泥(活性汚泥には菌体が多数含まれる)の水接触角を測定することで、ファウリングの起こりにくい水処理膜の構成材料を選定することができる。また、新規に水処理設備を作る際は、被処理水中に含まれる菌体、あるいは、被処理水の処理性能を有する菌体の水接触角を測定することで、ファウリングの起こりにくい水処理膜の構成材料を選定することができる。また本発明によれば、このように選定した水処理膜を用いて、好適に水処理を行うことができるようになる。
【0032】
次に、上記の指標Aと指標Bに加え、菌体の初期の増殖性能を表す指標Cから、長期における水処理膜への菌体の付着量を見積もる水処理膜の評価方法について説明する。指標Cを用いた水処理膜の評価方法は、長期にわたって膜を用いて水処理を行った場合にどの程度の量の菌体が水処理膜に付着するのか、その付着量を見積もる方法に関するものである。すなわち、指標Cを用いた水処理膜の評価方法は、水処理膜の親疎水性を表す指標Aを求める工程と、被処理水に含まれる菌体の親疎水性を表す指標Bを求める工程と、菌体の初期の増殖性能を表す指標Cを求める工程と、指標Aと指標Bと指標Cから、長期における水処理膜への菌体の付着量Yを見積もる工程を有するものである。
【0033】
菌体の初期の増殖性能を表す指標Cとしては、菌体を含む溶液中にポリエーテルスルフォン(PES)フィルムを12時間浸漬した後の菌体のPESフィルムの表面占有率S(%)を用いる。
図1に示したように、水処理膜の構成材料としてPESを用いると、バイオフィルムの形成量が高くなる傾向を示す。従って、菌体の初期の増殖を促す点から、指標Cを求めるに当たり、参照材料としてPESから構成されたフィルムを用いることとする。指標Cとしては、具体的には、菌体数が10
7〜10
8cells/mLに調整された菌体液にPESフィルムを30℃で12時間浸漬して静置培養し、浸漬後のPESフィルムを共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)により測定して、生菌体のPESフィルムの表面占有率S(%)を求める。菌体液の調製方法、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)による測定方法の詳細は、上記に説明した通りである。なお、表面占有率Sは、PESフィルム表面からの高さが0(測定限界上実質0)のときの平面蛍光画像から解析して求める。
【0034】
例えば、表2に示した菌体について、12時間浸漬後のPESフィルムの表面占有率Sを求めると、下記の表3のような結果が得られる。表面占有率Sの測定値にばらつきが生じる場合は、複数の測定値の平均値を表面占有率Sとして用いればよい。
【0036】
指標Aと指標Bと指標Cを求めることにより、下記式(2)に基づき、135時間後の水処理膜への菌体の付着量Y(μm
3/μm
2)、すなわちバイオフィルム形成量を求めることができる。下記式(2)において、対数関数部分は上記の指標Xと同じである。つまり、135時間後の水処理膜への菌体の付着量Yは、指標Xの一次変換により求めることができる。
Y=K(0.0366+0.964×exp(−((θm−0.55θb−110)/22.6)
2)) ・・・(2)
【0037】
上記式(2)において、指標Cとして表面占有率Sが4.0%未満の場合は、Kは4.9となり、指標Cとして表面占有率Sが4.0%以上の場合は、Kは34となる。つまり、初期のPESフィルムの表面占有率Sが小さい菌体は、上記式(2)の比例定数Kも小さい値となり、結果的に長期(135時間後)の水処理膜への菌体付着量Yも少ないものとなる。初期のPESフィルムの表面占有率Sが大きい菌体は、上記(2)の比例定数Kも大きい値となり、結果的に長期(135時間後)の水処理膜への菌体付着量Yが飛躍的に多いものとなる。表2に示した菌体では、大腸菌(E. coli)とリグニン分解菌(S. paucimobilis)を用いた場合に、比例定数Kが大きい値をとり、菌体付着量Yが多くなる。
【0038】
図2には、
図1に示した結果について、バイオフィルム形成量(菌体付着量)の実測結果(空気接触角θmとバイオフィルム形成量との相関)を示す。なお
図2では、各菌体を含む被処理水にフィルムを浸漬したときの膜面積当たりのバイオフィルム形成量が絶対値(単位:μm
3/μm
2)で示されており、さらに、上記式(2)に基づく関数が重ね合わせて示されている。
【0039】
図2の結果から、上記式(2)に基づく関数によって、135時間後の水処理膜への菌体の付着量Y(μm
3/μm
2)を比較的精度良く見積もることができることが分かる。このように長期における水処理膜への菌体の付着量Yを見積もることができれば、水処理設備の設計段階で水処理膜の洗浄頻度を予め設定することが可能となり、被処理水量に応じた適切な膜処理面積を確保したり、適切な水処理運転シーケンスを構築することの事前検討を簡単に行えるようになる。
【0040】
以上、本発明の水処理膜の評価方法について説明したが、本発明が適用可能な水処理膜に特に制限はない。水処理膜において、ファウリングはどの孔径の膜でも起こり得ることであり、特にバイオファウリングは、膜表面にバイオフィルムが形成することにより引き起こされるものであることから、水処理膜の構成材料に大きく影響を受けると考えられる。従って、本発明の評価方法は、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)等のいずれの水処理膜にも適用することができる。