(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体撮像素子基板の受光側において、赤外線吸収剤、重合性化合物、溶剤、及びフッ素系界面活性剤を含有する赤外線吸収性液状組成物をスピン塗布することにより膜を形成する工程を有し、前記赤外線吸収剤が、金属酸化物及びジインモニウム色素から選択される少なくとも一種である、赤外線カットフィルタの製造方法。
固体撮像素子基板の受光側において、赤外線吸収剤、重合性化合物、溶剤、及び重合開始剤を含有する赤外線吸収性液状組成物をスピン塗布することにより膜を形成する工程を有し、前記赤外線吸収剤が、金属酸化物及びジインモニウム色素から選択される少なくとも一種である、赤外線カットフィルタの製造方法。
前記重合開始剤が、オキシム化合物、アセトフェノン系化合物、α−アミノケトン化合物、トリハロメチル化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、又は、チオール化合物である、請求項2又は3に記載の赤外線カットフィルタの製造方法。
固体撮像素子基板と、前記固体撮像素子基板の受光側に配置された赤外線カットフィルタとを有するカメラモジュールの製造方法であって、前記赤外線カットフィルタが請求項1〜7のいずれか1項に記載の赤外線カットフィルタの製造方法により製造される、カメラモジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の赤外線カットフィルタの製造方法について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。また、本明細書において、粘度値は25℃における値を指す。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレート及びメタアクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリル及びメタアクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”は、アクリロイル及びメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマー及びポリマーと区別され、質量平均分子量が2,000以下の化合物をいう。本明細書中において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物のことをいい、単量体であっても、ポリマーであってもよい。重合性基とは、重合反応に関与する基を言う。
【0013】
本発明に係る赤外線カットフィルタの製造方法は、固体撮像素子基板の受光側において、赤外線吸収性液状組成物をスピン塗布することにより膜を形成する工程を有する。
本発明の赤外線カットフィルタの製造方法により膜厚分布が小さく、膜厚の均一性に優れるとともに、入射角依存特性にも優れた赤外線カットフィルタを容易に(良好な製造適性で)製造できる理由は以下のように推定される。
上述したように、誘電体多層膜を用いたタイプの赤外線カットフィルタは、入射角依存特性が劣る傾向にあった。これは、垂直入射光と斜入射光では、多層膜中の光学距離が異なるため、層間の多重干渉により生じるフィルタ作用のカットオフ波長がシフトしてしまうことが原因である。一方で、本発明の赤外線カットフィルタの製造方法によれば、赤外線吸収性液状組成物をスピン塗布することにより膜が形成されるため、赤外線吸収性液状組成物自体の吸収特性により入射角依存特性が決まり、入射角依存特性に優れるものと考えられる。
また種々の塗布方法の中からスピン塗布を選択的に用いることで、膜厚分布を小さくすることができ、優れた膜厚の均一性が達成されるものと考えられる。これは、スピン塗布は、遠心力により塗布された赤外線吸収性液状組成物を基板上に広げながら溶剤を揮発させるためであるためと推定される。
また本発明によれば、赤外線カットフィルタがスピン塗布により簡便に製造可能となるため、従来のように誘電体多層膜を形成する工程や、ガラス基板に赤外線吸収剤をドープする、又は、練りこむといった煩雑な工程が不要であり、製造適性が良好となる。すなわち、良好な製造適性を有する本発明の赤外線カットフィルタの製造方法は、赤外線カットフィルタの製造コストの低減に寄与するものと期待される。またスピン塗布では、大面積の基板に対しても容易に膜を形成可能であるため、大面積の赤外線カットフィルタを先に製造し、その後所望のサイズに赤外線カットフィルタを切断して固体撮像素子に搭載することも可能であり、更なる製造コストの低減が期待される。
本発明の赤外線カットフィルタの製造方法は、固体撮像素子用赤外線カットフィルタの製造方法であることが好ましい。
【0014】
赤外線カットフィルタを形成するには、まず、後述する赤外線吸収性液状組成物により膜を形成する。膜は、前記赤外線吸収性液状組成物を含んで形成される膜であれば、特に制限はなく、膜厚、積層構造などについては、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
前記膜の形成方法としては、支持体上に、本発明の赤外線吸収性液状組成物(組成物における固形分が後述の溶剤に溶解、乳化又は分散させてなる塗布液)を直接スピン塗布し、乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
【0016】
支持体は、固体撮像素子基板であっても、固体撮像素子基板の受光側に設けられた別の基板(例えば後述のガラス基板30)であっても、固体撮像素子基板の受光側に設けられた平坦化層等の層であっても良い。
赤外線吸収性液状組成物(塗布液)を支持体上にスピン塗布する方法は、例えば、スピンコーター、スリットスピンコーター等を用いることにより実施できる。
上記スピン塗布の回転数は、膜厚均一性の観点から、1000rpmから4000rpmであることが好ましく、1500rpmから2500rpmがより好ましい。
上記スピン塗布のスピン時間は、5秒から500秒の範囲が好ましく、10秒から400秒がより好ましく、15秒から300秒が更に好ましい。
また、塗膜の乾燥条件としては、各成分、溶媒の種類、使用割合等によっても異なるが、通常60℃〜150℃の温度で30秒間〜15分間程度である。
【0017】
前記スピン塗布することにより形成される膜の膜厚としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5μm〜5μmが好ましく、0.5μm〜3μmがより好ましく、0.5μm〜2μmが更に好ましい。
【0018】
本発明の赤外線吸収性液状組成物を用いて赤外線カットフィルタを形成する方法は、その他の工程を含んでいても良い。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材の表面処理工程、前加熱工程(プリベーク工程)、硬化処理工程、後加熱工程(ポストベーク工程)などが挙げられる。
【0019】
<前加熱工程・後加熱工程>
前加熱工程及び後加熱工程における加熱温度は、通常、80℃〜200℃であり、90℃〜150℃であることが好ましい。
前加熱工程及び後加熱工程における加熱時間は、通常、30秒〜400秒であり、60秒〜300秒であることが好ましい。
【0020】
<硬化処理工程>
硬化処理工程は、必要に応じ、形成された前記膜に対して硬化処理を行う工程であり、この処理を行うことにより、赤外線カットフィルタの機械的強度が向上する。
前記硬化処理工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、全面露光処理、全面加熱処理などが好適に挙げられる。ここで、本発明において「露光」とは、各種波長の光のみならず、電子線、X線などの放射線照射をも包含する意味で用いられる。
露光は放射線の照射により行うことが好ましく、露光に際して用いることができる放射線としては、特に、電子線、KrF、ArF、g線、h線、i線等の紫外線や可視光が好ましく用いられる。好ましくは、KrF、g線、h線、i線が好ましい。
露光方式としては。ステッパー露光や、高圧水銀灯による露光などが挙げられる。
露光量は5mJ/cm
2〜3000mJ/cm
2が好ましく10mJ/cm
2〜2000mJ/cm
2がより好ましく、50mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2が最も好ましい。
【0021】
全面露光処理の方法としては、例えば、形成された前記膜の全面を露光する方法が挙げられる。赤外線吸収性液状組成物が重合性化合物を含有する場合、全面露光により、上記組成物より形成される膜中の重合成分の硬化が促進され、前記膜の硬化が更に進行し、機械的強度、耐久性が改良される。
前記全面露光を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯などのUV露光機が好適に挙げられる。
【0022】
また、全面加熱処理の方法としては、形成された前記膜の全面を加熱する方法が挙げられる。全面加熱により、パターンの膜強度が高められる。
全面加熱における加熱温度は、120℃〜250℃が好ましく、150℃〜250℃がより好ましい。該加熱温度が120℃以上であれば、加熱処理によって膜強度が向上し、250℃以下であれば、前記膜中の成分の分解が生じ、膜質が弱く脆くなることを防止できる。
全面加熱における加熱時間は、3分〜180分が好ましく、5分〜120分がより好ましい。
全面加熱を行う装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライオーブン、ホットプレート、IRヒーターなどが挙げられる。
【0023】
本発明は、上記した赤外線カットフィルタの製造方法に用いられる、赤外線吸収性液状組成物にも関する。
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、赤外線吸収剤、重合性化合物及び溶剤を含有することが好ましい。
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、固体撮像素子用赤外線吸収性液状組成物であることが好ましい。
以下に、赤外線吸収性液状組成物の構成を説明する。
【0024】
[1]赤外線吸収剤
本発明の赤外線吸収性液状組成物において使用される赤外線吸収剤は、赤外線を吸収する特性を有すれば特に限定されないが、金属酸化物及びジインモニウム色素から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の赤外線吸収性液状組成物において使用できる金属酸化物は、波長800nm〜2000nmの範囲内に極大吸収波長(λ
max)を有することが好ましく、例えば、酸化タングステン系化合物(タングステンを含有する酸化物)を好適に挙げることができる。
酸化タングステン系化合物は、赤外線(特に波長が約800〜1200nmの光)に対しては吸収が高く(すなわち、赤外線に対する遮光性(遮蔽性)が高く)、可視光に対しては吸収が低い赤外線遮蔽材である。よって、本発明の組成物が、タングステン化合物を含有することにより、赤外領域における遮光性(赤外線遮蔽性)が高く、可視光領域における透光性(可視光線透過性)が高い赤外線カットフィルタを製造できる。
【0025】
酸化タングステン系化合物としては、下記一般式(組成式)(I)で表される酸化タングステン系化合物ことがより好ましい。
M
xW
yO
z・・・(I)
Mは金属、Wはタングステン、Oは酸素を表す。
0.001≦x/y≦1.1
2.2≦z/y≦3.0
【0026】
Mの金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Biが挙げられるが、アルカリ金属であることが好ましい。Mの金属は1種でも2種以上でも良い。
【0027】
Mはアルカリ金属であることが好ましく、Rb又はCsであることが好ましく、Csであることがより好ましい。
すなわち、金属酸化物は、セシウム酸化タングステンであることがより好ましい。
【0028】
x/yが0.001以上であることにより、赤外線を十分に遮蔽することができ、1.1以下であることにより、酸化タングステン系化合物中に不純物相が生成されることをより確実に回避することできる。
z/yが2.2以上であることにより、材料としての化学的安定性をより向上させることができ、3.0以下であることにより赤外線を十分に遮蔽することができる。
【0029】
上記一般式(I)で表される酸化タングステン系化合物の具体例としては、Cs
0.33WO
3、Rb
0.33WO
3、K
0.33WO
3、Ba
0.33WO
3などを挙げることができ、Cs
0.33WO
3又はRb
0.33WO
3であることが好ましく、Cs
0.33WO
3であることが更に好ましい。
【0030】
金属酸化物は微粒子であることが好ましい。金属酸化物の平均粒子径は、800nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましい。平均粒子径がこのような範囲であることによって、金属酸化物が光散乱によって可視光を遮断しにくくなることから、可視光領域における透光性をより確実にすることができる。光酸乱を回避する観点からは、平均粒子径は小さいほど好ましいが、製造時における取り扱い容易性などの理由から、金属酸化物の平均粒子径は、通常、1nm以上である。
【0031】
金属酸化物の含有量は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、3質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
また、タングステン化合物は2種以上を使用することが可能である。
【0032】
金属酸化物は市販品として入手可能であるが、金属酸化物が、例えば酸化タングステン系化合物である場合、酸化タングステン系化合物は、タングステン化合物を不活性ガス雰囲気若しくは還元性ガス雰囲気中で熱処理する方法により得ることができる(特許4096205号参照)。
また、酸化タングステン系化合物は、例えば、住友金属鉱山株式会社製のYMF−02Aなどのタングステン微粒子の分散物としても、入手可能である。
【0033】
本発明の赤外線吸収性液状組成物において使用できるジインモニウム色素は、下記一般式(III−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0035】
一般式(III−1)中、R
311、R
312、R
321、R
322、R
331、R
332、R
341及びR
342は各々独立に、水素原子、脂肪族基又は芳香族基を表し、R
303、R
313、R
323、R
333及びR
343は各々独立に置換基を表し、n
303、n
313、n
323、n
333及びn
343は各々独立に0〜4の整数を表し、Xは1価又は2価の陰イオンを表し、n
353は1又は2を表し、Xの価数とn
353の積は2となる。
【0036】
R
311、R
312、R
321、R
322、R
331、R
332、R
341及びR
342として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基及び炭素数6〜20のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜10のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基であり、最も好ましくは炭素数2〜6のアルキル基である。
また、R
311、R
312、R
321、R
322、R
331、R
332、R
341及びR
342の全てが同一であることも好ましい。
【0037】
R
303、R
313、R
323、R
333及びR
343として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、イミド基、シリル基であり、更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基であり、最も好ましくはアルキル基である。
また、R
313、R
323、R
333及びR
343の全てが同一であることも好ましい。
n
303、n
313、n
323、n
333及びn
343として好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2であり、更に好ましくは0又は1であり、最も好ましくは0である。
【0038】
Xは1価又は2価の陰イオンを表し、Xとして好ましくは過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又はヘキサフルオロアンチモン酸イオンであり、更に好ましくは過塩素酸イオン、スルホン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又はヘキサフルオロアンチモン酸イオンであり、更に好ましくはスルホン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又はヘキサフルオロアンチモン酸イオンであり、更に好ましくはヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又はヘキサフルオロアンチモン酸イオンである。
【0039】
以下に本発明の一般式(III−1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
これらの化合物は例えば、特開2007−254682号公報に記載の合成方法で容易に合成できる。
【0044】
本発明の赤外線吸収性液状組成物において使用できるジインモニウム色素としては、下記一般式(1)で表される化合物も好ましい。
【0046】
(式中、Rは各々独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、フェニルアルキレン基又はアルコキシ基を示し、R
1はフッ素原子又はフッ化アルキル基を示す)
【0047】
一般式(1)において、R
1がフッ素原子であるものは、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸をアニオン成分とするジイモニウム塩化合物であり、一般式(1)において、R
1がフッ化アルキル基であるものは、フッ化アルカンスルホニル−フルオロスルホニルイミド酸をアニオン成分とするジイモニウムの塩化合物である。
【0048】
一般式(1)のR
1におけるフッ化アルキル基は、置換されているフッ素原子の数や炭素数には特に限定はないが、その好ましい例として、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基が挙げられ、特に、トリフルオロメタン、ペンタフルオロエタン等が近赤外線吸収能力の点で更に好ましい。
【0049】
一般式(1)のジイモニウム塩化合物の合成方法としては、例えば特開2006−298989号公報に記載の合成方法が挙げられる。
【0050】
本発明の赤外線吸収性液状組成物において使用できるジインモニウム色素としては、市販品も使用できる。ジインモニウム色素の市販品としては、EPOLIGHT1178、EPOLIGHT7551(Epolin社製)などが挙げられる。
【0051】
ジインモニウム色素の含有量は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
また、ジインモニウム色素は2種以上を使用することが可能である。
【0052】
上記色素は微粒子であることが好ましい。色素の平均粒子径は、800nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましい。平均粒子径がこのような範囲であることによって、色素が光散乱によって可視光を遮断しにくくなることから、可視光領域における透光性をより確実にすることができる。光酸乱を回避する観点からは、平均粒子径は小さいほど好ましいが、製造時における取り扱い容易性などの理由から、色素の平均粒子径は、通常、1nm以上である。
【0053】
赤外線吸収剤の含有量(複数種含有する場合は、その合計の含有量)は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、3質量%以上80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上60質量%以下であることが更に好ましい。
また、赤外線吸収剤は2種以上を使用することが可能である。
【0054】
[2]重合性化合物
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、重合性化合物の少なくとも一種を含有することによって好適に構成することができる。
【0055】
上記重合性化合物として、具体的には、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明における重合性化合物は一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
より具体的には、モノマー及びそのプレポリマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類、並びにこれらの多量体が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類、並びにこれらの多量体である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
これらの具体的な化合物としては、特開2009−288705号公報の段落番号0095〜段落番号0108に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0057】
また、前記重合性化合物としては、重合性モノマーとして、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号各公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。
多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させ得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
また、その他の好ましい重合性化合物として、特開2010−160418、特開2010−129825、特許4364216等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性重合性基を2官能以上有する化合物、カルド樹脂も使用することが可能である。
【0058】
また、常圧下で100℃以上の沸点を有し、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和基を持つ化合物としては、特開2008−292970号公報の段落番号[0254]〜[0257]に記載の化合物も好適である。
【0059】
上記のほか、下記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される、ラジカル重合性モノマーも好適に用いることができる。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
【0062】
前記一般式において、nは0〜14であり、mは1〜8である。一分子内に複数存在するR、T、は、各々同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表されるラジカル重合性モノマーの各々において、複数のRの内の少なくとも1つは、−OC(=O)CH=CH
2、又は、−OC(=O)C(CH
3)=CH
2で表される基を表す。
上記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される、ラジカル重合性モノマーの具体例としては、特開2007−269779号公報の段落番号0248〜段落番号0251に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0063】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、重合性化合物として用いることができる。
【0064】
中でも、重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D−330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D−320;日本化薬株式会社製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA ;日本化薬株式会社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0065】
重合性化合物としては、多官能モノマーであって、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有していても良い。従って、エチレン性化合物が、上記のように混合物である場合のように未反応のカルボキシル基を有するものであれば、これをそのまま利用することができるが、必要において、上述のエチレン性化合物のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を導入しても良い。この場合、使用される非芳香族カルボン酸無水物の具体例としては、無水テトラヒドロフタル酸、アルキル化無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、アルキル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸が挙げられる。
【0066】
本発明において、酸基を有するモノマーとしては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、アロニックシリーズのM−305、M−510、M−520などが挙げられる。
【0067】
これらのモノマーは1種を単独で用いても良いが、製造上、単一の化合物を用いることは難しいことから、2種以上を混合して用いても良い。また、必要に応じてモノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用しても良い。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1〜40mg−KOH/gであり、特に好ましくは5〜30mg−KOH/gである。多官能モノマーの酸価が低すぎると現像溶解特性が落ち、高すぎると製造や取扱いが困難になり光重合性能が落ち、画素の表面平滑性等の硬化性が劣るものとなる。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸価が上記範囲に入るように調整することが必須である。
【0068】
また、重合性モノマーとして、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体を含有することが好ましい。
カプロラクトン構造を有する多官能性単量体としては、その分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸及びε−カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも下記式(1)で表されるカプロラクトン構造を有する多官能性単量体が好ましい。
【0070】
(式中、6個のRは全てが下記式(2)で表される基であるか、又は6個のRのうち1〜5個が下記式(2)で表される基であり、残余が下記式(3)で表される基である。)
【0072】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。)
【0074】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。)
このようなカプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA−20(上記式(1)〜(3)においてm=1、式(2)で表される基の数=2、R
1が全て水素原子である化合物)、DPCA−30(同式、m=1、式(2)で表される基の数=3、R
1が全て水素原子である化合物)、DPCA−60(同式、m=1、式(2)で表される基の数=6、R
1が全て水素原子である化合物)、DPCA−120(同式においてm=2、式(2)で表される基の数=6、R
1が全て水素原子である化合物)等を挙げることができる。
本発明において、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
また、本発明における重合性化合物としては、下記一般式(i)又は(ii)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0077】
前記一般式(i)及び(ii)中、Eは、各々独立に、−((CH
2)
yCH
2O)−、又は−((CH
2)
yCH(CH
3)O)−を表し、yは、各々独立に0〜10の整数を表し、Xは、各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、水素原子、又はカルボキシル基を表す。
前記一般式(i)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは各々独立に0〜10の整数を表し、各mの合計は0〜40の整数である。但し、各mの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシル基である。
前記一般式(ii)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは各々独立に0〜10の整数を表し、各nの合計は0〜60の整数である。但し、各nの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシル基である。
【0078】
前記一般式(i)中、mは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。また、各mの合計は、2〜40の整数が好ましく、2〜16の整数がより好ましく、4〜8の整数が特に好ましい。
前記一般式(ii)中、nは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。
また、各nの合計は、3〜60の整数が好ましく、3〜24の整数がより好ましく、6〜12の整数が特に好ましい。
また、一般式(i)又は一般式(ii)中の−((CH
2)
yCH
2O)−又は−((CH
2)
yCH(CH
3)O)−は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0079】
前記一般式(i)又は(ii)で表される化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。特に、一般式(ii)において、6個のX全てがアクリロイル基である形態が好ましい。
【0080】
また、一般式(i)又は(ii)で表される化合物の重合性化合物中における全含有量としては、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0081】
前記一般式(i)又は(ii)で表される化合物は、従来公知の工程である、ペンタエリスリト−ル又はジペンタエリスリト−ルにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合する工程と、開環骨格の末端水酸基に、例えば(メタ)アクリロイルクロライドを反応させて(メタ)アクリロイル基を導入する工程と、から合成することができる。各工程は良く知られた工程であり、当業者は容易に一般式(i)又は(ii)で表される化合物を合成することができる。
【0082】
前記一般式(i)又は(ii)で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール誘導体及び/又はジペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。
具体的には、下記式(a)〜(f)で表される化合物(以下、「例示化合物(a)〜(f)」ともいう。)が挙げられ、中でも、例示化合物(a)、(b)、(e)、(f)が好ましい。
【0085】
一般式(i)、(ii)で表される重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、日本化薬株式会社製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA−60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
【0086】
また、重合性化合物としては、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、重合性化合物として、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、非常に感光スピードに優れた硬化性組成物を得ることができる。
重合性化合物の市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200」(新中村化学社製、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)などが挙げられる。
【0087】
また、重合性化合物としては、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適である。酸基を有するエチレン性不飽和化合物類は、前記多官能アルコールの一部のヒドロキシ基を(メタ)アクリレート化し、残ったヒドロキシ基に酸無水物を付加反応させてカルボキシ基とするなどの方法で得られる。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M−510、M−520などが挙げられる。
【0088】
その他、高耐熱性の重合性化合物として、例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)、ビスアリルナジイミド(BANI)、ベンゾオキサジン、メラミン及びその類縁体などが挙げられる。
【0089】
また、重合性化合物は2種以上を使用することが可能である。
重合性化合物の含有量は、本発明の赤外線吸収性液状組成物の全固形分質量に対して、3質量%以上80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0090】
[3]溶剤
本発明の赤外線吸収性液状組成物は溶剤を含有する。
溶剤は、特に制限はなく、前記本発明の赤外線吸収性液状組成物の各成分を均一に溶解或いは分散しうるものであれば、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、ノルマル−プロパノール、イソプロパノール、ノルマル−ブタノール、セカンダリーブタノール、ノルマル−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−ノルマル−アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びメトキシプロピルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、塩化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、スルホラン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、公知の界面活性剤を添加してもよい。
【0091】
このようにして得られた本発明の赤外線吸収性液状組成物は、固形分濃度は5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上80質量%以下、最も好ましくは15質量%以上30質量%以下である。
【0092】
以上のように、組成物に溶剤を含有させて液状組成物とすれば、この液状組成物を、スピン塗布することにより膜を形成するという簡単な工程によって、赤外線カットフィルタを容易に製造できるため、上記した従来の赤外線カットフィルタにおける不充分な製造適性を改善することができる。
【0093】
[4]重合開始剤
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、重合開始剤を含有しても良く、重合開始剤としては、光、熱のいずれか或いはその双方により重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光重合性化合物であることが好ましい。光で重合を開始させる場合、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。
また、熱で重合を開始させる場合には、150℃〜250℃で分解する開始剤が好ましい。
【0094】
本発明に用いうる重合開始剤としては、少なくとも芳香族基を有する化合物であることが好ましく、例えば、アシルホスフィン化合物、アセトフェノン系化合物、α−アミノケトン化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物、オキシム化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、トリハロメチル化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、ジアゾニウム化合物、ヨードニウム化合物、スルホニウム化合物、アジニウム化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、メタロセン化合物等のオニウム塩化合物、有機硼素塩化合物、ジスルホン化合物などが挙げられる。
感度の観点から、オキシム化合物、アセトフェノン系化合物、α−アミノケトン化合物、トリハロメチル化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、及び、チオール化合物が好ましい。
以下、本発明に好適な重合開始剤の例を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0095】
アセトフェノン系化合物としては、具体的には、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−トリル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、及び、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0096】
トリハロメチル化合物として、より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0097】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0098】
オキシム化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979)1653−1660、J.C.S. Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報記載の化合物、BASFジャパン社製 IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)),2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン等が挙げられる。
好ましくは更に、特開2007−231000公報、及び、特開2007−322744公報に記載される環状オキシム化合物に対しても好適に用いることができる。
最も好ましくは、特開2007−269779公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009−191061公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物が挙げられる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシムのN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0100】
(式(1)中、R及びBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。)
前記Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。前記一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0101】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、及び、3−ニトロフェナシル基が例示できる。
【0102】
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−及びp−トリル基、キシリル基、o−、m−及びp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、並びに、オバレニル基が例示できる。
【0103】
置換基を有していてもよいアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、及び、4−メトキシベンゾイル基が例示できる。
【0104】
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、及び、トリフルオロメチルオキシカルボニル基が例示できる。
【0105】
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基として具体的には、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基が例示できる。
【0106】
置換基を有していてもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子若しくはリン原子を含む、芳香族又は脂肪族の複素環が好ましい。
具体的には、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、及び、チオキサントリル基が例示できる。
【0107】
置換基を有していてもよいアルキルチオカルボニル基として具体的には、メチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、ブチルチオカルボニル基、ヘキシルチオカルボニル基、オクチルチオカルボニル基、デシルチオカルボニル基、オクタデシルチオカルボニル基、及び、トリフルオロメチルチオカルボニル基が例示できる。
【0108】
置換基を有していてもよいアリールチオカルボニル基として具体的には、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルチオカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルチオカルボニル基、2−クロロフェニルチオカルボニル基、2−メチルフェニルチオカルボニル基、2−メトキシフェニルチオカルボニル基、2−ブトキシフェニルチオカルボニル基、3−クロロフェニルチオカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルチオカルボニル基、3−シアノフェニルチオカルボニル基、3−ニトロフェニルチオカルボニル基、4−フルオロフェニルチオカルボニル基、4−シアノフェニルチオカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルチオカルボニル基が挙げられる。
【0109】
前記Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基を表す。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
【0110】
中でも、特に好ましくは以下に示す構造である。
下記の構造中、Y、X、及び、nは、それぞれ、後述する式(2)におけるY、X、及び、nと同義であり、好ましい例も同様である。
【0112】
前記Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、シクロヘキシレン基、アルキニレン基が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
中でも、Aとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0113】
前記Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、また、置換基を有していてもよい。置換基としては、先に置換基を有していてもよいアリール基の具体例として挙げた置換アリール基に導入された置換基と同様のものが例示できる。
中でも、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。
【0114】
式(1)においては、前記Arと隣接するSとで形成される「SAr」の構造が、以下に示す構造であることが感度の点で好ましい。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0116】
オキシム化合物は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0118】
(式(2)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、A及びYは各々独立に二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(2)におけるR、A、及びArは、前記式(1)におけるR、A、及びArと同義であり、好ましい例も同様である。
【0119】
前記Xで表される一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
【0120】
これらの中でも、Xとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、アルキル基が好ましい。
また、式(2)におけるnは、0〜5の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0121】
前記Yで表される二価の有機基としては、以下に示す構造が挙げられる。なお、以下に示される基において、*は、前記式(2)において、Yと隣接する炭素原子との結合位置を示す。
【0123】
中でも、高感度化の観点から、下記に示す構造が好ましい。
【0125】
更にオキシム化合物は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0127】
式(3)におけるR、X、A、Ar、及び、nは、前記式(2)におけるR、X、A、Ar、及び、nとそれぞれ同義であり、好ましい例も同様である。
【0128】
以下、好適に用いられるオキシム化合物の具体例(C−4)〜(C−13)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものでることが好ましく、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有するものであることがより好ましく、365nm及び455nmの吸光度が高いものが特に好ましい。
【0131】
オキシム化合物は、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数が、感度の観点から、3,000〜300,000であることが好ましく、5,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0132】
光重合開始剤としては、オキシム化合物、アセトフェノン系化合物、及び、アシルホスフィン化合物からなる群より選択される化合物が更に好ましい。より具体的には、例えば、特開平10−291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤、及び、既述のオキシム系開始剤、更にオキシム系開始剤として、特開2001−233842号記載の化合物も用いることができる。
アセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−907、IRGACURE−369、及び、IRGACURE−379(商品名:いずれもBASFジャパン社製)を用いることができる。またアシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE−819やDAROCUR−TPO(商品名:いずれもBASFジャパン社製)を用いることができる。
【0133】
重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の赤外線吸収性液状組成物の全固形分質量に対する重合開始剤の含有量は、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.1質量%〜15質量%が特に好ましい。
【0134】
[5]バインダー
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、バインダー(樹脂)を含有することが好ましい。該バインダーはアルカリ可溶性バインダー(アルカリ可溶性樹脂)であることが好ましい。
【0135】
前記アルカリ可溶性バインダーとしては、アルカリ可溶性であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステルなどを挙げることができ、(メタ)アクリル系樹脂、又は、ウレタン系樹脂であることが好ましい。
バインダーは、酸基を有していてもよい。
前記酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基等があげられるが、原料入手の点からカルボン酸基が好ましい。
【0136】
酸基を有するバインダーは、特に限定されないが、モノマー成分として、酸基を有する重合性化合物を用いて得られた重合体であることが好ましく、酸価の調節の観点から、酸基を有する重合性化合物と、酸基を有さない重合性化合物とを共重合することよって得られた共重合体であることがより好ましい。
【0137】
酸基を有する重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、インクロトン酸、マレイン酸、p−カルボキシルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、p−カルボキシルスチレンが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
酸基を有さない重合性化合物としては、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)を好適に挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステルのアルキルエステル部位におけるアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルのアリールエステル部位におけるアリール基は、炭素数6〜14のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルのアラルキルエステル部位におけるアラルキル基は、炭素数7〜20のアラルキル基であることが好ましく、炭素数7〜12のアラルキル基であることがより好ましい。
【0139】
酸基を有する重合性化合物に対応するモノマーと酸基を有さない重合性化合物に対応するモノマーとのモル比は、通常、1:99〜99:1であることがより好ましい。
前記酸基のバインダーにおける含有量は、特に制限はないが、0.1meq/g〜4.0meq/gであることが好ましい。
【0140】
バインダーは、更に架橋性基を有することが好ましく、これにより、特に露光した際の硬化性を向上させることができ、また、耐久性の高い膜が得られる点で好ましい。ここで架橋性基とは、赤外線吸収性液状組成物から得られた層を露光又は加熱した際に層中で起こる重合反応の過程でバインダーポリマーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましく、露光前の架橋性基の安定性と、膜の強度との両立の観点からは、(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
【0141】
バインダーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0142】
バインダー中の架橋性基の含有量は、特に制限はないが、0.5meq/g〜3.0meq/gが好ましく、1.0meq/g〜3.0meq/gがより好ましく、1.5meq/g〜2.8meq/gが特に好ましい。前記含有量が0.5meq/g以上であることにより、硬化反応量が充分であり、高い感度が得られ、3.0meq/g以下であることにより、赤外線吸収性液状組成物の保存安定性を高くすることができる。
ここで、前記含有量(meq/g)は、例えば、ヨウ素価滴定により測定することができる。
架橋性基を有するバインダーは、特開2003−262958号公報に詳細に記載され、ここに記載の化合物を本発明にも使用することができる。
これら架橋性基を含有するバインダーは、酸基と架橋性基とを有するバインダーであることが好ましく、その代表例を下記に示す。
(1)予めイソシアネート基とOH基を反応させ、未反応のイソシアネート基を1つ残し、かつ(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ含む化合物とカルボキシル基を含むアクリル樹脂との反応によって得られるウレタン変性した重合性二重結合含有アクリル樹脂。
(2)カルボキシル基を含むアクリル樹脂と分子内にエポキシ基及び重合性二重結合を共に有する化合物との反応によって得られる不飽和基含有アクリル樹脂。
(3)OH基を含むアクリル樹脂と重合性二重結合を有する2塩基酸無水物を反応させた重合性二重結合含有アクリル樹脂。
上記のうち、特に(1)及び(2)の樹脂が好ましい。
【0143】
また、酸基と架橋性基とを有するバインダーとしては、酸性基とエチレン性不飽和結合とを側鎖に有し、かつ、ビスフェノールA型骨格、及びビスフェノールF型骨格を有する高分子化合物や、酸性基とエチレン性不飽和結合とを有するノボラック樹脂や、レゾール樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、特開平11−240930号公報段落番号〔0008〕〜〔0027〕に記載される手法により得ることができる。
【0144】
上記したように、アルカリ可溶性バインダーとしては、(メタ)アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂であることが好ましく、「(メタ)アクリル系樹脂」は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステル、など)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体を重合成分として有する共重合体であることが好ましい。「ウレタン系樹脂」は、イソシアネート基を2つ以上有する化合物とヒドロキシル基を2つ以上有する化合物の縮合反応により生成されるポリマーであることが好ましい。
【0145】
(メタ)アクリル系樹脂の好適な一例としては、酸基を含有する繰り返し単位を有する共重合体が挙げられる。酸基としては、上記したものを好適に挙げることができる。酸基を含有する繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位や下記一般式(I)で表されるものが好ましく用いられる。
【0147】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は単結合又はn+1価の連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR
3−を表し、R
3は水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
【0148】
一般式(I)におけるR
2で表される連結基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群から選択される1種以上の原子から構成されることが好ましく、R
2で表される連結基を構成する原子の原子数は好ましくは1〜80である。具体的には、アルキレン基、アリーレン基などが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合や、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合の何れかで複数連結された構造を有していてもよい。R
2としては、単結合、アルキレン基、又は、アルキレン基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合及びエステル結合の少なくともいずれかによって複数連結された構造であることが好ましい。
アルキレン基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
アリーレン基の炭素数は6〜14であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
アルキレン基及びアリーレン基は、更に、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0149】
R
3の炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。
R
3は、水素原子又はメチル基であることが最も好ましい。
nは1〜3であることが好ましく、1又は2であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。
【0150】
(メタ)アクリル系樹脂の全繰り返し単位成分に占める酸基を有する繰り返し単位の割合(モル%)は、10〜90%が好ましい。
【0151】
(メタ)アクリル系樹脂は、上記したように、更に架橋性基を有することが好ましく、架橋性基の具体例、及び、その含有量は前記したものと同様である。
【0152】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系重合体は、上記酸基を有する重合単位、架橋性基を有する重合単位の他に、(メタ)アクリル酸アルキル又はアラルキルエステルの重合単位、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体の重合単位、α−ヒドロキシメチルアクリレートの重合単位、スチレン誘導体の重合単位を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜8の前述の置換基を有するアルキル基であり、メチル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体としては、N−イソプロピルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−(4−メトキシカルボニルフェニル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、モルホリノアクリルアミド等が挙げられる。α−ヒドロキシメチルアクリレートとしては、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。スチレン誘導体としては、スチレン、4−tertブチルスチレン等が挙げられる。
【0153】
(メタ)アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂以外のアルカリ可溶性バインダーとしては、欧州特許993966、欧州特許1204000、特開2001−318463等に記載の酸基を有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダーポリマーが好適である。更にこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0154】
特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体、及び〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体は、膜強度、感度のバランスに優れており、好適である。
【0155】
本発明の赤外線吸収性液状組成物に使用しうるバインダーポリマーの重量平均分子量としては、好ましくは3、000以上であり、更に好ましくは5,000〜30万の範囲であり、最も好ましくは1万〜3万、数平均分子量については好ましくは1、000以上であり、更に好ましくは2、000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのバインダーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい。
【0156】
バインダーは、従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0157】
バインダーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダーの含有量は、本発明の赤外線吸収性液状組成物の全固形分質量に対して、5質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜60質量%がより好ましい。前記含有量が上記範囲において露光感度が良好で、加工時間が短時間で済み、かつ、良好なTCT耐性が得られる。
【0158】
[6]分散剤
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、上記金属酸化物や上記色素の分散性、分散安定性向上を目的として、公知の分散剤により分散して用いてもよい。
【0159】
本発明に用いうる分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等の界面活性剤等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0160】
表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子としては、例えば、特開平3−112992号公報、特表2003−533455号公報等に記載の末端にりん酸基を有する高分子、特開2002−273191号公報等に記載の末端にスルホン酸基を有する高分子、特開平9−77994号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有する高分子、特開2008−29901号公報等に記載の片末端に水酸基又はアミノ基を有するオリゴマー又はポリマーと酸無水物で変性して製造される高分子などが挙げられる。また、特開2007−277514号公報に記載の高分子末端に2個以上の赤外線遮蔽材表面へのアンカー部位(酸基、塩基性基、有機色素の部分骨格やヘテロ環等)を導入した高分子も分散安定性に優れ好ましい。
【0161】
表面へのアンカー部位を有するグラフト型高分子としては、例えば、特開昭54ー37082号公報、特表平8−507960号公報、特開2009−258668公報等に記載のポリ(低級アルキレンイミン)とポリエステルの反応生成物、特開平9−169821号公報等に記載のポリアリルアミンとポリエステルの反応生成物、特開2009−203462号公報に記載の塩基性基と酸性基を有する両性分散樹脂、特開平10−339949号、特開2004−37986号公報等に記載のマクロモノマーと、窒素原子モノマーとの共重合体、特開2003−238837号公報、特開2008−9426号公報、特開2008−81732号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有するグラフト型高分子、特開2010−106268号公報等に記載のマクロモノマーと酸基含有モノマーの共重合体等が挙げられる。
【0162】
表面へのアンカー部位を有するグラフト型高分子をラジカル重合で製造する際に用いるマクロモノマーとしては、公知のマクロモノマーを用いることができ、東亜合成(株)製のマクロモノマーAA−6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS−6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN−6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB−6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM5(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン10モル当量付加品)、及び特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマー等が挙げられる。これらの中でも、特に柔軟性かつ親溶剤性に優れるポリエステル系マクロモノマーが、組成物における赤外線遮蔽材の分散性、及び分散安定性の観点から特に好ましく、更に、特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマーで表されるポリエステル系マクロモノマーが最も好ましい。
【0163】
表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子としては、特開2003−49110号公報、特開2009−52010号公報等に記載のブロック型高分子が好ましい。
【0164】
分散剤としては、例えば、公知の分散剤や界面活性剤を適宜選択して用いることができる。
そのような具体例としては、BYKChemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050〜4010〜4165(ポリウレタン系)、EFKA4330〜4340(ブロック共重合体)、4400〜4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学(株)製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール(株)製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT−8000E等、信越化学工業(株)製、オルガノシロキサンポリマーKP341、裕商(株)製「W001:カチオン系界面活性剤」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、「W004、W005、W017」等のアニオン系界面活性剤、森下産業(株)製「EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450」、サンノプコ(株)製「ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100」等の高分子分散剤、(株)ADEKA製「アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123」、及び三洋化成(株)製「イオネット(商品名)S−20」等が挙げられる。
【0165】
これらの分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の分散剤は、前記赤外線遮蔽材表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子と伴に、アルカリ可溶性樹脂を併用して用いても良い。アルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を変性した樹脂が挙げられるが、特に(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。また、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー共重合体、特開2004−300204号公報に記載のエーテルダイマー共重合体、特開平7−319161号公報に記載の重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂も好ましい。
分散性及び沈降性の観点から、好ましくは、特開2010−106268号公報に記載の以下に示す樹脂が好ましく、特に、分散性の観点から、側鎖にポリエステル鎖を有する高分子分散剤が好ましく、酸基とポリエステル鎖とを有する樹脂も好適に挙げることができる。分散剤における好ましい酸基としては、吸着性の観点から、pKaが6以下の酸基が好ましく、特にカルボン酸、スルホン酸、リン酸が好ましい。
【0166】
以下に、本発明において好ましく用いられる特開2010−106268号公報に記載される分散樹脂について説明する。
好ましい分散剤は、分子内に、水素原子を除いた原子数が40〜10000の範囲であり、ポリエステル構造、ポリエーテル構造、及びポリアクリレート構造から選択されるグラフト鎖を有するグラフト共重合体であり、少なくとも下記式(1)〜式(4)のいずれかで表される構造単位を含むことが好ましく、少なくとも、下記式(1A)、下記式(2A)、下記式(3A)、下記式(3B)、及び、下記式(4)のいずれかで表される構造単位を含むことがより好ましい。
【0168】
式(1)〜式(4)において、X
1、X
2、X
3、X
4、及び、X
5はそれぞれ独立に水素原子或いは1価の有機基を表す。合成上の制約の観点から、好ましくは水素原子、或いは炭素数1から12のアルキル基であり、水素原子或いはメチル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(1)〜式(4)において、W
1、W
2、W
3、及び、W
4はそれぞれ独立に酸素原子或いはNHを表し、特に酸素原子が好ましい。 式(1)〜式(4)において、Y
1、Y
2、Y
3、及び、Y
4はそれぞれ独立に2価の連結基であり、特に構造上制約されない。具体的には、下記の(Y−1)から(Y−21)の連結基などが挙げられる。下記構造でA、Bはそれぞれ、式(1)〜式(4)における左末端基、右末端基との結合を意味する。下記に示した構造のうち、合成の簡便性から、(Y−2)、(Y−13)であることがより好ましい。
【0170】
式(1)〜式(4)において、Z
1、Z
2、Z
3、及び、Z
4、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、置換基の構造は特に限定されないが、具体的には、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、或いはヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、或いはヘテロアリールチオエーテル基、アミノ基などが挙げられる。この中でも、特に分散性向上の観点から、立体反発効果を有することが好ましく、Z
1〜Z
3で表される1価の置換基としては、各々独立に炭素数5〜24のアルキル基又は炭素数5〜24のアルコキシ基が好ましく、その中でも、特に各々独立に炭素数5〜24の分岐アルキル基を有するアルコキシ基或いは炭素数5〜24の環状アルキル基を有するアルコキシ基が好ましい。また、Z
4で表される1価の置換基としては、炭素数5〜24のアルキル基が好ましく、その中でも、各々独立に炭素数5〜24の分岐アルキル基或いは炭素数5〜24の環状アルキル基が好ましい。 式(1)〜式(4)において、n、m、p、及び、qはそれぞれ1から500の整数である。
式(1)及び式(2)において、j及びkは、それぞれ独立に、2〜8の整数を表す。式(1)及び式(2)におけるj及びkは、分散安定性の観点から、4〜6の整数が好ましく、5が最も好ましい。
【0171】
式(3)中、R’は、分岐若しくは直鎖のアルキレン基を表す。式(3)中のR’は、炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基であることがより好ましい。
また、式(3)中のR’としては分散樹脂中に構造の異なるR’を2種以上混合して用いても良い。 式(4)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、特に構造上限定はされないが、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基である。該Rがアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐状アルキル基、又は炭素数5〜20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
また、式(4)中のRとしては特定樹脂中に構造の異なるRを2種以上混合して用いても良い。
【0172】
前記式(1)で表される構造単位としては、分散安定性の観点から、下記式(1A)で表される構造単位であることがより好ましい。
また、前記式(2)で表される構造単位としては、分散安定性の観点から、下記式(2A)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0174】
式(1A)中、X
1、Y
1、Z
1及びnは、式(1)におけるX
1、Y
1、Z
1及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(2A)中、X
2、Y
2、Z
2及びmは、式(2)におけるX
2、Y
2、Z
2及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、前記式(3)で表される構造単位としては、分散安定性の観点から、下記式(3A)又は下記式(3B)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0176】
式(3A)又は(3B)中、X
3、Y
3、Z
3及びpは、前記式(3)におけるX
3、Y
3、Z
3及びpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0177】
具体例として、以下に示す化合物が挙げられる。なお、下記例示化合物中、各構造単位に併記される数値(主鎖繰り返し単位に併記される数値)は、当該構造単位の含有量〔質量%:(wt%)と記載〕を表す。側鎖の繰り返し部位に併記される数値は、当該繰り返し部位の繰り返し数を示す。
【0195】
本発明の赤外線吸収性液状組成物が、重合性化合物及び分散剤を含有する場合、まず、上記赤外線吸収剤及び分散剤を、適切な溶剤により分散組成物を調製した後、赤外線吸収性液状組成物を配合することが分散性向上の観点から好ましい。
赤外線吸収性液状組成物は、分散剤を含有してもしなくても良いが、含有する場合、組成物中における分散剤の含有量としては、組成物中の上記赤外線吸収剤の質量に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、3質量%〜70質量%がより好ましい。
【0196】
[7]増感剤
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、重合開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有してもよい。本発明に用いることができる増感剤としては、前記した光重合開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。本発明に用いることができる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、かつ300nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
【0197】
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ330nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10−ジアルコキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリジンオレンジ、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーズケトンなどの芳香族ケトン化合物、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物などが挙げられる。
更に欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、同5,227,227号明細書、特開2001−125255号公報、特開平11−271969号公報等に記載の化合物等などが挙げられる。
赤外線吸収性液状組成物は、増感剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、増感剤の含有量は、本発明の赤外線吸収性液状組成物の全固形分質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
【0198】
[8]架橋剤
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、赤外線カットフィルタの強度を向上させる目的で、更に、架橋剤を含有していても良い。
架橋剤は、架橋性基を有する化合物であることが好ましく、架橋性基を2個以上で有する化合物であることがより好ましい。架橋性基の具体例としては、オキセタン基、シアネート基、及び、アルカリ可溶性バインダーが有していてもよい架橋性基について挙げたものと同様の基を好適に挙げることができ、中でも、エポキシ基、オキセタン基又はシアネート基であることが好ましい。すなわち、架橋剤は、特にエポキシ化合物、オキセタン化合物又はシアネート化合物が好ましい。
本発明において架橋剤として好適に用いうるエポキシ化合物としては、例えば、1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物などが挙げられる。
【0199】
前記1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビキシレノール型若しくはビフェノール型エポキシ化合物(「YX4000ジャパンエポキシレジン社製」等)又はこれらの混合物、イソシアヌレート骨格等を有する複素環式エポキシ化合物(「TEPIC;日産化学工業株式会社製」、「アラルダイトPT810;BASFジャパン社製」等)、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾ−ルノボラック型エポキシ化合物、ハロゲン化エポキシ化合物(例えば低臭素化エポキシ化合物、高ハロゲン化エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物など)、アリル基含有ビスフェノールA型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物、ジフェニルジメタノール型エポキシ化合物、フェノールビフェニレン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物(「HP−7200,HP−7200H;DIC(株)製」等)、グリシジルアミン型エポキシ化合物(ジアミノジフェニルメタン型エポキシ化合物、ジグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノール等)、グリジジルエステル型エポキシ化合物(フタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等)ヒダントイン型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
【0200】
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジエポキシド、「GT−300,GT−400,ZEHPE3150;ダイセル化学工業株式会社製」等、)、イミド型脂環式エポキシ化合物、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、テトラフェニロールエタン型エポキシ化合物、グリシジルフタレート化合物、テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物、ナフタレン基含有エポキシ化合物(ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物、4官能ナフタレン型エポキシ化合物、市販品としては「ESN−190,ESN−360;新日鉄化学株式会社製」、「HP−4032,EXA−4750,EXA−4700;DIC(株)製」等)、フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応によって得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合物を過酢酸等でエポキシ化したもの、線状含リン構造を有するエポキシ化合物、環状含リン構造を有するエポキシ化合物、α−メチルスチルベン型液晶エポキシ化合物、ジベンゾイルオキシベンゼン型液晶エポキシ化合物、アゾフェニル型液晶エポキシ化合物、アゾメチンフェニル型液晶エポキシ化合物、ビナフチル型液晶エポキシ化合物、アジン型エポキシ化合物、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ化合物(「CP−50S,CP−50M;日本油脂株式会社製」等)、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ化合物、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ化合物、ビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン型エポキシ化合物などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0201】
また、1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有する前記エポキシ化合物以外に、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物を用いることができ、β位がアルキル基で置換されたエポキシ基(より具体的には、β−アルキル置換グリシジル基など)を含む化合物が特に好ましい。
前記β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも含むエポキシ化合物は、1分子中に含まれる2個以上のエポキシ基のすべてがβ−アルキル置換グリシジル基であってもよく、少なくとも1個のエポキシ基がβ−アルキル置換グリシジル基であってもよい。
【0202】
前記オキセタン化合物としては、例えば、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン樹脂が挙げられる。
具体的には、例えば、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート又はこれらのオリゴマーあるいは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタン基を有する化合物と、ノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、シルセスキオキサン等の水酸基を有する化合物など、とのエーテル化合物が挙げられ、この他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
前記ビスマレイミド化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2’−ビス−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、などが挙げられる。
【0203】
前記シアネート化合物としては、例えば、ビスA型シアネート化合物、ビスF型シアネート化合物、クレゾールノボラック型シアネート化合物、フェノールノボラック型シアネート化合物、などが挙げられる。
【0204】
また、前記架橋剤として、メラミン又はメラミン誘導体を用いることができる。
該メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン(メチロール基を、メチル、エチル、ブチルなどでエーテル化した化合物)などが挙げられる。
架橋剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。架橋剤は、保存安定性が良好で、硬化膜(光ないしは熱等のエネルギーによって架橋剤による架橋反応が実施された後における膜)の表面硬度あるいは膜強度自体の向上に有効である点で、メラミン若しくはアルキル化メチロールメラミンが好ましく、ヘキサメチル化メチロールメラミンが特に好ましい。
【0205】
赤外線吸収性液状組成物は、架橋剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、架橋剤の含有量は、本発明の赤外線吸収性液状組成物の全固形分質量に対して、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0206】
[9]硬化促進剤
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、前記エポキシ化合物や前記オキセタン化合物等の架橋剤の熱硬化を促進することを目的に、更に、硬化促進剤を含有してもよい。
硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等)、4級アンモニウム塩化合物(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等)、ブロックイソシアネート化合物(例えば、ジメチルアミン等)、イミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩(例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等)、リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン等)、グアナミン化合物(例えば、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等)、S−トリアジン誘導体(例えば、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等)などを用いることができる。硬化促進剤は、メラミン又はジシアンジアミドであることが好ましい。
硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
赤外線吸収性液状組成物は、硬化促進剤を含有してもしなくても良いが、含有する場合、硬化促進剤の前記組成物の全固形分に対する含有量は、通常0.01〜15質量%である。
【0207】
[10]エラストマー
本発明の赤外線吸収性液状組成物には、更に、エラストマーを含んでいてもよい。
エラストマーを含有させることにより、基材と赤外線カットフィルタとの密着性をより向上させることができるとともに、赤外線カットフィルタの耐熱性、耐熱衝撃性、柔軟性及び強靭性をより向上させることができる。
【0208】
本発明に用いうるエラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマーは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分から成り立っており、一般に前者が耐熱性、強度に、後者が柔軟性、強靭性に寄与している。これらの中でも、ポリエステル系エラストマーが、その他素材との相溶性の点で、有利である。
【0209】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー等が挙げられる。スチレン系エラストマーを構成する成分としては、スチレンのほかに、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体を用いることができる。具体的には、タフプレン、ソルプレンT、アサプレンT、タフテック(以上、旭化成工業(株)製)、エラストマーAR(アロン化成製)、クレイトンG、過リフレックス(以上、シェルジャパン社製)、JSR−TR、TSR−SIS、ダイナロン(以上、日本合成ゴム(株)製)、デンカSTR(電気化学社製)、クインタック(日本ゼオン社製)、TPE−SBシリーズ(住友化学(株)製)、ラバロン(三菱化学(株)製)、セプトン、ハイブラー(以上、クラレ社製)、スミフレックス(住友ベークライト(株)製)、レオストマー、アクティマー(以上、理研ビニル工業社製)等が挙げられる。
【0210】
オレフィン系エラストマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体であり、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。また、オレフィン系エラストマーとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタンジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2〜20の非共役ジエンとα−オレフィンとの共重合体、及び、エポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。また、オレフィン系エラストマーとしては、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性NBR等が挙げられる。更に、オレフィン系エラストマーとしては、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン−α−オレフィン共重合体ゴム、ブテン−α−オレフィン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0211】
オレフィン系エラストマーの具体例としては、ミラストマ(三井石油化学社製)、EXACT(エクソン化学社製)、ENGAGE(ダウケミカル社製)、水添スチレン−ブタジエンラバー“DYNABON HSBR”(日本合成ゴム社製)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体“NBRシリーズ”(日本合成ゴム社製)、架橋点を有する両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体の“XERシリーズ”(日本合成ゴム社製)、ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したエポキシ化ポリブダジエンの“BF−1000”(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0212】
ウレタン系エラストマーは、低分子(短鎖)ジオール及びジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオール及びジイソシアネートからなるソフトセグメントと、の構造単位からなるものである。高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン−1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6−へキシレン−ネオペンチレンアジペート)等が挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500〜10,000であることが好ましい。低分子(短鎖)ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA等が挙げられる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48〜500であることが好ましい。ウレタン系エラストマーの具体例としては、PANDEX T−2185、T−2983N(以上、DIC(株)製)、シラクトランE790等が挙げられる。
【0213】
ポリエステル系エラストマーは、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られるものである。ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香環の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、並びに、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上を用いることができる。ジオール化合物の具体例として、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族ジオール及び脂環式ジオール、ビスフェノールA、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、レゾルシン等が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることができる。ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの種類、比率、並びに分子量の違い等により様々なグレードのものがある。ポリエステル系エラストマーの具体例としては、ハイトレル(デュポン−東レ社製)、ペルプレン(東洋紡績社製)、エスペル(日立化成工業社製)等が挙げられる。
【0214】
ポリアミド系エラストマーは、ポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエーテル又はポリエステルからなるソフトセグメントと、から構成されるものであり、ポリエーテルブロックアミド型とポリエーテルエステルブロックアミド型との2種類に大別される。ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等が挙げられる。ポリエーテルとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリアミド系エラストマーとして具体的には、UBEポリアミドエラストマー(宇部興産社製)、ダイアミド(ダイセルヒュルス社製)、PEBAX(東レ社製)、グリロンELY(エムスジャパン社製)、ノバミッド(三菱化学社製)、グリラックス(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0215】
アクリル系エラストマーは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する単量体及び/又はアクリロニトリルやエチレン等のビニル系単量体とを共重合して得られるものである。アクリル系エラストマーとしては、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0216】
シリコーン系エラストマーは、オルガノポリシロキサンを主成分としたものであり、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサン系に分けられる。また、オルガノポリシロキサンの一部をビニル基、アルコキシ基等で変性したものを用いてもよい。シリコーン系エラストマーの具体例としては、KEシリーズ(信越化学社製)、SEシリーズ、CYシリーズ、SHシリーズ(以上、東レダウコーニングシリコーン社製)等が挙げられる。
【0217】
また、上記のエラストマー以外に、ゴム変性したエポキシ樹脂を用いることができる。ゴム変性したエポキシ樹脂は、例えば、上述のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の一部又は全部のエポキシ基を、両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリルニトリルゴム、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性することによって得られるものである。
【0218】
エラストマーの中でも、せん断密着性及び耐熱衝撃性の観点から、両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリエステル系エラストマーである水酸基を有するエスペル(エスペル1612、1620、日立化成工業社製)、エポキシ化ポブタジエンが好ましい。
【0219】
本発明の赤外線吸収性液状組成物は、エラストマーを含有してもしなくてもよいが、含有する場合、赤外線吸収性液状組成物の全固形分質量に対するエラストマーの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固形分中の0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましく、3質量%〜8質量%が特に好ましい。前記含有量が好ましい範囲内であると、せん断接着性及び耐熱衝撃性を更に向上させることが可能となる点で、有利である。
【0220】
[11]界面活性剤
本発明の赤外線吸収性液状組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0221】
特に、本発明の赤外線吸収性液状組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する赤外線吸収性液状組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0222】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、赤外線吸収性液状組成物中における溶解性も良好である。
【0223】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF−171、同F−172、同F−173、同F−176、同F−177、同F−141、同F−142、同F−143、同F−144、同R−30、同F−437、同F−475、同F−479、同F−482、同F−554、同F−780、同F−781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0224】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。
【0225】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0226】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0227】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
赤外線吸収性液状組成物は、界面活性剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、界面活性剤の含有量は、本発明の赤外線吸収性液状組成物の全固形分質量に対して、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0228】
[12]その他の成分
本発明の赤外線吸収性液状組成物には、前記必須成分や前記好ましい添加剤に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じてその他の成分を適宜選択して用いてもよい。
併用可能なその他の成分としては、例えば、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(着色顔料あるいは染料)などが挙げられ、更に基材表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を併用してもよい。
これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする赤外線吸収フィルタの安定性、膜物性などの性質を調整することができる。
前記熱重合禁止剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0101〕〜〔0102〕に詳細に記載されている。
前記可塑剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0103〕〜〔0104〕に詳細に記載されている。
前記着色剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0105〕〜〔0106〕や特開2009−205029号公報の段落〔0038〕,〔0039〕に詳細に記載されている。
前記密着促進剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0107〕〜〔0109〕に詳細に記載されている。
これら公報に記載の添加剤は、いずれも本発明の赤外線吸収性液状組成物に使用可能である。
【0229】
本発明の赤外線吸収性液状組成物の用途は、特に限定されないが、固体撮像素子基板の受光側における赤外線カットフィルタ用(例えば、ウエハーレベルレンズに対する赤外線カットフィルタ用など)、固体撮像素子基板の裏面側(受光側とは反対側)における赤外線カットフィルタ用などを挙げることができ、固体撮像素子基板の受光側における遮光膜用であることが好ましい。
本発明の赤外線吸収性液状組成物が、固体撮像素子基板の受光側における赤外線カットフィルタ用である場合、比較的厚みの大きい塗膜を形成するために、固形分濃度は30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは35質量%以上70質量%以下、最も好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
また、本発明の赤外線吸収性液状組成物の粘度は、1mPa・s以上3000mPa・s以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、10mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲であり、最も好ましくは、100mPa・s以上1500mPa・s以下の範囲である。
本発明の赤外線吸収性液状組成物が、固体撮像素子基板の受光側における赤外線カットフィルタ用である場合、厚膜形成性と均一塗布性の観点から、10mPa・s以上3000mPa・s以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、500mPa・s以上1500mPa・s以下の範囲であり、最も好ましくは、700mPa・s以上1400mPa・s以下の範囲である。
【0230】
本発明は、上記した本発明の赤外線カットフィルタの製造方法により製造される赤外線カットフィルタにも関する。このような赤外線カットフィルタは、本発明の赤外線カットフィルタの製造方法により形成されているので、膜厚分布が小さく、膜厚の均一性に優れるとともに、入射角依存特性にも優れた赤外線カットフィルタである。
本発明の赤外線カットフィルタは、固体撮像素子用赤外線カットフィルタであることが好ましい。
【0231】
また、本発明は、固体撮像素子基板と、前記固体撮像素子基板の受光側に配置された赤外線カットフィルタとを有するカメラモジュールであって、前記赤外線カットフィルタが本発明の赤外線カットフィルタである、カメラモジュールにも関する。
【0232】
以下、本発明の実施形態に係るカメラモジュールを、
図1及び
図2を参照しながら説明するが、本発明は以下の具体例によって限定されることはない。
なお、
図1及び
図2にわたり、共通する部分には共通する符号を付す。
また、説明に際し、「上」、「上方」及び「上側」は、シリコン基板10から見て遠い側を指し、「下」、「下方」及び「下側」は、はシリコン基板10に近い側を指す。
【0233】
図1は、固体撮像素子を備えたカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。
図1に示すカメラモジュール200は、実装基板である回路基板70に接続部材であるハンダボール60を介して接続されている。
詳細には、カメラモジュール200は、シリコン基板の第1の主面に撮像素子部を備えた固体撮像素子基板100と、固体撮像素子基板100の第1の主面側(受光側)に設けられた平坦化層46(
図1には不図示)と、平坦化層46の上に設けられた赤外線カットフィルタ42と、赤外線カットフィルタ42の上方に配置されるガラス基板30(光透過性基板)と、ガラス基板30の上方に配置され内部空間に撮像レンズ40を有するレンズホルダー50と、固体撮像素子基板100及びガラス基板30の周囲を囲うように配置された遮光兼電磁シールド44と、を備えて構成されている。各部材は、接着剤20(
図1には不図示)、45により接着されている。
本発明は、固体撮像素子基板と、前記固体撮像素子基板の受光側に配置された赤外線カットフィルタとを有するカメラモジュールの製造方法であって、前記赤外線カットフィルタが本発明の赤外線カットフィルタの製造方法により製造される、カメラモジュールの製造方法にも関する。
よって、本実施形態に係るカメラモジュールにおいては、例えば、平坦化層46の上に、本発明の赤外線吸収性液状組成物をスピン塗布することにより膜を形成して、赤外線カットフィルタ42を形成する。スピン塗布することにより膜を形成し、赤外線カットフィルタを製造する方法は前記した通りである。
カメラモジュール200では、外部からの入射光hνが、撮像レンズ40、ガラス基板30、赤外線カットフィルタ42、平坦化層46を順次透過した後、固体撮像素子基板100の撮像素子部に到達するようになっている。
また、カメラモジュール200は、固体撮像素子基板100の第2の主面側で、ハンダボール60(接続材料)を介して回路基板70に接続されている。
【0234】
図2は、
図1中の固体撮像素子基板100を拡大した断面図である。
固体撮像素子基板100は、基体であるシリコン基板10、撮像素子12、層間絶縁膜13、ベース層14、赤色のカラーフィルタ15R、緑色のカラーフィルタ15G、青色のカラーフィルタ15B、オーバーコート16、マイクロレンズ17、遮光膜18、絶縁膜22、金属電極23、ソルダレジスト層24、内部電極26、及び素子面電極27を備えて構成されている。
但し、ソルダレジスト層24は省略されていてもよい。
【0235】
まず、固体撮像素子基板100の第1の主面側の構成を中心に説明する。
図2に示すように、固体撮像素子基板100の基体であるシリコン基板10の第1の主面側に、CCDやCMOS等の撮像素子12が2次元に複数配列された撮像素子部が設けられている。
撮像素子部における撮像素子12上には層間絶縁膜13が形成されており、層間絶縁膜13上にはベース層14が形成されている。更にベース層14上には、撮像素子12に対応するように、赤色のカラーフィルタ15R、緑色のカラーフィルタ15G、青色のカラーフィルタ15B(以下、これらをまとめて「カラーフィルタ15」ということがある)がそれぞれ配置されている。
赤色のカラーフィルタ15R、緑色のカラーフィルタ15G、青色のカラーフィルタ15Bの境界部、及び撮像素子部の周辺には、図示しない遮光膜が設けられていてもよい。この遮光膜は、例えば、公知のブラックのカラーレジストを用いて作製できる。
カラーフィルタ15上にはオーバーコート16が形成され、オーバーコート16上には撮像素子12(カラーフィルタ15)に対応するようにマイクロレンズ17が形成されている。
そして、マイクロレンズ17の上には、前記平坦化層46が設けられている。
【0236】
また、第1の主面側の撮像素子部の周辺は、周辺回路(不図示)及び内部電極26が設けられており、内部電極26は、周辺回路を介して撮像素子12と電気的に接続されている。
更に、内部電極26上には、層間絶縁膜13を介して素子面電極27が形成されている。内部電極26と素子面電極27間の層間絶縁膜13内には、これら電極間を電気的に接続するコンタクトプラグ(不図示)が形成されている。素子面電極27は、コンタクトプラグ、内部電極26を介して電圧の印加及び信号の読み出しなどに使用される。
素子面電極27上には、ベース層14が形成されている。ベース層14上にはオーバーコート16が形成されている。素子面電極27上に形成されたベース層14及びオーバーコート16が開口されて、パッド開口部が形成され、素子面電極27の一部が露出している。
【0237】
以上が固体撮像素子基板100の第1の主面側の構成であるが、平坦化層46の上に赤外線カットフィルタ42が設けられる代わりに、ベース層14とカラーフィルタ15との間、あるいは、カラーフィルタ15とオーバーコート16との間に、赤外線カットフィルタが設けられる形態であってもよい。
固体撮像素子基板100の第1の主面側において、撮像素子部の周辺には接着剤20が設けられ、この接着剤20を介し、固体撮像素子基板100とガラス基板30とが接着される。
【0238】
また、シリコン基板10は、該シリコン基板10を貫通する貫通孔を有しており、貫通孔内には、金属電極23の一部である貫通電極が備えられている。この貫通電極により、撮像素子部と回路基板70とが電気的に接続されている。
【0239】
次に、固体撮像素子基板100の第2の主面側の構成を中心に説明する。
該第2の主面側には、第2の主面上から貫通孔の内壁にわたり絶縁膜22が形成されている。
絶縁膜22上には、シリコン基板10の第2の主面上の領域から貫通孔の内部に至るようにパターニングされた金属電極23が設けられている。金属電極23は、固体撮像素子基板100中の撮像素子部と回路基板70との接続用の電極である。
前記貫通電極は、この金属電極23のうち、貫通孔の内部に形成された部分である。貫通電極は、シリコン基板10及び層間絶縁膜の一部を貫通して内部電極26の下側に至り、該内部電極26に電気的に接続されている。
【0240】
更に、第2の主面側には、金属電極23が形成された第2の主面上を覆い、かつ、該金属電極23上の1部を露出する開口部を有するソルダレジスト層24(保護絶縁膜)が設けられている。
更に、第2の主面側には、ソルダレジスト層24が形成された第2の主面上を覆い、かつ、該金属電極23上の1部が露出する開口部を有する遮光膜18が設けられている。
なお、
図2では、遮光膜18は、金属電極23の1部を覆い、残りの部分を露出させるようにパターニングされているが、金属電極23の全部を露出させるようにパターニングされていてもよい(ソルダレジスト層24のパターニングについても同様である)。
また、ソルダレジスト層24は省略されていてもよく、金属電極23が形成された第2の主面上に、遮光膜18が直接形成されていてもよい。
【0241】
露出された金属電極23上には、接続部材としてのハンダボール60が設けられ、このハンダボール60を介し、固体撮像素子基板100の金属電極23と、回路基板70の不図示の接続用電極と、が電気的に接続される。
【0242】
以上、固体撮像素子基板100の構成について説明したが、特開2009−158863号公報中段落0033〜0068に記載の方法や、特開2009−99591号公報中段落0036〜0065に記載の方法など、公知の方法により形成できる。
層間絶縁膜13は、例えば、スパッタやCVD(Chemical vapor deposition)等によりSiO
2膜又はSiN膜として形成する。
カラーフィルタ15は、例えば、公知のカラーレジストを用い、フォトリソグラフィーにより形成する。
オーバーコート16及びベース層14は、例えば、公知の有機層間膜形成用レジストを用い、フォトリソグラフィーにより形成する。
マイクロレンズ17は、例えば、スチレン系樹脂等を用い、フォトリソグラフィー等により形成する。
ソルダレジスト層24は、例えばフェノール系樹脂、あるいはポリイミド系樹脂、アミン系樹脂を含む公知のソルダレジストを用い、フォトリソグラフィーにより形成されることが好ましい。
ハンダボール60は、例えば、Sn−Pb(共晶)、95Pb−Sn(高鉛高融点半田)、Pbフリー半田として、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cuなどを用いて形成する。ハンダボール60は、例えば、直径100μm〜1000μm(好ましくは直径150μm〜700μm)の球状に形成する。
内部電極26及び素子面電極27は、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)、又はフォトリソグラフィー及びエッチングにより、Cu等の金属電極として形成する。
金属電極23は、例えば、スパッタ、フォトリソグラフィー、エッチング、及び電解めっきにより、Cu、Au、Al、Ni、W、Pt、Mo、Cu化合物、W化合物、Mo化合物等の金属電極として形成する。金属電極23は、単層構成でも2層以上からなる積層構成であってもよい。金属電極23の膜厚は、例えば、0.1μm〜20μm(好ましくは0.1μm〜10μm)とする。シリコン基板10としては特に限定されないが、基板裏面を削ることによって薄くしたシリコン基板を用いることができる。基板の厚さは限定されないが、例えば、厚み20μm〜200μm(好ましくは30〜150μm)のシリコンウエハーを用いる。
シリコン基板10の貫通孔は、例えば、フォトリソグラフィー及びRIE(Reactive Ion Etching)により形成する。
【0243】
以上、カメラモジュールの一実施形態について
図1及び
図2を参照して説明したが、前記一実施形態は
図1及び
図2の形態に限られるものではない。
【実施例】
【0244】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0245】
<赤外線吸収性液状組成物の調製>
[組成物A]
下記の化合物を攪拌機で混合して溶解し、赤外線吸収性液状組成物Aを調製した。
・シクロヘキサノン 80質量部
・YMF−02A(住友金属鉱山(株)製 セシウム酸化タングステン(Cs
0.33WO
3)、濃度18.5質量%、平均粒子径15nm、屈折率1.66)
6質量部
・KAYARAD DPHA(日本化薬社製、重合性化合物) 7.78質量部
・Irgacure OXE01(BASFジャパン社製、重合開始剤)
1.00質量部
・樹脂(バインダー、ベンジルメタクリレート由来の繰り返し単位/メタクリル酸由来の繰り返し単位=80/20(モル比)、Mw=30000)
6.2質量部
・界面活性剤(DIC(株)製 F−781) 0.02質量部
【0246】
[組成物B]
同様に、下記の化合物を攪拌機で混合して溶解し、赤外線吸収性液状組成物Bを調整した。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) 80質量部
・YMF−02A(住友金属鉱山(株)製 セシウム酸化タングステン(Cs
0.33WO
3)、濃度18.5質量%、平均粒子径15nm、屈折率1.66)
6.2質量部
・KAYARAD DPHA(日本化薬社製、重合性化合物) 7.75質量部
・Irgacure OXE02(BASFジャパン社製、重合開始剤)
1.00質量部
・下記樹脂(D−1’)(バインダー) 6質量部
・界面活性剤(DIC(株)製 F−171) 0.05質量部
【0247】
【化44】
【0248】
[組成物C]
同様に、下記の化合物を攪拌機で混合して溶解し、赤外線吸収性液状組成物Cを調整した。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) 80質量部
・EPOLIGHT1178(Epolin社製、ジインモニウム色素)
6.2質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製、重合性化合物)
13.75質量部
・Irgacure OXE01(BASFジャパン社製、重合開始剤)
1.00質量部
・界面活性剤(DIC(株)製 F−171) 0.05質量部
【0249】
(実施例1〜5及び比較例2〜4)
得られた赤外線吸収性液状組成物A〜Cを用いて、膜厚分布評価及び入射角依存特性評価を以下のようにして行った。
【0250】
<膜厚分布評価>
基板(8inchシリコン基板)上に、下記表1に記載の赤外線吸収性液状組成物を、下記表1に記載の塗布方法で塗布し、その後、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行うことにより、乾燥膜を得た。塗布方法としてスピン塗布を採用した場合には、表1に記載の回転数にてスピン塗布を行い、表1に記載の乾燥膜厚の乾燥膜を得た。また塗布方法としてバー塗布を採用した場合には、乾燥膜厚が1.0μmになるように乾燥膜を形成した。次に、ウエハー面内の任意位置10箇所で乾燥膜の膜厚の測定を行い、膜厚の最大値と最小値の差が0.03μm未満を〇、0.03μm以上0.05μm未満を△、0.05μm以上を×とした。
なお比較例1では後述するように膜の形成を蒸着で行ったため、膜厚分布評価は行わなかった。
以下に、表1に記載の塗布方法について説明する。
【0251】
(スピン塗布)
1H−D7(ミカサ製スピンコーター)を用いて、表1に記載の回転数でスピン塗布を行った。
【0252】
(バー塗布)
ドクターブレードYD−2型(ヨシミツ精機(株)製)を用いてバー塗布を行った。
【0253】
<入射角依存特性評価>
下記表1に記載の赤外線吸収性液状組成物の各々を、それぞれ、ガラスウエハー上に、下記表1の「塗布方法」の欄に記載される塗布方法(すなわち、スピン塗布又はバー塗布)で塗布し、100℃,120秒間の前加熱(プリベーク)を行った後、i線ステッパーを用い、2000mJ/cm
2で全面露光を行った。次いで、200℃、300秒間の後加熱(ポストベーク)を行い、膜厚1.0μmの赤外線カットフィルタを得た。なお下記表1の「塗布方法」の欄に記載される塗布方法がスピン塗布である場合、2000rpmの回転数でスピン塗布を行った。
上記のようにして得た赤外線カットフィルタの長波長側の分光特性を、位相差測定装置(COBRA−WR、王子計測製)を用いて評価した。入射角を赤外線カットフィルタ面に対し垂直(角度0度)及び35度に変化させ、p偏光透過帯(可視光領域)における高波長側のスロープ(ここで、「高波長側のスロープ」とは、波長600nm以上の可視から近赤外線領域における、分光透過率の低下によるスロープのことを言う)で透過率が50%となる波長のシフト量が、25nm未満を○、25nm以上30nm未満を△、30nm以上を×として、示した。
なお比較例1では、以下のように作製した赤外線カットフィルタについて、上記と同様にして入射角依存特性評価を行った。
【0254】
(比較例1)
ガラス基板上に、SiO
2層と、TiO
2層とを、交互に、電子ビーム蒸着(EB)法により積層蒸着し、誘電体多層膜をガラス基板の両面に形成し、誘電体多層膜付積層ガラス基板(赤外線カットフィルタ)を得た。ガラス基板上に形成された誘電体多層膜層は、1層の膜厚が110〜120nmで、ガラス基板の片面毎に17層(最表面層はSiO
2層)の層を構成した。
【0255】
以上の結果を表1に示した。
【0256】
【表1】
【0257】
表1の結果から分かるように、塗布方法としてスピン塗布を用いた実施例1〜5は、塗布方法としてバー塗布を用いた比較例2〜4と比べて、形成される膜の膜厚分布が小さく、膜厚の均一性に優れていた。
またスピン塗布により作製された実施例1〜5の赤外線カットフィルタは、蒸着により作製された比較例1の赤外線カットフィルタと比べて、入射角の変化による波長のシフト量が小さく(すなわち入射角依存性が小さく)、入射角依存特性に優れていた。
【0258】
以上のように、本発明の赤外線カットフィルタの製造方法によれば、膜厚分布が小さく、膜厚の均一性に優れるとともに、入射角依存特性にも優れた赤外線カットフィルタを作製できることが分かった。
また、本発明に係る赤外線吸収性液状組成物は液であるため、スピン塗布することにより膜を形成するという簡単な工程によって、赤外線カットフィルタを容易に製造できるため、上記した従来の赤外線カットフィルタにおける不充分な製造適性を改善することができる。
なお上記実施例において、膜厚分布評価ではシリコン基板を、入射角依存特性評価ではガラスウエハーを、それぞれ基板として使用したが、固体撮像素子基板を使用し、その受光側において膜を形成した場合にも同様の結果が得られるものと考えられる。
このように、本発明の赤外線カットフィルタの製造方法は、固体撮像素子基板と、前記固体撮像素子基板の受光側に配置された赤外線カットフィルタとを有するカメラモジュールを作製するのに適した製造方法である。