(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965676
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】処理対象物の保持方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20160728BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20160728BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
C23C14/50 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-48862(P2012-48862)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-187217(P2013-187217A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】森本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】福本 英範
【審査官】
内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−079889(JP,A)
【文献】
特開2004−031938(JP,A)
【文献】
特開2004−235563(JP,A)
【文献】
特開2010−194667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 14/50
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物をガラス基板の一方の面に接着剤層を介してシリコン基板が積層されたものとし、この処理対象物を、 電極と、セラミック製または金属製のチャック本体と、チャック本体の処理対象物の吸着面に設けられる絶縁性を持つ樹脂ラバーシートとを備える基板保持装置で吸着して保持する処理対象物の保持方法において、
樹脂ラバーシートにガラス基板側から処理対象物を設置した後、電極に電圧印加して処理対象物を所定の吸着力で吸着する第1工程と、
加熱手段により樹脂ラバーシートを加熱することで処理対象物の吸着力を増加させてガラス基板と樹脂ラバーシートとを密着させ、ガラス基板から樹脂ラバーシートへの熱引けを促進させる第2工程と、
冷却手段によりチャック本体を冷却してガラス基板から樹脂ラバーシートへの熱引けさせて処理対象物を冷却する第3工程とを含むことを特徴とする処理対象物の保持方法。
【請求項2】
前記第2工程で前記シリコン基板側から加熱手段により処理対象物を加熱することで樹脂ラバーシートを加熱することを特徴とする請求項1記載の処理対象物の保持方法。
【請求項3】
前記樹脂ラバーシートとしてシリコンゴム製のものを用い、90℃以上に加熱して前記樹脂ラバーシートの抵抗を低下させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の処理対象物の保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を静電吸着し、当該処理対象物を効果的に冷却できる
処理対象物の保持方法に関し、特に、処理対象物をガラス基板の一方の面に接着剤層を介してシリコン基板が積層されたものとし、プラズマ処理を実施する処理室内でこの処理対象物をガラス基板側から静電吸着して冷却できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の実装技術の一つとして、三次元に積層したシリコンダイをビアホールによって相互接続するシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)技術が注目されている。これによれば、例えば結線空間のためにパッケージの縦横を広げることができ、従来のものと比較して実装パッケージをより小さくかつ薄くできる等の利点がある一方で、従来の半導体装置の微細孔と比較してパターンサイズ(例えば、開口径が10μm)が大きく、アスペクト比が大きいTSV用の微細孔を、如何にして例えばプラズマエッチング装置を用いて効率よく形成し、また、この微細孔に導電性材料を効率よく埋め込むかが課題となっている。
【0003】
そこで、シリコン基板に形成するTSV長が短くても済むように、グラインド工程によりシリコン基板を数十〜数百μm程度に薄くすると共に、例えば研磨時の機械的なストレスでシリコン基板が破損しないように、シリコン基板に接着剤層を介してガラス基板を貼着して強度を増加させた上で、シリコン基板に研磨や微細孔の形成等の一連の処理を行うことが提案されている。
【0004】
接着剤層としては、シリコーン系接着剤等が用いられるが、これらの接着剤層の耐熱温度は、200℃前後と低く、接着剤層が耐熱温度を超えると、シリコン基板が破損する等の問題が生じる。このため、プラズマエッチング装置によりシリコン基板にTSV用の微細孔を形成するときや、この微細孔にスパッタリング装置を用いてCuシード層を形成するときのように、プラズマに曝され得る条件下で所定処理を行う場合、如何に処理対象物の接着剤層を耐熱温度以下に維持するかが重要となる。このような場合、処理対象物をガラス基板の一方の面に接着剤層を介してシリコン基板が積層されたものを、プラズマエッチング装置やスパッタリング装置の処理室内でガラス基板側から静電吸着し、この処理対象物を熱交換で冷却する所謂静電チャックを備えた基板保持装置を用いることが考えられる。
【0005】
ここで、静電チャックとしては、ジョンソンラーベック力、クーロン力またはグラディエント力等を利用したものがあり、その中で、ガラス基板のように絶縁材を静電吸着する場合には、例えばクーロン力を利用したものでは絶縁材に対して殆どクーロン力による吸着を発現しないので、専らグラディエント力によるものが利用されている(例えば、特許文献1参照)。このものは、セラミックス製または金属製のチャック本体(誘電体)と、このチャック本体の一方の面に、極めて小さい間隔(例えば、0.3mm)で近接配置される一対の櫛歯状の電極と、各電極が設けられた面を覆うポリイミド等からなる絶縁層とを備える。そして、上記チャック本体が処理室に配置され、内部に冷却手段を内蔵された基台表面に設けて基板保持装置として構成している。
【0006】
然しながら、グラディエント力を利用した上記従来例の基板保持装置では、例えばクーロン力を利用してシリコン基板を静電吸着する場合と比較してその吸着力(gf/cm
2)がもともと弱い上、静電チャックのガラス基板との接触面が、極めて小さい間隔で電極が近接配置されて微細な凹凸形状となっているため、ガラス基板との接触面積が少なく、処理対象物の冷却速度が遅いという問題がある。このため、処理対象物をガラス基板側から静電吸着した状態で、シリコン基板に対してプラズマを用いた処理を施す場合、接着剤層が耐熱温度以上まで昇温されないように、処理条件や処理時間に応じたシリコン基板への入熱量を少なくする必要があり、これでは、プロセスマージンが著しく狭い。他方、一対の電極への印加電圧を高くすることも考えられるが、これでは、残留電荷の影響を受けて、処理後に処理対象物を基板保持装置から離脱できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−141220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、ガラス基板の一方の面に接着剤層を介してシリコン基板が積層された処理対象物をガラス基板側から静電吸着して効果的に冷却できるようにした基板保持装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、
本発明は、処理対象物をガラス基板の一方の面に接着剤層を介してシリコン基板が積層されたものとし、この処理対象物
を、 電極と、セラミック製または金属製のチャック本体と、チャック本体の処理対象物の吸着面に設けられる絶縁性を持つ樹脂ラバーシートと
を備える基板保持装置で吸着して保持する処理対象物の保持方法において、樹脂ラバーシートにガラス基板側から処理対象物を設置した後、電極に電圧印加して処理対象物を所定の吸着力で吸着する第1工程と、加熱手段により樹脂ラバーシートを加熱することで処理対象物の吸着力を増加させてガラス基板と樹脂ラバーシートとを密着させ、ガラス基板から樹脂ラバーシートへの熱引けを促進させる第2工程と、冷却手段によりチャック本体を冷却してガラス基板から樹脂ラバーシートへの熱引けさせて処理対象物を冷却する第3工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、チャック本体の処理対象物の吸着面に絶縁層としての樹脂ラバーシートを備えたため、樹脂ラバーシート表面にガラス基板側から処理対処物を載置し、電極に所定の電圧を印加すると、クーロン力による吸着力が発現して処理対象物が吸着されるが、室温下では、その吸着力はグラディエント力を利用したものと比較しても非常に弱い(1/10以下の吸着力)。
【0011】
そこで、本願発明者らは、鋭意研究を重ね、印加電圧を一定に保持したままでも、加熱手段により処理対象物を加熱すると、クーロン力による吸着力が増加するとの知見を得るに至った。これは、処理対象物を加熱することで、処理対象物、特にシリコン基板の抵抗が低下すると共に、処理対象物からの伝熱で樹脂ラバーシート自体も加熱されてその抵抗が低下することに起因しているものと考えられる。そして、クーロン力による吸着力が増加すると、弾性のある樹脂ラバーシートを用いていることで、ガラス基板と樹脂ラバーシートとが互いに圧接し、ガラス基板から、冷却手段で常時冷却されているチャック本体に密着された樹脂ラバーシートへの熱引けが促進される、つまり、冷却速度が上記従来例のものより向上することが判明した。結果として、処理対象物をガラス基板側から吸着して効果的に冷却することができる。
【0012】
なお、本発明においては、
前記第2工程で前記シリコン基板側から加熱手段により処理対象物を加熱することで樹脂ラバーシートを加熱することが好ましく、また、前記樹脂ラバーシートとしてシリコンゴム製のものを用い、90℃以上に加熱して前記樹脂ラバーシートの抵抗を低下させることが好ましい。樹脂ラバーシートはゴム弾性を持ち、吸着力が増加したときに、ガラス基板と密着する部材をいい、その厚さは、静電チャックとして求められる絶縁耐圧に応じて適宜選択される。この場合、樹脂ラバーシートは、シリコンゴム製とすれば、効率よく処理対象物を冷却して、接着剤層を耐熱温度以下に維持できることが確認された。また、処理室内での所定の処理がプラズマを用いるような場合には、プラズマから基板に入熱させて加熱手段とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の基板保持装置を備えたスパッタリング装置の構成を模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、処理対象物Sをガラス基板GSの一方の面に図示省略の接着剤層Aを介してシリコン基板Wが積層されたものとし、プラズマ処理をスパッタリング法により成膜処理とし、この成膜処理を行う処理室内に本発明の基板保持装置ECを適用したものを例に実施形態を説明する。以下においては、
図1中、ガラス基板GSからシリコン基板Wに向かう方向を上とし、これに準じて下、左、右、といった方向を示す用語を用いるものとする。
【0015】
図1を参照して、SMは、本実施形態の基板保持装置ECを備えたDCマグネトロンスパッタリング方式のスパッタリング装置であり、スパッタリング装置SMは、処理室1aを画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の上壁面にはカソードユニットCが取付けられている。カソードユニットCは、ターゲット2と、このターゲット2の下面たるスパッタ面2a下方に漏洩磁場界を形成する磁石ユニット3とを備える。ターゲット2は、シリコン基板Wに形成しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択された材料、例えばCu製であり、公知の方法で所定形状に作製されている。ターゲット2には、第1の電源たるDC電源4に電気的に接続され、所定の負の電位を持った電力が投入されるようになっている。
【0016】
磁石ユニット3は、スパッタ面2aと背向する上側に配置され、ターゲット2に平行に配置された円板状のヨーク3aと、このヨーク3aの下面にターゲット2側の極性を交互に変えて同心に配置したリング状の磁石3b、3cとから構成されている。なお、磁石3b、3cの形状や個数は、これに限定されるものではなく、ターゲット2の前方に形成しようとする磁界に応じて適宜選択され、例えば薄片状や棒状のものまたはこれらを適宜組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0017】
また、真空チャンバ1の左側壁には、アルゴンガスなどのスパッタガスを導入するガス管5が接続され、その他端は、図示省略したマスフローコントローラを介してガス源に連通している。真空チャンバ2の下側壁には、透孔61が介設され、排気管62を介してターボ分子ポンプやロータリポンプなどからなる真空排気手段63に接続されている。なお、
図1中、Iは、絶縁材であり、SDは、シール板である。そして、ターゲット2のスパッタ面2aに対向させて本実施形態の基板保持装置ECが設けられている。
【0018】
基板保持装置ECは、チャック本体71と、このチャック本体71の上面に設けられた誘電体層としての樹脂ラバーシート72と、例えばチャック本体71が金属製の場合には図示省略の絶縁層を介して組み込まれる正負一対の電極73a、73bとを備え、真空チャンバ1の下面に他の絶縁材Iを介して設けられた、アルミニウム等の熱伝導の良い金属製で筒状の基台8の上面チャック本体71の下面を密着固定して構成される。
【0019】
チャック本体71は、アルミ、アルミナや窒化アルミ等のセラミックス焼結体または金属製部材で構成され、処理対象物Sの形状に対応する上面形状を有する。電極73a,73bを含むチャック本体71の上面を覆う樹脂ラバーシート72としては、ゴム弾性を持ち、吸着力が増加したときにガラス基板GSと密着する部材であればよく、その厚さは、静電チャックとして求められる絶縁耐圧に応じて適宜選択される。本実施形態では、樹脂ラバーシート72は、所定厚さのシリコンゴム製で構成され、チャック本体71の上面に公知の接着剤により貼着されている。なお、樹脂ラバーシート72は、上記のものに限定されるものではなく、ポリイミド製シートとの積層構造のもの等を用いることもできる。
【0020】
また、両電極73a,73b間には、直流電源Eからの出力が夫々接続され、直流電圧が印加されるようになっている。そして、樹脂ラバーシート72上面に処理対象物Sをそのガラス基板GS側から載置し、両電極73a,73b間に直流電源Eを介して直流電圧を印加することで発生するクーロン力で処理対象物Sが静電吸着される。基台8は、熱伝導の良いアルミ製等であり、その内部には、冷却水や冷媒等を循環させる冷却手段としての循環路81が形成されている。なお、特に図示して説明しないが、基板保持装置ECには、処理対象物Sの受け渡しを行うため、基板保持装置ECを上下方向に貫通する透孔を設け、この透孔にリフトピン(図示せず)を挿設し、このリフトピンを上下動させるように構成されている。
【0021】
シリコン基板Wに対して所定の薄膜を成膜する場合、真空雰囲気中の処理室1aにスパッタガスを導入し、ターゲット2に負の電位を持った所定電力を投入し、ターゲットをスパッタリングする。これにより、シリコン基板W表面に所定の薄膜が形成される。成膜中、循環路81内に冷媒等を循環させて基台8を冷却することで、基台8とチャック本体71や樹脂ラバーシート72と、及び、樹脂ラバーシート72と処理対象物Sとの間の熱交換により処理対象物Sが冷却される。
【0022】
ところで、成膜を開始するのに当たって、室温の処理室1a内で両電極73a,73b間に直流電源Eを介して直流電圧を印加し、樹脂ラバーシート72の表面で処理対象物Sを吸着した当初は、その吸着力はグラディエント力を利用したものと比較しても非常に弱い(例えば、印加電圧4kVの場合、1.44gf/cm
2程度)。然し、スパッタガス雰囲気内の処理室内でターゲット2に電力投入して処理室内1aにプラズマが形成されると、このプラズマからの輻射熱等でシリコン基板Wが加熱されてくると、クーロン力による吸着力が増加する。そして、クーロン力による吸着力が増加すると、弾性のある樹脂ラバーシート72を用いていることで、ガラス基板GSと樹脂ラバーシート72とが互いに密接し、ガラス基板GSから、樹脂ラバーシート72及びチャック本体1を経て基台8への熱引けが促進される、つまり、冷却速度が、グラディエント力を利用した従来例のものより向上する。結果として、成膜中、処理対象物Sが効果的に冷却され、接着剤層Aを耐熱温度以下に保持することができる。
【0023】
次に、本発明の効果を確認するために、上記スパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。本実験では、処理対象物Sとして、シリコン基板Wを、φ300mm、厚さ50μmのシリコンウエハとし、ガラス基板GSを700μmの厚さのホウケイ酸ガラスとし、シリコーンからなる接着剤層A(耐熱温度は約180℃)を介して互いに貼着したものを用いた。また、樹脂ラバーシート72としては、 直径298mm、厚さ0.2mmのシリコンゴムを用いた。
【0024】
他方、上記スパッタリング装置SMにおいて、処理対象物Sの温度を測定するため、ターゲットをスパッタリングせずに、ターゲット2と処理対象物Sとの間に赤外線ランプヒータを設けた。そして、ターゲットをCuとし、このターゲット2に負の電位を持った所定電力を投入し、スパッタリングするとき、この投入電力に対応してプラズマから処理対象物Sに入熱される熱量(投入電力が20kWのとき入熱量が500℃から7.2W/m
2Kの熱伝導率)と同等の入熱量となるように赤外線ランプヒータで処理対象物Sを加熱した。この加熱中、基台8の循環路81に25℃の冷却水を流すこととした。
【0025】
先ず、本実験では、電極に直流電圧を印加して基板保持装置ECで処理対象物Sを静電吸着した状態で、赤外線ランプヒータを作動して処理対象物を約120℃まで加熱した後、赤外線ランプヒータによる加熱を停止し、所定時間放置した。
図2は、電極に印加する電圧を2.0kV(−△―線)、3.0kV(−□―線)、3.5kV(−●―線)、及び4.0kV(−▲―線)に夫々設定したときの時間の経過に伴う処理対象物の温度変化を示すグラフである。
図2中、−○―は、電圧の印加をしないものであり、また、測定温度は、シリコン基板の径方向で複数箇所の温度を測定し、これを平均したものである。これによれば、電極に電圧を印加して処理対象物を静電吸着すると、処理対象物が効果的に冷却され、電圧を高める程、冷却速度が向上することが判る。なお、上記電圧の範囲では、実験後に基板保持装置に組み付けたリフトピンで容易に脱離できることが確認された。
【0026】
次に、他の実験として、室温の処理室内で樹脂ラバーシート表面に処理対象物を載置し、電極に4.0kVの電圧を印加し、赤外線ランプヒータを作動して上記入熱量でシリコン基板に入熱させたときの時間経過に伴う処理対象物の温度変化を測定した。
図3は、その測定結果を示すグラフである。これによれば、加熱開始当初、処理対象物の吸着力が弱いため、処理対象物の温度は約90℃まで急激に上昇するが、処理対象物が加熱されると、吸着力が増加して効果的に熱交換されることで、温度上昇が抑制され、時間の経過と共に徐々に処理対象物の温度が低下していくことが判る。これにより、スパッタリング装置にて成膜するような場合には、広いプロセスマージンの成膜条件で成膜することができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、スパッタリング装置に本実施形態の基板保持装置ECが用いられるものを例に説明したが、ACスパッタリング装置や反応性イオンエッチング装置等、処理室内にプラズマを形成する他のものに本発明は適用できる。また、上記実施形態では、プラズマから入熱させて加熱手段を構成したが、プラズマを用いないような場合には、上記実験の如く、赤外線ランプヒータ等のヒータで加熱手段を構成してもよい。更に、上記実施形態では、正負の一対の電極73a、73bを備えた所謂バイポーラ型のものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えばモノポーラ型のものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
S…処理対象物、A…接着剤層、GS…ガラス基板、W…シリコン基板、EC…基板保持装置(静電チャック)、71…チャック本体、72…樹脂ラバーシート、73a,73b…(正負の)電極、81…冷媒用の循環通路(冷却手段)、SM…スパッタリング装置(加熱手段としてのプラズマ処理装置)、1a…処理室。