特許第5965680号(P5965680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965680処理室内部品の冷却方法、処理室内部品冷却プログラム、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965680
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】処理室内部品の冷却方法、処理室内部品冷却プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-51730(P2012-51730)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-187385(P2013-187385A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠治
(72)【発明者】
【氏名】志村 昭彦
【審査官】 溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−158321(JP,A)
【文献】 特開平11−329927(JP,A)
【文献】 特開昭63−136644(JP,A)
【文献】 特開2005−209998(JP,A)
【文献】 特開平11−340114(JP,A)
【文献】 特開2001−185534(JP,A)
【文献】 特開平11−54484(JP,A)
【文献】 特開2006−202912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の処理を施す基板処理装置の処理室内に配置された処理室内部品の冷却方法であって、
前記処理室内の圧力を大気圧に調整する圧力調整ステップと、
前記処理室の側壁部を全周に亘って連続的に開放して前記処理室内及び大気を連通させる処理室内開放ステップと、
前記処理室内を排気する排気装置を用いて前記処理室内に前記大気の流れを形成する気流形成ステップと、
前記処理室内部品の温度が所定の温度以下か否かを判定する温度判定ステップと、
前記温度判定ステップにおいて前記処理室内部品の温度が所定の温度以下と判定された場合、前記排気装置の作動を停止して前記大気の流れを停止させる気流停止ステップとを有することを特徴とする処理室内部品の冷却方法。
【請求項2】
前記処理室は分割可能に構成された蓋部及び基部からなり、
前記処理室内開放ステップにおいて前記蓋部は前記基部から離間し、
前記蓋部の前記基部からの離間距離は40mm以上且つ100mm以下であることを特徴とする請求項記載の処理室内部品の冷却方法。
【請求項3】
前記蓋部の前記基部からの離間は、前記蓋部のみの移動、前記基部のみの移動、又は前記蓋部及び前記基部の移動によって実現されることを特徴とする請求項記載の処理室内部品の冷却方法。
【請求項4】
前記処理室内部品は、前記基板を載置し且つ加熱機構を有する高温載置台であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の処理室内部品の冷却方法。
【請求項5】
基板に所定の処理を施す基板処理装置の処理室内に配置された処理室内部品の冷却方法であって、前記処理室内の圧力を大気圧に調整する圧力調整ステップと、前記処理室の側壁部の少なくとも一部を開放して前記処理室内及び大気を連通させる処理室内開放ステップと、前記処理室内を排気する排気装置を用いて前記処理室内に前記大気の流れを形成する気流形成ステップと、前記処理室内部品の温度が所定の温度以下か否かを判定する温度判定ステップと、前記温度判定ステップにおいて前記処理室内部品の温度が所定の温度以下と判定された場合、前記排気装置の作動を停止して前記大気の流れを停止させる気流停止ステップとを有する処理室内部品の冷却方法をコンピュータに実行させる処理室内部品冷却プログラムであって、
前記処理室内開放ステップを実行する処理室内開放モジュールと、
前記気流形成ステップを実行する気流形成モジュールと、
前記温度判定ステップを実行する温度判定モジュールと、
前記気流停止ステップを実行する気流停止モジュールとを少なくとも有し、
前記温度判定モジュールは、温度センサからの信号を取得して前記処理室内部品の温度が所定の温度以下か否かを判定することを特徴とする処理室内部品冷却プログラム。
【請求項6】
前記気流形成モジュールは、前記処理室内開放モジュールが前記処理室内開放ステップを実行している間、又は実行した後に、前記処理室内開放モジュールから呼び出されて前記気流形成ステップを実行することを特徴とする請求項記載の処理室内部品冷却プログラム。
【請求項7】
請求項又はに記載の処理室内部品冷却プログラムを格納することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内部品の冷却方法、処理室内部品冷却プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に所望のプラズマ処理、例えば、ドライエッチング処理を施す基板処理装置では、減圧されたチャンバ(処理室)内に配置されたステージ(載置台)に基板を載置してチャンバ内で処理ガスから発生したプラズマへ基板を晒す。したがって、プラズマ処理中に基板はプラズマから受熱して温度が上昇し、基板を載置するステージもプラズマからの直接の入熱、若しくは基板からの熱の伝達によって温度が上昇する。
【0003】
また、近年、基板を高温にしてプラズマ処理を施す手法が開発されており、これに対応してステージはヒーターを内蔵し、該ヒーターはステージを260℃まで加熱することがある。
【0004】
ところで、一般にプラズマ処理を繰り返すと、処理ガスや基板上の処理対象物(例えば、酸化膜)の成分に起因して生じる反応生成物がチャンバ内部品、例えば、ステージやシャワーヘッドに堆積するため、堆積した反応生成物を取り除くために、定期的にチャンバ内部品の洗浄を行う必要がある。また、プラズマ中の陽イオンによるスパッタリング等によってチャンバ内部品が消耗するために、定期的にチャンバ内部品の交換を行う必要がある。
【0005】
基板処理装置のチャンバ内部品の洗浄や交換、すなわち、メンテナンスを行うためには、作業者がチャンバ内からチャンバ内部品を取り出す必要があるが、上述したようにチャンバ内部品は高温となるため、作業者の安全を考慮してメンテナンス前にチャンバ内部品を冷却する必要がある。
【0006】
例えば、特許文献1に示す載置台構造では、載置台に冷媒を流すための冷媒通路が内部に形成されており、載置台を冷却する際、冷媒通路に冷媒を流すことによって比較的速く冷却することができる。
【0007】
ところで、近年、上述した基板を高温にしてプラズマ処理を施すことに関して、基板を処理する際のシーケンスを工夫することによってヒーター等の加熱手段のみで温度制御することが可能であるため、冷媒通路を内部に有さないステージを備える基板処理装置が増えつつある。このような基板処理装置では、ステージを冷却する際、チャンバ内に大気を導入した後に所定時間放置する。この場合、ステージの熱が導入された大気へ伝達することによってステージの温度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−219354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、導入された大気へステージの熱を伝達する方法では時間の経過とともに導入された大気が熱の伝達によって温度が上昇するため、ステージの熱の伝達効率が低下してステージの冷却に長時間を要する。
【0010】
ステージの冷却を促進するためには、ステージの内部に冷媒通路を形成することも考えられるが、基板処理装置の構成が複雑になるとともにコストが上昇する。特に、メンテナンスの頻度はさほど高くないため、メンテナンス前の冷却のためだけに冷媒通路を形成することは費用対効果が悪い。
【0011】
本発明の目的は、基板処理装置の構成を複雑にすることなく処理室内部品を速く冷却することができる処理室内部品の冷却方法、処理室内部品冷却プログラム、及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の処理室内部品の冷却方法は、基板に所定の処理を施す基板処理装置の処理室内に配置された処理室内部品の冷却方法であって、前記処理室内の圧力を大気圧に調整する圧力調整ステップと、前記処理室の側壁部を全周に亘って連続的に開放して前記処理室内及び大気を連通させる処理室内開放ステップと、前記処理室内を排気する排気装置を用いて前記処理室内に前記大気の流れを形成する気流形成ステップと、前記処理室内部品の温度が所定の温度以下か否かを判定する温度判定ステップと、前記温度判定ステップにおいて前記処理室内部品の温度が所定の温度以下と判定された場合、前記排気装置の作動を停止して前記大気の流れを停止させる気流停止ステップとを有することを特徴とする。
【0014】
請求項記載の処理室内部品の冷却方法は、請求項記載の処理室内部品の冷却方法において、前記処理室は分割可能に構成された蓋部及び基部からなり、前記処理室内開放ステップにおいて前記蓋部は前記基部から離間し、前記蓋部の前記基部からの離間距離は40mm以上且つ100mm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項記載の処理室内部品の冷却方法は、請求項記載の処理室内部品の冷却方法において、前記蓋部の前記基部からの離間は、前記蓋部のみの移動、前記基部のみの移動、又は前記蓋部及び前記基部の移動によって実現されることを特徴とする。
【0016】
請求項記載の処理室内部品の冷却方法は、請求項1乃至のいずれか1項に記載の処理室内部品の冷却方法において、前記処理室内部品は、前記基板を載置し且つ加熱機構を有する高温載置台であることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項記載の処理室内部品冷却プログラムは、基板に所定の処理を施す基板処理装置の処理室内に配置された処理室内部品の冷却方法であって、前記処理室内の圧力を大気圧に調整する圧力調整ステップと、前記処理室の側壁部の少なくとも一部を開放して前記処理室内及び大気を連通させる処理室内開放ステップと、前記処理室内を排気する排気装置を用いて前記処理室内に前記大気の流れを形成する気流形成ステップと、前記処理室内部品の温度が所定の温度以下か否かを判定する温度判定ステップと、前記温度判定ステップにおいて前記処理室内部品の温度が所定の温度以下と判定された場合、前記排気装置の作動を停止して前記大気の流れを停止させる気流停止ステップとを有する処理室内部品の冷却方法をコンピュータに実行させる処理室内部品冷却プログラムであって、前記処理室内開放ステップを実行する処理室内開放モジュールと、前記気流形成ステップを実行する気流形成モジュールと、前記温度判定ステップを実行する温度判定モジュールと、前記気流停止ステップを実行する気流停止モジュールとを少なくとも有し、前記温度判定モジュールは、温度センサからの信号を取得して前記処理室内部品の温度が所定の温度以下か否かを判定することを特徴とする。
【0018】
請求項記載の処理室内部品冷却プログラムは、請求項記載の処理室内部品冷却プログラムにおいて、前記気流形成モジュールは、前記処理室内開放モジュールが前記処理室内開放ステップを実行している間、又は実行した後に、前記処理室内開放モジュールから呼び出されて前記気流形成ステップを実行することを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するために、請求項記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、請求項又はに記載の処理室内部品冷却プログラムを格納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、処理室内の圧力が大気圧に調整された後、処理室の側壁部の少なくとも一部が開放されて処理室内及び大気が連通し、処理室内に大気の流れが形成されて処理室内部品の熱が伝達された大気が入れ替わるため、処理室内部品の周りの大気の温度の上昇が抑制されて処理室内部品の熱の伝達効率の低下が抑制される。その結果、処理室内部品を速く冷却することができる。また、処理室内部品の冷却促進のために処理室内部品の内部に冷媒通路を形成する必要がないため、基板処理装置の構成を複雑にすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
図2図1におけるチャンバの分割の様子を説明するための図であり、図2(A)はチャンバが分割された場合を示す断面図であり、図2(B)はチャンバが分割された場合を示す斜視図である。
図3図1の基板処理装置が実行する処理室内部品の冷却方法としてのステージの冷却処理のフローチャートである。
図4】本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する基板処理装置の第1の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
図5図4における連通穴が開放された場合を示す断面図である。
図6】本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する基板処理装置の第2の変形例の構成を概略的に示す斜視図である。
図7】本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する基板処理装置の第3の変形例の構成を概略的に示す斜視図である。
図8】本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する基板処理装置の第4の変形例の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。本基板処理装置10は、例えば、クラス1000〜10000のクリーンルーム内に配置され、且つ、例えば、第4.5世代以降のFPD(Flat Panel Display)用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)Gへ所望のプラズマ処理、例えば、ドライエッチング処理を施す。
【0024】
図1において、基板処理装置10は、方形のチャンバ(処理室)11と、チャンバ11内の下部に配置されたステージ12(処理室内部品、高温載置台)と、ステージ12に対向してチャンバ11内の上部に配置されたシャワーヘッド13と、チャンバ11内を排気する排気系14(排気装置)とを備える。
【0025】
チャンバ11は、上下に分割可能に構成され、下部を構成する基部11aと上部を構成する蓋部11bとを有する。蓋部11bはリフター(図示しない)によって基部11aから離間可能に構成される。また、チャンバ11は、例えば、第4.5世代以降の基板であっても余裕をもって収容可能な大きさを有し、例えば、長さは1.5m、幅は1.5m、高さは 1.2m、好ましくは、長さは1.4m、幅は1.3m、高さは1.0mである。
【0026】
ステージ12は、支柱部15によって支持された平板状部材からなり、内部にヒーター16(加熱機構)を有し、基板Gを載置する。ヒーター16は給電路17を介してヒーターユニット18に接続され、ヒーターユニット18はヒーター16への給電量を制御してヒーター16によって加熱されるステージ12の温度を調整する。また、ステージ12は該ステージ12の温度を測定する温度センサ19を有し、温度センサ19は温度センサユニット20に接続される。温度センサユニット20は温度センサ19からの信号に基づいてステージ12の温度を測定する。さらに、ステージ12には整合器21を介して高周波電源22が接続され、高周波電源22はステージ12へ高周波電力を供給する。ステージ12は、図示しない接地ラインにより接地されたシャワーヘッド13を対向電極としてステージ12及びシャワーヘッド13の間の処理空間Sへ高周波電力を印加して電界を生じさせる。この電界によって、シャワーヘッド13から供給された処理ガスをプラズマ化し、容量結合プラズマを発生させる。
【0027】
シャワーヘッド13はステージ12とほぼ同じ大きさの板状部材からなり、内部にバッファ室23と、該バッファ室23及び処理空間Sを連通する多数のガス孔24を有する。バッファ室23には外部からの処理ガス供給管25が接続され、該処理ガス供給管25がバッファ室23へ供給した処理ガスは各ガス孔24を介して処理空間Sへ導入される。
【0028】
排気系14はターボ分子ポンプ(Turbo Molecular Pump)(以下、「TMP」という。)26及びドライポンプ(Dry Pump)(以下、「DP」という。)27が直列に接続されて構成され、処理室内及びTMP26を接続する排気流路28aと、TMP26及びDP27を接続する排気流路28bと、TMP26をバイパスして処理室内及びDP27を直接接続する排気流路28cとを有する。排気流路28a,28b,28cはそれぞれを遮断可能なバルブV1,V2,V3を有する。
【0029】
図2は、図1におけるチャンバの分割の様子を説明するための図であり、図2(A)はチャンバが分割された場合を示す断面図であり、図2(B)はチャンバが分割された場合を示す斜視図である。
【0030】
図2(A)及び図2(B)において、基部11a及び蓋部11bの合わせ目11cはチャンバ11の側壁部の全周に亘って形成され、リフターによって蓋部11bが基部11aから離間する際、チャンバ11の側壁部の全周に亘って開放部11dが形成される。このとき、開放部11dを介してチャンバ11内及びクリーンルームの大気が連通する。基部11aの側壁の合わせ目11cまでの高さは全周に亘って同じであり、開放部11dの内壁側端部からステージ12までの距離は全周に亘ってほぼ同一、例えば、200mm程度である。
【0031】
リフターは蓋部11bの基部11aからの離間距離を自在に設定可能であり、開放部11dの開口代Lを任意の値に設定することができる。また、リフターは基部11aの上方から蓋部11bを完全に取り除くこともできる。
【0032】
基板処理装置10では、シャワーヘッド13から処理空間Sへ導入された処理ガスが、処理空間Sに生じた電界によって励起されてプラズマとなる。プラズマ中の陽イオンは基板Gに向かって引きこまれて基板Gに対して物理的にエッチング処理を施し、また、プラズマ中のラジカルは基板Gへ到達して基板Gに対して化学的にエッチング処理を施す。また、ドライエッチング処理中、特に化学的エッチングを促進するためにヒーター16はステージ12を、例えば、260℃まで加熱する。
【0033】
基板処理装置10の各構成部品、例えば、リフター、ヒーターユニット18、温度センサユニット20、TMP26、DP27やバルブV1,V2,V3は基板処理装置10が備える制御部(図示しない)に接続され、制御部のCPUが所定の処理に対応するプログラムに従って各構成部品の動作を制御する。
【0034】
図3は、図1の基板処理装置が実行する処理室内部品の冷却方法としてのステージの冷却処理のフローチャートである。本処理は、ステージ12の洗浄や交換等のメンテナンスを実行する前に、基板処理装置10の制御部のCPUがステージ冷却プログラム(処理室内部品冷却プログラム)に従って実行する。
【0035】
図3において、まず、ヒーターユニット18がヒーター16への給電を停止してヒーター16によるステージ12の加熱を中止し(ステップS31)、バルブV1,V2,V3が閉弁されて各排気流路28a,28b,28cを遮断することによって排気系14によるチャンバ11内の排気を中断し(ステップS32)、さらに、パージガス供給管(図示しない)、若しくは、処理ガス供給管25等からチャンバ11内へクリーンルームから大気を導入してチャンバ11内の圧力を大気圧に調整する(ステップS33)(圧力調整ステップ)。導入された大気へは高温のステージ12から熱が伝達され、ステージ12近傍の大気(図2(A)において破線で示す。)の温度が上昇する。
【0036】
次いで、リフターによって基部11aから蓋部11bを離間させてチャンバ11の側壁部の全周に亘って開放部11dを形成し、さらに、開放部11dの開口代Lを、例えば、40mm以上且つ100mm以下、好ましくは60mm以上且つ80mm以下に調整し(ステップS34)(処理室内開放ステップ)、バルブV3が開弁されてDP27が排気流路28cを介してチャンバ11内の排気を開始する(ステップS35)(気流形成ステップ)。このとき、チャンバ11内において気流(図2(A)において矢印で示す。)が形成されて高温のステージ12から熱が伝達された大気はDP27によってチャンバ11内から排出され、クリーンルームから開放部11dを介して新たな大気がチャンバ11内へ流入し、該新たな大気にステージ12から熱が伝達される。DP27によるチャンバ11内の大気の排出が継続される間、新たな大気の流入、該流入した大気へのステージ12からの熱の伝達、及び熱が伝達された大気の排出が繰り返される。すなわち、ステージ12の熱が伝達された大気が入れ替わり、ステージ12の熱が奪われ続けるので、ステージ12の温度が素早く低下する。
【0037】
次いで、温度センサユニット20が、温度センサ19によって測定されたステージ12の温度が、例えば、60℃以下になったか否かを判別する(ステップS36)(温度判定ステップ)。判別基準を60℃としたのは、60℃以下であれば作業者はステージ12に触れても火傷を負わないためである。
【0038】
ステップS36の判別の結果、ステージ12の温度が60℃以下に到達していない場合(ステップS36でNO)、ステップS35へ戻り、ステージ12の熱が伝達された大気の入れ替えを継続する。一方、ステージ12の温度が60℃以下に到達している場合(ステップS36でYES)、バルブV3を閉弁してチャンバ11内の気流を停止させ、ステージ12の熱が伝達された大気の入れ替えを停止する(ステップS37)(気流停止ステップ)。
【0039】
次いで、リフターが基部11aの上方から蓋部11bを完全に取り除き、ステージ12を含むチャンバ11内の部品をクリーンルームの大気に開放し(ステップS38)、本処理を終了する。
【0040】
なお、上述したステージの冷却処理を実行するステージ冷却プログラムは、チャンバ11内の圧力を大気圧に調整する圧力調整モジュールと、基部11aから蓋部11bを離間させる処理室内開放モジュールと、バルブV3を開弁してチャンバ11内に気流を形成する気流形成モジュールと、ステージ12の温度が60℃以下になったか否かを判別する温度判定モジュールと、バルブV3を閉弁してチャンバ11内の気流を停止させる気流停止モジュールとを有し、原則としてこの順で各モジュールは対応する処理を実行するが、例えば、処理室内開放モジュールが基部11aから蓋部11bを離間させている間に、気流形成モジュールが処理室内開放モジュールから呼び出され、バルブV3を開弁してチャンバ11内に気流を形成してもよい。
【0041】
図3のステージの冷却処理によれば、チャンバ11内の圧力が大気圧に調整された後、基部11aから蓋部11bが離間され、開放部11dが形成されてチャンバ11内及びクリーンルームの大気が連通し、チャンバ11内に気流が形成されてステージ12の熱が伝達された大気が入れ替わるため、ステージ12の周りの大気の温度の上昇が抑制されてステージ12の熱の伝達効率の低下が抑制される。その結果、ステージ12を速く冷却することができる。また、ステージ12の冷却促進のためにステージ12の内部に冷媒通路を形成する必要がないため、基板処理装置10の構成を複雑にすることがない。
【0042】
図3のステージの冷却処理では、チャンバ11の側壁部の全周に亘って開放部11dを形成する、すなわち、連続的に開放するので、チャンバ11の側壁部の全周から大気が流入し、チャンバ11内の気流が偏るのを防止することができ、もって、ステージ12が偏って冷却されるのを防止することができる。
【0043】
また、図3のステージの冷却処理では、開放部11dが形成された際の開口代Lが40mm以上且つ100mm以下であるので、流入する大気の流量を確保することができ、大気の入れ替えを促進することができ、もって、ステージ12の熱の伝達効率が低下するのを確実に防止できる。また、チャンバ11内へ流入する大気の流速の低下を防止することができ、もって、チャンバ11内における気流の形成を確実に行うことができる。さらに、開口代Lが100mm以下であれば、作業者の腕が容易に進入できないため、作業者が高温のステージ12に触れて火傷を負う危険性を軽減することができるとともに、開口代Lがさほど大きくないため、ステージ12からの輻射熱がチャンバ11の外部の部品や装置へ到達しにくくなり、チャンバ11の外部の部品や装置が熱によって故障、劣化するのを防止することができる。
【0044】
また、図3のステージの冷却処理では、チャンバ11の側壁部の全周に亘って開放部11dが形成される前にチャンバ11内の圧力が大気圧に調整されるため、開放部11dが形成された際、外部のクリーンルームとチャンバ11内とで圧力差が生じず、大気がチャンバ11内へ急激に流入することがない。その結果、チャンバ11内の底部等に堆積しているパーティクル等が巻き上げられることがなく、もって、パーティクルがステージ12へ多量に付着するのを防止することができる。
【0045】
なお、ステージ12の冷却のための大気の入れ替えの際、クリーンルームの大気中のパーティクル等が多少、チャンバ11内へ進入し、ステージ12へ付着する虞もあるが、ステージ12の冷却のための大気の入れ替えの実行後、メンテナンスの際にステージ12は洗浄又は交換されるため、ステージ12へ付着したパーティクルは除去される。したがって、メンテナンス後のドライエッチング処理においてパーティクルがステージ12から基板Gへ転写される虞はない。また、例え、パーティクルがステージ12から基板Gへ転写されたとしても、基板Gに形成される配線の幅は、例えば、最小でも3μm程度であるため、大きさが1μm以下のパーティクルが付着しても基板Gから製造されるFPDの不具合の原因とはならない。
【0046】
上述した図3のステージの冷却処理を実行する基板処理装置は、図1に示すような大型のFPD用の基板Gに所望のプラズマ処理を施す基板処理装置10に限られず、半導体デバイス用のウエハWに所望のプラズマ処理を施す基板処理装置であってもよい。
【0047】
図4は、本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する基板処理装置の第1の変形例の構成を概略的に示す断面図である。本基板処理装置30は、例えば、クラス1000〜10000のクリーンルーム内に配置され、且つ、例えば、半径が300mm〜450mmのウエハWへドライエッチング処理を施す。なお、基板処理装置30の構成は、基板処理装置10の構成と基本的に同じであり、各部の大きさや名称等が異なるのみであるため、以下、同じ機能、名称を有する構成部品の説明は省略する。
【0048】
図4において、基板処理装置30は、円筒形状のチャンバ31(処理室)と、チャンバ31内の下部に配置されたサセプタ32(処理室内部品、高温載置台)と、サセプタ32に対向してチャンバ31内の上部に配置されたシャワーヘッド13と、チャンバ31内を排気する排気系14(排気装置)とを備える。
【0049】
チャンバ31は側壁部に沿ってスライド可能なゲートバルブ33と、チャンバ31内及びクリーンルームの大気を連通させる連通穴34とを有し、ゲートバルブ33はスライドすることによって連通穴34を開閉する。
【0050】
サセプタ32は、円柱状の導電性部材からなり、表面が全て絶縁体で覆われるとともに、給電路17を介してヒーターユニット18に接続され、ヒーター16(加熱機構)を内部に有する。ヒーターユニット18はヒーター16によって加熱されるサセプタ32の温度を調整する。また、サセプタ32は温度センサ19を有し、温度センサユニット20は温度センサ19からの信号に基づいてサセプタ32の温度を測定する。さらに、サセプタ32には整合器21を介して高周波電源22が接続されており、サセプタ32へ供給された高周波電力は、サセプタ32及びシャワーヘッド13の間の処理空間Sにおいて電界を生じさせる。サセプタ32の上部にはウエハWを静電吸着する静電チャック(図示しない)が形成され、静電吸着されたウエハWの周りを囲むように環状のフォーカスリング35が配置される。
【0051】
図5は、図4における連通穴が開放された場合を示す断面図である。
【0052】
図5において、連通穴34は側壁部の一部に設けられ、開放された場合、チャンバ31内及びクリーンルームの大気が連通する。ゲートバルブ33はスライド量を自在に設定可能であり、連通穴34の開放代Lを任意の値に設定することができる。
【0053】
基板処理装置30では、ドライエッチング処理中、特に化学的エッチングを促進するためにヒーター16はサセプタ32を、例えば、260℃まで加熱する。
【0054】
また、基板処理装置30も本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する。具体的には、排気系14によるチャンバ31内の排気を中断し、さらに、チャンバ31内の圧力を大気圧に調整すると、高温のサセプタ32近傍の大気(図5において破線で示す。)の温度が上昇するが、ゲートバルブ33が連通穴34を開放して該連通穴34の開放代Lを、例えば、40mm以上且つ100mm以下、好ましくは60mm以上且つ80mm以下に調整し、チャンバ31内の排気を開始すると、チャンバ31内において気流(図5において矢印で示す。)が形成されてサセプタ32の熱が伝達された大気が入れ替わる。さらに、サセプタ32の温度が60℃以下に到達した場合、チャンバ31内の気流を停止させ、サセプタ32の熱が伝達された大気の入れ替えを停止する。
【0055】
すなわち、基板処理装置30が本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する際にも、チャンバ31内において気流が形成されてサセプタ32の熱が奪われ続けるので、サセプタ32の温度が素早く低下する。したがって、本実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実行する際、チャンバ31の側壁部が全周に亘って連続的に開放される必要はなく、少なくとも一部、例えば、連通穴34が開放されていればよい。
【0056】
但し、チャンバの側壁を全周に亘って連続的に開放しない場合、図6に示すように、方形のチャンバ36であれば、各側面にゲートバルブ37で開閉可能な連通穴38を設け、各連通穴38からチャンバ36内へ流入した大気によって形成された気流を等方的にステージに到達させるのが好ましく、また、図7に示すように、円筒形のチャンバ39であれば、側面において周方向に等間隔でゲートバルブ40によって開閉可能な連通穴41を設け、各連通穴41からチャンバ39内へ流入した大気によって形成された気流を等方的にサセプタに到達させるのが好ましい。これにより、ステージやサセプタが偏って冷却されるのを防止することができる。
【0057】
また、図6のチャンバ36や図7のチャンバ39において、各連通穴38や各連通穴41からステージやサセプタに等方的に気流が到達しない場合は、各連通穴38や各連通穴41の開放代を個別に調整して各連通穴38や各連通穴41から流入する大気の量を調整するのが好ましい。
【0058】
さらに、図8に示すように、チャンバ42を上部が開放された筐体43と、該筐体43の上部に載置される蓋44とによって構成し、該蓋44を筐体43から、例えば、40mm以上且つ100mm以下ほど離間させてチャンバ42内に気流を形成してもよい。
【0059】
以上、本発明について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法では、ステージ12やサセプタ32が冷却されたが、冷却されるチャンバ内部品はこれらに限られず、例えば、シャワーヘッドであってもよく、また、誘導結合プラズマ装置にあっては、誘導結合のためのコイルアンテナと処理室の間を隔絶する誘電体窓、また、マイクロ波を利用したプラズマ装置にあってはマイクロ波を導入する誘電体窓であってもよい。
【0060】
また、上述した基板処理装置10では、チャンバ11において蓋部11bのみが移動して基部11aから離間したが、基部11aのみが移動して蓋部11bから離間してもよく、若しくは、基部11a及び蓋部11bがともに移動して互いに離間してもよい。
【0061】
さらに、上記実施の形態に係る処理室内部品の冷却方法を実現可能な基板処理装置が実行するプラズマ処理もドライエッチング処理に限られず、例えば、成膜処理であってもよく、当該基板処理装置はプラズマ処理ではなくアニール処理等の高温処理を実行するものであってもよい。
【0062】
本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを記録した記憶媒体を、コンピュータ等に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラム、例えば、上述したステージ冷却プログラムを読み出して実行することによっても達成される。
【0063】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、プログラム及びそのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0064】
また、プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給されてもよい。
【0065】
また、コンピュータのCPUが読み出したプログラムを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0066】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0067】
上記プログラムの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【実施例】
【0068】
まず、基板処理装置10においてドライエッチング処理を実行する際、ヒーター16によってステージ12を260℃まで加熱し、その後、図3のステージの冷却処理を実行し、ステージ12が60℃まで冷却される時間を測定したところ、16時間しか必要としなかった(実施例)。なお、実施例において開放部11dの開口代Lは45mmに設定された。
【0069】
一方、実施例と同様に、基板処理装置10においてヒーター16によってステージ12を260℃まで加熱し、その後、チャンバ11内に大気を導入した後、チャンバ11内の排気を行わず、且つ基部11aから蓋部11bを離間させることなくチャンバ11を放置したところ、ステージ12が60℃まで冷却される時間を測定したところ、48時間も必要とした(比較例)。
【0070】
したがって、図3のステージの冷却処理を実行することにより、チャンバ11を放置した場合に比べて3倍の速さでステージ12を冷却できることが分かった。
【符号の説明】
【0071】
G 基板
L 開口代
開放代
S 処理空間
V3 バルブ
W ウエハ
10,30 基板処理装置
11,31,36,39,42 チャンバ
11a 基部
11b 蓋部
11d 開放部
12 ステージ
14 排気系
16 ヒーター
19 温度センサ
27 DP
32 サセプタ
33,37,40 ゲートバルブ
34,38,41 連通穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8