特許第5965686号(P5965686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965686
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20160728BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C23C14/35 C
   C23C14/35 B
   C23C14/34 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-64494(P2012-64494)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-194300(P2013-194300A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明久
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 達己
(72)【発明者】
【氏名】久保 昌司
(72)【発明者】
【氏名】石橋 暁
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−323547(JP,A)
【文献】 特開平04−365861(JP,A)
【文献】 特開2001−152332(JP,A)
【文献】 実開昭52−113858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連設される少なくとも2個の真空処理室と、上流側の真空処理室から下流側の真空処理室に成膜対象物を移送する移送手段と、下流側の真空処理室内に配置される立体形状の輪郭を有する少なくとも1個のターゲットとを備え、
ターゲットの互いに対向する2つの面をスパッタリングにより侵食されるスパッタ面とし、
移送手段が、成膜対象物の成膜面が各スパッタ面に対向する姿勢で当該成膜対象物を移送し、トンネル状の磁場を形成する磁石ユニットを、この磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が両スパッタ面を跨いでターゲットの周囲を周回するように下流側の真空処理室に設けたことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
記磁石ユニットは、処理対象物の移送方向に直交する方向でターゲットの外周を囲い、かつ、ターゲット側の磁性をかえて移送方向に隣接配置される2個以上のリング磁石を有し、各リング磁石が真空処理室を画成するチャンバ外壁に配置されることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
請求項1記載のスパッタリング装置であって、前記ターゲットが単一であるものにおいて、
前記ターゲットが、その移送方向にのびる貫通孔を有し、磁石ユニットが、ターゲットの内周面側の磁性をかえて貫通孔内に挿設された2個以上のリング磁石を有し、互いに対向するターゲットの2つの外表面をスパッタ面とすることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記磁石ユニットを移送方向に所定のストロークで往復動する駆動手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定形状の基板や長尺の基材等の成膜対象物を真空雰囲気中で移送し、その移送経路中にて、成膜対象物に対して成膜するスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネトロン方式のスパッタリング装置は、通常、成膜対象物に対向配置されるターゲットと、スパッタリングにより侵食される面をスパッタ面(つまり、ターゲットのうち成膜面に対向する面)とし、このスパッタ面の背面側に配置されてこのターゲット前方にトンネル状の漏洩磁場(磁束)を形成する磁石ユニットとを備える。そして、ターゲットに負の電位を持った直流電力または交流電力を印加してターゲットをスパッタリングする際、上記漏洩磁場にてターゲット前方で電離した電子及びスパッタリングによって生じた二次電子を捕捉してガス分子との衝突確率を高めることでプラズマ密度を高めている。このようなスパッタリング装置は、例えば処理基板の著しい温度上昇を伴うことなく成膜速度を向上できる等の利点があり、近年では、大面積のフラットパネルディスプレイの製造工程にて透明電導膜の形成等に広く利用されている。
【0003】
ここで、ターゲットとして直方体形状(平面視略矩形)のものを用いる場合を例に説明すると、磁石ユニットとしては、ターゲットの背面側に平行に配置される平面視略矩形の支持板(ヨーク)の前面中央に、その長手方向に沿って線状に中央磁石を配置すると共に、この中央磁石の周囲を囲うように支持板上面の周縁全体に亘ってターゲット側の極性が異なる周辺磁石を配置して構成したものが例えば特許文献1で知られている。
【0004】
上記従来例の磁石ユニットでは、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線がターゲットの前方でこのスパッタ面に略平行な同一平面内でレーストラック状に閉じ、これに沿ってレーストラック状のプラズマが発生すると共に、このプラズマ形状が転写されるかの如く、ターゲットのスパッタ面が侵食される。然し、上記従来例のものでは、レーストラック状の所謂コーナ部にて磁束密度が局所的に高くなり、中央磁石の延長線上に沿ったターゲットの侵食をみると、スパッタ面の周縁領域では、その中央領域と比較して侵食が局所的に進行し易くなり、これでは、ターゲット使用効率を劣化させるという不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−34244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、ターゲットに局所的な侵食が発生することが抑制できてターゲットの利用効率を高めることができるマグネトロン方式のスパッタリング装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のスパッタリング装置は、互いに連設される少なくとも2個の真空処理室と、上流側の真空処理室から下流側の真空処理室に成膜対象物を移送する移送手段と、下流側の真空処理室内に配置される立体形状の輪郭を有する少なくとも1個のターゲットとを備え、ターゲットの互いに対向する2つの面をスパッタリングにより侵食されるスパッタ面とし、移送手段が、成膜対象物の成膜面が各スパッタ面に対向する姿勢で当該成膜対象物を移送し、トンネル状の磁場を形成する磁石ユニットを、この磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が両スパッタ面を跨いでターゲットの周囲を周回するように下流側の真空処理室に設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線がスパッタ面を跨いでターゲットの周囲を周回するように磁石ユニットを真空処理室に設けた(つまり、局所的な侵食を生じるコーナ部がなくすようにした)ため、例えばターゲットに負の電位を持った電力を投入すると、スパッタ面の前方に上記線に沿う長さ方向に密度が略均等な筋状のプラズマが発生するようになる。その結果、ターゲットのスパッタ面を線状(筋状)に略均等に侵食することができ、ターゲットに局所的な侵食が発生することが抑制できる。なお、本発明にいう立体形状とは、例えば、直方体、立方体や円柱等だけでなく、円錐、角錐または截頭錐体を含み、また、中空または中実のものであってもよく、また、板状のものを含む。また、立体形状の表面のうち、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が跨ぐ面を全てスパッタ面とすることができ、その中で任意の少なくとも1面を選択し、この面に成膜対象物を対向させておけば、当該成膜対象物に成膜することが可能となる。
【0009】
本発明においては、前記磁石ユニットは、処理対象物の移送方向に直交する方向でターゲットの外周を囲い、かつ、ターゲット側の磁性をかえて移送方向に隣接配置される2個以上のリング磁石を有し、各リング磁石が真空処理室を画成するチャンバ外壁に配置されることが好ましい。これにより、ターゲットのスパッタ面を線状(筋状)に略均等に侵食する構成が実現できる。この場合、複数対のリング磁石をターゲットの移送方向に列設しておけば、例えば、成膜対象物への成膜速度を向上できて有利である。
【0010】
本発明においては、下流側の真空処理室内に、各ターゲットのスパッタ面が相互に対向するように複数のターゲットが配置される構成を採用してもよい。これによれば、移送手段に2枚の成膜対象物を保持させて夫々ターゲットに対向する位置に移送して同時に成膜したり、基板の両面に同時に成膜したりすることができてよい。なお、成膜対象物の移送方向に複数枚のターゲットを並設するようにしてもよい。
【0011】
発明においては、ターゲットが単一である場合、前記ターゲット、その移送方向にのびる貫通孔を有し、磁石ユニット、ターゲットの内周面側の磁性をかえて貫通孔内に挿設された2個以上のリング磁石を有し、互いに対向するターゲットの2つの外表面をスパッタ面としてもよい。これによれば、ターゲットの表面のうち少なくとも2面をスパッタ面とすることができ、各スパッタ面に対向するように成膜対象物を移送すれば、生産性を向上できてよい。
【0012】
更に、本発明においては、前記磁石ユニットを移送方向に所定のストロークで往復動する駆動手段を更に備えることが好ましい。これによれば、ターゲットのスパッタ面をその全面に亘って均等に侵食させることができ、ターゲットの極めて高い利用効率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るスパッタリング装置の構成を示す模式断面図、(b)は、I−I線に沿う成膜室の模式断面図。
図2】成膜室の変形例を説明する模式平面図。
図3】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係るスパッタリング装置の縦及び横の模式断面図。
図4】(a)は、本発明の第3の実施形態に係るスパッタリング装置の構成を示す模式断面図、(b)は、IV−IV線に沿う成膜室の模式断面図。
図5】本発明の第4の実施形態に係るスパッタリング装置の模式断面図。
図6図5に示すスパッタリング装置の変形例を説明する模式断面図。
図7】本発明の第5の実施形態に係るスパッタリング装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、成膜対象物を矩形のガラス基板(以下、「基板W1」という)とし、この基板Wの二枚を同時に移送し、両基板Wの片面に成膜する場合を例に本発明の第1の実施形態に係るマグネトロン方式のスパッタリング装置を説明する。
【0015】
図1(a)及び(b)を参照して、SM1は、第1の実施形態に係るスパッタリング装置であり、スパッタリング装置SM1はインライン式に構成されたものであり、例えばクライオポンプ等の図外の真空ポンプで真空引きされる、成膜室(下流側の真空処理室)1aを画成する直方体形状の中央の真空チャンバ1を備える。この真空チャンバ1の上流側(図1中、左側)及び下流側(図1中、右側)には、図外の真空ポンプにより夫々真空引きされる、上流側の真空補助室(上流側の真空処理室)2aを画成する補助真空チャンバ2と、下流側の真空補助室3aを画成する補助真空チャンバ3とがゲートバルブ(隔絶手段)GVを介して夫々連設されている。以下においては、真空チャンバ1及び両補助真空チャンバ2、3の連設した方向をX軸方向(図1(a)中、左右方向)、この連設方向と直交する方向をY軸方向(図1(a)中、上下方向)として説明する。
【0016】
成膜室1aと、上流側及び下流側の両真空補助室2a,3aとの底部には、X軸方向に線状にのびるように一対のレール部材4R,4Lが設けられている。レール部材4R,4Lには、図示省略の駆動源を有するステージ5がスライド自在に係合し、ステージ5には、後述する2枚のターゲットに夫々対向した姿勢で2枚の基板Wを保持する基板ホルダ51が立設されている。第1の実施形態では、レール部材4R,4L、ステージ5及び基板ホルダ51が移送手段を構成する。そして、上流側の真空補助室2aにて2枚の基板Wを基板ホルダ51に夫々保持させ、この上流側の真空補助室2aを所定圧力まで真空引きした後、ゲートバルブGVの開状態でステージ5を移動させると、当該ステージ5がゲートバルブGVを設けた空間を跨いで、所定圧力まで真空引きされた成膜室1aに移送され、両基板Wが、成膜室1a内に配置したターゲットに夫々対向する位置に到達する。成膜後、ゲートバルブGVの開状態でステージ5を移動させると、ステージ5がゲートバルブGVを設けた空間を跨いで下流側の真空補助室3aに移動し、下流側の真空補助室3aを大気開放した後、成膜済みの基板Wが回収される。
【0017】
成膜室1aを画成する真空チャンバ1のY軸方向の両側壁には、マグネトロンスパッタカソードCが設けられている。マグネトロンスパッタカソードCは、成膜室1a内を臨むターゲットTを備える。ターゲットTは、Al合金、MoやITOなど基板W上に成膜しようとする薄膜の組成に応じて公知の方法で作製されている。そして、ターゲットTのうち基板Wとの背向面に、スパッタリングによる成膜中、ターゲットTを冷却するバッキングプレートBpがインジウムやスズなどのボンディング材を介して接合され、この状態で、図示省略の絶縁体を介して設けられる。ターゲットTには図示省略のスパッタ電源からの出力端が接続され、ターゲット種に応じて負の電位を持った直流電力または高周波電力が投入されるようになっている。ターゲットTのうち基板Wとの対向面たるスパッタ面Tsの面積は、基板Wの面積より大きく設定されている。
【0018】
なお、公知のスパッタリング装置と同様、特に図示して説明しないが、成膜室1a内でターゲットTのスパッタ面Tsの周囲には、グランド接地されたアノードとしての役割を果たすシールドや防着板が装着されている。また、成膜室1aには、ガス導入手段が設けられ、アルゴン等の希ガスからなるスパッタガスや反応性スパッタリングの際に用いる反応ガスが成膜室1a内に一定の流量で導入できる。反応ガスとしては、基板W表面に成膜しようする薄膜の組成に応じて選択され、酸素、窒素、炭素、水素を含むガス、オゾン、水若しくは過酸化水素またはこれらの混合ガスなどが用いられる。
【0019】
また、マグネトロンスパッタカソードCは、Y軸方向で真空チャンバ1の周囲を周回するように夫々配置された一対のリング磁石Mg1、Mg2で構成される磁石ユニットMを備える。リング磁石Mg1、Mg2は、磁石の同磁化に換算したときの体積が一致しており、また、成膜室1a側の極性をかえてかつX軸方向に所定間隔で隣接配置される。これにより、両ターゲットTのY軸方向で、ターゲットTの基板Wとの対向面たるスパッタ面Tsの基板W側に、釣り合ったトンネル状の磁場(磁束)が形成される(図示せず)。そして、磁場の垂直成分がゼロとなる位置(トンネル状の磁束の各頂部)を通る線MfがターゲットTをY軸方向でその全長に亘って跨ぐようになる(図1(a)参照)。
【0020】
両リング磁石Mg1、Mg2は、板状の保持部材Mhで夫々保持され、保持部材Mhには、図示省略のナット部材が設けられており、X軸方向にのびる、モータ61に連結された送りねじ6が螺合している。この場合、モータ61付きの送りねじ6が駆動手段を構成する。そして、モータ61で送りねじ6を回転駆動すると、この送りねじ6の回転方向に応じて磁石ユニットMがX軸方向に往復動するようになる。なお、往復動のストロークは、磁場の垂直成分がゼロとなる位置がターゲットTのX軸方向でその全長に亘って跨ぐように設定される。
【0021】
上記第1の実施形態では、一対のリング磁石Mg1,Mg2で磁石ユニットMを構成する場合を例に説明するが、成膜室1a側の極性をかえて3個のリング磁石を列設して磁石ユニットを構成してもよく、また、複数対の上記磁石ユニットMをX軸方向に所定間隔で設けるようにしてもよい。この場合、複数対の上記磁石ユニットは同期して往復動するように構成することが好ましい。
【0022】
上記第1の実施形態によれば、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線Mfがスパッタ面TsをY軸方向に線状に跨いでターゲットTの周囲を周回するようになるため、ターゲットTに負の電位を持った電力や交流電力を投入すると、スパッタ面Tsの基板W側に、密度が略均等な筋状のプラズマが発生するようになる。その結果、スパッタ面Tsが線状(筋状)に略均等に侵食されるようになり、ターゲットTに局所的な侵食が発生するが抑制できる。そして、駆動手段6,61により磁石ユニットMをターゲットTの長手方向全長に亘って往復度すれば、ターゲットTのスパッタ面Tsをその全面に亘って均等に侵食させることができ、ターゲットTの極めて高い利用効率を達成することができる。なお、ターゲットの形状は上記のものに限定されるものではなく、例えば、平面視円形のものであってもよい。
【0023】
上記第1の実施形態では、成膜室1aを1個としたものを例に説明したが、図2に示すように、基板Wの移送方向にゲートバルブGVを介して複数個の成膜室1aを連設するようにしたものであってもよい。
【0024】
次に、図3(a)及び(b)を参照して、第2の実施形態のスパッタリング装置SM2を説明する。以下においては、上記第1の実施形態と同一の部材または要素のものは、同一の符号が用いられ、同一の形態を有するものとする。第2の実施形態のスパッタリング装置SM2は、長尺の基材Wを一定の速度で移送しながら、当該基材Wの片面に連続して成膜する巻取式のものである。スパッタリング装置SM2は、真空ポンプで真空引きされる、成膜室1aを画成するX軸方向に長手の直方体形状の中央の真空チャンバ(下流側の真空チャンバ)1を備える。この真空チャンバ1の上流側(図1中、左側)及び下流側(図1中、右側)には、上流側の真空補助室2aを画成する補助真空チャンバ2と、下流側の真空補助室3aを画成する補助真空チャンバ3とが、基材W2の通過を許容するスリットSを備えた仕切板Spを介して夫々連設されている。成膜室1aと、両真空補助室2a,3aとを単一の真空チャンバに内に形成するようにしてもよい。
【0025】
上流側の真空補助室2aには、基材Wが夫々巻回された繰出リール7u,7dが上下方向に所定間隔を存して設けられ、繰出リール7u,7dに夫々付設した図示省略のモータの回転駆動により一定の速度で基材Wが繰り出されるようになっている。他方、下流側の真空補助室3aには、基材Wを夫々巻き取る巻取ローラ8u,8dが上下方向に所定間隔を存して設けられ、巻取ローラ8u,8dに夫々付設した図示省略のモータの回転駆動により一定の速度で基材Wが巻き取られるようになっている。
【0026】
成膜室1aには、当該成膜室1a内で繰出リール7u,7dから夫々繰り出された基材WがターゲットTのスパッタ面TsをそのX軸方向全長に亘って平行に移送されるようにガイドするガイドローラGrが設けられている。そして、成膜室1aを画成する真空チャンバ1のY軸方向の上壁と下壁に4個のマグネトロンスパッタカソードCが設けられている。マグネトロンスパッタカソードCは、上記第1の実施形態と同一の構成を有する。これにより、成膜室1aを連続して移送される基材Wに対して、スパッタ面Tsをその全面に亘って均等に侵食しながら、成膜することができる。
【0027】
なお、上記第1及び第2の両実施形態では、成膜室1aを画成する真空チャンバ1の壁面に板状のターゲットTを配置したものを例に説明したが、これに限定されるものではない。図4(a)及び(b)を参照して説明すれば、第3の実施形態に係るスパッタリング装置SM3は、他の形態のスパッタリングカソードCを備える。スパッタリングカソードCは、成膜室1a内に配置される直方体形状のターゲットTを備え、ターゲットTには、X軸方向たるその長手方向にのびる、断面視矩形の貫通孔Thが形成されている。そして、貫通孔Th内には磁石ユニットMが挿設されている。
【0028】
磁石ユニットMは、ターゲットTの内周面の輪郭より小さい輪郭を有し、磁石の吸着力を増幅する磁性材料製の支持棒(ヨーク)Mrを備える。支持棒Mrには、ターゲットTの内周面と隙間を存してこの内周面と同心になるように複数対のリング磁石Mg1,Mg2が外装されている。対をなす両リング磁石Mg1,Mg2は、磁石の同磁化に換算したときの体積が一致しており、また、ターゲッTの内周面側の極性かえてかつターゲットTのX軸方向に所定間隔を存するように隣接配置される。これにより、ターゲットTのX軸方向の前面及び後面を除く、ターゲットの4つの外表面(外周面)の上方(前方)で釣り合ったトンネル状の磁場(磁束)が形成される。そして、磁場の垂直成分がゼロとなる位置(トンネル状の磁束の各頂部)を通る線がターゲットTの長手方向に直交する方向で4つの外表面を夫々跨いでターゲットTの周囲を周回するようになる。そして、各基材Wに互いに対向する2つの面をスパッタ面Tsとしている。なお、真空チャンバ1に上記マグネトロンカソードユニットCを設置した場合には、比較的面積の小さい面の周囲に所定の隙間(例えば、2〜3mmの範囲)を存して、図示省略のシールド部材が配置され、スパッタリング時にはスパッタリングされないようになっている。
【0029】
次に、図5を参照して、第4の実施形態のスパッタリング装置SM4を説明する。第4の実施形態のスパッタリング装置SM4は、所謂クラスターツール式に構成されたものであり、例えばクライオポンプ等の図外の真空ポンプで真空引きされる、搬送ロボットRを備えた中央の搬送室(下流側の真空処理室)11aを画成する真空チャンバ11と、搬送室11aの周囲にゲートバルブGVを介して配置された少なくとも1個の成膜室12aとを備える。なお、他の真空処理室は、ロードロック室や加熱室等、基板への処理に応じて適宜選択されるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0030】
成膜室12aを画成する真空チャンバ12の底面には、搬送ロボットRにより搬送される基板Wが位置決め保持されるステージ9が設けられ、このステージ9に対向させて、真空チャンバ12の上壁には、マグネトロンスパッタカソードCが設けられている。そして、磁石ユニットMを構成する一対のリング磁石Mg1、Mg2が、X軸方向で真空チャンバ12の周囲を周回するように夫々配置される。
【0031】
なお、上記第4の実施形態では、成膜室12aに磁石ユニットMを設けるものを例に説明したが、これに限定されるものではない。図6に示すように、搬送室11aから成膜室12aに搬送された基板Wが、その姿勢を90°かえ、この状態で成膜するような場合には、成膜室12aのうち、搬送室11a側にターゲットTを設けると共に、磁石ユニットMの両リング磁石Mg3を搬送室11aに設けておいてもよい。これによれば、単一の磁石ユニットMで複数の成膜室12aに夫々設けたターゲットTのスパッタ面Tsの基板W側に、密度が略均等な筋状のプラズマが発生するようにできる。
【0032】
次に、図7を参照して、第5の実施形態に係るスパッタリング装置SM5は、次のように構成されている。即ち、第5の実施形態のスパッタリング装置SM5は、成膜室100aを画成する筒状の真空チャンバ100を備え、その内部には多角柱状の基板ホルダ17が同心に挿設されている。そして、基板ホルダ17の外周面には、複数枚の基板Wが取付られるようになっている。また、真空チャンバ100の周方向に所定の間隔(例えば、90°間隔)を存してマグネトロンスパッタカソードCが設けられている。マグネトロンスパッタカソードCは、処理室16aを臨む、真空チャンバ100の長手方向(高さ方向)に長尺のターゲットTと、基板ホルダ17の長手方向(高さ方向)に直交する方向で各ターゲットTの外周を囲うように真空チャンバ100外側に配置され、かつ、基板ホルダ17側の磁性をかえて長手方向に隣接配置される少なくとも一対のリング磁石Mg1、Mg2で構成される磁石ユニットMを有する。これにより、各ターゲットTのうち基板Wとの対向面がスパッタ面Tsのうち長手方向と直交する方向で磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が跨いで周回するようになり、ターゲットTに局所的な侵食が発生するが抑制できる。
【符号の説明】
【0033】
SM1〜SM5…スパッタリング装置、C〜C…マグネトロンスパッタカソード、T〜T…ターゲット、M〜M…磁石ユニット、Mg1〜Mg3…リング磁石、6…送りねじ(駆動手段)、61…モータ(駆動手段)、W、W…成膜対象物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7