【文献】
松尾康孝 他,パラメータ最適化によるデジタルシネマから超高精細映像への超解像法の検討,2012年電子情報通信学会総合大会講演論文集 情報・システム2,電子情報通信学会,2012年 3月,D-11-19,p.19
【文献】
松尾康孝 他,デジタルシネマから超高精細映像への画像超解像法の一検討,2011年映像情報メディア学会冬季大会講演予稿集,映像情報メディア学会,2011年11月,1-4,p.1
【文献】
松尾康孝 他,ウェーブレット超解像に基づく超高精細映像符号化の検討,2010年映像情報メディア学会年次大会講演予稿集,映像情報メディア学会,2010年 8月,14-10,pp.1-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の非特許文献1における超解像においては、雑音成分の多い画像を超解像すると、良好な画質の画像が得られないことがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、雑音成分の多い画像を処理したときに、良好な画質の画像を得ることが出来る画像符号化装置、画像復号装置、超解像装置およびそれらのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、入力画像を縮小し、縮小画像を生成する画像縮小部と、前記縮小画像を符号化する符号化部と、前記符号化した縮小画像を復号する復号部と、前記復号した縮小画像の各画素値を、雑音成分と信号成分とに分離して、該信号成分からなる第1の画像と、該雑音成分からなる第2の画像とを生成する雑音・信号分離部と、前記第1の画像を超解像して、第1の超解像画像を生成する信号成分超解像部と、前記第2の画像を、前記信号成分超解像部とは異なる方法で超解像して、第2の超解像画像を生成する雑音成分超解像部と、前記第1の超解像画像と、前記第2の超解像画像とを加算して、前記復号した縮小画像の超解像画像を得る加算部と、前記復号した縮小画像の超解像画像と前記入力画像とを比較して、前記信号成分超解像部と前記雑音成分超解像部との少なくとも一方の超解像に関する超解像パラメータを決定する超解像パラメータ決定部と、前記符号化した縮小画像と、前記決定した超解像パラメータとを含む符号化データを生成する符号化データ生成部とを具備することを特徴とする画像符号化装置である。
【0007】
(2)また、本発明の他の態様は、(1)に記載の画像符号化装置であって、前記信号成分超解像部と前記雑音成分超解像部との少なくとも一方は、前記超解像を生成する際に、バイラテラルフィルタによるフィルタリングを行い、前記超解像パラメータは、前記バイラテラルフィルタの分散値を含むことを特徴とする。
【0008】
(3)また、本発明の他の態様は、(1)に記載の画像符号化装置であって、前記雑音・信号分離部は、前記復号した縮小画像を、時空間ウェーブレット一階分解する時空間ウェーブレット一階分解部と、前記時空間ウェーブレット一階分解の結果のうち、時空間高周波成分を参照して、雑音を含む画素を判定し、前記時空間ウェーブレット一階分解の結果から雑音成分を分離する雑音成分分離部と、前記分離した雑音成分を、ウェーブレット一階再構成して、前記第2の画像を生成する雑音成分再構成部と、前記雑音成分分離部が前記雑音成分を分離した残りの成分である信号成分を、ウェーブレット一階再構成して、前記第1の画像を生成する信号成分再構成部とを具備することを特徴とする。
【0009】
(4)また、本発明の他の態様は、(1)に記載の画像符号化装置であって、前記雑音成分超解像部は、垂直方向および水平方向に前記縮小画像の2倍の画素数を有する画像をウェーブレット一階分解した際の低周波成分の領域と、水平高周波成分の領域と、垂直高周波成分の領域と、対角高周波成分の領域とに、それぞれ前記第2の画像を配置する雑音成分配置部と、前記雑音成分配置部による配置結果を、ウェーブレット一階再構成して、前記第2の超解像画像を生成するウェーブレット一階再構成部とを具備することを特徴とする。
【0010】
(5)また、本発明の他の態様は、符号化データから符号化した画像と超解像パラメータとを抽出するデータ分離部と、前記符号化した画像を復号し、縮小画像を生成する復号部と、前記縮小画像の各画素値を、雑音成分と信号成分とに分離して、該信号成分からなる第1の画像と、該雑音成分からなる第2の画像とを生成する雑音・信号分離部と、前記第1の画像を超解像して、第1の超解像画像を生成する信号成分超解像部と、前記第2の画像を、前記信号成分超解像部とは異なる方法で超解像して、第2の超解像画像を生成する雑音成分超解像部と、前記第1の超解像画像と、前記第2の超解像画像とを加算して、前記縮小画像の超解像画像を得る加算部とを具備し、前記信号成分超解像部と前記雑音成分超解像部とのうち、少なくとも一方は、前記超解像パラメータを用いて超解像することを特徴とする画像復号装置である。
【0011】
(6)また、本発明の他の態様は、(5)に記載の画像復号装置であって、前記信号成分超解像部と前記雑音成分超解像部との少なくとも一方は、前記超解像を生成する際に、バイラテラルフィルタによるフィルタリングを行い、前記超解像パラメータは、前記バイラテラルフィルタの分散値を含むことを特徴とする。
【0012】
(7)また、本発明の他の態様は、(5)に記載の画像復号装置であって、前記雑音・信号分離部は、前記復号した縮小画像を、時空間ウェーブレット一階分解する時空間ウェーブレット一階分解部と、前記時空間ウェーブレット一階分解の結果のうち、時空間高周波成分を参照して、雑音を含む画素を判定し、前記時空間ウェーブレット一階分解の結果から雑音成分を分離する雑音成分分離部と、前記分離した雑音成分を、ウェーブレット一階再構成して、前記第2の画像を生成する雑音成分再構成部と、前記雑音成分分離部が前記雑音成分を分離した残りの成分である信号成分を、ウェーブレット一階再構成して、前記第1の画像を生成する信号成分再構成部とを具備することを特徴とする。
【0013】
(8)また、本発明の他の態様は、(5)に記載の画像復号装置であって、前記雑音成分超解像部は、垂直方向および水平方向に前記縮小画像の2倍の画素数を有する画像をウェーブレット一階分解した際の低周波成分の領域と、水平高周波成分の領域と、垂直高周波成分の領域と、対角高周波成分の領域とに、それぞれ前記第2の画像を配置する雑音成分配置部と、前記雑音成分配置部による配置結果を、ウェーブレット一階再構成して、前記第2の超解像画像を生成するウェーブレット一階再構成部とを具備することを特徴とする。
【0014】
(9)また、本発明の他の態様は、コンピュータを、(1)から(4)のいずれかの画像符号化装置として機能させるためのプログラムである。
【0015】
(10)また、本発明の他の態様は、コンピュータを、(5)から(8)のいずれかに記載の画像復号装置として機能させるためのプログラムである。
【0016】
(a1)また、本発明の他の態様は、入力画像の各画素値を、雑音成分と信号成分とに分離して、該信号成分からなる第1の画像と、該雑音成分からなる第2の画像とを生成する雑音・信号分離部と、前記第1の画像を超解像して、第1の超解像画像を生成する信号成分超解像部と、前記第2の画像を、前記信号成分超解像部とは異なる方法で超解像して、第2の超解像画像を生成する雑音成分超解像部と、前記第1の超解像画像と、前記第2の超解像画像とを加算して、前記入力画像の超解像画像を得る加算部とを具備することを特徴とする超解像装置である。
【0017】
(a2)また、本発明の他の態様は、(a1)に記載の超解像装置であって、前記雑音・信号分離部は、前記入力画像を、時空間ウェーブレット一階分解する時空間ウェーブレット一階分解部と、前記時空間ウェーブレット一階分解の結果のうち、時空間高周波成分を参照して、雑音を含む画素を判定し、前記時空間ウェーブレット一階分解の結果から雑音成分を分離する雑音成分分離部と、前記分離した雑音成分を、ウェーブレット一階再構成して、前記第2の画像を生成する雑音成分再構成部と、前記雑音成分分離部が前記雑音成分を分離した残りの成分である信号成分を、ウェーブレット一階再構成して、前記第1の画像を生成する信号成分再構成部とを具備することを特徴とする。
【0018】
(a3)また、本発明の他の態様は、(a1)に記載の超解像装置であって、前記雑音成分超解像部は、垂直方向および水平方向に前記入力画像の2倍の画素数を有する画像をウェーブレット一階分解した際の低周波成分の領域と、水平高周波成分の領域と、垂直高周波成分の領域と、対角高周波成分の領域とに、それぞれ前記第2の画像を配置する配置部と、前記配置部による配置結果を、ウェーブレット一階再構成して、前記第2の超解像画像を生成するウェーブレット一階再構成部とを具備することを特徴とする。
【0019】
(a4)また、本発明の他の態様は、(a3)に記載の超解像装置であって、前記雑音成分超解像部は、前記再構成部がウェーブレット一階再構成して得られた画像の画素値を、前記入力画像の雑音レベルで正規化して、前記第2の超解像画像とする画素値正規化部を具備することを特徴とする。
【0020】
(a5)また、本発明の他の態様は、(a3)に記載の超解像装置であって、前記雑音成分超解像部は、前記再構成部がウェーブレット一階再構成して得られた画像に対して、画素値が0である画素の画素値を、前記雑音レベルに応じた大きさの乱数値に置き換えたものを、前記第2の超解像画像とする白色雑音印加部を具備することを特徴とする。
【0021】
(b1)また、本発明の他の態様は、垂直方向および水平方向に入力画像の2倍の画素数を有する画像をウェーブレット一階分解した際の低周波成分の領域と、水平高周波成分の領域と、垂直高周波成分の領域と、対角高周波成分の領域とに、それぞれ前記入力画像を配置する配置部と、前記配置部による配置結果を、ウェーブレット一階再構成して、前記入力画像の超解像画像を生成するウェーブレット一階再構成部とを具備することを特徴とする超解像装置である。
【0022】
(b2)また、本発明の他の態様は、上述の超解像装置であって、前記入力画像の雑音レベルを抽出する雑音レベル抽出部と、前記超解像画像の画素値を、前記雑音レベルで正規化する画素値正規化部とを具備することを特徴とする。
【0023】
(b3)また、本発明の他の態様は、上述の超解像装置であって、前記入力画像を、時空間ウェーブレット一階分解して、時空間高周波成分を算出する時空間ウェーブレット一階分解部を具備し、前記雑音レベル抽出部は、前記時空間高周波成分における孤立点を抽出し、該孤立点の要素値を用いて、前記雑音レベルを算出することを特徴とする。
【0024】
(b4)また、本発明の他の態様は、上述のいずれかの超解像装置であって、前記ウェーブレット一階再構成部が生成した超解像画像を構成する画素であって、画素値が0である画素の画素値を、前記雑音レベルに応じた大きさの乱数値とする白色雑音印加部を具備することを特徴とする。
【0025】
(b5)また、本発明の他の態様は、コンピュータを、(a1)から(a5)、(b1)から(b4)のいずれかに記載の超解像装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、雑音成分の多い画像を超解像したときに、良好な画質の超解像画像を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態による画像伝送システム10の構成を示す概略ブロック図である。
図1に示すように、画像伝送システム10は、画像符号化装置100、ネットワーク200、画像復号装置300、画像表示装置400を含んで構成される。画像符号化装置100は、入力動画像を符号化し、符号化データを生成する。ネットワーク200は、画像符号化装置100と画像復号装置300とを通信可能に接続するパケット交換ネットワークなどのネットワークである。なお、ネットワーク200は、地上デジタル放送などの放送波を用いたネットワークであってもよい。ネットワーク200は、画像符号化装置100が生成した符号化データを、画像復号装置300に伝送する。画像復号装置300は、ネットワーク200が伝送した符号化データを復号して、復号動画像を生成する。画像表示装置400は、画像復号装置300が生成した復号動画像を表示する。
【0029】
図2は、画像符号化装置100の構成を示す概略ブロック図である。画像符号化装置100は、画像縮小部101、符号化部102、符号化データ生成部103、復号部104、雑音・信号分離部105、信号成分超解像部106、雑音成分超解像部107、加算部108、超解像パラメータ判定部109を含んで構成される。画像縮小部101は、入力動画像の各フレームを縮小して、縮小動画像を生成する。該縮小の縮小率は、例えば、水平方向、垂直方向ともに1/2とする。すなわち、縮小動画像の各フレームにおける水平方向および垂直方向の画素数は、入力動画像のそれの半分である。
【0030】
符号化部102は、画像縮小部101が生成した縮小動画像を符号化し、符号化画像データを生成する。符号化部102における符号化には、MPEG(Moving Picture Experts Group)−4 AVC(Advanced Video Coding)/H.264や、HEVC(High Efficiency Video Coding)などの既存および標準化作業中の動画像符号化方式を用いることができる。
【0031】
符号化データ生成部103は、符号化部102が生成した符号化画像データと、超解像パラメータ判定部109が決定した超解像パラメータと、雑音・信号分離部105が生成した雑音レベルL
Nとを含む符号化データを生成する。符号化データ生成部103は、例えば、符号化画像データのフォーマットにおける未使用領域に、雑音レベルL
N、超解像パラメータを格納することで、符号化データを生成する。本実施形態における超解像パラメータは、信号成分超解像部106、雑音成分超解像部107の各々における超解像に関するパラメータであるが、その詳細は後述する。なお、本実施形態における超解像パラメータは、信号成分超解像部106、雑音成分超解像部107の各々における超解像に関するパラメータであるが、信号成分超解像部106、雑音成分超解像部107のうちのいずれか一方の超解像に関するパラメータのみであってもよい(他方を固定値とする場合)。
【0032】
復号部104は、符号化部102が生成した符号化画像データを復号し、復号縮小動画像を生成する。復号部104における復号は、符号化部102における動画像符号化方式に対応した方法で行う。なお、復号縮小動画は、画像縮小部101が生成した縮小動画像を符号化して復号したものであるので、その各フレームにおける水平方向および垂直方向の画素数は、縮小動画像と同一である。
【0033】
雑音・信号分離部105は、復号縮小動画像の各画素値を、信号成分と雑音成分とに分離し、信号成分からなる信号成分画像(第1の画像)と、雑音成分からなる雑音成分画像(第2の画像)とを生成する。なお、雑音・信号分離部105は、この分離処理を行う際に、復号縮小動画像に含まれる雑音の大きさを示す雑音レベルL
Nを検出し、該雑音レベルを用いて、分離処理を行う。また、雑音・信号分離部105は、この雑音レベルL
Nを、符号化データ生成部103に入力する。
【0034】
信号成分超解像部106は、信号成分画像を超解像して、信号成分超解像画像(第1の超解像画像)を生成する。信号成分超解像部106は、さまざまな値の超解像パラメータを用いて、この超解像を行い、各々の値に対応した信号成分超解像画像を生成する。なお、本実施形態では、信号成分超解像部106は、画像が自己相似性を有することを前提とし、自己相似性を利用した超解像方法を用いる。
【0035】
雑音成分超解像部107は、雑音成分画像を、信号成分超解像部106とは異なる方法で超解像して、雑音成分超解像画像を生成する。雑音成分超解像部107において信号成分超解像部106とは異なる方法を用いるのは、雑音成分画像は自己相似性が低いため、信号成分超解像部106の超解像方法を適用しても良好な結果が得られないためである。なお、雑音成分超解像部107は、この超解像の際に、雑音・信号分離部105が検出した雑音レベルL
Nを用いる。また、雑音成分超解像部107も、さまざまな値の超解像パラメータを用いて、この超解像を行い、各々の値に対応した雑音成分超解像画像を生成する。なお、超解像パラメータについては、後述する。
【0036】
加算部108は、信号成分超解像部106が生成した信号成分超解像画像と、雑音成分超解像部107が生成した雑音成分超解像画像とを加算する。ここで画像と画像の加算とは、これらの画像の同じ位置の画素の画素値同士を加算した画像を生成することを示す。なお、加算部108は、信号成分超解像部106が生成した、さまざまな値の超解像パラメータに対応した信号成分超解像画像と、雑音成分超解像部107が生成した、さまざまな値の超解像パラメータに対応した雑音成分超解像画像との加算を、全ての組み合わせについて行う。例えば、信号成分超解像画像が27枚あり、雑音成分超解像画像が3枚あるときは、これらの組み合わせは、27×3=81通りあるので、加算部108は、81通りの加算を行う。
【0037】
超解像パラメータ判定部109(超解像パラメータ決定部)は、加算部108が加算して生成した画像各々を、入力動画像の該当フレームと比較し、入力動画像の該当フレームに最も近い画像を選択する。そして、超解像パラメータ判定部109は、選択した画像の生成に用いられた超解像パラメータを、符号化データ生成部103に通知する。例えば、選択した画像が、超解像パラメータSg1を用いて信号成分超解像部106が生成した信号成分超解像画像と、超解像パラメータNs1を用いて雑音成分超解像部107が生成した雑音成分超解像画像とを、加算部108が加算したものであるときは、超解像パラメータ判定部109は、超解像パラメータSg1と、超解像パラメータNs1とを符号化データ生成部103に通知する。
【0038】
超解像パラメータ判定部109は、入力動画像の該当フレームに最も近い画像を選択する際には、例えば、SAD(Sum of Absolute Difference)を用いる。具体的には、超解像パラメータ判定部109は、加算部108が加算して生成した画像各々について、入力動画像の該当フレームとのSADを算出し、SADが最も小さい画像を、該フレームに最も近い画像として選択する。なお、SADとは、対応する画素同士の画素値の差分の絶対値を、画像全体に亘って算出したものの合計値であり、下記の式(1)により算出される。なお、式(1)において、vi(x,y)は、入力動画像の該当フレームの座標(x,y)の画素値であり、sr(x,y)は、加算部108が生成した画像の座標(x,y)の画素値である。
【0040】
図3は、画像縮小部101の構成を示す概略ブロック図である。画像縮小部101は、ウェーブレット一階分解部110と、低周波成分抽出部111とを含んで構成される。ウェーブレット一階分解部110は、入力動画像の各フレームを離散ウェーブレット一階分解する。この離散ウェーブレット一階分解により、各フレームの低周波成分LL、水平高周波成分LH、垂直高周波成分HL、対角高周波成分HHが得られる。なお、この離散ウェーブレット一階分解に用いる基底には、Haarや、Daubechiesなど、いずれを用いてもよい。
【0041】
低周波成分抽出部111は、ウェーブレット一階分解部110の離散ウェーブレット一階分解により得られた各フレームの低周波成分LL、水平高周波成分LH、垂直高周波成分HL、対角高周波成分HHから、低周波成分LLを抽出する。低周波成分抽出部111は、入力動画像の各フレームに対応する低周波成分LLをフレーム順に出力することで、縮小動画像とする。このように、縮小動画像の各フレームは、入力動画像の各フレームの低周波成分LLであるので、前述したように、縮小動画像の各フレームにおける水平方向および垂直方向の画素数は、入力動画像のそれの半分である。
【0042】
図4は、低周波成分抽出部111の動作を説明する図である。
図4に示すようにウェーブレット一階分解部110により、入力動画像の各フレームは、低周波成分LL、水平高周波成分LH、垂直高周波成分HL、対角高周波成分HHに分解される。低周波成分抽出部111は、これらのうち、
図4において網掛けされている低周波成分LLを抽出する。
【0043】
図5は、雑音・信号分離部105の構成を示す概略ブロック図である。
図5に示すように雑音・信号分離部105は、時空間ウェーブレット一階分解部150、雑音レベル抽出部151、マスク画像生成部152、雑音成分分離部153、雑音成分再構成部154、信号成分再構成部155を含んで構成される。時空間ウェーブレット一階分解部150は、復号縮小画像を、所定のフレーム数毎に離散時空間ウェーブレット一階分解する。時空間ウェーブレット一階分解部150は、この離散時空間ウェーブレット一階分解により、低周波成分LLL、時間高周波成分LLH、水平高周波成分LHL、垂直高周波成分HLL、時間水平高周波成分LHH、時間垂直高周波成分HLH、水平垂直高周波成分HHL、対角高周波成分HHH(時空間高周波成分)を生成する。
【0044】
このとき、時空間ウェーブレット一階分解部150は、デシメーション(間引き)無しで、時空間ウェーブレット一階分解する。したがって、対角高周波成分HHHなどの各成分は、復号縮小画像の1フレームの画素数と、離散時空間ウェーブレット一階分解する際の所定のフレーム数とを乗算した数の要素からなる。なお、この離散時空間ウェーブレット一階分解に用いる基底には、Haarや、Daubechiesなど、いずれを用いてもよい。
【0045】
図6は、時空間ウェーブレット一階分解部150による演算結果を説明する図である。
図6において、横軸はx軸、縦軸はy軸である。x軸は右が正の方向であり、y軸は下が正の方向である。また、x軸およびy軸に直交する軸は時間軸であり、
図6の右上方向が正の向きである。時空間ウェーブレット一階分解部150による演算結果である、低周波成分LLL、時間高周波成分LLH、水平高周波成分LHL、垂直高周波成分HLL、時間水平高周波成分LHH、時間垂直高周波成分HLH、水平垂直高周波成分HHL、対角高周波成分HHHは、図のような関係である。すなわち、低周波成分LLLの右側には水平高周波成分LHLがあり、低周波成分LLLの下側には垂直高周波成分HLLがあり、低周波成分LLLの右下側には水平垂直高周波成分HHLがある。また、水平高周波成分LHLの正の時間方向には時間水平高周波成分LHHがあり、低周波成分LLLの正の時間方向には時間高周波成分LLHがあり、水平垂直高周波成分HHLの正の時間方向には対角高周波成分HHHがある。なお、垂直高周波成分HLLの正の時間方向には時間垂直高周波成分HLHがあるが、
図6では、隠れて見えないため、図示されていない。
【0046】
図5に戻り、雑音レベル抽出部151は、時空間ウェーブレット一階分解部150により得られた対角高周波成分HHHにおける孤立点を抽出し、抽出した孤立点の要素値の絶対値の中央値を雑音レベルL
Nとする。なお、ここで孤立点とは、該要素が非「0」で、周囲の要素が「0」となっている要素である。例えば、周囲の要素を、x軸方向(左右)に隣接する要素、y軸方向(上下)に隣接する要素、時間軸方向に隣接する要素とし、これらの全てが「0」となっており、当該要素が0以外の値を持つ場合、この当該要素を孤立点とする。なお、「周囲」の定義に、x軸方向(左右)に隣接する前後のフレームの要素や、当該点の右上、右下、左上、左下の要素など、当該要素の近傍に位置するその他の要素を含めるようにしてもよい。
【0047】
図7は、雑音レベル抽出部151において参照する周囲の要素を説明する図である。
図7において、各円は対角高周波成分HHHの要素を示す。横軸はx軸であり、縦軸はy軸である。x軸は右が正の方向であり、y軸は下が正の方向である。また、x軸およびy軸に直交する軸は時間軸であり、
図7の右上方向が正の向きである。要素Cが孤立点か否かを判定するときに参照する周囲の要素は、
図7で網掛けした要素である。すなわち、要素Cの右に隣接する要素Rと、左に隣接する要素Lと、上側に隣接する要素Uと、下側に隣接する要素Dと、1フレーム前の要素Bと、1フレーム後の要素Nである。
【0048】
図5に戻って、マスク画像生成部152は、対角高周波成分HHHの各要素の絶対値を、雑音レベル抽出部151が検出した雑音レベルL
Nと比較し、雑音レベルL
Nよりも該要素の要素値の絶対値の方が大きいときは、対応する位置の要素を「1」とし、それ以外のときは、対応する位置の要素を「0」とした雑音マスク画像Mを生成する。雑音マスク画像Mにおける要素の配列は、対角高周波成分HHHと同様である。したがって、雑音マスク画像Mにおいて、x軸方向およびy軸方向の要素数は、それぞれ復号縮小画像のx軸方向およびy軸方向の画素数と同一である。また、時間軸方向の要素数は、時空間ウェーブレット一階分解部150において離散時空間ウェーブレット一階分解する際の所定のフレーム数と同一である。このようにして生成されているので、雑音マスク画像Mを用いる雑音成分分離部153は、雑音マスク画像Mの要素の値が「1」であるときには、該要素の位置に対応する画素は、分離すべき雑音成分を含んでいるとみなして、雑音成分の分離を行う。
【0049】
雑音成分分離部153は、時空間ウェーブレット一階分解部150によって得られた各成分のうち、低周波成分LLL以外の成分各々について、雑音成分を分離する。対角高周波成分HHHの雑音成分を分離する場合を例に採り、説明する。雑音成分分離部153は、雑音マスク画像Mにおいて値が「1」となっている要素と対応する、対角高周波成分HHHの要素の要素値の絶対値と、雑音レベルL
Nとを比較する。該要素値の絶対値が雑音レベルL
Nよりも小さいときは、対角高周波成分HHHの該要素の要素値は、全て雑音成分からなるとみなす。一方、該要素値の絶対値が雑音レベルL
Nよりも大きいときは、該要素値のうち、雑音レベルL
Nまでは雑音成分であり、残りは信号成分であるとみなす。また、雑音マスク画像Mにおいて値が「0」となっている要素は、雑音成分を含んでいないとみなす。このようにすることで、対角高周波成分HHHの各要素から雑音成分を分離し、対角高周波成分HHHの雑音成分と、雑音成分を引いた残りである対角高周波成分HHHの信号成分とを生成する。雑音成分分離部153は、対角高周波成分HHH以外の成分についても、同様にして雑音成分を分離する。
【0050】
図8は、雑音成分分離部153の動作を説明するフローチャートである。雑音成分分離部153は、ステップS2〜S10に示す処理を、低周波成分LLL以外の各成分について行う(S1)。なお、ステップS2〜S10において、当該成分という記載は、処理対象となっている成分を示す。雑音成分分離部153は、ステップS3からS9に示す処理を、当該成分の各要素について行う(S2)。なお、ステップS3〜S9において、当該要素という記載は、処理対象となっている要素を示す。
【0051】
ステップS3では、雑音成分分離部153は、当該要素に対応する雑音マスク画像Mの要素の値を取得する。次に、雑音成分分離部153は、ステップS3で取得した値が「1」であるか否かを判定する(S4)。「1」でないときは(S4−No)、雑音成分分離部153は、当該要素の雑音成分を「0」とし、信号成分を当該要素の要素値とし(S5)、ステップS2に戻って処理対象とする要素を変更する。
【0052】
一方、ステップS4にて、「1」であると判定したときは(S4−Yes)、雑音成分分離部153は、当該要素の要素値を取得する(S6)。次に、雑音成分分離部153は、ステップS6にて取得した要素値の絶対値が、雑音レベルL
Nよりも大きいか否かを判定する(S7)。雑音レベルL
Nよりも大きいときは(S7−Yes)、雑音成分分離部153は、当該要素の信号成分の絶対値を、ステップ6で取得した当該要素の要素値の絶対値−雑音レベルL
Nとし、信号成分の符号(正負)を当該要素の要素値と同じとする。また、当該要素の雑音成分の絶対値を、雑音レベルL
Nとし、雑音成分の符号(正負)を当該要素の要素値と同じとする。(S8)、ステップS2に戻って処理対象とする要素を変更する。また、ステップS7にて、大きくないと判定したときは(S7−No)、雑音成分分離部153は、当該要素の雑音成分を、ステップ6で取得した当該要素の要素値とし、信号成分を「0」とし、(S9)、ステップS2に戻って処理対象とする要素を変更する。
【0053】
図5に戻って、雑音成分再構成部154は、雑音成分分離部153が生成した対角高周波成分HHHなどの各成分の雑音成分を用いて、デシメーション無しの離散時空間ウェーブレット再構成をして、雑音成分画像を生成する。なお、雑音成分分離部153は、低周波成分LLL以外の成分について雑音成分を生成しており、雑音成分再構成部154は、低周波成分の部分については、全ての要素を「0」として、このデシメーション無しの離散時空間ウェーブレット再構成をする。なお、低周波成分LLL以外の成分とは、時間高周波成分LLH、水平高周波成分LHL、垂直高周波成分HLL、時間水平高周波成分LHH、時間垂直高周波成分HLH、水平垂直高周波成分HHL、対角高周波成分HHHである。なお、このデシメーション無しの離散時空間ウェーブレット一階再構成に用いる基底は、時空間ウェーブレット一階分解部150と同一のものを用いる。
【0054】
信号成分再構成部155は、雑音成分分離部153が生成した対角高周波成分HHHなどの各成分の信号成分を用いて、デシメーション無しの離散時空間ウェーブレット再構成をして、信号成分画像を生成する。なお、雑音成分分離部153は、低周波成分LLL以外の成分について信号成分を生成しているので、信号成分再構成部155は、低周波成分の部分については、時空間ウェーブレット一階分解部150が生成した低周波成分LLLをそのまま用いる。なお、このデシメーション無しの離散時空間ウェーブレット一階再構成に用いる基底は、時空間ウェーブレット一階分解部150と同一のものを用いる。
【0055】
図9は、信号成分超解像部106の構成を示す概略ブロック図である。
図9に示すように、信号成分超解像部106は、ウェーブレット一階分解部160、拡張LH成分生成部161a、拡張HL成分生成部161b、拡張HH成分生成部161c、分散値設定部162、ウェーブレット一階再構成部163を含んで構成される。
【0056】
ウェーブレット一階分解部160は、雑音・信号分離部105が生成した信号成分画像を、フレーム毎に離散ウェーブレット一階分解する。これにより、ウェーブレット一階分解部160は、信号成分画像の各フレームを、低周波成分LL、水平高周波成分LH、垂直高周波成分HL、対角高周波成分HHに分解する。なお、この離散ウェーブレット一階分解に用いる基底には、Haarや、Daubechiesなど、いずれを用いてもよい。
【0057】
拡張LH成分生成部161aは、ウェーブレット一階分解部160が生成した水平高周波成分LHを、水平方向および垂直方向に2倍の要素数となるように拡張した拡張水平高周波成分Ex.LHを生成する。例えば、水平高周波成分LHの要素数が、640×480であれば、拡張水平高周波成分Ex.LHの要素数は、1280×960となる。具体的には、拡張LH成分生成部161aは、水平高周波成分LHを低周波成分の領域に配置し、その他の成分を0として、ウェーブレット一階再構成を行った後、バイラテラルフィルタをかけたものを、拡張水平高周波成分Ex.LHとする。これにより、拡張水平高周波成分Ex.LHの要素数は、信号成分画像、復号縮小動画像、縮小動画像などの各フレームの画素数と一致する。なお、この離散ウェーブレット一階再構成に用いる基底には、ウェーブレット一階分解部160で用いた基底と同じものを用いることが望ましい。
【0058】
また、バイラテラルフィルタの分散値は、分散値設定部162により指定された値σ
LHを用いる。なお、入力画像における座標(x,y)の画素値をf(x,y)で表し、出力画像における座標(x,y)の画素値をg(x,y)で表したとき、バイラテラルフィルタは、式(2)で表される。
【0060】
なお、式(2)において、wは、カーネルのサイズ、σ
1は、距離に関する分散値、σ
2は、画素値差に関する分散値である。拡張LH成分生成部161aでは、wは、予め設定された値を用い、σ
1、σ
2は、分散値設定部162により指定されたσ
LHを用いる。
【0061】
拡張HL成分生成部161bは、拡張LH成分生成部161aと同様にして、ウェーブレット一階分解部160が生成した垂直高周波成分HLを、水平方向および垂直方向に2倍の要素数となるように拡張した拡張垂直高周波成分Ex.HLを生成する。なお、拡張HL成分生成部161bは、バイラテラルフィルタの分散値σ
1、σ
2として、分散値設定部162により指定された値σ
HLを用いる。
【0062】
拡張HH成分生成部161cは、拡張LH成分生成部161aと同様にして、ウェーブレット一階分解部160が生成した対角高周波成分HHを、水平方向および垂直方向に2倍の要素数となるように拡張した拡張対角高周波成分Ex.HHを生成する。なお、拡張HH成分生成部161cは、バイラテラルフィルタの分散値σ
1、σ
2として、分散値設定部162により指定された値σ
HHを用いる。
【0063】
分散値設定部162は、拡張LH成分生成部161a、拡張HL成分生成部161b、拡張HH成分生成部161cに対して、それぞれ、対応する分散値σ
LH、σ
HL、σ
HHを入力する。例えば、分散値設定部162は、分散値として予め決められた値を複数個記憶しておき、信号成分画像の1フレームに対して、これらの値の各々に応じた、拡張水平高周波成分Ex.LH、拡張垂直高周波成分Ex.HL、拡張対角高周波成分Ex.HHが生成されるように、分散値σ
LH、σ
HL、σ
HHを入力する。具体的には、分散値として予め決められた値が、C1〜C3の3つある時は、分散値σ
LH、σ
HL、σ
HHの各々がC1〜C3をとるので、拡張水平高周波成分Ex.LH、拡張垂直高周波成分Ex.HL、拡張対角高周波成分Ex.HHがそれぞれ3つできるように、分散値設定部162は、分散値σ
LH、σ
HL、σ
HHを入力する。また、分散値設定部162は、信号成分に関する超解像パラメータである分散値σ
LH、σ
HL、σ
HHを、超解像パラメータ判定部109にも入力する。
【0064】
ウェーブレット一階再構成部163は、信号成分画像と、拡張水平高周波成分Ex.LHと、拡張垂直高周波成分Ex.HLと、拡張対角高周波成分Ex.HHとを、ウェーブレット一階再構成して、再構成信号成分画像を生成する。このようにすることで、再構成信号成分画像は、信号成分画像に現れていた構造と同様の構造を高周波成分に持つ画像となる。具体的には、ウェーブレット一階再構成部163は、信号成分画像の1フレームを低周波成分の領域に配置し、該フレームの拡張水平高周波成分Ex.LHと、拡張垂直高周波成分Ex.HLと、拡張対角高周波成分Ex.HHとを、それぞれ水平高周波成分の領域と、垂直高周波成分の領域と、対角高周波成分の領域とに配置し、ウェーブレット一階再構成することで、再構成信号成分画像を生成する。なお、この離散ウェーブレット一階再構成に用いる基底には、ウェーブレット一階分解部160で用いた基底と同じものを用いることが望ましい。
【0065】
なお、信号成分画像の1フレームに対して、拡張水平高周波成分Ex.LHと、拡張垂直高周波成分Ex.HLと、拡張対角高周波成分Ex.HHとは、バイラテラルフィルタにおいて用いた分散値が異なるものが、それぞれ複数生成されるので、ウェーブレット一階再構成部163は、これらの全ての組み合わせについて、再構成信号成分画像を生成する。例えば、拡張水平高周波成分Ex.LHと、拡張垂直高周波成分Ex.HLと、拡張対角高周波成分Ex.HHとが、それぞれ3つずつ生成されているときは、これらの全ての組み合わせ、すなわち3×3×3=27通りの各々について、再構成信号成分画像を生成する。
【0066】
図10は、拡張LH成分生成部161aの処理を説明する概念図である。
図10の符号SBに示すように、ウェーブレット一階分解部160により、信号成分画像の各フレームは、低周波成分LL、水平高周波成分LH、垂直高周波成分HL、対角高周波成分HHに分解される。拡張LH成分生成部161aは、
図10の符号LHBに示すように、これらのうちの水平高周波成分LHを、低周波成分の領域に配置し、水平高周波成分、垂直高周波成分、対角高周波成分の領域の全ての要素に「0」を配置する。そして、拡張LH成分生成部161aは、この配置結果に対して、ウェーブレット一階再構成した後、バイラテラルフィルタをかけ、拡張水平高周波成分Ex.LHを生成する。拡張HL成分生成部161bも、垂直高周波成分HLを対象とすることで、同様にして拡張垂直高周波成分Ex.HLを生成する。拡張HH成分生成部161cも、対角高周波成分HHを対象とすることで、同様にして拡張対角高周波成分Ex.HHを生成する。
【0067】
図11は、ウェーブレット一階再構成部163における各成分の配置を示す図である。
図11において、符号Sは信号成分画像のフレームを示し、符号Ex.LHは拡張水平高周波成分を示し、符号Ex.HLは拡張垂直高周波成分を示し、符号Ex.HHは拡張対角高周波成分を示す。
図11に示すように、信号成分画像のフレームSは、低周波成分の領域に配置される。拡張水平高周波成分Ex.LHは、水平高周波成分の領域に配置される。拡張垂直高周波成分Ex.HLは、垂直高周波成分の領域に配置される。拡張対角高周波成分Ex.HHは、対角高周波成分の領域に配置される。ウェーブレット一階再構成部163は、
図11のように各成分を配置した後、ウェーブレット一階再構成をする。この再構成により得られる再構成信号成分画像は、入力動画像の各フレームと同一の画素数となる。
【0068】
図12は、雑音成分超解像部107の構成を示す概略ブロック図である。
図12に示すように、雑音成分超解像部107は、雑音成分再配置部170、ウェーブレット一階再構成部171、画素値正規化部172、白色雑音印加部173、バイラテラルフィルタ部174、分散値設定部175を含んで構成される。
【0069】
雑音成分再配置部170は、垂直方向および水平方向に雑音成分画像の2倍の画素数を有する画像をウェーブレット一階分解した際の低周波成分の領域と、水平高周波成分の領域と、垂直高周波成分の領域と、対角高周波成分の領域とに、それぞれ雑音成分画像の処理対象フレームを配置する。すなわち、これら4つの領域には、同じフレームが配置される。ウェーブレット一階再構成部171は、雑音成分再配置部170の配置結果に対して、ウェーブレット一階再構成をする。なお、この離散ウェーブレット一階再構成に用いる基底には、Haarや、Daubechiesなど、いずれを用いてもよい。
【0070】
これにより、垂直方向および水平方向に雑音成分画像の2倍の画素数を有する画像が生成される。このようにして生成された画像では、雑音成分画像において画素値を有していた要素に対応する画素が画素値を有している。すなわち、時空間方向の相関が低い白色ガウス雑音に適した超解像をすることができる。なお、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサで撮像した画像の雑音は、主に白色ガウス雑音であるので、このような超解像方法が適している。
【0071】
画素値正規化部172は、ウェーブレット一階再構成部171により再構成された画像の画素値を、雑音レベルL
Nで正規化する。例えば、画素値正規化部172は、再構成された画像において、画素値が「0」である画素を除いた画素値の平均値Naを算出する。さらに、画素値正規化部172は、再構成された画像の各画素の画素値に、雑音レベルL
Nを平均値Naで割った比L
N/Naを乗算する。このとき、平均値Naに変えて中央値を用いるようにしてもよい。
【0072】
白色雑音印加部173は、画素値正規化部172により画素値が正規化された画像に、白色雑音を印加する。具体的には、白色雑音印加部173は、画素値が正規化された画像において、画素値が「0」である画素の画素値を、平均値0、分散値1で(−1,1](−1を超え、1以下の数)の正規乱数に1を足した後に、雑音レベルL
Nを乗じた値とする。すなわち、画素値を、平均および分散が雑音レベルL
Nの正規乱数とする。これにより、雑音の白色性を再現する。バイラテラルフィルタ部174は、白色雑音印加部173により白色雑音が印加された画像に対して、前述の式(2)を用いて、バイラテラルフィルタをかけ、再構成雑音成分画像を生成する。なお、拡張LH成分生成部161aなどにおけるバイラテラルフィルタと同様に、式(2)におけるwは、予め設定された値を用い、σ
1、σ
2は、分散値設定部175により指定されたσ
Nを用いる。
【0073】
分散値設定部175は、バイラテラルフィルタ部174に、分散値σ
Nを入力する。例えば、分散値設定部175は、分散値として予め決められた値を複数個記憶しておき、雑音成分画像の1フレームに対して、これらの値の各々に応じた再構成雑音成分画像が生成されるように、分散値σ
Nを入力する。また、分散値設定部175は、雑音成分に関する超解像パラメータである分散値σ
Nを超解像パラメータ判定部109にも入力する。
【0074】
図13は、雑音成分再配置部170による雑音成分画像の配置を説明する図である。
図13において、符号Nは、雑音成分画像のフレームを示す。このように、雑音成分再配置部170は、低周波成分の領域と、水平高周波成分の領域と、垂直高周波成分の領域と、対角高周波成分の領域との4つの領域各々に、雑音成分画像のフレームを配置する。
【0075】
図14は、画像復号装置300の構成を示す概略ブロック図である。
図14に示すように、画像復号装置300は、パラメータ抽出部301、復号部302、雑音・信号分離部303、信号成分超解像部304、雑音成分超解像部305、加算部306、出力部307を含んで構成される。パラメータ抽出部301は、ネットワーク200を介して受信した符号化データを、超解像パラメータと、雑音レベルL
Nと、符号化画像データとに分離する。パラメータ抽出部301は、超解像パラメータのうち、信号成分に関するもの(分散値σ
LH、σ
HL、σ
HH)を信号成分超解像部304に入力し、雑音成分に関するもの(分散値σ
N)を雑音成分超解像部305に入力する。また、パラメータ抽出部301は、雑音レベルLNを雑音・信号分離部303に入力する。
【0076】
復号部302は、画像符号化装置100の復号部104と同様であり、符号化画像データを復号して、復号縮小動画像を生成する。雑音・信号分離部303は、画像符号化装置100の雑音・信号分離部105と同様の構成であるが、雑音レベル抽出部151を有さない点が異なる。雑音・信号分離部303は、パラメータ抽出部301が入力した雑音レベルL
Nを用いて、復号縮小動画像を信号成分画像と、雑音成分画像とに分離する。
【0077】
信号成分超解像部304は、画像符号化装置100の信号成分超解像部106と同様の構成であるが、分散値設定部162を有さない点が異なる。信号成分超解像部304は、分散値設定部162を有さないので、パラメータ抽出部301が入力した信号成分に関する超解像パラメータ(分散値σ
LH、σ
HL、σ
HH)を用いて、信号成分超解像部106と同様にして再構成信号成分画像を生成する。
【0078】
雑音成分超解像部305は、画像符号化装置100の雑音成分超解像部107と同様の構成であるが、分散値設定部175を有さない点が異なる。雑音成分超解像部305は、分散値設定部175を有さないので、パラメータ抽出部301が入力した雑音成分に関する超解像パラメータ(分散値σ
N)を用いて、雑音成分超解像部107と同様にして再構成雑音成分画像を生成する。
【0079】
加算部306は、信号成分超解像部304が生成した再構成信号成分画像と、雑音成分超解像部305が生成した再構成雑音成分画像とを加算する。これにより、入力動画像を復元する。出力部307は、加算部306の加算結果の画像を各フレームとする動画像の信号(復号動画像)を出力する。
【0080】
なお、上述の雑音レベル抽出部151において、該要素が非「0」で周囲の要素が「0」となっている要素を対角高周波成分HHHにおける孤立点としたが、これに限らない。例えば、対角高周波成分HHHで非「0」となっている要素の絶対値の中央値を閾値とし、対角高周波成分HHHの要素のうち、該要素の要素値と、周囲の要素の要素値各々との差が、該閾値を超えているものを、孤立点とするようにしてもよい。あるいは、対角高周波成分HHHの要素のうち、該要素が非「0」で周囲の要素が「0」または極小値となっている要素を孤立点とするようにしてもよい。
【0081】
また、分散値設定部162は、拡張LH成分生成部161a、拡張HL成分生成部161b、拡張HH成分生成部161cの各々において、バイラテラルフィルタにおける分散σ
1とσ
2とを同じ値に設定しているが、σ
1とσ
2とを個別に設定し、これらを異なる値にできるようにしてもよい。また、分散値設定部175も同様に、バイラテラルフィルタ部174における分散σ
1とσ
2とを個別に設定し、これらを異なる値にできるようにしてもよい。
【0082】
このように、本実施形態における画像符号化装置100は、符号化データに、入力動画像を縮小した画像を符号化したものと、縮小した画像の雑音成分と信号成分とを超解像する際のパラメータと含めるので、符号化データのデータ量を抑えつつ、符号化データを復号した際に良好な画質が得られるようにすることができる。
また、雑音成分と、信号成分とを、各々に対応した方法で超解像するので、符号化データを復号した際に良好な画質が得られるようにすることができる。
【0083】
[第2の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態における超解像装置500は、入力された入力動画像を超解像して、垂直方向および水平方向に2倍の画素数を有する画像を生成し、出力する。
図15は、超解像装置500の構成を示す概略ブロック図である。
【0084】
超解像装置500は、入力部501、時空間ウェーブレット一階分解部150、雑音レベル抽出部151、配置部502、ウェーブレット一階再構成部171、画素値正規化部172、白色雑音印加部173、バイラテラルフィルタ部174、分散値設定部503、出力部504を含んで構成される。
図15において、
図5、
図12の各部に対応する部分には同一の符号(150、151、171〜174)を付し、説明を省略する。
【0085】
入力部501は、外部からの入力動画像を受け付ける。入力部501は、受け付けた入力動画像を、時空間ウェーブレット一階分解部150と、配置部502とに入力する。配置部502は、入力動画像の処理対象フレームを、
図12の雑音成分再配置部170と同様にして、低周波成分の領域と、水平高周波成分の領域と、垂直高周波成分の領域と、対角高周波成分の領域とに配置する。分散値設定部503は、予め決められた特定の分散値σ
Nを、バイラテラルフィルタ部174に設定する。すなわち、本実施形態では、第1の実施形態のように、各フレームに対して、超解像パラメータとして様々な値を用いて、それらの中から選択するのではなく、特定の値のみを用いる。出力部504は、バイラテラルフィルタ部174の処理結果の画像を出力する。
【0086】
このように、本実施形態における超解像装置500は、
図2における雑音成分超解像部107と同様にして、入力された入力動画像を超解像する。したがって、超高感度カメラで撮影した画像など、白色ガウス雑音の多い画像に適した超解像を行うことができる。
【0087】
[第3の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態における超解像装置600は、入力された入力動画像を超解像して、垂直方向および水平方向に2倍の画素数を有する画像を生成し、出力する。
図16は、超解像装置600の構成を示す概略ブロック図である。
図16において、雑音・信号分離部105は、
図2における雑音・信号分離部105と同様であるので、説明を省略する。
【0088】
超解像装置600は、入力部601、雑音・信号分離部105、信号成分超解像部602、雑音成分超解像部603、加算部604、出力部605を含んで構成される。入力部601は、外部からの入力動画像を受け付ける。信号成分超解像部602は、雑音・信号分離部105が生成した信号成分画像を、
図2の信号成分超解像部106と同様にして超解像する。ただし、信号成分超解像部602は、信号成分に関する超解像パラメータ(分散値σ
LH、σ
HL、σ
HH)として、予め決められた特定のセットを用いて超解像する。
【0089】
雑音成分超解像部603は、雑音・信号分離部105が生成した雑音成分画像を、
図2の雑音成分超解像部107と同様にして超解像する。ただし、雑音成分超解像部603は、雑音成分に関する超解像パラメータ(分散値σ
N)として、予め決められた特定の値を用いて超解像する。加算部604は、信号成分超解像部602が超解像した画像と、雑音成分超解像部603が超解像した画像とを加算する。出力部605は、加算部604による加算結果の画像を出力する。
【0090】
このように、本実施形態における超解像装置600は、入力動画像を、信号成分と雑音成分とに分離し、
図2における雑音・信号分離部105と同様にして、入力された入力動画像を超解像する。したがって、超高感度カメラで撮影した画像など、白色ガウス雑音の多い画像に適した超解像を行うことができる。
【0091】
なお、第2の実施形態における超解像装置500や、第3の実施形態における超解像装置600は、テレビジョン受像装置などの画像表示装置に含めるようにしてもよいし、テレビジョンカメラなどの撮像装置に含めるようにしてもよい。
また、上述の各実施形態では、説明を簡易にするために、各画素が1つの画素値を持つ場合(例えば、輝度値など)を例に説明した。なお、画素値として輝度値と、赤の色差と、青の色差とを有する場合や、赤色、緑色、青色の輝度値を有する場合など、複数の画素値を有する場合は、各画素値に対して、本実施形態と同様の処理をすればよい。
【0092】
また、
図1における画像符号化装置100、画像復号装置300、
図15における超解像装置500、
図16における超解像装置600の機能あるいはその一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、各装置を実現するようにしてもよい。あるいは、上述の機能を実現するための専用のハードウェアにより、各装置を実現するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0093】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0094】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。