(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施態様は、後述する実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0016】
[実施例1]
[装置構成]
図1に、本実施例で使用する走査型電子顕微鏡の装置構成を示す。走査型電子顕微鏡の装置本体は、カラム1と試料室2で構成される。
【0017】
カラム1の内側には、照射電子を発生させる電子銃3、ウエハ11に照射される照射電子を収束させるコンデンサレンズ4及び対物レンズ8、照射電子をウエハ11に対して走査させるディフレクタ7、照射電子を対物レンズ8に対してアライメントするアライナ5、ウエハ11から発生する2次電子を検出するための2次電子検出器9、2次電子を2次電子検出器9に取り込むためのExBフィルタ6、ウエハ11からの反射電子を検出するための反射電子検出器10を有している。ディフレクタ7は、電子線走査コントローラ17から与えられる信号に従い、照射電子をウエハ11に対して走査させる。
【0018】
試料室2に設置されるXYステージ13は、ステージコントローラ18から与えられる信号に従い、カラム1に対してウエハ11を移動させる。XYステージ13上には、照射電子の入射角度の校正に使用する標準試料12が取り付けられている。また、本装置はウエハアライメントのための光学顕微鏡14を有している。
【0019】
2次電子検出器9及び反射電子検出器10から出力される検出信号は、アンプ15及び16において信号変換され、画像処理ボード19に与えられる。画像処理ボード19は、2次電子検出器9及び反射電子検出器10から与えられる各信号を加算して画像化する。2次電子検出器9の検出信号は主にウエハ表面(上層レイヤ)のパターン情報を示し、反射電子検出器10の検出信号は主に下層レイヤのパターン情報を示す。画像処理ボード19は、これら2つの検出信号に基づいて生成したパターン画像からパターンの重ね合わせ誤差を数値として計算する。制御PC20は、走査型電子顕微鏡全体の動作を制御する。制御PC20には、不図示のモニターや入力装置が接続されている。後述するGUIは不図示のモニターに表示される。
【0020】
[測定誤差の発生原理]
図2に、試料面に対して照射電子32が斜め上方から入射する場合(試料面の垂線に対して照射電子32が角度θだけずれている場合)に、異なるレイヤに形成されたパターンの重ね合わせ測定値に誤差が含まれる原因を説明する。
【0021】
図2では、試料11の厚みLだけ高さが異なる2つのレイヤの同じ位置に、パターン33とパターン34が形成されている。この場合、パターン33とパターン34のずれ量はゼロと測定されるべきである。しかし、照射電子32が角度θだけ傾いているため、L・tanθだけ互いの位置がずれているように測定されてしまう。このため、異なるレイヤに形成されたパターンの重ね合わせずれ量を測定する前に、照射電子32がウエハ11に対して垂直に入射されるように校正しておくことが必要となる。
【0022】
[照射角の調整]
図3に、照射電子32の傾き(入射角度θ)を校正するための手順を示す。
図3に示す動作は、モニターのGUI画面上で、照射電子32の入射角度の校正動作が選択されることにより開始される(プロセス41)。校正動作の開始後、制御PC20は、XYステージ13の移動を制御し、標準試料12を照射電子32の照射領域に移動させる(プロセス42)。標準試料12には、2つのレイヤの同じ位置にパターンがずれなく形成されている、又は、レイヤを異にする2つのパターンの位置関係が既知のパターンが形成されている。
【0023】
この段階で、ワブラーとスティグマが調整される(プロセス43)。その後、制御PC20は、標準試料12の画像を取得する(プロセス44)。具体的には、標準試料12の1番上のレイヤパターンに相当する2次電子像と2番目のレイヤパターンに相当する反射電子像を取得する。
【0024】
次に、画像処理ボード19は、照射電子32の入射角度(傾き)θを計算する(プロセス45)。具体的には、画像処理ボード19は、検出画像から上位レイヤのパターン位置と下位レイヤのパターン位置をそれぞれ計算し、それら2つのパターン位置の差L・tanθを計算し、当該差と既知の厚みLを用いて入射角度θを計算する。
【0025】
次に、画像処理ボード19は、計算された入射角度θと規定値(許容値)とを比較する(プロセス46)。
【0026】
入射角度θが規定値よりも大きい場合、制御PC20は、アライナ5により照射電子32の傾きを調整する(プロセス47)。この後、制御PC20は、プロセスをプロセス43に戻す。これにより、調整後の入射角度θについて、ワブラーとスティグマ調整、画像取得、及び入射角度(傾き)θの計算処理が実行される。アライナ5は、カラム1に対して上下に配置された2組のアライメントコイルから構成されているので、試料上における照射電子32の照射位置を一定に保ちながら電子線の傾きのみを変更することができる。
【0027】
計算された入射角度θが規定値以内であった場合、制御PC20は、入射角度θの校正処理を終了する(プロセス48)。
【0028】
[入射角度θの計算方法]
図4及び
図5を用い、照射電子32の入射角度θを計算する処理手順を説明する。
図4は、標準試料12に形成されているパターン形状を説明するための模式図である。
図4(a)は、標準試料12を照射電子32の入射方向から見た図(平面図)である。
図4(b)は、
図4(a)のA−A’間の断面を示す模式図(断面図)である。
図4(b)に示されるように、標準試料12の表面には深さLの溝51が作られており、溝51の底面にはラインパターン52が形成されている。ここで、溝51とラインパターン52は、それぞれの中心が一致するように形成されており、中心間にずれがないことが同一ロット品の断面観察により確認されている。
【0029】
図5は、標準試料12のSEM画像を示している。ここで、
図5(a)のSEM画像は、2次電子検出器9と反射電子検出器10からの信号を加算することにより得られる画像である。
図5(b)は、B−B’間の信号強度を示している。図中、a1及びa2は溝51のエッジに対して得られる信号のピークである。b1−b2間は、下位レイヤのラインパターン52に対応する。b1−b2間の信号強度は周囲よりも高くなっている。
【0030】
以下、SEM画像から求められたa1、a2、b1、b2の各位置から入射角度θを算出する手順を説明する。前述したように、入射角度θがゼロの場合(傾きがない場合)、溝51の中心位置(a1+a2)/2と、ラインパターン52の中心位置(b1+b2)/2は一致しているはずである。しかし、入射角度θがゼロでない場合(入射角度がθ
xの場合)、
図2で説明したように、L・tanθだけ位置がずれる。
よって、以下の関係が成立する。
【0031】
(b1+b2)/2 −(a1+a2)/2 = L・tanθ
x …(式1)
【0032】
この式をθについて解くと、以下の式が得られる。
【0033】
θ
x=ATAN [{(b1+b2)/2 −(a1+a2)/2}/L] …(式2)
【0034】
ここで得られるθ
x は、X方向への傾斜角であるが、Y方向への傾斜角は、X方向に溝51が形成されたパターンについて同様に計測することができる。
【0035】
[重ね合わせずれ量の測定方法]
図6〜
図8を用い、本実施例による重ね合わせずれ量の測定方法を説明する。勿論、この計測処理は、前述した傾斜角度の校正後に実行される。まず、
図6に、重ね合わせずれ量の計算時に実行される処理手順を示す。
【0036】
制御PC20は、GUI画面を通じ、ウエハ11とレシピの選択、重ね合わせ計測の実行の選択を受け付ける(プロセス61)。制御PC20は、選択されたウエハ11を試料室2へロードする(プロセス62)。
【0037】
次に、制御PC20は、光学顕微鏡像とSEM像によるアライメントを実行する(プロセス63)。その後、制御PC20は、XYステージ13を制御し、レシピに登録された重ね合わせ測定点にウエハ11を移動させる(プロセス64)。
【0038】
その後、画像処理ボード19は、レシピに登録された所定の条件に従ってSEM画像を取得する(プロセス65)。画像処理ボード19は、2次電子検出器9からの信号による2次電子画像における上位レイヤのパターン位置と、反射電子検出器10からの信号による反射電子画像における下位レイヤのパターン位置を検出し、上位レイヤと下位レイヤ間のパターン位置の違いから重ね合わせずれ量を計算する(プロセス66)。ここでの計算は、上位レイヤのパターンと下位レイヤのパターンの見かけ上の重ね合わせずれ量から照射電子32の入射角度θに固有のずれ量を減算することにより行う。計算方法の詳細については後述する。
【0039】
制御PC20は、レシピに規定された測定点の全てについて、重ね合わせずれ量の計算が終了したか否かを判断する(プロセス67)。測定点が残っている間(否定結果が得られる間)、制御PC20は、照射電子32の照射範囲に次の測定点を移動させ、画像の取得、重ね合わせずれ量の算出を実行する。全ての測定点について測定が終了した場合(肯定結果が得られた場合)、制御PC20は、ウエハ11をアンロードし(プロセス68)、重ね合わせずれ量の測定結果を出力する(プロセス69)。
【0040】
図7に、重ね合わせずれ量を測定するパターンの構造例を示す。
図7(a)は、照射電子32の入射方向から見た図であり、
図7(b)は、C−C’断面を示している。パターン71はウエハ表面に形成されたパターンであり、パターン72はウエハ内部に形成されたパターンである。なお、パターン71とパターン72は、それぞれの中心が一致するように設計されている。
【0041】
図8では、プロセス66で実行される計算処理の具体例を説明する。
図8(a)は、2次電子検出器9から出力される検出信号から得られる画像であり、ウエハ表面に形成されたパターン71のエッジ部分に検出信号のピークが出現する。
図8(b)は、Ax−Ax’間の信号強度を示しているが、パターンエッジに対応して4つのピークa
X1、a
X2、a
X3、a
X4が見られる。ここで、パターン71のX方向の中心位置をa
xcとすると、中心位置a
xcは、次式で与えられる。
【0042】
a
xc = (a
X1 + a
X2 + a
X3 + a
X4 )/4 …(式3)
【0043】
同様に、パターン71のY方向の中心位置をa
Ycとすると、中心位置a
Ycは、
図8(c)に示されるA
Y−A
Y’間の信号強度に表れる4つのピークを用いて次式で与えられる。
【0044】
a
Yc = (a
Y1 + a
Y2 + a
Y3 + a
Y4 )/4 …(式4)
【0045】
図8(d)は、反射電子検出器10から出力される検出信号から得られる画像であり、ウエハ内部に形成されたパターン72の部分で、物質の違いによるコントラストにより信号強度が強くなっている。
図8(e)は、Bx−Bx’間の信号強度を示しており、b
X1、b
X2、b
X3、b
X4は信号強度が変化する箇所を示している。この場合、パターン72のX方向の中心位置b
xcは、次式で与えられる。
【0046】
b
xc = (b
X1 + b
X2 + b
X3 + b
X4 )/4 …(式5)
【0047】
同様に、パターン72のY方向の中心位置をb
Ycとすると、中心位置b
ycは、
図8(f)に示されるB
Y−B
Y’間の信号強度に見られる4つの強度変化位置を用いて次式で与えられる。
【0048】
b
Yc = (b
Y1 + b
Y2 + b
Y3 + b
Y4 )/4 …(式6)
【0049】
ここで、X方向及びY方向の重ね合わせずれ量をΔx及びΔyとすると、Δx及びΔyは以下の式で求められる。
【0050】
Δx = b
xc −
a
xc …(式7)
Δy = b
Yc −
a
Yc …(式8)
【0051】
ここで、照射電子32の入射角度θが重ね合わせずれ量の測定誤差を無視できるレベルに調整されている場合、ΔxとΔyを重ね合わせずれ量の測定の結果として使用することができる。もし、照射電子32の入射角度θに起因するずれ量の補正が必要な場合(更に高精度の結果が必要な場合)、照射電子32の入射角度θの校正過程で取得され保持されている値を用いてずれ量の補正を行う。入射角度校正後のX方向とY方向の最終的な入射角度をそれぞれθ
x及びθ
yとし、パターン71とパターン72の間の深さの差をLとすると、補正後のΔx及びΔyは次式で与えられる。
【0052】
Δx = (b
xc −
a
xc ) − L・tanθ
x …(式9)
Δy = (b
Yc −
a
Yc ) − L・tanθ
y …(式10)
【0053】
ここで、半導体の製造工程においては、各層の厚みは正確にモニターされているため、Lは正確な値を入手可能である。
【0054】
[まとめ]
本実施例では、1つの電子銃3と、2次電子検出器9と、反射電子検出器10とを走査型電子顕微鏡に搭載し、測定点の上位レイヤに形成されたパターンと下位レイヤに形成されたパターンに対応する検出信号を同時に取得し、異なるレイヤ間の重ね合わせずれ量を計算する手法を採用する。このように本実施例では、従来装置のように複数の電子銃を搭載する必要がないため、電子線の軸線を一致させる調整作業が必要がない。また、上位レイヤに形成されたパターンに対応する検出信号と下位レイヤに形成されたパターンに対応する検出信号は、同じ照射電子32を用いて同時に取得できるため、高い位置検出精度を期待できる。また、電子銃3が1つであるため、装置構成も小型化することができる。また、上位レイヤに形成されたパターンの測定には2次電子検出器9を使用し、下位レイヤに形成されたパターンの測定には反射電子検出器10を使用するため、各レイヤに形成されたパターンを高精度に検出することができる。
【0055】
また、本実施例では、標準試料12を用いて照射電子32の入射角度θが規定値以下となるように校正した後に重ね合わせずれ量の測定動作を実行する。このため、照射電子32の入射角度θに起因する固有のずれ量を許容値以内に抑制でき、重ね合わせずれ量の測定精度を高めることができる。また、校正時に取得された入射角度θに起因する固有のずれ量を用いて重ね合わせずれ量を補正することにより、一段と、測定精度を高めることができる。
【0056】
また、測定結果を製造プロセスにフィードバックさせることにより、半導体デバイスの歩留まり向上に貢献することができる。
【0057】
なお、本実施例では、重ね合わせずれ量の測定を開始する前に、照射電子32の入射角度θの校正を行うことにより、その後に実行される重ね合わせずれ量の測定の精度を保証しているが、測定終了後においても照射電子32の入射角度θを測定し、測定の前後でθが異なる場合には又は測定後の入射角度θが規定値を超える場合には、アラームを出しても良い。
【0058】
[実施例2]
[装置構成]
続いて、
図9に、実施例2で使用する走査型電子顕微鏡の装置構成を示す。
図9には、
図1との対応部分に同一符号を付して示す。本実施例に係る走査型電子顕微鏡の装置本体には、カラム1と試料室2に加え、ロードチャンバ21が配置される。
【0059】
ロードチャンバ21は、試料室2に隣接するように配置されており、試料室2の間には開閉可能なバルブ24が配置されている。ロードチャンバ21内には、真空アライナ22とロボット23が設定されている。また、不図示の真空排気機構も有している。
【0060】
ロボット23は、XYステージ13と真空アライナ22の間でウエハ11を移動させる搬送機構である。真空アライナ22は、ウエハ11を水平面内で回転駆動する回転機構である。真空アライナ22には、例えば特許文献5に記載の機構を使用する。ここで、真空アライナ22は、ウエハ11を載置するステージ、ウエハ11の中心位置と向きを検出する機構、ステージを回転駆動する機構、回転量を検出する機構等を有している。回転角は任意であり、例えば180°、120°、90°でも良い。以下の説明では、ウエハ11の向きを180°回転させる場合について説明する。本実施例のように、ロードチャンバ21を設けることにより、ウエハ11を、試料室2と同じ真空状態のまま(すなわち、外部空間に一旦出すことなく)、その向きを変えてステージ13上に戻すことができる。
【0061】
[重ね合わせずれ量の測定方法]
図10を用い、本実施例による重ね合わせずれ量の測定方法を説明する。
【0062】
制御PC20は、GUI画面を通じ、ウエハ11とレシピの選択、重ね合わせ計測の実行の選択を受け付ける(プロセス101)。制御PC20は、選択されたウエハ11を試料室2へロードする(プロセス102)。
【0063】
次に、制御PC20は、光学顕微鏡像とSEM像によるアライメントを実行する(プロセス103)。その後、制御PC20は、XYステージ13を制御し、レシピに登録された重ね合わせ測定点にウエハ11を移動させる(プロセス104)。
【0064】
その後、画像処理ボード19は、レシピに登録された所定の条件に従ってSEM画像を取得する(プロセス105)。ここでのSEM画像も、2次電子検出器9と反射電子検出器10からの信号を加算することにより得られる。また、画像処理ボード19は、取得したSEM画像について、重ね合わせずれ量を計算する(プロセス106)。本実施例の場合、計算される重ね合わせずれ量には、上位レイヤのパターンと下位レイヤのパターンの見かけ上の重ね合わせずれ量(照射電子32の入射角度θに固有のずれ量)が含まれている。また、実施例1で説明した入射角度θの校正処理は基本的に不要である。もっとも、校正処理を行っても良い。
【0065】
制御PC20は、レシピに規定された測定点の全てについて、重ね合わせずれ量の計算が終了したか否かを判断する(プロセス107)。測定点が残っている間(否定結果が得られる間)、制御PC20は、照射電子32の照射範囲に次の測定点を移動させ、画像の取得、重ね合わせずれ量の算出を実行する。
【0066】
全ての測定点について測定が終了した場合(肯定結果が得られた場合)、制御PC20は、ウエハ11をロードチャンバ21に移動し、ウエハ11の向きを180°回転させる(プロセス108)。その後、制御PC20は、回転後のウエハ11をXYステージ13上に再び戻す。
【0067】
その後、制御PC20は、光学顕微鏡像とSEM像によるアライメントを実行する(プロセス109)。その後、制御PC20は、XYステージ13を制御し、レシピに登録された重ね合わせ測定点にウエハ11を移動させる(プロセス110)。
【0068】
その後、画像処理ボード19は、レシピに登録された所定の条件に従ってSEM画像を取得する(プロセス111)。ここでのSEM画像も、2次電子検出器9と反射電子検出器10からの信号を加算することにより得られる。また、画像処理ボード19は、取得したSEM画像について、重ね合わせずれ量を計算する(プロセス112)。ここでの重ね合わせずれ量にも、上位レイヤのパターンと下位レイヤのパターンの見かけ上の重ね合わせずれ量(照射電子32の入射角度θに固有のずれ量)が含まれている。
【0069】
この後、制御PC20は、レシピに規定された測定点の全てについて、重ね合わせずれ量の計算が終了したか否かを判断する(プロセス113)。全ての測定点について測定が終了した場合(肯定結果が得られた場合)、制御PC20は、ウエハ11をアンロードする(プロセス114)。
【0070】
その後、画像処理ボード19又は制御PC20は、1つの測定点について向きを変えて測定された2つの重ね合わせずれ量を用い、測定結果を補正する(プロセス115)。具体的には、2つの重ね合わせずれ量の平均値を算出する。なお、同プロセス115は、ウエハ11のアンロード前に実行しても良いし、同時に実行しても良い。この後、制御PC20は、重ね合わせずれ量の測定結果を出力する(プロセス116)。
【0071】
図11に、ウエハ11の向きを180°回転させ、1つの測定点について、異なる回転方向から重ね合わせずれ量を2度測定することにより、照射電子32の入射角度θに固有のずれ量をキャンセルできることを説明する。
【0072】
図11(a)はウエハ11を回転させる前の状態、
図11(b)はウエハ11を180°回転させた後の状態をそれぞれ表わしている。
図11では、ウエハ11の上位レイヤにパターン123が形成され、下位レイヤにパターン124が形成されているものとする。また、上位レイヤと下位レイヤは厚みLだけ高さが異なっているものとする。また、パターン123とパターン124はX方向に距離Dだけずれて形成されているものとする。また、照射電子32が入射角度θでウエハ11に入射する場合を考える。
【0073】
図11(a)の場合、重ね合わせずれ量Δ
1は、次式で表わされる。
【0074】
Δ
1 = D + L・tanθ …(式11)
【0075】
すなわち、Δ
1は本来計測されるべき値であるDから、+L・tanθのずれ量を含む値となる。
【0076】
一方、
図11(b)の場合には、ウエハ11が180°回転しているため、重ね合わせずれ量Δ
2は、次式で表される。
【0077】
Δ
2 = D − L・tanθ …(式12)
【0078】
すなわち、Δ
2は本来計測されるべき値であるDから、−L・tanθのずれ量を含む値となる。
【0079】
ここで、Δ
1とΔ
2の平均値を求めると、次式となる。
【0080】
(Δ
1 +Δ
2 )/2 = {(D + L・tanθ) + (D − L・tanθ)}/2 = D …(式13)
【0081】
式13より、平均値を計算すると、照射電子32の入射角度θに起因する固有のずれ量がキャンセルされ、真の重ね合わせずれ量Dが正確に求められることが分かる。
【0082】
なお、Y方向についての重ね合わせずれ量Dの測定についても同様の処理手順を適用することにより、真の重ね合わせずれ量Dを計算することができる。
【0083】
[まとめ]
本実施例の場合、ウエハ11の向きを180°回転させ、1つの測定点について2つの重ね合わせずれ量を測定する必要があるが、照射電子32の入射角度θを校正するための標準試料12の作成や校正動作を無くすことができる。また、前述したように、ウエハ11の回転角は任意であり、例えば120°ずつ回転させて1つの測定点について3つの方向から重ね合わせずれ量を測定し、その後、これらの平均値を計算しても良い。また例えば、90°ずつ回転させて1つの測定点について4つの方向から重ね合わせずれ量を測定し、その後、これらの平均値を計算しても良い。このように、ウエハ11を回転させて1つの測定点について複数の重ね合わせずれ量を計算し平均化することにより、照射電子32の入射角度θの影響を低減し、高精度で重ね合わせずれ量を計算することができる。
【0084】
また、本実施例の場合、試料室2の隣にロードチャンバ21を配置するため、真空状態のままウエハ11の回転を可能とすることができる。この結果、試料室2から外部に取り出してウエハ11を回転させる場合に比して作業時間の大幅な短縮を実現できる。
【0085】
また、本実施例の場合には、ロードチャンバ21を設けているが、XYステージ13がウエハ11の回転機構を備える場合には、ロードチャンバ21を設けなくても良い。この場合、装置構成を一段と小型化することができる。
【0086】
[他の実施例]
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、様々な変形を含んでいる。例えば前述の実施例では、いずれも電子銃3を用いる場合について説明したが、イオン源その他の荷電粒子源を用いても良い。すなわち、走査型電子顕微鏡に限らず、イオン顕微鏡その他の荷電粒子線装置であっても良い。また、各実施例に係る走査型電子顕微鏡は、測長SEMに限らず、レビューSEMでも良い。
【0087】
また、上述した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限られない。また、ある実施例の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加、削除又は置換することも可能である。
【0088】
また、上述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
【0089】
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。