【実施例1】
【0030】
図2A〜
図2Dは、荷電粒子波面再構成法に含まれる物理的及び数学的処理を説明するための本発明の基礎となる態様を示している。これらの図は以下を示している。
−
図2Aは従来技術の状況を表している。
−
図2Dは、「発明を実施するための形態」で説明した実施例と同様/類似の本発明の実施例を表している。
−
図2Bと
図2Bは、
図2Dの数学的議論を発展させるのに用いられる中間シナリオを表す。
図2A−
図2Dと
図1との比較を容易にするため、図同士のある程度(近似的に)対応する部位には同一の参照符号が与えられた。さらに
図1は上から下への処理として粒子光学軸を図示しているが、
図2A−
図2Dは、左から右への処理として粒子光学軸を図示している。
図2B−
図2Dに図示される構成がCPM(たとえば
図1のTEM)中に含まれ得るとしても、これらの構成は必ずしも含まれていなくても良い。つまり本発明によって供される波面再構成を実行する専用装置を構築することも可能である。
[例1]従来技術
図2Aは、たとえば非特許文献5において用いられている従来技術に係る電子ビームタイコグラフィ装置を示している。図では、電子ビームは、光軸8に沿ってビーム源4から照射体6と試料面S’を通り抜けるように伝播して検出器面D’に衝突する。照射体6は、直列に配置される収束レンズCLSと対物レンズOL1を(少なくとも)有する。試料面S’は試料S(つまり対象物O)に占められる。検出器面D’は検出器Dによって占められる。変調器A−この場合ではアパーチャ面−は試料面S’の直前に設けられる。照射体6は、変調器Aに平面波を照射する。検出器面D’は機能的には、
図1の射出面E’に対応する。試料面S’と検出器面D’との間にレンズ系が存在しないことに留意して欲しい。そのため
図2Aの装置は基本的に、SEMの特殊な実施形態に相当する。
【0031】
ここで検出器D上での画像の生成についての数学的な説明を行う。
図2Aを参照すると、試料面(対象物側)S’内での射出波が次式によって与えられる。
【0032】
【数1】
− Ψ
inは入射電子波で、平面波ではΨ
in=1である。
− ベクトルrは、光軸8に対して垂直な面内での位置を表す(光軸8と面が交わる点を原点とする)。
− O(ベクトルr)は、所謂対象物関数で、電子波の伝播方向に沿った対象物の投影ポテンシャルを(CTF(コントラスト伝達関数)理論に従って)表す指数関数である。
− A
ベクトルR(ベクトルr)は変調器関数である。本願の場合では、阻止アパーチャ関数で、ベクトルRを中心とするアパーチャ内では1で、他では0である。
ホイヘンスの原理を用いることによって、無限大での最終画像は出力波のフーリエ変換(FT)となる。
Ψ
inf=FT{Ψ
out}=FT{Ψ
inOA} (2)
従って検出器Dによって記録される画像は次式によって与えられる。
I
D=|Ψ
inf|
2 (3)
ここで一連の測定期間{m
n}が実行されて良い。n={1,…,N}である。これらの測定期間の各々の範囲内では、変調器の状態A
n=A
ベクトルR(ベクトルr)(本願ではアパーチャの位置ベクトルR=ベクトルR
nのみによって与えられる)が定義され、かつ、画像I
D=I
Dnが取得される。よってたとえば以降の実施例2で説明するような反復的方法が適用されて良い。係る方法は式(2)を用いて、各測定期間m
nについての試料面S’と検出器面D’との間での推定前進電子波と後退電子波を数学的に伝播させる。再構成法では、式(3)は、各反復でのΨ
inf(又は明示的に|Ψ
inf|=√I
D)の振幅を補正するのに用いられる。この方法は、再構成された照射Ψ
in(ベクトルr)と対象物関数O(ベクトルr)を得る。換言すると、全出力電子波Ψ
obout(ベクトルr)=Ψ
in(ベクトルr)O(ベクトルr)が生成されて良い。
[例2]修正された従来技術
図2Aに示された状況に対して、さらなる部品が
図2Bには表されている。特に
図2Bは、対物レンズ24a(OL2)と投影レンズ24bの直列配置を有する。対物レンズ24a(OL2)と投影レンズ24bは一体となって、上述のレンズ系LSを構成する。対物レンズ24aは後焦点面BFPを有する。しかも対物レンズ24aは、(中間)画像面I’上に試料面S’を結像する。投影レンズ24bは焦点距離f
PSを有する。(
図2Aと比較して)変調器Aが存在しないことに留意して欲しい。この結果、画像面I’での画像は、試料Sの「完全画像」となる。
【0033】
図2Cでの状況は、変調器Aが
図2Aに示された位置と同一の位置に導入されたことを除けば
図2Bに図示された状況と同一である。この変調器Aが存在する結果、画像面I’での画像は(変調器Aによって試料Sへの照射が縮小されるため)試料Sの「部分画像」でしかない。
【0034】
図2Bと
図2Cの両方において、対物レンズ24aは倍率Mを生成する。従って対物レンズ24aの対象物側でのベクトルRは画像側でベクトルMRとなる。対物レンズ24aが完全ではない場合には、画像面I’には収差が生じる。他方、投影レンズ24bが事実上完全−つまり収差の導入に関しては無視できる効果しか有していない−とみなされる。対物レンズ24aと投影レンズ24bの両方が完全でかつ焦点が合っている場合、
図2A及び
図2Cに図示された状況は実効的に同一となる(Ψ
inf=Ψ
bfp)。変調器Aが存在しない場合、
図2Bでの状況は、
図2A及び
図2Cでの状況とさらに実効的に同一となる。
【0035】
(以降の実施例とも関連して)上の例1で説明した数学的再構成法は、
図2Cに示された状況に直接適用されて良い。最初に、検出器Dによって記録された最終電子波と強度を求める(上の式(2)と式(3)と類似する)。BFPでの電子波は次式のようになる。
Ψ
bfp=FT{Ψ
out}K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2=FT{Ψ
inOA}K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2 (4)
ベクトルq=(q
x,q
y)は逆空間での座標である。式(4)は次式のように書き直すことができる。
Ψ
bfp=FT{(Ψ
inOA)(×)IFT{K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)}}e
−iπλΔfq2 (5)
− IFTは逆フーリエ変換を示す。
− 演算子(×)はコンボリューション演算子である。
− K
CS(ベクトルq)は、ビーム源4のインコヒーレント関数である。
− e
−iχ(ベクトルq)は、対物レンズ24aのデフォーカスを除いた収差関数である。
− e
−iπλΔfq2は、対物レンズ24aの純粋なデフォーカスΔfに起因する収差関数である。
− λは電子波の波長である。
投影レンズ24bでの収差を無視すると、検出器Dの前方での最終電子波は、BFPでの最終電子波に等しくなる(BFPからIまで、電子波はIFTによって得られる。検出器Dに到達するため、他のFTが適用される)。投影レンズのとり得る倍率はここでは関心事ではなく影響もないので、1に設定される。この例では、照射波動関数Ψ
inは、平面波(よってΨ
in=1)であるとみなされる。部分的には一定である阻止アパーチャ関数Aは変調器に関連づけられる。このことを考慮すると、Ψ
inとアパーチャ関数Aはコンボリューション演算子(×)の外側に設けられて良く、かつ、式(5)は次式のように再定式化されて良い。
Ψ
bfp=FT{(Ψ
in(O(×)IFT{K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)}}e
−iπλΔfq2 (6)
検出器Dによって生成される画像は単純に次式のようになる。
I
D=|Ψ
bfp|
2 (7)
ここで式(6)と(7)は、式(2)と(3)と同じようにして用いられて良い。例1で実行された一連の測定期間と同様に一連の測定期間{m
n}がここでも実行されて良い。n={1,…,N}である。これらの測定期間の各々では、アパーチャ位置ベクトルR=ベクトルR
nが設定されるので、アパーチャ関数A
n=A
ベクトルRn(ベクトルr)が定義され、係る画像ID=(I
n)
Dが取得される。続いてたとえば以降の実施例2で説明する数学的再構成法が適用されて良い。係る方法は式(6)を用いて、各測定期間m
nについて、試料面S’と検出器面D’との間で推定される前進電子波と後退電子波を数学的に伝播させる(FTと逆FTのみを適用する)。式(7)(又は明示的に|Ψ
bfp|=√I
D)を用いた各反復において振幅Ψ
bfpを補正することによって、その方法は、再構成された再構成された照射Ψ
in(ベクトルr)と対象物関数O
res(ベクトルr)を得る。O
res(ベクトルr)はO
res(ベクトルr)=O(ベクトルr)(×)IFT{K
CSe
−iχ(ベクトルq)}によって明示的に与えられる。式(6)でのデフォーカス因子e
−iπλΔfq2がガウス関数なので、そのFTとIFTもガウス関数である。従ってこの因子は、試料面S’と検出器面D’との間で前進及び後退するときにも変化しない。さらにΨ
bfpの振幅のみが、各反復において|Ψ
bfp|=√I
Dに従って補正されるので、デフォーカスe
−iπλΔfq2はここでも影響を持たない(純粋に位相の寄与だけなため)。まとめると、この修正された例では、最終的に再構成された部分は、照射Ψ
in(ベクトルr)(この場合完全に既知の平面波)と収差の存在する対象物関数O
res(ベクトルr)=O(ベクトルr)(×)IFT{K
CSe
−iχ(ベクトルq)}である。収差が対物レンズ24aにおいて無視できて(χ(ベクトルq)=0)、かつ、照射が完全(インコヒーレンスが存在せずK
CS=1)であるとき、式(6)は、
Ψ
bfp=FT{Ψ
inOA}e
−iπλΔfq2 (8)
これは、焦点合わせされているとき(Δf=0)には厳密に式(2)と同一である。説明したように焦点合わせされていないとき、純粋なガウス因子e
−iπλΔfq2は、変化せず、かつ、再構成に影響を及ぼさない。
[例3]さらなる修正
図2Dは、変調器Aが画像面I’での位置へ移動されたことを除けば
図2Cに表された状況と似ている。この結果、2つの後焦点面−具体的には対物レンズ24aのBFP1(
図2Bと
図2CのBFPに相当する)と投影レンズ24bのBFP2−同士を区別することが必要となる。前記区別は検出器面D’と一致する。なぜなら変調器Aは、BFP1とBFP2との間で関数を実行するからである(式(11)参照のこと)。
【0036】
図2Dに図示された構成では、(以降で説明する実施例2に関連して)上で述べた例1と例2で説明した数学的再構成法はここでも、直接適用されて良い。最初に(式(2)と(3)に類似する)検出器Dによって記録される最終電子波と強度が求められる。BFP1での電子波は次式のようになる。
Ψ
bfp1=FT{Ψ
out}K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2=FT{Ψ
inO}K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2 (4)
ベクトルq=(q
x,q
y)はフーリエ領域での座標である。
画像面I’では、アパーチャが存在しない状態での電子波(試料の出力波の画像)は次式のようになる。
Ψ
im=IFT{Ψ
bfp1}=(Ψ
inO)(×)IFT{K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2} (10)
アパーチャAが画像面I’内に存在するときには、式(10)は次式のようになる。
Ψ
im=((Ψ
inO)(×)IFT{K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2})A (11)
さらにBFP2での画像は次式のようになる。
Ψ
bfp2=FT{Ψ
im}=FT{((Ψ
inO)(×)IFT{K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2})A} (12)
又は照射体6からの照射が一定の平面波であることを利用する場合、最終結果は次式のようになる。
Ψ
bfp2=FT{Ψ
in(O(×)IFT{K
CS(ベクトルq)e
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2})A} (13)
検出器Dが生成する画像は次式で表される。
I
D=|Ψ
bfp2| (14)
ここで式(13)と(14)は、式(2)と(3)と同じようにして用いられて良い。例1,2で実行された一連の測定期間と同様に一連の測定期間{m
n}がここでも実行されて良い。n={1,…,N}である。これらの測定期間の各々では、アパーチャ位置ベクトルR=ベクトルR
nが設定されるので、アパーチャ関数A
n=A
ベクトルRn(ベクトルr)が定義され、係る画像ID=(I
n)
Dが取得される。続いてたとえば以降の実施例2で説明する数学的再構成法が適用されて良い。係る方法は式(13)を用いて、各測定期間m
nについて、試料面S’と検出器面D’との間で推定される前進電子波と後退電子波を数学的に伝播させる(FTと逆FTのみを適用する)。式(14)(又は明示的に|Ψ
bfp2|=√I
D)を用いた各反復においてΨ
bfp2の振幅を補正することによって、その方法は、再構成された再構成された照射Ψ
in(ベクトルr)(この場合、完全に既知で一定である)と結果として生じる収差が存在してデフォーカスされた対象物関数O
res(ベクトルr)=O(ベクトルr)(×)IFT{K
CSe
−iχ(ベクトルq)}を得る。これは面I’での対象物関数である。試料面S’での収差の存在する焦点合わせされた射出波は、逆伝播によって画像面I’で再構成された電子波から得られて良いことに留意して欲しい。対物レンズ24aの収差が既知である場合、その収差はデコンボリューションによって排除されて良い。収差が対物レンズ24aにおいて無視できて(χ(ベクトルq)=0)、かつ、照射が完全(インコヒーレンスが存在せずK
CS=1)であるとき、式(13)は、
Ψ
bfp2=FT{Ψ
in(0(×)IFT{e
−iπλΔfq2})A} (15)
デフォーカスがゼロであるとき(Δf=0)、式(15)は厳密に式(2)と同一となる。
Ψ
bfp2=FT{Ψ
in(0(×)IFT{e
−iπλΔfq2})A}=FT{Ψ
in(0(×)δ)A}=FT{Ψ
inOA} (16)
なぜなら任意の関数f(ベクトルr)について、f(ベクトルr)(×)δ(ベクトルr)=f(ベクトルr)が成立するからである。
[例4]試料が存在する場合と存在しない場合のシミュレーション
式(2)と(16)とを比較すると、
図2B/例1の従来技術に係る方法と本発明による方法は、対物レンズ24aが完全かつ焦点合わせされていて、かつ、試料Sが照射体6からの平面波によって照射されるときには同一の結果を得る。本発明の重要な態様について、式(12)を出発点として説明する。
[状況4.1]
試料面S’に何もない場合(つまり試料が電子ビームを遮断しない場合)、対象物関数は1(O=1)となり、かつ、式(12)は次式のようになる。
Ψ
bfp2=FT{Ψ
im}=FT{1・(Ψ
in(×)IFT{K
CSe
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2})・A} (12a)
よって数学的再構成法における再構成された項は、Ψ
in(×)IFT{K
CSe
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2}である。これは、照射体6から放出される収差を有してデフォーカスされた照射の波面である。この波面は、数学的伝播によって焦点合わせされて良い。収差が既知である場合、収差関数はデコンボリューションされ、かつ、元の波面Ψ
inに戻される。照射の構成が既知である場合(たとえば平面波)、直接的な結果は系の収差関数である。
[状況4.2]
試料Sが試料面S’内に存在し、かつ、照射が任意である場合、Ψ
out=Ψ
inOであるため、次式のようになる。
Ψ
bfp2=FT{Ψ
im}=FT{1・(Ψ
out(×)IFT{K
CSe
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2})・A} (12b)
数学的方法によって与えられる項は、Ψ
out(×)IFT{K
CSe
−iχ(ベクトルq)e
−iπλΔfq2}である。これは、照射体6から放出される収差を有してデフォーカスされた照射の波面である。この波面は、数学的伝播によって焦点合わせされて良い。収差が既知である場合、収差関数はデコンボリューションされ、かつ、試料面Sからの元の射出電子波波Ψ
outに戻される。照射の構成が既知である又は(たとえば状況4.1での構成を用いることによって)決定される場合、対象物関数は完全に回復され得る。