(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係る水平スクリュー式サイロ及びこれを備えた貨物運搬船を詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る水平スクリュー式サイロを搭載した貨物運搬船の全体構成を示す側方断面図である。また、
図2は貨物運搬船の上方平面図、
図3は
図2のA−A’拡大断面図、
図4は
図3のB−B’拡大断面図、
図5は
図3のB−B’簡易上面図、
図6は水平スクリュー式サイロの簡易上面図である。
【0016】
また、
図7は
図5のC−C’拡大断面図、
図8は
図5のD−D’拡大断面図、
図9は水平スクリュー式サイロの補助水平スクリューの拡大一部断面図、
図10は
図9のE−E’拡大断面図である。
図1及び
図2に示すように、貨物運搬船1は、粉状、粒状、塊状、ペレット状、高水分含有物等の擬似固化する性質を有する貨物Cを運搬する船舶である。
【0017】
貨物運搬船1は、底部の船底外板2の上に二重底板3を有すると共に、側面部に外側外板4を有する。また、貨物運搬船1は、上部に上甲板5が設けられている。貨物運搬船1の船首部6と船体の前後方向に反対側の船尾部7の機関室上には、船橋7aが備えられている。船首部6と船尾部7との間には、貨物Cを収容する例えば多角筒形の水平スクリュー式サイロ10が複数搭載されている。貨物運搬船1は、例えば推進装置を有さないメガフロートや艀等を含むものである。
【0018】
図2に示すように、水平スクリュー式サイロ10は、例えば平面的に見て8角形の貨物倉20を備える。
図3に示すように、貨物倉20の内部の中心部には、垂直方向に延びるセンターコラム14が固定されている。センターコラム14の上部には、貨物倉20の上部中央まで延びる旋回筒11が設けられている。貨物倉20の内部の上方位置には、旋回筒11と共に旋回して先端が貨物倉20の壁面20d側に向かって延びる旋回フレーム30が設けられている。
【0019】
旋回フレーム30は、貨物倉20の平板状の複数の壁面20dに内接する仮想基準円VRC(
図2等参照)の中心を通る軸(貨物倉20の中心軸)を旋回軸として、旋回駆動される。仮想基準円VRCは、例えば
図6に示すように表される。
【0020】
すなわち、
図6に示すように、例えば水平スクリュー式サイロ10の対向する壁面20d間の最大内寸L1,L2(ここでは、L1>L2)のうち、いずれか小さい方の寸法をLとする。そして、この寸法Lを直径として貨物倉20の中心軸Pを中心とし、壁面20dに内接する仮想基準円VRCを設定する。
図6では仮想基準円VRCが4箇所で壁面20dに内接している例を示している。従って、仮想基準円VRCの半径RoはL/2に設定される。
【0021】
旋回フレーム30には、水平搬送装置40が吊り下げられている。水平搬送装置40は、貨物Cの上面CSの高さに応じて、旋回フレーム30からの吊り下げ量の制御により上下方向の位置を制御されると共に、仮想基準円VRCに沿って旋回フレーム30と共に貨物倉20内を旋回する。
【0022】
旋回筒11の上端には、上から貨物Cを貨物倉20内に投入するための供給シュート11cが設けられている。供給シュート11cの下方には、水平スクリューコンベア12が配置されている。水平スクリューコンベア12の排出部には、上下方向に伸縮するテレスコピックシュート13が配置されている。
【0023】
テレスコピックシュート13の排出口は、水平搬送装置40の旋回中心側端部上に位置している。水平搬送装置40は、供給シュート11c、水平スクリューコンベア12、テレスコピックシュート13を介して受け入れた貨物Cを、仮想基準円VRCの径方向(以下、単に「径方向」とする。)の外側に向けて搬送する。また、水平搬送装置40は、搬送の過程で貨物Cを径方向に平均的に散布する。
【0024】
更に、水平搬送装置40は、旋回フレーム30による旋回動作で貨物Cを仮想基準円VRCの周方向(以下、単に「周方向」とする。)にも均一に散布する。また、水平搬送装置40は、貨物Cを掻き取って径方向の内側に搬送し、センターコラム14を介して貨物倉20の中央下端に払い出す。
【0025】
貨物倉20から払い出された貨物Cは、排出コンベア18を介して外部に排出される。なお、付着性が低い貨物Cを水平スクリュー式サイロ10で取り扱う場合には、上記供給シュート11c及び水平スクリューコンベア12を、図示しない傾斜シュートに置き換える構成とすることもできる。
【0026】
また、水平スクリュー式サイロ10は、上述したように8角筒形の側壁部20aにより構成されている。このため、
図2に示すように、貨物運搬船1に水平スクリュー式サイロ10を複数搭載した場合には、完全な円筒形のものと比較して貨物倉20の水平面内の有効面積を大きくすることが可能となる。
【0027】
次に、各部の詳細について説明する。
貨物倉20は、多角筒形を構成する平板状の複数の側壁部20aと、これら側壁部20aの下端を塞ぐ底面部20bと、側壁部20aの上端を塞ぐ上面部20cとを備えて構成されている。側壁部20aは、ここでは8枚組み合わされて8角筒形の貨物倉20を構成している。
【0028】
側壁部20aの内面は、平面状の壁面20dを形成している。底面部20b及び上面部20cは、側壁部20aが構成する多角筒形に合わせた平面形状の多角形の部材からなる。なお、底面部20bは、図示のように水平に形成することもできるが、貨物倉20からの排水性を考慮する場合には、仮想基準円VRCの外周側から中央側に向かって下がる構造となるように形成するようにしても良い。
【0029】
水平スクリュー式サイロ10の上面部20cには、貨物Cを受け入れるための穴が形成されており、この穴の部分に旋回筒11の上端が旋回軸受11aを介して回転可能に取り付けられている。旋回筒11の中央には、固定の貨物供給口11bから続く旋回筒11と共に旋回する供給シュート11cが配置されている。
【0030】
センターコラム14は、旋回筒11の下端部に軸受11dを介して接続されている。センターコラム14は、旋回筒11の下端部から貨物倉20の中心部を通り底面部20bまで延びており、底面部20bに固定されている。図示は省略するが、センターコラム14は、ほぼ全周にわたって開口し、上下方向に多段に並んで形成されたスリット形状の受入部(受入口)を有し、後述する水平搬送装置40でセンターコラム14側に搬送されてくる貨物Cを、その内部に搬入できるように構成されている。
【0031】
側壁部20aの壁面20dの上部には、例えば壁面20dの近傍を仮想基準円VRCに沿って一周するように、壁面20dから断続的又は連続的に突出したレール受け部20fが形成されている。このレール受け部20fの上面には、仮想基準円VRCに沿って円環状のレール部20eが設けられている。
【0032】
旋回フレーム30は、中央部を旋回筒11に支持され、壁面20d側の端部がレール部20eに支持されている。旋回フレーム30は、旋回筒11と共に旋回駆動される。なお、
図3に示す構成では、レール部20eを壁面20dのレール受け部20fに設けているが、例えば上面部20cに設けられたレール受け部20fに対して設けるようにしても良い。
【0033】
また、旋回フレーム30の壁面20d側の端部には、レール部20e上を移動するための走行車輪31や、例えばこの走行車輪31に直結された減速機及び駆動機を有する駆動装置32が設けられている。駆動装置32は、車輪軸により支持され、また駆動装置32と旋回フレーム30とは結合されて(図示せず)、駆動反力により駆動装置32が転倒しないように構成されている。
【0034】
走行車輪31は、旋回フレーム30の一部の荷重を支持しながら、駆動装置32によって転動可能に旋回フレーム30に設けられている。また、旋回フレーム30の上部には、吊下げワイヤ34を巻き取るためのウィンチ35やワイヤシーブ36などが設けられている。
【0035】
水平搬送装置40は、水平状態を維持した状態で複数の接続点34a,34b(
図4参照)で吊下げワイヤ34に接続され、この吊下げワイヤ34によって旋回フレーム30に吊り下げられている。旋回フレーム30は、ウィンチ35によりこの吊下げワイヤ34を旋回フレーム30上のワイヤシーブ36を介して巻き取ったり、繰り出したりすることで、水平搬送装置40全体を上下移動可能に支持している。
【0036】
上述した各接続点34a,34bは、
図4に示すように、水平搬送装置40の長手方向の両端の2箇所において、それぞれ短手方向に2箇所ずつ設けられている。具体的には、接続点34aはスクリューフレーム部48の壁面20d側の端部に、接続点34bはスクリューフレーム部48のセンターコラム14側の端部に、それぞれ設けられている。
【0037】
水平搬送装置40は、
図4に示すように、例えばセンターコラム14の周囲に配置された旋回ローラユニット45と上記吊下げワイヤ34とを介して、貨物倉20内を仮想基準円VRCに沿って旋回及び上下移動可能に取り付けられている。水平搬送装置40は、貨物倉20内の貨物Cを、貨物倉20の中心部(ここでは、センターコラム14)と壁面20dとの間で水平方向に搬送して散布及び集荷を行うものである。なお、旋回ローラユニット45は、本例ではセンターコラム14に対して水平方向に加わる力のみを支持する構造であるため、上下方向には自在に動けるように構成されている。
【0038】
水平搬送装置40は、貨物倉20の中心軸から壁面20d側に向かって、仮想基準円VRCの範囲内で径方向に延びるスクリューフレーム部48を有する。スクリューフレーム部48は、中心軸側の部分が、例えば旋回ローラユニット45に一体接合されている。
【0039】
スクリューフレーム部48は、貨物倉20内の貨物Cを水平搬送するための、水平搬送装置40の長手方向に延びてその短手方向に並設された一対の水平スクリュー41,42を支持する。また、スクリューフレーム部48は、水平スクリュー41,42を駆動するための駆動機43,44を、例えば壁面20d側の端部に備えている。
【0040】
駆動機43,44は、更にそれぞれ水平スクリュー41,42の後述するスクリュー軸41a,42aに取り付けられている。このように駆動機43,44が取り付けられることによって、駆動機43,44が作動することにより発生する転倒反力をスクリューフレーム部48が受け止めて、駆動機43,44が転倒しないように構成されている。
【0041】
スクリューフレーム部48は、更に壁面20dの近傍における揚荷役(集荷)時の旋回方向Tの先行側(前方側)に配置された、貨物倉20内の貨物Cを掘削、解砕して掻き取る先行側補助水平スクリュー部46を備える。先行側補助水平スクリュー部46は、特に水平スクリュー42の壁面20d側の端部にて、水平スクリュー42では掻き取り等できない仮想基準円VRCの内側近傍と壁面20dとの間に存する貨物Cを掘削、解砕可能に設けられている。
【0042】
各水平スクリュー41,42は、
図5に示すように、例えばスクリューフレーム部48に径方向に沿って互いに平行となるように配置されたスクリュー軸41a,42aを有する。また、各水平スクリュー41,42は、スクリュー軸41a,42aに設けられたスクリュー羽根41b,42bを有する。
【0043】
更に、各水平スクリュー41,42は、スクリュー軸41a,42aの両端部側及びその中間部に配置された軸受部61a,61b,61c,62a,62b,62cと、軸受部61a,62aに隣設された駆動機43,44とをそれぞれ有する。
【0044】
そして、各水平スクリュー41,42の軸受部のうち、例えば中間部の軸受部61b,62bは、各水平スクリュー41,42においてスクリューフレーム部48の払出荷役時の旋回方向Tの円周上に重ならない範囲を形成するように、径方向の異なる位置にそれぞれ設けられている。
【0045】
また、
図7に示すように、各水平スクリュー41,42のうち、旋回方向Tの後続側(後方側)に配置された水平スクリュー(以下、「後続スクリュー」と呼ぶ。)42のスクリュー羽根42bの外周の下端位置72aは、旋回方向Tの先行側(前方側)に配置された水平スクリュー(以下、「先行スクリュー」と呼ぶ。)41のスクリュー羽根41bの外周の下端位置71aよりも貨物倉20の上下方向の下方側に位置するように形成されている。
【0046】
この場合、先行及び後続スクリュー(以下、これらをまとめて「各スクリュー」と呼ぶ。)41,42のスクリュー軸41a,42aの回転軸心は、水平方向に同一レベルに配置される必要はなく、例えば同一寸法のスクリュー羽根41b,42bを備え、回転軸心のレベルをずらせて下端位置71a,72aが上記のような関係となるように構成しても良い。
【0047】
これにより、貨物倉20内の貨物Cに対し、揚荷役時に水平搬送装置40が旋回方向Tに旋回して解砕や掘削(以下、「掘削等」と表記する。)を行うと、先行スクリュー41側が貨物Cの新規掘削面である上面CSから深さHaに相当する厚みの貨物層を掘削等する。また、後続スクリュー42側が深さHaの下端から深さHbに相当する厚みの貨物層を掘削等する。
【0048】
従って、この水平搬送装置40は、一度の掘削等で物理的な総掘削深さHd(Ha+Hb)に相当する厚みの貨物層を貨物Cの上面CSから掘削等して水平方向に搬送可能な構成となっている。各スクリュー41,42は、図中矢印曲線で示すように、互いに逆方向に回転する。
【0049】
先行側補助水平スクリュー部46は、
図4及び
図5に示すように、スクリューフレーム部48に対して移動可能に配置された移動フレーム47cと、この移動フレーム47cに取り付けられて、軸心の延長線がセンターコラム14の中心軸Pを略通るように設けられた移動スクリュー47とを備える。
【0050】
移動スクリュー47は、
図9及び
図10に示すように、先行側補助水平スクリュー部46全体に伸びるスクリュー軸47aと、このスクリュー軸47aの壁面20d側の端部から所定の長さ(この例では約半分の長さ)の範囲に設けられたスクリュー羽根47bとを備える。更に、先行側補助水平スクリュー部46は、
図5に示すように、スクリュー軸47aのスクリュー羽根47bが形成されていない部分の少なくとも両端2箇所を支持する軸受部47e,47e’を備える。
【0051】
また、先行側補助水平スクリュー部46は、
図9に示すように、移動スクリュー47を回転駆動する駆動機47dと、移動フレーム47cを軸受部47e,47e’と共に移動スクリュー47の軸方向に沿って、所定の移動範囲NZ内で移動自在に移動させる移動フレーム駆動機47fとを備える。なお、駆動機47dは、駆動反力により転倒しないようにステー47d’を介して、移動フレーム47cに結合されている。
【0052】
先行側補助水平スクリュー部46のレール部47gは、移動スクリュー47の軸心と平行に構成され、スクリューフレーム部48に取り付けられている。移動フレーム47cには、複数の走行車輪47hとガイドローラ47iとが取り付けられている。複数の走行車輪47hは、それぞれレール部47gの内側に配置されている。複数のガイドローラ47iは、レール部47gと僅かな隙間を介して、対向するレール部47g間の位置にそれぞれ配置されている。
【0053】
移動フレーム47cの上面側には、移動スクリュー47と平行に2本のラック47kが取り付けられている。
【0054】
これら2本のラック47kに対応する2個のピニオン47lと、これらを駆動する軸47mとが、レール部47gに固定された軸受47jを介して設けられている。この軸47mには、ピニオン47lを駆動するための移動フレーム駆動機47fが取り付けられている。移動フレーム駆動機47fは、駆動反力を受けるための連結用部材47nにより、レール部47gに結合されている。
【0055】
先行側補助水平スクリュー部46は、このように構成されているので、移動フレーム駆動機47fを作動させることで、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47を、移動スクリュー47の軸方向に移動範囲NZ内において移動させることができる。
【0056】
先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47の貨物倉20内の水平面上の位置制御における基点(ゼロ点)は、
図4に示すように、仮想基準円VRCと移動スクリュー47の壁面20d側の端部との間に適切な距離を維持可能な位置である。すなわち、この基点位置は、移動スクリュー47が中心軸P側に最も近づいた位置を意味する。移動スクリュー47は、スクリューフレーム部48側に設けられた図示しない位置センサで移動フレーム47cの基点位置を検知し、検知された基点位置よりも中心軸P側に移動しないように制御される。
【0057】
また、ピニオン47lに取り付けられた軸47mには、図示しないエンコーダ等の回転センサが設置されており、基点位置からの移動スクリュー47の壁面20d側への移動位置を検知可能に構成されている。なお、先行側補助水平スクリュー部46は、
図5に示すように、移動範囲NZ内において、移動スクリュー47のスクリュー羽根47bの中心軸P側の端部が、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bの壁面20d側の端部よりも、中心軸P側に位置するように構成されている。
【0058】
すなわち、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47のスクリュー羽根47bの中心軸P側の端部は、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bの壁面20d側の端部が旋回することにより形成する端部円VRC’(仮想基準円VRCと同心)よりも、基点位置においては例えば距離Lroだけ中心軸P側に位置している。
【0059】
この距離Lroは、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bの壁面20d側の端部の中心軸Pからの距離から、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47のスクリュー羽根47bの中心軸P側の端部の中心軸Pからの距離を差し引いた長さを表しており、少なくとも移動スクリュー47の必要移動距離と等しくなるように設定される。
【0060】
これにより、基点位置において、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bの壁面20d側の端部に設けられた軸受部62aや駆動機44に起因して後続スクリュー42では掘削等できない仮想基準円VRCと端部円VRC’との間の貨物Cを、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47により確実に掘削等することができる。
【0061】
なお、水平搬送装置40は、例えばスクリューフレーム部48の旋回面上の少なくとも3箇所の固定点から壁面20dまでの距離を連続又は同時に断続的に測定する距離センサ(図示せず)を備えている。この距離センサからのスクリューフレーム部48の旋回動作に伴う検知信号の変化を監視することで、貨物倉20内の水平面上でのスクリューフレーム部48の位置を検出することができる。
【0062】
水平搬送装置40は、この検出結果と、予め判明している計測点における貨物倉20の上下方向位置での壁面20dの形状とに基づいて、基点位置からの先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47の移動量を予測することが可能であり、この予測結果を基準にして先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47の移動量の制御を行うことができる構成となっている。
【0063】
その他、先行側補助水平スクリュー部46には、図示しない安全装置が備えられている。安全装置は、例えば移動フレーム47に搭載されて壁面20dとの間の距離を測る距離センサ(図示せず)により、移動スクリュー47の壁面20d側の端部と壁面20dとの間の距離が所定距離以下となり、異常接近したことが判明した場合に、移動フレーム47cを基点位置に移動させると共に旋回フレーム30の旋回動作を停止させるよう構成されている。
【0064】
図8は、上述した基点位置に先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47があるときの各スクリュー41,42と移動スクリュー47との貨物倉20の上下方向の物理的な位置関係を示している。
図8に示すように、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47のスクリュー羽根47bの外周の下端位置73aは、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bの外周の下端位置72aと、先行スクリュー41のスクリュー羽根41bの外周の下端位置71aとの間に位置するように配置されている。
【0065】
先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47は、図中矢印曲線で示すように、先行スクリュー41とは逆方向で、後続スクリュー42と同方向に回転する。
図5に示す端部円VRC’と壁面20dとの間においては、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bは存在しないので、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47は、新規掘削面である上面CSを基準として掘削深さHa’で貨物Cの掘削等を行う。
【0066】
しかし、後続スクリュー42が担うはずの深さHar’相当の貨物Cは掘削等されずに、水平搬送装置40が貨物倉20内を1周してくると、新規掘削面である上面CS上にHar’相当の新規層が残留していることなる。この結果として、先行側補助水平スクリュー部46は、厚さHa’+Har’相当の新規層を掘削等することとなる。
【0067】
先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47により掘削等された貨物Cは、移動スクリュー47によって貨物倉20の中心軸P側に向かって水平搬送され、その途中から先行スクリュー41及び後続スクリュー42によって、センターコラム14まで水平搬送される。
【0068】
このように構成された先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47は、揚(集荷)荷役時において、壁面20dの形状に応じて移動範囲NZ内で移動スクリュー47の軸方向に移動する。
図5においては、移動スクリュー47のスクリュー羽根47bの中心軸P側の端部は、基点位置(距離Lroの位置)から端部円VRC’からの距離Lrmで示す位置まで、すなわち距離(Lro−Lrm)だけ壁面20d側へ移動した状態となっている。
【0069】
この移動スクリュー47の移動量を上述したように制御することにより、多角筒形を構成する壁面20dを有する貨物倉20において、壁面20dと仮想基準円VRCとの間に存在する貨物Cを先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47により強制的に掘削等することができる。これにより、揚荷役時に貨物倉20内に残留する貨物Cの量を最少限に止めることが可能となる。
【0070】
また、先行側補助水平スクリュー部46を備えることにより、貨物Cが貨物倉20内で擬似固化する特性を有する場合においても、壁面20d側に大量の貨物Cが残留することがないので、不定期な貨物Cの崩落による水平搬送装置40の埋没や、落下した貨物Cによる水平搬送装置40の故障を防止することが可能となる。更に、貨物Cを強制的に掘削等して貨物倉20の中心部に向かって水平搬送することができるので、単位時間当たりの払出量を一定に制御することも可能となる。
【0071】
なお、本実施形態においては、先行側補助水平スクリュー部46は、仮想基準円VRCの中心(中心軸P)を通る線上に移動スクリュー47の軸心が重なる状態に設置されているが、各スクリュー41,42のスクリュー軸41a,42aと上記軸心とが例えば平行となるように先行側補助水平スクリュー部46を設けても、同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
このように、本実施形態に係る水平スクリュー式サイロ10は、特に揚荷役時の貨物倉20内に残留する貨物Cを最少限に止めるためになされたものである。一方で、積荷役時には先行側補助水平スクリュー部46の移動フレーム47cは、基点位置に固定された状態(つまり、移動スクリュー47が基点位置に固定された状態)で、貨物倉20内への貨物Cの積み込みが行われる。
【0073】
このとき、積載された貨物Cの上面CSの周囲に息角面による法面が形成され、貨物倉20内に貨物Cで充満されない空間が残るが、この空間はごく僅かであり、仮想基準円VRCに接する壁面20dでこれらの空間が分断される状態となる。このため、法面の崩落が起こったとしても、貨物倉20内の各機器の損傷や重大な水平スクリュー式サイロの質量中心の移動などを引き起こすことはない。
【0074】
水平搬送装置40の各スクリュー41,42は、貨物Cを貨物倉20の中心部と壁面20dとの間で水平方向に搬送し、散布や分散、集荷や収集を行うものである。これらは、相互に逆方向に回転するように駆動機43,44により駆動される。各スクリュー41,42は、例えば正回転では貨物Cが壁面20d側に移動し、逆回転では貨物Cがセンターコラム14側に移動するように構成されている。
【0075】
テレスコピックシュート13は、水平スクリューコンベア12からの貨物Cを、水平搬送装置40に対して貨物Cの自由落下により供給するものであり、水平搬送装置40の上下移動に伴って、伸縮するように構成されている。水平スクリューコンベア12は、旋回フレーム30の旋回に伴って旋回し、この水平スクリューコンベア12の一端側が供給シュート11cの下方に配置され、他端側がテレスコピックシュート13の上方に配置されている。
【0076】
テレスコピックシュート13の下端は、先行及び後続スクリュー41,42間のセンターコラム14の近傍位置に配置される。従って、テレスコピックシュート13は、積荷役の際に貨物Cを旋回する水平搬送装置40の上に確実に落とすためのフィーダの役割を担っている。
【0077】
また、
図3に示すように、水平スクリュー式サイロ10の外部の揚荷役設備として、一端側がセンターコラム14の排出口29の下方に配置された水平方向搬送を行う排出コンベア18と、この排出コンベア18の他端側から貨物Cを上方向に搬送する上方向搬送装置8(
図1参照)とを備える。揚荷役設備は、その他、図示は省略するが、上甲板5上に設けられた水平搬送装置や、陸上側荷役設備と接続される接続用搬送装置8a(
図1参照)等を備えて構成される。
【0078】
排出コンベア18は、例えばスクリューコンベアやベルトコンベア等で構成される。上方向搬送装置8は、排出コンベア18で搬送された貨物Cを、例えば上甲板5上に搬送する装置であり、垂直方向又は斜め上下方向に配置されたスクリューコンベア、ベルトコンベア、バケットコンベア等で構成され、船首部6側、船尾部7側、又はこれらの中央部分等に配置される。接続用搬送装置8aは、上方向搬送装置8で搬送された貨物Cを接続部を介して、陸上側荷役設備に搬送する装置であり、陸上側荷役設備に貨物Cを搬送することができる。
【0079】
一方、水平スクリュー式サイロ10の外部の積荷役設備としては、
図2に示すように、一端が接続用搬送装置8bと接続された分配装置8cに接続されると共に、他端が水平スクリュー式サイロ10の貨物供給口11bに接続された供給装置9を備える。陸上側に荷役設備から搬送された貨物Cは、接続用搬送装置8bを介して分配装置8cにて分配され、各供給装置9を通して水平スクリュー式サイロ10に適宜分配供給される。
【0080】
供給装置9は、分配装置8cから供給される貨物Cを水平方向に搬送して、各水平スクリュー式サイロ10の貨物供給口11bに供給する装置である。この供給装置9は、例えば水平方向のスクリューコンベア、ベルトコンベア、バケットコンベア等の搬送装置で構成される。
【0081】
ここで、水平スクリュー式サイロ10を利用した積荷役について説明する。積荷役は、貨物Cを、陸上側荷役設備、接続用搬送装置8b、分配装置8c、供給装置9、水平スクリューコンベア12、テレスコピックシュート13、水平搬送装置40を経由して、貨物倉20内に収容する荷役である。
【0082】
すなわち、まず、貨物運搬船1が積荷地の岸壁に着岸すると、図示しない接続部により陸上側荷役設備と分配装置8cとを接続用搬送装置8bを介して接続する。そして、陸上側荷役設備から搬送された貨物Cを、接続用搬送装置8bを介して分配装置8cに供給し、供給装置9を介して各水平スクリュー式サイロ10の貨物倉20の上部に設けられた貨物供給口11bに供給する。
【0083】
貨物供給口11bに供給された貨物Cは、供給シュート11cから水平スクリューコンベア12に落下し、水平方向に搬送されてテレスコピックシュート13に供給される。テレスコピックシュート13に供給された貨物Cは、テレスコピックシュート13内を自由落下等することにより、水平搬送装置40のセンターコラム14側に搬送される。
【0084】
水平搬送装置40は、水平搬送装置40に搬送された貨物Cが、例えば先行及び後続スクリュー41,42を正回転させることにより、水平搬送装置40のセンターコラム14側から壁面20d側に水平搬送されるように構成されている。また、積荷役開始前に、水平搬送装置40は、予め設定されている水平搬送装置40の貨物倉20内における下限位置レベルから所定の高さを維持する位置に移動される。また、水平搬送装置40に設けられている先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47は、前述のように基点位置に固定される。
【0085】
このような状態となった水平搬送装置40に搬送された貨物Cは、水平搬送され、各スクリュー41,42の近傍、下方の空間に、センターコラム14側から壁面20d側に向かって水平搬送装置40に沿って順次収容される。このように、貨物Cは、貨物倉20の遠心方向(放射方向)に散布される。
【0086】
そして、この遠心方向の一帯に貨物Cが均されて収容されると、旋回フレーム30を予定の角度だけ旋回させて水平搬送装置40を仮想基準円VRCに沿った円周方向(積荷役時の旋回方向T’、
図4中矢印参照)に移動させ、更にその遠心方向の一帯に貨物Cを均して収容する。
【0087】
この処理を繰り返し或いは連続的に行って、水平搬送装置40を中心軸Pを中心に360°旋回させて一周させると、その高さにおける貨物Cの均し及び収容の積荷が終了する。積荷役では、このような水平搬送装置40の旋回によって、貨物Cを貨物倉20の仮想基準円VRCに沿った円周方向に均等に散布して収容する。
【0088】
そして、多角筒形の貨物倉20における一周分の貨物Cの均し及び収容が終了した後、旋回フレーム30のウィンチ35により水平搬送装置40を吊り下げている吊下げワイヤ34を巻き上げて、水平搬送装置40の高さを所定量高くする。その後、この高さにおける一周分の貨物Cの均し及び収容が終了したら、更に水平搬送装置40の高さを所定量高くする。
【0089】
このような処理を繰り返して、貨物Cの均し及び収容を底面部20bの直上から満載状態まで行うことで貨物倉20内に貨物Cを満載状態とし、積荷役を終了する。貨物倉20内への貨物Cの積荷役を各水平スクリュー式サイロ10で同時並行又は順次行って、全ての水平スクリュー式サイロ10を貨物Cの満載状態とする。これにより、水平スクリュー式サイロ10への貨物Cの積荷役を完了する。
【0090】
次に、水平スクリュー式サイロ10を利用した揚荷役について説明する。揚荷役は、水平スクリュー式サイロ10の貨物倉20内に積載された貨物Cを、水平搬送装置40、センターコラム14、排出コンベア18、上方向搬送装置8、上甲板5上の水平搬送装置及び接続用搬送装置8aを経由して、陸上側荷役設備に揚荷する荷役である。
【0091】
すなわち、まず、貨物運搬船1が揚荷地の岸壁に着岸すると、接続部により陸上側荷役設備と接続用搬送装置8aとを接続する。次に、水平搬送装置40の水平スクリュー41,42を積荷役のときとは逆回転させ、その後、旋回フレーム30から水平搬送装置40を吊り下げている吊下げワイヤ34をウィンチ35により繰り出して、水平搬送装置40を、その高さが搭載している貨物Cの上面CSに対して、所定の相対高さとなるように移動させる。
【0092】
次に、旋回フレーム30を所定の旋回速度で旋回させ、水平搬送装置40を積荷役のときとは反対の旋回方向Tに旋回させつつ、先行側補助水平スクリュー部46の移動フレーム47cを適宜移動させて移動スクリュー47の位置を上述したように変化させながら、各スクリュー41,42を回転させることにより、貨物Cを水平搬送装置40の壁面20d側からセンターコラム14側へ掻き取りながら水平搬送する。この水平搬送により、貨物Cは、水平搬送装置40の排出端から、センターコラム14の受入部を通ってセンターコラム14内に搬入され、内部で落下してセンターコラム14の下方に搬送される。
【0093】
そして、旋回フレーム30を連続的に旋回させ、水平搬送装置40を中心軸P周りに360°旋回させると、その高さにおける貨物Cのセンターコラム14への搬送が終了する。揚荷役では、このような水平搬送装置40の旋回によって、貨物Cを貨物倉20からセンターコラム14に集荷する。なお、旋回フレーム30の旋回速度を制御することなどによって、時間当たりの揚荷量を制御することができる。
【0094】
そして、多角筒形の貨物倉20における一周分の貨物Cの集荷が終了すると、旋回フレーム30から水平搬送装置40を吊り下げている吊下げワイヤ34を繰り出して、水平搬送装置40の高さを所定量低くする。その後、この高さにおける一周分の貨物Cの集荷が終了したら、更に水平搬送装置40の高さを所定量低くする。
【0095】
このような処理を繰り返して、貨物Cの集荷を貨物倉20内で満載状態の貨物Cの上面CSから底面部10bの直上まで行うことで、壁面20dの近傍を含む貨物倉20内の貨物Cをセンターコラム14内に集荷して空荷状態とする。センターコラム14の下部に搬送され排出口29から排出された貨物Cを、水平スクリュー式サイロ10の下方に配置された排出コンベア18により水平方向に搬送する。
【0096】
そして、この排出コンベア18により搬送された貨物Cを、上方向搬送装置8により上甲板5上に搬送し、上甲板5上の水平搬送装置、接続用搬送装置8a及び接続部を介して陸上側荷役設備に搬送する。これを、各水平スクリュー式サイロ10の貨物倉20内の貨物Cの全てについて行う。これにより、水平スクリュー式サイロ10の揚荷役を完了する。
【0097】
このように、本発明の第1の実施形態に係る水平スクリュー式サイロ10では、水平搬送装置40に設けられた先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47は、中心軸Pの周りに水平搬送装置40が旋回するに伴う壁面20dと仮想基準円VRCとの間の距離の変化に対応して移動し、後続スクリュー42では掘削等されない壁面20d側の貨物Cを掘削等して水平方向に搬送する。
【0098】
これにより、後続スクリュー42で貨物Cを掘削等できない範囲を先行側補助水平スクリュー部46がカバーし、多角筒形の貨物倉20内に積載されて、特に壁面20d側で擬似固化した貨物Cであっても確実に掘削、解砕して水平搬送装置40で水平搬送することができる。このため、掻き残しがなく水平搬送装置40による安定した揚荷役を行うことが可能となる。
【0099】
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係る水平スクリュー式サイロの一部の拡大上面図である。また、
図12は、水平スクリュー式サイロの一部の簡易上面図である。更に、
図13は、
図12のF−F’拡大断面図である。なお、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を附して説明を割愛する。第2の実施形態に係る水平スクリュー式サイロは、第1の実施形態に係る水平スクリュー式サイロの水平搬送装置40に、更に他の構成を組み合わせたものである。
【0100】
すなわち、
図11〜
図13に示すように、水平搬送装置40Aは、先行側補助水平スクリュー部46と共に、スクリューフレーム部48の揚荷役時の旋回方向Tの後方側に配置された後続側補助水平スクリュー部50を備える点が、第1の実施形態に係る水平搬送装置40と相違している。
【0101】
なお、本実施形態においては、先行側補助水平スクリュー部46は、移動範囲NZ内においては、移動スクリュー47のスクリュー羽根47bの中心軸P側の端部が、先行スクリュー41のスクリュー羽根41bの壁面20d側の端部よりも、中心軸P側に位置するように構成される。また、先行側補助水平スクリュー部46は、移動スクリュー47のスクリュー羽根47bの外周の下端位置73aが、先行スクリュー41のスクリュー羽根41bの外周の下端位置71aと、貨物倉20の上下方向のほぼ同位置となるように配置される。
【0102】
後続側補助水平スクリュー部50は、先行側補助水平スクリュー部46と同様の構成を備えている。後続側補助水平スクリュー部50は、スクリューフレーム部48に対して移動可能に配置された移動フレーム51cと、この移動フレーム51cに取り付けられて、軸心の延長線がセンターコラム14の中心軸Pを略通るように設けられた移動スクリュー51とを備える。
【0103】
また、後続側補助水平スクリュー部50は、軸受部51e,51e’と、駆動機51dと、移動フレーム駆動機51fとを備える。その他のスクリューフレーム部48との取付構成等については、先行側補助水平スクリュー部46と同様である。
【0104】
後続側補助水平スクリュー部50は、このように構成されることにより、移動フレーム駆動機51fを作動させることで、後続側補助水平スクリュー部50の移動スクリュー51を、移動スクリュー51の軸方向に上述したような移動範囲NZと同等の移動範囲NZ’(図示せず)内において移動させることができる。
【0105】
後続側補助水平スクリュー部50は、移動範囲NZ’内においては、移動スクリュー51のスクリュー羽根51bの中心軸P側の端部が、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bの壁面20d側の端部よりも、中心軸P側に位置するように構成される。後続側補助水平スクリュー部50は、移動スクリュー51のスクリュー羽根51bの外周の下端位置74aが、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bの外周の下端位置72aと貨物倉20の上下方向のほぼ同位置となるように配置されている。
【0106】
なお、
図12においては、先行スクリュー41のスクリュー羽根41bの壁面20d側の端部が旋回することにより形成される端部円VRC’’は、後続スクリュー42のスクリュー羽根42bの壁面20d側の端部が旋回することにより形成される端部円VRC’よりも、僅かに直径が小さい円を構成している例を示すが、端部円VRC’’の直径と端部円VRC’の直径は、それぞれ、駆動機43,44及び軸受部61a,62aの寸法や保守用空間等に依存して決定されるものであり、端部円VRC’’の直径と端部円VRC’の直径が等しい場合や端部円VRC’’の直径が、端部円VRC’の直径よりも大きい場合も有り得る。
【0107】
後続側補助水平スクリュー部50の移動スクリュー51は、
図13中矢印曲線で示すように、後続スクリュー42とは逆方向で、先行スクリュー41と同方向に回転する。仮想基準円VRCの近傍内側においては、各スクリュー41,42のスクリュー羽根41b,42bは存在しないので、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47は、新規掘削面である上面CSを基準として掘削深さHa相当と、後続側補助水平スクリュー部50の移動スクリュー51により掘削等され置き去りにされた解砕済みの厚さBr相当の貨物Cを掘削等する。そして、掘削等した貨物Cを貨物倉20の中心部側へ水平搬送し、途中で先行スクリュー41に引き継いでセンターコラム14側に水平搬送する。
【0108】
一方、後続側補助水平スクリュー部50の移動スクリュー51は、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47による掘削等の後の掘削面CS’から掘削深さHb相当の貨物Cを掘削等して、掘削された貨物Cの一部を壁面20d近傍に置き去りにしつつ、移動スクリュー羽根51bの中心軸P側の端部まで水平搬送した後に置き去りにする。
【0109】
置き去りにされた貨物Cは、水平搬送装置40Aが貨物倉20内を1周したときに、先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47及び先行スクリュー41によって、新規に掘削等された貨物Cと共に掘削等されて貨物倉20の中心部側に水平搬送される。
図12に示すように、先行側及び後続側補助水平スクリュー部46,50は、それぞれ個別に制御される。
【0110】
従って、本実施形態に係る水平スクリュー式サイロにおいても、多角筒形の貨物倉20内の貨物Cを強制的に掘削等することができ、特に貨物Cが貨物倉20内で擬似固化する特性を有する場合においても、貨物倉20内に残留する貨物Cを最少限に止めることができると共に、安定した揚荷役が可能になる。第1の実施形態に係る水平搬送装置40と比べて優位な点は、以下の通りである。
【0111】
すなわち、(1)先行側補助水平スクリュー部46の移動スクリュー47が担う掘削深さを比較すると、第1の実施形態の約半分程度であるため、移動スクリュー47の負荷を、移動スクリュー51に分担することができ、低減することが可能である。また、(2)複数の補助水平スクリュー部をスクリューフレーム部48の旋回方向Tの前後位置に配置し、各移動スクリューの回転方向が逆方向であるので、スクリューフレーム部48を旋回させようとする力が相殺される。従って、水平搬送装置40Aの安定した旋回が可能となる。
【0112】
なお、上述した実施形態においては、好ましい一例として貨物倉20が8角筒形である場合について説明したが、本発明における筒形は、多角筒形、楕円筒形、長円筒形及び貨物倉の上下方向に滑らかにこれらの筒形が接続されてなる筒形等を含むものである。また、本発明における貨物倉20の中心部(中心軸の位置)は、貨物倉20内部に円を仮想し、この仮想した円の中心を指す。そして、好ましい中心位置は、例えば次のようになる。
【0113】
すなわち、(a)対辺が互いに平行となる多角筒形の場合は各辺と対辺の中点を結ぶ線の交点を貨物倉20の中心部とする。また、貨物倉20の形状が上記(a)以外の場合は筒形の壁面の少なくとも2箇所に内接し、壁面と交差しない最大直径の円を仮想して、この仮想した円の中心を貨物倉20の中心部とする。なお、条件次第で複数の円が仮想される場合は、その中の任意の一つを選択し、選択した仮想円の中心を貨物倉20の中心部としても良い。