【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0052】
実施例1 pHの検討
5M硝酸アンモニウム水溶液にアンモニアを適量添加することにより、pHが4.74、6.51、7.50、8.50、9.40、10.00の水溶液を調製し、各溶液に炭酸カルシウム粉末を5g/Lの割合で混合した後、40mLを80mL容のテフロン(登録商標)製の容器に入れ、小型オートクレーブで内部温が160℃になるまで15分かけて加熱し、160℃で7時間保持した。次いで、冷却速度5℃/hrで20℃まで冷却した後、生じた析出物を目視で観察した。なお、上記処理中、オートクレーブ自体を18r/minで回転させることにより混合液を攪拌した。
【0053】
その結果、pHが9.40以上の場合、過剰に微細な単結晶が析出したのみであり、適度な大きさの単結晶は得られなかった。
【0054】
また、pHが8.50の場合、最高粒子径が350μm程度の結晶が得られたものの、エッジが丸みを帯び、特定の結晶面を有していない透明性の低いものであった。
【0055】
さらに、pHが6.51以下の場合、単結晶は得られたものの、最高粒子径が200μm程度と径が小さくなり、析出量も3.1gと減少した。
【0056】
一方、pHが7.50の場合、最高粒子径が350μm程度の単結晶粒子が多数得られた。得られた単結晶粒子を濾別し、乾燥した上で秤量したところ、収量3.6g、収率72%であった。
【0057】
以上の結果により、溶液のpHとしては7.0以上、8.0以下が好適であると結論付けた。
【0058】
実施例2 原料混合液における硝酸アンモニウム水溶液濃度の検討
2M、3M、4Mおよび5Mの各硝酸アンモニウム水溶液に、アンモニアを適量添加することによりpHを7.50に調節し、各水溶液へ炭酸カルシウム粉末を5g/Lの割合で混合した後、上記実施例1と同様の条件で加熱し、徐冷した。得られた単結晶を、開口径が150,250,355,500,710および1000μmの標準篩で篩分けし、メジアン径を求めた。
【0059】
その結果、得られた単結晶のメジアン径は、それぞれ90μm、150μm、200μmおよび140μmであった。かかるデータから相対値として判断する限り、硝酸アンモニウム水溶液の濃度が3M以上、5M以下である場合に良好な結果が得られた。しかし、硝酸アンモニウム水溶液の濃度が3M以下の場合であっても、原料混合液における炭酸カルシウム粉末の割合を4.5g/L以下とすることにより良好な結果が得られることが分かった。従って、原料混合液における硝酸アンモニウムの濃度としては2M以上、5M以下が好適であることが明らかとされた。
【0060】
実施例3 加熱温度の検討
5M硝酸アンモニウム水溶液にアンモニアを適量添加することにより、そのpHを7.50に調節し、炭酸カルシウム粉末を5g/Lの割合で混合した後、内容積が1400mLのオートクレーブを用い、原料混合液を250r/minで攪拌しながら上記実施例1と同様の条件で加熱し、徐冷した。その結果、生じた単結晶は、テフロン容器の内壁に付着しつつ成長していた。
【0061】
次いで、設定最高温度を160℃から130℃に低下させて同様の実験を行ったが、結果に変化は見られなかった。
【0062】
しかし、設定最高温度を120℃に低下させたところ、過剰に微細な結晶が浮遊して得られた。
【0063】
以上の結果より、原料混合液は、いったん125℃以上に加熱する必要があると結論付けた。
【0064】
実施例4 冷却速度の検討
5M硝酸アンモニウム水溶液にアンモニアを適量添加することにより、そのpHを7.50に調節し、炭酸カルシウム粉末を5g/Lの割合で混合した後、冷却速度を5℃/hrから2.5℃/hrに変更した以外は上記実施例1と同様の条件で再結晶を行った。その結果、全ての生成物は容器内壁や攪拌子に付着して成長し、メジアン径は170μmから230μmになった。
【0065】
徐冷温度をさらに1℃/hrとしたところ、メジアン径は240μmとなり、500μm以上の大きさの単結晶もわずかではあるが生成するようになった。
【0066】
以上の結果より、冷却速度は2.5℃/hr以下が特に好適であることが明らかとなった。
【0067】
実施例5 攪拌速度の検討
5M硝酸アンモニウム水溶液にアンモニアを適量添加することによりpHを7.50に調節し、炭酸カルシウム粉末を5g/Lの割合で混合した後、攪拌速度を50r/min、100r/min、250r/minまたは400r/minに変更した以外は上記実施例1と同様の条件で再結晶を行った。
【0068】
その結果、攪拌速度が400r/minの場合では浮遊している単結晶の量が増加した。また、各単結晶のメジアン径は、120μm、175μm、170μm、105μmであった。
【0069】
以上の結果より、攪拌速度としては80r/min以上、300r/min以下が好適であると結論付けた。
【0070】
実施例6 原料混合液における炭酸カルシウム粉末の割合の検討
5M硝酸アンモニウム水溶液にアンモニアを適量添加することによりpHを7.50に調節し、原料混合液における炭酸カルシウム粉末の割合を、5g/L、5.25g/L、5.5g/Lまたは5.75g/Lとし、設定最高温度を145℃、155℃、165℃または175℃とし、冷却速度を2.5℃/hrとした以外は上記実施例1と同様の条件で再結晶を行った。なお、上記割合を高くするほど設定最高温度を高めたのは、炭酸カルシウム粉末の確実な溶解のためである。得られた各単結晶のメジアン径を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
上記結果のとおり、原料混合液における炭酸カルシウム粉末の割合を5.5g/Lとした場合には、そのメジアン径は235μmとなり、また、335μm以上の単結晶量も増加した。
【0073】
実施例7 再加熱処理
炭酸カルシウム単結晶を応力センサーとして用いる場合、以上の実験で得られた粒子径よりも、もう少し大きくてもよい。そこで、粗大にならない程度で粒子径を大きくする条件を検討した。
【0074】
上記実施例1の条件において、設定最高温度を165℃とし、いったん冷却速度2.5℃/hrで110℃または90℃まで徐冷した後、再度15分かけて165℃まで加熱し、7時間保持してから常温まで冷却速度2.5℃/hrで徐冷した。
【0075】
再加熱せずに得られたカルサイト単結晶のメジアン径は230μmであったが、110℃または90℃まで徐冷した後に再加熱した場合のメジアン径は、それぞれ320μm、340μmと大きくなった。かかる結果より、加熱後にいったん冷却して適度に再加熱すれば、より大きな結晶が得られることが明らかにされた。その理由としては、再加熱により比較的小さな結晶は完全に溶解するが、大きな結晶は残るため、その状態から徐冷を開始することによってより大きな結晶に成長させることが可能になることによると考えられる。
【0076】
実施例8 カルサイト単結晶の原料としての利用
さらに、原料として市販の炭酸カルシウム粉末に加えてカルサイト単結晶を用いることにより、徐冷を開始する時点で微細な炭酸カルシウム粉末を全て溶解させた上でカルサイト単結晶が残る条件を設定し、その条件から徐冷を開始することを考えた。
【0077】
先ず、5M硝酸アンモニウム水溶液にアンモニアを適量添加することによりpHを7.50に調節し、当該水溶液(1050mL)に炭酸カルシウム粉末(5.25g)を加えた。当該原料混合液における炭酸カルシウム粉末の割合は5g/Lである。当該原料混合液を用い、設定最高温度を130℃にした以外は上記実施例1と同様の条件で再結晶を行った。さらに、原料炭酸カルシウムとして、市販の炭酸カルシウム粉末に加えて径が250μmから355μmのカルサイト単結晶を用いて、同様に再結晶を行った。なお、設定最高温度を130℃としたのは、1回目の加熱でカルサイト単結晶が完全に溶解しないようにするためである。使用した原料炭酸カルシウムと得られた単結晶のメジアン径を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
実験番号1〜2においては、多くの結晶はオートクレーブ中の容器の内壁に付着して生成していた。一方、実験番号3〜5においては、ほとんどの結晶は浮遊した状態にあった。また、浮遊している結晶は、結晶面が発達しておらず、自形を有さない丸みを帯びた形であり(
図1)、構造体材料などに混入して用いる圧力センサーとして適するものといえる。さらに、実験番号3〜5では、メジアン径が増加しており、かかる態様の効果を実証するものとなっている。以上の結果より、原料炭酸カルシウムとしてカルサイト単結晶を用いて再加熱を行うに当たり、1回目の加熱処理で当該単結晶が残るようにすれば、最終的に得られる結晶の径を増大できることが明らかとなった。
【0080】
実施例9 加熱温度と冷却速度の検討
5M硝酸アンモニウム水溶液にアンモニアを適量添加することにより、pHが7.50の水溶液を調製した。当該水溶液に炭酸カルシウム粉末を15g/Lの割合で混合した後、45mLを内容積90mL容のテフロン内張りオートクレーブに入れた。内部温度が200℃になるまで15分かけて加熱し、200℃で7時間保持した。次いで、冷却速度1℃/hr、2.5℃/hrまたは5℃/hrで20℃まで冷却した。
【0081】
その結果、冷却速度が5℃/hrのとき、得られたカルサイト単結晶のメジアン径は280μmとなり、2.5℃/hrのときのメジアン径は345μmとなった。また、冷却速度が1℃/hrのときのメジアン径は290μmとなり、応力センサーなどとして極めて利用価値の高いカルサイト単結晶が得られた。また、加熱温度を高めることにより原料炭酸カルシウムの濃度を高めることができ、より一層効率的な製造が可能となった。
【0082】
実施例10 原料炭酸カルシウム濃度の検討
上記実施例9において、冷却速度を2.5℃/hrとした上で、原料炭酸カルシウム濃度を5.5g/L、7g/L、10g/L、15g/L、16g/Lまたは17g/Lに変化させ、同様の実験を行った。
【0083】
その結果、原料炭酸カルシウム濃度が16g/L以下において、メジアン径が280〜345μmのカルサイト単結晶が得られた。また、当然のことながら、原料炭酸カルシウムの濃度が高いほど、目的物であるカルサイト単結晶が比較的大量に得られた。
【0084】
一方、原料炭酸カルシウム濃度を17g/Lとした場合、メジアン径の測定限界である250μm以上のカルサイト単結晶は析出せず、得られたものは微細な粉末状の結晶であった。その理由としては、おそらく原料炭酸カルシウムが200℃では溶解しきれず、残留したためであると考えられる。