(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活物質を構成する遷移金属元素が、マンガン、ニッケルおよびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用電極の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の二次電池用電極の製造方法、二次電池用塗料の製造方法、二次電池用電極、二次電池の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0025】
本発明の二次電池用電極の製造方法は、活物質と、バインダーと、溶媒とを含むスラリーを攪拌して二次電池用塗料を調製する攪拌工程を有し、攪拌工程において、二次電池用塗料が塗工工程で曝される最大のせん断速度よりも3倍以上のせん断速度で、スラリーを攪拌する方法である。本発明の二次電池用電極の製造方法では、スラリーがさらに導電材を含むことが好ましい。
【0026】
<二次電池用電極>
二次電池用電極とは、二次電池の作製に用いられる電極である。
二次電池用電極は、集電体上に、活物質を含む電極合材からなる層が積層された構造をなしている。
二次電池で用いられる電極としては、正極と負極とがある。正極では、電極合材に正極活物質が含まれている。また、負極では、電極合材に負極活物質が含まれている。
二次電池用電極は、一般に、二次電池用塗料の製造工程で得られた二次電池用塗料を、塗工工程において、集電体に塗着し、さらに、乾燥工程において、集電体に塗着した二次電池用塗料を乾燥することにより、二次電池用塗料に含まれる溶媒を除去することによって得られる。
【0027】
[集電体]
集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、ステンレス箔、銅箔などの導電体が用いられる。
正極用の集電体としては、二次電池の正極作動電位において安定であり、薄膜に加工し易く、安価であるという点から、アルミニウム箔が好ましい。
また、負極用の集電体としては、二次電池の負極作動電位において安定であり、薄膜に加工し易いという点から、銅箔が好ましい。
【0028】
[二次電池用塗料]
二次電池用塗料は、二次電池用電極を作製するための塗料である。
二次電池用塗料は、溶媒、バインダー、活物質、導電材などから構成される。
二次電池用塗料は、混合工程と攪拌工程を含む二次電池用塗料の作製工程を経て作製される。
また、二次電池用塗料は、塗料の成分や組成の調整や、塗料の作製条件の調整により、塗工工程や乾燥工程に用いられる設備の能力に適した流動特性や乾燥特性が得られるように作製される。
【0029】
{溶媒}
溶媒としては、水系溶媒または有機溶媒が用いられる。
有機溶媒としては、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸メチルなどのエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と言うことがある。)などのアミド系溶媒が挙げられる。
溶媒には必要に応じて増結剤を添加してもよい。増結剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0030】
{活物質}
活物質としては、電気化学的な充電や放電が可能な材料が用いられる。
活物質としては、具体的には、リチウム、酸素、炭素、フッ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、タングステンを構成元素とするものが挙げられる。
【0031】
活物質の粒子径は、通常、0.001〜100μmである。活物質の粒子径は、好ましくは0.005〜5μmであり、より好ましくは0.01〜1μmであり、さらに好ましくは0.05〜0.5μmである。
活物質の一次粒子の粒子径は、活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定できる。
【0032】
活物質の比表面積は、通常、0.01〜200m
2/gであり、好ましくは5〜100m
2/gである。
活物質の比表面積は、窒素ガスを用いるBET比表面積を測定することにより、測定できる。
BET比表面積の測定には、気体吸着法による比表面積計や水銀圧入法による比表面積計を用いることができる。
【0033】
(正極活物質)
正極活物質としては、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)が挙げられ、負極よりも高い電位で電気化学的な充電や放電が可能な材料が挙げられる。これらの正極活物質は、1種または2種以上が組み合わされて用いられる。
正極活物質としては、具体的には、リチウム、酸素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、スズ、硫黄、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、コバルト、ガリウム、モリブデン、インジウム、タングステンを構成元素とするものが挙げられる。これらのなかでも、特に好ましくは、正極活物質を構成する遷移金属元素がマンガン、ニッケルおよびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種であるものであり、最も好ましくは正極活物質を構成するアルカリ金属元素がリチウムおよびナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であるものである。
【0034】
以下、正極活物質を例示する。
前記酸化物としては、具体的には、遷移金属酸化物、層状構造を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物、スピネル構造を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物、オリビン構造を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物、Li
2MO
3(ここで、Mは遷移金属である。)の組成を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物、さらに、これらの固溶体が挙げられる。
遷移金属酸化物としては、M
xO
y(ここで、Mは遷移金属、xとyは正の実数である。)の組成で表される酸化物であり、具体的には、MnO
2、V
2O
5、Cr
3O
8が挙げられる。
層状構造を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物としては、例えば、LiMO
2(ここで、Mは遷移金属である。)の組成で表される複合酸化物が挙げられ、具体的には、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2、および、これらの固溶体が挙げられる。
【0035】
スピネル構造を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物としては、例えば、LiM
2O
4(ここで、Mは遷移金属である。)の組成で表される複合酸化物が挙げられ、具体的には、LiMn
2O
4、LiNi
1/2Mn
3/2O
4が挙げられる。
オリビン構造を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物としては、例えば、LiMPO
4(ここで、Mは遷移金属である。)の組成で表される複合酸化物が挙げられ、具体的には、LiFePO
4、LiMnPO
4、LiCoPO
4、および、これらの固溶体が挙げられる。
Li
2MO
3(ここで、Mは遷移金属である。)の組成を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物としては、具体的には、Li
2MnO
3が挙げられる。
【0036】
上記の酸化物の他に、前記酸化物としては、Li
2FeSiO
4などのLi
2MSiO
4(ここで、Mは遷移金属である。)の組成を有するアルカリ金属遷移金属複合酸化物が用いられる。
【0037】
前記硫化物としては、具体的には、M
xO
y(ここで、Mは遷移金属、xとyは正の実数である。)の組成を有する硫化物が挙げられる。
硫化物としては、例えば、Fe
xS
y、Ni
xS
y、Mn
xS
y、Co
xS
y、Mo
xS
yが挙げられる。
【0038】
これらの酸化物と硫化物は、併用して用いてもよく、結晶質または非晶質のいずれであってもよい。
また、これらの酸化物と硫化物は、主に、正極集電体に担特して、電極(正極)として用いられる。
【0039】
正極活物質の結晶構造は特に制限されないが、好ましい結晶構造としては、層状構造が挙げられる。また、正極活物質の結晶構造は、六方晶型または単斜晶型の結晶構造がより好ましい。
前記六方晶型の結晶構造は、P3、P3
1、P3
2、R3、P−3、R−3、P312、P321、P3
112、P3
121、P3
212、P3
221、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P−31m、P−31c、P−3m1、P−3c1、R−3m、R−3c、P6、P6
1、P6
5、P6
2、P6
4、P6
3、P−6、P6/m、P6
3/m、P622、P6
122、P6
522、P6
222、P6
422、P6
322、P6mm、P6cc、P6
3cm、P6
3mc、P−6m2、P−6c2、P−62m、P−62c、P6/mmm、P6/mcc、P6
3/mcmおよびP6
3/mmcからなる群より選ばれるいずれか1つの空間群に帰属する。
前記単斜晶型の結晶構造は、P2、P2
1、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P2
1/m、C2/m、P2/c、P2
1/cおよびC2/cからなる群より選ばれるいずれか1つの空間群に帰属する。
さらに好ましくは、正極活物質の結晶構造は、六方晶型の結晶構造に含まれるR−3mまたは単斜晶型の結晶構造に含まれるC2/mの空間群に帰属することが好ましい。
【0040】
なお、活物質の結晶構造は、CuKα線を線源とする粉末X線回折測定により得られる粉末X線回折図形から同定される。粉末X線回折測定におけるX線の線源としては、CuKα線以外に、CoKα線、MoKα線またはWKα線が用いられる。
【0041】
(負極活物質)
負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属または合金が挙げられ、正極よりも低い電位で電気化学的な充電や放電が可能な材料が挙げられる。これらの負極活物質は、1種または2種以上が組み合わされて用いられる。
【0042】
以下、負極活物質を例示する。
前記炭素材料としては、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体が挙げられる。
前記酸化物としては、具体的には、SiO
2、SiOなど式SiO
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるケイ素の酸化物;TiO
2、TiOなど式TiO
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるチタンの酸化物;V
2O
5、VO
2など式VO
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるバナジウムの酸化物;Fe
3O
4、Fe
2O
3、FeOなど式FeO
x(ここで、xは正の実数である。)で表される鉄の酸化物;SnO
2、SnOなど式SnO
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるスズの酸化物;WO
3、WO
2など一般式WO
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるタングステンの酸化物;Li
4Ti
5O
12、LiVO
2などのリチウムとチタンおよび/またはバナジウムとを含有する複合金属酸化物が挙げられる。
【0043】
前記硫化物としては、具体的には、Ti
2S
3、TiS
2、TiSなど式TiS
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるチタンの硫化物;V
3S
4、VS
2、VSなど式VS
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるバナジウムの硫化物;Fe
3S
4、FeS
2、FeSなど式FeS
x(ここで、xは正の実数である。)で表される鉄の硫化物;Mo
2S
3、MoS
2など式MoS
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるモリブデンの硫化物;SnS
2、SnSなど式SnS
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるスズの硫化物;WS
2など式WS
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるタングステンの硫化物;Sb
2S
3など式SbS
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるアンチモンの硫化物;Se
5S
3、SeS
2、SeSなど式SeS
x(ここで、xは正の実数である。)で表されるセレンの硫化物が挙げられる。
【0044】
前記窒化物としては、具体的には、Li
3N、Li
3−xA
xN (ここで、AはNiおよび/またはCoであり、O<x<3である。)などのリチウム含有窒化物が挙げられる。
【0045】
これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、併用して用いてもよく、結晶質または非晶質のいずれであってもよい。
また、これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、主に、負極集電体に担持して、電極(負極)として用いられる。
【0046】
{導電材}
導電材は、電極の電子伝導性やイオン伝導性が十分でない場合に、電極合材に添加される。特に、正極活物質は、電子伝導性が低いため、二次電池用電極の電子伝導性を高めるために、正極合材に導電材が添加されることが好ましい。また、二次電池の特性として高いレート特性が要求される場合、その二次電池に使用する電極のイオン伝導性を高めるために、電極合材に導電材を添加する。
【0047】
導電材としては、炭素材料が用いられる。
炭素材料としては、黒鉛粉末、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)および繊維状炭素材料(例えば、黒鉛化炭素繊維、カーボンナノチューブ)が挙げられる。
電極中の導電材の割合を高めることにより、電極の電子伝導性およびイオン伝導性が高くなり、充放電効率およびレート特性を向上させることができる。電極中の導電材の割合が高すぎると、電極合材と正極集電体の密着性が低下し、内部抵抗が増大することがある。通常、電極合材中の導電材の割合は、活物質100重量部に対して1〜20重量部である。
導電材は、単一材料でもよいし、複数の材料から構成されていてもよい。特に、活物質の電子伝導性が十分でない場合には、活物質と導電材を複合化することが好ましい。
【0048】
二次電池用塗料に導電材が含まれる場合、二次電池用塗料の粘度が高くなるとともに、粘度のせん断速度依存性が大きくなり、二次電池用塗料の塗工性を攪拌工程で調整することがより重要になる。特に、導電材がカーボンブラックである場合には、二次電池用塗料の粘度がより高くなるとともに、粘度のせん断速度依存性がより大きくなるため、二次電池用塗料の塗工性を攪拌工程で調整することがより重要になる。
【0049】
{バインダー}
バインダーとしては、熱可塑性樹脂が用いられる。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVdF」と言うことがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と言うことがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体および四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体(以下、「SBR」と言うことがある。)が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種または2種以上が組み合わされて用いられる。
また、バインダーとして、フッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂を用い、正極合材100重量%中のフッ素樹脂の割合が1〜10重量%、ポリオレフィン樹脂の割合が0.1〜2重量%となるように、正極合材中にフッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂を含有させることによって、正極集電体との密着性に優れた正極合材を得ることができる。
【0050】
<二次電池用電極の作製工程>
二次電池用電極の作製工程は、二次電池用電極を作製する工程である。
二次電池用電極の作製工程は、一般に、二次電池用塗料の作製工程、塗工工程、乾燥工程を含む。二次電池用電極の作製工程は、さらに、プレスエ程、熱処理工程などを含むことがある。
【0051】
[二次電池用塗料の作製工程]
二次電池用塗料の作製工程は、二次電池用塗料を作製する工程であり、混合工程と攪拌工程を含む。
混合工程と攪拌工程は、順次行われるか、あるいは、同時に行われる。また、混合工程と攪拌工程を順次行うことが好ましく、混合工程を行った後、攪拌工程を行うことがより好ましい。
【0052】
{混合工程}
混合工程は、溶媒に、活物質、導電材、バインダーなどを添加し、これらを混合することにより、スラリーを調製する工程である。
【0053】
{攪拌工程}
攪拌工程は、混合工程において得られた、溶媒、活物質、導電材、バインダーなどから構成されるスラリーを攪拌して二次電池用塗料を調製する工程である。
攪拌工程において、スラリーを攪拌することによって、より均一な粒子分散性を有する二次電池用塗料を調製する。十分に高い粒子分散性を有する二次電池用塗料を用いることで、塗工工程において、擦れなどの塗工不良を生じないこと、また、乾燥工程において、電極割れを生じないこと、乾燥性が良好となること、膜厚分布が均一な電極が得られること、電極合材と集電体の密着性が十分な電極が得られること、二次電池用塗料を用いて得られる二次電池用電極を使用して作製された二次電池において、電池としての機能を十分に発揮できることの効果が得られる。
【0054】
特に、粒子径が小さく、表面積が大きな活物質や導電材を含む二次電池用電極を作製する場合には、二次電池用塗料において、十分な粒子分散性を得ることが好ましい。粒子径が小さく、表面積が大きな物質を塗料の構成材料として含む場合には、粒子同士の凝集性が強いため、攪拌工程において、粒子を分離させるためには、微細な空間に大きなせん断力を与えることが好ましい。攪拌工程において、スラリーに大きなせん断力を与えるためには、スラリーを大きな攪拌のせん断速度に曝すことが好ましい。
【0055】
(攪拌のせん断速度)
攪拌のせん断速度は、二次電池用塗料の攪拌工程において、スラリーが曝される速度勾配であり、下記式(1)で表される。
【0057】
攪拌のせん断速度を、後述する塗工のせん断速度の最大値よりも3倍以上大きくすることによって、塗工不良を生じることのない、塗工性の良好な二次電池用塗料が得られる。好ましくは攪拌のせん断速度を5倍以上大きくし、より好ましくは攪拌のせん断速度を10倍以上大きくする。
また、電極合材からなる層(以下、「電極合材層」と言うことがある。)と集電体との剥離強度を高めるためには、攪拌のせん断速度が7500S
−1以上であることが好ましく、より好ましくは10000S
−1以上である。
【0058】
「攪拌の速度」
二次電池用塗料の攪拌工程において、スラリーがせん断力を受ける部分にて、ある一定の流動方向について、スラリーの流動速度の最大値と最小値の差を攪拌の速度とする。
【0059】
「攪拌の間隔」
攪拌の間隔は、攪拌工程において、スラリーがせん断力を受ける部分にて、流動するスラリーについて、ある一定の流動方向に垂直な線上にある2つの点の間隔であり、特に流動方向へのスラリーの速度が最大値となる点と最小値となる点の間隔である。
【0060】
(攪拌方法)
攪拌工程に用いられる攪拌方法としては、インペラ旋回法、ブレード旋回法、旋回薄膜法、ローター/ステーター式ミキサー法、コロイドミル法、高圧ホモジナイザー法がある。
攪拌工程においては、複数の攪拌方法を順番に行ってもよく、また、同時に複数の攪拌方法を用いてもよい。
【0061】
「インペラ旋回法による攪拌工程」
インペラ旋回法は、塗料を入れた容器の内部でインペラ(羽根)を高速で旋回させること、インペラ近傍で塗料が高速で流動することにより生ずるせん断応力を塗料の攪拌に利用する攪拌方法である。
インペラ旋回法を用いた攪拌装置としては、例えば、ディスパーマット(VAM−GEZTMANN社製)、T.K.ホモディスパー(プライミクス社製)が挙げられる。
インペラ旋回法では、インペラの最大周速を攪拌の速度とする。
また、インペラ旋回法では、インペラに接触する塗料の流動速度が最大値となる。インペラから、回転方向に垂直な方向において塗料の流動速度が0m・s
−1となる点までの間隔を、攪拌の間隔とする。
【0062】
「ブレード旋回法による攪拌工程」
ブレード旋回法は、塗料を入れた容器の内部で、単数もしくは複数のブレードを旋回させることにより、容器の底面や側面とブレードとの隙間において塗料が流動することで生ずるせん断応力や、ブレード同士の間の隙間において塗料が流動することで生ずるせん断応力を、塗料の攪拌に利用する攪拌方法である。
ブレード旋回法を用いた攪拌装置としては、例えば、T.K.ハイビスミックス(プライミクス社製)、T.K.ハイビスディスパーミックス(プライミクス社製)、T.K.コンビミックス(プライミクス社製)が挙げられる。
ブレード旋回法において、ブレードと容器の底面や側面との隙間で生ずるせん断応力については、ブレードの最大周速を攪拌の速度とする。ブレード旋回法におけるブレード同士の間の隙間に生ずるせん断応力については、ブレードの最大周速の2倍を攪拌の速度とする。
ブレード旋回法におけるブレードと容器の底面や側面との隙間で生ずるせん断応力については、容器の底面や側面からブレードまでの間隔の最小値を、攪拌の間隔とする。ブレード旋回法におけるブレード同士の間の隙間に生ずるせん断応力については、ブレード同士の旋回においてとられるブレード同士の間隔の最小値を、攪拌の間隔とする。
【0063】
「旋回薄膜法による攪拌工程」
旋回薄膜法は、塗料を入れる円筒形容器と、その内部に容器と一定の間隔を保持して高速回転するホイールとから構成される攪拌装置を用いて、容器とホイールの隙間において、塗料が流動することで生ずるせん断応力を、塗料の攪拌に利用する攪拌方法である。
旋回薄膜法を用いた攪拌装置としては、例えば、フィルミックス(プライミクス社製)が挙げられる。
旋回薄膜法では、ホイールの最大周速を攪拌の速度とする。
旋回薄膜法では、容器の側面とホイールの間隔の最小値を攪拌の間隔とする。
【0064】
「ローター/ステーター式ミキサー法による攪拌工程」
ローター/ステーター式ミキサー法は、塗料中で、ステーターと、その内部においてステーターと一定間隔を保持して高速回転するローターとから構成される攪拌装置を用いて、ステーターとローターの隙間において、塗料が流動することで生ずるせん断応力を、塗料の攪拌に利用する攪拌方法である。
ローター/ステーター式ミキサー法を用いた攪拌装置としては、例えば、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)、ウルトラタラックス(IKA社製)、シルバーソンミクサー(シルバーソン社製)が挙げられる。
ローター/ステーター式ミキサー法では、ローターの最大周速を攪拌の速度とする。
ローター/ステーター式ミキサー法では、ローターとステーターの間隔の最小値を攪拌の間隔とする。
【0065】
「コロイドミル法による攪拌工程」
コロイドミル法は、塗料中で、固定ディスクや固定環と、その内部において固定ディスクや固定環と一定間隔を保持して高速回転するディスクやローターとから構成される攪拌装置を用いて、固定ディスクや固定環とディスクやローターとの間に保たれた狭い隙間において、塗料が流動することで生ずるせん断応力を、塗料の攪拌に利用する攪拌方法である。
コロイドミル法を用いた攪拌装置としては、例えば、T.K.マイコロイダー(プライミクス社製)、Charlotte Colloidmill(CHemicolloid Laboratories社製)、KORUMA Colloidmill (Fryma Koruma社製)が挙げられる。
コロイドミル法では、ディスクやローターの最大周速を攪拌の速度とする。
コロイドミル法では、固定ディスクや固定環とディスクやローターとの間隔の最小値を攪拌の間隔とする。
【0066】
「高圧ホモジナイザー法による攪拌工程」
高圧ホモジナイザー法は、高圧ポンプとオリフィス機構(穴の空いた機構)を用いて、オリフィスの狭い隙間に高圧で塗料を押し込み、塗料が急速に、その隙間を通過するときに生ずるせん断応力を塗料の攪拌に利用する攪拌方法である。
高圧ホモジナイザー法を用いた攪拌装置としては、例えば、ホモゲナイザー(三和エンジニアリング社製)、スターバースト(スギノマシン社製)が挙げられる。
高圧ホモジナイザー法では、塗料がオリフィスを通過するときの最大流速を攪拌の速度とする。
高圧ホモジナイザー法では、塗料が通過するオリフィスにおけるスリットの間隔の最小値の2分の1を攪拌の間隔とする。
【0067】
[塗工工程]
塗工工程は、二次電池用塗料を集電体に塗布する工程である。
塗工工程において、二次電池用塗料が耐えることができるよりも大きなせん断速度に曝されると、二次電池用塗料の連続的な流れが途切れて、擦れなどの塗工不良の原因となる。そのため、二次電池用塗料は、塗工工程において大きなせん断速度に曝されても、連続的な流れを維持できることが好ましい。
【0068】
{塗工のせん断速度}
塗工のせん断速度は、二次電池用塗料の塗工工程において、二次電池用塗料が曝される速度勾配であり、下記式(2)で表される。
【0070】
塗工のせん断速度は、その最大値が前述の攪拌のせん断速度の1/3倍以下であって、1500s
-1以上が好ましく、3000s
-1以上がさらに好ましい。
【0071】
(塗工の速度)
塗工の速度は、塗工工程において、二次電池用塗料がせん断作用を受ける部分にて、二次電池用塗料が通過する最大の速度である。
【0072】
(塗工の間隔)
塗工の間隔は、塗工工程において、二次電池用塗料がせん断作用を受ける部分にて、二次電池用塗料が最大流速となる流動方向と垂直な直線上にある2つの点の間隔であり、二次電池用塗料の流速が最大値となる点と最小値となる点との間隔である。
【0073】
{塗工方法}
塗工工程に用いられる塗工方法としては、リバースロール塗工法、正回転ロール塗工法(ダイレクトロール塗工法)、キス塗工法、グラビア塗工法などのロール塗工法、カーテン塗工法(フロー塗工法)、ファウンテン塗工法(ダイ塗工法)、ブレード塗工法、ナイフ塗工法、ロッド塗工法が挙げられる。
塗工工程においては、複数の塗工方法を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
「ロール塗工法による塗工工程」
ロール塗工法は、塗料をロールの表面へと転移させる機構と、ロールの表面に付着した塗料を別の部分に転移させる機構とを用いる塗工方法である。ロール塗工法としては、ロールの表面に付着した二次電池用塗料と被塗工体である集電体とを接触させて、ロールから集電体へと二次電池用塗料を転移させることで、集電体上に二次電池用塗料を積層させる機構を用いる塗工方法や、ロールからロールヘ二次電池用塗料を転移させる機構を用いる塗工方法が挙げられる。特に、表面に凸凹の彫刻加工が施されたグラビアロールを用いる場合には、グラビア塗工法と言う。
ロール塗工法としては、例えば、リバースロール塗工法、正回転ロール塗工法(ダイレクトロール塗工法)、キス塗工法、グラビア塗工法が挙げられる
ロール塗工法では、ロール間およびロールと集電体の間において、塗料がせん断作用を受ける。ロール間においては、ロール間の周速の速度差の最大値を塗工の速度とする。ロールと集電体の間においては、ロールと集電体の速度差の最大値を塗工の速度とする。
ロール塗工法では、ロール間およびロールと集電体の間において、塗料がせん断作用を受ける。ロール間においては、ロール間の距離の最小値を塗工の間隔とする。ロールと集電体の間においては、ロールと集電体の距離の最小値を塗工の間隔とする。
【0075】
「カーテン塗工法(フロー塗工法)による塗工工程」
カーテン塗工法は、オリフィスを通して押し出された塗料をノズルから流下して、被塗工体である集電体に塗布する機構を用いる塗工方法である。
カーテン塗工法では、オリフィス内において、塗料がせん断作用を受ける。オリフィスを通過する塗料の速度の最大値を塗工の速度とする。
カーテン塗工法では、オリフィス内において、塗料がせん断作用を受ける。オリフィスにおけるスリットの間隔の最小値の2分の1を塗工の間隔とする。
【0076】
「ファウンテン塗工法(ダイ塗工法)による塗工工程」
ファウンテン塗工法は、オリフィスに塗料を供給し、オリフィス内で塗料を加圧して押し出し、被塗工体である集電体に塗布する機構を用いる塗工方法である。
ファウンテン塗工法(ダイ塗工法)としては、例えば、スロットダイ塗工法が挙げられる。
ファウンテン塗工法(ダイ塗工法)では、オリフィス内およびオリフィスと集電体の間の塗着部分において、塗料がせん断作用を受ける。オリフィス内では、オリフィスを通過する塗料の速度の最大値を塗工の速度とする。塗着部分では、集電体の搬送速度を塗工の速度とする。
ファウンテン塗工法(ダイ塗工法)では、オリフィス内およびオリフィスと集電体の間の塗着部分において、塗料がせん断作用を受ける。オリフィス内では、オリフィスにおけるスリットの間隔の最小値の2分の1を塗工の間隔とする。塗着部分では、オリフィスと集電体の間隔を塗工の間隔とする。
【0077】
「ブレード塗工法による塗工工程」
ブレード塗工法は、披塗工体である集電体またはロールに付着した余剰の塗料を掻き落として、所望の塗工量を得る刃状部品であるブレード機構を用いる塗工方法である。
ブレード塗工法には、ブレード自体を動かす方式と、ブレードを固定して、余剰の塗料を付着した被塗工体やロールを動かす方式とがある。
ブレード塗工法では、ブレードと集電体の間において、塗料がせん断作用を受ける。ブレードと集電体の速度差の最大値を塗工の速度とする。
ブレード塗工法では、ブレードと集電体の間において、塗料がせん断作用を受ける。ブレードと集電体の距離の最小値を塗工の間隔とする。
【0078】
「ナイフ塗工法による塗工工程」
ナイフ塗工法は、先端が鋭い金属板であるナイフを用いて、披塗工体である集電体またはロールに付着した余剰の塗料を掻き落として、所望の塗工量を得る機構を用いる塗工方法である。
ナイフ塗工法には、ナイフ自体を動かす方式と、ナイフを固定して、余剰の塗料を付着した被塗工体を動かす方式とがある。
ナイフ塗工法では、ナイフと集電体の間において、塗料がせん断作用を受ける。ナイフと集電体の速度差の最大値を塗工の速度とする。
ナイフ塗工法では、ナイフと集電体の間において、塗料がせん断作用を受ける。ナイフと集電体の距離の最小値を塗工の間隔とする。
【0079】
「ロッド塗工法による塗工工程」
ロッド塗工法は、ロッドにステンレス線やピアノ線を巻いたものを用いて、被塗工体である集電体またはロールに付着した余剰の塗料を掻き落として、所望の塗工量を得る機構を用いる塗工方法である。
ロッド塗工法では、ロッドと集電体の間において、塗料がせん断作用を受ける。ロッドと集電体の速度差の最大値を塗工の速度とする。
ロッド塗工法では、ロッドと集電体の間において、塗料がせん断作用を受ける。ロッドと集電体の距離の最小値を塗工の間隔とする。
【0080】
[乾燥工程]
乾燥工程は、集電体に塗布された二次電池用塗料に含まれる溶媒を乾燥(除去)することにより、集電体上に電極合材を固着させて、未プレス電極を作製する工程である。
【0081】
[プレス工程]
プレスエ程は、未プレス電極をプレスして、プレス電極を得る工程である。
プレス工程は、集電体上に固着した電極合材の密度や空隙率を調整するために行われる。電極合材の密度を高めることによって、電極合材における電子伝導性が高められる。また、電極合材と集電体の密着性を高めることによって、電極強度が高められ、電極の剥離強度が高められる。
プレスの方法としては、例えば、加圧されたロールの隙間に、未プレス電極を通過させて電極をプレスするロールプレス法が挙げられる。
【0082】
[熱処理工程]
熱処理工程は、プレス電極を熱処理して、二次電池用電極を得る工程である。
熱処理工程は、電極合材中の残存溶媒の完全乾燥(完全除去)、電極の残存応力の緩和、集電体への電極合材の密着性の向上などを目的として行われる。
熱処理工程では、減圧雰囲気下、プレス電極を加熱することが好ましい。
熱処理の温度は、二次電池用塗料を構成する溶媒、活物質、導電材、バインダーなどの種類や組成に応じて、適宜決定される。熱処理の温度は、通常、80〜250℃の範囲である。
熱処理の時間は、通常、1分〜24時間の範囲である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
以下に、二次電池用塗料を構成する活物質の組成分析方法、結晶構造の測定方法、比表面積の測定方法および平均一次粒子径の測定方法、二次電池用塗料の粘度の測定方法、集電体上に形成された電極合材層の剥離強度の測定方法を示す。
【0085】
(1)組成分析
活物質を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析装置(SPS3000、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)(以下、「ICP−AES」と言うことがある。)を用いて、活物質の組成分析を行った。
【0086】
(2)粉末X線回折法による結晶構造の測定
活物質の結晶構造の測定には、粉末X線回折測定装置(RINT2500TTR型、リガク社製)を用いた。
X線の線源としては、CuKα線源を用いた。
活物質を専用のホルダーに充填し、回折角2θ=10〜90°の範囲にて行い、粉末X線回折図形を得た。
【0087】
(3)比表面積の測定
活物質0.5gを窒素雰囲気中、150℃にて15分間乾燥した後、BET比表面積測定装置(フローソーブII2300、マイクロメリティックス社製)を用いて、BET比表面積を測定した。
前記方法で測定されたBET比表面積を、活物質の比表面積とした。
【0088】
(4)SEM観察による平均一次粒子径の測定
粒子状の活物質をサンプルステージ上に貼った導電性シート上に載せ、走査型電子顕微鏡(JSM−5510、日本電子社製)(以下、「SEM」と言うことがある。)を用い、加速電圧が20kVの電子線を照射して、SEM観察を行った。
活物質の平均一次粒子径は、SEM観察により得られた画像(SEM写真)から任意に50個の一次粒子を抽出し、それぞれの粒子径を測定し、その平均値を算出することにより測定した。
【0089】
(5)粘度の測定
二次電池用塗料の粘度測定には、レオメータ(レオメータAR550、ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用した。
二次電池用塗料のレオロジーを、23℃において、径40mmのステンレススチール製4°コーンを用いて測定した。
せん断速度3s
−1における粘度を、二次電池用塗料の粘度とした。
【0090】
(6)剥離強度の測定
集電体とその集電体上に形成された電極合材層とから構成される二次電池用電極を、幅25mm、長さ100mmに切断し、電極合材層の表面と、ガラエポ板(ガラスエポキシ銅張積層板MCL−E−67、目立化成工業社製)とを、幅25mmの両面粘着テープ(ナイスタック強力両面テープNW−K25、ニチバン社製)で固定した。
電極の片端より電極合材層から集電体を剥がして、縦型引張強度試験機(オートグラフDSS−500、島津製作所社製)の下部にガラエポ板を固定し、上部に集電体を固定した。
引張速度100mm/minにて、集電体を上部に引き上げる180°剥離試験により、二次電池用電極の電極合材と集電体の引張強度(N)を測定した。
引張強度(N)と電極幅(25mm)より、電極合材と集電体の剥離強度(N/m)を算出した。
【0091】
「実施例1、比較例1」
<二次電池用電極の作製>
[二次電池用塗料の作製工程]
実施例1と比較例1とでは、下記に従う方法で二次電池用塗料を作製した。
【0092】
{混合工程}
溶媒に、正極材、導電材およびバインダーを添加し、これらを混合することによりスラリーを調製した。
溶媒としては、NMPを用いた。
正極材としては、組成がLiNi
0.47Mn
0.48Fe
0.05O
2であり、結晶構造がR−3mであり、BET比表面積が10m
2・g
−1であり、平均一次粒子径が200nmであるものを用いた。
導電材としては、アセチレンブラック(デンカブラックHS100、電気化学工業社製)を用いた。アセチレンブラックのBET比表面積は40m
2・g
−1であり、平均一次粒子径は50nmであった。
バインダーとしては、PVdF(PVdF#7300、クレハ社製)を用いた。
スラリーにおいて、二次電池用塗料における全体重量に占める正極材、導電材およびバインダーの合計割合(固形分濃度)が50wt%となるように、スラリーを調製した。
電極合材を構成する正極材、導電材、バインダーの重量比率を、それぞれ90wt%、5wt%、5wt%とした。
所定の割合で溶媒に、正極材、導電材およびバインダーを添加して得られた100mLの混合物を、直径5cmのステンレス製ビーカーに入れた。
直径4cmの歯付円板型インペラを装着したディスパーマット(VAM−GEZTMANN、GMBH社製)を用いて、インペラを回転速度1000rpmで回転させて、10分間攪拌して、スラリーを調製した。
混合工程において、攪拌の速度は2.1m・s
−1であった。また、攪拌の間隔は0.005mであった。すなわち、攪拌のせん断速度は420s
−1であった。
【0093】
{攪拌工程}
スラリーの攪拌工程では、容器内に入れた塗料中でホイールを旋回させる旋回薄膜法による攪拌装置であるフィルミックス56−50型(プライミクス社製)を用いた。
この攪拌装置では、容器(内径60mm)と、その内部で回転するホイール(外径56mm)との隙間において、スラリーにせん断作用を与えた。
この攪拌装置における攪拌の間隔は、容器とホイールの間隔である2mmであった。固定した容器の内部において、ホイールを回転させることにより、スラリーにせん断作用が与えられる。ホイールの周速を調整することによって、攪拌のせん断速度を変化させることができる。
混合工程で得られたスラリー90mLを、フィルミックス56−50型(プライミクス社製)に入れ、ホイールを周速6m・s
−1で回転させて、180s間攪拌した。
攪拌工程において、攪拌の速度は6m・s
−1であった。また、攪拌の間隔は0.002mであった。すなわち、攪拌のせん断速度は3000s
−1であった。
得られた二次電池用塗料の粘度は38Pa・sであった。
【0094】
[塗工工程]
二次電池用塗料を、厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗工した。
このとき任意の塗工間隔に調整できるドクターブレードタイプアプリケータ(マイクロメーター付フィルムアプリケーターSA−204、テスター産業社製)と、任意の塗工速度に調整できるアプリケータ(オートフィルムアプリケーターP1−1210、テスター産業社製)とを用いた。
ブレードとアルミニウム箔の距離を塗工の間隔とし、塗工速度を塗工の速度とした。
【0095】
[乾燥工程]
二次電池用塗料を塗工したアルミニウム箔を、温度を60℃に設定した温風乾燥機(温風乾燥機HT330K、楠本化成社製)内に入れて乾燥し、未プレス電極を作製した。
【0096】
[プレス工程]
プレス工程では、小型ロールプレス(小型卓上ロールプレスSA−602(荷重調節式)、テスター産業社製)を用いた。
電極搬送速度を0.2m・min
−1とした。プレス圧力を、電極密度が2.6g/cm
3となるように調整した。
【0097】
[加熱工程]
加熱工程では、真空乾燥機に、プレス工程を経た電極(プレス電極)を入れて、真空中、150℃にて8時間静置して、二次電池用電極を作製した。
【0098】
<塗工性の評価>
二次電池用塗料を任意の塗工の間隔と、任意の塗工の速度において塗工したときの塗工性を評価した。
塗工工程において、擦れや筋引きの発生がなく、未プレス電極において集電体が露出していない場合には、塗工性を良好(○)とした。
塗工工程において、擦れや筋引きの発生があり、未プレス電極において集電体が露出している部分がある場合には、塗工性を不良(△)とした。
実施例1と比較例1における攪拌条件、塗工条件および塗工性を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1の結果から、塗工のせん断速度よりも、攪拌のせん断速度が3倍以上大きいときに、良好な塗工性が得られた。
【0101】
「実施例2、比較例2」
<二次電池用電極の作製>
[二次電池用塗料の作製工程]
実施例2と比較例2とでは、下記に従う方法で二次電池用塗料を作製した。
【0102】
{混合工程}
実施例1と同様にして、スラリーを調製した。
【0103】
{攪拌工程}
実施例1と同様に、攪拌装置であるフィルミックス56−50型(プライミクス社製)を用いた。
混合工程で得られたスラリー90mLを、フィルミックス56−50型(プライミクス社製)に入れ、ホイールを周速15m・s
−1で回転させて、180s間攪拌した。
攪拌工程において、攪拌の速度は15m・s
−1であった。また、攪拌の間隔は0.002mであった。すなわち、攪拌のせん断速度は7500s
−1であった。
得られた二次電池用塗料の粘度は12Pa・sであった。
【0104】
[塗工工程]
実施例1と同様にして、塗工工程を行った。
[乾燥工程]
実施例1と同様にして、乾燥工程を行った。
[プレス工程]
実施例1と同様にして、プレス工程を行った。
[加熱工程]
実施例1と同様にして、加熱工程を行った。
【0105】
<塗工性の評価>
実施例1と同様にして、二次電池用塗料の塗工性を評価した。
実施例2と比較例2における攪拌条件、塗工条件および塗工性を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
表2の結果から、塗工のせん断速度よりも、攪拌のせん断速度が3倍以上大きいときに、良好な塗工性が得られた。
【0108】
「実施例3、比較例3」
<二次電池用電極の作製>
[二次電池用塗料の作製工程]
実施例3と比較例3とでは、下記に従う方法で二次電池用塗料を作製した。
【0109】
{混合工程}
実施例1と同様にして、スラリーを調製した。
【0110】
{攪拌工程}
実施例1と同様に、攪拌装置であるフィルミックス56−50型(プライミクス社製)を用いた。
混合工程で得られたスラリー90mLを、フィルミックス56−50型(プライミクス社製)に入れ、ホイールを周速30m・s
−1で回転させて、180s間攪拌した。
攪拌工程において、攪拌の速度は30m・s
−1であった。また、攪拌の間隔は0.002mであった。すなわち、攪拌のせん断速度は15000s
−1であった。
得られた二次電池用塗料の粘度は10Pa・sであった。
【0111】
[塗工工程]
実施例1と同様にして、塗工工程を行った。
[乾燥工程]
実施例1と同様にして、乾燥工程を行った。
[プレス工程]
実施例1と同様にして、プレス工程を行った。
[加熱工程]
実施例1と同様にして、加熱工程を行った。
【0112】
<塗工性の評価>
実施例1と同様にして、二次電池用塗料の塗工性を評価した。
実施例3と比較例3における攪拌条件、塗工条件および塗工性を表3に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
表3の結果から、塗工のせん断速度よりも、攪拌のせん断速度が3倍以上大きいときに、良好な塗工性が得られた。
【0115】
<剥離強度の評価>
異なる攪拌条件で二次電池用塗料を作製し、同じ塗工条件で作製した未プレス電極について、剥離強度を測定した。測定の結果を表4と表5に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
表4および表5の結果から、攪拌のせん断速度を7500s
−1以上とすることで、良好な塗工性が得られることに加えて、高い剥離強度を有する二次電池用電極が得られた。