(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の焦点検出装置を含む撮像装置として、レンズ交換式のデジタルカメラを例に挙げて説明する。
図1は本実施形態のデジタルカメラの構成を示す横断面図である。本実施形態のデジタルカメラ201は、交換レンズ202とカメラボディ203とから構成され、交換レンズ202がマウント部204を介してカメラボディ203に装着される。カメラボディ203にはマウント部204を介して種々の撮影光学系を有する交換レンズ202が装着可能である。
【0010】
交換レンズ202は、レンズ209、ズーミングレンズ208、フォーカシングレンズ210、絞り211、レンズ制御装置206などを有する。レンズ制御装置206は、不図示のマイクロコンピューター、メモリ、レンズ駆動制御回路などから構成される。レンズ制御装置206は、フォーカシングレンズ210の焦点調節および絞り211の開口径調節のための駆動制御、ならびにズーミングレンズ208、フォーカシングレンズ210および絞り211の状態検出などを行う。レンズ制御装置206は、後述するボディ制御装置214との通信によりレンズ情報の送信とカメラ情報(デフォーカス量や絞り値など)の受信とを行う。絞り211は、光量およびボケ量調整のために光軸中心に開口径が可変な開口を形成する。
【0011】
カメラボディ203は、撮像素子212、ボディ制御装置214、液晶表示素子駆動回路215、液晶表示素子216、接眼レンズ217、メモリカード219、AD変換装置221などを有している。撮像素子212には、撮像画素が行と列とで規定される二次元状配列にしたがって配置されるとともに、焦点検出位置に対応した部分に焦点検出画素が配置されている。この撮像素子212については詳細を後述する。
【0012】
ボディ制御装置214は、マイクロコンピューター、メモリ、駆動制御回路などから構成される。ボディ制御装置214は、撮像素子212の露光制御と、撮像素子212からの画素信号の読み出しと、焦点検出画素の画素信号に基づく焦点検出演算および交換レンズ202の焦点調節とを繰り返し行うとともに、画像信号の処理、表示および記録、ならびにカメラの動作制御などを行う。また、ボディ制御装置214は、電気接点213を介してレンズ制御装置206と通信を行い、レンズ情報の受信とカメラ情報の送信とを行う。
【0013】
液晶表示素子216は電子ビューファインダー(EVF:Electronic View Finder)として機能する。液晶表示素子駆動回路215は撮像素子212から読み出された画像信号に基づきスルー画像を液晶表示素子216に表示し、撮影者は接眼レンズ217を介してスルー画像を観察することができる。メモリカード219は、撮像素子212により撮像された画像信号に基づいて生成される画像データを記憶する画像ストレージである。
【0014】
AD変換装置221は、撮像素子212から出力される画素信号をAD変換してボディ制御装置214に送る。撮像素子212がAD変換装置221を内蔵する構成であってもよい。
【0015】
交換レンズ202を通過した光束により、撮像素子212の撮像面上に被写体像が形成される。この被写体像は撮像素子212により光電変換され、撮像画素および焦点検出画素の画素信号がボディ制御装置214へ送られる。
【0016】
ボディ制御装置214は、撮像素子212の焦点検出画素からの画素信号(焦点検出信号)に基づいてデフォーカス量を算出し、このデフォーカス量をレンズ制御装置206へ送る。また、ボディ制御装置214は、撮像素子212の撮像画素の画素信号(撮像信号)を処理して画像データを生成し、メモリカード219に格納するとともに、撮像素子212から読み出されたスルー画像信号を液晶表示素子駆動回路215へ送り、スルー画像を液晶表示素子216に表示させる。さらに、ボディ制御装置214は、レンズ制御装置206へ絞り制御情報を送って絞り211の開口制御を行う。
【0017】
レンズ制御装置206は、フォーカシング状態、ズーミング状態、絞り設定状態、絞り開放F値などに応じてレンズ情報を更新する。具体的には、ズーミングレンズ208とフォーカシングレンズ210の位置と絞り211の絞り値とを検出し、これらのレンズ位置と絞り値とに応じてレンズ情報を演算したり、あるいは予め用意されたルックアップテーブルからレンズ位置と絞り値とに応じたレンズ情報を選択する。
【0018】
レンズ制御装置206は、受信したデフォーカス量に基づいてレンズ駆動量を算出し、レンズ駆動量に応じてフォーカシングレンズ210を合焦位置へ駆動する。また、レンズ制御装置206は受信した絞り値に応じて絞り211を駆動する。
【0019】
図2は、撮影画面上における焦点検出位置を示す図であり、後述する撮像素子212上の焦点検出画素列による焦点検出の際に撮影画面上で像をサンプリングする領域(焦点検出エリア、焦点検出位置)の一例を示す。この例では、矩形の撮影画面100上の中央(光軸上)に焦点検出エリア101が配置される。長方形で示す焦点検出エリア101の長手方向(水平方向)に、焦点検出画素が直線的に配列される。
【0020】
図3は撮像素子212の詳細な構成を示す正面図であり、
図2において水平方向に配置された焦点検出エリア101の近傍を拡大した画素配列の詳細を示す。撮像素子212には撮像画素310が二次元正方格子状に稠密に配列される。撮像画素310は赤画素(R)、緑画素(G)、青画素(B)からなり、ベイヤー配列の配置規則によって配置されている。
図3においては撮像画素310と同一の画素サイズを有する水平方向焦点検出用の焦点検出画素315、316が交互に、本来緑画素と青画素とが連続的に配置されるべき水平方向の直線上に連続して配列される。
【0021】
撮像画素310ならびに焦点検出画素315および316の各々のマイクロレンズの形状は、元々画素サイズより大きな円形のマイクロレンズから画素サイズに対応した正方形の形状で切り出した形状をしている。
【0022】
撮像画素310は、
図3に示すように矩形のマイクロレンズ10、遮光マスクで受光領域を正方形に制限された光電変換部11、および色フィルタから構成される。色フィルタは赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類からなり、それぞれの色に対応する分光感度特性を有している。撮像素子212には、各色フィルタを備えた撮像画素310がベイヤー配列されている。
【0023】
焦点検出画素315,316には全ての色に対して焦点検出を行うために全ての可視光を透過する白色フィルタが設けられている。その白色フィルタは、緑画素、赤画素および青画素の分光感度特性を加算したような分光感度特性を有し、高い感度を示す光波長領域は緑画素、赤画素および青画素の各々において各色フィルタが高い感度を示す光波長領域を包括している。
【0024】
焦点検出画素315は、
図3に示すように矩形のマイクロレンズ10と遮光マスクとで受光領域を正方形の左半分(正方形を垂直線で2等分した場合の左半分)に制限された光電変換部15、および白色フィルタ(不図示)とから構成される。
【0025】
また、焦点検出画素316は、
図3に示すように矩形のマイクロレンズ10と遮光マスクとで受光領域を正方形の右半分(正方形を垂直線で2等分した場合の右半分)に制限された光電変換部16、および白色フィルタ(不図示)とから構成される。
【0026】
焦点検出画素315と焦点検出画素316とをマイクロレンズ10を重ね合わせて表示すると、遮光マスクで受光領域を正方形の半分に制限された光電変換部15および16が水平方向に並んでいる。
【0027】
また、上述した正方形の半分に制限された受光領域の部分に正方形を半分にした残りの部分を加えると、撮像画素310の受光領域と同じサイズの正方形となる。
【0028】
以上のような撮像画素および焦点検出画素の構成においては、一般的な光源のもとでは、緑色の撮像画素の出力レベルと焦点検出画素の出力レベルとがほぼ等しくなり、赤色の撮像画素および青色の撮像画素の出力レベルはこれよりも小さくなる。
【0029】
図4は、
図3に示す撮像画素310が受光する撮影光束の様子を説明するための図であって、水平方向に配列した撮像画素配列の断面をとっている。撮像素子212上に配列された全ての撮像画素310の光電変換部11は、光電変換部11に近接して配置された遮光マスクの開口を通過した光束を受光する。遮光マスク開口の形状は、各撮像画素310のマイクロレンズ10により、マイクロレンズ10から測距瞳距離dだけ離間した撮影光学系の射出瞳90上の全撮像画素共通な領域97に投影される。
【0030】
従って各撮像画素の光電変換部11は、領域97と各撮像画素のマイクロレンズ10とを通過する光束71を受光し、その光束71によって各マイクロレンズ10上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0031】
図5は、
図3に示す焦点検出画素315,316が受光する焦点検出光束の様子を、
図4と比較して説明するための図であって、水平方向に配列した焦点検出画素配列の断面をとっている。
【0032】
撮像素子212上に配列された全ての焦点検出画素315,316の光電変換部15,16は、光電変換部15,16の各々に近接して配置された遮光マスクの開口を通過した光束を受光する。光電変換部15に近接して配置された遮光マスク開口の形状は、各焦点検出画素315のマイクロレンズ10により、マイクロレンズ10から測距瞳距離dだけ離間した射出瞳90上の、焦点検出画素315に全てに共通した領域95に投影される。同じく光電変換部16に近接して配置された遮光マスク開口の形状は、各焦点検出画素316のマイクロレンズ10により、マイクロレンズ10から測距瞳距離dだけ離間した射出瞳90上の、焦点検出画素316に全てに共通した領域96に投影される。一対の領域95,96を測距瞳と呼ぶ。
【0033】
従って各焦点検出画素315の光電変換部15は、測距瞳95と各焦点検出画素315のマイクロレンズ10とを通過する光束75を受光し、その光束75によって各マイクロレンズ10上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。また各焦点検出画素316の光電変換部16は、測距瞳96と各焦点検出画素316のマイクロレンズ16とを通過する光束76を受光し、その光束76によって各マイクロレンズ10上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0034】
一対の焦点検出画素315,316が受光する光束75,76が通過する射出瞳90上の測距瞳95および96を統合した領域は、撮像画素310が受光する光束71が通過する射出瞳90上の領域97と一致し、射出瞳90上において一対の光束75,76は光束71に対して相補的な関係になっている。
【0035】
上述の説明においては、遮光マスクにより光電変換部の受光領域が規制されているが、光電変換部自身の形状を遮光マスクの開口形状とすることも可能である。その場合は遮光マスクを排してもよい。
【0036】
要は光電変換部と測距瞳とはマイクロレンズにより光学的に共役な関係となっていることが重要である。
【0037】
また測距瞳の位置(測距瞳距離)は、一般に撮影光学系の射出瞳距離と略同一になるように設定される。複数の交換レンズが装着される場合には、複数の交換レンズの平均的な射出瞳距離に測距瞳距離を設定する。
【0038】
上述した一対の焦点検出画素315,316を交互にかつ直線状に多数配置し、各焦点検出画素の光電変換部の出力を測距瞳95および測距瞳96に対応した一対の出力グループにまとめる。これにより、測距瞳95および測距瞳96をそれぞれ通過する一対の光束が水平方向の焦点検出画素配列上に形成する一対の像の強度分布に関する情報が得られる。この情報に対して後述する像ズレ検出演算処理(相関演算処理、位相差検出処理)を施すことによって、いわゆる瞳分割型位相差検出方式で一対の像の像ズレ量が検出される。さらに、像ズレ量に、一対の測距瞳の重心間隔と測距瞳距離との比例関係に応じた変換係数を用いての変換演算を行うことによって、焦点検出位置における予定結像面と瞳分割型位相差検出方式で検出される結像面との偏差、すなわちデフォーカス量が算出される。
【0039】
なお
図5においては理解しやすいように一対の領域95,96を明瞭な形状で示すとともに、一対の焦点検出光束75,76をコーン形状で表現し、光軸91に対して垂直な断面で光束を切り取ったとき、該断面上で光線密度は一様であるかのように説明している。しかし、実際には焦点検出画素のマイクロレンズの収差などに応じて一対の領域95,96の外形は不明瞭となる。また、光軸91に対して垂直な断面における一対の焦点検出光束75,76の光線密度は、一様ではなく、焦点検出光学系の光学特性と撮影光学系の光学特性とに応じた分布を示す。
【0040】
図6は、本実施形態のデジタルカメラ201の動作を示すフローチャートである。ボディ制御装置214は、ステップS100でデジタルカメラ201の電源がONされるとステップS110から動作を開始する。ステップS110において、絞り変更が必要な場合は、ボディ制御装置214は、レンズ制御装置206に絞り調整指令を送って絞り調整を行わせる。それとともに、ボディ制御装置214は、撮像動作を行って撮像素子212から撮像画素310のデータを間引き読み出しし、液晶表示素子216に表示させる。続くステップS120では、ボディ制御装置214は、焦点検出画素列から一対の像に対応した一対の像信号のデータを読み出す。
【0041】
ステップS130では、ボディ制御装置214は、読み出した一対の像信号のデータに基づいて像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を行い、像ズレ量を算出する。
【0042】
ステップS131では、ボディ制御装置214は、レンズ制御装置206から一対の点像分布データ(一対の点像信号のデータ)を読み出し、該一対の点像分布データに対して像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を行って像ズレ量を算出し、該像ズレ量をオフセット量とする。ステップS131でレンズ制御装置206から読み出される該一対の点像分布データの詳細については後述するが、該一対の点像分布データは、ステップS130で読み出された一対の像信号のデータが撮像された時点での撮影光学系の設定(絞りF値、フォーカシングレンズ位置、ズームレンズ位置)において合焦が達成されている状況(予定焦点面と最良像面とが一致した状況)と仮定した場合において、該状況において一対の焦点検出光束が最良像面上に形成する点像の分布関数を表す像データである。またここで言う最良像面とは、光学設計上あるいは官能評価上で最適な画像を与えるところの撮影光束が形成する像面のことである。最良像面としては、例えば、解像度が最大となる像面、点像分布が最小となる像面(最小錯乱円となる像面)、所定空間周波数のMTF(Modulation Transfer Function)が最大になる像面などがある。
【0043】
ステップS132では、ボディ制御装置214は、ステップS130で算出した像ズレ量からステップS131で算出したオフセット量を差引き、補正像ズレ量を算出する。詳細については後述するが、このように像ズレ量を補正することにより、一対の焦点検出光束が形成する一対の像の像ズレ量に基づいて検出される像面と最良像面との間の誤差を解消あるいは軽減することができる。
【0044】
ステップS135では、ボディ制御装置214は、ステップS132で算出した補正像ズレ量をデフォーカス量に変換する。ステップS140で、ボディ制御装置214は、撮影光学系の焦点調節状態が合焦近傍か否か、すなわち算出したデフォーカス量の絶対値が所定値以内であるか否かを判別する。合焦近傍でないと判別された場合は、本処理はステップS150へ進む。ステップS150では、ボディ制御装置214は、デフォーカス量をレンズ制御装置206へ送信し、
図1に示す交換レンズ202のフォーカシングレンズ210を合焦位置に駆動させる。その後、本処理はステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。
【0045】
なお、焦点検出不能な場合も本処理はこのステップS150へ分岐し、ボディ制御装置214は、レンズ制御装置206へスキャン駆動命令を送信し、交換レンズ202のフォーカシングレンズ210を無限遠位置から至近位置までスキャン駆動させる。その後、本処理はステップS110へ戻って上述した動作が繰り返される。
【0046】
一方、ステップS140で撮影光学系の焦点調節状態が合焦近傍であると判別された場合は、本処理はステップS160へ進む。ステップS160において、ボディ制御装置214は、シャッターボタン(不図示)の操作によりシャッターレリーズがなされたか否かを判別し、なされていないと判別した場合は、本処理はステップS110へ戻って上述した動作が繰り返される。ステップS160において、ボディ制御装置214は、シャッターレリーズがなされたと判別した場合は、ステップS170で、撮像素子212に撮像動作を行わせ、撮像素子212の撮像画素およびすべての焦点検出画素から画像データを読み出す。
【0047】
ステップS180において、ボディ制御装置214は、焦点検出画素列の各画素位置の画素データを焦点検出画素の周囲の撮像画素のデータに基づいて画素補間する。続くステップS190で、ボディ制御装置214は、撮像画素のデータおよび補間されたデータからなる画像データをメモリカード219に保存し、本処理はステップS110へ戻って上述した動作が繰り返される。
【0048】
次に、
図6のステップS130における像ズレ検出演算処理(相関演算処理)の詳細について説明する。焦点検出画素が検出する一対の像は、測距瞳がレンズの絞り開口により不均等にけられて光量バランスが崩れている可能性があるので、光量バランスに対して像ズレ検出精度を維持できるタイプの相関演算を施す。焦点検出画素列から読み出された一対の像信号に対応する一対のデータ列A1
1〜A1
M、A2
1〜A2
M(Mはデータ数)に対し下記式(1)の相関演算を行い、一対の像信号の相関度に対応する相関量C(k)を演算する。
C(k)=Σ|A1
n・A2
n+s+k−A2
n+k・A1
n+s| ・・・(1)
【0049】
式(1)において、Σ演算は変数nについて累積される。変数nの範囲は、像ずらし量kに応じてA1
n、A1
n+s、A2
n+k、A2
n+s+kのデータが存在する範囲に限定される。像ずらし量kは整数であり、データ列のデータ間隔を単位とした相対的シフト量である。また変数sは整数であり、1,2,・・が適宜選択される。式(1)の演算結果は、
図7(a)に示すように、一対のデータの相関が高いシフト量(
図7(a)ではk=kj=2)において相関量C(k)が極小になる。相関量C(k)の値が小さいほど一対の像信号の相関度が高い。なお、相関演算式は式(1)に限定されず、一対のデータ列(一対の像信号)の相関度を演算するものであればどのような相関演算式を用いても良い。
【0050】
次に、式(2)から式(5)の3点内挿の手法を用いて連続的な相関量に対する極小値C(x)を与えるシフト量xを求める。 このシフト量xが、後述する補正前の一対の像の相対的な像ズレ量に対応する。
x=kj+D/SLOP ・・・(2)
C(x)=C(kj)−|D| ・・・(3)
D={C(k−1)−C(kj+1)}/2 ・・・(4)
SLOP=MAX{C(kj+1)−C(kj),C(kj−1)−C(kj)} ・・・(5)
【0051】
式(2)で算出されたずらし量xの信頼性があるかどうかは次のようにして判定される。
図7(b)に示すように、一対のデータの相関度が低い場合は、内挿された相関量の極小値C(x)の値が大きくなる。したがって、C(x)が所定のしきい値以上の場合は、算出されたずらし量の信頼性が低いと判定し、算出されたずらし量xをキャンセルする。あるいは、C(x)をデータのコントラストで規格化するために、コントラストに比例した値となるSLOPでC(x)を除した値が所定値以上の場合は、算出されたずらし量の信頼性が低いと判定し、算出されたずらし量xをキャンセルする。あるいはまた、コントラストに比例した値となるSLOPが所定値以下の場合は、被写体が低コントラストであり、算出されたずらし量の信頼性が低いと判定し、算出されたずらし量xをキャンセルする。
【0052】
図7(c)に示すように、一対のデータの相関度が低く、シフト範囲kmin〜kmaxの間で相関量C(k)の落ち込みがない場合は、極小値C(x)を求めることができず、このような場合は焦点検出不能と判定する。
【0053】
以上が
図6のステップS130における像ズレ検出演算処理であるが、ステップS131においても同様な像ズレ検出演算処理が一対の点像データに対して行われ、一対の点像データ間の像ズレ量がオフセット量Offsetとして算出され、ステップS132で補正像ズレ量(x−Offset)が算出される。すなわち、ステップS130で検出された一対の像の相対的な像ズレ量に対応するシフト量xと、ステップS131で算出されたオフセット量Offsetとに基づき、補正像ズレ量(x−Offset)が算出される。
【0054】
像ズレ量xの信頼性があると判定された場合は、式(6)により補正像ズレ量は補正像ズレ量shftに換算される。
shft=PY・(x−Offset) ・・・(6)
【0055】
式(6)において、PYは検出ピッチ、すなわち同一種類の焦点検出画素によるサンプリングピッチ(撮像画素のピッチの2倍)である。次に、式(6)により算出された像ズレ量に所定の変換係数kを乗じてデフォーカス量defへ変換する。
def=k・shft ・・・(7)
【0056】
式(7)で算出されたデフォーカス量は、最良像面と予定焦点面との間の偏差を正確に反映したデフォーカス量となるので、このデフォーカス量に基づいて自動焦点調節を行って撮影を行うことにより、最良画質の画像を得ることが出来る。
【0057】
次に
図6に示す動作フローにより、最良像面と予定焦点面とが一致し、最良画質の画像を得ることが出来るしくみについて詳述する。
【0058】
いわゆる瞳分割型位相差検出方式により、一対の焦点検出光束が形成する一対の像の像ズレ量を検出し、該像ズレ量が0となるように撮影光学系を焦点調節することにより合焦状態(最良像面と予定焦点面とが一致した状態)を達成できるという焦点調節の原理は、合焦時には一対の焦点検出光束が形成する一対の像の形状が一致するということを前提としたものであり、いわば像ズレ量は焦点調節状態を表す代用特性である。従って合焦時に一対の焦点検出光束が形成する一対の像の形状が一致するという前提が崩れれば、それに応じて像ズレ量によって検出される焦点調節状態は誤差を生じる。
【0059】
図8は、予定焦点面98上に最良像面が形成された場合において、
図4および
図5にそれぞれ示した射出瞳の領域97を通る撮影光束と射出瞳の一対の領域95,96を通過する一対の焦点検出光束とが、予定焦点面98近傍でどのように収束するかを模式的に示した図である。例えば
図8において光軸91上に点光源があるとすると、点光源に対応して予定焦点面98上の光軸91上に点像が形成されることになる。
【0060】
理想的な無収差の撮影光学系の場合は、射出瞳の領域97を通る撮影光束が形成する点像も、射出瞳の一対の領域95,96を通過する一対の焦点検出光束が形成する一対の点像も、いずれも予定焦点面98上で空間的に広がりを持たない完全な点となるとともに、射出瞳の一対の領域95,96を通過する一対の焦点検出光束が形成する一対の点像の予定焦点面98上での空間的な位置も一致する。このような無収差の撮影光学系を使用して一般の被写体を撮影する場合には、一対の焦点検出光束により最良像面に形成される一対の被写体像の形状は完全に一致するとともに、該一対の被写体像の位置も一致するので、一対の被写体像の像ズレ量が0の場合に合焦であるということが保証できる。
【0061】
しかしながら撮影光学系が光学的な収差を持つ場合には、射出瞳の領域97を通る撮影光束が形成する点像も、射出瞳の一対の領域95,96を通過する一対の焦点検出光束が形成する一対の点像も、いずれも予定焦点面98上で空間的に広がりを持たない完全な点になるとは限らない。
【0062】
図9は、
図8に示す状態、すなわち予定焦点面98上に最良像面が形成された状態において、撮影光束が予定焦点面98上に形成する点像の分布51(点像分布関数)の例を示しており、中心に大きなピークを持ち周辺部で対称的に裾野を引いている。一方
図10は同じ状態、すなわち予定焦点面98上に最良像面が形成された状態において、一対の焦点検出光束が予定焦点面98上に形成する点像の分布(点像分布関数)の例を示しており、実線が領域95を通過する焦点検出光束が形成する点像分布55、破線が領域96を通過する焦点検出光束が形成する点像分布56を示している。なお
図9、
図10において横軸は予定焦点面98における水平方向の位置であり、縦軸は像の強度である。また点像分布51,55,56のピーク位置が像面中心、すなわち光軸91が予定焦点面98と交わる位置である。
【0063】
点像分布55,56は点像分布51と同様に中心に大きなピークを持ち周辺部で裾野を引いているが、裾野の引き方はともに非対称である。点像分布55の右側の裾野は大きいのに対し、左側の裾野はほとんどない。また点像分布56の左側の裾野は大きいのに対し、右側の裾野はほとんどない。すなわち、一対の点像分布55および56の形状は互いに相違する。また一対の焦点検出光束は撮影光束に対して相補的な関係にあり、一対の焦点検出光束を統合したものが撮影光束になるので、点像分布55と点像分布56とを加算したものが点像分布51となる。また点像が光軸上に形成された場合(
図9、
図10)には、点像分布51の形状は左右対称であり、点像分布55と点像分布56とは一方を左右反転した時に形状が一致する。ちなみに点像が光軸外にある場合には、像高に応じて点像分布51,55,56の形状は
図9、
図10に示す形状からさらに変形するので、点像分布51の形状は左右対称でなくなり、点像分布55と点像分布56とは一方を左右反転した時にも形状が一致しなくなる。
【0064】
一般に撮影光学系の収差量が小さい場合あるいは良好な場合には、最良像面における点像分布51,55,56の形状において、ピーク部のサイズに比較して裾野部の広がりは小さく、一対の点像分布55,56はほとんど同一の形状となるとともに、一対の点像の位置もほとんど一致する。
【0065】
ところで一般に収差のある撮影光学系により形成される被写体像の分布関数は、無収差の場合に形成される被写体像の分布関数に、収差のある撮影光学系により形成される点像分布関数をコンボルーションしたものとなる。
【0066】
したがって収差量が少ないあるいは良好な撮影光学系を用いて一般の被写体を撮影する場合には、一対の焦点検出光束により最良像面に形成される一対の被写体像の形状はほとんど一致するとともに、該一対の被写体像の位置も一致する。したがって、一対の被写体像の像ズレ量が0の場合に合焦であるという前提に基づいて焦点検出を行っても大きな誤差を生じない。
【0067】
しかしながら収差量が大きい撮影光学系を用いて一般の被写体を撮影する場合には、一対の焦点検出光束により最良像面に形成される一対の被写体像の形状が一致しない。したがって、一対の被写体像の像ズレ量が0の場合に合焦であるという前提に基づいて焦点検出を行うと大きな誤差を生じてしまう。
【0068】
図11は、撮影光学系が無収差の場合において、白黒エッジの被写体を一対の焦点検出光束で最良像面に形成した時の被写体像を示しており、
図8の領域95を通過する焦点検出光束は被写体像65を形成し、領域96を通過する焦点検出光束は被写体像66を形成する。被写体像65のエッジ部45の位置と被写体像66のエッジ部46の位置とは一致しており、このような場合にはどのような像ズレ検出演算(相関演算)を用いても像ズレ量は0と算出される。
【0069】
一方
図12は
図11と同じ白黒エッジの被写体に対し、収差の大きな撮影光学系を用いた場合に、一対の焦点検出光束により最良像面に形成される被写体像を示している。また該撮影光学系を通過した一対の焦点検出光束が最良像面に形成する一対の点像の分布が、例えば
図10に示す点像分布関数55,56で表わされたとする。被写体像67は領域95を通過する焦点検出光束により形成されるエッジ像であり、無収差の場合の被写体像65に点像分布関数55をコンボルーションした像となる。被写体像68は領域96を通過する焦点検出光束により形成されるエッジ像であり、無収差の場合の被写体像66に点像分布関数56をコンボルーションした像となる。
【0070】
一対の被写体像67および68はもともと同じ被写体の像であるが、一対の焦点検出光束により形成される一対の点像分布が同一でないこと、すなわち一対の点像の形状が相違することにより、被写体像の形状が互いに大きく異なってきてしまう。例えば被写体像67のエッジ部47の上部41の形状と、被写体像68のエッジ部48の上部42の形状とは大きく異なる。また被写体像67のエッジ部47の下部43の形状と、被写体像68のエッジ部48の下部44の形状とは大きく異なる。最良像面が予定焦点面と一致した状態において、このように互いに形状が異なる一対の被写体像67および68に対して像ズレ検出を行っても検出される像ズレ量は0とならない。例えばこの状態において像ズレ量Δ(≠0)が算出された場合には、該像ズレ量Δに対応する像面は例えば
図8の面99となってしまう。
【0071】
このような誤差(像ズレ量Δ)を生ずる原因は、前述したように最良像面において一対の焦点検出光束により形成される一対の点像分布が同一でないこと、すなわち一対の点像の形状が相違することにある。以下のようにして、誤差(像ズレ量Δ)を、最良像面において一対の焦点検出光束により形成される一対の点像分布の形状の相違に基づいて予め算出することが可能である。
【0072】
具体的には
図10に示した最良像面における一対の焦点検出光束により形成される一対の点像分布55,56が既知であれば、該一対の点像分布55,56に対して、像ズレ検出演算を施こすことにより得られる像ズレ量を上記像ズレ量Δとみなすことができる。
図10においては点像分布55,56のピーク位置が一致しているが、点像分布55,56を相対的に像ズレ量Δだけ変位させて重ね合わせると
図13のようになる。なお像ズレ量Δは像ズレ量を算出する像ズレ検出演算(相関演算)の種類に応じて変化する。例えば式(1)の相関演算を用いて算出した場合の像ズレ量Δ1と式(8)の相関演算を用いて算出した場合の像ズレ量Δ2とは一致しないので、ボディ制御装置214で被写体像の像ズレ検出に使用されるものと同じ像ズレ検出演算式(相関演算式)を用いて像ズレ量Δを算出する必要がある。
C(k)=Σ|A1
n−A2
n+k| ・・・(8)
【0073】
このようにして誤差(像ズレ量Δ)を算出することができるので、この像ズレ量Δをオフセット量として、被写体像に基づいて得られた像ズレ量から該オフセット量を差し引くことにより補正像ズレ量を算出すれば、該補正像ズレ量は最良像面と予定焦点面とが一致した場合に0になる。
【0074】
従って上記予定焦点面と最良像面とが一致した場合の最良像面における一対の焦点検出光束により形成される一対の点像分布55,56(
図10)のデータを、予め計算して、ルックアップテーブル(点像分布データテーブル)として交換レンズのレンズ制御装置に格納しておく。予定焦点面と最良像面とが一致した場合の一対の点像分布55,56は、焦点検出光学系の光学設計情報(マイクロレンズなど)と、撮影光学系の絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置をパラメータとした撮影光学系の光学設計情報(レンズ曲率、レンズ屈折率、レンズ相互間の面間隔、開口径等)とに基づいて予め算出される。レンズ制御装置206は、検出した絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置に基づいて該ルックアップテーブルから対応する一対の点像分布55,56のデータを選択してカメラボディ203に送出する。カメラボディ203のボディ制御装置214は、カメラボディ203から受け取った一対の点像分布55,56のデータに対して像ズレ演算処理を行って像ズレ量を算出すれば、最良像面と予定焦点面とを一致させるためのオフセット量を得ることが出来る。
【0075】
図14は、上述した本発明の第1実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0076】
図14の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階では、点像分布データテーブル生成装置から交換レンズ202のレンズ制御装置206内部のメモリに点像分布データテーブルが書き込まれる。詳細に説明する。まず、交換レンズ202のレンズ制御装置206から、レンズ種類識別情報が、点像分布データテーブル生成装置に送られる。予め、点像分布データテーブル生成装置のメモリには、撮影光学系(各種交換レンズ)の光学設計情報と焦点検出光学系(マイクロレンズなど)の光学設計情報とが格納されている。点像分布データテーブル生成装置の制御装置が受信したレンズ種類識別情報に対応した交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系の光学設計情報とに基づき、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせに応じて、画面中央において、すなわち焦点検出エリア101において、最良像面と予定焦点面とが一致する状態での焦点検出画素の配列方向(水平方向)の一対の点像分布データが該制御装置によって算出される。絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせを順次変更して上記算出処理が行われ、算出された点像分布データとそれに対応する絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報とを組み合わせて点像分布データテーブルが該制御装置によって作成される。最終的に、点像分布データテーブル生成装置側で生成された点像分布データテーブルは交換レンズ202側に送られ、交換レンズ202のレンズ制御装置206内部のメモリに、点像分布データテーブルとして格納される。
【0077】
図14の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズ202がカメラボディ203に装着される。交換レンズ202側には、上述したように点像分布データテーブルが格納されている。設定された絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報に基づき、その時点の撮影光学系の状態に応じた一対の点像分布データが、レンズ制御装置206によって、点像分布データテーブルから選択され、カメラボディ203のボディ制御装置214に送られる。カメラボディ203のボディ制御装置214は、焦点検出画素データに対し、所定の像ズレ検出演算(式(1)〜式(5))を施して像ズレ量を算出する。また、カメラボディ203のボディ制御装置214は、交換レンズ202のレンズ制御装置206から受け取った一対の点像分布データに対して、同じ像ズレ検出演算を施してオフセット量を算出する。そして、ボディ制御装置214は、像ズレ量からオフセット量を差し引くことにより像ズレ量を補正する。
【0078】
なお交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系の光学設計情報とに基づく一対の点像分布データの算出においては、周知の光線追跡の手法が用いられ、点光源から発せれた多数の光線が撮影光学系中の一対の領域を通過して予定焦点面上のどの位置に到達するかが計算されて集計されることにより、点像分布データを得ることができる。
【0079】
また上述した点像分布データテーブルにおいて、点像分布データは、
図10の実線55と破線56とで表わされる波形を示す一対のデータである。点像分布データのデータ形式は、像面上の位置と強度との関係を表現できるデータ形式であればどのようなデータ形式でもよい。最も単純なデータ形式は点像分布55,56を所定のサンプリングピッチでサンプリングした時のサンプリング位置と強度とをペアリングしたデータ形式である。サンプリングピッチの情報は交換レンズ202のレンズ制御装置206からカメラボディ203のボディ制御装置214に伝達しても良いし、交換レンズ202のレンズ制御装置206とカメラボディ203のボディ制御装置214との間の取り決めにより所定値に定められていてもよい。このようなデータ形式の点像分布データを受け取ったカメラボディ203のボディ制御装置214は、該点像分布データに対し像ズレ検出演算を施して点像分布データ形式のサンプリングピッチ単位で表された像ズレ量を算出する。さらに該像ズレ量を焦点検出画素による像のサンプリングピッチ(撮像画素ピッチの2倍のピッチ)単位の像ズレ量に変換することにより、式(6)のオフセット量Offsetが算出される。
【0080】
なお、交換レンズ202のレンズ制御装置206とカメラボディ203のボディ制御装置214との間で、オフセット量の補正が不要であることを表す特定データを点像分布データとして定めておくこととしてもよい。こうすることにより、カメラボディ203のボディ制御装置214は、該特定データを点像分布データとして受け取ったときには、
図6のステップS131において、オフセット量算出処理をスキップしてオフセット量Offset=0とすることができる。
【0081】
また、点像分布データテーブル生成装置の制御装置により、レンズ種類識別情報に応じてその都度点像分布データテーブルが作成される代わりに、予め全ての種類の交換レンズ202に対する点像分布データテーブルを作成しておくこととしてもよい。このとき、点像分布データテーブル生成装置の制御装置は、レンズ種類識別情報に応じた点像分布データテーブルを選択して、交換レンズに送付する。
【0082】
また、点像分布データテーブル生成装置の制御装置によって交換レンズ202のレンズ制御装置206に点像分布データテーブルが書き込まれる代わりに、交換レンズ202の製造時に該交換レンズ202の種類に対応した点像分布データテーブルを予め記憶したメモリデバイスが該交換レンズ202に実装されるようにしてもよい。
【0083】
上記第1実施形態の焦点検出装置においては、画面中心に配置された焦点検出エリアで算出された像ズレ量を、交換レンズの収差特性に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面との間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0084】
<第2実施形態>
第2実施形態は焦点検出エリアが画面中心に限らず複数の位置に存在する場合の本発明の実施形態である。
【0085】
図15は、第2実施形態の撮影画面上における焦点検出エリアの位置を示す図であり、矩形の撮影画面100上の中央(光軸上)および水平垂直方向の周辺の25カ所に焦点検出リア102が配置される。長方形で示す焦点検出エリア102の長手方向(水平方向)に、焦点検出画素が直線的に配列される。このように画面全体にわたって複数の焦点検出エリアが配置される場合には、焦点検出エリアの位置および焦点検出エリアの方向に応じて、最良像面と予定焦点面が一致する場合に一対の焦点検出光束が形成する点像分布も焦点検出エリアの位置と焦点検出エリアの方向に応じて変化するので、焦点検出エリアの位置および焦点検出エリアの方向に対応した点像分布データテーブルを用意する必要がある。
【0086】
図16は、第2実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0087】
図16の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階では、交換レンズに点像分布データテーブル生成装置から点像分布データテーブルが書き込まれる。まず交換レンズからレンズ種類識別情報が点像分布データテーブル生成装置に送られる。予め点像分布データテーブル生成装置には各種交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系(マイクロレンズなど)の光学設計情報が格納されており、受信したレンズ種類識別情報に対応した交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系の光学設計情報に基づき、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置に加えて像高および検出方向の組み合わせに応じて、各像高位置において最良像面と予定焦点面が一致する状態での焦点検出方向の一対の点像分布データを算出する。ここで像高とは画面中心位置から点像分布データを算出する位置までの距離のことであり、また検出方向とは該算出位置と画面中心位置を結ぶ直線を角度基準にした場合の点像分布データを算出する方向である。
【0088】
絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置、ならびに像高および焦点検出方向の組み合わせを順次変更して上記算出処理を行い、算出された点像分布データとそれに対応する絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置、ならびに像高および焦点検出方向の情報とを組み合わせて点像分布データテーブルを作成する。最終的に点像分布データテーブル生成装置側で生成された点像分布データテーブルは交換レンズ側に送られ点像分布データテーブルとして格納される。
【0089】
図16の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズがカメラボディに装着される。
【0090】
カメラボディには
図15に示す25カ所の焦点検出エリアの中から1つの焦点検出エリアを選択する選択手段(ユーザーによる選択操作により選択される)があり、選択された焦点検出エリアの位置情報を交換レンズに送信する。焦点検出エリアの位置情報は、画面中心位置から焦点検出エリアまでの距離、すなわち像高および焦点検出方向からなる。焦点検出方向は、焦点検出画素の配列方向を焦点検出エリアと画面中心とを結ぶ直線を基準にして測った角度で表わされる。
【0091】
交換レンズ側には点像分布データテーブルがあり、設定された絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報、ならびにカメラボディから受信した像高および検出方向に基づき、その時点の撮影光学系の状態に応じた一対の点像分布データが点像分布データテーブルから選択されカメラボディに送られる。
【0092】
カメラボディでは選択された焦点検出エリアの焦点検出画素データに対し所定の像ズレ検出演算(式(1)〜式(5))を施して像ズレ量を算出する。また交換レンズから受け取った一対の点像分布データに対して同じ像ズレ検出演算を施して選択された焦点検出エリアに対応したオフセット量を算出する。そして像ズレ量からオフセット量を差し引くことにより選択された焦点検出エリアの像ズレ量を補正する。
【0093】
上記第2実施形態の焦点検出装置においては、焦点検出エリアが画面中心に限らず複数の位置に存在する場合でも、任意の焦点検出エリアで算出された像ズレ量を交換レンズの収差特性に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面の間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0094】
なお上述したように点像分布データテーブルを像高および検出方向に応じて用意するのに加えさらに、点像分布データテーブルを焦点検出画素の分光感度特性に応じるように設定しても良い。例えば2種類のカメラボディにおいてそれぞれの焦点検出画素の分光感度特性が異なる場合、例えば一方が白色フィルタの分光感度特性であって、かつ他方が緑色フィルタ(G)の分光感度特性である場合には、点像分布データテーブルを複数の分光感度特性に応じて用意し、カメラボディから交換レンズに該カメラボディの焦点検出画素の分光感度特性を送信することにより、該分光感度特性に応じた点像分布データをカメラボディが交換レンズから受け取るようにしてもよい。
【0095】
<第3実施形態>
第3実施形態は点像分布データを交換レンズの撮影光学系を通して実測することにより求める本発明の実施形態である。
【0096】
図17は、第3実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0097】
図17の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階では、交換レンズが調整装置(点像分布データテーブル生成装置)に取り付けられる。調整装置(点像分布データテーブル生成装置)にはカメラボディと同じ撮像素子が備えられており、レンズマウントを介して交換レンズと装着可能である。また調整装置(点像分布データテーブル生成装置)のレンズマウントから撮像素子面(予定焦点面)までの距離はカメラボディの場合と同一である。調整装置(点像分布データテーブル生成装置)に交換レンズを装着した状態において、交換レンズの撮影光学系を通して点光源の像が調整装置(点像分布データテーブル生成装置)の撮像素子上(焦点検出画素配列上)に形成される。
【0098】
このとき交換レンズから点光源までの距離は次のようにして調整される。まず点光源の代わりに所定のテストチャートを配置し、交換レンズの撮影光学系の絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置に応じてテストチャートまでの距離を粗調整する。次に、撮像素子の撮像画素のデータに基づきテストチャートの画像品質が最良となるようにテストチャートまでの距離を微調整する。テストチャートの画像の品質が最良の状態というのは、例えば、その画像の解像度が最大、あるいはその画像のコントラストが最大といった状態を指す。これにより最良像面と予定焦点面(撮像素子面)が一致する。最後にテストチャートの距離に点光源を配置する。交換レンズの撮影光学系の絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報は調整装置(点像分布データテーブル生成装置)側にも送られる。調整装置(点像分布データテーブル生成装置)側では、受け取った絞りF値、フォーカスレンズ位置、およびズームレンズ位置の情報と、焦点検出画素配列のデータから実測値として得られる一対の点像分布データとを関係づけて格納する。以上の処理を撮影光学系の絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置を変更して行うことにより、調整装置(点像分布データテーブル生成装置)側で点像分布データテーブルが生成され、最終的に交換レンズ側に送られ点像分布データテーブルとして格納される。
【0099】
図17の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズがカメラボディに装着される。交換レンズ側の点像分布データテーブルには、予定焦点面と最良像面が一致する場合の最良像面における一対の焦点検出光束により形成される一対の点像分布データ(実測値)が格納されている。交換レンズは、逐次、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置に基づいて点像分布データテーブルから一対の点像分布データを選択してカメラボディに送出する。
【0100】
カメラボディでは焦点検出画素データに対し所定の像ズレ検出演算(式(1)〜式(5))を施して像ズレ量を算出する。また交換レンズから受け取った一対の点像分布データに対して同じ像ズレ検出演算を施してオフセット量を算出する。そして像ズレ量からオフセット量を差し引くことにより像ズレ量を補正する。
【0101】
上記第3実施形態の焦点検出装置においては、実測された一対の点像分布データに基づいてオフセット量が算出されるので、交換レンズの撮影光学系の収差特性に個体差が生じている場合でも、焦点検出エリアで算出された像ズレ量を交換レンズの収差特性の個体差に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面の間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0102】
全ての絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせにおいて一対の点像分布データを実測するのが難しい場合は、第1実施形態と組み合わせて、代表的な絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせにおいて一対の点像分布データを実測しておき、第1実施形態における光学設計情報から計算により求められた一対の点像分布データを該実測値に基づき校正するようにしてもよい。
【0103】
<第4実施形態>
第4実施形態は、点像分布データを交換レンズからカメラボディに送り、カメラボディ側で受信した点像分布データに対して像ズレ検出演算処理を施してオフセット量を算出する代わりに、予め交換レンズ側に点像分布データに対して像ズレ検出演算処理を施して求めたオフセット量をテーブルとして格納しておき、オフセット量を交換レンズからカメラボディに送り、カメラボディ側では焦点検出画素データに基づいて算出した像ズレ量を交換レンズから受信したオフセット量により補正する本発明の実施形態である。
【0104】
図18は、上述した本発明の第4実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0105】
図18の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階では、交換レンズにオフセット量テーブル生成装置からオフセット量テーブルが書き込まれる。まず交換レンズからレンズ種類識別情報がオフセット量テーブル生成装置に送られる。予めオフセット量テーブル生成装置には各種交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系(マイクロレンズなど)の光学設計情報が格納されており、受信したレンズ種類識別情報に対応した交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系の光学設計情報に基づき、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせに応じて、最良像面と予定焦点面が一致する状態での焦点検出画素の配列方向の一対の点像分布データを算出する。次に算出した一対の点像分布データに対しカメラボディにおいて焦点検出画素のデータに施す像ズレ検出演算処理と同じ像ズレ検出演算処理を施し、一対の点像分布データに対応するオフセット量を算出する。
【0106】
絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせを順次変更して上記算出処理を行い、算出されたオフセット量とそれに対応する絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報とを組み合わせてオフセット量テーブルを作成する。最終的にオフセット量テーブル生成装置側で生成されたオフセット量テーブルは交換レンズ側に送られオフセット量テーブルとして格納される。
【0107】
図18の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズがカメラボディに装着される。交換レンズ側にはオフセット量テーブルがあり、設定された絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報に基づき、その時点の撮影光学系の状態に応じたオフセット量がオフセット量テーブルから選択されカメラボディに送られる。カメラボディでは焦点検出画素データに対し所定の像ズレ検出演算(式(1)〜式(5))を施して像ズレ量を算出する。そして像ズレ量から交換レンズから受け取ったオフセット量を差し引くことにより像ズレ量を補正する。
【0108】
なお上述したオフセット量テーブルにおいて、オフセット量のデータ形式は、像面上での像ズレ量を例えばμm単位で表したデータである。オフセット量の単位情報は交換レンズからカメラボディに伝達しても良いし、交換レンズとカメラボディ間の取り決めにより予め定められていてもよい。このような単位で定められたオフセット量を受け取ったカメラボディは、該オフセット量を焦点検出画素による像のサンプリングピッチ(撮像画素ピッチの2倍)のオフセット量に変換することにより、式(6)のオフセット量Offsetが算出される。またオフセット量テーブル生成装置はレンズ種類識別情報に応じてその都度点像分布データに基づいてオフセット量を算出してオフセット量テーブルを作成する代わりに、予め全ての交換レンズ種類に対してオフセット算出処理を予め行ってオフセット量テーブルを作成しておき、レンズ種類識別情報に応じたオフセット量テーブルを交換レンズに送付するようにしてもよい。またオフセット量テーブル生成装置から交換レンズにオフセット量テーブルを書き込む代わりに、交換レンズの製造時に該交換レンズの種類に対応したオフセット量テーブルを予め記憶したメモリデバイスを該交換レンズに実装するようにしてもよい。
【0109】
上記第4実施形態の焦点検出装置においては焦点検出エリアの焦点検出画素データに基づいて算出された像ズレ量を交換レンズの収差特性に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面の間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0110】
<第5実施形態>
第5実施形態は、予め交換レンズ側に複数の最良像面の定義に応じたオフセット量をテーブルとして格納しておき、カメラボディが最良像面の種類を交換レンズに送り、該最良像面の種類に応じたオフセット量を交換レンズからカメラボディに送り、カメラボディ側では焦点検出画素データに基づいて算出した像ズレ量を交換レンズから受信したオフセット量により補正する本発明の実施形態である。これは最良像面の定義の仕方によって、最良像面の位置(光軸方向)が変化することに対応するためである。例えば複数の最良像面の定義として、解像度が最大となる像面、点像分布が最小となる像面(最小錯乱円となる像面)、所定空間周波数のMTF(Modulation Transfer Function)が最大になる像面などがある。いずれの定義によって最良像面が定義されるかについては、設計者もしくはユーザが決定しても良いし、被写体が、例えば風景であるか文書であるかに応じてカメラボディが自動的に決定しても良い。
【0111】
図19は、上述した本発明の第5実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0112】
図19の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階では、交換レンズにオフセット量テーブル生成装置からオフセット量テーブルが書き込まれる。まず交換レンズからレンズ種類識別情報がオフセット量テーブル生成装置に送られる。予めオフセット量テーブル生成装置には各種交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系(マイクロレンズなど)の光学設計情報が格納されており、受信したレンズ種類識別情報に対応した交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系の光学設計情報に基づき、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置と複数の最良像面の定義の組み合わせに応じて、最良像面と予定焦点面が一致する状態での焦点検出画素の配列方向の一対の点像分布データを算出する。次に算出した一対の点像分布データに対しカメラボディにおいて焦点検出画素のデータに施す像ズレ検出演算処理と同じ像ズレ検出演算処理を施し、一対の点像分布データに対応するオフセット量を算出する。
【0113】
絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置と複数の最良像面の定義の組み合わせを順次変更して上記算出処理を行い、算出されたオフセット量とそれに対応する絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置と最良像面の種類情報とを組み合わせてオフセット量テーブルを作成する。最終的にオフセット量テーブル生成装置側で生成されたオフセット量テーブルは交換レンズ側に送られオフセット量テーブルとして格納される。
【0114】
図19の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズがカメラボディに装着される。カメラボディから交換レンズにそのカメラボディで採用される最良像面の種類を選択して交換レンズに送信する。交換レンズ側にはオフセット量テーブルがあり、設定された絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報に基づき、その時点の撮影光学系の状態と受信した最良像面の種類に応じたオフセット量がオフセット量テーブルから選択されカメラボディに送られる。カメラボディでは焦点検出画素データに対し所定の像ズレ検出演算(式(1)〜式(5))を施して像ズレ量を算出する。そして像ズレ量から交換レンズから受け取ったオフセット量を差し引くことにより像ズレ量を補正する。
【0115】
上記第5実施形態の焦点検出装置においては、焦点検出エリアの焦点検出画素データに基づいて算出された像ズレ量を、カメラボディで採用する最良像面の定義と交換レンズの収差特性に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面の間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0116】
<第6実施形態>
第6実施形態は、予め交換レンズ側に複数の像ズレ検出演算(相関演算)に応じたオフセット量をテーブルとして格納しておき、カメラボディが使用する像ズレ検出演算の種類を交換レンズに送り、該像ズレ検出演算の種類に応じたオフセット量を交換レンズからカメラボディに送り、カメラボディ側では焦点検出画素データに基づいて算出した像ズレ量を交換レンズから受信したオフセット量により補正する本発明の実施形態である。従来像ズレ検出演算(相関演算)には式(1)、式(8)の他にも多くの像ズレ検出演算が提案されている。一対の像の形状が一致している場合にはそれらの像ズレ検出演算によって算出される像ズレの違いはほとんどないが、
図19のように一対の像の形状の不一致性が大きくなると像ズレ検出演算の違いによって、算出される像ズレ量に違いを生ずる。そのため最良像面を予定焦点面に一致させるためのオフセット量も像ズレ検出演算の種類に応じて調整する必要がある。
【0117】
図20は、上述した本発明の第6実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0118】
図20の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階では、交換レンズにオフセット量テーブル生成装置からオフセット量テーブルが書き込まれる。まず交換レンズからレンズ種類識別情報がオフセット量テーブル生成装置に送られる。予めオフセット量テーブル生成装置には各種交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系(マイクロレンズなど)の光学設計情報が格納されており、受信したレンズ種類識別情報に対応した交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系の光学設計情報に基づき、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせに応じて、最良像面と予定焦点面が一致する状態での焦点検出画素の配列方向の一対の点像分布データを算出する。次に算出した一対の点像分布データに対し複数の像ズレ検出演算処理を施し、一対の点像分布データに対応して複数の像ズレ演算処理に対応した複数のオフセット量を算出する。
【0119】
絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせを順次変更して上記算出処理を行い、算出されたオフセット量と、それに対応する絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置と、像ズレ演算処理の種類の情報とを組み合わせてオフセット量テーブルを作成する。最終的にオフセット量テーブル生成装置側で生成されたオフセット量テーブルは交換レンズ側に送られオフセット量テーブルとして格納される。
【0120】
図20の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズがカメラボディに装着される。カメラボディから交換レンズにそのカメラボディで採用される像ズレ検出演算処理の種類識別情報を交換レンズに送信する。交換レンズ側にはオフセット量テーブルがあり、設定された絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報に基づき、その時点の撮影光学系の状態と受信した像ズレ演算処理の種類に応じたオフセット量がオフセット量テーブルから選択されカメラボディに送られる。カメラボディでは焦点検出画素データに対し像ズレ検出演算を施して像ズレ量を算出する。そして像ズレ量から交換レンズから受け取ったオフセット量を差し引くことにより像ズレ量を補正する。
【0121】
上記第6実施形態の焦点検出装置においては、焦点検出エリアの焦点検出画素データに基づいて算出された像ズレ量を、カメラボディで採用する像ズレ検出演算処理の種類と交換レンズの収差特性に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面の間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0122】
<第7実施形態>
第7実施形態は、予め交換レンズ側に複数の焦点検出光学系に応じたオフセット量をテーブルとして格納しておき、カメラボディが焦点検出光学系の種類を交換レンズに送り、該焦点検出光学系の種類に応じたオフセット量を交換レンズからカメラボディに送り、カメラボディ側では焦点検出画素データに基づいて算出した像ズレ量を交換レンズから受信したオフセット量により補正する本発明の実施形態である。
【0123】
焦点検出光学系は、上述したように主としてマイクロレンズと光電変換部とから構成されているが、マイクロレンズの曲率、屈折率、サイズ、焦点距離などの違いに応じて光学収差や回折による収差が変化し、これに応じて一対の焦点検出光束の状態も変化する。一対の焦点検出光束の状態が変化すれば最良像面が予定焦点面に一致する場合の一対の点像分布データも変化するので、オフセット量も焦点検出光学系の種類に応じて調整する必要がある。
【0124】
図21は、上述した本発明の第7実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0125】
図21の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階では、交換レンズにオフセット量テーブル生成装置からオフセット量テーブルが書き込まれる。まず交換レンズからレンズ種類識別情報がオフセット量テーブル生成装置に送られる。予めオフセット量テーブル生成装置には各種交換レンズの光学設計情報と複数の焦点検出光学系の光学設計情報(マイクロレンズに関する情報)が格納されており、受信したレンズ種類識別情報に対応した交換レンズの光学設計情報と複数の焦点検出光学系の光学設計情報に基づき、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置と複数の焦点検出光学系の組み合わせに応じて、最良像面と予定焦点面が一致する状態での焦点検出画素の配列方向の一対の点像分布データを算出する。次に算出した一対の点像分布データに対しカメラボディにおいて焦点検出画素のデータに施す像ズレ検出演算処理と同じ像ズレ検出演算処理を施し、一対の点像分布データに対応するオフセット量を算出する。
【0126】
絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置と複数の焦点検出光学系との組み合わせを順次変更して上記算出処理を行い、算出されたオフセット量と、それに対応する絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置と、焦点検出光学系の種類情報とを組み合わせてオフセット量テーブルを作成する。最終的にオフセット量テーブル生成装置側で生成されたオフセット量テーブルは交換レンズ側に送られオフセット量テーブルとして格納される。
【0127】
図21の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズがカメラボディに装着される。カメラボディは、そのカメラボディで採用されている焦点検出光学系の種類に応じたオフセット量が交換レンズによって選択されるように、その焦点検出光学系の種類の情報を交換レンズに送信する。交換レンズ側にはオフセット量テーブルがあり、設定された絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報に基づき、その時点の撮影光学系の状態と受信した焦点検出光学系の種類に応じたオフセット量がオフセット量テーブルから選択されカメラボディに送られる。カメラボディでは焦点検出画素データに対し所定の像ズレ検出演算(式(1)〜式(5))を施して像ズレ量を算出する。そして像ズレ量から交換レンズから受け取ったオフセット量を差し引くことにより像ズレ量を補正する。
【0128】
上記第7実施形態の焦点検出装置においては、焦点検出エリアの焦点検出画素データに基づいて算出された像ズレ量を、カメラボディに組み込まれた焦点検出光学系の種類と交換レンズの収差特性に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面の間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0129】
<第8実施形態>
第8実施形態はオフセット量を交換レンズの撮影光学系を通して実測することにより求める本発明の実施形態である。
【0130】
図22は、第8実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0131】
図22の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階で、交換レンズが調整装置(オフセット量テーブル生成装置)に取り付けられる。調整装置(オフセット量テーブル生成装置)にはカメラボディと同じ撮像素子が備えられており、レンズマウントを介して交換レンズと装着可能である。また調整装置(オフセット量テーブル生成装置)のレンズマウントから撮像素子面(予定焦点面)までの距離はカメラボディの場合と同一である。調整装置(オフセット量テーブル生成装置)に交換レンズを装着した状態において、交換レンズの撮影光学系を通して点光源の像が調整装置(オフセット量テーブル生成装置)の撮像素子上(焦点検出画素配列上)に形成される。
【0132】
このとき交換レンズから点光源までの距離は次のようにして調整される。まず点光源の代わりに所定のテストチャートを配置し、交換レンズの撮影光学系の絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置に応じてテストチャートまでの距離を粗調整する。次に、撮像素子の撮像画素のデータに基づきテストチャートの画像品質が最良となるようにテストチャートまでの距離を微調整する。これにより最良像面と予定焦点面(撮像素子面)が一致する。最後にテストチャートの距離に点光源を配置する。調整装置(オフセット量テーブル生成装置)は、この状態において焦点検出画素配列のデータから実測値として得られる一対の点像分布データに対し、カメラボディにおいて焦点検出画素のデータに施す像ズレ検出演算処理と同じ像ズレ検出演算処理を施し、一対の点像分布データに対応するオフセット量を算出する。
【0133】
交換レンズの撮影光学系の絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報は調整装置(オフセット量テーブル生成装置)側にも送られる。調整装置(オフセット量テーブル生成装置)側では受け取った絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報と実測値として得られるオフセット量を関係付けて格納する。以上の処理を撮影光学系の絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置を変更して行うことにより、調整装置(オフセット量テーブル生成装置)側でオフセット量テーブルが生成され、最終的に交換レンズ側に送られオフセット量テーブルとして格納される。
【0134】
図22の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズがカメラボディに装着される。交換レンズ側にはオフセット量テーブルがあり、設定された絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報に基づき、その時点の撮影光学系の状態に応じたオフセット量がオフセット量テーブルから選択されカメラボディに送られる。カメラボディでは焦点検出画素データに対し所定の像ズレ検出演算(式(1)〜式(5))を施して像ズレ量を算出する。そして像ズレ量から交換レンズから受け取ったオフセット量を差し引くことにより像ズレ量を補正する。
【0135】
上記第8実施形態の焦点検出装置においては、オフセット量が実測されるので、交換レンズの撮影光学系の収差特性に個体差が生じている場合でも、焦点検出エリアで算出された像ズレ量を交換レンズの収差特性の個体差に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面の間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0136】
全ての絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせにおいてオフセット量を実測するのが難しい場合は、第4実施形態と組み合わせて、代表的な絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせにおいてオフセット量を実測しておき、第4実施形態における光学設計情報から計算により求められたオフセット量を該実測値に基づき校正するようにしてもよい。
【0137】
<第9実施形態>
第9実施形態は、予めカメラボディ側に全ての交換レンズに対応したオフセット量をテーブルとして格納しておき、交換レンズからカメラボディにレンズ情報、例えばレンズ種類、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置を送り、カメラボディ側では焦点検出画素データに基づいて算出した像ズレ量を交換レンズから受信したレンズ情報に対応するオフセット量により補正する本発明の実施形態である。
【0138】
図23は、上述した本発明の第9実施形態において、オフセット量の算出および使用に関する処理部分をブロック図で表したものである。
【0139】
図23の上図において、第1ステップ、すなわち製造段階では、カメラボディにオフセット量テーブル生成装置からオフセット量テーブルが書き込まれる。予めオフセット量テーブル生成装置には全ての交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系(マイクロレンズなど)の光学設計情報が格納されている。オフセット量テーブル生成装置は1つの交換レンズを選択して該交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系の光学設計情報に基づき、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせに応じて、最良像面と予定焦点面が一致する状態での焦点検出画素の配列方向の一対の点像分布データを算出する。次に算出した一対の点像分布データに対しカメラボディにおいて焦点検出画素のデータに施す像ズレ検出演算処理と同じ像ズレ検出演算処理を施し、一対の点像分布データに対応するオフセット量を算出する。
【0140】
絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置と交換レンズの種類との組み合わせを順次変更して上記算出処理を行い、算出されたオフセット量とそれに対応する絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報とレンズ種類情報とを組み合わせてオフセット量テーブルを作成する。最終的にオフセット量テーブル生成装置側で生成されたオフセット量テーブルはカメラボディ側に送られオフセット量テーブルとして格納される。
【0141】
図23の下図において、第2ステップ、すなわち使用段階において、交換レンズがカメラボディに装着される。交換レンズ側は設定されている絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報と交換レンズの種類情報をカメラボディに送る。カメラボディは受信した絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報と交換レンズの種類情報とに基づき、その時点の撮影光学系の状態に応じたオフセット量をオフセット量テーブルから選択する。またカメラボディでは焦点検出画素データに対し所定の像ズレ検出演算(式(1)〜式(5))を施して像ズレ量を算出する。そして像ズレ量から上記選択されたオフセット量を差し引くことにより像ズレ量を補正する。
【0142】
上記第9実施形態の焦点検出装置においては焦点検出エリアの焦点検出画素データに基づいて算出された像ズレ量を交換レンズの収差特性に応じて的確に補正し、交換レンズの最良像面と予定焦点面の間のデフォーカス量を正確に検出することができる。
【0143】
以上説明を行った第1実施形態〜第9実施形態において、オフセット量は一対の点像分布データに基づいて算出されるとしたが、一般的な像分布は収差がない場合の像分布に点像分布をコンボルーションしたものであるから、オフセット量を点像以外の像分布データ、例えば
図12に示すようなエッジ像、線像などの像分布データに基づいて算出するようにしてもかまわない。
【0144】
以上説明を行った第1実施形態〜第9実施形態の焦点検出装置において、撮像素子212は、撮像画素310と焦点検出画素315および316とを有する光電変換装置である。しかし、本発明による焦点検出装置は、焦点検出画素315および316等の焦点検出画素のみを有する焦点検出専用の光電変換装置を含むこととしてもよい。
【0145】
<その他>
なお、本発明による焦点検出装置が適用される撮像装置としては、上述したようなカメラボディに交換レンズが装着される構成のデジタルカメラに限定されない。例えばレンズ一体型のデジタルカメラあるいはビデオカメラにも本発明を適用することができる。さらには、携帯電話などに内蔵される小型カメラモジュール、監視カメラやロボット用の視覚認識装置、車載カメラなどにも適用することができる。