(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、軸部材駆動機構101の分解斜視図である。軸部材駆動機構101は、枠体110、圧電振動子121、付勢部130、軸受け部140および主軸部材190を含む。
【0010】
枠体110は、互いに平行な底面部112および天面部114と、互いに平行な一対の側壁部116、118とを有する。なお、枠体110の各部は、図示の方向に合わせて底面部112、天面部114、側壁部116、118等と記載している。しかしながら、軸部材駆動機構101の向きが重力方向に対して図示の方向に制限されるわけではない。
【0011】
枠体110は、全体として直方体の形状を有するが、図中左側および右側に位置して互いに対向する一対の面は開放されている。
図1では、枠体110の内面形状を示す目的で、図中手前側の側壁部118は他の部分から切り離して図示しているが、当初より4面が閉じた管状の材料により枠体110を形成してもよい。
【0012】
枠体110の底面部112には、一対のねじ穴111が設けられる。ねじ穴111は、それぞれ内面にねじ溝が切られ、底面部112を厚さ方向に貫通する。ねじ穴111には、ねじ穴111と螺合する外径およびピッチを有する与圧ねじ180が、枠体110の外側からねじ込まれる。
【0013】
枠体110の内側には、底面部112側から順次、付勢部130、支持部材170、圧電振動子121、軸受け部140が配される。圧電振動子121および軸受け部140の間には、主軸部材190が挿通される。
【0014】
付勢部130は、矩形の板ばね部132と、板ばね部132の略中央に形成された位置決め部134とを有する。板ばね部132は弾性材料により形成される。位置決め部134は、板ばね部132の図中上面から隆起する一対の畝状の部分を有する。位置決め部134の内側は、支持部材170の図中下面と相補的な形状を有し、支持部材170を軸方向に挟み持つことにより位置決めする。
【0015】
圧電振動子121は、圧電体150と駆動電極151、152、153、154とを有する。圧電体150は、PZT等の圧電材料により形成され、直方体の形状を有する。駆動電極151、152、153、154は、圧電体150の一方の側面に配される。
【0016】
当接部160は、圧電体150の表面において、駆動電極151、152、153、154が形成された面と直交する図中上面に接着される。当接部160は、耐磨耗性が高い、例えば樹脂材料等により形成される。
【0017】
軸受け部140は、図中下面に、下方に向かって開口する受け溝142を有する。受け溝142は、軸受け部140の長手方向に直交する断面で見た場合、上下が反転したV字形の断面形状を有するV溝をなす。主軸部材190としては、寸法精度が高い材料を容易に得られる金属の丸棒、例えばステンレス鋼により形成された丸棒を用いることができる。
【0018】
図2は、軸部材駆動機構101の模式的な断面図であり、主軸部材190の長手方向と平行な断面を示す。
図2は、
図1に示した部材を組み立てた状態を示し、
図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0019】
組み立てられた軸部材駆動機構101において、一対の与圧ねじ180は、枠体110の底面部112に設けられたねじ穴111にねじ込まれる。これにより、与圧ねじ180の先端は、枠体110の内側に、図中上方に向かって突出する。
【0020】
枠体110の内部において、一対の与圧ねじ180の先端上には、付勢部130、支持部材170、圧電体150、当接部160、主軸部材190および軸受け部140が順次積み上げられる。なお、以降の説明において、主軸部材190の軸方向と平行な方向を単に軸方向と記載する。
【0021】
付勢部130の板ばね部132は、長手方向の端部近傍を、与圧ねじ180により押し上げられる。押し上げられた板ばね部132は、長手方向中央付近において支持部材170を押し上げる。
【0022】
支持部材170は、付勢部130の位置決め部134の内側に嵌まりこんでいる。これにより、支持部材170が、板ばね部132に対して軸方向に位置ずれすることが防止される。
【0023】
圧電体150は、軸方向の略中央を支持部材170に支持され、主軸部材190の下面に向かって押し上げられる。圧電体150の上面には当接部160が貼り付けられているので、当接部160が主軸部材190に対して下方から押し付けられる。
【0024】
主軸部材190の図中上方には軸受け部140が配される。下方から押し上げられた主軸部材190は、軸受け部140の受け溝142の内側に当接する。軸受け部140の上面は枠体110の天面部114に当接するので、軸受け部140が上方に変位することはない。
【0025】
よって、主軸部材190は、圧電体150に接着された当接部160と、軸受け部140の受け溝142との間に挟まれる。こうして、付勢部130の付勢力により、当接部160を通じて圧電振動子121を主軸部材190に押し当てる駆動力発生部199が形成される。
【0026】
主軸部材190の軸方向の寸法は、枠体110の紙面上の幅よりも長い。よって、主軸部材190は、枠体110の外側まで延在する。
【0027】
図3は、軸部材駆動機構101の模式的な断面図であり、主軸部材190の長手方向と直交する断面を示す。
図1および
図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0028】
軸部材駆動機構101において、主軸部材190は、軸方向と直交する断面において円形をなす。また、圧電振動子121により押し上げられた主軸部材190は、軸受け部140の受け溝142に入り込んで、受け溝142を形成する一対の面に押し付けられる。
【0029】
軸受け部140は、枠体110の内面と相補的な外形を有する。よって、軸受け部140は、枠体110に接した3方向、即ち、図中の上方および両側方について、枠体110内で位置決めされる。
【0030】
受け溝142の内面に押し付けられた主軸部材190は、軸方向と交差する方向について、枠体110内で位置決めされる。即ち、軸部材駆動機構101において、円形断面を有する主軸部材190は、枠体110に対して嵌合状態となる。
【0031】
なお、支持部材170の長手方向の長さは、枠体110の内壁の間隔に略等しい。よって、枠体110の内壁に挟まれることにより、軸方向と直交する方向についても支持部材170は位置決めされる。
【0032】
また、付勢部130が、圧電体150を押し上げる力の方向は、主軸部材190の円形断面の中心に向かう。更に、圧電体150が当接部160を介して主軸部材190を押し上げる力の方向も、主軸部材190の円形断面の中心に向かう。
【0033】
これにより、圧電体150が発生する駆動力は、主軸部材190に効率よく伝達される。例えば、本実施形態のように、圧電振動子121が発生する駆動力の方向は、付勢部130が生じる付勢力の方向と同一直線上に配されることが好ましい。
【0034】
圧電体150の一方の側面には、駆動電極153、154を含む複数の電極が配される。また、圧電体150において、駆動電極153、154が形成された面に対向する面には、単一の共通電極155が配される。よって、共通電極155を規準電圧、例えば接地電圧に結合しつつ、駆動電極153、154を個別の電位に結合することにより、圧電体150の各部位に個別の電圧を印加できる。
【0035】
図4は、圧電振動子121単独の側面図である。圧電振動子121は、圧電体150の側面を略四等分して配された4つの駆動電極151、152、153、154を有する。
【0036】
また、圧電振動子121は、駆動電極151、152、153、154が形成された面と直交する面の長手方向の略中央に支持部材170を接着される。よって、圧電振動子121は支持部材170により位置決めされ、枠体110に対して変位しない。
【0037】
換言すれば、圧電体150が変形した場合は、支持部材170により固定されていない圧電体150の図中両側端部が変位する。よって、圧電体150の変形により生じた駆動力を主軸部材190に伝達する当接部160は、圧電体150の軸方向中央から離れた位置に配される。
【0038】
図5は、圧電振動子121が駆動力を生じる作用を説明する図である。既に説明した通り、圧電振動子121における圧電体150の側面には4つの駆動電極151、152、153、154が配される。
【0039】
圧電体150の矩形の側面においてひとつの対角に位置する一対の駆動電極152、154には、例えば正弦曲線の波形を有する変調信号で変調された駆動電圧が印加される。同時に、他の対角に位置する一対の駆動電極151、153には、駆動電極152、154に印加された駆動電圧に対して位相が90度シフトした正弦曲線の波形を有する変調信号で変調された駆動電圧が印加される。
【0040】
圧電体150において、支持部材170に接着されて固定された中央部に対して一方の側、例えば、駆動電極151、152が配された図中左側部分に着目すると、駆動電極151から圧電体150に印加される駆動電圧と、駆動電極152から圧電体150に印加される駆動電圧とは異なる位相で変化する。よって、圧電体150は、印加された駆動電圧の差分に相当する屈曲変形を生じ、図中に矢印B
1で示すように、当接部160を図中上下に変位させる横振動を生じる。
【0041】
同様に、圧電体150において駆動電極153、154が配された図中右側の部分についても、駆動電極153から圧電体150に印加される駆動電圧と、駆動電極154から圧電体150に印加される駆動電圧との差分に応じて、図中に矢印B
2で示すように、当接部160が図中上下に変位する横振動が生じる。ただし、圧電体150の図中右側と図中左側では駆動電圧の差分の生じ方が逆相になるので、一対の当接部160に生じる横振動の位相は互いにずれる。
【0042】
また、上記のような駆動電圧が駆動電極151、152、153、154に印加された場合に圧電体150が生じる変形には、図中に矢印Lで示すように、軸方向の長さが伸縮する縦振動の成分を含む。このため、圧電体150の変形に伴って生じる当接部160の各々の変位に着目すると、当接部160は、駆動電極151、152、153、154が配された面と平行な面内で楕円軌道を描く楕円振動を生じる。
【0043】
既に説明した通り、当接部160は、付勢部130により、主軸部材190の下面に向かって押し付けられている。よって、当接部160が上記の楕円振動を生じた場合、軸部材駆動機構101には、主軸部材190を軸方向に変位させる駆動力が生じる。
【0044】
このように、圧電振動子121は、軸方向に伸縮振動する縦振動と、延伸方向に交差する方向に変位する横振動との組み合わせにより、当接部160を楕円振動させる。また、当接部160の楕円振動は、軸方向駆動力として主軸部材190に伝達される。
【0045】
なお、上記のような作用に鑑みて、当接部160は、圧電体150に生じる振動の腹に当たる部分に配置することが好ましい。これにより、楕円振動により生じる当接部160の振幅が大きくなり、主軸部材190に対して駆動力が効率よく伝達される。
【0046】
なお、圧電振動子121において、圧電体150は、軸方向について略中央の一点において支持部材170により支持される。一方、圧電体150に接着された一対の当接部160は、支持部材170に対して、軸方向について略対称に配される。これにより、一対の当接部160が主軸部材190に対して押し付けられた場合、当接部160は自己整合的に、均等な圧力で主軸部材190に対して押し付けられる。よって、一対の当接部160は互いに等しい駆動力を生じ、主軸部材190を円滑に駆動する。
【0047】
図6は、レイアウトの異なる駆動電極151、152,153,154、156を有する圧電振動子122の側面図である。圧電振動子122は、圧電体150側面の四隅に配された4つの駆動電極151、152、153、154と、圧電体150の長手方向中央で略三分の一を占める駆動電極156とを有する。
【0048】
上記のような圧電振動子122において、四隅に配された2対の駆動電極は、対角に位置する一対の駆動電極152、154に、同相の正弦波で変調された駆動電圧が印加される。また、対角に位置する他の一対の駆動電極151、153には、逆相の正弦波により変調された駆動電圧が印加される。更に、中央の駆動電極156には、位相が90度シフトした正弦波で変調された駆動電圧が印加される。
【0049】
このような駆動形態により、圧電体150の軸方向両端は専ら横振動を生じる。また、中央の駆動電極156は、専ら縦振動を生じる。これにより、当接部160の各々は楕円振動を生じて主軸部材190を駆動する。なお、当接部160は、圧電振動子121の場合と同様に、振幅の大きな振動の腹に配置することが好ましい。
【0050】
図7は、また異なるレイアウトの駆動電極151、152、153、154を有する圧電振動子123の側面図である。圧電振動子123は、圧電体150側面において、上下で全幅を占有する一対の駆動電極151、153と、幅方向中程で、長手方向を二分する一対の駆動電極152、154とを有する。
【0051】
上記のような圧電振動子123において、中段を2分する一対の駆動電極152、154には、互いに逆相の正弦波で変調された駆動電圧が印加される。また、上段および下段の駆動電極151、153には、位相が90度シフトした正弦波で変調された駆動電圧が印加される。
【0052】
このような駆動形態により、上段および下段の一対の駆動電極151、153が縦振動を生じると共に、中段の一対の駆動電極152、154が横振動を生じる。よって、当接部160は、それぞれ楕円振動を生じて、主軸部材190を駆動する。当接部160は、圧電振動子121、122の場合と同様に、振幅の大きな振動の腹に配置することが好ましい。
【0053】
図8は、また異なるレイアウトの駆動電極151、152、153を有する圧電振動子124の側面図である。圧電振動子124は、圧電体150側面において、上段で全幅を占有する単一の駆動電極152と、下段を長手方向に二分する一対の駆動電極151、153とを有する。
【0054】
上記のような圧電振動子123において、下段を2分する一対の駆動電極151、153には、互いに逆相の正弦波で変調された駆動電圧が印加される。また、上段の駆動電極152には、位相が90度シフトした正弦波で変調された駆動電圧が印加される。
【0055】
このような駆動形態により、上段の駆動電極152が縦振動を生じると共に、下段の一対の駆動電極151、153が横振動を生じる。よって、当接部160は、それぞれ楕円振動を生じて、主軸部材190を駆動する。当接部160は、圧電振動子121、122、123の場合と同様に、振幅の大きな振動の腹に配置することが好ましい。
【0056】
図9は、軸部材駆動機構102の分解斜視図である。なお、軸部材駆動機構102は、この後に説明する部分を除くと、
図1から
図3までに示した軸部材駆動機構101と同じ構造を有する。よって、軸部材駆動機構101と共通の部材には、同じ参照番号を付して重複する説明を省く。また、軸部材駆動機構101の場合と同様に、下記の説明において図上の配置について上下に言及した部材があっても、軸部材駆動機構102の向きが重力方向に対して図示の方向に制限されるわけではない。
【0057】
軸部材駆動機構102においては、枠体110の側壁部116、118に、それぞれひとつずつの支持穴119が設けられる。支持穴119は、支持部材170を挿通し得る大きさを有し、側壁部116、118を厚さ方向に貫通する。
【0058】
また、軸部材駆動機構102においては、単一のねじ穴111が枠体110の天面部114に設けられる。よって、枠体110にねじ込まれる与圧ねじ180も単一となる。
【0059】
更に、付勢部130は、支持部材170ではなく、軸受け部140を下方に向かって付勢すべく、天面部114の下面と軸受け部140の上面との間に配される。これにより、枠体110の内部においては、枠体110の底面部112側から順に、支持部材170、圧電振動子121、軸受け部140および付勢部130が順次配置される。主軸部材190は、圧電振動子121および軸受け部140の間に挟まれる。
【0060】
なお、付勢部130は、矩形の板ばね部132と、板ばね部132の長手方向両端に形成された一対の脚部136とを有する。これにより、単一の板ばね部132は、長手方向端部近傍の2箇所で当接して軸受け部140を付勢する。
【0061】
図10および
図11は、軸部材駆動機構102の模式的な断面図であり、
図9に示した部材を組み立てた状態を示す。
図10は、軸方向と平行な断面を示し、
図11は、軸方向と直交する断面を示す。これらの図において、
図9と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0062】
組み立てられた軸部材駆動機構102において、支持部材170は、支持穴119に挿通される。これにより、支持部材170は、枠体110内で位置決めされる。よって、支持部材170により支持された圧電振動子121も位置決めされる。
【0063】
また、軸部材駆動機構102において、単一の与圧ねじ180は、枠体110の天面部114に設けられたねじ穴111にねじ込まれる。よって、与圧ねじ180の先端は、枠体110の内側に図中下方に向かって突出する。これにより、付勢部130は、板ばね部132の中央を与圧ねじ180に押し下げられ、脚部136を通じて軸受け部140を図中下方に向かって付勢する。
【0064】
主軸部材190は、上記のようにして図中下方に向かって付勢された軸受け部140に押し下げられて、圧電振動子121の当接部160に押し当てられる。こうして、付勢部130の付勢力により、当接部160を通じて圧電振動子121を主軸部材190に押し当てる駆動力発生部199が形成される。
【0065】
よって、圧電振動子121に駆動電圧が供給されて当接部160が楕円振動した場合に生じる駆動力は、当接部160を通じて主軸部材190に伝達される。なお、軸部材駆動機構102においても、圧電振動子122、123、124を始めとする他の振動子を用いてもよい。
【0066】
このような軸部材駆動機構102の構造は、圧電振動子121が枠体110に対して固定されているので、主軸部材190の、軸方向に交差する方向の変位が少ない。よって、主軸部材190の位置決め精度が向上される。
【0067】
また、軸部材駆動機構102の構造は、与圧ねじ180を単一としたので、部品点数および組立工数の削減になる。更に、組立後の調整箇所も低減される。更に、付勢部130の脚部136は、板ばね部132をプレス加工して簡単に作製できる。
【0068】
なお、軸部材駆動機構102においても、付勢部130が、主軸部材190を押し下げる力の方向は、主軸部材190の円形断面の中心に向かう。また、主軸部材190を当接部160に向かって押し付ける力の方向も、主軸部材190の円形断面の中心に向かう。
【0069】
これにより、駆動電圧を印加された圧電体150が発生する駆動力は、主軸部材190に効率よく伝達される。このように、圧電振動子121が発生する駆動力の方向は、付勢部130が生じる付勢力の方向と同一直線上に配されることが好ましい。
【0070】
図12は、軸部材駆動機構103の分解斜視図である。軸部材駆動機構103は、この後に説明する部分を除くと、
図1から
図3までに示した軸部材駆動機構101と同じ構造を有する。よって、軸部材駆動機構101と共通の部材には、同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0071】
軸部材駆動機構103は、軸受け部140が用いられていない点を除くと、
図1、
図2および
図3に示した軸部材駆動機構103と同じ部品を用いて形成される。ただし、軸部材駆動機構103においては、与圧ねじ180、付勢部130および圧電振動子121により形成される駆動力発生部199が2組形成される。
【0072】
図13および
図14は、軸部材駆動機構103の模式的な断面図であり、
図12に示した部材を組み立てた状態を示す。
図13は、軸方向と平行な断面を示し、
図14は、軸方向と直交する断面を示す。これらの図において、
図12と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0073】
組み立てられた軸部材駆動機構103において、主軸部材190は、一対の駆動力発生部199の間に挟まれる。主軸部材190に対して図中下側の駆動力発生部199は、一対の与圧ねじ180、付勢部130および圧電振動子121により形成される。
【0074】
与圧ねじ180は、枠体110の底面部112のねじ穴111に、枠体110の下からねじ込まれる。これにより、与圧ねじ180の先端は、底面部112から枠体110の内側に突出する。
付勢部130は、図中両側端部を与圧ねじ180に押し上げられて、図中中央に搭載された支持部材170を押し上げる。これにより、圧電振動子121は、上方に向かって押し上げられる。
【0075】
また、主軸部材190に対して図中上側の駆動力発生部199も、一対の与圧ねじ180、付勢部130および圧電振動子121により形成される。ここでは、与圧ねじ180は、枠体110の上方から天面部114のねじ穴111にねじ込まれる。これにより、与圧ねじ180の先端は、天面部114から枠体110の内側に突出する。
付勢部130は、両側端部を与圧ねじ180に押し下げられて支持部材170を押し下げる。これにより、圧電振動子121は、下方に向かって押し下げられる。
【0076】
主軸部材190は、下側の駆動力発生部199において圧電振動子121の上面に設けられた当接部160と、上側の駆動力発生部199において圧電振動子121の下面に設けられた当接部160との間に挟まれる。これにより、一対の駆動力発生部199において発生した駆動力が、共に主軸部材190に伝達される。
【0077】
なお、単一の主軸部材190を協働して駆動する一対の圧電振動子121は、互いに同期した駆動信号により駆動されることが好ましい。これにより、当接部160の楕円振動が、効率よく主軸部材190に伝達される。
【0078】
上記のような軸部材駆動機構103においても、付勢部130が、主軸部材190を押し下げる力の方向は、主軸部材190の円形断面の中心に向かう。また、主軸部材190を当接部160に向かって押し付ける力の方向も、主軸部材190の円形断面の中心に向かう。
【0079】
これにより、駆動電圧を印加された圧電体150が発生する駆動力は、主軸部材190に効率よく伝達される。このように、圧電振動子121が発生する駆動力の方向は、付勢部130が生じる付勢力の方向と同一直線上に配されることが好ましい。
【0080】
また、軸部材駆動機構103は軸受け部140を省いているので、主軸部材190は、図中水平方向には位置決めされていない。主軸部材190径方向部両側部には枠体110の側壁部116、118が配されるので、主軸部材190が圧電振動子121の間からはずれることはない。
【0081】
しかしながら、主軸部材190をより厳密に位置決めする場合は、枠体110の内側と主軸部材190の外径を略同じにしてもよい。また、枠体110の側壁部116、118の内面に、図中に点線で示すように、スペーサ117を設けてもよい。更に、当接部160において主軸部材190に当接する面に、受け溝142に相当する溝形状を形成してもよい。
【0082】
また、軸部材駆動機構103は、圧電振動子122、123、124を始めとする他の振動子を用いても形成できる。更に、軸部材駆動機構102のように、圧電振動子121毎に単一の与圧ねじ180と脚部136を有する付勢部130とを用いた駆動力発生部を用いて軸部材駆動機構103を形成してもよい。
【0083】
このような軸部材駆動機構103の構造は、複数の駆動力発生部により主軸部材190を駆動するので、単一の圧電振動体を用いた軸部材駆動機構101、102よりも大きな駆動力を発生できる。また、一対の駆動力発生部は、互いに同じ部品を用いて形成できるので、用意する部品の種類を低減できる。
【0084】
なお、上記の例では、一対の駆動力発生部199により主軸部材190を駆動したが、更に多くの駆動力発生部199を用意して、主軸部材190の周方向に配置してもよい。また更に、軸方向にも複数の駆動力発生部199を配置してもよい。
【0085】
図15は、一眼レフカメラ100の模式的断面図である。
図1から
図3までと共通の部材には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。一眼レフカメラ100は、レンズユニット200およびカメラボディ300を含む。
【0086】
レンズユニット200は、軸部材駆動機構101、固定筒210、固定レンズ220、移動レンズ230、係合部240およびレンズ側制御部250を有する。固定筒210の一端には、レンズ側マウント部260が設けられる。レンズ側マウント部260は、カメラボディ300のボディ側マウント部360と嵌合して、レンズユニット200をカメラボディ300に結合する。
【0087】
レンズ側マウント部260およびボディ側マウント部360の結合は予め定められた操作により解除できる。よって、同じ規格のレンズ側マウント部260を有する他のレンズユニット200をカメラボディ300に装着できる。
【0088】
固定レンズ220および移動レンズ230は、固定筒210の内部において光軸Xに沿って配列されて光学系を形成する。固定レンズ220は、固定筒210に対して固定される。
【0089】
移動レンズ230は、レンズ保持部232に保持される。レンズ保持部232には、主軸部材190および副軸部材192の先端が結合される。主軸部材190および副軸部材192は、それぞれ光軸Xに対して平行に配される。よって、主軸部材190と副軸部材192も互いに平行になる。
【0090】
主軸部材190は、枠体110の内部に挿通され、枠体110内部の部材と共に軸部材駆動機構101を形成する。枠体110内部の構造については、
図1から
図3を参照して既に説明した。
【0091】
主軸部材190は、枠体110の内部で軸受け部140および当接部160に挟まれて、長手方向と交差する方向について位置決めされる。また、圧電振動子121が動作した場合、主軸部材190は軸方向に案内されつつ軸方向の駆動力を受ける。
【0092】
副軸部材192は、係合部240と係合する。係合部240は、レンズ保持部232の周方向に対向する一対の係合面により副軸部材192を挟む。これにより、係合部240は、図の紙面に交差する方向の移動を規制する。これにより、係合部240は、レンズ保持部232が主軸部材190の回りに回転することを防止する。
【0093】
このような構造により、移動レンズ230は、光軸Xと平行な方向に、固定筒210に対して移動する。これにより、移動レンズ230を含む光学系の焦点距離または焦点位置が変化する。
【0094】
レンズ側制御部250は、上記軸部材駆動機構101の制御を含む、レンズユニット200の制御を担う。また、レンズ側制御部250は、カメラボディ300のボディ側制御部322との通信も担う。これにより、カメラボディ300に装着されたレンズユニット200は、カメラボディ300と連携して動作する。
【0095】
カメラボディ300は、ボディ側マウント部360を挟んでレンズユニット200の反対側にあたる位置にミラーユニット370を備える。ミラーユニット370は、メインミラー保持枠372およびメインミラー371を有する。メインミラー保持枠372は、メインミラー371を保持しつつ、メインミラー回動軸373により軸支される。
【0096】
また、ミラーユニット370は、サブミラー保持枠375およびサブミラー374を有する。サブミラー保持枠375は、サブミラー374を保持しつつ、サブミラー回動軸376によりメインミラー保持枠372から軸支される。メインミラー保持枠372が回動した場合、サブミラー374およびサブミラー保持枠375はメインミラー保持枠372と共に移動しつつ、メインミラー保持枠372に対して回動する。
【0097】
図示のミラーユニット370においては、降下したメインミラー371が、被写体光束の光軸Xを斜めに横切る観察位置にある。観察位置のメインミラー371に入射した被写体光の一部は、メインミラー371の一部に形成されたハーフミラー領域を透過してサブミラー374に入射する。サブミラー374に入射した被写体光の一部は、ミラーユニット370の図中下方に向かって反射され、ミラーユニット370の図中下方に配された合焦光学系380を通じて合焦センサ382に入射される。
【0098】
カメラボディ300において、ミラーユニット370の図中上方にはフォーカシングスクリーン352およびペンタプリズム354が順次配される。また、カメラボディ300において、ペンタプリズム354の図中後方にはファインダ光学系356および測光センサ390が配される。ファインダ光学系356の後端は、カメラボディ300の背面にファインダ350として露出する。測光センサ390は、入射光強度に基づいて被写体輝度を検出する。
【0099】
カメラボディ300において、ミラーユニット370の図中後方には、フォーカルプレンシャッタ310、光学フィルタ332および撮像素子330が順次配される。フォーカルプレンシャッタ310は開閉して、撮像素子330に入射する被写体光束を導入または遮断する。
【0100】
光学フィルタ332は、撮像素子330の直前に設置され、撮像素子330に入射する被写体光束から赤外線および紫外線を除去する。また、光学フィルタ332は、撮像素子330の表面を保護する。更に、光学フィルタ332は、被写体光束の空間周波数を減じるローパスフィルタを含む。これにより、光学フィルタ332は、撮像素子330のナイキスト周波数を越える空間周波数成分を入射光束から除去してモアレの発生を抑制する。
【0101】
撮像素子330は、CCDセンサ、CMOSセンサなどの光電変換素子により形成され、光学フィルタ332を透過した入射光を受光する。撮像素子330の更に背後には、基板320、背面表示部340が順次配される。基板320には、ボディ側制御部322および画像処理部324等が実装される。背面表示部340は、液晶表示板等により形成され、カメラボディ300の背面に露出する。
【0102】
上記のような構造を有するカメラボディ300において、観察位置にあるメインミラー371は、レンズユニット200を通じて入射した入射光束の大半をフォーカシングスクリーン352に向かって反射する。フォーカシングスクリーン352は、撮像素子330の素子配列面と光学的に共役な位置に配され、レンズユニット200の光学系が形成した像光を可視化する。フォーカシングスクリーン352に結ばれた被写体像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から正立正像として観察される。
【0103】
ペンタプリズム354から射出される被写体光束の一部は、ファインダ光学系356の上方に配された測光センサ390に受光される。カメラボディ300のレリーズボタンが半押し状態になると、測光センサ390は、受光した入射光束の一部から被写体輝度を検出する。
【0104】
ボディ側制御部322は、検出された被写体輝度に応じて、絞り値、シャッタ速度、ISO感度等の撮像条件を算出する。これにより、一眼レフカメラ100は、適切な撮影条件で被写体を撮影できる状態になる。
【0105】
また、カメラボディ300のレリーズボタンが半押し状態になると、合焦センサ382は、レンズユニット200の光学系におけるデフォーカス量を検出して、ボディ側制御部322に通知する。ボディ側制御部322は、レンズ側制御部250と通信して、検知されたデフォーカス量を打ち消すように、移動レンズ230等を移動させる。こうして、レンズユニット200は、撮像素子330の素子配列面に被写体像を結ぶべく合焦する。
【0106】
続いて、一眼レフカメラ100においてレリーズボタンが深く押し込まれた場合、メインミラー保持枠372はメインミラー371と共に図中時計回りに回動し、退避位置に略水平に停止する。これにより、メインミラー371は、レンズユニット200の光学系を通じて入射した被写体光束の光路から退避する。
【0107】
メインミラー371が撮影位置に向かって回動する場合、サブミラー保持枠375も、メインミラー保持枠372と上昇すると共に、サブミラー回動軸376の回りに回動して、撮影位置において略水平に停止する。これにより、サブミラー374も被写体光束の光路から退避する。
【0108】
メインミラー371およびサブミラー374が撮影位置に移動すると、続いてフォーカルプレンシャッタ310が開く。これにより、レンズユニット200の光学系を通じて入射した入射光束は、光学フィルタ332を通過して撮像素子330に受光され、撮像される。その後、フォーカルプレンシャッタ310の後膜が閉じ、メインミラー371およびサブミラー374は再び観察位置に復帰して、撮影に係る一連の動作が一巡する。
【0109】
なお、上記の例に係るレンズユニット200では、枠体110が固定筒210に対して固定され、レンズ保持部232に対して結合された主軸部材190が駆動されて移動レンズ230を移動させる構造となっている。しかしながら、レンズユニット200は、枠体110をレンズ保持部232に結合し、固定筒210に対して固定した主軸部材190に対して駆動力を伝達することにより、移動レンズ230を移動させる構造としてもよい。
【0110】
また、上記の例では、主軸部材190に対して駆動力を伝達する構造としたが、レンズユニット200は、副軸部材192に対して駆動力を伝達する構造としてもよい。この場合、軸受け部140に受け溝142は設けず、当接部160の表面と平行な面と当接部160との間に副軸部材192を挟む構造とする。更に、レンズユニット200は、レンズ保持部232を案内する主軸部材190および副軸部材192とは別に、軸部材駆動機構101により駆動される軸部材をレンズ保持部232に結合する構造とすることもできる。
【0111】
更に、一眼レフカメラ100のレンズユニット200を例にあげて説明したが、軸部材駆動機構101は、ミラーレスカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ等、様々な撮像装置のレンズユニットにおいて、光学部材を移動させる用途に使用できる。更に,撮像装置に限らず、光学部材を備えた顕微鏡等の光学機器をはじめ、高い位置決め精度で位置決めされた部材を並進させる場合に広く利用できる。
【0112】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。