(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966514
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】チオ尿素含有水の処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20160728BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20160728BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20160728BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20160728BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20160728BHJP
C02F 1/469 20060101ALI20160728BHJP
C02F 1/20 20060101ALI20160728BHJP
C02F 9/02 20060101ALI20160728BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20160728BHJP
C02F 9/06 20060101ALI20160728BHJP
C02F 9/10 20060101ALI20160728BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20160728BHJP
C02F 1/04 20060101ALI20160728BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
C02F1/44 F
B01D61/02 500
B01D61/58
B01D61/44 500
B01D61/44 520
C02F1/42 F
C02F1/42 E
C02F1/46 103
C02F1/20 B
C02F9/02
C02F9/04
C02F9/06
C02F9/10
B01D61/04
C02F1/04 C
C02F1/28 A
C02F1/42 D
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-78311(P2012-78311)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202604(P2013-202604A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】織田 信博
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−173032(JP,A)
【文献】
特開昭55−017338(JP,A)
【文献】
特開2001−070989(JP,A)
【文献】
特開2003−002776(JP,A)
【文献】
特開2006−239506(JP,A)
【文献】
特開昭59−160585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/02
B01D 61/44
B01D 61/58
C02F 1/04
C02F 1/20
C02F 1/28
C02F 1/42
C02F 1/469
C02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオ尿素含有水を脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去し、
脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を有機物排除率の高い逆浸透膜によって濃縮して回収することを特徴とするチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項2】
ろ過、イオン交換樹脂、電気透析、電気再生式脱塩装置および/または有機物排除率の低い逆浸透膜による脱塩処理によって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去することを特徴とする請求項1に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項3】
脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を、有機物排除率の高い逆浸透膜によって濃縮すると共に、蒸発によって濃縮して回収することを特徴とする請求項2に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項4】
疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれる疎水性有機物を吸着処理すると共に、チオ尿素含有水を脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項5】
脱塩処理を行う前に、沈殿処理および/またはろ過処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項6】
チオ尿素含有水が金属およびアンモニアを含む場合に、
脱塩処理を行う前に、まず最初に、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンを弱酸性カチオン樹脂またはキレート樹脂によって分離し、
金属イオンが分離された後のチオ尿素含有水に含まれるアンモニアをアンモニアストリッピング処理によって回収し、
アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項7】
チオ尿素含有水が金属およびアンモニアを含む場合に、
脱塩処理を行う前に、まず最初に、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンを弱酸性カチオン樹脂またはキレート樹脂によって回収し、
金属イオンが回収された後のチオ尿素含有水に含まれるアンモニアをアンモニアストリッピング処理によって回収し、
アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項8】
アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水を電気透析によって脱塩処理し、
電気透析時に陰極側に移動したアルカリをアンモニアストリッピング処理に戻すことを特徴とする請求項6又は7に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項9】
チオ尿素含有水を脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去する脱塩処理部と、
前記脱塩処理部によって脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を有機物排除率の高い逆浸透膜によって濃縮して回収するチオ尿素濃縮部とを具備することを特徴とするチオ尿素含有水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオ尿素含有水の処理方法および装置に関し、特には、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができるチオ尿素含有水の処理方法および装置に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、例えば酸化チタン光触媒製造排水、低水素過電圧陰極製造排水、メッキ排水、化学洗浄排水などのようなチオ尿素含有排水からチオ尿素を回収することができるチオ尿素含有水の処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば非特許文献1(「国際化学物質簡潔評価文書(Concise International Chemical Assessment Document)、世界保健機関 国際化学物質安全性計画(IPCS UNEP//ILO//WHO)、2003年、第49巻、チオ尿素(Thiourea))の第5頁には、チオ尿素について、「水中での加水分解および水・空気中での直接光分解に抵抗性を示し、大気中でヒドロキシラジカルによる光化学的酸化作用を受ける(算出半減期は2.4時間)。本物質の生分解は、長い順化期間を経て始めて、順化したミクロフローラによって行われると考えられる。そのため、生物的または非生物的な除去に適さない条件下では、チオ尿素は長期にわたり地表水と底質に存在する可能性がある」旨、および「主として実験動物で行われた試験に基づくと、チオ尿素暴露に関連するおもな健康への有害影響は甲状腺機能の阻害であるが、肺、肝、造血系、腎への影響に関する記述もある。チオ尿素は肺の透過性変化に伴う肺水腫を引き起こす」旨が記載されている。また、非特許文献1の第6頁には、チオ尿素について、「種々の水生生物に対する毒性に関して入手できる確かな試験結果によれば、チオ尿素は水生環境において中程度から高度の毒性があると分類することができる。」旨が記載されている。
【0004】
また、非特許文献2(「化学物質等安全データシート」、インビトロジェン株式会社、2005年7月19日、化学物質等の名称 チオ尿素、項目3 危険有害性の要約)には、チオ尿素について、「分類の名称 その他の有害性物質」、「危険性 可燃性」、「有害性 皮膚、眼、粘膜などを刺激する。誤飲や暴露すると有害。長期間の暴露によって、健康への重篤な障害を生じる危険性がある」、および、「環境への影響 水生生物に対して毒性が強い。難分解性と判断される化学物質(化審法指定化学物質)、魚介類の体内において濃縮性が低いと判断される化学物質(通産省公示)」が記載されている。
【0005】
更に、特許文献1(特開2005−319423号公報)の段落〔0044〕には、チオ尿素等を含む混合物を形成し、その混合物を焼成し、得られた焼成物粉砕して洗浄し、乾燥することによって酸化チタン光触媒が得られる旨が記載されている。ところで、特許文献1には、酸化チタン光触媒の製造に用いられたチオ尿素を含む酸化チタン光触媒製造排水をどのように処理するかについて、記載されていない。
【0006】
また、特許文献2(特開昭60−29487号公報)の特許請求の範囲には、炭素質微粒子が分散され、且つメッキ金属としてニッケル主体の金属製分を含むメッキ浴を用いて陰極基材表面に電気メッキを施し、表面に生じた離脱容易なメッキ層を除去する低水素過電圧陰極の製法が記載されている。更に、特許文献2には、メッキ後の離脱容易なメッキ層を除去した後、その上にニッケル−硫黄メッキの補強メッキを施す旨が記載されており、更に、ニッケル−硫黄メッキとは、ニッケルメッキ浴にチオ尿素などを添加して電気メッキしたメッキである旨が記載されている。ところで、特許文献2には、低水素過電圧陰極の製造に用いられたチオ尿素を含む低水素過電圧陰極製造排水をどのように処理するかについて、記載されていない。
【0007】
更に、特許文献3(特開2006−104500号公報)には、イオウ系錯化剤を含有し、且つ、酸を含有しない中性乃至弱塩基性の前処理液に被メッキ物を浸漬した後、可溶性第一スズ塩、酸及びイオウ系錯化剤を含有する無電解スズメッキ液を用いて被メッキ物に無電解メッキを行う無電解スズメッキ方法が記載されている。また、特許文献3には、前処理液に含まれるイオウ系錯化剤の例として、チオ尿素類が記載されている。ところで、特許文献3には、無電解スズメッキに用いられたチオ尿素類を含むメッキ排水をどのように処理するかについて、記載されていない。
【0008】
更に、特許文献4(特開2005−290444号公報)には、バンプ電極の形状を大きく変形させることなくバンプ形成用下地層を除去することができる金電解剥離液が記載されている。また、特許文献4には、金電解剥離液にチオ尿素が含有されている旨が記載されている。ところで、特許文献4には、金電解剥離に用いられたチオ尿素を含む化学洗浄排水をどのように処理するかについて、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−319423号公報
【特許文献2】特開昭60−29487号公報
【特許文献3】特開2006−104500号公報
【特許文献4】特開2005−290444号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「国際化学物質簡潔評価文書(Concise International Chemical Assessment Document)、世界保健機関 国際化学物質安全性計画(IPCS UNEP//ILO//WHO)、2003年、第49巻、チオ尿素(Thiourea)
【非特許文献2】「化学物質等安全データシート」、インビトロジェン株式会社、2005年7月19日、化学物質等の名称 チオ尿素、項目3 危険有害性の要約
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1および2に記載されているようにチオ尿素は水生生物のみならず陸上の動物に対しても毒性があるため、特許文献1〜4に記載されているようなチオ尿素含有水を排水としてそのまま排出することはできない。ところが、チオ尿素は窒素除去(硝化・脱窒)の妨害物質であって好気性生物処理しにくい物質であり、十分な訓養が必要で安定した処理が困難である。従って、従来においては、特許文献1〜4に記載されているようなチオ尿素含有水を処理する場合には、多大なコストをかけて濃縮して焼却し、廃棄処分せざるを得なかった。
【0012】
一方、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素は有価物であるため、多大なコストをかけてチオ尿素を含むチオ尿素含有水を廃棄処分するのではなく、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を回収することが社会的ニーズであると言える。
【0013】
この点に鑑み、本発明者は、鋭意研究を行った結果、チオ尿素含有水に対して脱塩処理あるいは疎水性吸着剤による吸着処理を行うとチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が素通りすること、および、蒸発だけでなく有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)によってもチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を濃縮できることを見い出したのである。
【0014】
すなわち、本発明は、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができるチオ尿素含有水の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1及び2に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、チオ尿素含有水を脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。更に、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)によって濃縮されて回収される。詳細には、ろ過、イオン交換樹脂(2B3T、MIXBED)、電気透析、電気再生式脱塩装置および/または有機物排除率の低い逆浸透膜(低圧逆浸透膜)(詳細には、チオ尿素が素通りする逆浸透膜)による脱塩処理によって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。そのため、請求項1及び2に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができる。また、チオ尿素が回収されることなくチオ尿素含有水が廃棄処分される場合よりも、廃棄物量を削減することができる。
【0016】
請求項3に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が、有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)によって濃縮されると共に、蒸発によって濃縮されて回収される。蒸発によって濃縮されたチオ尿素をそのまま回収しても良いが、蒸発によって濃縮されたチオ尿素を冷却、晶析、固化、乾燥などによって更に精製しても良い。好ましくは、チオ尿素の濃縮液、または、冷却晶析などによって再精製されたチオ尿素は、新規のチオ尿素を適宜追加することにより、例えば酸化チタン光触媒製造プロセス、低水素過電圧陰極製造プロセス、無電解スズメッキプロセス、金電解剥離プロセスなどにおいて再利用される。あるいは、好ましくは、チオ尿素の濃縮液、または、冷却晶析などによって再精製されたチオ尿素は二酸化尿素の原材料として利用される。そのため、請求項3に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が蒸発のみによって濃縮される場合よりも、チオ尿素の蒸発濃縮に要するエネルギーを低減することができる。
【0017】
請求項4に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、例えば活性炭、疎水性吸着樹脂などのような疎水性吸着剤によって、チオ尿素含有水に含まれる例えば界面活性剤などのような疎水性有機物が吸着処理されると共に、チオ尿素含有水を脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。そのため、請求項4に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれる疎水性有機物が吸着処理されない場合よりも、チオ尿素以外の不純物の含有率が低いチオ尿素を精製することができる。
【0018】
請求項5に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、脱塩処理を行う前に、沈殿処理および/またはろ過処理が行われる。そのため、請求項5に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、脱塩処理を行う前に沈殿処理および/またはろ過処理が行われない場合よりも、チオ尿素以外の不純物の含有率が低いチオ尿素を精製することができる。
【0019】
請求項6に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、チオ尿素含有水が金属およびアンモニアを含む場合に、脱塩処理を行う前に、まず最初に、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンが弱酸性カチオン樹脂またはキレート樹脂によって分離される。つまり、チオ尿素含有水のアンモニアストリッピング処理時に析出しやすい金属イオンが、チオ尿素含有水のアンモニアストリッピング処理が行われる前に、弱酸性カチオン樹脂またはキレート樹脂によって予め分離される。
【0020】
また、請求項6に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、金属イオンが分離された後のチオ尿素含有水に含まれるアンモニアがアンモニアストリッピング処理によって回収される。詳細には、アンモニアストリッピング処理では、例えば蒸留によって気層へ移動したアンモニアガスを冷水によって吸収することによりアンモニアが回収される。更に、アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水が脱塩処理される。
【0021】
そのため、請求項6に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、金属とアンモニアとチオ尿素とを含むチオ尿素含有水から金属とアンモニアとチオ尿素とを分離し、有価物であるアンモニアとチオ尿素とを回収することができる。また、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンが予め分離されることなくチオ尿素含有水がアンモニアストリッピング処理される場合よりも、アンモニアストリッピング処理を安定させることができる。更に、アンモニアとチオ尿素とが回収されることなくチオ尿素含有水が廃棄処分される場合よりも、廃棄物量を削減することができる。
【0022】
請求項7に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、チオ尿素含有水が金属およびアンモニアを含む場合に、脱塩処理を行う前に、まず最初に、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンが弱酸性カチオン樹脂またはキレート樹脂によって回収される。つまり、チオ尿素含有水のアンモニアストリッピング処理時に析出しやすい金属イオンが、チオ尿素含有水のアンモニアストリッピング処理が行われる前に、弱酸性カチオン樹脂またはキレート樹脂によって予め回収される。好ましくは、弱酸性カチオン樹脂またはキレート樹脂に吸着された金属イオンが硫酸または塩酸によって再生される。更に、その再生廃液が、アルカリ添加によって金属水酸化物として回収される。あるいは、その再生廃液が、酸性のまま電解によって金属に還元され、その金属が回収される。
【0023】
また、請求項7に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、金属イオンが回収された後のチオ尿素含有水に含まれるアンモニアがアンモニアストリッピング処理によって回収される。詳細には、アンモニアストリッピング処理では、例えば蒸留によって気層へ移動したアンモニアガスを冷水によって吸収することによりアンモニアが回収される。更に、アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水が脱塩処理される。
【0024】
そのため、請求項7に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、金属とアンモニアとチオ尿素とを含むチオ尿素含有水から有価物である金属とアンモニアとチオ尿素とを分離して回収することができる。また、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンが予め分離されることなくチオ尿素含有水がアンモニアストリッピング処理される場合よりも、アンモニアストリッピング処理を安定させることができる。更に、金属とアンモニアとチオ尿素とが回収されることなくチオ尿素含有水が廃棄処分される場合よりも、廃棄物量を削減することができる。
【0025】
請求項8に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水が電気透析によって脱塩処理される。更に、電気透析時に陰極側に移動したアルカリがアンモニアストリッピング処理に戻される。そのため、請求項8に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水に含まれるアルカリがアンモニアストリッピング処理に戻されて有効利用されない場合よりも、アンモニアの気化を促進し、アンモニアの回収効率を向上させることができる。
【0026】
請求項9に記載のチオ尿素含有水の処理装置では、チオ尿素含有水を脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去する脱塩処理部と、脱塩処理部によって脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)によって濃縮して回収するチオ尿素濃縮部とが設けられている。
【0027】
つまり、請求項9に記載のチオ尿素含有水の処理装置による処理では、チオ尿素含有水を脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。更に、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)によって濃縮されて回収される。そのため、請求項9に記載のチオ尿素含有水の処理装置によれば、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【
図2】第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【
図3】第3の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【
図4】第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【
図5】第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のチオ尿素含有水の処理装置の第1の実施形態について説明する。
図1は第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【0031】
第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、
図1に示すように、チオ尿素を含むチオ尿素含有水が供給されると、まず最初に、チオ尿素含有水が、脱塩処理部としてのカチオン樹脂3によって脱塩処理され、次いで、脱塩処理部としてのアニオン樹脂4によって脱塩処理され、その結果、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、脱塩処理部として、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4の少なくとも一方の代わりに、あるいは、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4に加えて、ろ過装置、電気透析装置、電気再生式脱塩装置、有機物排除率の低い逆浸透膜(低圧逆浸透膜)(詳細には、チオ尿素が素通りする逆浸透膜)等を設けることも可能である。また、第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の他の変形例では、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4による脱塩処理の前に、チオ尿素含有水に対して沈殿処理および/またはろ過処理を行うことも可能である。
【0032】
第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図1に示すように、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が、チオ尿素濃縮部としての有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)5によって濃縮され、次いで、チオ尿素濃縮部としての蒸発乾燥処理部6によって濃縮される。
【0033】
また、第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が有機物排除率の高い逆浸透膜5(
図1参照)によって濃縮される前に、例えば活性炭、疎水性吸着樹脂などのような疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれる例えば界面活性剤などのような疎水性有機物を吸着処理すると共に、チオ尿素含有水をカチオン樹脂3(
図1参照)およびアニオン樹脂4(
図1参照)によって脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去することも可能である。
【0034】
図2は第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、
図2に示すように、アンモニアとチオ尿素とを含むチオ尿素含有水が供給されると、まず最初に、チオ尿素含有水に含まれるアンモニアが、アンモニアストリッピング処理部2によるアンモニアストリッピング処理によって回収される。詳細には、アンモニアストリッピング処理部2では、蒸留によって気層へ移動したアンモニアガスを冷水によって吸収することによりアンモニアが回収される。
【0035】
第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図2に示すように、アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水が、脱塩処理部としての低圧逆浸透膜(有機物排除率の低い逆浸透膜)(詳細には、チオ尿素が素通りする逆浸透膜)3’によって脱塩処理され、次いで、脱塩処理部としてのカチオン樹脂3によって脱塩処理され、次いで、脱塩処理部としてのアニオン樹脂4によって脱塩処理され、その結果、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、脱塩処理部として、低圧逆浸透膜3’、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4の少なくとも一つの代わりに、あるいは、低圧逆浸透膜3’、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4に加えて、ろ過装置、電気透析装置、電気再生式脱塩装置等を設けることも可能である。好ましくは、電気透析装置が設けられる場合には、電気透析時に陰極側に移動したアルカリがアンモニアストリッピング処理部2に戻される。また、第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の他の変形例では、低圧逆浸透膜(有機物排除率の低い逆浸透膜)(詳細には、チオ尿素が素通りする逆浸透膜)3’とカチオン樹脂3との間に海水淡水化用脱塩装置を設け、海水淡水化用脱塩装置による濃縮液をスラリーとして産業廃棄物処分し、海水淡水化用脱塩装置による透過水をカチオン樹脂3に供給することも可能である。
【0036】
第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図2に示すように、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が、チオ尿素濃縮部としての有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)5によって濃縮され、次いで、チオ尿素濃縮部としての蒸発乾燥処理部6によって濃縮される。
【0037】
また、第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、チオ尿素含有水に含まれるアンモニアがアンモニアストリッピング処理部2(
図2参照)によって回収された後であって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が有機物排除率の高い逆浸透膜5(
図2参照)によって濃縮される前に、例えば活性炭、疎水性吸着樹脂などのような疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれる例えば界面活性剤などのような疎水性有機物を吸着処理すると共に、チオ尿素含有水を低圧逆浸透膜3’(
図2参照)、カチオン樹脂3(
図2参照)およびアニオン樹脂4(
図2参照)によって脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去することも可能である。
【0038】
図3は第3の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。第3の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、
図3に示すように、金属とアンモニアとチオ尿素とを含むチオ尿素含有水が供給されると、まず最初に、金属イオン分離部としての弱酸性カチオン樹脂1によって、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンが分離される。第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、金属イオン分離部として、弱酸性カチオン樹脂1の代わりに、キレート樹脂を用いることも可能である。好ましくは、弱酸性カチオン樹脂1またはキレート樹脂に吸着された金属イオンが硫酸または塩酸によって再生される。更に、その再生廃液が、アルカリ添加によって金属水酸化物として回収される。あるいは、その再生廃液が、酸性のまま電解によって金属に還元され、その金属が回収される。代わりに、分離された金属イオンを除去することも可能である。
【0039】
第3の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図3に示すように、金属イオンが分離された後のチオ尿素含有水に含まれるアンモニアが、アンモニアストリッピング処理部2によるアンモニアストリッピング処理によって回収される。詳細には、アンモニアストリッピング処理部2では、蒸留によって気層へ移動したアンモニアガスを冷水によって吸収することによりアンモニアが回収される。
【0040】
第3の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図3に示すように、アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水が、脱塩処理部としてのカチオン樹脂3によって脱塩処理され、次いで、脱塩処理部としてのアニオン樹脂4によって脱塩処理され、その結果、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。第3の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、脱塩処理部として、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4の少なくとも一方の代わりに、あるいは、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4に加えて、ろ過装置、電気透析装置、電気再生式脱塩装置、有機物排除率の低い逆浸透膜(低圧逆浸透膜)(詳細には、チオ尿素が素通りする逆浸透膜)等を設けることも可能である。好ましくは、電気透析装置が設けられる場合には、電気透析時に陰極側に移動したアルカリがアンモニアストリッピング処理部2に戻される。
【0041】
第3の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図3に示すように、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が、チオ尿素濃縮部としての有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)5によって濃縮され、次いで、チオ尿素濃縮部としての蒸発乾燥処理部6によって濃縮される。
【0042】
また、第3の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、チオ尿素含有水に含まれるアンモニアがアンモニアストリッピング処理部2(
図3参照)によって回収された後であって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が有機物排除率の高い逆浸透膜5(
図3参照)によって濃縮される前に、例えば活性炭、疎水性吸着樹脂などのような疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれる例えば界面活性剤などのような疎水性有機物を吸着処理すると共に、チオ尿素含有水をカチオン樹脂3(
図3参照)およびアニオン樹脂4(
図3参照)によって脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去することも可能である。
【0043】
図4は第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、
図4に示すように、金属とアンモニアとチオ尿素とを含むチオ尿素含有水が供給されると、まず最初に、金属イオン分離部としての弱酸性カチオン樹脂1によって、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンが分離される。第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、金属イオン分離部として、弱酸性カチオン樹脂1の代わりに、キレート樹脂を用いることも可能である。好ましくは、弱酸性カチオン樹脂1またはキレート樹脂に吸着された金属イオンが硫酸または塩酸によって再生される。更に、その再生廃液が、アルカリ添加によって金属水酸化物として回収される。あるいは、その再生廃液が、酸性のまま電解によって金属に還元され、その金属が回収される。代わりに、分離された金属イオンを除去することも可能である。
【0044】
第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図4に示すように、金属イオンが分離された後のチオ尿素含有水に含まれるアンモニアが、アンモニアストリッピング処理部2によるアンモニアストリッピング処理によって回収される。詳細には、アンモニアストリッピング処理部2では、蒸留によって気層へ移動したアンモニアガスを冷水によって吸収することによりアンモニアが回収される。
【0045】
第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図4に示すように、アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水が、脱塩処理部としての低圧逆浸透膜(有機物排除率の低い逆浸透膜)(詳細には、チオ尿素が素通りする逆浸透膜)3’によって脱塩処理され、次いで、脱塩処理部としてのカチオン樹脂3によって脱塩処理され、次いで、脱塩処理部としてのアニオン樹脂4によって脱塩処理され、その結果、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、脱塩処理部として、低圧逆浸透膜3’、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4の少なくとも一つの代わりに、あるいは、低圧逆浸透膜3’、カチオン樹脂3およびアニオン樹脂4に加えて、ろ過装置、電気透析装置、電気再生式脱塩装置等を設けることも可能である。好ましくは、電気透析装置が設けられる場合には、電気透析時に陰極側に移動したアルカリがアンモニアストリッピング処理部2に戻される。
【0046】
第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図4に示すように、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が、チオ尿素濃縮部としての有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)5によって濃縮され、次いで、チオ尿素濃縮部としての蒸発乾燥処理部6によって濃縮される。
【0047】
また、第4の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、チオ尿素含有水に含まれるアンモニアがアンモニアストリッピング処理部2(
図4参照)によって回収された後であって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が有機物排除率の高い逆浸透膜5(
図4参照)によって濃縮される前に、例えば活性炭、疎水性吸着樹脂などのような疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれる例えば界面活性剤などのような疎水性有機物を吸着処理すると共に、チオ尿素含有水を低圧逆浸透膜3’(
図4参照)、カチオン樹脂3(
図4参照)およびアニオン樹脂4(
図4参照)によって脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去することも可能である。
【0048】
図5は第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、
図5に示すように、金属とアンモニアとチオ尿素とを含むチオ尿素含有水が供給されると、まず最初に、金属イオン分離部としての弱酸性カチオン樹脂1によって、チオ尿素含有水に含まれる金属イオンが分離される。第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、金属イオン分離部として、弱酸性カチオン樹脂1の代わりに、キレート樹脂を用いることも可能である。好ましくは、弱酸性カチオン樹脂1またはキレート樹脂に吸着された金属イオンが硫酸または塩酸によって再生される。更に、その再生廃液が、アルカリ添加によって金属水酸化物として回収される。あるいは、その再生廃液が、酸性のまま電解によって金属に還元され、その金属が回収される。代わりに、分離された金属イオンを除去することも可能である。
【0049】
第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図5に示すように、金属イオンが分離された後のチオ尿素含有水に含まれるアンモニアが、アンモニアストリッピング処理部2によるアンモニアストリッピング処理によって回収される。詳細には、アンモニアストリッピング処理部2では、蒸留によって気層へ移動したアンモニアガスを冷水によって吸収することによりアンモニアが回収される。
【0050】
第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図5に示すように、アンモニアストリッピング処理によってアンモニアが回収された後のチオ尿素含有水が、脱塩処理部としての低圧逆浸透膜(有機物排除率の低い逆浸透膜)(詳細には、チオ尿素が素通りする逆浸透膜)3’によって脱塩処理され、次いで、脱塩処理部としての電気再生式脱塩装置4’によって脱塩処理され、その結果、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、脱塩処理部として、低圧逆浸透膜3’および電気再生式脱塩装置4’の少なくとも一方の代わりに、あるいは、低圧逆浸透膜3’および電気再生式脱塩装置4’に加えて、カチオン樹脂、アニオン樹脂、ろ過装置、電気透析装置等を設けることも可能である。好ましくは、電気透析装置が設けられる場合には、電気透析時に陰極側に移動したアルカリがアンモニアストリッピング処理部2に戻される。
【0051】
第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、次いで、
図5に示すように、脱塩処理された後のチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が、チオ尿素濃縮部としての有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)5によって濃縮され、次いで、チオ尿素濃縮部としての蒸発乾燥処理部6によって濃縮される。
【0052】
また、第5の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、チオ尿素含有水に含まれるアンモニアがアンモニアストリッピング処理部2(
図5参照)によって回収された後であって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が有機物排除率の高い逆浸透膜5(
図5参照)によって濃縮される前に、例えば活性炭、疎水性吸着樹脂などのような疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれる例えば界面活性剤などのような疎水性有機物を吸着処理すると共に、チオ尿素含有水を低圧逆浸透膜3’(
図5参照)および電気再生式脱塩装置4’(
図5参照)によって脱塩処理することによってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去することも可能である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0054】
〔実施例1〕
表1は実施例1に用いたチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)の組成を示している。実施例1に用いたチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)は、特許文献1の段落〔0044〕中の中和処理後のろ液およびその洗浄水を模擬したものであり、反応条件の10倍希釈液である。
【0055】
【表1】
【0056】
上記の模擬排水を、三菱化学製 イオン交換樹脂 Diaion SK1B SA10Aを各々1L充填したアクリルカラムに通水流量5L/hで通液した。破過前のイオン交換処理水の電気伝導率は0.5mS/mであり、その分析結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
このイオン交換処理水を、日東電工製 有機物高排除逆浸透膜(チオ尿素が透過しない逆浸透膜)TC10 2inch(50.8mm)モジュールで8倍濃縮した。濃縮液の組成を表3に示し、この濃縮液の乾燥物の分析結果を表4に示す。チオ尿素以外の不純物はなく、再利用可能と判断される。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
〔実施例2〕
実施例1で用いた模擬排水に、10g−NaOH/LとなるようにNaOHを添加した後、アンモニアストリッピング処理を行った。アンモニアストリッピング処理で気相へ移行したアンモニアガスは、冷却してアンモニウム水溶液として回収した。アンモニアストリッピング処理により、原水の約96%のアンモニアが回収された。アンモニアストリッピング処理後の模擬排水を、日東電工製 有機物低排除逆浸透膜(チオ尿素が素通りする逆浸透膜)ES20で処理した。その逆浸透膜ES20の透過水の水質を表5に示し、その逆浸透膜ES20の濃縮水の水質を表6に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
表6に示す逆浸透膜ES20の濃縮水を、海水淡水化用の高圧・高脱塩率の 日東電工製 海水淡水化用脱塩装置 NTR−70SWCで処理した。この脱塩装置NTR−70SWCの透過水を、上記の逆浸透膜ES20の原水(アンモニアストリッピング処理水)槽へ戻した。この脱塩装置の濃縮水は、原水の約10倍の濃縮液になった。この濃縮液は、そのままスラリーとして産業廃棄物処分した。
【0065】
上記の逆浸透膜ES20の透過水を、三菱化学製 イオン交換樹脂 Diaion SK1B SA10Aを各々1L充填したアクリルカラムに通水流量25L/hで通液した。破過前のイオン交換処理水の電気伝導率は0.5mS/mであり、その分析結果を表7に示す。
【0066】
【表7】
【0067】
このイオン交換処理水を、日東電工製 有機物高排除逆浸透膜(チオ尿素が透過しない逆浸透膜)TC10 2inch(50.8mm)モジュールで8倍濃縮した。濃縮液の組成を表8に示し、この濃縮液の乾燥物の分析結果を表9に示す。チオ尿素以外の不純物はなく、再利用可能と判断される。
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【符号の説明】
【0070】
1 弱酸性カチオン樹脂
2 アンモニアストリッピング処理部
3 カチオン樹脂
4 アニオン樹脂
5 有機物排除率の高い逆浸透膜
6 蒸発乾燥処理部