(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態として、干渉縞解析装置の一種である波面収差測定装置を説明する。
【0018】
以下、波面収差測定装置の構成を説明する。
図1は、本実施形態の波面収差測定装置の構成図である。
図1に示すとおり波面収差測定装置には、照明装置10と、ピンホール板18と、被検物としての投影光学系15と、透過型回折格子19と、撮像素子16と、移動機構30と、制御装置100と、演算装置200とが備えられる。
【0019】
照明装置10から射出した照明光は、投影光学系15の物体面に配置されたピンホール板18を照明する。照明されたピンホール板18では、理想的な波面を有した光束が発生する。この光束は、投影光学系15へ入射すると、投影光学系15を透過してから、投影光学系15の像面に向かって集光し、その像面近傍に配置された透過型回折格子19へ入射する。透過型回折格子19へ入射した光束は、互いに同じ波面を有した2つの光束に横ずらし(シア)され、透過型回折格子19の背後に配置された撮像素子16上に干渉縞を生起させる。この干渉縞の位相分布は、投影光学系15を透過した光束のシア方向に亘る波面形状を表す。
【0020】
ここで、透過型回折格子19は、移動機構30によって格子線と交差する方向にかけて移動可能である。この移動により干渉縞の位相が変化する。
【0021】
制御装置100は、移動機構30を介して干渉縞の位相を変化させながら、撮像素子16を繰り返し駆動し、干渉縞の画像(縞画像)を複数フレームに亘って取得する。これら複数フレームの縞画像は、演算装置200へ取り込まれる。
【0022】
演算装置200は、制御装置100から取り込んだ複数フレームの縞画像に対して演算を施し、特定フレーム又は各フレームにおける干渉縞の位相分布を求めると、その位相分布に基づき投影光学系15の波面収差を評価する。
【0023】
なお、以上の波面収差測定装置では、後述するとおり制御装置100が複数フレームの縞画像に対してフレームキャリアを重畳させるので、干渉縞へ空間キャリアを重畳させる必要は無い。
【0024】
また、以上の波面収差測定装置では、ピンホール板18に形成されるピンホールの個数は、単一であっても複数であってもよい。因みに、ピンホールの個数を複数化すれば、投影光学系15を透過する光束の強度を高め、縞画像のSN比を高めることができる。
【0025】
また、以上の波面収差測定装置では、透過型回折格子19に形成される格子は、一次元格子であっても、二次元格子であってもよい。因みに、格子を二次元格子とすれば、投影光学系15を透過した光束を2方向にかけて同時にシアすることができる。この場合、撮像素子16上に2種類の干渉縞が重ねて形成される。これら2種類の干渉縞は、投影光学系15の透過光束の波面の互いに異なる方向の形状を表す。なお、以下の説明では簡単のため、透過型回折格子19の格子は一次元格子であると仮定する。
【0026】
また、以上の波面収差測定装置では、ピンホール板18、投影光学系15、回折格子19の各々が透過型で構成されているが、これらの要素の少なくとも1部は反射型で構成されてもよい。因みに、投影光学系15が反射型である場合は、他の要素も反射型で構成されることが望ましい。
【0027】
以下、制御装置100の動作を詳しく説明する。
【0028】
制御装置100は、移動機構30を介して干渉縞の位相を少なくとも1周期分変化させながら、撮像素子16を介して干渉縞の撮像を繰り返し、複数フレームの干渉縞を取得すると、それら複数フレームの干渉縞を演算装置200へ送出する。
【0029】
撮像の繰り返し期間中、制御装置100は、位相の変化ピッチと撮像の繰り返しピッチ(フレーム周期)との関係を、
図2(a)、(b)に示すとおり干渉縞の位相が1周期変化する期間内の撮像回数が整数Nとなるように設定する。なお、
図2において「g」は縞画像、「j」は縞画像のフレーム番号、「In」は縞画像上の着目座標の画素値を示している。
【0030】
また、制御装置100は、干渉縞の位相の変化波形(正弦波)を確実に検出できるよう、干渉縞の位相が1周期変化する期間中のフレーム数Nを十分に大きな値に設定する(例えばN=8)。
【0031】
また、制御装置100は、1フレーム内の露光時間を、フレーム間で共通に設定する。また、制御装置100は、1フレーム内の露光時間を、干渉縞のパターンを十分なSN比で検出できるよう、適当な値に設定する。
【0032】
後述するとおり、本実施形態の演算装置200は干渉縞の位相分布をフレーム毎に求めるので、位相分布の算出対象フレームを多数フレームとする場合、制御装置100は、位相変化の周期数mを1より大きくすればよく、位相分布の算出対象フレームを1フレームのみとする場合、制御装置100は、位相変化の周期数mを1に設定すればよい。
【0033】
また、後述するとおり、本実施形態の演算装置200は縞画像のフレーム数を演算によって倍増させるので、制御装置100は、位相変化の周期数mを整数に設定することが望ましい。
【0034】
以上の結果、制御装置100は、トータルでNmフレームの縞画像g
1、…、g
Nmを取得する(
図5(b)の実線参照)。これらの縞画像g
1、…、g
Nmの各々は、以下の式で表される。
【0036】
なお、(x,y)は、縞画像上の座標であり、jは、フレーム番号であり、a(x,y,j)は、第jフレームの縞画像における背景成分であり、b(x,y,j)は、その縞画像における干渉縞のコントラストであり、ψ(x,y,j)は、その縞画像における干渉縞の位相分布である。
【0037】
また、式(1)は、式(2)のとおり書き換えることができる。
【0039】
なお、c(x,y,j)は、第jフレームの縞画像における信号成分である。この信号成分c(x,y,j)を既知とすれば、位相分布ψ(x,y,j)を既知とすることができる。
【0040】
以下、演算装置200の動作を説明する。演算装置200は、以下のステップS1〜ステップS6を順に実行する。
【0041】
ステップS1:演算装置200は、制御装置100からNmフレームの縞画像g(x,y,1)、…、g(x,y,Nm)を取り込むと、
図2(b)に点線で示したとおり、これらNmフレーム分の縞画像g(x,y,1)、…、g(x,y,Nm)をM回に亘って複製し、かつ順に並べることにより、NmMフレームの縞画像g(x,y,1)、…、g(x,y,NmM)を用意する。なお、Mは、1以上の整数であって、例えば、M=32に設定される。
【0042】
これによって、トータルでKフレームの縞画像g(x,y,1)、…、g(x,y,K)が得られる(但し、K=NmM)。
図2(b)において、実線で示すフレームは実測されたフレームであり、点線で示すフレームは複製されたフレームである。
【0043】
因みに、このステップS1において縞画像のフレーム数を倍増させるのは、後述するフーリエ変換の精度を高めるためである。よって、実測されたフレーム数が十分に多かった場合、このステップS1は省略が可能である。
【0044】
ここで、ステップS1で用意されたKフレームの縞画像g(x,y,1)、…、g(x,y,K)のうち、s番目の座標(x
s,y
s)に着目すると、その着目座標(x
s,y
s)に関するKフレーム分の画素値g(x
s,y
s,1)、…、g(x
s,y
s,K)には、j方向にかけて周波数K/Nで変化するキャリアが重畳されている(
図2(a)の波形を参照。)。これは、他の座標についても同様であって、座標間でキャリアの位相は異なるものの、座標間でキャリアの周波数は共通である。以下、このように、j方向にかけて変化するキャリアを「フレームキャリア」と称し、フレームキャリアの周波数K/Nを「キャリア周波数K/N」と称す。
【0045】
なお、このキャリア周波数K/Nは、波面収差測定装置のドリフト周波数よりも十分に高いものとする。これを実現するため、上述した制御装置100は、位相の変化ピッチと撮像の繰り返しピッチとの関係を、最適な関係に設定したものと仮定する。
【0046】
ステップS2:演算装置200は、
図3符号S2で示すとおり、Kフレームの縞画像g(x,y,1)、…、g(x,y,K)のうち、s番目の着目座標(x
s,y
s)に関するKフレーム分の画素値g(x
s,y
s,1)、…、g(x
s,y
s,K)を参照し、それらKフレーム分の画素値g(x
s,y
s,1)、…、g(x
s,y
s,K)に対してj方向のフーリエ変換(一次元のフーリエ変換)を施す。これによって、演算装置200は、フーリエスペクトルG(x
s,y
s,f)を取得する。このフーリエスペクトルG(x
s,y
s,f)は、以下の式(3)で表される。
【0048】
但し、Aはフーリエ変換後のaであり、Cはフーリエ変換後のcであり、fは、フーリエ空間上の座標(周波数)である。
【0049】
この式(3)から明らかなとおり、フーリエスペクトルG(x
s,y
s,f)の0次フーリエ成分には、信号成分cは反映されていないのに対して、1次フーリエスペクトル及び−1次フーリエスペクトルの各々には、信号成分cがキャリア周波数K/Nだけシフトした状態で反映されている。
【0050】
ステップS3:演算装置200は、
図3符号S3に示すとおり、フーリエスペクトルG(x
s,y
s,f)から1次フーリエスペクトル(キャリア周波数K/Nを中心とした所定周波数域のスペクトル)を切り出し、そのスペクトルをキャリア周波数K/Nの分だけ原点側へとシフトさせることにより、信号スペクトルC(x
s,y
s,f)を取得する。これによって、着目座標(x
s,y
s)の画素値g(x
s,y
s,1)、…、g(x
s,y
s,K)から、背景成分aが除去されたことになる。
【0051】
ステップS4:演算装置200は、
図3符号S4に示すとおり、信号スペクトルC(x
s,y
s,f)に対してj方向の逆フーリエ変換を施すことにより、着目座標(x
s,y
s)に関する信号成分c(x
s,y
s,j)を復元する。この信号成分c(x
s,y
s,j)は、実部と虚部とを有する。
【0052】
ステップS5:演算装置200は、
図3符号S5に示すとおり、信号成分c(x
s,y
s,j)のうち、算出対象フレームのフレーム番号j
u(j
u:1〜Nmの範囲内の任意の整数)に対応する値c(x
s,y
s,j
u)を参照し、その値c(x
s,y
s,j
u)を以下の式(4)又は式(5)へ当てはめることにより、位相ψ(x
s,y
s,j
u)を求める。この位相ψ(x
s,y
s,j
u)は、第j
uフレームの着目座標(x
s,y
s)に関する位相である。
【0055】
なお、式(5)におけるim[A]は、Aの虚部を示し、re[A]は、Aの実部を示す。
【0056】
ステップS6:演算装置200は、座標番号sを変化させながら以上のステップS2〜ステップS5を繰り返すことにより、全ての座標番号sの各々に関する位相ψ(x
s,y
s,j
u)を求める。これらの位相ψ(x
s,y
s,j
u)の集合が、第j
uフレームに関する位相分布ψ(x,y,j
u)である。演算装置200は、この位相分布ψ(x,y,j
u)を波面収差の単位に換算し、必要に応じてツェルニケ多項式に展開することで、投影光学系15の波面収差を評価する。
【0057】
以上、本実施形態の波面収差測定装置は、干渉縞の撮像を繰り返して複数フレームの縞画像g(x,y,1)、g(x,y,2)、…を取得する測定手順と、前記複数フレームの縞画像g(x,y,1)、g(x,y,2)、…の取得期間中に前記干渉縞の位相を変化させ、フレーム方向(j方向)にかけて所定周波数(K/N)で変化するフレームキャリアを前記複数フレームの縞画像g(x,y,1)、g(x,y,2)、…へ重畳させる重畳手順と、フレームキャリアの重畳された前記複数フレームの縞画像g(x,y,1)、g(x,y,2)、…に対してフレーム方向のフーリエ変換を施し、フーリエスペクトルG(x,y,f)を取得する変換手順(ステップS2)と、前記フーリエスペクトルG(x,y,f)から前記所定周波数(K/N)に近い周波数を有したスペクトルを抽出し、そのスペクトルの周波数を前記所定周波数(K/N)の分だけ原点側へとシフトさせる抽出手順(ステップS3)と、シフト後の前記スペクトルC(x,y,f)に対してフレーム方向(j方向)の逆フーリエ変換を施すことにより、余分な成分の除去された前記複数フレームの縞画像c(x,y,j)を復元する復元手順(ステップS4)と、復元後の前記複数フレームの縞画像c(x,y,j)のうち特定フレームの縞画像c(x,y,j
u)に基づき、その縞画像における干渉縞の位相分布ψ(x,y,j
u)を算出する位相算出手順(ステップS5)とを実行する。
【0058】
すなわち、本実施形態の波面収差測定装置は、従来の位相シフト干渉法と同様、干渉縞の位相の異なる複数フレームの縞画像を、順次に取得する。
【0059】
したがって、本実施形態の波面収差測定装置は、従来の位相シフト干渉法と同様の利点を有している。すなわち、本実施形態の波面収差測定装置によると、装置構成を複雑化する必要が無く、また干渉縞へ空間キャリアを与える必要も無い。
【0060】
その一方で、本実施形態の波面収差測定装置で取得される複数フレームの縞画像には、従来の位相シフト干渉法と同様、装置のドリフト成分が重畳されている。
【0061】
しかしながら、本実施形態の波面収差測定装置では、複数フレームの縞画像のフレーム方向(j方向)にかけて重畳したフレームキャリアを利用し、それら縞画像に含まれる余分な成分をフーリエ空間上で除去してから、特定フレームにおける干渉縞の位相分布を求める。
【0062】
したがって、本実施形態の波面収差測定装置では、従来の4Dテクノロジー位相シフト干渉法又は従来のフーリエ変換法と同様の利点がある。すなわち、本実施形態の波面収差測定装置では、装置ドリフトの影響を受けることはない。因みに、従来の位相シフト干渉法の演算式(3バケット法、9バケット法の式など)は、干渉縞の位相分布がフレーム間で共通であるということを前提としているので、位相分布の算出結果がドリフトの影響を受けてしまう。
【0063】
以上の結果、本実施形態の波面収差測定装置によると、干渉縞の解析を簡単かつ高精度に行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態の波面収差測定装置の前記重畳手順では、前記干渉縞を生成する装置のドリフト周波数よりも前記所定周波数が高くなるように、前記位相の変化ピッチと前記撮像の繰り返しピッチとの関係を設定する。よって、本実施形態の波面収差測定装置は、装置のドリフトの影響を簡単に排除することができる。
【0065】
また、本実施形態の波面収差測定装置の前記復元手順(ステップS4)では、前記複数フレームの縞画像の各々の実部及び虚部を復元し、前記位相算出手順(ステップS5)では、前記特定フレームの縞画像の実部及び虚部に基づき、その縞画像における干渉縞の位相分布を算出した。よって、本実施形態の波面収差測定装置は、特定フレームにおける干渉縞の位相分布を確実に算出することができる。
【0066】
なお、本実施形態の波面収差測定装置の前記位相算出手順(ステップS5)では、前記特定フレームの縞画像の実部及び虚部に基づき、その画像の各々における干渉縞の位相分布を算出したが(つまり算出対象フレーム数を単数としたが)、複数の前記特定フレームの縞画像の実部及び虚部に基づき、それら縞画像の各々における干渉縞の位相分布を算出してもよい(つまり算出対象フレーム数を複数化してもよい)。
【0067】
何れにせよ、本実施形態の波面収差測定装置は、干渉縞の位相分布がフレーム間で共通であるということを前提とせずに、干渉縞の位相分布をフレーム毎に求める。
【0068】
したがって、本実施形態の波面収差測定装置は、特定フレームについて算出した位相分布にドリフト成分(周波数の高いドリフト成分)が残留したとしても、例えば、その位相分布を波面収差の単位に換算してからツェルニケ多項式で展開することで、ドリフト成分を除去できる可能性がある。
【0069】
また、本実施形態の波面収差測定装置の前記重畳手順では、前記干渉縞の位相変化が1周期となる期間中における前記縞画像の取得フレーム数が整数となるように、前記位相の変化ピッチと前記撮像の繰り返しピッチとの関係を設定する。また、本実施形態の波面収差測定装置では、フレームキャリアの重畳された前記複数フレームの縞画像を複製して並べることにより、フレームキャリアの重畳された縞画像のフレーム数を倍増させる複製手順(ステップS1)を更に実行し、前記変換手順(ステップS2)では、フレーム数の倍増された前記縞画像を前記フーリエ変換に使用する。
【0070】
したがって、本実施形態の波面収差測定装置では、位相分布の算出精度を低下させることなく、実測すべき縞画像のフレーム数を抑えることができる。
【0071】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態として、第1実施形態の変形例を説明する。第1実施形態との相違点は、上述したステップS2〜ステップS6の代わりに、以下のステップS2〜ステップS7を実行する点にある。
【0072】
ステップS2:演算装置200は、
図4符号S2に示すとおり、Kフレームの縞画像g(x,y,1)、…、g(x,y,K)のうち、第jフレームの縞画像g(x,y,j)を参照し、その第jフレームの縞画像g(x,y,j)に対してxy方向(空間方向)のフーリエ変換(二次元のフーリエ変換)を施し、フーリエスペクトルG(X,Y,j)を取得する。このフーリエスペクトルG(X,Y,j)は、式(6)で表される。
【0074】
なお、(X,Y)はフーリエ変換後の(x,y)であり、Cはフーリエ変換後のcである。
【0075】
さらに、演算装置200は、フレーム番号jを変化させながらフーリエスペクトルG(X,Y,j)の取得を繰り返すことにより、全てのフレーム番号jに関するフーリエスペクトルG(X,Y,1)、…、G(X,Y,K)を取得する。
【0076】
ステップS3:演算装置200は、
図4符号S3に示すとおり、K個のフーリエスペクトルG(X,Y,1)、…、G(X,Y,K)のうち、t番目の着目座標(X
t,Y
t)に関するKフレーム分の画素値G(X
t,Y
t,1)、…、G(X
t,Y
t,K)を参照し、それらKフレーム分の画素値G(X
t,Y
t,1)、…、G(X
t,Y
t,K)に対してj方向のフーリエ変換を施し、フーリエスペクトルG’(X
t,Y
t,f)を取得する。このフーリエスペクトルG’ (X
t,Y
t,f)は、以下の式(7)で表される。
【0078】
但し、A’はフーリエ変換後のAであり、C’はフーリエ変換後のCであり、fは、フーリエ空間上の座標(周波数)である。
【0079】
さらに、演算装置200は、座標番号tを変化させながらフーリエスペクトルG’(X
t,Y
t,f)の取得を繰り返すことにより、全ての座標番号tに関するフーリエスペクトルG’ (X
1,Y
1,f)、…、G’ (X
tmax,Y
tmax,f)を取得する。
【0080】
ステップS4:演算装置200は、
図4符号S4に示すとおり、t番目の着目座標(X
t,Y
t)のフーリエスペクトルG’ (X
t,Y
t,f)から1次フーリエスペクトル(キャリア周波数K/Nを中心とした所定周波数域のスペクトル)を切り出し、そのスペクトルをキャリア周波数K/Nの分だけ原点側へとシフトさせることにより、信号スペクトルC’(X
t,Y
t,f)を取得する。
【0081】
さらに、演算装置200は、座標番号tを変化させながら信号スペクトルC’(X
t,Y
t,f)の取得を繰り返すことにより、全ての座標番号tに関する信号スペクトルC’(X
1,Y
1,f)、…、C’(X
tmax,Y
tmax,f)を取得する。
【0082】
ステップS5:演算装置200は、
図4符号S5に示すとおり、座標番号tの信号スペクトルC’(X
t,Y
t,f)に対してj方向の逆フーリエ変換を施し、信号成分c(X
t,Y
t,j)を取得する。
【0083】
さらに、演算装置200は、座標番号tを変化させながら信号成分c(X
t,Y
t,j)の取得を繰り返すことにより、全ての座標番号tに関する信号成分c(X
1,Y
1,j)、…、c(X
tmax,Y
tmax,j)を取得する。
【0084】
ステップS6:演算装置200は、
図4符号S6に示すとおり、信号成分c(X
1,Y
1,j)、…、c(X
tmax,Y
tmax,j)のうち、算出対象フレームのフレーム番号j
u(j
u:1〜Nmの範囲内の任意の整数)に関する信号成分c(X
1,Y
1,j
u)、…、c(X
tmax,Y
tmax,j
u)を参照すると、これらの信号成分c(X
1,Y
1,j
u)、…、c(X
tmax,Y
tmax,j
u)に対してxy方向の逆フーリエ変換を施すことにより、フレーム番号j
uに関する信号成分c(x,y,j
u)を復元する。
【0085】
ステップS7:演算装置200は、
図4符号S7に示すとおり、フレーム番号j
uに関する信号成分c(x,y,j
u)を式(4)又は式(5)へ当てはめることにより、フレーム番号j
uに関する位相分布ψ(x,y,j
u)を求める。演算装置200は、この位相分布ψ(x,y,j
u)を波面収差の単位に換算し、必要に応じてツェルニケ多項式に展開することで、投影光学系15の波面収差を評価する。
【0086】
以上、本実施形態では、j方向のフーリエ変換にxy方向のフーリエ変換を組み合わせ、余分な成分の除去をxyj方向のフーリエ空間上で行う点において第1実施形態とは異なるが、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0087】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態として、第2実施形態の変形例を説明する。第2実施形態との相違点は、上述したステップS2〜S7の代わりに、以下のステップS2〜S5を順に実行する点にある。
【0088】
ステップS2:演算装置200は、Kフレームの縞画像g(x,y,1)、…、g(x,y,K)に対して、xyj方向のフーリエ変換(=三次元のフーリエ変換)を施し、フーリエスペクトルG(X,Y,f)を取得する。このフーリエスペクトルG(X,Y,f)は、式(8)で表される。
【0090】
ステップS3:演算装置200は、フーリエスペクトルG(X,Y,f)から1次フーリエスペクトル(キャリア周波数K/Nを中心とした所定周波数域のスペクトル)を切り出し、そのスペクトルをキャリア周波数K/Nの分だけ原点側へとシフトさせることにより、信号スペクトルC(X,Y,f)を取得する。
【0091】
ステップS4:演算装置200は、信号スペクトルC(X,Y,f)に対してxyj方向の逆フーリエ変換を施し、信号成分c(x,y,j)を復元する。
【0092】
ステップS5:演算装置200は、信号成分c(x,y,j)のうち、算出対象フレームのフレーム番号j
u(j
u:1〜Nmの範囲内の任意の整数)に対応する信号成分c(x,y,j
u)を取得すると、この信号成分c(x,y,j
u)を式(4)又は式(5)へ当てはめることにより、第j
uフレームにおける位相分布ψ(x,y,j
u)を求める。演算装置200は、この位相分布ψ(x,y,j
u)を波面収差の単位に換算し、必要に応じてツェルニケ多項式に展開することで、投影光学系15の波面収差を評価する。
【0093】
以上、本実施形態では、j方向のフーリエ変換とxy方向のフーリエ変換とを一括して行う点において第2実施形態とは異なるが、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0094】
[シミュレーション結果]
以下、本発明の実施例として、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態のシミュレーション結果を説明する。第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態の間では、原理は共通なので、シミュレーション結果も共通である。このシミュレーションは、以下の条件(1)、(2)、(3)で行われた。
【0095】
(1)波面収差測定装置のドリフトとして、チルト方向のドリフトを発生させた。
【0097】
(3)特定フレームの位相分布を算出した後、その位相分布を波面収差の単位に換算してからツェルニケ多項式で展開し、Z
5、…、Z
9の項の係数を算出した。
【0098】
ここで、係数Z
5は、0°及び90°方向の非点収差の成分を示す係数であり、係数Z
6は、±45°方向の非点収差の成分を示す係数であり、係数Z
7は、3次のコマ収差(X成分)を示す係数であり、係数Z
8は、3次のコマ収差(Y成分)を示す係数であり、係数Z
9は、3次の球面収差を示す係数である。これらの係数Z
5、…、Z
9は、チルト成分とは独立した成分であるため、実施例の縞解析精度が高ければ、上述したドリフトの影響を受けないはずである。
【0099】
図5は、シミュレーションの過程で生成された一部の縞画像である。シミュレーションで発生させたドリフトは、チルト方向のドリフトであったので、
図5に示すとおり、これらの縞画像の間では、縞の本数及び縞の方向の組み合わせに差異が現れている。
【0100】
図6は、シミュレーション結果を示す図である。
図6において点線で囲った部分、すなわち「ドリフト有り」×「実施例」が、実施例のデータである。
【0101】
図6において「ドリフト無し」は、実施例のシミュレーションにおいてドリフトをゼロとしたときのデータであり、「従来例」は、位相シフト干渉法(9バケット法)のデータである。
【0102】
図6における「ドリフト無し」×「実施例」のデータと、「ドリフト有り」×「実施例」のデータとを比較すると、殆ど差異が無い。よって、実施例の縞解析がドリフトの影響を受けてないことが解る。
【0103】
一方、
図6における「ドリフト無し」×「従来例」のデータと、「ドリフト有り」×「従来例」のデータとを比較すると、大きな差異が現れている。よって、従来例の縞解析がドリフトの影響を受けていることが解る。
【0104】
また、
図6における「ドリフト無し」×「従来例」のデータと、「ドリフト無し」×「実施例」のデータを比較すると、差異が無い。つまり、ドリフトが無い場合には、実施例の縞解析結果と従来例の縞解析結果とは同じになることが解る。
【0105】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態として、第1実施形態の変形例を説明する。ここでは、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0106】
先ず、本実施形態では、
図7(a)に示すとおり透過型回折格子19の格子として二次元格子が採用される。この場合、撮像素子16上には、2種類の干渉縞が重ねて形成される。これら2種類の干渉縞は、投影光学系15の透過光束の波面の互いに異なる方向の形状を表す。
【0107】
また、本実施形態の移動機構30は、透過型回折格子19の移動方向を、
図7(b)に示すとおり、透過型回折格子19の2つの格子線方向に対して互いに異なる角度(つまり45°以外の角度)で交差するように設定する。
【0108】
このような移動方向を採用すれば、
図7(b)に示すとおり、一方の格子線に関する透過型回折格子19の移動ピッチPaと、他方の格子線に関する透過型回折格子19の移動ピッチPbとに差異が与えられるので、
図8(a)、(b)に示すとおり、2種類の干渉縞の一方(第1干渉縞)に重畳するフレームキャリアのキャリア周波数K/Naと、他方(第2干渉縞)に重畳するフレームキャリアのキャリア周波数K/Nbとの間に差異が与えられる。その結果、第1干渉縞の信号成分caの周波数(K/Naの近傍)と、第2干渉縞の信号成分cbの周波数(K/Nbの近傍)との間にも差異が与えられる。なお、
図7、8の例では、Pa=3Pbとしたので、K/Na=3K/Nbとなっている。
【0109】
また、本実施形態の移動機構30は、ステップS1において縞画像のフレーム数を倍増させる都合上、第1干渉縞に関するキャリア周波数K/Naと、第2干渉縞に関するキャリア周波数K/Nbとの関係が整数倍となるように透過型回折格子19の移動方向を設定する(なお、
図7、
図8の例では両者のキャリア周波数の関係を3倍としたが、その関係を2倍とし、2種類の干渉縞の間のフレーム数の差異を抑えてもよいことは言うまでもない。)。
【0110】
したがって、本実施形態のステップS2では、
図9に示すようなフーリエスペクトルGが取得されることになる。このフーリエスペクトルGには、
図9に示すとおり1次フーリエスペクトルが2つ現れる。一方の1次フーリエスペクトル(
図9(a))は、周波数K/Naの近傍のスペクトルであって、他方の1次フーリエスペクトル(
図9(b))は、周波数K/Nbの近傍のスペクトルである。前者のスペクトルは、第1干渉縞の信号成分caを表しており、後者のスペクトルは、第1干渉縞の信号成分cbを表している。
【0111】
そこで、本実施形態のステップS3では、フーリエスペクトルGから、キャリア周波数K/Naを中心とした所定周波数域のスペクトルを切り出すと共に、キャリア周波数K/Nbを中心とした所定周波数域のスペクトルを切り出す。
【0112】
また、本実施形態のステップS3では、前者のスペクトルをキャリア周波数K/Naの分だけ原点側へとシフトさせることにより、信号スペクトルCaを取得すると共に、後者のスペクトルをキャリア周波数K/Nbの分だけ原点側へとシフトさせることにより、信号スペクトルCbを取得する。
【0113】
また、本実施形態のステップS4〜S5では、ステップS3で取得した信号スペクトルCa、Cbの各々に対して個別に処理を施すことにより、第1干渉縞に関する位相ψa(x
s,y
s,j
us)と、第2干渉縞に関する位相ψb(x
s,y
s,j
us)とを個別に求める。
【0114】
また、本実施形態のステップS6では、座標番号iを変化させながらステップS2〜ステップS5を繰り返すことにより、第1干渉縞の位相分布ψa(x,y,j
u)と、第2干渉縞の位相分布ψb(x,y,j
u)とを個別に求め、これら2種類の位相分布ψb(x,y,j
u)に基づき、投影光学系15の波面収差を評価する。
【0115】
以上、本実施形態では、透過型回折格子19の移動方向を最適化するだけで、第1干渉縞のキャリア周波数と第2干渉縞のキャリア周波数との間に適切な差異を与えることができる。よって、本実施形態では、第1干渉縞及び第2干渉縞のキャリア周波数の差異を利用することにより、同一フレーム内に重畳したこれら2種類の干渉縞を分離して解析することができる。
【0116】
なお、本実施形態は、第1実施形態の変形例であるが、第2実施形態又は第3実施形態も同様に変形することができる。
【0117】
[干渉計の変形例]
なお、上述した実施形態では、干渉縞解析装置として、シアリング干渉計を利用した波面収差測定装置を説明したが、利用する干渉計の種類や測定対象の異なる干渉縞解析装置にも本発明は適用が可能である。例えば、
図10、
図11、
図12の何れかに示すような干渉縞解析装置にも本発明は適用が可能である。
【0118】
図10に示すのは、平面ミラー15の面形状をフィゾー型干渉計で測定する装置である。
図10に示すとおり、この装置には、レーザ光源11と、ビームエキスパンダ12と、ビームスプリッタ13と、参照物としての平行平板14と、被検物としての平面ミラー15と、撮像素子16と、移動機構30とが配置される。
【0119】
レーザ光源11から射出したレーザ光は、ビームエキスパンダ12によって径の太い光束となった後に、ビームスプリッタ13を透過し、平行平板14へ入射する。平行平板14へ入射した光束は、平行平板14の参照面14aを反射する光束(参照光束)と、参照面14aを透過する光束(測定光束)とに分離される。
【0120】
参照面14aを反射した参照光束は、ビームスプリッタ13へ入射する。一方、参照面14aを透過した測定光束は、平面ミラー15の被検面15aにて反射してから、平行平板14を透過してビームスプリッタ13へ入射する。
【0121】
ビームスプリッタ13へ入射した測定光束及び参照光束は、互いの光路を統合させ、ビームスプリッタ13を反射した後、撮像素子16の上に干渉縞を生起させる。この干渉縞の位相分布は、参照面14aの形状を基準とした被検面15aの形状を表す。
【0122】
なお、平行平板14は、移動機構30によって光軸方向(参照光束と測定光束との光路長差が変化する方向)にかけて移動可能である。
【0123】
図11に示すのは、光学系15の波面収差をフィゾー型干渉計で測定する装置である。
図11において、
図10に示す要素と同じ機能の要素には同じ符号を付した。
図11に示す装置では、参照物としてフィゾーレンズ14が配置され、被検物として光学系15が配置されている。また、
図11に示す装置の測定対象は、光学系15を透過した光束の波面であるので、光学系15の透過光束の光路を折り返す折り返し凹面ミラー17が配置される。
【0124】
図11において、レーザ光源11から射出したレーザ光は、ビームエキスパンダ12によって径の太い光束となった後に、ビームスプリッタ13を透過し、フィゾーレンズ14へ入射する。フィゾーレンズ14へ入射した光束は、フィゾーレンズ14のフィゾー面14aを反射する光束(参照光束)と、フィゾー面14aを透過する光束(測定光束)とに分離される。
【0125】
フィゾー面14aを反射した参照光束は、ビームスプリッタ13へ入射する。一方、フィゾー面14aを透過した測定光束は、光学系15を透過した後に折り返し凹面ミラー17の反射面17aにて反射し、光学系15へ戻ると、光学系15、フィゾーレンズ14aを順に透過してビームスプリッタ13へ入射する。
【0126】
ビームスプリッタ13へ入射した測定光束及び参照光束は、互いの光路を統合させ、ビームスプリッタ13を反射した後、撮像素子16の上に干渉縞を生起させる。この干渉縞の位相分布は、フィゾー面14aの形状を基準とした透過光束の波面の形状を表す。なお、反射面17aの形状は、装置の校正データとして予め測定されているものとする。
【0127】
図12に示すのは、凹面ミラー15の面形状をフィゾー型干渉計で測定する装置である。
図12において、
図10に示す要素と同じ機能の要素には同じ符号を付した。
図12に示す装置では、参照物としてフィゾーレンズ14が配置され、被検物として凹面ミラー15が配置されている。
【0128】
図12において、レーザ光源11から射出したレーザ光は、ビームエキスパンダ12によって径の太い光束となった後に、ビームスプリッタ13を透過し、フィゾーレンズ14へ入射する。フィゾーレンズ14へ入射した光束は、フィゾーレンズ14のフィゾー面14aを反射する光束(参照光束)と、フィゾー面14aを透過する光束(測定光束)とに分離される。
【0129】
フィゾー面14aを反射した参照光束は、ビームスプリッタ13へ入射する。一方、フィゾー面14aを透過した測定光束は、凹面ミラー15の被検面15aにて反射した後に、フィゾーレンズ14を透過してビームスプリッタ13へ入射する。
【0130】
ビームスプリッタ13へ入射した測定光束及び参照光束は、互いの光路を統合させ、ビームスプリッタ13を反射した後、撮像素子16の上に干渉縞を生起させる。この干渉縞の位相分布は、フィゾー面14aの形状を基準とした被検面15aの形状を表す。
【0131】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態として、第1実施形態と同様の波面収差測定機能が搭載された投影露光装置を説明する。
【0132】
図13は、投影露光装置の構成図である。
図13に示すとおり、投影露光装置には、照明装置10と、マスクステージ20と、投影光学系15と、ウエハステージ21と、制御装置100と、演算装置200とが備えられる。このうちウエハステージ21には、計測ユニット60が搭載され、計測ユニット60には、第1実施形態と同様の透過型回折格子19、移動機構30、撮像素子16が備えられる。
【0133】
投影露光時、マスクステージ20は、マスク(レチクル)40を保持して投影光学系15の物体面へ配置し、ウエハステージ21は、ウエハ(基板)50を保持して投影光学系15の像面へ配置する。この状態で照明装置10が駆動されると、マスク40のパターンが投影光学系15によってウエハ50へ転写される。
【0134】
波面収差測定時、マスクステージ20は、マスク40の代わりにピンホール板18を保持して投影光学系15の物体面へ配置し、ウエハステージ21は、ウエハ50の代わりに計測ユニット60を投影光学系15の像面側へ配置する。この状態では、照明装置10、ピンホール板18、投影光学系15、透過型回折格子19、移動機構30、撮像素子16の位置関係は、第1実施形態におけるそれらの位置関係と同じである。
【0135】
よって、この状態で照明装置10が駆動されると、撮像素子16上には、投影光学系15の波面収差を反映した干渉縞が形成され、移動機構30が駆動されると、その干渉縞の位相が変化する。
【0136】
波面収差測定時、制御装置100は、第1実施形態の制御装置と同様の手順で複数フレームの縞画像を取得し、演算装置200は、第1実施形態の演算装置と同様の手順で投影光学系15の波面収差を評価する。
【0137】
したがって、本実施形態の投影露光装置は、第1実施形態の波面収差測定装置と同様、投影光学系15の波面収差を簡単かつ高精度に評価することができる。
【0138】
また、本実施形態の投影露光装置は、投影露光時に使用されるのと同じ照明装置10を使用して投影光学系15の波面収差測定を行うので、波面収差の評価精度は高い。
【0139】
なお、本実施形態の投影露光装置では、前述した波面収差の測定は、物体面上の複数の物点の各々について行われることが望ましい。測定対象となる物点を移動させるには、物体面上のピンホール板18の位置と、像面上の計測ユニット60の位置とをそれぞれシフトさせればよい。
【0140】
また、本実施形態の投影露光装置には、投影光学系15のアラインメント機能が搭載されることが望ましい。その場合、投影光学系15のアライメント内容に波面収差の評価結果を反映させるとよい。このようにすれば、投影露光装置の性能を長期間に亘って維持することが可能である。
【0141】
また、本実施形態の投影露光装置の演算装置200は、第1実施形態の演算装置と同じ処理を実行したが、第2実施形態又は第3実施形態の演算装置と同じ処理を実行してもよい。
【0142】
また、本実施形態の投影露光装置では、ピンホール板18に形成されるピンホールの個数は、単一であっても複数であってもよい。因みに、ピンホールの個数を複数化すれば、投影光学系15を透過する光束の強度を高めることができる。
【0143】
また、本実施形態の投影露光装置では、透過型回折格子19に形成される格子は、一次元格子であっても、二次元格子であってもよい。
【0144】
また、本実施形態の投影露光装置において、透過型回折格子19の格子を二次元格子とする場合、投影光学系15の波面収差評価に第4実施形態と同じ方法を採用してもよい。
【0145】
また、本実施形態の投影露光装置では、マスク20、ピンホール板18、投影光学系15、回折格子19の各々が透過型で構成されているが、これらの要素の少なくとも1部は反射型で構成されてもよい。因みに、投影光学系15が反射型である場合は、他の要素も反射型で構成されることが望ましい。
【0146】
[第6実施形態]
以下、第6実施形態として、第5実施形態の投影露光装置を利用したデバイスの製造方法を説明する。
【0147】
第5実施形態の投影露光装置を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、
図14に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、第5実施形態の投影露光装置によりマスクのパターンを基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0148】
上述したとおり、第5実施形態の投影露光装置は高性能であるので、本実施形態で製造されたデバイスも高性能となる。
【0149】
[補足]
なお、上述した実施形態では、干渉縞解析の対象を、干渉計の生成する干渉縞としたが、ホログラム記録装置で記録されたホログラム干渉縞としてもよいことは言うまでもない。