(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロレンズは、一方の面に備えられた凸レンズからなる第1のマイクロレンズアレイと、他方の面に備えられた凸レンズからなる第2のマイクロレンズアレイと、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の投影装置。
前記マイクロレンズは、一方の面に備えられた凸レンズからなる第1のマイクロレンズアレイと、他方の面に備えられた凹レンズからなる第2のマイクロレンズアレイと、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の投影装置。
前記マイクロレンズは、一方の面に備えられた凹レンズからなる第1のマイクロレンズアレイと、他方の面に備えられた凹レンズからなる第2のマイクロレンズアレイと、を有することを特徴とする請求項1に記載の投影装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヘッドアップディスプレイは、一般的に、光の進行方向を偏向するための反射部材により反射させ、この反射された光により形成された画像を視認するものであるが、通常、このような反射部材は偏光依存性を有している。従って、マイクロレンズアレイが複屈折を有している場合、反射部材における偏光依存性によって、表示される画像におけるコントラストが変化し、表示される画像の品質が低下してしまう。特に、マイクロレンズアレイを透明な樹脂材料を用いて、射出成形により形成する場合においては、射出成形する際に樹脂材料が流動して、マイクロレンズアレイが形成される。したがって、複屈折の面内分布等が不均一となりやすく、上述した傾向が顕著なものとなる。
【0006】
本発明は、上述のような課題を鑑みてなされたものであり、高品質な画像を表示することのできる投影装置及び光学素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の他の一観点によれば、
レーザ光を出射する光源と、光学素子と、を有し、前記光源より出射されたレーザ光は前記光学素子を介し、部分反射板において反射され、前記部分反射板において反射された画像を視認する投影装置において、前記光学素子は、マイクロレンズ
が2次元的に配置
され、前記マイクロレンズ間における境界領域の幅は、2μm以下であ
り、前記マイクロレンズにおけるリタデーションは、入射するレーザ光の波長に対し、0.098倍以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、マイクロレンズを2次元的に配置することによりレンズアレイが形成されている光学素子と、前記光学素子に照射されるレーザ光を出射する光源と、を有し、前記光学素子に照射されたレーザ光は前記光学素子を介し、部分反射板において反射され、前記部分反射板において反射された画像を視認する投影装置において、前記光学素子におけるリタデーションは、前記光源より出射されるレーザ光の波長に対し、0.098倍以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、マイクロレンズを2次元的に配置することによりレンズアレイが形成されている光学素子と、前記光学素子に照射されるレーザ光を出射する光源と、を有し、前記光学素子に照射されたレーザ光は前記光学素子を介し、部分反射板において反射され、前記部分反射板において反射された画像を視認する投影装置において、前記マイクロレンズは凸レンズであって、前記光学素子は、透明基材と、前記透明基材に上に形成された緩衝層と、を有し、前記マイクロレンズは前記緩衝層の上に形成されているものであって、前記緩衝層と前記マイクロレンズは同一の樹脂材料により形成されており、前記マイクロレンズの厚さをt1とし、前記緩衝層の厚さをt2とした場合に、t1≦t2であることを特徴とする。
【0010】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、マイクロレンズ
が2次元的に配置
され、前記マイクロレンズ間における境界領域の幅は、2μm以下であ
り、前記マイクロレンズにおけるリタデーションは、入射するレーザ光の波長に対し、0.098倍以下であることを特徴とする。
【0011】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、マイクロレンズを2次元的に配置することによりレンズアレイが形成されている光学素子であって、前記光学素子に照射されるレーザ光を出射する光源を有し、前記光学素子に照射されたレーザ光は前記光学素子を介し、部分反射板において反射され、前記部分反射板において反射された画像を視認する投影装置に用いられるものであって、前記マイクロレンズにおけるリタデーションは、前記光源の波長に対し、0.098倍以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、マイクロレンズを2次元的に配置することによりレンズアレイが形成されている光学素子において、前記マイクロレンズは凸レンズであって、前記光学素子は、透明基材と、前記透明基材に上に形成された緩衝層と、を有し、前記マイクロレンズは前記緩衝層の上に形成されているものであって、前記緩衝層と前記マイクロレンズは同一の樹脂材料により形成されており、前記マイクロレンズの厚さをt1とし、前記緩衝層の厚さをt2とした場合に、t1≦t2であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高品質な画像を表示することのできる投影装置及び光学素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明を実施するための形態について、以下に説明する。なお、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
(投影装置)
本実施の形態における投影装置について基づき説明する。
図1は、本実施の形態における投影装置であるヘッドアップディスプレイの構造を示す。本実施の形態における投影装置10であるヘッドアップディスプレイは、表示される画像の光が出射される投影部20と、投影部20から出射された光により視認者の目に像を結像させるための光学部材40と、を有している。光学部材40は、例えば、凹面ミラー等であって、投影部20から入射した光を反射させる。凹面ミラー等の光学部材40において反射された光は、更に、ガラス等により形成された部分反射板50において反射され、視認者の目に入射する。これにより、視認者は、ガラス等により形成された部分反射板50において反射された画像を認識する。なお、投影装置には、自動車のフロントガラス等と部分反射板50に画像を投影する構造のものと、投影装置に備えられている部分反射板50に画像を投影する構造のものとがある。
【0017】
次に、
図2に基づき投影部20について説明する。投影部20は、第1の光源21、第2の光源22、第3の光源23、第1のダイクロイックプリズム24、第2のダイクロイックプリズム25、コリメータレンズ26、投影ミラー27、光学素子30等を有している。
【0018】
第1の光源21、第2の光源22及び第3の光源23は相互に異なる波長の光を出射するものであって、第1の光源21からは第1の波長の光、第2の光源22からは第2の波長の光、第3の光源23からは第3の波長の光が出射される。本実施の形態においては、第1の光源21から出射される第1の波長の光を青色の光、第2の光源22から出射される第2の波長の光を緑色の光、第3の光源23から出射される第3の波長の光を赤色の光として説明する場合がある。
【0019】
本実施の形態においては、第1の光源21より出射された第1の波長の光と第2の光源22より出射された第2の波長の光は、第1のダイクロイックプリズム24の異なる面に各々入射し、第3の光源23より出射された第3の波長の光は、第2のダイクロイックプリズム25に入射するように配置されている。
【0020】
第1のダイクロイックプリズム24においては、第1の光源21より出射された第1の波長の光は透過し、第2の光源22より出射された第2の波長の光は反射される。これにより、第1の波長の光と第2の波長の光が合波される。このように合波された第1の波長の光と第2の波長の光は、第2のダイクロイックプリズム25に入射する。第2のダイクロイックプリズム25においては、第1の光源21より出射された第1の波長の光及び第2の光源22より出射された第2の波長の光は透過し、第3の光源23より出射された第3の波長の光は反射される。これにより、第1の波長の光、第2の波長の光、第3の波長の光が合波される。
【0021】
このように、第2のダイクロイックプリズム25において合波された第1の波長の光、第2の波長の光及び第3の波長の光は、コリメータレンズ26を介し、投影ミラー27において反射され、光学素子30に入射する。投影ミラー27は、2次元的に角度を変えることのできる機能を有しており、これにより、入射した光を2次元的にスキャンニングすることができ、所望の投影像が形成される。
【0022】
(光学素子)
次に、
図3に基づき光学素子30について説明する。なお、
図3(a)は、光学素子30の上面図であり、
図3(b)は断面図であり、
図3(c)は、
図3(b)において一点鎖線3Aにより囲まれた領域の拡大図である。光学素子30は、複数の凸レンズからなるマイクロレンズ31が2次元的に配列されているマイクロレンズアレイ等のレンズアレイにより形成されており、入射した光束の出射角度を広げる機能を有している。このように、光学素子30により出射角度が広げられることにより、視野角の広い投影装置を得ることができる。
【0023】
本実施の形態においては、各々のマイクロレンズ31は略六角形の形状により形成されており、マイクロレンズ31間において隙間が生じることなく2次元的に配列されている。なお、マイクロレンズ31の形状は、隙間が生じることなく形成される形状であればよく、例えば、三角形、四角形により形成されるものであってもよい。
【0024】
ところで、このように複数のマイクロレンズ31により形成された光学素子30においては、マイクロレンズ31に平坦な部分があると、平坦な部分においては所望とする光学的な作用が生じない。具体的には、平坦な部分における面積が広いと、効率が低下し、更には、ゴースト等の迷光の発生の原因となるため、好ましくない。従って、
図3(c)に示されるように、マイクロレンズ31間における境界領域31aの幅dは、できるだけ狭く形成されていることが好ましい。なお、本実施の形態においては、マイクロレンズ31間において、隣接する一方のマイクロレンズ31の表面における変曲点31bと、他方のマイクロレンズ31の表面における変曲点31bとの間の領域を境界領域31aとし、この境界領域31aの幅をdとする。
【0025】
このような境界領域31aの幅dは、上述した観点に基づくならば、2μm以下であることが好ましく、更には、1μm以下であることがより好ましい。このように、境界領域31aの幅dを狭くすることにより、ゴースト等の迷光の発生をできるだけ防ぐことができ、また、光学素子30及び投影装置の効率を向上させることができる。
【0026】
また、
図3(b)に示されるように、本実施の形態において用いられる光学素子30は、ガラス等の透明基材33の上に形成された緩衝層32の上に、マイクロレンズ31が形成された構造のものである。なお、本実施の形態においては、便宜上、マイクロレンズ31の高さはt1であり、緩衝層32の厚さはt2であり、透明基材33の厚さはt3であるものとする。また、本実施の形態においては、緩衝層32とマイクロレンズ31とは、同一の樹脂材料、例えば、同一の紫外線硬化樹脂等により形成されている。
【0027】
(光学素子の製造方法)
次に、光学素子30の製造方法について
図4に基づき説明する。
【0028】
最初に、
図4(a)に示すように、マイクロレンズ31の凸状の形状に対応した凹状のパターン61aが表面に形成されている型61を用意する。この型61は、紫外線を透過するガラス等の基材により形成されており、ガラス等の基材の表面をフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成する工程と、ドライエッチングまたはウェットエッチング等のエッチングを行う工程とを組み合わせて行うことにより、凹状のパターン61aが形成される。
【0029】
次に、
図4(b)に示すように、型61において凹状のパターン61aが形成されている面に、モノマー等の紫外線硬化樹脂材料34を適量滴下させた後、透明基材33を載置する。
【0030】
次に、
図4(c)に示すように、紫外線硬化樹脂材料34に、紫外線ランプ62を用いて紫外線照射する。これにより、紫外線硬化樹脂材料34が硬化し、緩衝層32及びマイクロレンズ31が形成される。この際、型61が設けられている側に紫外線ランプ62を設置し、型61が設けられている側より、型61を介して紫外線硬化樹脂材料34に向けて紫外線を照射することが好ましい。これにより、マイクロレンズ31の表面の形状が所望の形状に形成される。即ち、転写により形成されるマイクロレンズ31の表面の形状の劣化が抑制される。
【0031】
次に、
図4(d)に示すように、型61を離型する。これにより、透明基材33の表面に緩衝層32及びマイクロレンズ31が形成された光学素子30が形成される。
【0032】
なお、緩衝層32とマイクロレンズ31を形成するための樹脂材料は紫外線硬化樹脂以外にも、熱硬化樹脂等を用いてもよく、この場合には、熱を加えることにより硬化させる。しかしながら、紫外線硬化樹脂等の光照射により硬化する樹脂材料の方が、樹脂材料を瞬時に硬化させることができ、また、熱膨張等の影響を考慮する必要もないため、より好ましい。
【0033】
また、紫外線硬化樹脂材料34が硬化する際、マイクロレンズ31が形成される部分において重合収縮が生じ、マイクロレンズ31の表面の形状が劣化する場合がある。このことを抑制するためには、マイクロレンズ31の高さt1は、緩衝層32の厚さt2以下であること、即ち、t1≦t2であることが好ましい。t1×2≦t2であることがより好ましく、t1×5≦t2であることが特に好ましく、更には、t1×10≦t2であることがより一層好ましい。
【0034】
次に、紫外線硬化樹脂材料34が硬化する際に、上述した条件において、マイクロレンズ31が形成される部分における重合収縮が抑制される理由について、
図5に基づき説明する。
【0035】
図5(a)に示されるように、緩衝層32の厚さt2がマイクロレンズ31の高さt1よりも薄い場合、即ち、t1>t2である場合では、紫外線硬化樹脂材料34の重心Gaは、マイクロレンズ31が形成される領域内にあり、紫外線硬化樹脂材料34が硬化する際に、マイクロレンズ31の外側である境界領域31aより先に硬化しやすく、よって、各々のマイクロレンズ31が独立した状態で硬化する。この場合、紫外線硬化樹脂材料34は、紫外線硬化樹脂材料34の重心Gaに向かって硬化収縮するため、特に、境界領域31における形状が所望の形状とは異なる形状となり、所望とする光学特性を得ることができなくなってしまう。
【0036】
これに対して、
図5(b)に示されるように、緩衝層32の厚さt2がマイクロレンズ31の高さt1以上である場合、即ち、t1≦t2である場合では、紫外線硬化樹脂材料34の重心Gbは緩衝層32が形成される領域内にあり、紫外線硬化樹脂材料34が硬化する際に、マイクロレンズ31の外側の境界領域31aより先に硬化し、各々のマイクロレンズ31が独立した状態で硬化するのではなく、緩衝層32側に収縮するように硬化する。具体的には、紫外線硬化樹脂材料34の重心Gbに向かって硬化収縮するため、境界領域31における形状を所望の形状に近い形状となるように形成される。
【0037】
なお、紫外線硬化樹脂材料34は、様々な種類のものがあり、また、硬化条件によって、硬化収縮の状態は異なるが、上記の条件により、紫外線硬化樹脂材料34の硬化収縮による境界領域31aにおける表面の形状の変化が可能な限り抑制される。
【0038】
次に、光学素子30が複屈折を有している場合における影響について説明する。本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイは、部分反射板50において一部反射された反射光を視認することにより、視認者が画像を認識するものであるが、一般的に、部分反射板50等における光の反射は偏光方向に対して依存性を有している。例えば、部分反射板50よりも光源側、即ち、部分反射板50よりも第1の光源21、第2の光源22及び第3の光源23が設けられている側において、偏光状態を変化させるような光学部材が設置されていると、部分反射板50に入射する光束の偏光状態によって像の明るさ等が変化してしまう。このため、部分反射板50よりも光源側に設置される光学素子30においては、複屈折の値が小さいものが用いられることが好ましい。
【0039】
ここで、部分反射板50が屈折率1.5の透明な基板等により形成されている場合について説明する。
図6には、屈折率が1.5の部材に光が入射した場合において、p偏光における反射率(Rp)及びs偏光における反射率(Rs)を示す。
図6に示されるように、入射角度が56.3°の場合に、p偏光の光の反射率(Rp)が0となるブリュースター角となる。ここでは、部分反射板13にブリュースター角で光が入射する場合について説明する。
【0040】
次に、光学軸がs偏光の光に対して45°の方向に傾いており、リタデーションRdを有する複屈折を有する部材に、波長λのs偏光の光束を入射させた場合における出射光の偏光強度を
図7(a)に示し、偏光強度比を
図7(b)に示す。なお、投影部20において複数の波長の光が用いられている場合には、波長λは最も波長の短い光の波長であるものとする。また、偏光強度比は、p偏光成分/s偏光成分を意味するものとする。
【0041】
図7(b)に基づくならば、s偏光に対するp偏光の偏光強度比を10%以下にするためには、リタデーションRdは波長λの0.098倍以下する必要がある。また、s偏光に対するp偏光の偏光強度比を5%以下にするためには、リタデーションRdは波長λの0.071倍以下する必要がある。また、s偏光に対するp偏光の偏光強度比を3%以下にするためには、リタデーションRdは波長λの0.055倍以下する必要がある。また、s偏光に対するp偏光の偏光強度比を1%以下にするためには、リタデーションRdは波長λの0.032倍以下する必要がある。なお、部分反射板50に入射する光束がブリュースター角となるように配置した場合には、p偏光の光は像の結像には寄与しない。
【0042】
従って、本実施の形態においては、光学素子30におけるリタデーションRdは、入射する光の波長の0.098倍以下であることが好ましく、0.071倍以下であることがより好ましく、0.055倍以下であることが特に好ましく、更には0.032倍以下であることがより一層好ましい。
【0043】
なお、光学部材30において、リタデーションRdが均一に発生している場合は、光学素子30の取り付け位置を調整等することにより、像の明るさ等が変化してしまうことが抑制される。しかしながら、そもそも光学素子30にリタデーションRdが発生していなければ、取り付け位置の調整等をする必要がないため、製造工程の単純化が可能となるため好ましい。
【0044】
次に、光学素子30の形状等について説明する。光学素子30としては、
図3及び
図8(a)に示されるように、マイクロレンズ31は凸レンズにより形成されたものに限定されるものではなく、
図8(b)に示されるように、透明基材33の表面に凹レンズからなるマイクロレンズ131が複数形成されているものであってもよい。このような凹レンズからなるマイクロレンズ131が複数形成されているものであっても、
図8(a)に示される凸レンズからなるマイクロレンズ31が複数形成されたものと同様に、入射する光束を広げることが可能である。
【0045】
なお、
図8(b)に示されるような凹レンズからなるマイクロレンズ131が形成されている光学素子は、複屈折を有しないガラス等の透明基材33の表面を直接凹状に加工することにより形成可能である。即ち、
図8(a)等に示されるような、表面に凸レンズからなるマイクロレンズ31が複数形成されている光学素子を直接加工により形成する場合においては、境界領域31aを狭くすることには一定の限界があるのに対し、
図8(b)に示されるような、表面に凹レンズからなるマイクロレンズ131が複数形成されている光学素子130においては、直接加工においても凹レンズ間の境界部分131aを狭く形成可能である。
【0046】
具体的には、
図8(a)に示される光学素子30におけるマイクロレンズ31では、切削加工により表面に凸レンズを形成しようとしても、切削加工を行うための切削工具の先端形状を小さくすることは困難であり、また、凸レンズと凸レンズの境界領域31aを形成する際に、形成されている凸レンズと切削工具とが干渉してしまうため、境界領域31aを所望の形状で形成することは困難である。
【0047】
これに対し、
図8(b)に示される光学素子130におけるマイクロレンズ131では、切削加工を行うための切削工具の先端形状を小さくすることなく、凹レンズを形成することは可能であり、境界領域131aにおける切削工具との干渉もないため、所望の形状のものを容易に形成可能である。なお、光学素子130等を直接加工により作製する方法としては、切削や研削等の機械加工の他、ウェットエッチング、ドライエッチング等のエッチングにより形成してもよい。
【0048】
次に、本実施の形態における光学素子の各種構成について説明する。具体的には、
図9(a)に示されるように、光学素子130aは、一方の面に凸レンズからなるマイクロレンズ31が形成されている光学素子30(
図8に示される光学素子30)が2枚用いられており、マイクロレンズ31が形成されている面同士が向かい合うように配置した構造のものであってもよい。この場合、各々のマイクロレンズ31を形成している凸レンズの頂の位置が同じ光路上に位置するように配置してもよく、また、ずれた位置に配置してもよい。また、2つの光学素子30の距離は、マイクロレンズ31の焦点距離と一致するように配置してもよく、また、焦点距離よりも長くなるように配置してもよい。
【0049】
また、
図9(b)に示されるように、光学素子130bは、透明基材33の両面に各々凸レンズからなるマイクロレンズ31を形成した構造のものであってもよい。
【0050】
また、
図9(c)に示されるように、光学素子130cは、透明基材33の一方の面に凸レンズからなるマイクロレンズ31を形成し、他方の面に凹レンズからなるマイクロレンズ131を形成した構造のものであってもよい。
【0051】
また、
図9(d)に示されるように、光学素子130dは、透明基材33の両面に各々凹レンズからなるマイクロレンズ131を形成した構造のものであってもよい
以上のように、光学素子130a〜130dについても、光学素子30及び130と同様の効果を得ることができる。なお、レンズアレイは周期性を有しているため、光学素子30等におけるマイクロレンズ31等の形状が小さい場合には、マイクロレンズ31等からの出射光に回折が生じ、出射光の角度依存性に明暗が生じる場合がある。このような場合には、光学素子30等に集光光または発散光を入射させてもよい。これにより、回折により生じる明暗の程度が低減される。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
本実施の形態における実施例1として、
図3に示される凸レンズからなるマイクロレンズ31が形成されている光学素子30を用いた投影装置について説明する。具体的には、透明基材33となる大きさが100mm×40mm、厚さが0.5mmのガラス基板の表面に、曲率半径が25μmのマイクロレンズ31を複数形成することによりレンズアレイを形成する。なお、形成されるマイクロレンズ31間のピッチは20μmである。この光学素子30の製造方法は、透明基材33の表面に紫外線硬化樹脂を滴下し、型と透明基材33により紫外線硬化樹脂を挟み込み紫外線を照射する。これにより、硬化した紫外線硬化樹脂により緩衝層32及びマイクロレンズ31を形成する。この際、形成される緩衝層32の厚さt2は約20μmであり、マイクロレンズ31の高さt1は約2.1μmである。この後、型を離型する。このように形成された光学素子30におけるリタデーションRdは10nm以下であり、後述する第1の光源21における第1の波長の450nmに対して、約0.022以下となる。
【0053】
このように作製された本実施例における光学素子30を
図1に示される本実施の形態における投影装置に設置する。この投影装置では、第1の光源21として波長450nmのレーザ光を出射する半導体レーザ光源、第2の光源22として波長520nmのレーザ光を出射するSHG(Second harmonic generation)等の固体レーザ光源、第3の光源23として波長630nmのレーザ光を出射する半導体レーザ光源が用いられており、投影ミラー27としてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーが用いられている。
【0054】
(実施例2)
本実施の形態における実施例2として、
図9(c)に示される一方の面に凸レンズからなるマイクロレンズ31が形成されており、他方の面に凹レンズからなるマイクロレンズ131が形成されている光学素子130cを用いた投影装置について説明する。光学素子130cの製造方法は、透明基材33となる大きさが100mm×40mm、厚さが0.5mmのガラス基板の一方の面に曲率半径が25μmの凹レンズからなるマイクロレンズ131を複数形成することによりレンズアレイを形成する。なお、形成されるマイクロレンズ131間のピッチは20μmである。具体的には、透明基材33の表面の一部をエッチングにより除去することにより、凹レンズからなるマイクロレンズ131を複数形成しレンズアレイを形成する。次に、透明基材33となるガラス基板の他方の面に、曲率半径が25μmのマイクロレンズ31を複数形成することによりレンズアレイを形成する。なお、形成されるマイクロレンズ31間のピッチは20μmである。具体的には、透明基材33の表面に紫外線硬化樹脂を滴下し、型と透明基材33により紫外線硬化樹脂を挟み込み紫外線を照射する。これにより、硬化した紫外線硬化樹脂により緩衝層32及びマイクロレンズ31を形成する。この際、形成される緩衝層32の厚さt2は約20μmであり、マイクロレンズ31の高さt1は約2.1μmである。この後、型を離型する。このように形成された光学素子におけるリタデーションRdは10nm以下であり、後述する第1の光源21における第1の波長の450nmに対して、約0.022以下となる。
【0055】
このように形成された本実施例における光学素子を
図1に示される本実施の形態における投影装置に設置する。この投影装置では、第1の光源21として波長450nmのレーザ光を出射する半導体レーザ光源、第2の光源22として波長520nmのレーザ光を出射するSHG等の固体レーザ光源、第3の光源23として波長630nmのレーザ光を出射する半導体レーザ光源が用いられており、投影ミラー27としてMEMSミラーが用いられている。
【0056】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。