特許第5966735号(P5966735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5966735アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物及びそれからなる組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966735
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物及びそれからなる組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20160728BHJP
   C08F 216/06 20060101ALI20160728BHJP
   C08F 218/08 20060101ALI20160728BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20160728BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20160728BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20160728BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C08F210/02
   C08F216/06
   C08F218/08
   C08F8/30
   C08F8/12
   C08F299/00
   C09J123/08
   C09J11/06
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-169858(P2012-169858)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2013-79363(P2013-79363A)
(43)【公開日】2013年5月2日
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2011-207857(P2011-207857)
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹本 有光
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−000689(JP,A)
【文献】 特開昭61−059621(JP,A)
【文献】 特開昭63−048304(JP,A)
【文献】 特表平10−513124(JP,A)
【文献】 特開2006−035733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00−246/00
C08C19/00−19/44
C08F299/00−299/08
C08F290/00−290/14
C08F283/01
C09J1/00−5/10
C09J9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン残基単位75.4〜98.3モル%、酢酸ビニル残基単位0.3〜19.6モル%、ビニルアルコール残基単位0〜24.2モル%及び下記一般式(1)で示されるアクリロイル基を有する残基単位0.1〜20.0モル%含み、JIS K6924−1に準拠し測定したMFRが5〜40000g/10分であるアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)95.0〜99.9重量部、とラジカル重合型光開始剤(B)0.1〜5.0重量部(但し、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)とラジカル重合型光開始剤(B)の合計は100重量部)とを含む組成物を含むことを特徴とする接着剤
【化1】
(ここで、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2以上の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
一般式(1)で示されるアクリロイル基を有する残基単位が0.1〜5.0モル%であるアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリロイル基を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物及びそれからなる組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン−酢酸ビニル共重合体及びそのケン化物は経済性、柔軟性、透明性、成形性等に優れていることから建築資材分野、包装分野、接着剤分野等の広範な産業で使用されている。
【0003】
そして、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びそのケン化物はその高い接着性を利用してホットメルト接着剤として使用されている。エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル含有量、ケン化度、分子量、配合処方の変更により広範な用途に適用可能なホットメルト接着剤を調整可能であることから、包装、合板、木工、芯地などの分野で広く使用されている。
【0004】
ホットメルト接着剤は、塗布後の固化時間が短く、無溶剤であること等から年々使用量が増加している。しかしながら、一般にエチレン−酢酸ビニル共重合体及びそのケン化物からなるホットメルト接着剤は耐熱性に問題があり、耐熱性が要求される用途では使用が制限されてきた。
【0005】
そこで、耐熱性を高めたホットメルト接着剤を得るために、エチレン−酢酸ビニル共重合体に特定のパラフィンワックスを用いた樹脂組成物(例えば特許文献1参照)や特定の高軟化温度の粘着付与剤を用いたホットメルト接着剤(例えば特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−247468号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−263100号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法は、ある特定の原料を用いて配合技術を駆使したものであり、耐熱性は従来のエチレン−酢酸ビニル共重合体よりも向上するものの必ずしも満足できるものではなかった。また、機械的強度に劣るため接着剤が凝集破壊しやすく、剥がれやすいなどの問題があり満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のアクリロイル基を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を使用し、UV照射を行い分子間架橋を施すことにより、接着性を保持したまま、耐熱性及び機械強度に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、エチレン残基単位75.4〜98.3モル%、酢酸ビニル残基単位0.3〜19.6モル%、ビニルアルコール残基単位0〜24.2モル%及び下記一般式(1)で示されるアクリロイル基を有する残基単位0.1〜20.0モル%含み、JIS K6924−1に準拠し測定したMFRが5〜40000g/10分であるアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)95.0〜99.9重量部、とラジカル重合型光開始剤(B)0.1〜5.0重量部(但し、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)とラジカル重合型光開始剤(B)の合計は100重量部)とを含む組成物を含むことを特徴とする接着剤に関するものである。
【0009】
【化1】
(ここで、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2以上の炭化水素基を示す。)
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体にアクロイル基を含有させたものである。
【0011】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のエチレン残基単位は、接着性と機械的強度のバランスに優れることから、75.4〜98.3モル%が好ましく、80.0〜95.0モル%が更に好ましい。
【0012】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル残基単位は、接着性と機械的強度のバランスに優れることから、0.3〜19.6モル%の範囲であることが好ましく、0.8〜10.0モル%が更に好ましい。
【0013】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のビニルアルコール残基単位は、接着性と機械的強度のバランスに優れることから、0〜24.2モル%の範囲であることが好ましく、1.0〜16.0モル%が更に好ましい。
【0014】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のアクリロイル基を有する残基単位は、0.1〜20.0モル%の範囲であると耐熱性と経済性のバランスに優れ、0.1〜5.0モル%の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0モル%が更に好ましい。
【0015】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の、JIS K6924−1に準拠して測定したメルトマスフローレート(MFR)は、作業性に優れることから、5〜40000g/10分であることが好ましく、10〜3000g/10分であることが更に好ましい。
【0016】
前記一般式(1)で示されるアクリロイル基のRは炭素数2以上の炭化水素基を示し、具体的には、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、i−ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0017】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物にアクリロイル基含有イソシアネート化合物を反応させることにより得られる。エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、例えば高圧法、乳化重合法等の公知の製造方法により製造されたエチレン−酢酸ビニル共重合体をメタノール、エタノールなどの低沸点アルコールと水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートなどのアルカリからなる系で処理するケン化を施すことにより製造することができ、ポリマー鎖中にエチレン残基成分、酢酸ビニル残基成分及びビニルアルコール残基成分を有する。また、該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は市販品であっても良い。
【0018】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル残基含量及びビニルアルコール残基含量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル残基含量及びビニルアルコール残基含量に依存する。エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル残基含量及びビニルアルコール残基含量は、重合時のガス中の酢酸ビニル濃度及びケン化反応時のアルカリの添加量により調整することが可能である。即ち、重合時のガス中の酢酸ビニル濃度が高ければ、酢酸ビニル残基含量の高いものが得られ、酢酸ビニル濃度が低ければ、酢酸ビニル残基含量の低いものが得られる。また、ケン化反応時のアルカリの添加量が酢酸ビニル残基含量に対して等モル以上のアルカリを添加すれば、ビニルアルコール残基含量の高いものが得られ、アルカリの添加量が少なければ、酢酸ビニル残基含量が高く、ビニルアルコール残基含量の低いものが得られる。
【0019】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のアクリロイル基を有する残基成分は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とアクリロイル基含有イソシアネート化合物を反応する際のアクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量により調整することが可能である。即ち、反応時のアクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量が多ければ、アクリロイル基含量の高いものが得られ、アクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量が少なければ、アクリロイル基含量の低いものが得られる。
【0020】
そのアクリロイル基含有イソシアネート化合物としては、市販されているアクリロイルオキシアルキルイソシアネート化合物であれば特に制限なく使用することができる。市販されているアクリロイルオキシアルキルイソシアネート化合物としては、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズAOI)、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズBEI)等があげられる。
【0021】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のMFRは、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のMFRに依存し、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のMFRは、重合時のガス中の連鎖移動剤の濃度により調整することが可能であり、連鎖移動剤の濃度が高ければMFRの高いものが得られ、連鎖移動剤の濃度が低ければ、MFRの低いものが得られる。
【0022】
その連鎖移動剤としては、例えば、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィン類、エタン、プロパン、ブタン等のパラフィン類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル等のカルボニル化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0023】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)95.0〜99.9重量部とラジカル重合型光開始剤(B)0.1〜5.0重量部(但し、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)とラジカル重合型光開始剤(B)の合計は100重量部)を含む組成物として用いることができる。
【0024】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)が95.0重量部未満であり、ラジカル重合型光開始剤(B)が5重量部を超える場合、硬化速度の向上は望めない上、コスト高となるため実用に適さない。アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)が99.9重量部を超え、ラジカル重合型光開始剤(B)が0.1重量部未満である場合、硬化性が不十分となり、耐熱性が不十分となる。
【0025】
本発明の組成物に用いられるラジカル重合型光開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン等が挙げられる。市販されているラジカル重合型光開始剤としては、例えば、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア907、イルガキュア2959、イルガキュアOXE01(いずれもチバジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物およびそれを含む組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で各種ポリマーや各種添加剤を含有しても良い。添加剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、滑剤、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、有機充填剤等をあげることができる。
【0027】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を含む組成物を得る方法は、本発明の組成物を製造することが可能であればいかなる方法も用いることが可能であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とラジカル重合型光開始剤をドライブレンド、溶液混合、溶融混合等の混合方法により製造することが可能であり、中でも効率よく混合できることから溶融混合が好ましい。
【0028】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー、加圧ニーダー、インターナルミキサー、インテンシブミキサー、ロール成形機、単軸押出機、二軸押出機とうのプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用可能である。
【0029】
本発明のアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を含む組成物は、接着剤として用いることができる。本発明の接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で粘着付与剤を配合してもよい。粘着付与剤としては、例えば脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等をあげることができる。
【0030】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を含む接着剤は、紙、ポリエステルフィルム、金属、合板、布、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム等の接着等に有用である。
【0031】
本発明の接着剤は、本発明の組成物をシートにした後、被接着物に加熱接着し、UV照射を行い硬化させる方法、本発明の組成物をホットメルト塗布して被接着物に融着しUV照射を行い硬化させる方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物及びこれを含む組成物を利用したホットメルト接着剤は、接着性を保持しつつ、耐熱性及び機械的強度に優れており、紙、ポリエステルフィルム、金属、合板、布、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム等の接着等に有用である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって、本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0034】
以下に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の製造方法、耐熱性、接着性、機械的強度の評価方法を示す。
【0035】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)の製造方法>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製、ウルトラセン725、酢酸ビニル含量28重量%、MFR=1000g/10分をメタノール溶媒中、苛性濃度0.4mol/Lの条件下で50℃、6時間反応することによりエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)を得た。
【0036】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C2)の製造方法>
エチレン−酢酸ビニル共重合体として東ソー株式会社製、ウルトラセン530、酢酸ビニル含量6重量%、MFR=75g/10分を使用し、苛性濃度0.2mol/Lとした以外は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)と同様の方法で製造した。
【0037】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C3)の製造方法>
エチレン−酢酸ビニル共重合体として東ソー株式会社製、ウルトラセン760、酢酸ビニル含量42重量%、MFR=70g/10分を使用し、苛性濃度1.3mol/L、反応時間8時間とした以外は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)と同様の方法で製造した。
【0038】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C4)の製造方法>
エチレン−酢酸ビニル共重合体として東ソー株式会社製、ウルトラセン760、酢酸ビニル含量42重量%、MFR=70g/10分を使用し、苛性濃度3.2mol/L、反応温度70℃、反応時間12時間とした以外は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)と同様の方法で製造した。
【0039】
<耐熱性の評価方法>
縦100mm×横100mmのプレスシートをUV照射装置(入江株式会社製、理化学用水銀灯起動装置、型式H−400−A/B)でUV照射(照度:3000mW/cm)し、150℃の雰囲気に保たれた送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式DN63H)中に2時間放置し、放置後のプレスシートの外観を目視評価することにより、耐熱性の指標とした。
【0040】
プレスシートが溶融せず形状を保っているものを○、プレスシートが溶融し形状が保たれていないものを×とした。
【0041】
<接着性の評価方法>
幅100mmのプレスシートをクラフト紙(秤量50g/m)の上に重ね合せ、ヒートシールテスター(テスター産業株式会社製)を用いて温度120℃、圧力0.2MPa、時間1秒の条件でヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行い、UV照射装置を用いてUV照射(照度:3000mW/cm)した。
【0042】
試験片を幅25mmの短冊状に切断し、該加熱融着部分を引張試験機(島津製作所株式会社製、商品名オートグラフDCS500)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180度にてヒートシール性を測定した。
【0043】
<機械的強度の評価方法>
プレスシートをUV照射装置でUV照射(照度:3000mW/cm)した後、JIS K6924−2に準じて、引張試験機(島津製作所株式会社製、商品名オートグラフDCS500)を用いて、剥離速度200mm/分、チャック間距離40mmの条件にて引張破壊応力を測定した。
【0044】
実施例1
トルエン500mLにエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)を100g溶解し、アクリロイル基含有イソシアネート化合物(昭和電工株式会社製、カレンズMOI)を5.4g添加し60℃、5時間撹拌した。生成物をメタノール中に沈殿させ、固液分離、洗浄、真空乾燥することにより、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を得た。
【0045】
次いで、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を99重量部、ラジカル重合型光開始剤としてチバジャパン株式会社製、イルガキュア184(B1)を1重量部の比率で合計量70gを内容量100ccのミキサー(ラボプラストミル、東洋精機製作所製)に充填し、120℃で10分間溶融混合した。得られた樹脂を圧縮成形機(株式会社神藤金属工業所製、型式AWFA.50)を用いて、温度120℃、圧力10MPaで圧縮成形することにより、厚さ0.2mmのプレスシートを得た。
【0046】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
実施例2
アクリロイル基含有イソシアネート化合物(カレンズMOI)の添加量を10.8gとした以外は、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)と同様の方法で製造し、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)を得た。
【0048】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0049】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例3
アクリロイル基含有イソシアネート化合物(カレンズMOI)の添加量を18.9gとした以外は、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)と同様の方法で製造し、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)を得た。
【0051】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0052】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
アクリロイル基含有イソシアネート化合物(カレンズMOI)の代わりにアクリロイル基含有イソシアネート化合物(カレンズAOI、昭和電工株式会社製)を使用した以外は、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)と同様の方法で製造し、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)を得た。
【0054】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0055】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
実施例5
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部、ラジカル重合型光開始剤(B1)1重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)97重量部、ラジカル重合型光開始剤(B1)3重量部とした以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0057】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
実施例6
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)のかわりにエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C2)を使用し、アクリロイル基含有イソシアネート化合物(カレンズMOI)の添加量を5.8gとした以外は、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)と同様の方法で製造し、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A5)を得た。
【0059】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A5)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0060】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
実施例7
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)のかわりにエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C3)を使用し、アクリロイル基含有イソシアネート化合物(カレンズMOI)の添加量を10.8gとした以外は、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)と同様の方法で製造し、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A6)を得た。
【0062】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A6)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0063】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0064】
実施例8
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)のかわりにエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C4)を使用し、アクリロイル基含有イソシアネート化合物(カレンズMOI)の添加量を27gとした以外は、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)と同様の方法で製造し、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A7)を得た。
【0065】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A7)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0066】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0067】
実施例9
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)のかわりにエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C4)を使用し、アクリロイル基含有イソシアネート化合物(カレンズMOI)の添加量を70gとした以外は、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)と同様の方法で製造し、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A8)を得た。
【0068】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A8)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0069】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
比較例1
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C1)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0071】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0072】
得られたプレスシートは、耐熱性、機械的強度に劣るものであった。
【0073】
比較例2
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C2)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0074】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
得られたプレスシートは、耐熱性、機械的強度に劣るものであった。
【0076】
比較例3
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99重量部の代わりに、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(C3)99重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でプレスシートを得た。
【0077】
得られたプレスシートを用いて、耐熱性、接着性、機械的強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
得られたプレスシートは、耐熱性、機械的強度に劣るものであった。