特許第5966785号(P5966785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5966785ガラス成形用支持リング、ガラス曲げ成形装置、及びガラス曲げ成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966785
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ガラス成形用支持リング、ガラス曲げ成形装置、及びガラス曲げ成形方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/03 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   C03B23/03
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-197744(P2012-197744)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-51417(P2014-51417A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高津 耕治
(72)【発明者】
【氏名】小川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 徹
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−149934(JP,U)
【文献】 特開平11−263634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00−35/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度に加熱されたガラス板の周縁を支持し、該ガラス板を下に凸に形成された上型モールドに押し付けて曲げ成形すべく該上型モールドに対して相対的に近づく方向に移動されることでプレス成形を行う、前記ガラス板の周縁端よりも外側に位置する外縁端を有するガラス成形用支持リングであって、
該ガラス成形用支持リングと前記上型モールドとが前記ガラス板をプレスする際に、前記ガラス板の周縁端から第一の所定距離だけ内側までを占める第一の範囲に接触することなく、前記第一の範囲の内縁端から第二の所定距離だけ内側までを占める第二の範囲に接触する接触部と、
前記接触部を除いた非接触部と、
を備え、
前記非接触部は、前記接触部に対して外側に隣接し、前記ガラス板に接触しない外側非接触部を有し、
前記接触部の幅が、前記非接触部の幅よりも小さいことを特徴とするガラス成形用支持リング。
【請求項2】
前記外側非接触部と前記ガラス板との間に、切欠きが形成される請求項1記載のガラス成形用支持リング。
【請求項3】
前記非接触部は
記接触部に対して内側に隣接し、前記ガラス板に接触しない内側非接触部を備える請求項1又は2記載のガラス成形用支持リング。
【請求項4】
所定温度に加熱されたガラス板の周縁を支持し、該ガラス板を下に凸に形成された上型モールドに押し付けて曲げ成形すべく該上型モールドに対して相対的に近づく方向に移動されることでプレス成形を行う、前記ガラス板の周縁端よりも外側に位置する外縁端を有するガラス成形用支持リングであって、
該ガラス成形用支持リングと前記上型モールドとが前記ガラス板をプレスする際に、前記ガラス板の周縁端から第一の所定距離だけ内側までを占める第一の範囲に接触することなく、前記第一の範囲の内縁端から第二の所定距離だけ内側までを占める第二の範囲に接触する接触部と、
前記接触部を除いた非接触部と、
を備え、
前記非接触部は、
前記接触部に対して外側に隣接し、前記ガラス板に接触しない外側非接触部と、
前記接触部に対して内側に隣接し、前記ガラス板に接触しない内側非接触部と、
を備えることを特徴とするガラス成形用支持リング。
【請求項5】
前記内側非接触部と前記ガラス板との間に、切欠きが形成される請求項3又は4記載のガラス成形用支持リング。
【請求項6】
前記接触部は、前記上型モールドの下面に対向する接触面を有するように形成されている請求項3乃至5の何れか一項記載のガラス成形用支持リング。
【請求項7】
前記外側非接触部は、前記接触部の前記接触面が水平に対してなす角度よりも小さな水平に対する角度をなす面を有するように形成されている請求項記載のガラス成形用支持リング。
【請求項8】
前記内側非接触部は、前記接触部の前記接触面が水平に対してなす角度よりも大きな水平に対する角度をなす面を有するように形成されている請求項6又は7記載のガラス成形用支持リング。
【請求項9】
前記ガラス板の前記第二の範囲に接触する前記接触部の平面視での幅と、前記内側非接触部の平面視での幅と、の比率は、3:1〜1:3である請求項乃至の何れか一項記載のガラス成形用支持リング。
【請求項10】
前記ガラス板の前記第二の範囲に接触する前記接触部の平面視での幅は、9mm未満である請求項記載のガラス成形用支持リング。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項記載のガラス成形用支持リングと、
前記上型モールドと、
を備えるガラス曲げ成形装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項記載のガラス成形用支持リングと前記上型モールドとを用いて、ガラス板をプレスにより曲げ成形するガラス曲げ成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス成形用支持リング、ガラス曲げ成形装置、及びガラス曲げ成形方法に係り、特に、所定温度に加熱されたガラス板の周縁をガラス成形用支持リングで支持し、そのガラス板をプレスにより曲げ成形するうえで好適なガラス成形用支持リング、ガラス曲げ成形装置、及びガラス曲げ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉において軟化点付近まで加熱されたガラス板を曲げ成形する曲げガラス曲げ成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このガラス曲げ成形装置は、軟化点付近まで加熱されたガラス板の周縁を支持するガラス成形用支持リングと、下に凸状に形成された上型モールドと、を備えている。ガラス成形用支持リングに支持されたガラス板は、そのガラス成形用支持リングが上型モールドに対して相対的に近づく方向に移動されることにより上型モールドに押し付けられて、その上型モールドの凸状に沿った形状に曲げ成形される。
【0003】
また、上記のガラス曲げ成形装置において、ガラス成形用支持リングは、ガラス板が載置された際に、そのガラス板を、そのガラス板の周縁端部と線状に接触して支持し、又は、その周縁端部よりも内側の部分と面状に接触して支持して、プレスにより曲げ成形する。例えば、上記した特許文献1の図3及び図4には、ガラス板の周縁端部と接触する第一の接触部材と、そのガラス板の周縁端部よりも内側の部分に接触する第二の接触部材と、を有し、第一の接触部材が第二の接触部材よりも熱伝導率の小さい部材であるガラス成形用支持リングが開示されている。また、上記した特許文献1の図6及び図7には、ガラス板の周縁端部よりも内側の部分に接触する一方で、そのガラス板の周縁端部には接触しないようにリング本体の上面が平坦に切除されたガラス成形用支持リングが開示されている。
【0004】
かかる構造においては、特に加熱炉外でガラス成形用支持リングに支持されるガラス板が曲げ成形される際に、そのガラス成形用支持リングへの伝熱によってガラス板の周縁端部に比べてその内側部分が急冷され易い。このため、ガラス板の周縁端部の温度低下がその内側部分の温度低下に比べて急激でないので、ガラス板の周縁端部にクラックや欠け割れが発生するのを抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−263634
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1記載のガラス曲げ成形装置では、ガラス成形用支持リングとして、ガラス板の周縁端部に接触する第一の接触部材が依然として存在する。このため、特に加熱炉外で、ガラス板の周縁端部がガラス成形用支持リングに接触して支持されることによって冷却される事態は発生するので、そのガラス板の周縁端部に生じるクラックや欠け割れを抑制するのに不十分であった。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、ガラス板の周縁端部に発生し得るクラックや欠け割れの抑止効果を向上させたガラス成形用支持リング、ガラス曲げ成形装置、及びガラス曲げ成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、所定温度に加熱されたガラス板の周縁を支持し、該ガラス板を下に凸に形成された上型モールドに押し付けて曲げ成形すべく該上型モールドに対して相対的に近づく方向に移動されることでプレス成形を行う、前記ガラス板の周縁端よりも外側に位置する外縁端を有するガラス成形用支持リングであって、該ガラス成形用支持リングと前記上型モールドとが前記ガラス板をプレスする際に、前記ガラス板の周縁端から第一の所定距離だけ内側までを占める第一の範囲に接触することなく、前記第一の範囲の内縁端から第二の所定距離だけ内側までを占める第二の範囲に接触する接触部と、前記接触部を除いた非接触部と、を備え、前記非接触部は、前記接触部に対して前記支持リングの外径側に隣接し、前記ガラス板に接触しない外側非接触部を有し、前記接触部の幅が、前記非接触部の幅よりも小さいことを特徴とするガラス成形用支持リングにより達成される。
【0009】
この態様の発明において、ガラス成形用支持リングは、所定温度に加熱されたガラス板の周縁端から第一の所定距離だけ内側までの第一の範囲には接触せず、その第一の範囲の内縁端から第二の所定距離だけ内側までの第二の範囲に接触する。かかる構成においては、ガラス成形用支持リングによるガラス板の支持時に、そのガラス板の周縁端部の第一の範囲がガラス成形用支持リングに接触しないので、そのガラス板の第一の範囲の温度低下が第二の範囲の温度低下に比べて緩やかに生じる。また、ガラス成形用支持リングとガラス板とが接触する面積が小さいため、第二の範囲の温度低下が従来に比べて緩やかになる。このため、本発明によれば、ガラス板の周縁端部に発生し得るクラックや欠け割れの抑止効果を向上させることができる。
【0010】
尚、上記したガラス成形用支持リングにおいて、前記非接触部は、前記接触部に対して外側に隣接し、前記ガラス板に接触しない外側非接触部と、前記接触部に対して内側に隣接し、前記ガラス板に接触しない内側非接触部と、を備えてもよい。
【0011】
この態様の発明においては、ガラス成形用支持リングが、ガラス板に接触する接触部と、ガラス板に接触しない外側非接触部及び内側非接触部と、備える。かかる構成においては、ガラス成形用支持リングとガラス板との接触面積を小さく制限しつつ、ガラス成形用支持リングがガラス板を支持するうえでの強度を確保することができる。
【0012】
また、上記したガラス成形用支持リングにおいて、前記接触部は、前記上型モールドの下面に対向する接触面を有するように形成されてもよい。
【0013】
この態様の発明においては、ガラス板が、ガラス成形用支持リングの接触部と上型モールドの下面とでプレスされることによって、所望の形状に曲げ成形される。
【0014】
また、上記したガラス成形用支持リングにおいて、前記外側非接触部は、前記接触部の前記接触面が水平に対してなす角度よりも小さな水平に対する角度をなす面を有するように形成されてもよい。
【0015】
また、上記したガラス成形用支持リングにおいて、前記内側非接触部は、前記接触部の前記接触面が水平に対してなす角度よりも大きさ水平に対する角度をなす面を有するように形成されてもよい。
【0016】
また、上記したガラス成形用支持リングにおいて、前記ガラス板の前記第二の範囲に接触する前記接触部の平面視での幅と、前記内側非接触部の平面視での幅と、の比率は、3:1〜1:3であってもよい。
【0017】
また、上記したガラス成形用支持リングにおいて、前記ガラス板の前記第二の範囲に接触する前記接触部の平面視での幅は、9mm未満であることが好ましく、5mm以下であってもよい。
【0018】
また、前記内側非接触部の平面視での幅は、3mm〜30mmであってもよい。
【0019】
また、上記したガラス成形用支持リングにおいて、前記接触部の平面視での幅と前記外側非接触部の平面視での幅と前記内側非接触部の平面視での幅との合算値は、15mm〜60mmであってもよい。
【0020】
尚、上記の目的は、上記したガラス成形用支持リングと、前記上型モールドと、を備えるガラス曲げ成形装置により達成される。
【0021】
更に、上記の目的は、上記したガラス成形用支持リングと前記上型モールドとを用いて、ガラス板をプレスにより曲げ成形するガラス曲げ成形方法により達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガラス板の周縁端部に発生し得るクラックや欠け割れの抑止効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例であるガラス成形用支持リングを備えるガラス曲げ成形装置の構成図である。
図2】本実施例においてガラス板を支持するガラス成形用支持リングの斜視図である。
図3】本実施例のガラス成形用支持リングとガラス板と上型モールドとの関係を表した図である。
図4】本実施例のガラス成形用支持リングと対比されるガラス成形用支持リングとガラス板との関係を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本発明に係るガラス成形用支持リング、ガラス曲げ成形装置、及びガラス曲げ成形方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施例であるガラス成形用支持リング10を備えるガラス曲げ成形装置12の構成図を示す。本実施例のガラス曲げ成形装置12は、ガラス成形用支持リング10と、上型モールド14と、を備えており、ガラス成形用支持リング10及び上型モールド14を用いて、例えば、自動車や鉄道などの輸送機器のフロントガラスや建築用ガラスなどに使用されるガラス板16を、要求される所望形状に合わせて曲げ成形する装置である。
【0026】
本実施例において、ガラス曲げ成形装置12の搬送方向上流側には、加熱炉20が設けられている。加熱炉20には、所定の形状に切り出された平板状のガラス板16が水平に搬入される。加熱炉20は、ヒータを有しており、そのヒータを用いて平板状のガラス板16を曲げ成形可能な温度(軟化点付近;例えば600℃〜700℃程度)まで加熱する。加熱炉20で加熱されたガラス板16は、ローラコンベア22によってガラス曲げ成形装置12まで搬送される。
【0027】
ガラス成形用支持リング10は、加熱炉20の出口側の炉外に設けられている。ガラス成形用支持リング10は、ローラコンベア22によって搬送されるガラス板16の搬送面の下方に配置されており、ガラス板16を下方から支持する下型である。ガラス成形用支持リング10は、ガラス板16の周縁を支持するようにガラス板16の輪郭形状に沿って環状に形成される。尚、ガラス成形用支持リング10の形状は、ガラス板16の全周を支持するものであってもよいし、また、その全周のうちの一部のみを支持するものであってもよい。また、ガラス成形用支持リング10の形状は、搬送方向又はその搬送方向に直交する方向に曲げ成形されるガラス板16の所望湾曲形状に対応可能なものである。
【0028】
ローラコンベア22によって搬送されたガラス板16は、ガラス成形用支持リング10上に載置される。ガラス成形用支持リング10は、昇降装置24によりガラス板16の搬送面に対して上方へ移動することが可能である。すなわち、昇降装置24は、ガラス成形用支持リング10を上方へ移動させることが可能である。ガラス成形用支持リング10上に載置されたガラス板16は、ガラス成形用支持リング10の上昇によりそのガラス成形用支持リング10に支持されながら上昇移動する。
【0029】
また、上型モールド14は、ガラス成形用支持リング10とは逆にガラス板16の搬送面の上方に配置されており、そのガラス成形用支持リング10に対してガラス板16の搬送面を挟んで対向配置されている。上型モールド14は、ガラス板16の全面に対応してガラス板16の所望形状に合致した下面形状を有し、下に凸状に形成された雄型である。上型モールド14の下面形状は、搬送方向又はその搬送方向に直交する方向に曲げ成形されるガラス板16の所望湾曲形状に対応可能なものである。
【0030】
ガラス成形用支持リング10と上型モールド14とは、ガラス板16の所望湾曲形状を実現させるための一対の成形プレス装置である。ガラス成形用支持リング10及び上型モールド14は、互いに略同一の成形面を有するように対向して形成されており、ガラス板16の板厚と所望形状とから要求されたものに合致するように形成されている。
【0031】
尚、ガラス成形用支持リング10及び上型モールド14は、一対の成形プレス装置が搬送方向に二組以上並列に配置される場合は、ガラス板16の予備形状後の成形量が本成形後の本形状の成形量に対して所定割合(例えば、20%〜90%)となるように予備成形を行う搬送方向上流側の成形プレス装置のみに適用することとしてもよく、また、その本成形を行う搬送方向下流側の成形プレス装置のみに適用することとしてもよく、更には、すべての成形プレス装置に適用することとしてもよい。
【0032】
上型モールド14は、ガラス板16の搬送面に対して固定されており、下方及び上方に移動することは不可能である。上記したガラス成形用支持リング10は、昇降装置24により、支持するガラス板16が上型モールド14との間でプレスされるまで上方へ移動することが可能である。ガラス成形用支持リング10に支持されたガラス板16は、昇降装置24による上昇によって上型モールド14の下面に押し付けられて、その下面の凸形状に沿った形状に曲げ成形される。
【0033】
尚、ガラス曲げ成形装置12の搬送方向下流側には、曲げ成形されたガラス板16を冷却する風冷強化装置が設けられてもよい。この場合、ガラス曲げ成形装置12のガラス成形用支持リング10と上型モールド14とにより曲げ成形されたガラス板16は、風冷強化装置へ搬送され、その後、冷却されて風冷強化される。
【0034】
図2は、本実施例においてガラス板16を支持するガラス成形用支持リング10の斜視図を示す。尚、図2においては、ガラス成形用支持リング10の一部が示されている。また、図3は、本実施例のガラス成形用支持リング10とガラス板16と上型モールド14との関係を表した図を示す。尚、図3には、ガラス成形用支持リング10、上型モールド14、又はガラス板16の一部を切断した際の断面図が示されている。
【0035】
本実施例において、ガラス成形用支持リング10は、鉛直面で切断された際に上面が水平面に対してなす角度(テーパ角度)が位置に応じて変化する形状を有している。すなわち、ガラス成形用支持リング10は、上記のテーパ角度が比較的鋭角であるすなわち小さい第一リング部30と、上記のテーパ角度が中程度の角度である第二リング部32と、上記のテーパ角度が比較的鈍角であるすなわち大きい第三リング部34と、を有している。第一リング部30と第二リング部32と第三リング部34とは、外径側から内径側にかけてその順に設けられている。
【0036】
第一リング部30は、第二リング部32に対して外側(外径側)に隣接している。また、第三リング部34は、第二リング部32に対して内側(内径側又は中心側)に隣接している。第一リング部30と第二リング部32と第三リング部34とは、一体で形成されている。第一リング部30は、第二リング部32の上面が水平面に対してなすテーパ角度よりも小さな(鋭角となる)、水平面に対するテーパ角度をなす上面を有するように形成されている。第二リング部32は、上型モールド14の下面に対向する上面を有するように形成されている。すなわち、第二リング部32の上面の水平に対するテーパ角度と上型モールド14の下面の水平に対するテーパ角度とは、互いに略同じである。また、第三リング部34は、第二リング部32の上面が水平面に対してなすテーパ角度よりも大きな(鈍角となる)、水平面に対するテーパ角度をなす上面を有するように形成されている。
【0037】
ローラコンベア22によってガラス曲げ成形装置12に搬送されたガラス板16は、ガラス成形用支持リング10上に載置される。ガラス板16は、ガラス成形用支持リング10の内縁端(具体的には、第三リング部34の内縁端)により囲まれる領域よりも大きく、かつ、ガラス成形用支持リング10の外縁端(具体的には、第一リング部30の外縁端)により囲まれる領域よりも小さな面積(大きさ)を有している。すなわち、ガラス成形用支持リング10は、内縁端により環状に囲まれる領域がガラス板16の面積(大きさ)よりも小さく、かつ、外縁端により環状に囲まれる領域がガラス板16の面積(大きさ)よりも大きくなるように形成されている。
【0038】
ガラス板16は、ガラス成形用支持リング10上に載置される際、第二リング部32の上面に接触する一方、第一リング部30及び第三リング部34の上面には接触しない。すなわち、ガラス成形用支持リング10は、第二リング部32でガラス板16に接触する接触面を形成する一方、第一リング部30及び第三リング部34ではガラス板16に接触しない。ガラス成形用支持リング10によるガラス板16の支持は、そのガラス板16が第二リング部32に接触することにより実現される。
【0039】
尚、第二リング部32の上面がなす角度は、図3に破線で示すモールドオフセットラインに略一致する。モールドオフセットラインは、上型モールド14の下面(押圧面)の形状を基準として、プレスされるガラス板16の板厚や対向する上下型の曲率及び位置などから決定されるオフセット量を有している。
【0040】
ガラス板16のうちその周縁端36から第一の所定距離X1だけ内側までを占める範囲(以下、最外範囲と称す。)S1は、ガラス成形用支持リング10の第二リング部32に接触しない。ガラス板16がガラス成形用支持リング10の第二リング部32に接触する部位は、上記した最外範囲S1の内縁端から第二の所定距離X2だけ内側までを占める範囲(以下、接触範囲と称す。)S2である。すなわち、ガラス板16は、その周縁端36から第一の所定距離X1だけ内側に位置する部位から、第二の所定距離X2だけ内側に位置する部位までの帯状に形成された接触範囲S2で、ガラス成形用支持リング10の第二リング部32に接触する。接触範囲S2の帯部の幅は、第二の所定距離X2に一致する。
【0041】
尚、第一の所定距離X1は、ガラス板16が接触範囲S2でガラス成形用支持リング10に支持されてそのガラス成形用支持リング10と上型モールド14とにプレスされることにより曲げ成形される際に、ガラス板16が周縁で下方に垂れ下がる(いわゆる、逆反りする)ことなく所望の形状となるのに必要十分な距離である。また、第二の所定距離X2は、ガラス板16がガラス成形用支持リング10に適切に支持されるのに必要十分な距離に設定されている。
【0042】
ガラス成形用支持リング10の、第一リング部30の平面視での幅L1は、9mm〜30mmであり、好ましくは15mm〜20mmである。第二リング部32の平面視での幅L2は、9mm未満であり、より狭いほどガラス成形用支持リング10の接触による脱熱を小さくできるので好ましい。また、第三リング部34の平面視での幅L3は、3mm〜30mmであり、好ましくは3mm〜15mm程度である。
【0043】
ガラス成形用支持リング10の接触部である第二リング部32の平面視での幅L2は、非接触部である第一リング部30の平面視での幅L1と、非接触部である第三リング部34の平面視での幅L3と、の合算よりも小さいことが好ましく、その合算の1/2よりも小さいことが更に好ましい。すなわち、第二リング部32の平面視での幅L2は、ガラス成形用支持リング10の接触部と非接触部とを合算した全幅の50%未満であることが好ましく、その全幅の25%(尚、この数字は、上記したL2がL1とL3との合算の1/2よりも小さいことの言い換えであれば、「33.3・・・%」であると思いますが・・・?)未満であることが更に好ましい。これは、ガラス板16と接触するガラス成形用支持リング10の接触部の範囲が小さくなり、脱熱を抑制しながらプレス型としての強度を確保できるためである。
【0044】
また、第一リング部30のうちガラス板16の最外範囲S1に対応する範囲(具体的には、ガラス板16の最外範囲S1が上方からの投影により占められる範囲)の平面視での幅L1−1は、1mm〜10mmであり、好ましくは1mm〜5mmである。
【0045】
第二リング部32の平面視での幅L2と、第一リング部30のうちガラス板16の最外範囲S1に対応する範囲の平面視での幅L1−1との比率は、3:1〜1:1であることが好ましく、2:1であることがさらに好ましい。
【0046】
第三リング部34の平面視での幅L3と、第二リング部32の平面視での幅L2との比率は、3:1〜1:3であることが好ましく、2:1〜1:2であることがさらに好ましい。
【0047】
尚、ガラス成形用支持リング10の全幅、すなわち、第一リング部30の平面視での幅L1と、第二リング部32の平面視での幅L2と、第三リング部34の平面視での幅L3と、の合算値は、15mm〜60mmであり、好ましくは、20mm〜40mmである。
【0048】
このように本実施例のガラス曲げ成形装置12によれば、周縁がガラス成形用支持リング10に支持されるガラス板16は、周縁端36近傍の最外範囲S1でガラス成形用支持リング10に接触しない一方、その最外範囲S1から内側にある接触範囲S2でガラス成形用支持リング10に接触する。
【0049】
ガラス板16は、ガラス成形用支持リング10に接触する際、軟化点近傍まで加熱されている。また、ガラス成形用支持リング10は、上述の如く、加熱炉20の炉外に設けられているので、そのガラス成形用支持リング10自体の温度はガラス板16の温度に比べて極めて低い。このため、加熱炉20で軟化点近傍に加熱されたガラス板16がガラス成形用支持リング10に支持されていると、ガラス板16からガラス成形用支持リング10の第二リング部32へ熱が伝わり易いので、ガラス板16において最外範囲S1よりも接触範囲S2が冷却され易くなる。
【0050】
従って、本実施例のガラス曲げ成形装置12によれば、ガラス板16がガラス成形用支持リング10に支持されている際にそのガラス板16の最外範囲S1の温度低下が接触範囲S2の温度低下に比べて緩やかに生じる。このため、本実施例のガラス曲げ成形装置12によれば、ガラス成形用支持リング100がガラス板16を支持する際にその最外範囲S1にも接触する図4に示す如き構成と異なり、ガラス板16の周縁端36近傍の内側に発生するテンションを抑制することができるので、そのガラス板16の周縁端部に発生し得るクラックや欠け割れを抑止することができる。
【0051】
また、本実施例ガラス曲げ成形装置12においては、ガラス成形用支持リング10が、ガラス板16と接触する第二リング部32以外に、ガラス板16に接触しない、その第二リング部32と一体をなしてその第二リング部32に隣接する第一リング部30及び第三リング部34を有する。ガラス成形用支持リング10の外縁部である第一リング部30は、ガラス板16が接触する第二リング部32に隣接しつつ、その第二リング部32のテーパ角度に比べて小さなテーパ角度をなしている。また、ガラス成形用支持リング10の内縁部である第三リング部34は、ガラス板16が接触する第二リング部32に隣接しつつ、その第二リング部32のテーパ角度に比べて大きなテーパ角度をなしている。
【0052】
かかる構成においては、ガラス成形用支持リング10の第一リング部30とガラス板16との間及びガラス成形用支持リング10の第三リング部34とガラス板16との間にそれぞれ、全周に亘って隙間(切欠き)が形成されるので、ガラス成形用支持リング10とガラス板16との接触面積を小さく制限させる一方で、ガラス成形用支持リング10を内径側から外径側にかけて幅広のリング形状に形成することができる。ガラス成形用支持リング10が径方向で幅広に形成されていれば、そのガラス成形用支持リング10がガラス板16を支持するうえでの安定性が増大する。従って、本実施例によれば、ガラス成形用支持リング10とガラス板16との接触面積を小さく制限しつつ、ガラス成形用支持リング10がガラス板16を支持するうえでの強度を確保することが可能である。
【0053】
ところで、上記の実施例においては、第一の所定距離X1が特許請求の範囲に記載した「第一の所定距離」に、ガラス板16の最外範囲S1が特許請求の範囲に記載した「第一の範囲」に、第二の所定距離X2が特許請求の範囲に記載した「第二の所定距離」に、ガラス板16の接触範囲S2が特許請求の範囲に記載した「第二の範囲」に、第二リング部32が特許請求の範囲に記載した「接触部」に、第二リング部32の上面が特許請求の範囲に記載した「接触面」に、第一リング部30が特許請求の範囲に記載した「外側非接触部」に、第三リング部34が特許請求の範囲に記載した「内側接触部」に、それぞれ相当している。
【0054】
尚、上記の実施例においては、第二リング部(接触部)32とガラス板16とが面状に接触しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス板16が、第二リング部32の稜線部などの一部と線状又は部分的に接触してもよい。
【0055】
また、上記の実施例においては、ガラス成形用支持リング10の、ガラス板16が接触する第二リング部32が、水平面に対して上面がなすテーパ角度が一定であるようにすなわち上面の断面形状が平面状になるように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス板16の所望形状に合わせて断面形状が弧状又は弓状になるように形成されるものであってもよい。
【0056】
また、上記の実施例においては、ガラス成形用支持リング10が、テーパ角度が比較的鋭角である第一リング部30と、テーパ角度が中程度の角度である第二リング部32と、テーパ角度が比較的鈍角である第三リング部34と、からなり、それらのリング部30〜34が外径側から内径側にかけてその順で隣接して配置されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス成形用支持リング10が、第三リング部34の存在しない、第一リング部30と第二リング部32とのみからなるものであってもよいし、また、第一リング部30の存在しない、第二リング部32と第三リング部34とのみからなるものであってもよい。また、ガラス成形用支持リング10が、第一リング部30及び第三リング部34の存在しない、第二リング部32のみからなるものであってもよい。
【0057】
また、上記の実施例においては、ガラス曲げ成形装置12が、昇降装置24によりガラス板16の搬送面に対して上方へ移動される下型リングであるガラス成形用支持リング10と、下方及び上方へ移動不可能な上型モールド14と、を備えているが、本発明はこれに限定されるものではなく、下型リングであるガラス成形用支持リング10と上型モールド14とが、相対的に近づく方向に移動されるものであれば十分である。すなわち、下型リングであるガラス成形用支持リング10が昇降せず、かつ、上型モールド14が昇降装置によりガラス板16の搬送面に対して下方へ移動されるものであってもよい。また、ガラス成形用支持リング10と上型モールド14とが共に近づく方向に移動されるものであってもよい。
【0058】
更に、上記の実施例においては、ガラス曲げ成形装置12のガラス成形用支持リング10及び上型モールド14が、加熱炉20の炉外に設けられるが、その加熱炉20の炉内に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 ガラス成形用支持リング
12 ガラス曲げ成形装置
14 上型モールド
16 ガラス板
20 加熱炉
24 昇降装置
30 第一リング部
32 第二リング部
34 第三リング部
36 周縁端
S1 最外範囲
S2 接触範囲
図1
図2
図3
図4