【文献】
フュームドシリカ アエロジル(登録商標)の基本特性 Technical Bulletin Fine Particles 11 ,日本アエロジル株式会社,23,62,63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の非水電解質二次電池用活物質は、珪素粒子又は珪素化合物粒子と、その表面に付着した球状シリカ微粒子とを有する、二次粒子を形成するシリカ付着粒子からなり、前記球状シリカ微粒子の平均粒子径が5nm〜1.00μm、粒度分布D
90/D
10の値が3以下であり、平均円形度が0.8〜1であることを特徴とするものである。
【0016】
[珪素粒子又は珪素化合物粒子]
核粒子となる珪素粒子又は珪素化合物粒子は、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
珪素については特に制限されることはなく、単結晶珪素、多結晶珪素、アモルファス珪素のいずれも使用できる。また、金属不純物濃度が各々1ppm以下の高純度珪素粒子(特に単結晶珪素粒子、多結晶粒子)、塩酸で洗浄したのちフッ化水素酸及びフッ化水素酸と硝酸の混合物で処理することで金属不純物を取り除いたケミカルグレードの珪素粒子、冶金的に精製された金属珪素を粒子状に加工したものを用いることができる。
【0017】
珪素化合物としては、酸化珪素等の珪素酸化物、珪素窒化物、ケイ酸塩等が挙げられ、さらにAl、Ge等の金属を添加した固溶体合金、Ti、Co等の金属を添加した珪化物等を用いることができる。
【0018】
珪素粒子又は珪素化合物粒子の、レーザー回折散乱式粒度分布における累積50%体積径(D
50):平均粒子径は0.01〜30μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましく、0.5〜10μmがさらに好ましい。D
50が0.01μm未満だと、製造方法が限定され高コストになるおそれがあり、30μmを超えると負極成型体をプレスした際に集電体を貫通するおそれがある。なお、レーザー回折散乱式粒度分布における累積50%体積径(D
50)とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布において、累積50体積%に相当する粒子径をいう。
【0019】
非水電解質二次電池活物質として、珪素粒子又は珪素化合物粒子を用いるには、粉砕して粒度を調整したものを使用する。レーザー回折散乱式粒度分布における累積50%体積径(D
50)は0.01〜30μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましく、0.5〜10μmがさらに好ましい。D
50が0.01μm未満だと、製造方法が限定され高コストになるおそれがあり、比表面積が大きく、負極膜密度が小さくなりすぎる場合がある。30μmを超えると、負極成型体をプレスした際に集電体を貫通するおそれがある。なお、レーザー回折散乱式粒度分布における累積50%体積径(D
50)とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布において、累積50体積%に相当する粒子径をいう。
【0020】
また、窒素吸着1点法で測定したBET比表面積が、0.5〜20m
2/gが好ましく、1〜10m
2/gがより好ましい。比表面積が0.5m
2/g未満であると、酸化珪素製造時の反応性が低下するおそれがあり、20m
2/gを超えると製造コストが高くつき不利になるおそれがある。
【0021】
[球状シリカ微粒子]
珪素粒子の表面に付着している球状シリカ微粒子は、その平均粒子径が通常5nm〜1.00μmであり、10〜300nmが好ましく、30〜200nmがより好ましく、30〜100nmがさらに好ましい。この粒子径が5nmより小さいと、珪素粒子及び二酸化珪素粒子の混合物の凝集が激しく、取り扱いがしにくい場合があり、一方、1.00μmよりも大きいと、珪素粒子に良好な流動性や充填性を付与できないおそれがある。なお、本発明において、球状シリカ微粒子の平均粒子径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布において、体積基準メジアン径をいう。
【0022】
粒度分布の指標であるD
90/D
10の値が3以下であり、2.9以下がより好ましい。D
90、D
10はいずれもレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布において、小さい側から累積体積10%となる粒子径をD
10、小さい側から累積体積90%となる粒子径をD
90という。このD
90/D
10が3以下であるとは、その粒度分布はシャープであることを示すものである。このように、粒度分布がシャープな粒子であると、珪素粒子の流動性を制御することが容易になる。
【0023】
本発明において、「球状」とは真球だけでなく、若干歪んだ球も含み、平均円形度が0.8〜1の範囲にあるものをいい、0.92〜1が好ましい。なお、円形度とは、(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)であり、電子顕微鏡等で得られる粒子像を画像解析することにより測定することができる。また、良好な流動性の付与の点から、一次粒子が好ましい。
【0024】
球状シリカ微粒子としては、本発明の効果の点から、疎水性球状シリカ微粒子が好ましい。疎水性球状シリカ微粒子としては、例えば、4官能性シラン化合物の加水分解・縮合によって得られる、小粒径ゾルゲル法シリカ原体に、特定の疎水化表面処理を行い、疎水化処理後の微粒子が、シリカ原体の一次粒子を維持した小粒径であり、凝集しておらず、良好な流動性を付与可能な疎水性球状シリカ微粒子が得られるものである。
【0025】
より具体的には、4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はそれらの組み合わせを、加水分解・縮合することによって得られた、SiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子の表面に、R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。)を導入する工程と、次いでR
23SiO
1/2単位(式中、R
2は同一又は異種の、置換又は非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)を導入する工程とを含む疎水化処理をして得られた疎水性球状シリカ微粒子が好ましい。このような疎水化処理をして得られた疎水性球状シリカ微粒子の構造は、非晶質(アモルファス)な疎水性の真球状に近いシリカ微粒子である。
【0026】
本発明において、親水性球状シリカ微粒子が「SiO
2単位からなる」とは、この微粒子は、基本的にSiO
2単位から構成されているが、少なくとも表面に通常知られているようにシラノール基を有することを意味する。また、場合によっては、原料である一般式(I)で表わされる4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物(以下、合わせて4官能性シラン化合物等と略す場合がある。)に由来する加水分解性基(ヒドロカルビルオキシ基)が、一部シラノール基に転化されずに若干量そのまま微粒子表面や内部に残存していてもよいことを意味する。
【0027】
以下、疎水性球状シリカ微粒子の製造方法の一つについて以下に詳細に説明する。
<製造方法(A)>
(A1):親水性球状シリカ微粒子の調製工程
(A2):3官能性シラン化合物による第1疎水化表面処理工程
(A3):濃縮工程
(A4):1官能性シラン化合物による第2疎水化表面処理工程
【0028】
(A1):親水性球状シリカ微粒子の調製工程
下記一般式(I)
Si(OR
3)
4 (I)
(式中、R
3は同一又は異種の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)
で表わされる4官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物又はこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒と水との混合溶媒中で加水分解・縮合することによって、SiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子が分散した混合溶媒分散液を得る。
【0029】
一般式(I)中、R
3は同一又は異種の炭素原子数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
3で表わされる1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0030】
一般式(I)で表わされる4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられ、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがより好ましい。粒子径の小さい球状シリカ微粒子を得るためには、テトラアルコキシシランのアルコキシ基炭素原子数が小さいシランを用いることが好ましい。
【0031】
4官能性シラン化合物の部分加水分解生成物としては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート等が挙げられる。
【0032】
親水性有機溶媒としては、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物と、この部分加水分解縮合生成物と、水とを溶解するものであれば特に制限されず、例えば、アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。中でも、アルコール類、セロソルブ類が好ましく、アルコール類がより好ましい。
【0033】
アルコール類としては、下記一般式(V):
R
5OH (V)
(式中、R
5は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)
で表わされるアルコールが挙げられる。
【0034】
一般式(V)中、R
5は炭素原子数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
5としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。一般式(V)で表わされるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、メタノール、エタノールが好ましい。アルコールの炭素原子数が増えると、得られる球状シリカ微粒子の粒子径が大きくなるため、粒子径の小さい球状シリカ微粒子を得るためには、メタノールが好ましい。
【0035】
混合溶媒中の水の量は、4官能性シラン化合物等のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して、0.5〜5モルであることが好ましく、0.6〜2モルであることがより好ましく、0.7〜1モルであることが特に好ましい。水に対する親水性有機溶媒の比率は、質量比で0.5〜10が好ましく、3〜9がより好ましく、5〜8がさらに好ましい。このとき、親水性有機溶媒の量を多くすることで、得られる球状シリカ微粒子の粒子径が小さくなる。
【0036】
塩基性物質としては、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。中でも、アンモニア、ジエチルアミンが好ましく、アンモニアがより好ましい。塩基性物質は、所要量を水に溶解した後、得られた水溶液(塩基性)を、上記親水性有機溶媒と混合すればよい。
【0037】
塩基性物質の量は、4官能性シラン化合物等のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して、0.01〜2モルであることが好ましく、0.02〜0.5モルであることがより好ましく、0.04〜0.12モルであることが特に好ましい。このとき、塩基性物質の量を少なくすることにより、得られる球状シリカ微粒子の粒子径が小さくなる。
【0038】
4官能性シラン化合物等の加水分解・縮合は、公知の方法、つまり塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水との混合溶媒に、4官能性シラン化合物等を添加することにより得ることができる。反応温度5〜60℃、反応時間0.5〜10時間が好ましい。その加水分解・縮合温度を高くすることにより、得られる球状シリカ微粒子の粒子径が小さくなる。
【0039】
加水分解・縮合で得られたSiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子は、混合溶媒中に分散し、その分散液(A1)中の濃度は、通常3〜15質量%であり、5〜10質量%が好ましい。
【0040】
(A2):3官能性シラン化合物による第1疎水化表面処理工程
(A1)で得られた分散液に、下記一般式(II)
R
1Si(OR
4)
3 (II)
(式中、R
1は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基、R
4は同一又は異種の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)で表わされる3官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物又はこれらの混合物を添加して、上記親水性球状シリカ微粒子を表面処理し、その表面にR
1SiO
3/2単位(式中、R
1は上記と同じである。)が導入された球状シリカ微粒子が分散した混合溶媒分散液を得る。
【0041】
本工程(A2)は、次の工程である濃縮工程(A3)において、球状シリカ微粒子の凝集を抑制するために不可欠である。凝集を抑制できないと、得られる疎水性球状シリカ微粒子は一次粒子径を維持できないため、珪素粒子に対する流動性付与能が悪くなる。
【0042】
一般式(II)中、R
1は置換又は非置換の炭素原子数1〜20、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
1は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。また、1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい。
【0043】
一般式(II)中、R
4は同一又は異種の炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
4で表わされる1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0044】
一般式(II)で示される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン、その部分加水分解生成物等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。中でも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、その部分加水分解生成物が好ましく、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、その部分加水分解生成物がより好ましい。
【0045】
これらの添加量は、使用された親水性球状シリカ微粒子のSi原子1モルに対して、0.001〜1モルが好ましく、0.01〜0.1モルがより好ましく、0.01〜0.05モルがさらに好ましい。添加量が0.001モルより少ないと、分散性が悪いため、珪素粒子への流動性付与効果が不十分となるおそれがあり、1モルより多いと(A2)工程において、球状シリカ微粒子の凝集が生じるおそれがある。
【0046】
(A1)で得られた分散液(A1)に、一般式(II)で表わされる3官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物又はこれらの混合物(以下、3官能性シラン化合物等と略す場合がある。)を添加して、上記親水性球状シリカ微粒子を表面処理することで、その表面にR
1SiO
3/2単位(式中、R
1は上記と同じである。)が導入された球状シリカ微粒子が得られる。
【0047】
親水性球状シリカ微粒子の表面にR
1SiO
3/2単位が導入された球状シリカ微粒子は、混合溶媒中に分散し、その分散液(A2)中の濃度は、3質量%以上15質量%未満が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。この量が低すぎると、生産性が低下するおそれがあり、高すぎると(A2)工程において、球状シリカ微粒子の凝集が生じるおそれがある。
【0048】
(A3):濃縮工程
(A2)で得られた分散液(A2)から、親水性有機溶媒と水の一部とを除去し、濃縮することにより、濃縮分散液を得る。
親水性有機溶媒と水の一部を除去する方法としては、例えば留去、減圧留去等が挙げられる。その温度は用いた親水性有機溶媒やその割合によって適宜選定されるが、60〜110℃程度である。この際、分散液(A2)に、予め又は濃縮中に疎水性溶媒を添加してもよい。使用する疎水性溶媒としては、炭化水素系、ケトン系溶媒が好ましく、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。具体的には、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0049】
濃縮後の濃縮分散液(A3)中の球状シリカ微粒子濃度は、15〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましく、25〜30質量%がさらに好ましい。15質量%以上とすることで、次工程(A4)が順調となり、40質量%より大きいと、(A3)工程において、球状シリカ微粒子の凝集が生じるおそれがある。
【0050】
(A3)濃縮工程は、次の(A4)工程において、表面処理剤として使用される一般式(III)で表わされるシラザン化合物、一般式(IV)で表わされる1官能性シラン化合物又はこれらの混合物が、親水性有機溶媒や水と反応して表面処理が不十分となり、その後に乾燥を行った時に凝集を生じるため、得られる疎水性球状シリカ微粒子は一次粒子径を維持できないため、珪素粒子に対する流動性付与能が悪くなるといった不具合を抑制するために、不可欠な工程である。
【0051】
(A4):1官能性シラン化合物による第2疎水化表面処理工程
(A3)で得られた濃縮分散液に、下記一般式(III)
R
23SiNHSiR
23 (III)
(式中、R
2は、同一又は異種の、置換又は非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)
で表わされるシラザン化合物、下記一般式(IV):
R
23SiX (IV)
(式中、R
2は上記と同じであり、XはOH基又は加水分解性基である。)で表わされる1官能性シラン化合物又はこれらの混合物を添加し、上記R
1SiO
3/2単位が導入された球状シリカ微粒子を表面処理し、その表面にR
23SiO
1/2単位(式中、R
2は上記と同じである。)を導入する。シラザン化合物、1官能性シラン化合物は1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0052】
一般式(III)及び(IV)中、R
2は、同一又は異種の、置換又は非置換の炭素原子数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0053】
Xで表わされる加水分解性基としては、例えば、塩素原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルオキシ基等が挙げられ、アルコキシ基、アミノ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
【0054】
一般式(III)で表わされるシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等が挙げられ、中でも、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0055】
一般式(IV)で表わされる1官能性シラン化合物としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン、トリメチルアセトキシシラン等のモノアシルオキシシラン等が挙げられ、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルジエチルアミンが好ましく、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシランがより好ましい。
【0056】
これらの添加量は、使用した親水性球状シリカ微粒子のSi原子1モルに対して、0.1〜0.5モルが好ましく、0.2〜0.4モルがより好ましく、0.25〜0.35モルがさらに好ましい。添加量が0.1モルより少ないと、分散性が悪いため、珪素粒子への流動性付与効果が不十分となるおそれがあり、0.5モルより多いと経済的不利が生じるおそれがある。
【0057】
(A3)で得られた濃縮分散液(A3)に、一般式(III)で表わされるシラザン化合物、一般式(IV)で表わされる1官能性シラン化合物又はこれらの混合物を添加して、上記R
1SiO
3/2単位が導入された球状シリカ微粒子を表面処理することで、その表面に、R
23SiO
1/2単位がさらに導入された、疎水性球状シリカ微粒子が得られる。
【0058】
疎水性球状シリカ微粒子は混合溶媒中に分散し、その分散液(A4)中の濃度は、15〜40質量%が好ましい。疎水性球状シリカ微粒子は、常圧乾燥、減圧乾燥等により、粉体として得ることができる。
【0059】
[珪素粒子又は珪素化合物粒子(以下珪素核粒子と略す場合がある)とその表面に付着した球状シリカ微粒子とを有するシリカ付着粒子]
本発明において、「付着」とは、珪素核粒子に球状シリカ微粒子を添加し、珪素核粒子表面上に、球状シリカ微粒子を物理吸着させて付着させることよりなるものであり、珪素核粒子の表面の一部又は全部に球状シリカ微粒子が付着した状態、その表面を被覆した状態を含むものであり、得られたシリカ付着粒子は二次粒子を形成する。
【0060】
珪素核粒子への球状シリカ微粒子の付着量(添加量)は、珪素核粒子に対して0.01〜5.0質量%が好ましく、0.1〜3.0質量%がより好ましく、0.6〜3.0質量%がさらに好ましい。0.01質量%より少ないと流動性が変化しない場合があり、コストの点から、5.0質量%以下が好ましい。
【0061】
珪素核粒子に球状シリカ微粒子を配合するには公知の方法によればよく、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、リボンブレンダー、らいかい機、ニーダーミキサー、バタフライミキサー、あるいは通常のプロペラ攪拌子による混合機を用いて各成分の所定量を均一に混合すればよい。以上の方法によって簡単に珪素粒子に付着させることができる。
【0062】
付着の状況や、二次粒子が形成されていることは、電子顕微鏡により確認することができる。また、シリカ付着珪素粒子のレーザー回折散乱式粒度分布における累積50%体積径(D
50):平均粒子径は0.01〜30μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜6μmがさらに好ましい。また、窒素吸着1点法で測定したBET比表面積は、0.1〜300m
2/gが好ましく、より好ましくは0.5〜150m
2/g、さらに好ましくは1.0〜100m
2/gである。
【0063】
[非水電解質二次電池用負極活物質]
本発明は、上記得られた二次粒子を非水電解質二次電池用負極活物質として用いるものである。これにより、負極成型体の珪素凝集物を低減でき、さらにサイクル特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【0064】
[非水電解質二次電池用負極材]
負極材中の二次粒子の配合量は、負極材全体(固形分、以下同様)に対して3〜97質量%とすることができ、4〜90質量%がより好ましい。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等の結着剤の配合量は、負極材全体に対して1〜20質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。結着剤の配合量を上記範囲とすることによって、負極活物質が分離してしまう危険性を極力低くすることができ、また空隙率が減少して絶縁膜が厚くなり、Liイオンの移動を阻害する危険性を極力低くすることができる。
【0065】
負極材には、黒鉛等の活物質で希釈することで導電性を向上させるとともに、体積膨張の緩和効果を得ることができる。その場合、希釈する割合によって負極材の電池容量は低下するが、従来の黒鉛材料と比較して高容量とすることが可能であり、珪素含有粒子単独の場合と比較してサイクル特性が向上する。
【0066】
黒鉛材料の種類は特に限定されず、具体的には天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛等を用いることができる。
【0067】
黒鉛材料を用いる場合、その配合量は、負極材全体に対して2〜96質量%が好ましく、60〜95質量%が好ましい。このような範囲であっても、従来の黒鉛材料と比較して高容量となり、負極材の導電性が乏しくなって、初期抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0068】
[負極成型体]
負極材は、例えば、以下の方法により負極成型体とすることができる。上記負極活物質と、黒鉛材料と、結着剤と、その他の添加剤とからなる負極材に、N−メチルピロリドンあるいは水等の結着剤の溶解、分散に適した溶剤を混練してペースト状の合剤とし、この合剤を集電体にシート状に塗布する。この場合、集電体としては、銅箔、ニッケル箔等、通常、負極の集電体として使用されている材料であれば、特に厚さ、表面処理の制限なく使用することができる。なお、合剤をシート状に成形する成形方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0069】
[非水電解質二次電池]
上記負極成型体を用いることにより、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池を製造することができる。この場合、非水電解質二次電池は、上記負極成型体を用いる点に特徴を有し、その他の正極成型体、セパレーター、非水電解質、電解液及び電池形状等は特に限定されない。例えば、正極活物質としてはLiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、V
2O
5、MnO
2、TiS
2、MoS
2等の遷移金属の酸化物、リチウム、及びカルコゲン化合物等が用いられる。非水電解質としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム等のリチウム塩、電解液の非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン等の1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水電解質や固体電解質も使用できる。
【0070】
非水電解質二次電池の形状は任意であり、特に制限はない。一般的にはコイン形状に打ち抜いた電極とセパレーターを積層したコインタイプ、電極シートとセパレーターをスパイラル状に捲回した角型あるいは円筒型等の電池が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
〈疎水性球状シリカ微粒子の合成〉
[合成例1]
・工程(A1):親水性球状シリカ微粒子の調製工程
攪拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた3リットルのガラス製反応器にメタノール989.5g(水に対する質量比5.4)と、水135.5g(水の量はテトラメトキシシランに対して3.6mol比)、28質量%アンモニア水66.5g(アンモニアの量はテトラメトキシシランに対して0.38mol比)とを入れて混合した。この溶液を35℃となるように調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン436.5g(2.87モル)を6時間かけて滴下した。この滴下が終了した後も、さらに0.5時間攪拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性球状シリカ微粒子の懸濁液を得た。
【0072】
・工程(A2):3官能性シラン化合物による第1疎水化表面処理工程
上で得られた懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン4.4g(0.03モル、親水性球状シリカ微粒子のSi原子に対して0.01mol比)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間攪拌を継続し、シリカ微粒子表面を疎水化処理することにより、疎水性球状シリカ微粒子分散液を得た。分散液中の疎水性球状シリカ微粒子濃度は、11質量%であった。
【0073】
・工程(A3):濃縮工程
次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前工程で得られた分散液を60〜70℃に加熱してメタノールと水の混合物1,021gを留去し、疎水性球状シリカ微粒子混合溶媒濃縮分散液を得た。このとき、濃縮分散液中の疎水性球状シリカ微粒子濃度は28質量%であった。
【0074】
・工程(A4):1官能性シラン化合物による第2疎水化表面処理工程
前工程で得られた濃縮分散液に、室温において、ヘキサメチルジシラザン138.4g(0.86モル、親水性球状シリカ微粒子のSi原子に対して0.3mol比)を添加した後、この分散液を50〜60℃に加熱し、9時間反応させることにより、分散液中のシリカ微粒子をトリメチルシリル化した。次いで、この分散液中の溶媒を130℃、減圧下(6,650Pa)で留去することにより、疎水性球状シリカ微粒子(1)186gを得た。
【0075】
工程(A1)で得られた親水性球状シリカ微粒子について下記の測定方法1に従って測定を行った。また、上記の工程(A1)〜(A4)の各段階を経て得られた疎水性球状シリカ微粒子について、下記の測定方法1〜3に従って測定を行った。なお、得られた結果を表1に示す。
【0076】
〈シリカ微粒子測定方法〉
1.工程(A1)で得られた親水性球状シリカ微粒子の平均粒子径測定
メタノールにシリカ微粒子懸濁液を、シリカ微粒子が0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該微粒子を分散させた。このように処理した微粒子の粒度分布を、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を平均粒子径とした。なお、メジアン径とは粒度分布を累積分布として表した時の累積50%に相当する粒子径である。
【0077】
2.工程(A4)において得られた疎水性球状シリカ微粒子の平均粒子径測定及び粒度分布D
90/D
10の測定
メタノールにシリカ微粒子を、0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該微粒子を分散させた。このように処理した微粒子の粒度分布を、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を平均粒子径とした。
また粒度分布D
90/D
10の測定は、上記粒子径測定した際の分布において小さい側から累積が10%となる粒子径をD
10、小さい側から累積が90%となる粒子径をD
90とし測定された値からD
90/D
10を計算した。
【0078】
3.疎水性球状シリカ微粒子の形状測定
電子顕微鏡(日立製作所製、商品名:S−4700型、倍率:10万倍)によって観察を行い、形状を確認した。「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球も含む。なおこのような粒子の形状は、粒子を二次元に投影した時の円形度で評価し、円形度が0.8〜1の範囲にあるものとする。ここで円形度とは、(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)である。
【0079】
[合成例2]
合成例1において、工程(A1)でメタノール、水、及び28質量%アンモニア水の量をメタノール1045.7g、水112.6g、28質量%アンモニア水33.2gに変えたこと以外は同様にして、疎水性球状シリカ微粒子(2)188gを得た。この疎水性球状シリカ微粒子について合成例1と同様に測定した。この結果を表1に示す。
【0080】
[合成例3]
・工程(A1):親水性球状シリカ微粒子の調製工程
攪拌機、滴下ロート、温度計を備えた3リットルのガラス製反応器にメタノール623.7g、水41.4g、28質量%アンモニア水49.8gを添加して混合した。この溶液を35℃に調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン1,163.7g及び5.4質量%アンモニア水418.1gを同時に添加開始し、前者は6時間、そして後者は4時間かけて滴下した。テトラメトキシシラン滴下後も0.5時間攪拌を続け加水分解を行いシリカ微粒子の懸濁液を得た。
【0081】
・工程(A2):3官能性シラン化合物による第1疎水化表面処理工程
こうして得られた懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン11.6g(テトラメトキシシランに対してモル比で0.01相当量)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間攪拌しシリカ微粒子表面の処理を行った。
【0082】
・工程(A3):濃縮工程
該ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管を取り付け、上記の表面処理を施したシリカ微粒子を含む分散液にメチルイソブチルケトン1,440gを添加した後、80〜110℃に加熱しメタノール水を7時間かけて留去した。
【0083】
・工程(A4):1官能性シラン化合物による第2疎水化表面処理工程
こうして得られた分散液に室温でヘキサメチルジシラザン357.6gを添加し120℃に加熱し3時間反応させ、シリカ微粒子をトリメチルシリル化した。その後溶媒を減圧下で留去して球状疎水性シリカ微粒子(3)472gを得た。得られた疎水性球状シリカ微粒子について合成例1と同様に測定した。この結果を表1に示す。
【0084】
[合成例4]
シリカ微粒子の合成の際にテトラメトキシシランの加水分解温度を35℃の代りに20℃とした以外は合成例3と同様にして各工程を行ったところ、疎水性球状シリカ微粒子(4)469gを得た。得られた疎水性球状シリカ微粒子について合成例1と同様に測定した。この結果を表1に示す。
【0085】
[合成例5]
攪拌機と温度計とを備えた0.3リットルのガラス製反応器に爆燃法シリカ(商品名:SOC1、アドマテクス社製)100gを仕込み、純水1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに60℃で10時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、ヘキサメチルジシラザン2gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。120℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら残存原料及び生成したアンモニアを除去し、疎水性球状シリカ微粒子(5)100gを得た。得られた球状シリカ微粒子について合成例1と同様に測定した。この結果を表1に示す。
【0086】
[合成例6]
攪拌機と温度計とを備えた0.3リットルのガラス製反応器に爆燃法シリカ(商品名:SOC1、アドマテクス社製)100gを仕込み、純水1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに60℃で10時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、メチルトリメトキシシラン1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。次にヘキサメチルジシラザン2gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。120℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら残存原料及び生成したアンモニアを除去し、疎水性不定形シリカ微粒子(6)101gを得た。得られたシリカ微粒子について合成例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
平均粒子径
1)工程(A1)で得られた親水性球状シリカ微粒子の平均粒子径
平均粒子径
2)最終的に得られた球状シリカ微粒子の平均粒子径
【0088】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
合成例で得られたシリカ微粒子を、表2に記載されている量で珪素核粒子(多結晶珪素、平均粒子径5.1μm)に添加し、サンプルミルにより3分攪拌混合を行った。得られたものは、シリカ微粒子が珪素核粒子表面に付着した二次粒子であり、以下の評価を行った。
【0089】
[比較例5]
珪素粒子(多結晶珪素、平均粒子径5.1μm、一次粒子)について、実施例と同様の評価を行った。
【0090】
疎水性球状シリカ微粒子を添加し、珪素粒子表面に付着させた状態(実施例2:
図1、実施例4:
図2)及び疎水性球状シリカ微粒子を添加していない状態(比較例5:
図3)の電子顕微鏡写真をそれぞれ
図1〜3に示す。
【0091】
実施例及び比較例で得られた珪素粒子について、下記測定及び評価を行った。
〈珪素粒子測定方法〉
1.平均粒子径D
50
レ−ザー回折散乱法粒度分布の測定:マイクロトラックMT330(日機装(株)製)を使用して累積50%体積径D
50を測定した。
2.BET比表面積
モデル1201((株)マウンテック製)を使用して窒素吸着1点法で測定した。
【0092】
上記得られた疎水性球状シリカ微粒子を表2にあるように珪素粒子に添加し、サンプルミルにより3分攪拌混合を行った。その時の珪素粒子組成物の粉体流動性の指標である基本流動性エネルギー測定を行った。詳細は以下の通りである。
【0093】
〈珪素粒子評価方法〉
1.流動性
粉体流動性の指標である基本流動性エネルギー測定を行った。
粉体流動性分析装置FT−4(シスメックス(株)製)を用いて測定した。この装置の測定原理を説明する。垂直に置かれた筒型容器に粉体を充填し、該粉体中を垂直な軸棒の先端に設けられた二枚の回転翼(ブレード)を回転させながら一定の距離(高さH1からH2まで)下降させる。このときに粉体から受ける力をトルク成分と荷重成分とに分けて測定することにより、ブレードがH1からH2まで下降するのに伴うそれぞれの仕事量(エネルギー)を求め、次いで両者のトータルエネルギー量を求める。こうして測定されたトータルエネルギー量が小さいほど粉体の流動性が良好であることを意味するので、粉体流動性の指標として使用する。この装置にて安定性試験も行なった。
【0094】
容器:容積160mL(内径50mm、長さ79mm)のガラス製円筒型容器を使用した。
ブレード:円筒型容器内の中央に鉛直に装入されるステンレス製の軸棒の先端に水平に対向する形で二枚取り付けられている。ブレードは、直径48mmのものを使用する。H1からH2までの長さは69mmである。
【0095】
安定性試験:上記のようにして、測定容器に充填した粉体を静置した状態から流動させた場合の粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を100mm/secの条件とし、トータルエネルギー量を7回連続して測定する。7回目のトータルエネルギー量(最も安定した状態であるので基本流動性エネルギーと称される)を表2に示す。小さいほど流動性が高い。
【0096】
流速変化試験:安定性試験に続いて、ブレードの回転速度を100mm/sec→70mm/sec→40mm/sec→10mm/secと変えた時のトータルエネルギー量を測定する。その時のFRI変動指数(Flow Rate Index)が1に近いほど流動速度に対して安定していると言える指標である。FRI=(10mm/sのデータ)/(100mm/sのデータ)
【0097】
【表2】
【0098】
[実施例6〜10、比較例6〜9]
合成例で得られたシリカ微粒子を、表3に記載されている量で酸化珪素粒子(平均粒子径3.2μm)に添加し、サンプルミルにより3分攪拌混合を行った。得られたものは、シリカ微粒子が珪素核粒子表面に付着した二次粒子(平均粒子径3.4μm)であり、以下の評価を行った。
【0099】
[比較例10]
酸化珪素粒子(平均粒子径3.2μm、一次粒子)について、実施例と同様の評価を行った。
【0100】
【表3】
【0101】
本発明のシリカ付着珪素粒子は流動性に優れるのに対し、比較例のシリカ付着珪素粒子又はシリカを用いたものは、基本流動性エネルギーが高く、変動指数も大きく流動性に劣っていた。
【0102】
<電池特性の評価>
実施例及び比較例で得られた粒子について、負極活物質としての有用性を確認するため、電池特性の評価を行った。
実施例及び比較例で得られた粒子15質量%と、導電剤として人造黒鉛(平均粒子径D
50=10μm)を79.5質量%と、CMC(カルボキシメチルセルロース)粉1.5質量%を混合した。これにアセチレンブラックの水分散物(固形分17.5質量%)を固形分換算で2.5質量%と、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)の水分散物(固形分40質量%)を固形分換算で1.5質量%とを加え、イオン交換水で希釈してスラリーとした。
【0103】
このスラリーを厚さ10μmの銅箔に150μmのドクターブレードを使用して塗布し、予備乾燥後60℃のローラープレスにより電極を加圧成形し、160℃で2時間乾燥後、2cm
2に打ち抜き、負極成型体とした。
【0104】
得られた負極成型体を、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレーターに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を各2個作製した。
【0105】
作成した電池を二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用い、テストセルの電圧が0Vに達するまで0.15cの定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が0.02cを下回った時点で充電を終了し、充電容量を算出した。なお、cは負極の理論容量を1時間で充電する電流値である。
【0106】
<サイクル特性の評価>
得られた負極成型体のサイクル特性を評価するために、実施例1−10、比較例1−10の負極活物質から作製した負極成型体を準備した。正極材料としてLiCoO
2を正極活物質、集電体としてアルミ箔を用いた単層シートを用いて、正極成型体を作製した。非水電解質には六フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレーターに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いたコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0107】
作製した10種類のコイン型リチウムイオン二次電池を、二晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用い、テストセルの電圧が4.2Vに達するまで1.2mA(正極基準で0.25c)の定電流で充電を行い、4.2Vに達した後は、セル電圧を4.2Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が0.3mAを下回った時点で充電を終了した。放電は0.6mAの定電流で行い、セル電圧が3.0Vに達した時点で放電を終了し、放電容量を求めた。
【0108】
これを300サイクル継続して5回目の放電容量に対する100サイクル、300サイクル後の放電容量比を求めた。結果を表4及び5に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
表4に示すように、対極をLiとした充放電容量をみると実施例1〜5及び比較例1〜5は黒鉛の重量あたりの充電容量と比較して高い負極材であること確認された。一方、小充放電レートの高いサイクル試験では実施例と比較例とで差がみられ、二次粒子珪素を用いた負極材が比較的優れていた。
【0111】
【表5】
【0112】
表5に示すように、実施例6〜10は黒鉛の重量あたりの充電容量と比較して高い負極材であることが確認された。また、サイクル特性は比較例6〜10に対して優れており、長期のサイクル特性で効果があることが判った。
【0113】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。